JP4451604B2 - 分布定数型フィルタ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導線を巻回して形成されたコイル、およびその導線との間に接地間容量を発生させる接地導体を備えた分布定数型フィルタ素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の分布定数型フィルタ素子として、特開平11−346472号公報に開示されたノイズフィルタに使用されているチョークコイル(特に図3に示されているもの)が知られている。このチョークコイルは、チョークコイルとの間で浮遊静電容量を発生させる導電体(C)で覆われると共に、この導電体(C)がアース電位に接続(接地)されて構成されている。このチョークコイルでは、チョークコイルと導電体(C)との間に発生した浮遊静電容量がラインバイパスコンデンサ(接地間容量)として作用して分布定数型フィルタを構成するため、ノイズフィルタ全体としての減衰特性が飛躍的に向上している。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−346472号公報(第3−4頁、第3図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来の分布定数型フィルタ素子には、以下のような解決すべき問題点がある。すなわち、この種の分布定数型フィルタ素子(チョークコイル)では、磁心(上記公報ではトロイダルコア)に巻回する導線として安価なエナメル銅線を使用することが多い。したがって、エナメル銅線の絶縁被覆が薄いため、導電体(C)との間の距離が短くなる結果、耐電圧が低下して十分な安全性を確保するのが困難であるという問題点が存在する。一方、耐電圧を高めるためには、絶縁被覆の厚い導線を使用する方法と、チョークコイルおよび導電体(C)の間の距離を十分に確保する方法とが考えられる。しかし、前者の方法には、磁心に巻回する回数が減少することに起因して、十分なインダクタンスを確保するのが困難となるという問題点が存在する。また、後者の方法には、接地間容量が低下することに起因して、所望の減衰特性を得るのが困難となるという問題点が存在する。
【0005】
また、分布定数型フィルタ素子の減衰特性を調整する場合、線間容量と接地間容量とを調整する必要がある。この場合、この分布定数型フィルタ素子では、チョークコイルを構成する各導線間のピッチを変更することで線間容量を調整することが可能である。しかしながら、この方法では、各導線を密着させて巻回してチョークコイルを形成する場合、絶縁被覆の厚みを変更せざるを得えない。このため、線間容量を増加させる場合には絶縁被覆の厚みを薄くしなければならないために耐電圧が低下するという問題がある。一方、線間容量を減少させる場合には逆に絶縁被覆の厚みを厚くしなければならないために磁心に巻回する回数が減少する結果、十分なインダクタンスを確保するのが困難となるという問題がある。また、接地間容量を調整する場合、コンデンサや抵抗を介して導電体(C)を接地する方法があるが、この方法には、この調整用のコンデンサや抵抗を外付けしなければならないことに起因して、分布定数型フィルタ素子の大形化を招いて設置スペースが増加するという問題点が生じる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、十分なインダクタンスと耐電圧とを確保しつつ線間容量の調整が可能で、しかも電子部品を外付けすることなく接地間容量の調整が可能な分布定数型フィルタ素子を提供することを主目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく請求項1記載の分布定数型フィルタ素子は、磁心、当該磁心の表面を覆うようにして配設された接地導体、当該接地導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、当該誘電体の表面を覆うようにして配設された第1の近接導体、および前記磁心を中心として前記第1の近接導体の表面に導線を巻回して形成されたコイルを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の分布定数型フィルタ素子は、請求項1記載の分布定数型フィルタ素子において、前記コイルの表面を覆うようにして配設された第2の近接導体を備えている。
【0009】
また、請求項3記載の分布定数型フィルタ素子は、請求項1または2記載の分布定数型フィルタ素子において、前記コイルは、前記導線が多層に巻回されて構成され、前記導線の各層間に第3の近接導体が配設されている。
【0010】
また、請求項4記載の分布定数型フィルタ素子は、磁心、当該磁心を中心として当該磁心の表面に導線を巻回して形成されたコイル、当該コイルの表面を覆うようにして配設された近接導体、当該近接導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、当該誘電体の表面を覆うようにして配設された接地導体、当該接地導体の表面を覆うようにして配設された他の誘電体、当該他の誘電体の表面を覆うようにして配設された他の近接導体、および前記磁心を中心として前記他の近接導体の表面に導線を巻回して形成された他のコイルを備えている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る分布定数型フィルタ素子の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
最初に、本発明の第1の実施の形態に係る分布定数型フィルタ素子(以下、「フィルタ素子」ともいう)1について、図面を参照して説明する。
【0013】
フィルタ素子1は、図2に示すように、磁心2、接地導体3および積層体LAを備えて構成されている。この場合、磁心2は、一例として、図1に示すように、平面形状がリング状に形成されたトロイダルコアで構成されている。接地導体3は、図2に示すように、磁心2における表面のほぼ全体を覆うように配設されると共に、図3に示すように、図1,3に示すリード線Aを介して接地される。また、接地導体3には、図2に示すように、積層体LAに含まれている後述するコイル6に流れる電流によって形成される閉磁路に対して接地導体3がショートリングとして機能しないように切り込み3aが形成されている。この場合、切り込み3aは、一例として磁心2の外周面上に磁心2の周方向に沿って直線的に1つ形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、磁心2の内周面や端面(図2中の上端面または下端面)に形成してもよいし、非直線状(例えばジグザグ状、曲線状等)の形状に形成してもよい。さらに、複数形成してもよい。また、接地導体3は、導電性金属箔の貼り付け、めっき、および導電性ペーストの塗布などで形成される。
【0014】
積層体LAは、図1,2に示すように、接地導体3の表面全体を覆うように配設されている。本実施の形態では、積層体LAは、誘電体4、近接導体(第1の近接導体)5およびコイル6を備えて構成されている。この場合、誘電体4は、絶縁性を有する誘電材料を用いて、図2,3に示すように、ほぼ均一の厚みで接地導体3の表面全体を覆うようにして配設されている。また、絶縁性を有する誘電材料としては、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ系樹脂、ガラスエポキシ、アクリル、塩化ビニール、アセテート、エステル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリカ、マイカ、ゴム、ベークライト、絶縁紙、各種セラミックおよび各種ガラスなどを採用することができる。近接導体5は、図2,3に示すように、他のいずれの導体とも電気的に非接触の状態で誘電体4の表面を覆うようにして配設されている。また、近接導体5には、接地導体3と同様にして、図2に示すように、コイル6に流れる電流によって形成される閉磁路に対して近接導体5がショートリングとして機能しないように切り込み5aが形成されている。コイル6は、エナメル銅線等の薄い絶縁被覆の導線(図3に示すように、心線7aと薄い絶縁被覆7bとで構成される)7を近接導体5の表面に1層に巻回して形成されている。したがって、上記の近接導体5は、コイル6と接地導体3との間においてコイル6に近接(本実施の形態では密着)して配設されている。
【0015】
このような構成により、このフィルタ素子1では、図4に示すように、コイル6を構成する導線7の心線7aと近接導体5との間に分布容量C1が分布して形成されると共に、近接導体5とアース(具体的には接地された接地導体3)との間に接地間容量C2が形成される。つまり、フィルタ素子1は、コイル6のインダクタンスと、接地間容量C2を介して接地される分布容量C1とを有する分布定数型のノーマルモードフィルタを構成する。この場合、コイル6を構成する導線7の各線間容量は、各線間に直接形成される分布容量C11と共に、近接導体5を介して互いに直列に接続される分布容量C1によって規定される。なお、分布容量C11は、以下において説明する各実施の形態においても、コイルを構成する同一層内の導線7間に形成されているが、説明の重複を避けるために図示を省略すると共に、その説明も併せて省略する。
【0016】
このフィルタ素子1では、誘電体4、近接導体5およびコイル6をこの順に積層して構成した積層体LAを接地導体3の一方の面側に配設したことにより、従来例で説明したフィルタ素子とは異なり、接地導体3とコイル6との間に誘電体4が介在する構成となるため、接地導体3とコイル6との距離が誘電体4の厚み分だけ長くなる。また、誘電体4として高耐圧の材料を使用することもできる。したがって、このフィルタ素子1によれば、耐電圧を従来のフィルタ素子と比較して十分に高めることができる結果、十分な安全性を確保することができる。また、このフィルタ素子1によれば、コイル6を形成する導線7の絶縁被覆7bを厚くする必要がないため、導線7の巻回数を多くできる結果、十分なインダクタンスを確保することができて所望の減衰特性を実現することができる。さらに、このフィルタ素子1では、近接導体5を配設したことにより、近接導体5を介して互いに直列に接続される分布容量C1が、コイル6を構成する導線7の各線間容量を規定する要素となっている。したがって、近接導体5の大きさ(コイル6に対向する面積)などを適宜変更することによって導線7の各線間容量を容易に調整することができる。さらに、誘電体4の材質や厚みなどを変えることにより、接地間容量C2の値を自由に設定することができる。この場合、コンデンサや抵抗などの外付けの電子部品が不要のため、フィルタ素子1の大形化を回避することができる。また、外付けの電子部品を用いることなく、分布容量C1と接地間容量C2とによって規定される分布キャパシタンスを自由に調整することもできる。
【0017】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るフィルタ素子11について、図面を参照して説明する。なお、フィルタ素子1と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する(以下の各実施の形態についても同様)。
【0018】
フィルタ素子11は、図5,6に示すように、フィルタ素子1の構成に加えて、コイル6の表面(コイル6における近接導体5との対向面の背面)を覆うようにして配設された第2の近接導体12(以下、「近接導体12」ともいう)を備えて構成されている。つまり、フィルタ素子11では、フィルタ素子1の積層体LAに代えて、誘電体4、近接導体5、コイル6および近接導体12がこの順に積層されて構成された積層体LA1が接地導体3の表面上に配設されている。この場合、近接導体12には、接地導体3や近接導体5と同様にして、コイル6に流れる電流によって形成される閉磁路に対して近接導体12がショートリングとして機能しないように切り込み(図示せず)が形成されている。
【0019】
このような構成により、フィルタ素子11では、図7に示すように、コイル6を構成する導線7の心線7aと近接導体12との間に分布容量C3が分布して形成されると共に、近接導体12と近接導体5との間に導体間容量C4が形成される。つまり、フィルタ素子11は、分布容量C1、接地間容量C2、分布容量C3および導体間容量C4の合成容量とコイル6のインダクタンスとを有する分布定数型のノーマルモードフィルタを構成する。
【0020】
このフィルタ素子11では、積層体LA1における誘電体4からコイル6までの構成がフィルタ素子1と同一であって、近接導体5と接地導体3との間に誘電体4が配設されている。したがって、このフィルタ素子11によれば、耐電圧を従来のフィルタ素子と比較して十分に高めることができる結果、十分な安全性を確保することができる等、フィルタ素子1と同様の効果を奏することができる。さらに、このフィルタ素子11によれば、近接導体12を備えて積層体LA1を構成したことにより、コイル6を構成する導線7に対する線間容量と接地間容量とを増加させることができる結果、減衰特性の設計の自由度をさらに高めることができる。
【0021】
なお、本発明は、上記した各実施の形態に限定されない。例えば、各フィルタ素子1,11では、導線7を1層だけ巻回してコイル6を形成したが、導線7を多層に巻回して形成したコイルを有するフィルタ素子に対しても本発明を適用することができる。例えば、図8に示す本発明の第3の実施の形態に係るフィルタ素子21は、接地導体3の表面を覆うようにして配設された積層体LA2を備えている。この場合、積層体LA2は、接地導体3上に、誘電体4、近接導体5、および、導線7を多層に(一例として、後述する第3の近接導体23を設けることなく2層に)巻回して形成したコイル22をこの順に積層することによって構成されている。このフィルタ素子21であっても、積層体LA2における誘電体4からコイル22までの構成がフィルタ素子1と同一であって、近接導体5と接地導体3との間に誘電体4を配設しているため、耐電圧を十分に高めることができて十分な安全性を確保することができる等、フィルタ素子1と同様の効果を奏することができる。
【0022】
また、このフィルタ素子21において、図8に示すように、コイル22を構成する導線7の各層間に、第3の近接導体23(以下、「近接導体23」ともいう)を配設する構成を採用することもできる。この場合、積層体LA2は、誘電体4、近接導体5、コイル22および近接導体23によって構成される。なお、近接導体23には、ショートリングを構成しないように、近接導体5と同様の切り込み(図示せず)が形成されている。このように近接導体23を配設したフィルタ素子21では、図9に示すように、各層(同図では、上下層)における導線7の心線7aと近接導体23との間に分布容量C5が分布して形成されると共に、各近接導体5,23間に導体間容量C4が形成される結果、近接導体23を設けることなく導線7を多層(一例として上記した2層)に巻回して形成したコイル22と比較して、上層に位置して接地導体3から離れている心線7aに対する線間容量と接地間容量の両方を増加させることができる。なお、このフィルタ素子21において、下層に位置して接地導体3に近接している心線7aと近接導体23との間の分布容量C5は、上記のフィルタ素子11における分布容量C3と等価の機能を有している。
【0023】
また、図10に示す本発明の第4の実施の形態に係るフィルタ素子31のように、フィルタ素子21の構成に加えて、コイル22の表面(コイル22における近接導体5との対向面の背面)を覆うようにして、フィルタ素子11における近接導体12と同等の近接導体(第2の近接導体)33をさらに配設する構成を採用することもできる。この場合、積層体LA3は、誘電体4、近接導体5、コイル22、近接導体23および近接導体33によって構成される。このように近接導体33を配設したフィルタ素子31では、図11に示すように、上層の心線7aと近接導体33との間に新たに分布容量C3が分布して形成されると共に、各近接導体23,33間に導体間容量C6が形成される結果、フィルタ素子21と比較して、上層に位置して接地導体3から離れている心線7aに対する線間容量と接地間容量とをさらに増加させることができる。
【0024】
さらに、上記した各実施の形態に係る各フィルタ素子1,11,21,31では、磁心2の表面に配設された接地導体3上に、誘電体4、近接導体5およびコイル6(22)をこの順に積層して積層体LA,LA1,LA2,LA3を形成した例について説明したが、磁心2に対する接地導体3と積層体LA(LA1,LA2,LA3)との積層の順序を入れ替えた構成を採用することもできる。以下、一例として、フィルタ素子1における接地導体3および積層体LAの積層順序を入れ替えたフィルタ素子41を例に挙げて具体的に説明する。ただし、他のフィルタ素子11,21,31に対しても同様に適用できるのは勿論である。このフィルタ素子41は、本発明の第5の実施の形態に係るフィルタ素子であり、図12に示すように、コイル6、近接導体5および誘電体4をこの順に磁心2の表面に積層した積層体LA4と、この積層体LA4の表面に配設した接地導体3とを備えて構成されている。
【0025】
このフィルタ素子41であっても、フィルタ素子1と同様にして、接地導体3とコイル6との間に誘電体4を介在させた構成のため、耐電圧を従来のフィルタ素子と比較して十分に高めることができる結果、十分な安全性を確保することができる等、フィルタ素子1と同様の効果を奏することができる。
【0026】
また、上記した各実施の形態に係る各フィルタ素子1,11,21,31,41では、磁心2の表面に配設された接地導体3の一方の面側にのみ、積層体LA,LA1,LA2,LA3,LA4をそれぞれ形成した例について説明したが、各フィルタ素子1,11,21,31における磁心2と接地導体3との間に隙間を設けて、この隙間に、他の積層体LA,LA1,LA2,LA3をそれぞれ配設する構成を採用することもできる。この場合、接地導体3の他方の面側に積層する他の積層体LA,LA1,LA2,LA3では、接地導体3を基準として、接地導体3の一方の面側に配設された積層体LA,LA1,LA2,LA3の各構成要素の積層位置と配設位置が対称になるように各構成要素が積層される。以下、図13に示すフィルタ素子51を例に挙げて具体的に説明する。このフィルタ素子51は、本発明の第6の実施の形態に係るフィルタ素子であり、一例としてフィルタ素子1における磁心2と接地導体3との間に隙間を設けて、この隙間に、積層体LAと同一構成の他の積層体LAを配設して構成されている。この場合、接地導体3の一方の面(同図中の上面)側に配設された積層体LAの各構成要素(誘電体4、近接導体5およびコイル6)と、接地導体3の他方の面(同図中の下面)側に配設された他の積層体LAの各構成要素(誘電体4、近接導体5およびコイル6)とは、接地導体3を挟んで対称位置にそれぞれ配設されている。
【0027】
このフィルタ素子51であっても、フィルタ素子1と同様にして、接地導体3と各コイル6との間に誘電体4をそれぞれ介在させた構成のため、耐電圧を従来のフィルタ素子と比較して十分に高めることができる結果、十分な安全性を確保することができる等、フィルタ素子1と同様の効果を奏することができる。さらに、このフィルタ素子51では、接地導体3を挟んで、2つの積層体LA,LAを対称に配置した構成のため、図14に示すように、一方の積層体LAにおけるコイル6と接地導体3との間の分布容量C1と、他方の積層体LAにおけるコイル6と接地導体3との間の分布容量C1とがほぼ等しく、かつ各近接導体5と接地導体3との間にそれぞれ形成される接地間容量C2もほぼ等しくなる。したがって、このフィルタ素子51は、ノーマルモードフィルタとして構成できるのは勿論のこと、一方の積層体LAのコイル6と他方の積層体LAのコイル6とを分割して使用することにより、分布定数型のコモンモードフィルタとしても簡易に構成することもできる。
【0028】
また、上記した各実施の形態に係る各フィルタ素子1,11,21,31,41では、1本の導線7を磁心2のほぼ全域に巻回して1つのコイルに形成することによってノーマルモードフィルタを構成した例について説明したが、図15に示すように、2本の導線7,7を磁心2の左右の各領域に同数だけ巻回して2つのコイルを形成することにより、十分なインダクタンスと十分な耐電圧とを確保しつつ、線間容量や接地間容量を調整可能な分布定数型のコモンモードフィルタとしてのフィルタ素子61を実現することができる。
【0029】
また、上記した各実施の形態に係る各フィルタ素子1,11,21,31,41,51,61では、磁心2としてトロイダルコアを用いた例について説明したが、ボビン型やドラム型のコア、EI型コア、ポットコア、RM型コア等の種々の形状のコアを使用することもできる。また、磁心2の材料としては、MnZnフェライトおよびNiZnフェライトを初めとする酸化物系フェライト磁性体、並びに、鉄、ニッケルおよびコバルト等を含む金属磁性体などの種々の磁性体を使用することができる。
【0030】
さらに、上記した各実施の形態に係る各フィルタ素子1,11,21,31,41,51,61では、断面形状がほぼ円形の導線7を用いてコイルを形成した例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、テープ状の導体を絶縁性シートに重ねた状態で筒状に巻いてコイルを形成するフィルタ素子にも適用することができる。また、本発明は、空心コイルにも適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の分布定数型フィルタ素子によれば、磁心、この磁心の表面を覆うようにして配設された接地導体、この接地導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、この誘電体の表面を覆うようにして配設された第1の近接導体、および磁心を中心としてこの近接導体の表面に導線を巻回して形成されたコイルを備えたことにより、従来のフィルタ素子とは異なり、接地導体とコイルとの距離を誘電体の厚み分だけ長くできるため、耐電圧を十分に高めることができる結果、十分な安全性を確保することができる。また、この分布定数型フィルタ素子によれば、コイルを形成する導線の絶縁被覆を厚くする必要がないため、導線の巻回数を多くできる結果、十分なインダクタンスを確保することができて所望の減衰特性を実現することができる。さらに、この分布定数型フィルタ素子によれば、第1の近接導体を配設したことにより、第1の近接導体を介して互いに直列に接続される分布容量がコイルを構成する導線の各線間容量を規定する要素となる結果、第1の近接導体の大きさ(コイルに対向する面積)などを適宜変更することによって導線の各線間容量を容易に調整することができる。また、誘電体の材質や厚みなどを変えることにより、接地間容量の値を自由に設定することができる。また、コンデンサや抵抗などの外付けの電子部品を不要にできるため、この分布定数型フィルタ素子の大形化を回避することができる。加えて、分布容量と接地間容量とによって規定される分布キャパシタンスを自由に調整することもできる。
【0032】
また、請求項2記載の分布定数型フィルタ素子によれば、コイルの表面を覆うようにして第2の近接導体を配設したことにより、コイルを構成する導線に対する線間容量と接地間容量とをより一層増加させることができる結果、減衰特性の設計の自由度をさらに高めることができる。
【0033】
また、請求項3記載の分布定数型フィルタ素子によれば、導線が多層に巻回されて構成されたコイルにおける導線の各層間に第3の近接導体を配設したことにより、各層における導線と第3の近接導体との間に分布容量が分布して形成されると共に、第1の近接導体と第3の近接導体との間に導体間容量が形成される結果、上層に位置して第1の接地導体から離れている導線に対する線間容量と接地間容量とを共に増加させることができる。
【0034】
また、請求項4記載の分布定数型フィルタ素子によれば、磁心、この磁心を中心として磁心の表面に導線を巻回して形成されたコイル、このコイルの表面を覆うようにして配設された近接導体、この近接導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、この誘電体の表面を覆うようにして配設された接地導体、この接地導体の表面を覆うようにして配設された他の誘電体、この他の誘電体の表面を覆うようにして配設された他の近接導体、および磁心を中心としてこの他の近接導体の表面に導線を巻回して形成された他のコイルを備えたことにより、接地導体を挟んで対称な構成となるため、一方のコイルと接地導体との間の分布容量と、他方のコイルと接地導体との間の分布容量とがほぼ等しく、かつ各近接導体と接地導体との間にそれぞれ形成される接地間容量もほぼ等しくなる結果、一方のコイルと他方のコイルとを分割して使用することで、分布定数型のコモンモードフィルタを簡易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィルタ素子1の構成を示す正面図である。
【図2】フィルタ素子1における磁心2の径方向に沿った断面構造を説明するための模式図である。
【図3】フィルタ素子1における積層体LAの構成を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図4】フィルタ素子1における分布容量C1、接地間容量C2および分布容量C11の形成状態を説明するための等価回路図である。
【図5】フィルタ素子11の構成を示す正面図である。
【図6】フィルタ素子11における積層体LA1の構成を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図7】フィルタ素子11における分布容量C1,C3、接地間容量C2、および導体間容量C4の形成状態を説明するための等価回路図である。
【図8】フィルタ素子21における積層体LA2の構成を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図9】フィルタ素子21における分布容量C1,C5、接地間容量C2、および導体間容量C4の形成状態を説明するための等価回路図である。
【図10】フィルタ素子31における積層体LA3の構成を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図11】フィルタ素子31における分布容量C1,C3,C5、接地間容量C2、および導体間容量C4,C6の形成状態を説明するための等価回路図である。
【図12】フィルタ素子41における積層体LA4の構成を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図13】フィルタ素子51における各積層体LA,LAと接地導体3との位置関係を示すための磁心2の周方向に沿った要部断面図である。
【図14】フィルタ素子51における分布容量C1、および接地間容量C2の形成状態を説明するための等価回路図である。
【図15】フィルタ素子61の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,41,51,61 フィルタ素子
2 磁心
3 接地導体
4 誘電体
5,12,23,33 近接導体
6,22 コイル
7 導線
LA,LA1,LA2,LA3,LA4 積層体
Claims (4)
- 磁心、当該磁心の表面を覆うようにして配設された接地導体、当該接地導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、当該誘電体の表面を覆うようにして配設された第1の近接導体、および前記磁心を中心として前記第1の近接導体の表面に導線を巻回して形成されたコイルを備えている分布定数型フィルタ素子。
- 前記コイルの表面を覆うようにして配設された第2の近接導体を備えている請求項1記載の分布定数型フィルタ素子。
- 前記コイルは、前記導線が多層に巻回されて構成され、
前記導線の各層間に第3の近接導体が配設されている請求項1または2記載の分布定数型フィルタ素子。 - 磁心、当該磁心を中心として当該磁心の表面に導線を巻回して形成されたコイル、当該コイルの表面を覆うようにして配設された近接導体、当該近接導体の表面を覆うようにして配設された誘電体、当該誘電体の表面を覆うようにして配設された接地導体、当該接地導体の表面を覆うようにして配設された他の誘電体、当該他の誘電体の表面を覆うようにして配設された他の近接導体、および前記磁心を中心として前記他の近接導体の表面に導線を巻回して形成された他のコイルを備えている分布定数型フィルタ素子。
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