JP4447138B2 - ディスクブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスクブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用のブレーキ装置としては、車輪とともに回転するディスクロータ(円盤)を両側からパッド(摩擦材)で挟み付けてブレーキをかけるディスクブレーキ装置がよく知られる。回転するディスクロータにパッドを押し付ける方式のため、制動時においてパッドにはディスクロータからの回転力(回転トルク)が加わる。ディスクブレーキ装置では、この両パッドに加わる回転力(回転トルク)をそれぞれ受けるためのトルク受け部を設けたマウンティングが備えられている。
【0003】
図8は、従来のディスクブレーキ装置を示す要部平面図である。図9は、ディスクブレーキ装置の要部正面図である。図10は、ディスクブレーキ装置のキャリパーを構成するマウンティングを示す要部斜視図である。
【0004】
図8に示すように、ディスクブレーキ装置50は、ディスクロータ51と、該ディスクロータ51の軸方向両側に対向配置されるインナーパッド52及びアウターパッド53と、マウンティング54と、キャリパー55とを備えている。
【0005】
ディスクロータ51は、図示しない車輪と一体的に回転させられるようになっている。インナーパッド52及びアウターパッド53は、ディスクロータ51を押圧する摩擦材52a,53aと、その摩擦材52a,53aの裏側(反ディスクロータ51側)に固設された金属製の裏板52b,53bとからそれそれ構成されている。裏板52b,53bの両側にはそれぞれ突起52c,53c(図8及び図9では片方の突起52c,53cのみ示している)が設けられている。
【0006】
マウンティング54は、図9及び図10に示すように、略U字を成す板状のインナー側マウンティング部56と、アウター側マウンティング部57と、そのインナー側マウンティング部56とアウター側マウンティング部57間に形成したブリッジ部58とを備え、鋳物にて一体に形成されている。
【0007】
インナー側マウンティング部56は、図10に示すように、そのU字状の両端部56a(図10には片方の端部56aのみ示している)にコ字状のインナー側トルク受け部としてのインナー側パッド溝56bが形成されている。そのインナー側パッド溝56bの底面をインナー側トルク受け面56cとしている。図示しないが、両インナー側トルク受け面56c間の距離は前記インナーパッド52の両突起52cの先端面間の距離とほぼ同じに設定されている。そして、両突起52cはそれぞれ両インナー側パッド溝56b内に配置され、制動時にディスクロータ51側に案内されるとともに、ディスクロータ51の回転方向にあるインナー側トルク受け面56cに当接されるようになっている。
【0008】
また、図9に示すように、前記インナー側マウンティング部56は、前記インナー側パッド溝56bの中心から距離L1を離間した所定位置には貫通孔56dが設けられている。マウンティング54は、その貫通孔56dを貫挿するボルト(図示せず)によって車両のナックル等の非回転部材に固設されるようになっている。
【0009】
アウター側マウンティング部57は、ブリッジ部58を介してインナー側マウンティング部56の両端部56aにそれぞれ連結されている(図9及び図10では片方のアウター側マウンティング部57のみ示している)。そして、アウター側マウンティング部57は、図9及び図10に示すように、前記U字状のインナー側マウンティング部56の両端部56aとほぼ同じ形状にて形成されている。
【0010】
アウター側マウンティング部57には、図9及び図10に示すように、コ字状のアウター側トルク受け部としてのアウター側パッド溝57aが形成されている。そして、そのアウター側パッド溝57aの底面をアウター側トルク受け面57bとしている。図示しないが、両アウター側トルク受け面57b間の距離は前記アウターパッド53の両突起53cの先端面間の距離とほぼ同じに設定されている。
【0011】
そして、両突起53cはそれぞれ両アウター側パッド溝57a内に配置され、制動時にディスクロータ51側に案内されるとともに、ディスクロータ51の回転方向にあるアウター側トルク受け面57bに当接されるようになっている。
【0012】
また、アウター側パッド溝57aは、インナー側パッド溝56bとは、インナー側マウンティング部56とアウター側マウンティング部57を連結するブリッジ部58の軸線方向の投影上に同じ位置に形成されている。そして、従来では、インナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aは、ブローチ加工等にて同時に加工されている。しかも、インナーパッド52とアウターパッド53は、同じ形状と大きさにて作られている。つまり、インナーパッド52とアウターパッド53は、一種類のパッドとして共通使用されている。
【0013】
図8に示すように、インナー側マウンティング部56の両端部56aには、前記ブリッジ部58に向かって所定深さの螺孔58aが設けられている。
一方、前記キャリパー55は、図8に示すように、シリンダ部55aと、該シリンダ部55aからシリンダ軸方向に延設した連結部55bと、該連結部55bの先端に形成されシリンダ軸方向と直交する方向に延設した爪部55cとを備えている。
【0014】
そして、ディスクブレーキ装置50は次のように組み付けられている。
図8に示すように、マウンティング54は、そのブリッジ部58がディスクロータ51の外周側を跨ぎながらインナー側マウンティング部56及びアウター側マウンティング部57がディスクロータ51の両側に配置される。
【0015】
キャリパー55のシリンダ部55aは、図8に示すように、キャリパー55の連結部55bがマウンティング54及びディスクロータ51の外周側を跨ぐように、ボルト60がインナー側マウンティング部56の端部56aに形成した螺孔58aに螺合することによってマウンティング54に固定される。
【0016】
インナーパッド52は、その裏板52bが前記シリンダ部55a内に設けたピストンの先端に固着される(図示せず)。アウターパッド53は、その裏板53bが前記爪部55cのシリンダ部側における側面55eに固着される。
【0017】
このとき、図8に示すように、両摩擦材52a,53aは、それぞれディスクロータ51の両側面51a,51bからわずかに離間している。また、図9に示すように、前記突起52cは前記インナー側パッド溝56b内に配置され、前記突起53cは前記アウター側パッド溝57a内に配置されるようになっている。
【0018】
従って、上記のように構成されたディスクブレーキ装置50は、車両の制動時に前記ピストンがブレーキ油圧によって押し出されると、インナーパッド52がシリンダ側におけるディスクロータ51の一側面51aに押圧されるとともに、その反作用でキャリパー55がシリンダ側へ移動させられる。すると、爪部55cによってアウターパッド53が爪部側におけるディスクロータ51の他側面51bに押圧される。このとき、回転するディスクロータ51は、該ディスクロータ51の両側面51a,51bを挟み付けた両摩擦材52a,53aとの摩擦力によって制動される。
【0019】
制動時においてディスクロータ51の回転トルクを受けてディスクロータ51とともに回転しようとするインナーパッド52及びアウターパッド53は、前記突起52c,53cの先端面がそれぞれ前記インナー側及びアウター側パッド溝56b,57aのインナー側トルク受け面56c,57bと当接することによって、そのトルクがマウンティング54によって受け止められる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aが同じ形状にて同時に形成されている。そのため、ディスクロータ51から伝達されてきたインナーパッド52及びアウターパッド53の回転トルクに対してインナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aのトルク受け点Aは、図9に示すように、インナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aの中心位置にある。このとき、図9に示すように、インナーパッド52からのトルクを受けるインナー側マウンティング部56には距離L1に比例するモーメントM1が作用される。同様に、アウターパッド53からのトルクを受けるアウター側マウンティング部57には距離L2に比例するモーメントM2が作用される。ここで、距離L1は、前記トルク受け点Aの位置からマウンティング54つまりインナー側マウンティング部56の固定中心(つまり貫通孔56dの中心軸線)Bまでの距離である。また、距離L2は、前記トルク受け点Aの位置からアウター側マウンティング部57の連結中心(つまりブリッジ部58の中心軸線)Cまでの距離である。
【0021】
ところで、マウンティング54つまりインナー側マウンティング部56及びアウター側マウンティング部57の剛性設計上に前記モーメントM1,M2をなるべく小さくすることが要求されている。
【0022】
その一つの対策としては、前記距離L1,L2を共に小さくすることが考えられる。しかし、従来のマウンティング54及びインナーパッド52とアウターパッド53の構造及びトルク受け方法では、前記距離L1,L2を同時に小さくすることはできない。つまり、距離L1を小さくすると、前記共通のトルク受け点Aが共に下がり距離L2が大きくなる。逆に、距離L2を小さくすると、前記共通のトルク受け点Aが共に上がり距離L1が大きくなる問題点があった。
【0023】
そこで、インナー側パッド溝56bを貫通孔56dに近づけるよう、アウター側パッド溝57aをブリッジ部58の中心軸線位置Cに近づけるようにインナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aをそれぞれ単独に成形することも考えられるが、インナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aをそれぞれ加工する必要がある。その結果、マウンティング54の構造が複雑となる一方、インナーパッド52とアウターパッド53の共通使用もできなくなる。つまり、インナーパッド52とアウターパッド53を、インナー側パッド溝56bとアウター側パッド溝57aを対応して別々の形状に形成する必要がある。これは、マウンティング54、インナーパッド52及びアウターパッド53の製造コストが高くなる一因となる。
【0024】
従って、従来の技術では、マウンティング54の剛性設計上における軽量化及びコスト低減を図る上に問題点があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストをアップせずにマウンティングの軽量化を図ることができるディスクブレーキ装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転するディスクロータと、該ディスクロータの両側から該ディスクロータの両側面に押圧し、周方向に突出した突起を備えたインナーパッド及びアウターパッドと、インナー側マウンティング部及びアウター側マウンティング部から構成されるマウンティングとを備えるとともに、前記インナー側マウンティング部は、その内周側にて非回転部材に固定され、前記アウター側マウンティング部は、その外周側にてブリッジ部を介して前記インナー側マウンティング部に連結され、前記インナー側マウンティング部と前記アウター側マウンティング部には、制動時に前記ディスクロータにより生じる前記インナーパッド及び前記アウターパッドの回転トルクをそれぞれ受け止めるトルク受け面が設けられたディスクブレーキ装置において、前記インナー側マウンティング部には、前記インナーパッドの前記突起を案内するインナー側パッド溝が形成され、該インナー側パッド溝の開口部から内周側に向かって垂直な下側垂直面が、該開口部から外周側に向かって垂直な上側垂直面より水平方向に突出しており、前記アウター側マウンティング部には、前記インナー側パッド溝の前記ブリッジ部の中心軸線方向の投影上の同じ位置に、前記アウターパッドの前記突起を案内するアウター側パッド溝が形成され、該アウター側パッド溝の開口部から内周側に向かって垂直な下側垂直面が、該開口部から外周側に向かって垂直な上側垂直面より水平方向に突出しており、前記インナー側マウンティング部の前記トルク受け面が前記下側垂直面のみであり、前記アウター側マウンティング部の前記トルク受け面が前記上側垂直面のみであることを要旨とする。
【0028】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、前記インナーパッドと前記アウターパッドが同じ形状であることを要旨とする。
【0031】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、インナー側トルク受け面から受け止めたトルクによるマウンティングの固定中心に対するモーメントを小さくすることができ、インナー側マウンティング部の薄肉化つまり軽量化を図ることができる。同様に、アウター側トルク受け面から受けたトルクによるブリッジ部の中心軸線に対するモーメントを小さくすることができ、アウター側マウンティング部及びブリッジ部の薄肉化つまり軽量化を図ることができる。その結果、マウンティングの剛性を保ちながら軽量化を図ることができる。
【0032】
また、制動時にインナーパッドの突起がインナー側パッド溝により案内されながらインナー側マウンティング部の下側垂直面(トルク受け面)がインナーパッドからの回転トルクを受け止めることができる。同様に、制動時にアウターパッドの突起がアウター側パッド溝により案内されながらアウター側マウンティング部の上側垂直面(トルク受け面)がアウターパッドからの回転トルクを受け止めることができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、インナーパッドとアウターパッドが同じ形状である。従って、インナーパッドとアウターパッドの製造コストを低減することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両用ディスクブレーキ装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。なお、本実施形態のディスクブレーキ装置10は、従来技術のディスクブレーキ装置50とは、マウンティング、インナーパッド及びアウターパッドの構造のみ相違する。そのため、説明の便宜上、同じ構造の部分について同じ符号を付しその詳細な説明を省略し、相違する部分について詳しく説明する。
【0037】
本実施形態のディスクブレーキ装置10のマウンティング11は、図1〜図4に示すように、板状のインナー側マウンティング部12と、アウター側マウンティング部13と、そのインナー側マウンティング部12とアウター側マウンティング部13間に形成したブリッジ部14とを備え、鋳物にて一体に形成されている。
【0038】
インナー側マウンティング部12は、図3及び図5に示すように、互いに対向する一対のインナー側トルク受け部12a(図3及び図5には片方のインナー側トルク受け部12aのみ示している)と、両インナー側トルク受け部12aを一体に連結する連結部12bを備え、略U字状に形成されている。
【0039】
前記インナー側トルク受け部12aには、図2、図3及び図5に示すように、コ字状のインナー側パッド案内部としてのインナー側パッド溝12cが形成されている。また、図2及び図5に示すように、インナー側パッド溝12cの開口部から上方に向かって垂直な上側垂直面12eが形成されているとともに、その開口部から下方に向かって垂直な下側垂直面12dが形成されている。本実施形態では、下側垂直面12dが、上側垂直面12eより水平方向に突出している。そして、下側垂直面12dをインナー側トルク受け面12dとしている。
【0040】
図1〜図5に示すように、前記インナー側マウンティング部12の所定位置には、貫通孔12fが設けられている。マウンティング11は、その貫通孔12fを貫挿するボルト(図示せず)によって車両のナックル等の非回転部材に固設されるようになっている。そして、前記貫通孔12fの中心軸線Pはマウンティング11の固定中心となっている。
【0041】
前記アウター側マウンティング部13は、前記インナー側トルク受け部12aとほぼ同じ形状にて二つ(図1、図3及び図4では片方のアウター側マウンティング部13のみ示している)形成されている。各アウター側マウンティング部13は、それぞれブリッジ部14を介してインナー側トルク受け部12aと連結され、インナー側マウンティング部12と平行に形成されている。
【0042】
また、アウター側マウンティング部13には、図1、図3及び図4に示すように、コ字状のアウター側パッド案内部としてのアウター側パッド溝13aが形成されている。また、図1及び図4に示すように、アウター側パッド溝13aの開口部から上方に向かって垂直な上側垂直面13cが形成されているとともに、その開口部から下方に向かって垂直な下側垂直面13bが形成されている。本実施形態では、下側垂直面13bが、上側垂直面13cより水平方向に突出している。しかも、下側垂直面13bはインナー側の下側垂直面12dよりも突出しないように形成されているとともに、アウター側の上側垂直面13cはインナー側の上側垂直面12eよりも突出するように形成されている。そして、上側垂直面13cをアウター側トルク受け面13cとしている。
【0043】
図1及び図2に示すように、アウター側パッド溝13aは、インナー側パッド溝12cとは、インナー側マウンティング部12とアウター側マウンティング部13を連結するブリッジ部14の中心軸線方向の投影上に同じ位置に形成されている。
【0044】
本実施形態では、インナー側パッド溝12c、アウター側パッド溝13a、インナー側トルク受け面12d及びアウター側トルク受け面13cは、ブローチ加工等にて同時に加工されるように形成されている。詳述すると、図4に2点鎖線R1にてアウター側マウンティング部13の粗材形状を、図5に2点鎖線R2にてインナー側トルク受け部12aの粗材形状をそれぞれ示す。つまり、図6に示すように、粗材形状において、アウター側マウンティング部13の上側垂直面13cが形成される部分は、インナー側トルク受け部12aの上側垂直面12eが形成される部分(実質この部分が上側垂直面12eとなる)よりさらに水平方向に突出している。逆に、粗材形状において、インナー側トルク受け部12aの下側垂直面12dが形成される部分は、アウター側マウンティング部13の下側垂直面13bが形成される部分(実質この部分が下側垂直面13bとなる)よりさらに水平方向に突出している。そして、図6に示すように、所定形状を有する加工刃具30にてインナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け部12aとアウター側マウンティング部13をブローチ加工する。すると、インナー側マウンティング部12の前記上側垂直面12eとアウター側マウンティング部13の前記下側垂直面13bが加工されずインナー側パッド溝12c、アウター側パッド溝13a、インナー側トルク受け面12d及びアウター側トルク受け面13cは同時に加工形成される。
【0045】
本実施形態のインナーパッド15及びアウターパッド16は、同じ形状にて形成され、図1、図2及び図7に示すように、摩擦材15a,16aと、その摩擦材15a,16aの裏側に固設された金属製の裏板15b,16bとからそれそれ構成されている。裏板15b,16bの両側にはそれぞれインナー及びアウター側パッド溝12c,13aに嵌合するインナー及びアウターパッドガイド部としての突起15c,16c(図1、図2及び図7では片方の突起15c,16cのみ示している)が設けられている。
【0046】
また、図7に示すように、突起15cの基端部から上方に向かって垂直な上側垂直面15eが形成されているとともに、その基端部から下方に向かって垂直な下側垂直面15dが形成されている。本実施形態では、上側垂直面15eが下側垂直面15dより水平方向に突出している。しかも、インナー側パッド溝12cに嵌合した突起15cが同パッド溝12cの奥面に当接する前に、下側垂直面15dが前記インナー側トルク受け面12dと真っ先に当接するようになっている。また、このとき、上側垂直面15eはインナー側の上側垂直面12eとは十分に離間されている。そして、本実施形態では、インナー側トルク受け面12dと当接する下側垂直面15dをインナー側当接面15dとしている。
【0047】
一方、突起16cの基端部から上方に向かって垂直な上側垂直面16eが形成されているとともに、その基端部から下方に向かって垂直な下側垂直面16dが形成されている。本実施形態では、上側垂直面16eが下側垂直面16dより水平方向に突出している。しかも、アウター側パッド溝13aに嵌合した突起16cが同パッド溝13aの奥面に当接する前に、上側垂直面16eがアウター側トルク受け面13cと真っ先に当接するようになっている。また、このとき、下側垂直面16dはアウター側の下側垂直面13bとは十分に離間されている。そして、本実施形態では、アウター側トルク受け面13cと当接する上側垂直面16eをアウター側当接面16eとしている。
【0048】
そして、制動時においてディスクロータの回転トルクを受けてディスクロータとともに回転しようとするインナーパッド15は、そのインナー側当接面15dがインナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dに当接することによって、そのトルクがマウンティング11によって受けられる。図2に示すように、インナー側当接面15dとインナー側トルク受け面12dとの当接中心点を点Qとすれば、その当接中心点Qとマウンティング11の固定中心Pとの間の距離が距離L3となる。この距離L3は、従来技術のトルク受け点Aの位置からインナー側マウンティング部56の固定中心Bまでの距離L1(図9に参照)より小さくなる。つまり、従来技術に比べて、本実施形態では、インナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dを、マウンティング11の固定中心Pに近接して設けている。
【0049】
一方、制動時においてディスクロータの回転トルクを受けてディスクロータとともに回転しようとするアウターパッド16は、そのアウター側当接面16eがアウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cに当接することによって、そのトルクがマウンティング11によって受けられる。図1に示すように、アウター側当接面16eとアウター側トルク受け面13cとの当接中心点を点Sとすれば、その当接中心点Sとマウンティング11のブリッジ部14の中心軸線Tとの間の距離が距離L4となる。この距離L4は、従来技術のトルク受け点Aの位置からアウター側マウンティング部57の連結中心(つまりブリッジ部58の中心軸線)Cまでの距離L2(図9に参照)より小さくなる。つまり、従来技術に比べて、本実施形態では、アウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cを、アウター側マウンティング部13とインナー側マウンティング部12に連結するブリッジ部14の中心軸線Tに近接して設けている。
【0050】
以下、本実施形態のディスクブレーキ装置の特徴を記載する。
(1)本実施形態では、インナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dを、マウンティング11の固定中心Pに近接して設けた。また、アウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cを、アウター側マウンティング部13とインナー側マウンティング部12に連結するブリッジ部14の中心軸線Tに近接して設けた。
【0051】
従って、従来技術に比べて、インナー側トルク受け面12dから受けたトルクによるマウンティング11の固定中心Pに対するモーメントを小さくすることができ、インナー側マウンティング部12の薄肉化つまり軽量化を図ることができる。同様に、アウター側トルク受け面13cから受けたトルクによるブリッジ部14の中心軸線Tに対するモーメントを小さくすることができ、アウター側マウンティング部13及びブリッジ部14の薄肉化つまり軽量化を図ることができる。その結果、マウンティング11の剛性を保ちながら軽量化を図ることができる。
【0052】
(2)本実施形態では、インナーパッド15には、インナー側パッド溝12cにより案内される突起15cを設け、該突起15cの下側の下側垂直面15dを、インナー側トルク受け面12dに当接するためのインナー側当接面15dとし、制動時にインナー側当接面15dしかインナー側トルク受け面12dに当接しないようにインナーパッド15とインナー側マウンティング部12は当接するようにした。また、アウターパッド16には、アウター側パッド溝13aにより案内される突起16cを設け、該突起16cの上側の上側垂直面16eを、アウター側トルク受け面13cに当接するためのアウター側当接面16eとし、制動時にそのアウター側当接面16eしかアウター側トルク受け面13cに当接しないようにアウターパッド16とアウター側マウンティング部13は当接するようにした。
【0053】
従って、制動時に突起15cがインナー側パッド溝12cにより案内されながらインナー側当接面15dがインナー側トルク受け面12dに当接することによって、インナー側マウンティング部12は、確実にインナーパッド15からの回転トルクを受け止めることができる。同様に、制動時に突起16cがアウター側パッド溝13aにより案内されながらアウター側当接面16eがアウター側トルク受け面13cに当接することによって、アウター側マウンティング部13は、確実にアウターパッド16からの回転トルクを受け止めることができる。
【0054】
(3)本実施形態では、インナーパッド15の突起15cの上側の上側垂直面15eをアウター側トルク受け面13cに当接するためのアウター側当接面15eとし、アウターパッド16の突起16cの下側の下側垂直面16dをインナー側トルク受け面12dに当接するためのインナー側当接面16dとするようにインナーパッド15とアウターパッド16を同じ形状にて形成した。
【0055】
従って、インナーパッド15とアウターパッド16を共通使用することができ、インナーパッド15とアウターパッド16の製造コストを低減することができる。
【0056】
(4)本実施形態では、アウター側マウンティング部13の上側垂直面13cが形成される部分をインナー側トルク受け部12aの上側垂直面12eが形成される部分よりさらに水平方向に突出させるとともに、インナー側トルク受け部12aの下側垂直面12dが形成される部分をアウター側マウンティング部13の下側垂直面13bが形成される部分よりさらに水平方向に突出させている。
【0057】
従って、ブローチ加工により、粗材からインナー側パッド溝12c、アウター側パッド溝13a、上側垂直面12e,13c及び下側垂直面12d,13bを形成するとき、インナー側パッド溝12cが形成される部分、アウター側パッド溝13aが形成される部分、下側垂直面12dが形成される部分及び下側垂直面13bが形成される部分だけを同時にブローチ加工すればよい。その結果、負荷も小さく従前通りの小型のブローチ加工装置で加工することができるとともに、加工工数の低減が図れるコストの低減に貢献することができる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・上記実施形態では、インナーパッド15とアウターパッド16は、同じ形状にて形成されて実施したが、インナーパッド15とアウターパッド16を異なる形状にて形成してもよい。この場合、上記実施形態の特徴(1)、(2)及び(4)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
【0059】
・上記実施形態では、インナー側マウンティング部12及びアウター側マウンティング部13には、それぞれインナー側パッド溝12cとアウター側パッド溝13aを設け、インナーパッド15及びアウターパッド16には、それぞれ突起15c及び突起16cを設けて実施したが、インナー側マウンティング部12及びアウター側マウンティング部13には、それぞれインナー及びアウター側パッド案内部としての突起を設け、インナーパッド15及びアウターパッド16には、それぞれインナー及びアウターパッドガイド部としての溝を設けて実施してもよい。この場合、上記実施形態の特徴(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0060】
・インナー側パッド溝12cとアウター側パッド溝13aをコ字状以外の形状例えば半円形、三角形等にて形成させて実施してもよい。この場合、突起15c及び突起16cをインナー側パッド溝12cとアウター側パッド溝13aと対応した形状に形成すれば、上記実施形態の特徴(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0061】
・インナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dと、アウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cと、インナー側パッド溝12c及びアウター側パッド溝13aを、ブローチ加工以外の加工方法にて同時に加工形成させて実施してもよい。この場合、上記実施形態の特徴(1)〜(4)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0062】
・上記実施形態では、インナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dと、アウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cと、インナー側パッド溝12c及びアウター側パッド溝13aを、同時にブローチ加工等にて形成させて実施したが、インナー側マウンティング部12のインナー側トルク受け面12dと、アウター側マウンティング部13のアウター側トルク受け面13cと、インナー側パッド溝12c及びアウター側パッド溝13aを、別々にブローチ加工等にて加工して形成させてもよい。この場合、上記実施形態の特徴(1)〜(3)に記載の効果と同様な効果を得ることができる。
【0063】
次に、以上の実施形態から把握することができる請求項以外の技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
(1)インナー側マウンティング部(12)及びアウター側マウンティング部(13)から構成され、該インナー側マウンティング部(12)とアウター側マウンティング部(13)には、制動時におけるインナーパッド(15)及びアウターパッド(16)の回転トルクをそれぞれ受け止めるインナー側トルク受け面(12d)及びアウター側トルク受け面(13c)を設けたディスクブレーキ装置のマウンティング(11)において、前記インナー側マウンティング部(12)のインナー側トルク受け面(12d)を、マウンティング(11)の固定中心(P)に近接して設け、前記アウター側マウンティング部(13)のアウター側トルク受け面(13c)を、前記アウター側マウンティング部(13)とインナー側マウンティング部(12)に連結するブリッジ部(14)の中心軸線(T)に近接して設けるようにしたことを特徴とするディスクブレーキ装置のマウンティング。
【0064】
従って、マウンティングの剛性を保ちながら軽量化を図ることができる。
【0065】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、マウンティングの剛性を保ちながら軽量化を図ることができる。
【0066】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、インナーパッドとアウターパッドの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のディスクブレーキ装置の要部正面図。
【図2】本実施形態のディスクブレーキ装置の要部背面図。
【図3】本実施形態のマウンティングの要部斜視図。
【図4】本実施形態のマウンティングの要部正面図。
【図5】本実施形態のマウンティングの要部背面図。
【図6】本実施形態のマウンティングの要部加工説明図。
【図7】本実施形態のインナーパッド及びアウターパッドの要部正面図。
【図8】従来技術のディスクブレーキ装置の要部平面図。
【図9】従来技術のディスクブレーキ装置の要部正面図。
【図10】従来技術のマウンティングの要部斜視図。
【符号の説明】
11…マウンティング、12…インナー側マウンティング部、12c…インナー側パッド案内部としてのインナー側パッド溝、12d…インナー側トルク受け面、13…アウター側マウンティング部、13a…アウター側パッド案内部としてのアウター側パッド溝、13c…アウター側トルク受け面、14…ブリッジ部、15…インナーパッド、15c…インナーパッドガイド部としての突起、15d,16d…インナー側当接面,15e,16e…アウター側当接面、16…アウターパッド、16c…アウターパッドガイド部としての突起、51…ディスクロータ、51a,51b…ディスクロータの両側面、P…マウンティングの固定中心、T…ブリッジ部の中心軸線。
Claims (2)
- 回転するディスクロータ(51)と、
該ディスクロータ(51)の両側から該ディスクロータ(51)の両側面(51a,51b)に押圧し、周方向に突出した突起(15c,16c)を備えたインナーパッド(15)及びアウターパッド(16)と、
インナー側マウンティング部(12)及びアウター側マウンティング部(13)から構成されるマウンティング(11)とを備えるとともに、
前記インナー側マウンティング部(12)は、その内周側にて非回転部材に固定され、前記アウター側マウンティング部(13)は、その外周側にてブリッジ部(14)を介して前記インナー側マウンティング部(12)に連結され、前記インナー側マウンティング部(12)と前記アウター側マウンティング部(13)には、制動時に前記ディスクロータ(51)により生じる前記インナーパッド(15)及び前記アウターパッド(16)の回転トルクをそれぞれ受け止めるトルク受け面が設けられたディスクブレーキ装置において、
前記インナー側マウンティング部(12)には、前記インナーパッド(15)の前記突起(15c)を案内するインナー側パッド溝(12c)が形成され、該インナー側パッド溝(12c)の開口部から内周側に向かって垂直な下側垂直面(12d)が、該開口部から外周側に向かって垂直な上側垂直面(12e)より水平方向に突出しており、
前記アウター側マウンティング部(13)には、前記インナー側パッド溝(12c)の前記ブリッジ部(14)の中心軸線方向の投影上の同じ位置に、前記アウターパッド(16)の前記突起(16c)を案内するアウター側パッド溝(13a)が形成され、該アウター側パッド溝(13a)の開口部から内周側に向かって垂直な下側垂直面(13b)が、該開口部から外周側に向かって垂直な上側垂直面(13c)より水平方向に突出しており、
前記インナー側マウンティング部(12)の前記トルク受け面が前記下側垂直面(12d)のみであり、前記アウター側マウンティング部(13)の前記トルク受け面が前記上側垂直面(13c)のみであることを特徴とするディスクブレーキ装置。 - 請求項1に記載のディスクブレーキ装置において、
前記インナーパッド(15)と前記アウターパッド(16)が同じ形状であることを特徴とするディスクブレーキ装置。
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