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JP4329287B2 - Plzt又はpzt強誘電体薄膜、その形成用組成物及び形成方法 - Google Patents

Plzt又はpzt強誘電体薄膜、その形成用組成物及び形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的又は光学的性質により各種デバイスへの応用が期待されるPLZT又はPZT強誘電体薄膜と、それを形成するための組成物及び形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)及びそれにランタンをドープしたPLZT(なお、本明細書ではPZTとPLZTとを併せてPLZTと称する。)はその高い誘電率、優れた強誘電特性から種々のキャパシタや不揮発性メモリ等のデバイスへの応用が期待されている。これらの金属酸化物薄膜の成膜法としては、スパッタリング法、MOCVD法などがあるが、比較的安価で簡便に薄膜を作製する手法として、有機金属溶液を基板に塗布するゾルゲル法がある。
【0003】
ゾルゲル法は、原料となる各成分金属の加水分解性の化合物、その部分加水分解物及び/又はその部分重縮合物を含有する原料溶液を基板に塗布し、塗膜を乾燥させた後、例えば空気中で約400℃に加熱して金属酸化物の膜を形成し、さらにその金属酸化物の結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させることにより強誘電体薄膜を成膜する方法である。
【0004】
このゾルゲル法に似た方法として、有機金属分解(MOD)法がある。MOD法では、熱分解性の有機金属化合物、例えば、金属のβ−ジケトン錯体(例えば、金属アセチルアセトネート)やカルボン酸塩(例えば、酢酸塩)を含有する原料溶液を基板に塗布し、例えば空気中又は含酸素雰囲気中等で加熱して、塗膜中の溶媒の蒸発及び金属化合物の熱分解を生じさせて金属酸化物の膜を形成し、さらに結晶化温度以上で焼成して膜を結晶化させる。従って、原料化合物の種類が異なるだけで、成膜操作はゾルゲル法とほぼ同様である。
【0005】
このようにゾルゲル法とMOD法は成膜操作が同じであるので、両者を併用した方法も可能である。即ち、原料溶液が加水分解性の金属化合物と熱分解性の金属化合物の両方を含有していてもよく、その場合には塗膜の加熱中に原料化合物の加水分解と熱分解が起こり、金属酸化物が生成する。
【0006】
これらのゾルゲル法、MOD法、及びこれらを併用した方法等はCSD法(Chemical
Solution Deposition)と称されている。
【0007】
このCSD法は、安価かつ簡便で量産に適しているという利点に加えて、膜の組成制御が容易で、成膜厚みが比較的均一であるという優れた特長を有する。従って、比較的平坦な基板上に強誘電体薄膜を形成するのに有利な成膜法である。
【0008】
なお、従来のCSD法では、原料溶液を基板に塗布して乾燥させた後仮焼し、所望の膜厚が得られるまでこの塗布、乾燥及び仮焼を繰り返し行い、最後の金属酸化物の結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させることにより成膜が行われている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
CSD法による強誘電体薄膜の形成には、結晶化のために焼成を行う必要がある。
【0010】
一方、このような強誘電体薄膜を利用したメモリーにおいては、デバイスチップの小型化に伴い、加熱処理によるデバイスのトランジスタ及びその周辺回路等への悪影響が問題視されるようになってきており、金属酸化物薄膜形成時の結晶化温度を低減させることが望まれている。また、基板上のアルミニウム配線の酸化を防止するためにも、結晶化温度の低減が期待されている。
【0011】
強誘電体メモリー以外の用途においても、成膜時の結晶化温度を低減することは、従来の結晶化温度では成膜が困難であったガラス基板等への成膜を可能とし、強誘電体や圧電体、集電体等の応用範囲の拡大を図ることが期待されることから、結晶化温度の低減が強く望まれている。
【0012】
従来、PZT薄膜の結晶化温度の低減技術として、Pb及びTiを含有する金属酸化物薄膜形成用原料溶液を塗布後、Pb、Zr及びTiを含有する金属酸化物薄膜形成用原料溶液を塗布して結晶化させる方法が提案されている(Journal of the European Ceramic Society 19(1999)1397-1401等)。この方法では、結晶化温度の低いPT層がまず結晶化し、それを核にしてPZT層が低温で結晶化してゆくことにより、PZT薄膜の結晶化の活性化エネルギーが低減されることになり、結晶化温度の低減が図れる。この方法はPTシーディング(PT seeding)と称され、結晶化温度の低減にある程度有効ではあるが、未だ十分であるとは言えず、更なる改良が望まれている。
【0013】
本発明は上記従来の問題点を解決し、強誘電体薄膜を形成するに当り、450℃以下の低温でも結晶化を行うことが可能な金属酸化物薄膜の形成用組成物、形成方法及びこの低温結晶化方法で形成された強誘電体薄膜を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)のPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物は、PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びKのうちから選ばれる1種の元素から構成される金属酸化物Bの混合金属酸化物の薄膜を形成するための液状組成物であって、該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなり、形成されるPLZT又はPZT強誘電体薄膜の結晶化温度が440℃以下であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明者らは、PLZT又はPZT強誘電体薄膜の結晶化温度を低下させるべく種々研究を重ねた結果、Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びKの群からなる1種あるいは2種以上の元素をPLZT又はPZTに添加することで、純粋なPLZT又はPZTに比べ低温で結晶化するという知見が得られた。
【0016】
本発明(請求項1)の組成物は、かかる知見に基づいて創案されたものである。なお、BとAとのモル比B/Aは0<B/A<100が好ましい。このBが少量混合された状態でドーパントとしてのBの効果が現れ始めるが、Bの量が増えるに従い結晶化温度、更にはモフォロジーの改善効果が現れるようになる。但し、B/Aがあまりに大きくなりすぎると、A自体の特性が希釈され残留分極性Prが弱くなってくるため、用途によって最適B/Aの量は変わる。一般的な最適範囲としては、0<B/A<20が好ましく、更には0.1<B/A<20、更には0.2<B/A<20、最も好ましくは0.4<B/A<20である。
【0017】
本発明(請求項)のPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物は、PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、(Biα、La1−αSiO (式中、0≦α≦1)で示される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物(ただし、BとAとのモル比B/Aは0<B/A<5)の薄膜を形成するための液状組成物であって、該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明(請求項)のPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物は、PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、(Biβ、La1−αSiO (式中、0≦α≦1、α<β<1.3α)で示される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物(ただし、BとAとのモル比B/Aは0<B/A<5)の薄膜を形成するための液状組成物であって、該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明者らは、上記の複合酸化物Bについてさらに検討を重ねたところ、(Biα、La1−αSiO又は(Biβ、La1−αSiOがきわめて好適であることが見出された。ただし、α<β<1.3αである。複合酸化物としてかかるBi−La−Si系複合酸化物を用いると、PLZT又はPZT強誘電体薄膜がより低温で結晶化する。
【0020】
本発明の強誘電体薄膜の形成方法は、この強誘電体薄膜形成用組成物を耐熱性基板に塗布し、空気中、酸化雰囲気中又は含水蒸気雰囲気中で加熱する工程を1回又は所望の厚さの膜が得られるまで繰り返し、少なくとも最終工程における加熱中或いは加熱後に該膜を結晶化温度以上で焼成することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の強誘電体薄膜は、この方法によって形成されたものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明で用いる有機金属化合物原料は、有機基が、複合金属化合物A用のPb,La,Zr及びTi並びに複合金属化合物B用のBi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びKの各金属に酸素又は窒素原子を介して結合しているものが好適であり、例えば金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が例示される。特に好適な化合物は、金属アルコキシド、その部分加水分解物及び/又は有機酸塩であり、このうち、Pb化合物、La化合物としては酢酸塩(酢酸鉛、酢酸ランタン)等の有機酸塩、鉛ジイソプロポキシド等のアルコキシドが挙げられる。Ti化合物としては、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムジメトキシジイソプロポキシド等のアルコキシドが挙げられる。Zr化合物や、Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びK化合物としては上記Ti化合物と同様なアルコキシド類が好ましい。金属アルコキシドはそのまま使用してもよいが、分解を促進させるためにその部分加水分解物を使用してもよい。
【0024】
本発明のPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物を調製するには、これらの原料有機金属化合物を、所望のPLZT又はPZT強誘電体薄膜組成に相当する比率で適当な溶媒に溶解して、塗布に適した濃度に調製する。
【0025】
ここで用いるPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物の溶媒は、原料有機金属化合物に応じて適宜決定されるが、一般的には、カルボン酸、アルコール、エステル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル)、シクロアルカン類(例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノール)、芳香族系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、その他テトラヒドロフラン等、或いはこれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0026】
複合酸化物Bが、(Biα、La1−αSiO又は(Biβ、La1−αSiOである場合、溶媒はモノアルコール及びジオールの混合溶媒を含むか、又はこの混合溶媒よりなることが好ましい。ジオールとしてはプロピレングリコールが特に好ましいが、トリエチレングリコールも好適である。
【0027】
カルボン酸としては、具体的には、n−酪酸、α−メチル酪酸、i−吉草酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。
【0028】
また、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸sec−アミル、酢酸tert−アミル、酢酸イソアミルを用いるのが好ましく、アルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソ−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノールを用いるのが好適である。
【0029】
なお、PLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物の有機金属化合物溶液中の有機金属化合物の合計濃度は、金属酸化物換算量で0.1〜20重量%程度とするのが好ましい。
【0030】
この有機金属化合物溶液中には、必要に応じて安定化剤として、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、β−ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、β−ケトエステル類例えばこれらのケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、これらのオキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン類(例えば、ジェタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)、多価アミン等を、(安定化剤分子数)/(金属原子数)で0.2〜3程度添加しても良い。
【0031】
本発明では、このようにして調製された有機金属化合物溶液を濾過処理するなどして、パーティクルを除去し、粒径0.5μm以上(特に0.3μm以上とりわけ0.2μm以上)のパーティクルの個数が溶液1mL当り50個/mL以下となるようにするのが好ましい。
【0032】
有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数が50個/mLを超えると、長期保存安定性が劣るものとなる。この有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数は少ない程好ましく、特に30個/mL以下であることが好ましい。
【0033】
このようなパーティクル個数となるように、調製後の有機金属化合物溶液を処理する方法としては特に制限はないが、具体的には次のような方法が挙げられる。
【0034】
(1) 市販の0.2μm孔径のメンブランフィルターを使用し、シリンジで圧送する濾過法。
(2) 市販の0.05μm孔径のメンブランフィルターと加圧タンクを組み合せた加圧濾過法。
(3) 上記(2)のフィルターと溶液循環槽を組み合せた循環濾過法。
【0035】
いずれの方法においても、溶液圧送圧力により、フィルターによるパーティクル捕捉率が異なる。圧力が低いほど捕捉率が高くなることは一般的に知られており、特に、(1)(2)について、パーティクル50個以下の条件を実現するためには、低圧で非常にゆっくりとフィルターに通すのが好ましい。
【0036】
このようなPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物により、本発明の方法に従って、PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するには、上述の本発明のPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法により基板上に塗布し、乾燥(仮焼成)及び本焼成を行う。
【0037】
使用される基板の具体例としては、基板表層部に、単結晶Si、多結晶Si,Pt,Pt(最上層)/Ti,Pt(最上層)/Ta,Ru,RuO,Ru(最上層)/RuO,RuO(最上層)/Ru,Ir,IrO,Ir(最上層)/IrO,Pt(最上層)/Ir,Pt(最上層)/IrO,SrRuO又は(LaSr1−x)CoO等のペロブスカイト型導電性酸化物等を用いた基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
なお、1回の塗布では、所望の膜厚が得られない場合には、塗布、乾燥の工程を複数回繰り返し行った後、本焼成を行う。
【0039】
ここで、仮焼成は、溶媒を除去すると共に有機金属化合物を熱分解又は加水分解して複合酸化物に転化させるために行うことから、空気中、酸化雰囲気中、又は含水蒸気雰囲気中で行う。空気中での加熱でも、加水分解に必要な水分は空気中の湿気により十分に確保される。この加熱は、溶媒の除去のための低温加熱と、有機金属化合物の分解のための高温加熱の2段階で実施しても良い。
【0040】
本焼成は、仮焼成で得られた薄膜を結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させるための工程であり、これによりPLZT又はPZT強誘電体薄膜が得られる。この結晶化工程の焼成雰囲気はO、N、Ar、NO又はH等あるいはこれらの混合ガス等が好適である。
【0041】
一般に、仮焼成は、150〜350℃で行われ、本焼成は380〜440℃で行われる。本発明では、本焼成温度が低くても薄膜を結晶化させることができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0043】
なお、以下の実施例及び比較例において、有機金属化合物原料としては、次のものを用いた。
Pb化合物: 酢酸鉛3水和物
La化合物: 酢酸ランタン1.5水和物
Zr化合物: ジルコニウムテトラt−ブトキシド
Ti化合物: チタンテトライソプロポキシド
Bi化合物: Biエトキシド
Si化合物: Siテトラエトキシド
Ge化合物: Geテトラエトキシド
Sn化合物: Snテトラn−ブトキシド
Al化合物: Alトリイソプロポキシド
Ga化合物: Gaトリエトキシド
In化合物: Inトリイソプロポキシド
Mg化合物: Mgエトキシド
Ca化合物: Caエトキシド
Sr化合物: Srエトキシド
Ba化合物: Baエトキシド
V化合物 : バナジルトリイソプロポキシド
Nb化合物: Nbペンタエトキシド
Ta化合物: Taペンタエトキシド
Sc化合物: 酢酸スカンジウム
Y化合物 : Yイソプロポキシド
Hf化合物: Hfラトラエトキシド
Cr化合物: Crトリイソプロポキシド
Mn化合物: Mnメトキシド
Fe化合物: Feトリイソプロポキシド
Co化合物: 2−エチルヘキサン酸Co
Ni化合物: 2−エチルヘキサン酸Ni
Zn化合物: 2−エチルヘキサン酸Zn
Cd化合物: 2−エチルヘキサン酸Cd
Li化合物: Liエトキシド
Na化合物: Naエトキシド
K化合物 : Kエトキシド
【0044】
実験No.1〜241
有機溶媒として十分に脱水処理した2−メトキシエタノールを使用し、これに酢酸塩形態の有機金属化合物(Pb,La化合物)を溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。その後、得られた溶液にアルコキシド形態の有機金属化合物(Zr,Ti,Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びK化合物)を添加して溶解させ、溶液安定化のためアセチルアセトンを金属アルコキシドに対して2倍モル加えて表1〜9に示す組成で、有機金属化合物の合計濃度が金属酸化物換算濃度で約10重量%の薄膜形成用溶液を調製した。
【0045】
各々の溶液を用いて、下記方法によりCSD法による薄膜の形成を行った。
【0046】
即ち、各々の溶液をスピンコート法により500rpmで3秒間その後3000rpmで15秒間の条件で6インチシリコン基板上に塗布した。
【0047】
次いで、ホットプレートを用い、250℃で10分間加熱して仮焼成を行った。この塗布、仮焼成の工程を2回繰り返した後、種々の温度の酸素雰囲気中で1分間RTA(急速加熱処理装置)で焼成して膜厚1200Åの強誘電体薄膜を形成し、結晶化温度を調べた。結果を表1〜9に示す。
【0048】
また、これらのNo.1〜241において、最終焼成温度を一律に400℃としたこと以外は同一条件で強誘電体薄膜を形成し、各強誘電体薄膜の印加電圧3Vにおける残留分極性Prを調べ、結果を表1〜9に示した。
【0049】
【表1】
Figure 0004329287
【0050】
【表2】
Figure 0004329287
【0051】
【表3】
Figure 0004329287
【0052】
【表4】
Figure 0004329287
【0053】
【表5】
Figure 0004329287
【0054】
【表6】
Figure 0004329287
【0055】
【表7】
Figure 0004329287
【0056】
【表8】
Figure 0004329287
【0057】
【表9】
Figure 0004329287
【0058】
表1〜9の通り、B組成無しのNo.1(比較例)に対し、B組成を添加したNo.2〜241(実施例)のものはいずれも結晶化温度が低い。また、B/Aを大きくすることにより、結晶化温度がより低くなる。そして、B/Aを0.2以上とし、特に0.3とすることにより、結晶化温度は十分に低くなる。結晶化温度が400℃となるようにB成分を添加したサンプルは、いずれも400℃焼成物の残留分極Prが十分に大きい値となっている。
【0059】
中でも、B組成にSiとPbとを併用したもの、SiとPbとGeとを併用したものは、B/A比が小さくても結晶化温度が十分に低下し、残留分極Prが十分に大きくなる。
【0060】
実験No.242〜313
1)PLZT溶液の合成
有機溶剤としてプロピレングリコールを使用し、これに酢酸鉛及び/あるいは酢酸ランタンを溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にジルコニウムn−ブトキシド及び/あるいはチタンテトライソプロポキシドを加えて溶解させ、溶媒沸点下で2時間還流させPb−La−Zr−Tiの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、粘度調整のためn−ブタノールで溶液を希釈し安定な表10,11のPLZT組成のPLZT薄膜形成剤を得た。
2)Bi−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これにBiエトキシドとSiエトキシドをモル比でBi:Si=2:1となるように加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させBi−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なBi−Si薄膜形成剤を得た。
3)La−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これに酢酸ランタン1.5水和物を溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にモル比でLa:Si=2:1となるようにSiエトキシドを加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させLa−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なLa−Si薄膜形成剤を得た。
上記Bi−Si溶液とLa−Si溶液を表10,11記載のB組成となるよう混合し、更にこの溶液とPLZT溶液を表10,11に示すB/A組成比となるよう混合し、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なPLZT−Bi−La−Si薄膜形成剤を得た。これら溶液を使用し、複合金属酸化物薄膜の成膜を行った。最終的な結晶化温度は400、450、500、550、600℃でそれぞれ行い、組成により結晶化が何℃で起こっているかをXRDで確認した。その結果を表10,11に示す。
【0061】
【表10】
Figure 0004329287
【0062】
【表11】
Figure 0004329287
【0063】
実験No.314〜385
1)PLZT溶液の合成
有機溶剤として2−メトキシエタノールを使用し、これに酢酸鉛、酢酸ランタンを溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にジルコニウムn−ブトキシド及び/あるいはチタンテトライソプロポキシドを加えて溶解させ、溶媒沸点下で2時間還流させPb−La−Zr−Tiの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、粘度調整のため2−メトキシエタノールで溶液を希釈し安定な表12,13のPLZT組成のPLZT薄膜形成剤を得た。
2)Bi−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これにBiエトキシドとSiエトキシドをモル比でBi:Si=2:1となるように加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させBi−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なBi−Si薄膜形成剤を得た。
3)La−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これに酢酸ランタン1.5水和物を溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にモル比でLa:Si=2:1となるようにSiエトキシドを加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させLa−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なLa−Si薄膜形成剤を得た。
上記Bi−Si溶液とLa−Si溶液を表12,13記載のB組成となるよう混合し、更にこの溶液とPLZT溶液を表12,13に示すB/A組成比となるよう混合し、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なPLZT−Bi−La−Si薄膜形成剤を得た。これら溶液を使用し、複合金属酸化物薄膜の成膜を行った。最終的な結晶化温度は400、450、500、550、600℃でそれぞれ行い、組成により結晶化が何℃で起こっているかをXRDで確認した。その結果を表12,13に示す。
【0064】
【表12】
Figure 0004329287
【0065】
【表13】
Figure 0004329287
【0066】
実験No.386〜457
1)PLZT溶液の合成
有機溶剤としてプロピレングリコールを使用し、これに酢酸鉛及び/あるいは酢酸ランタンを溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にジルコニウムn−ブトキシド及び/あるいはチタンテトライソプロポキシドを加えて溶解させ、溶媒沸点下で2時間還流させPb−La−Zr−Tiの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、粘度調整のためn−ブタノールで溶液を希釈し安定な表14,15のPLZT組成のPLZT薄膜形成剤を得た。
2)Bi−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これにBiエトキシドとSiエトキシドをモル比でBi:Si=2.1:1となるように加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させBi−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なBi−Si薄膜形成剤を得た。
3)La−Si溶液の合成
有機溶剤として十分に脱水したn−ブタノールを使用し、これに酢酸ランタン1.5水和物を溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。得られた溶液にモル比でLa:Si=2:1となるようにSiエトキシドを加えて溶解し、溶媒沸点下で2時間還流させLa−Siの複合金属有機化合物を合成した。この後、アセチルアセトンを金属合計量に対して1倍モル加え、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なLa−Si薄膜形成剤を得た。
上記Bi−Si溶液とLa−Si溶液を表14,15記載のB組成となるよう混合し、更にこの溶液とPLZT溶液を表14,15に示すB/A組成比となるよう混合し、溶媒沸点下で1時間還流反応を行い、安定なPLZT−Bi−La−Si薄膜形成剤を得た。これら溶液を使用し、複合金属酸化物薄膜の成膜を行った。最終的な結晶化温度は400、450、500、550、600℃でそれぞれ行い、組成により結晶化が何℃で起こっているかをXRDで確認した。その結果を表14,15に示す。
【0067】
【表14】
Figure 0004329287
【0068】
【表15】
Figure 0004329287
【0069】
表10〜15の通り、実験No.242〜457のものは結晶化温度が十分に低い。
【0070】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、PLZT又はPZT強誘電体薄膜の結晶化温度を低下させることができる。薄膜形成用組成物と、薄膜形成方法と、この方法により形成された強誘電体薄膜とが提供される。

Claims (13)

  1. PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、
    一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びKのうちから選ばれる1種の元素から構成される金属酸化物Bの混合金属酸化物の薄膜を形成するための液状組成物であって、
    該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなり、形成されるPLZT又はPZT強誘電体薄膜の結晶化温度が440℃以下であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  2. 請求項1において、金属酸化物Bが、Si、Nb、及びCdのうちから選ばれる1種の元素から構成される金属酸化物であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  3. PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、
    一般式:(Pb La )(Zr Ti 1−z )O (式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0<z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、Si及びGe或いはSi、Ge及びSnから構成される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物の薄膜を形成するための液状組成物であって、
    該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなり、形成されるPLZT又はPZT強誘電体薄膜の結晶化温度が440℃以下であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記有機金属化合物は、有機基がその酸素または窒素原子を介して金属と結合している化合物であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  5. 請求項において、前記有機金属化合物が、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項において、β−ジケトン、β−ケトン酸、β−ケトエステル、オキシ酸、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン及び、多価アミンよりなる群から選ばれた1種又は2種以上の安定化剤を、組成物中の金属合計量1モルに対して、0.2〜3モルの割合で含有することを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項において、BとAとのモル比B/Aが0<B/A<100であることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  8. PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、
    一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、(Biα、La1−αSiO (式中、0≦α≦1)で示される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物(ただし、BとAとのモル比B/Aは0<B/A<5)の薄膜を形成するための液状組成物であって、
    該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  9. PLZT又はPZT強誘電体薄膜を形成するための有機金属化合物溶液よりなる強誘電体薄膜形成用組成物において、
    一般式:(PbLa)(ZrTi1−z)O(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属化合物Aと、(Biβ、La1−αSiO (式中、0≦α≦1、α<β<1.3α)で示される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物(ただし、BとAとのモル比B/Aは0<B/A<5)の薄膜を形成するための液状組成物であって、
    該金属酸化物を構成する各金属の熱分解性有機金属化合物、加水分解性有機金属化合物、その部分加水分解物及び/又は重縮合物が、上式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶剤中に溶解している溶液からなることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  10. 請求項又はにおいて、前記有機溶剤がモノアルコールとジオールの混合溶媒を含有することを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  11. 請求項10において、前記ジオールがプロピレングリコールであることを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜形成用組成物。
  12. 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の強誘電体薄膜形成用組成物を耐熱性基板に塗布し、空気中、酸化雰囲気中又は含水蒸気雰囲気中で加熱する工程を1回又は所望の厚さの膜が得られるまで繰り返し、少なくとも最終工程における加熱中或いは加熱後に該膜を結晶化温度以上で焼成することを特徴とするPLZT又はPZT強誘電体薄膜の形成方法。
  13. 請求項12の方法によって形成されたPLZT又はPZT強誘電体薄膜。
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