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JP4309671B2 - 半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いる半導体ウェハ裏面研削方法 - Google Patents

半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いる半導体ウェハ裏面研削方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム(以下、粘着フィルム)、及びそれを用いる半導体ウェハの裏面研削方法に関する。詳しくは、シリコンウェハ等の半導体ウェハの集積回路が組み込まれた側の面(以下、ウェハ表面)に前記粘着フィルムを貼着して、該ウェハの他の面(以下、ウェハ裏面)を研削する、半導体ウェハの破損防止等に有用な半導体ウェハ裏面研削方法、及び該方法に用いる半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、半導体集積回路は、高純度シリコン単結晶等をスライスしてウェハとした後、イオン注入、エッチング等により集積回路を組み込み、更にウェハ裏面をグラインディング、ポリッシング、ラッピング等により研削し、ウェハの厚さを100〜600μm程度まで薄くしてからダイシングしてチップ化する方法で製造されている。これらの工程の中で、ウェハ裏面の研削時に半導体ウェハの破損を防止したり、研削工程を容易にするため、半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムをその粘着剤層を介してウェハ表面に貼着して保護する方法が用いられている。具体的には、ウェハ表面に半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムをその粘着剤層を介して直接貼着してウェハ表面を保護した後、該ウェハ裏面を研削する。研削が完了した後、該粘着フィルムはウェハ表面より剥離される。
【0003】
従来の半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムを、ウェハの周辺部まで集積回路が組み込まれている、即ちウェハの最外周までスクライブラインが達しているような半導体ウェハの裏面を研削する際に用いる場合には、スクライブラインに基く凹部を通してウェハ表面と粘着剤層との間に水が入り込み、これに起因してウェハが破損したり、水と共に研削屑が侵入してウェハ表面を汚染することがあった。これらの問題を防止する為に、粘着フィルムの粘着剤層の厚みを厚くし、ウェハ表面の凹部と粘着剤層との密着性を向上させる手段が取られている。しかしながら、この手法を用いた場合には、粘着フィルムのウェハ表面に対する粘着力がウェハの強度以上に大きくなり、ウェハの厚みや表面形状等の諸条件によっては、裏面研削後に該粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に、自動剥がし機で剥離トラブルが発生したり、ウェハを破壊してしまうことがあった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、例えば、特開昭60-189938号公報には、半導体ウェハの裏面を研削するにあたり、そのウェハ表面に感圧性接着フィルムを貼り付け、研削後この接着フィルムを剥離する半導体ウェハの保護方法において、上記の感圧性接着フィルムが光透過性の支持体とこの支持体上に設けられた光照射により硬化し、3次元網状化する性質を有する感圧性接着剤層からなり、研削後この接着フィルムを剥離する前にこの接着フィルムに光照射することを特徴とする半導体ウェハの保護方法が開示されている。
【0005】
上記の発明に開示された半導体ウェハの保護方法は、剥離前に光照射することによって粘着フィルムのウェハ表面に対する粘着力を低下させることができるため剥離の作業性・ウェハ破損の問題を考慮せずに裏面研削時のウェハ表面に対する密着性を十分に大きくすることができ、前述のウェハ表面と粘着剤層との間への水及び研削屑の侵入の問題は解決される。
【0006】
しかしながら、この粘着フィルムを用いた場合には、裏面研削後にウェハ表面から粘着フィルムを剥離するまでの間に光照射することを必要とするため、工程中に光照射設備を導入する必要があり、装置が大型化・複雑化したり、工程が複雑化して作業性が低下する問題があった。また、光照射により発生するオゾンによって作業環境が悪化するという問題も指摘されている。更に、ウェハの表面形状や光照射強度・時間等の諸条件によっては、粘着剤層の硬化不良により剥離後のウェハ表面に糊残りの問題が発生することがあった。その問題を防止するためには、光照射装置内を窒素等の不活性ガスで充填する必要があり、製造コストが上昇すると共に、工程の更なる大型化・複雑化を招くという問題があった。
【0007】
また、これらの問題を解決するために、本発明者らは、特開平11−315259号公報において、特定のアルキレングリコール系重合体を必須成分として含有した粘着剤層を有することを特徴とする半導体ウェハの保護粘着フィルムを提案した。該半導体ウェハの保護粘着フィルムは、半導体ウェハの裏面を研削するに際し、ウェハ表面と粘着剤層との間に水及び研削屑が浸入することに起因するウェハの破損及びウェハ表面の汚染を抑えることができる。すなわち、粘着力が適正な範囲にあるため、粘着フィルムをウェハから剥離する際のウェハの破損が起こらず、光照射装置等の設備を新たに工程に導入する必要もなく、粘着フィルムをウェハから剥離した後に糊残りが生じないので、半導体ウェハの表面を汚染することがない特徴を有する。
【0008】
しかし、近年、半導体業界の技術革新、低コスト化への要求に伴い、半導体ウェハは年々大型化・薄層化する傾向にある。特に、パッケージングの薄層化やスマートカード用途のように薄肉であることが求められる半導体チップの需要が増加していることに伴い、裏面研削後の半導体ウェハの厚みはますます薄くなる傾向にある。裏面研削に要する時間はウェハの面積と共に増大するため、前述した研削中の水及び研削屑の浸入によるウェハの破損・汚染の問題は、ウェハが大型化するほど発生し易いと考えられる。更に、ウェハの厚みが薄くなるにつれて、ウェハ自身の強度が低下することを考慮すれば、前述した剥離時にウェハが破損する問題についてもウェハの薄層化に伴ってますます深刻化していくものと予想される。
【0009】
加えて、近年の半導体デバイスの小型・軽量化に伴い、半導体ウェハ表面の多様化が急速に進み、CPU、フラッシュメモリー、スマートカード等を対象とした粘着剤の一部が残り易い表面形状を有するウェハが多くなってきている。例えば、スマートカード用途に適したチップを有するウェハとしては、高さ5〜300μmの突起状のハイバンプ電極を有するウェハが生産されるようになってきている。上記のような突起状のハイバンプ電極を表面に有する半導体ウェハの裏面を研削する場合には、研削後のウェハから粘着フィルムを剥離する際に、ウェハの表面に粘着剤の一部が残り、ウェハ表面を汚染することがあった。この糊残りによる汚染は、特にハイバンプ電極の周辺に発生することが多く、その場合には洗浄等の後処理によっても汚染の除去が困難であり、特に大きな問題となることがある。
【0010】
このような状況下、従来、半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムには、裏面研削時にはウェハ表面の凹部にまで良好に密着し、ウェハ表面と粘着剤層との間へ水が浸入することによるウェハの破損や研磨屑が浸入し、ウェハ表面の汚染を引き起こすことがないこと、剥離時には適正な粘着力で剥離できること、更に、剥離後にウェハ表面を汚染しないこと,等の性能が要求されている。しかし、それらの要求レベルは近年益々厳しくなっており、今後も更に厳しくなることが予想される。その為、上記要求に対して更に高いレベルで対応できる半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムが求められている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ウェハ裏面の研削時にはその応力に耐え、且つ剥離時にはウェハを破損しない適度の粘着力を有し、しかも、ウェハ表面に対する優れた密着性と低汚染性を有する半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム、及びそれを用いる半導体ウェハの裏面研削方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、汚染性の問題を考慮して、高い凝集力を発現させるため、アクリル系粘着剤ポリマー表面に架橋基点となるカルボン酸を突出させることにより、効率的に架橋反応が進行すること注目し、鋭意検討した結果、アクリル系粘着剤ポリマーを乳化重合で重合するにおいて、特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー単位(A)、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)、及び特定構造の(メタ)アクリル酸誘導体カルボン酸(C)をモノマーとして含有させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到った。
すなわち、本発明は、
(1) 基材フィルムの片表面に粘着剤層が設けられた半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムであって、粘着剤層が、モノマー全量中、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)を10重量%以上98量%以下と、官能基を有するモノマー(B)を1重量%以上40重量%以下と、一般式(1)〔化1〕で表される架橋剤と反応し得る(メタ)アクリル酸誘導体カルボン酸(C)を1重量%以上20重量%以下含有してなるモノマー組成物を乳化重合により調製したアクリル系ポリマー、
【0013】
【化2】
Figure 0004309671
【0014】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表わし、Xはエステル基および/またはエーテル基を含む炭素数4〜9の2価の炭化水素基を表わす)
及び、該アクリル系ポリマー100重量部に対し、1分子中に官能基を2個以上有する架橋剤0.1〜30重量部を含む粘着剤からなり、該粘着剤層の0〜200℃における貯蔵弾性率が1×103Pa以上、1×105Pa以下、厚みが3〜100μmであることを特徴とする半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム。
(2) 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)が、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることを特徴とする(1)記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
(3) 前記官能基を有するモノマー単位(B)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、及びメタクリルアミドから選ばれた少なくとも1種のモノマーであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
(4) アクリル系ポリマーが前記(A)を85重量%以上99重量%以下、前記(B)を1重量%以上10重量%以下、前記(C)を2重量%以上10重量%以下含有したモノマー組成物を乳化重合により調整したアクリル系ポリマーであることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
(5) 基材フィルムの厚みが10〜500μmである(1)〜(4)いずれかに記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
(6) (1)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを用いる半導体ウェハ裏面研削方法であって、半導体ウェハの回路形成表面に前記半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを貼着して、半導体ウェハの裏面を研削し、研削終了後に該粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウェハ裏面研削方法。
に関する。
本発明に係る半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムの第1の特徴は、上記一般式(1)で表されるアクリル酸誘導体カルボン酸をモノマーとして特定量含有させたアクリル系ポリマーを用いる点、及び該ポリマーが乳化共重合で調製されたものである点、にある。また、第2の特徴は、粘着剤層の0〜200℃における貯蔵弾性率が1×103Pa以上、1×105Pa以下の範囲内にある点にある。
【0015】
かかる特徴を有する半導体ウェハ裏面研削用粘着テープは、半導体ウェハの裏面を研削するに際し、ウェハ表面と粘着剤層との密着性が向上し、裏面研削工程において水及び研削屑が浸入することに起因するウェハの破損及びウェハ表面の汚染が起こらない。また、適度の粘着力を有するので、ウェハ裏面の研削には剥離せず、粘着フィルムをウェハから剥離する際にはウェハの破損が起こらない。さらに、粘着フィルムをウェハから剥離した後に糊残り等による汚染が生じないので、半導体ウェハの表面を汚染することがない。
【0016】
尚、本発明における粘着剤層の0〜200℃における貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載した方法により測定した値を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、基材フィルムの片表面に特定の組成の粘着剤により粘着剤層が形成された半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム、及び該粘着フィルムを使用する半導体ウェハ裏面研削方法である。
【0018】
本発明の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムは、基材フィルムまたは剥離フィルムの片表面に、アクリル系粘着剤ポリマー、架橋剤、その他必要に応じて他の添加剤を含む溶液またはエマルション液(以下、これらを総称して粘着剤塗布液という)を塗布、乾燥して粘着剤層を形成することにより製造される。
【0019】
粘着剤塗布液を基材フィルムの片表面に塗布して粘着剤層を形成する場合は、環境に起因する汚染等から保護するために、塗布した粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。他方、剥離フィルムの片表面に粘着剤塗布液を塗布して粘着剤層を形成する場合は、該粘着剤層を基材フィルムへ転写する方法が採られる。基材フィルム及び剥離フィルムのいずれの片表面に粘着剤塗布液を塗布するかは、基材フィルム及び剥離フィルムの耐熱性、半導体ウェハ表面の汚染性を考慮して決める。例えば、剥離フィルムの耐熱性が基材フィルムのそれより優れている場合は、剥離フィルムの表面に粘着剤層を設けた後、基材フィルムへ転写することが好ましい。耐熱性が同等または基材フィルムが優れている場合は、基材フィルムの表面に粘着剤層を設け、その表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0020】
しかし、半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムは、剥離フィルムを剥離した時に露出する粘着剤層の表面を介して半導体ウェハ表面に貼着されることを考慮し、粘着剤層による半導体ウェハ表面の汚染防止を図るためには、耐熱性の良好な剥離フィルムを使用し、その表面に粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、これを基材フィルムへ転写する方法の方が好ましい。本発明の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムは、通常、粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着した状態で保存され、使用の際にそれを剥離する。
【0021】
本発明に用いる基材フィルムとしては、合成樹脂をフィルム状に成型加工したフィルムを用いる。基材フィルムは単層体であっても、また、積層体であってもよい。基材フィルムの厚みは10〜500μmが好ましい。より好ましくは70〜500μmである。基材フィルムの原料樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂が挙げられる。
【0022】
これらの中で、裏面研削中のウェハの保護性能を考慮すれば、ASTM−D−2240−86、またはJIS Kー7215−1986に規定されるショアーD型硬度が40以下である原料樹脂が特に好ましい。これらの樹脂をフィルム状に成型加工する際には、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤、可塑剤等を添加してもよい。基材フィルムを成型加工する際に安定剤等の各種添加剤を添加した場合、添加剤が粘着剤層に移行して、粘着剤の特性を変化させたり、ウェハ表面を汚染することがある。このような場合には、基材フィルムと粘着剤層の間にバリヤー層を設けることが好ましい。
【0023】
また、半導体ウェハの裏面を研削した後に施されるエッチング液によるエッチング処理の際にも引き続き半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムを用いて半導体ウェハの表面を保護する場合には、耐薬品性に優れた基材フィルムを使用することが好ましい。例えば、基材フィルムの粘着剤層を設ける側と反対側の面にポリプロピレン等の耐薬品性フィルムを積層する等である。基材フィルムと粘着剤層との接着力を向上させるため、基材フィルムの粘着剤層を設ける面には、予め、コロナ放電処理または化学処理を施すことが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層の間に下塗剤を用いてもよい。本発明に使用する基材フィルムは、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法等、公知の技術により製造されるものの中から、生産性及び得られるフィルムの厚み精度等を考慮して選択することができる。
【0024】
本発明に使用する剥離フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。必要に応じてその表面にシリコーン処理等が施されたものが好ましい。剥離フィルムの厚みは、通常10〜200μmである。好ましくは30〜100μmである。
【0025】
本発明に用いる粘着剤塗布液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)、及び上記一般式(1)で表されるカルボン酸(C)をそれぞれ特定量含むモノマー組成物を乳化重合して得られる共重合体のアクリル系粘着剤ポリマー、並びに、凝集力を上げたり粘着力を調整するための、官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤を含有してなる溶液またはエマルション液からなる。溶液で使用する場合は、乳化重合で得られたエマルション液からアクリル系粘着剤ポリマーを塩析等で分離してから溶剤等で再溶解して使用するが、本発明に用いるアクリル系粘着剤ポリマーは分子量が充分に大きく、溶剤への溶解性が低く、若しくは溶解しない場合が多く、コスト的な観点から鑑みても、エマルション液のまま使用することが好ましい。
【0026】
本発明に用いるアクリル系粘着剤ポリマーは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれらの混合物を主モノマー〔以下、モノマー(A)〕と官能基を有するモノマー(B)と架橋剤と反応し得る(メタ)アクリル酸誘導体カルボン酸(C)を含有するモノマー組成物を共重合して得られる。
【0027】
モノマー(A)としては、炭素数1〜12程度のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル〔以下、これらの総称して(メタ)アクリル酸アルキルエステルという〕が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが挙げられる。これらは単独で使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。モノマー(A)の使用量は粘着剤ポリマーの原料である重合性モノマーの総量中、通常、10〜98重量%の範囲で含ませることが好ましい。更に好ましくは85〜95重量%である。モノマー(A)の使用量をかかる範囲とすることにより、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)を10〜98重量%、好ましくは85〜95重量%含むポリマーが得られる。
【0028】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。これらの一種を上記主モノマー(A)と共重合させてもよいし、また2種以上を共重合させてもよい。架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(B)の使用量は、粘着剤ポリマーの原料である重合性モノマー総量中に、通常、1〜40重量%の範囲で含まれていることが好ましい。更に好ましくは1〜10重量%である。而して、モノマー組成とほぼ等しい組成の構成単位(B)を有するポリマーが得られる。
【0029】
本発明においては、高い凝集力と密着性を発現させる方策として、重合後生成するポリマー表面の架橋基点に着目し、重合溶液中に(メタ)アクリル酸誘導体カルボン酸を投入し、架橋点をポリマー表面に突出させることにより、官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤と反応させる能力を付与する。これにより高い凝集力を発現し、且つ投入したカルボン酸により貯蔵弾性率を調整し、高い密着性を発現させることができる。反応性、着色及び入手のし易さ等の観点から、上記一般式(1)で表されるカルボン酸(C)が本発明の目的に適している。
【0030】
アクリル系粘着剤ポリマーに特定のカルボン酸(C)を共重合することによって、粘着剤層とウェハ表面との密着性が向上し、ウェハ裏面を研削する際のウェハ表面と粘着剤層の間への水浸入を防止する(以下、耐水性)効果があり、しかも、粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際のウェハの破損も起こらず、粘着剤層に起因するウェハ表面(特にハイバンプ電極を有するウェハの場合には該ハイバンプ電極の周辺)への汚染も生じない粘着剤が得られる。
一般式(1)で表されるカルボン酸(C)の使用量は、乳化重合の際の安定性、及び弾性率に影響を及ぼし、使用量が多すぎると重合安定性が低下し、且つ弾性率が増大する傾向にある。
かかる観点から、一般式(1)で表されるカルボン酸の使用量は、モノマー原料中に1重量%以上20重量%以下、好ましくは2重量%以上10重量%以下である。
【0031】
一般式(1)中、Rは水素またはアルキル基であり、アルキル基としてメチル基等が挙げられる。Xは、エステル基および/またはエーテル基を含有してなる炭素数4〜9の2価の炭化水素である。 このようなカルボン酸を例示すると2―メタクロイルオキシエチルサクシネート(R=CH、X=−CHCH−OOC−CHCH−)、2―アクロイルオキシエチルサクシネート(R=H、X=−CHCH−OOC−CHCH−)、3―メタクロイルオキシプロピルサクシネート(R=CH、X=−CHCHCH−OOC−CHCH2−)、3―アクロイルオキシプロピルサクシネート(R=H、X=−CHCHCH−OOC−CHCH−)、2―メタクロイルオキシエチルマレート(R=CH、X=−CHCH−OOC−CH=CH−)、2―アクロイルオキシエチルマレート(R=H、X=−CHCH−OOC−CH=CH−)、3―メタクロイルオキシプロピルマレート(R=CH、X=−CHCHCH−OOC−CH=CH−)、3―アクロイルオキシプロピルマレート(R=H、X=−CHCHCH−OOC−CH=CH−)、2―メタクロイルオキシエチルフタレート(R=CH、X=−CHCH−OOC−C−)、2―アクロイルオキシエチルフタレート(R=H、X=−CHCH−OOC−C−)、3―メタクロイルオキシプロピルフタレート(R=CH、X=−CHCHCH−OOC−C−)、2―アクロイルオキシプロピルフタレート(R=H、X=−CHCHCH−OOC−C−)等が挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、または2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明においては、その他に界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)を共重合してもよい。重合性界面活性剤は、主モノマー及びコモノマーと共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。重合性界面活性剤を用いて乳化重合したアクリル系粘着剤ポリマーを用いた場合には、通常界面活性剤によるウェハ表面に対する汚染が生じない。また、粘着剤層に起因する僅かな汚染が生じた場合においても、ウェハ表面を水洗することにより容易に除去することが可能となる。
【0033】
このような重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等〕、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS−10、同HS−20等〕、及び分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系〔花王(株)製;商品名:ラテムルS−120A、同S−180A等〕等が挙げられる。更に必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーを共重合してもよい。界面活性剤の使用量は、モノマー原料100重量部に対し、0.1重量部以上5重量部以下、好ましくは0.2重量部以上2重量部以下である。
【0034】
アクリル系粘着剤ポリマーの重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。粘着剤の製造コスト、モノマーの官能基の影響及び半導体ウェハ表面へのイオンの影響等を等慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0035】
アクリル系粘着剤ポリマーは乳化重合法により重合されるので、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。半導体ウェハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が更に好ましい。4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0036】
本発明に用いる架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤は、アクリル系粘着剤ポリマーが有する官能基と反応させ、粘着力及び凝集力を調整するために用いる。架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上に対して併用してもよい。
【0037】
架橋剤の含有量は、通常架橋剤中の官能基数がアクリル系粘着剤ポリマー中の官能基数よりも多くならない程度の範囲で含有する。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。好ましい含有量は、アクリル系粘着剤ポリマー100重量部に対し、架橋剤0.1〜30重量部、更に好ましくは0.1〜15重量部である。含有量が少ない場合、粘着剤層の凝集力が不十分となり、ウェハ表面(特にハイバンプ電極を有するウェハの場合には、該ハイバンプ電極の周辺)に粘着剤層に起因する糊残りを生じ易くなったり、粘着力が本発明の範囲を外れて高くなり、粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に自動剥がし機で剥離トラブルが発生したり、ウェハを完全に破損したりする場合がある。含有量が多い場合、粘着剤層とウェハ表面との密着力が弱くなり、研削中に水や研削屑が浸入してウェハを破損したり、研削屑によるウェハ表面の汚染が生じたりすることがある。
【0038】
本発明に用いる粘着剤塗布液には、上記の特定の2官能モノマーを共重合したアクリル系粘着剤ポリマー、架橋剤の他に粘着特性を調整するためにロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を、本発明の目的に影響しない程度に適宜含有してもよい。また、塗布液がエマルション液である場合は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜添加してよい。造膜助剤として使用されるジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びその誘導体は、粘着剤層中に多量に含有した場合、洗浄が不可能となる程度のウェハ表面の汚染を招くことがあることを考慮すれば、粘着剤塗工後の乾燥時の温度で揮発するものを使用し、粘着剤層中への残存量を低くすることが好ましい。
粘着剤層の厚みは3〜100μmが好ましい。より好ましい厚みは5〜80μmである。粘着剤層の厚みが薄くなると、耐水性が劣り、裏面研削中にウェハ表面と粘着剤層との間に水が浸入して、ウェハを破損したり、ウェハ表面に研削屑による汚染が生じたりする傾向にある。粘着剤層の厚みが厚くなると、粘着フィルムの作成が困難となったり、生産性に影響を与え、製造コストの増加につながることがある。
【0039】
本発明における貯蔵弾性率は、制御された温度下にある対象物に、外部から引張り、曲げ、ねじり等の周期的な変形(歪み)を与え、生じた応答(応力)を、動的粘弾性測定装置を用いて測定されるものである。対象物に周期的な変形を与える方法としては、例えば、対象物を2枚の平行円盤で挟さんで該円盤を回転させる方法、対象物中に測定針を挿入して測定針を振動させる方法などが挙げられる。動的粘弾性測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製、形式:RMS−800、オリエンテック社製、形式:Rheovibron、DDV−II−EP、セイコーインスツルメンツ社製、形式:EXSTAR6000、TMA/SSなどが挙げられる。
【0040】
上記粘着剤ポリマー100重量部、及び、1分子中に2個以上の架橋反応性官能基を有する架橋剤0.1〜30重量部を含む粘着剤層の0〜200℃における貯蔵弾性率を1×103Pa以上、1×105Pa以下の範囲になるように架橋剤を調整することが好ましい。
粘着剤層の貯蔵弾性率が低くなると、粘着フィルムを剥離した後のウエハ表面に汚染を生じることがある。粘着剤層の貯蔵弾性率が高くなると、ウエハ表面に対する密着性が低下し、研削水や薬液が浸入することがある。
本発明における半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムの粘着力は、ウェハ表面の研削条件、ウェハの直径、研削後のウェハの厚み等を勘案して適宜調整できるが、粘着力が低すぎるとウェハ表面への粘着フィルムの貼着が困難となったり、裏面研削中にウェハ表面と粘着剤層との間に水が浸入し、ウェハが破損したり、ウェハ表面に研削屑等による汚染が生じたりする傾向にある。また、粘着力が高すぎると、裏面研削後に粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に、自動剥がし機で剥離トラブルが発生する等、剥離作業性が低下したり、ウェハを破損したりすることがある。通常、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して5〜500g/25mm、好ましくは10〜200g/25mmである。
【0041】
基材フィルムまたは剥離フィルムの片表面に粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えばロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において15秒〜5分間乾燥する。
架橋剤と粘着剤ポリマーとの架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムを40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
本発明における半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムの製造方法は、上記の通りであるが、半導体ウェハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、剥離フィルム、粘着剤主剤等全ての原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調製、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の半導体ウェハの裏面研削方法について説明する。本発明の半導体ウェハの裏面研削方法は、半導体ウェハの裏面を研削する際に、上記方法により製造された半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムを用いることに特徴がある。
【0043】
その詳細は、先ず半導体ウェハの裏面研削用粘着フィルムの粘着剤層から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層表面を露出させ、その粘着剤層を介して、半導体ウェハの集積回路が組み込まれた側の面(表面)に貼着する。次いで、研削機のチャックテーブル等に粘着フィルムの基材フィルム層を介して半導体ウェハを固定し、半導体ウェハの裏面(集積回路非形成面)を研削する。研削が終了した後、粘着フィルムは剥離される。ウェハの裏面の研削が完了した後、粘着フィルムを剥離する前にケミカルエッチング工程を経ることもある。また、必要に応じて粘着フィルム剥離後に、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0044】
この様な裏面研削操作において、半導体ウェハは、研削前の厚みが、通常500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常100〜600μm程度まで研削される。必要に応じて、100μmより薄く削ることもある。研削する前の半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハの直径、種類等により適宜決められ、研削後のウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。
【0045】
粘着フィルムを半導体ウェハに貼着する操作は、人手により行われる場合もあるが、一般に、ロール状の粘着フィルムを取り付けた自動貼り機と称される装置によって行われる。このような自動貼り機として、例えばタカトリ(株)製、形式:ATM−1000B、同ATM−1100、帝国精機(株)製、形式:STLシリーズ等がある。
【0046】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ研削は、水を半導体ウェハと砥石にかけて冷却しながら行われる。裏面研削終了後、必要に応じてケミカルエッチングが行われる。ケミカルエッチングは、弗化水素酸、硝酸、硫酸、酢酸等の単独若しくは混合液からなる酸性水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液からなる群から選ばれたエッチング液に、粘着フィルムを貼着した状態で半導体ウェハを浸漬する等の方法により行われる。該エッチングは、半導体ウェハ裏面に生じた歪の除去、ウェハのさらなる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液は、上記の目的に応じて適宜選択される。
裏面研削、ケミカルエッチング終了後、粘着フィルムはウェハ表面から剥離される。この一連の操作は、人手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置により行われる。このような自動剥がし機としては、タカトリ(株)製、形式:ATRM−2000B、同ATRM−2100、帝国精機(株)製、形式:STPシリーズ等がある。
【0047】
粘着フィルムを剥離した後のウェハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、ウェハ表面の汚染状況により適宜選択される。
本発明の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム及びそれを用いる半導体ウェハの裏面研削方法が適用できる半導体ウェハとして、シリコンウェハに限らず、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等のウェハが挙げられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。以下に示す全ての実施例及び比較例において、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境において粘着剤塗布液の調製及び塗布、並びに半導体シリコンウェハの裏面研削等を実施した。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例に示した各種特性値は下記の方法で測定した。
(1)粘着力(g/25mm)
下記に規定した条件以外は、全てJIS Z−0237−1991に準じて測定する。23℃の雰囲気下において、実施例または比較例で得られた粘着フィルムをその粘着剤層を介して、5cm×20cmのSUS304−BA板(JISG−4305−1991規定)の表面に貼着し、60分放置する。試料の一端を挟持し、剥離角度180度、剥離速度300mm/min.でSUS304−BA板の表面から試料を剥離する際の応力を測定し、g/25mmの粘着力に換算する。
(2)貯蔵弾性率(Pa)
半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムの粘着剤層の部分を厚さ1mmになるように積層し、直径8mmの粘弾性測定用試料を作製する。動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RMS−800)を用いて、150℃及び200℃において貯蔵弾性率を測定する。測定周波数は1Hzとし、歪みは0.1〜3%とする。
(3)半導体ウェハの破損(枚数)
半導体ウェハ裏面研削工程、ダイボンディング用接着フィルム貼着工程、及び表面保護用粘着フィルム剥離工程における半導体ウェハの破損枚数を示す。
(4)汚染性評価
半導体シリコンウェハ(直径:8インチ、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の表面に試料用の表面保護用粘着フィルムをその粘着剤層を介して、半導体シリコンウェハの全表面に貼着し、半導体ウェハの裏面加工工程、ダイボンディング用接着フィルム貼着工程を経た後、粘着フィルムを剥離(日東精機(株)製、型式:HR8500II)した後の半導体ウェハの表面をレーザーフォーカス顕微鏡(KEYENCE製、形式:VF−7510、VF−7500、VP−ED100)を用いて250倍率で観察する。評価基準は、次の通り。○:糊残り無し。×:糊残り発生。
(5) 密着性(%)
集積回路が組み込まれた半導体シリコンウェハ(直径:6インチ、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の表面に試料用の粘着フィルムをその粘着剤層を介して、半導体シリコンウェハの全表面に貼着した状態で、レーザーフォーカス顕微鏡(KEYENCE製、形式:VF−7510、VF−7500、VP−ED100)を用いて250倍率で観察し、写真撮影する。密着性評価として、粘着剤のスクライブラインへの貼着面積とスクライブラインの全面積との比率をもって密着性の指標とし、粘着剤のスクライブラインへの貼着割合が70%以上を高密着性とする。
【0049】
実施例1
<基材フィルムの作製>
ショアーD型硬度が35のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をT−ダイ押出機を用いて、厚み200μmのフィルムに成形した。この際、粘着剤層を塗布する側にコロナ処理を施した。得られたフィルムの厚みバラツキは±1.5%以内であった。
<粘着剤主剤の重合>
重合反応機に脱イオン水150重量部、重合開始剤として4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド〔大塚化学(株)製、商品名:ACVA〕を0.625重量部、モノマー(A)としてアクリル酸−2−エチルヘキシル94重量部、モノマー(B)としてメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量部、及びアクリルアミド1重量部、モノマー(C)として2―メタクロイルオキシエチルサクシネート〔R=CH、X=−CHCH−OOC−CHCH−〕2重量部、水溶性コモノマーとしてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数の平均値:約20)の硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕0.75重量部を装入し、攪拌下で70〜72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これを9重量%アンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分42.5重量%のアクリル系粘着剤ポリマー(粘着剤主剤)とした。
<粘着剤塗布液の調製>
得られた粘着剤主剤100重量部(固形分)を採取し、さらに9重量%アンモニア水を加えてpH9.5に調整した。次いで、エポキシ系架橋剤〔ナガセ化成工業(株)製、商品名:デナコールEx−614〕0.5重量部を添加して粘着剤塗布液を得た。
<粘着フィルムの作製>
ロールコーターを用いて、上記粘着剤塗布液をポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み40μmの粘着剤層を設けた。これに前述のエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(基材フィルム)のコロナ処理面を貼り合わせ押圧して、粘着剤層を転写させた。転写後、60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを製造した。貯蔵弾性率の測定結果を〔表1〕に示す。また、汚染性評価結果等を表1にまとめた。
【0050】
実施例2
実施例1の粘着剤主剤の重合において、モノマー(A)の内アクリル酸−2−エチルヘキシルを86重量部とし、モノマー(C)として2―メタクロイルオキシエチルサクシネート〔R=CH、X=−CHCH−OOC−CHCH−〕を10重量部とした以外は、コモノマー類と開始剤などの重合条件は全て実施例1と同一にて粘着剤主剤の重合を行った後、実施例1と同様の方法において粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの各種特性及び得られたチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様にして評価した。測定結果を〔表1〕に示す。
【0051】
実施例3
実施例1の粘着剤主剤の重合において、モノマー(C)として2―アクロイルオキシエチルサクシネート〔R=CH、X=−CHCH−OOC−CHCH−〕を2重量部とした以外は、コモノマー類と開始剤などの重合条件は全て実施例1と同一にて粘着剤主剤の重合を行った後、実施例1と同様の方法において粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの各種特性及び得られたチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様にして評価した。測定結果を〔表1〕に示す。
【0052】
実施例4
実施例1の粘着剤主剤の重合において、モノマー(A)をアクリル酸−2−エチルヘキシル64重量部、アクリル酸−n−ブチル18重量部、及びメタクリル酸メチル12重量部、モノマー(B)としてメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量部、及びアクリルアミド1重量部とした以外は、コモノマー類と開始剤などの重合条件は全て実施例1と同一にて粘着剤主剤の重合を行った後、実施例1と同様の方法において粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの各種特性及び得られたチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様にして評価した。測定および評価結果を〔表1〕に示す。
【0053】
実施例5
実施例1と同一の粘着剤主剤に対して、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPz−33〕0.8重量部添加して粘着剤塗布液を得た。その後、実施例1と同一の方法にて粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの各種特性及び得られたチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様にして評価した。測定および評価結果を〔表1〕に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0004309671
【0055】
比較例1
実施例1において、モノマー(A)をアクリル酸−2−エチルヘキシル96重量部とし、モノマー(C)を使用しなかった以外は、実施例1と同一の方法にて粘着剤主剤の重合を行った後、実施例1と同様の方法において粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの粘着特性及びチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様の手法を用いて評価した。測定および評価結果を〔表2〕に示す。
【0056】
比較例2
実施例1と同一の粘着剤主剤に対して、架橋剤を使用しなかった以外は、実施例1と同一の方法にて粘着剤層の膜厚40μmの半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを作製した。得られた粘着フィルムの各種特性及び得られたチップ表面の汚染状況等を実施例1と同様にして評価した。測定および評価結果を〔表2〕に示す。
【0057】
比較例3
トルエン50重量部及び酢酸エチル65重量部の混合溶媒中、重合開始剤〔日本油脂(株)製 、ベンゾイルパーオキサイド系ナイパーBMT−K40〕0.7重量部の存在下において、実施例1と同一の混合モノマーを用いて溶液重合を行ったところ、反応中にゲル化してしまい粘着剤主剤を得ることはできなかった。結果を〔表2〕に示す。
【0058】
【表2】
Figure 0004309671
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体ウェハの裏面を研削するに際し、裏面の研削応力に起因する研削中のウェハ破損が起こらないばかりでなく、ウェハ表面と粘着剤層との間に水及び研削屑が浸入することに起因するウェハの破損及びウェハ表面の汚染も起こらない。粘着フィルムをウェハから剥離する際のウェハの破損が起こらず、光照射装置等の設備を新たに導入する必要もない。さらに、粘着フィルムをウェハから剥離した後に糊残りがないので、半導体ウェハの表面を汚染することがない。

Claims (6)

  1. 基材フィルムの片表面に粘着剤層が設けられた半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムであって、
    前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤ポリマー、および前記アクリル系粘着剤ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部の、1分子中に官能基を2個以上有する架橋剤を含む粘着剤からなり、
    前記アクリル系粘着剤ポリマーは、モノマー全量中、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー単位(A)を10重量%以上98量%以下と、前記架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)を1重量%以上40重量%以下と、前記架橋剤と反応し得る、一般式(1)〔化1〕で表される(メタ)アクリル酸誘導体カルボン酸(C)を1重量%以上20重量%以下含有してなるモノマー組成物を乳化重合により調製したものであり
    Figure 0004309671
    (一般式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基を表わし、Xはエステル基および/またはエーテル基を含む炭素数4〜9の2価の炭化水素基を表わす)、
    前記粘着剤層の0〜200℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以上、1×10Pa以下、厚みが3〜100μmであることを特徴とする半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム。
  2. 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー単位(A)が、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位であることを特徴とする請求項1記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
  3. 前記架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、及びメタクリルアミドから選ばれた少なくとも1種のモノマー単位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
  4. アクリル系粘着剤ポリマーがモノマー全量中、前記(A)を85重量%以上98重量%以下、前記(B)を1重量%以上10重量%以下、前記(C)を2重量%以上10重量%以下含有したモノマー組成物を乳化重合により調整したアクリル系粘着剤ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
  5. 基材フィルムの厚みが10〜500μmである請求項1〜4いずれかに記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを用いる半導体ウェハ裏面研削方法であって、半導体ウェハの回路形成表面に前記半導体ウェハ裏面研削用粘着フィルムを貼着して、半導体ウェハの裏面を研削し、研削終了後に該粘着フィルムを剥離することを特徴とする半導体ウェハ裏面研削方法。
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