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JP4373691B2 - 電子部品焼成用耐熱構造体及びその製造方法 - Google Patents

電子部品焼成用耐熱構造体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば焼成炉等の炉壁に用いられる耐熱構造体、その製造方法及びコーティング材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
耐熱構造体は、無機繊維及び無機バインダー、無機粒子及び無機バインダー等からなり、結合された無機繊維間等に空隙を有する構造のものである。耐熱構造体は、耐熱性、断熱性等の性質に優れるため種々の用途に用いられており、例えば、アルミノシリケート質繊維からなる耐熱構造体は、耐熱性、断熱性が高いことに加え熱容量が小さいため、焼成炉の炉壁等に付設する断熱材として用いられている。
【0003】
ところで、焼成炉が特に半導体やディスプレイ等の電子部品の焼成に用いられる場合は、炉内の雰囲気がクリーンであることが求められることがある。このため、炉壁等の炉内部材には発塵の少ないことが要求される。しかし、上記アルミノシリケート質繊維からなる耐熱構造体は発塵が比較的多いため、電子部品用の炉壁材としては性能が十分でない。
【0004】
これに対し、特公昭57−13514号公報には、耐火耐食性物質を有する成形体の表面に、ロウ石微粉末、水ガラス及びガラス繊維とを含む酸化防止被覆層を形成したタンディシュ内張材が開示されており、該内張材によれば、溶鋼注入前のタンディシュの予熱の際にも酸化せず、耐侵食抵抗が大きい等の効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】
特公昭57−13514号公報(第1頁〜第3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記内張材を焼成炉壁材のように連続して1000℃以上で使用する耐熱構造体として用いると、酸化防止被覆層にクラックが入ったり、該層が剥離したりするという問題がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、1000℃以上で連続使用可能な耐熱性及び断熱性を有し、且つ、低発塵性の耐熱構造体、その製造方法及び該耐熱構造体の製造に用いるコーティング材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定性質を有する耐熱基材の表面に、結晶化ガラス被覆層を形成すると、耐熱構造体が1000℃以上で連続使用可能な耐熱性及び断熱性を有し、且つ、低発塵性であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、無機繊維または無機粒子を無機バインダーで結合させてなる、1000℃での熱伝導率が0.5W/m・K以下、空隙率が50%以上であり、表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の表面に、
該耐熱基材の熱膨張係数に対する熱膨張係数が−25%〜+25%の範囲にあり、厚さが30μm〜1mmである結晶化ガラス被覆層が形成されてなることを特徴とする電子部品焼成用耐熱構造体
を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラス粉末及びバインダーを含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を乾燥する工程を含むことを特徴とする電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を800〜1300℃で焼成する工程を含むことを特徴とする電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラスを生成し得る金属酸化物組成比のガラス生成原料粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を1350〜1500℃で焼成する工程を含むことを特徴とする電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法を提供するものである。
【0013】
このように、本発明の耐熱構造体は、結晶化ガラス粉末及びバインダーを含むことを特徴とするコーティング材により好適に提供することができる
【0014】
また、本発明の耐熱構造体は、結晶性ガラス粉末を含むことを特徴とするコーティング材により好適に提供することができる
【0015】
また、本発明の耐熱構造体は、結晶化ガラスを生成し得る金属酸化物組成比のガラス生成原料粉末を含むことを特徴とするコーティング材により好適に提供することができる
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係る耐熱構造体は、耐熱基材の表面に、結晶化ガラス被覆層が形成されるものである。本発明で用いられる耐熱基材は、1000℃での熱伝導率が、通常0.5W/m・K以下、好ましくは0.3W/m・K以下である。熱伝導率が該範囲内にあると、耐熱構造体を焼成炉の炉壁材等の断熱材用途に用いることができるため好ましい。
【0017】
耐熱基材は、無機繊維、無機粒子又はこれら両方を無機バインダー等のバインダーで結合させて成形し、該成形体を乾燥させることにより得ることができる。
【0018】
無機繊維及び無機バインダーを用いて耐熱基材を作製する場合、用いられる無機繊維としては、例えば、アルミノシリケート繊維、アルミナ繊維等が挙げられる。このうち、アルミノシリケート繊維は、低コストのため好ましい。無機繊維は、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
また、この場合に用いられる無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が挙げられる。無機バインダーは、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
無機粒子及び無機バインダーを用いて耐熱基材を作製する場合、用いられる無機粒子としては、例えば、CaO粉末、SiO粉末、ワラストナイト粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、ジルコニア粉末等が挙げられる。このうち、アルミナ粉末は、高耐熱性であり、また低コストであるため好ましい。無機粒子は、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、この場合に用いられる無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が挙げられる。無機バインダーは、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
無機繊維、無機粒子及び無機バインダーを用いて耐熱基材を作製する場合、用いられる無機繊維及び無機粒子としては、例えば、上記無機繊維及び無機粒子が挙げられる。また、この場合に用いられる無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が挙げられる。無機バインダーは、上記のうち1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
耐熱基材は、例えば、上記無機繊維、無機粒子又はこれら両方を無機バインダー等のバインダーを含むスラリーを成形し、該成形体を乾燥させることにより得られる。成形方法としては、例えば、吸引脱水成形方法、半乾式成形方法等が挙げられる。乾燥方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0024】
また、本発明では、必要により、成形体の少なくとも表面を無機バインダーに浸漬し、乾燥させる硬化処理を行うと、少なくとも表面に硬化処理層が形成された耐熱基材が得られる。該耐熱基材は、少なくとも表面が硬化されているため、結晶化ガラス被覆層の厚さが薄くても、結晶化ガラス被覆層が外部衝撃やハンドリングに充分耐え得る強度を有するため好ましい。硬化処理に用いられる無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等が挙げられる。
【0025】
耐熱基材は、空隙率が通常50%以上、好ましくは70〜98%、さらに好ましくは80〜95%である。ここで、空隙率とは耐熱基材中の空隙の全体積を耐熱基材の嵩体積で除した値をいう。耐熱基材の空隙率が上記範囲内にあると、熱容量が小さく、熱伝導率及び熱膨張率が低く、軽量で熱衝撃に強い耐熱構造体が得られる。さらに、耐熱基材と結晶化ガラス被覆層との間に熱膨張率の差が多少あり熱膨張の際に応力が生じても該応力が耐熱基材の空隙に吸収されるため、使用中に結晶化ガラス被覆層にクラックが発生したり、結晶化ガラス被覆層が耐熱基材から剥がれたりすることが起こり難くなる。
【0026】
耐熱基材は、嵩密度が、通常1.5kg/m以下、好ましくは0.1〜1.2kg/m、さらに好ましくは0.15〜0.7kg/mである。嵩密度が1.5kg/mを超えると、熱伝導率及び熱容量が大きくなるため断熱材として用いる場合に好ましくない。
【0027】
耐熱基材は、耐熱基材を1200℃に昇温した前後における寸法収縮率が、通常5%以下、好ましくは3%以下である。寸法収縮率が5%を超えると、炉壁等に施工した場合に耐熱基材同士の間に隙間が生じたり変形したりし易いため好ましくない。
【0028】
耐熱基材は、熱膨張係数が、通常10×10−6/℃以下、好ましくは8×10−6/℃以下である。熱膨張係数が10×10−6/℃を超えると、熱衝撃に弱くなるため好ましくない。熱膨張係数は、JIS−R1618「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」又はこれに準じた測定方法で測定することができる。
【0029】
また、耐熱基材は、必要により結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を形成する前に、予め焼成してもよい。この場合、焼成温度は通常600〜1300℃、好ましくは1000〜1250℃である。このように耐熱基材を予め焼成しておくと、後述の結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層の形成の際に焼成することがあっても耐熱基材自体の焼成収縮が少なくて済むことから、耐熱構造体に割れが生じ難く、また反りが生じ難いため好ましい。
【0030】
耐熱基材の表面には、結晶化ガラス被覆層が形成される。本発明において結晶化ガラス被覆層とは、実質的に結晶化ガラスからなり、且つ、耐熱基材の表面を被覆する層を意味する。なお、結晶化ガラス被覆層と耐熱基材との接着のために耐熱基材の内部に食い込んだ結晶化ガラス部分は、後述の結晶化ガラス含浸層が形成されていない場合は結晶化ガラス被覆層に含める。
【0031】
本発明において結晶化ガラスとは、ガラスを再結晶化させて得られる材料をいう。結晶化ガラスは、例えば、非晶質であるガラスに熱処理や紫外線照射処理等を行うことによりガラス内部から結晶を析出させたり、非晶質であるガラスとセラミック粉末とを反応させて結晶を析出させたり、金属酸化物等の原料を結晶化ガラスを生成し得る組成比で混合して熱処理したりする方法により得られる。結晶化ガラスは、通常の非晶質ガラスに比べて、強固な結合を有し、熱膨張率が低く、熱衝撃に強い性質を有する。また、結晶化ガラスは、ホウ素化合物又は鉛化合物を含まないものであるであると、耐熱構造体を1300℃程度の高温で用いても揮発する成分がなく、被焼成物が発塵で汚染されないため好ましい。
【0032】
本発明に用いられる結晶化ガラスの具体的な組成としては、例えば、LiO−SiO−Al系結晶化ガラス、NaO−Al−SiO系結晶化ガラス、NaO−CaO−MgO−SiO系結晶化ガラス、MgO−Al−SiO系結晶化ガラス、ZnO−SiO系結晶化ガラス、Al−SiO−CaO系結晶化ガラス、MgO−SiO系結晶化ガラスが挙げられる。
【0033】
このうち、MgO−Al−SiO系結晶化ガラスであるコーディライト結晶化ガラス(2MgO−2Al−5SiO)及びZnO−SiO系結晶化ガラスであるウィレマイト結晶化ガラス(2ZnO−SiO)は、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層が強度及び耐熱性に優れるため好ましい。
【0034】
結晶化ガラスの生成は、X線回析により各種結晶化ガラスの組成に特有の回析ピークが得られるため、結晶化ガラス被覆層の表面をX線回析すれば容易に判断することができる。
【0035】
結晶化ガラス被覆層は、熱膨張係数を、前記耐熱基材の熱膨張係数に対して、通常−25〜+25%、好ましくは−10〜+10%、さらに好ましくは−5〜+5%の範囲内になるように選ぶと、結晶化ガラス被覆層にクラックが入ったり結晶化ガラス被覆層が剥離したりして発塵することが起こり難いため好ましい。
【0036】
結晶化ガラス被覆層は、厚さが、通常30μm〜1mm、好ましくは50〜600μm、さらに好ましくは100〜400μmである。厚さが30μm未満であると、強度が弱く低発塵の効果が得られ難いため好ましくなく、1mmを超えると乾燥時、熱処理時のクラックが発生し易くなるため好ましくない。ここで、結晶化ガラス被覆層の厚さとは、耐熱基材の表面上に存在する結晶化ガラス層の厚さの平均値を意味する。すなわち、耐熱基材の内部に食い込んだ結晶化ガラス層は、結晶化ガラス被覆層の厚さの計算に含めない。
【0037】
結晶化ガラス被覆層は、耐熱基材の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、耐熱基材の表面の全体に形成されている必要はない。例えば、耐熱基材が略直方体状である場合、結晶化ガラス被覆層は耐熱基材の6面全体に形成されていてもよく、1つの面の一部分のみに形成されるものであってもよい。本発明において、耐熱基材の表面に上記結晶化ガラス被覆層が形成されると、耐熱基材に1000℃以上で連続使用可能な耐熱性及び断熱性並びに優れた低発塵性が付与される。
【0038】
本発明に係る耐熱構造体は、このように結晶化ガラス被覆層が形成されることにより、加熱の際に耐熱基材と結晶化ガラス被覆層との熱膨張又は熱収縮の状態が異なる場合でも、クラックの発生や結晶化ガラス被覆層の剥離が生じ難くなるため、耐熱基材から発生する発塵を抑えることができ、1300℃程度の高温においても使用することができる。
【0039】
本発明に係る耐熱構造体は、必要により、耐熱基材内に、結晶化ガラス被覆層に連続して結晶化ガラス含浸層が形成されていてもよい。結晶化ガラス含浸層が形成されると、結晶化ガラス被覆層のみが形成される場合に比べて、熱膨張率の差による剥がれ等の問題が低減され、耐熱構造体に耐熱性及び断熱性並びに低発塵性がより付与されるため好ましい。本発明において結晶化ガラス含浸層とは、耐熱基材と結晶化ガラスとからなり、耐熱基材中の空隙に結晶化ガラスが食い込んで形成される層を意味する。結晶化ガラス含浸層を形成する結晶化ガラスは、結晶化ガラス被覆層を形成するものと同様のものが用いられる。
【0040】
結晶化ガラス含浸層の厚さは、耐熱基材自体の大きさにより適正な厚さが異なるため特に限定されるものでないが、通常0.01〜40mm、好ましくは0.05〜30mm、さらに好ましくは0.1〜10mmである。厚さが0.01mm未満であると、耐熱基材との接合強度が弱く剥離等のため低発塵の効果が得られ難いため好ましくなく、40mmを超えると表面のコート層が厚くなり割れ等の問題が発生するため好ましくない。ここで、結晶化ガラス含浸層の厚さとは、耐熱基材の内部、すなわち、耐熱基材の表面より内側に存在する結晶化ガラス層の厚さの平均値である。なお、本発明では、必要により耐熱基材の内部全体を結晶化ガラス含浸層で形成したものであってもよい。この場合は、耐熱構造体に穴あけ、切断等の処理を加えても、処理面から粉塵等が発生することを抑制することができる。
【0041】
図1に、本発明に係る耐熱構造体の一例の断面写真を示す。図1において、P−P線は結晶化ガラス被覆層2の略表面を示し、Q−Q線は結晶化ガラス被覆層2と結晶化ガラス含浸層3との略界面を示し、R−R線は結晶化ガラス含浸層3と耐熱基材4との略界面を示す。図1より、耐熱基材4の層は無機繊維及び無機バインダーから形成された3次元骨格構造であって空隙率の高い構造であり、さらに該3次元骨格構造自体に微細な空隙が形成されていることが観察される。また、結晶化ガラス含浸層3は、耐熱基材4の層と同様に比較的空隙率が高い構造を示すが、結晶化ガラスによりコーティングされたため3次元骨格構造に微細な空隙がなくなっていることが観察される。また、結晶化ガラス被覆層2は、結晶化ガラスのみで構成された空隙がなく密な構造であることが観察される。
【0042】
上記耐熱構造体は、例えば、下記の3つの方法により製造することができる。第1の製造方法は、耐熱基材の少なくとも表面に、特定の第1のコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を乾燥する工程を含むものである。第2の製造方法は、耐熱基材の少なくとも表面に、特定の第2のコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を800〜1300℃で焼成する工程を含むものである。第3の製造方法は、耐熱基材の少なくとも表面に、特定の第3のコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を1350〜1500℃で焼成する工程を含むものである。
【0043】
(第1の製造方法)
第1の製造方法について説明する。該方法においては、第1工程として、上記耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラス粉末及びバインダーを含む第1のコーティング材を塗布又は含浸する。
【0044】
第1のコーティング材で用いられる結晶化ガラス粉末とは、上記結晶化ガラスの粉末である。このうち、ガラス生成原料粉末が合成コーディライトであると、1300℃程度の高温で使用しても結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層から揮発する成分がなく、強度及び耐熱性に優れるため好ましい。ここで、合成コーディライトとは、平均粒径0.5〜40μmのコーディライト結晶化ガラスの粉末である。結晶化ガラス粉末は、平均粒径が、通常1〜45μm、好ましくは3〜15μmである。平均粒径が、該範囲内にあるとバインダーとの反応性が良いためため好ましい。結晶化ガラス粉末は、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
第1のコーティング材で用いられるバインダーは、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機バインダー等が挙げられる。このうち、コロイダルシリカは低コストであるため好ましい。バインダーは、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
第1のコーティング材には、必要により、さらに、増粘材を配合してもよい。このように増粘材を配合すると、コーティング材に適度な粘性が付与されてコーティング材が塗布時に良好な伸び性を示し、これにより緻密で保水性に優れた結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を形成することができるため好ましい。
【0047】
第1のコーティング材に用いられる増粘材としては、無機系増粘材及び有機系増粘材が挙げられる。無機系増粘材としては、例えば、粘土が挙げられ、粘土としては、例えば、ハロイサイト、カオリン、耐火粘土、木節粘土、蛙目粘土及びベントナイトが挙げられる。このうち、カオリン及びベントナイトは、上記増粘材を配合する通常の効果に加えて、さらに結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層の強度及び耐熱性を低下させ難いため好ましい。
【0048】
また、有機系増粘材としては、例えば、メチルセルロース及びポリビニルアルコール等が挙げられ、このうちメチルセルロースは少量で増粘効果が得られるため好ましい。有機系増粘材を配合すると、上記増粘材を配合する通常の効果に加えて、さらに耐熱基材の表面に凹凸が多数ある場合でも結晶化ガラス被覆層の表面に平滑性を付与する効果が高いため好ましい。増粘材は、上記のものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
第1のコーティング材は、上記結晶化ガラス粉末及びバインダー並びに必要により配合される増粘材等の固形原料(以下、単に「第1の固形原料」という。)と水とを混合してなる混合物である。第1の固形原料と水とを混合する方法としては公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、第1の固形原料と水とを羽根型攪拌機、擂潰器又はボールミル等を用いて混合する方法が挙げられる。また、第1の固形原料を予め擂潰器又はボールミル等を用いて十分に混合しておき、その後、これを水と混合する方法を採用すると、混合物の組成が均一になり易いため好ましい。
【0050】
第1のコーティング材中における結晶化ガラス粉末の配合量は、第1のコーティング材中にある第1の固形原料の合計量を100重量%として、通常50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%である。結晶化ガラス粉末の配合量が該範囲内にあると、良好な耐熱性および平滑性が得られるため好ましい。
【0051】
第1のコーティング材中におけるバインダーの配合量は、第1のコーティング材中にある第1の固形原料の合計量を100重量%として、通常3〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。バインダーの配合量が該範囲内にあると、耐熱構造体が耐熱性及び低発塵性に優れるため好ましい。
【0052】
第1のコーティング材中における水の配合量は、第1のコーティング材中にある第1の固形原料の合計量100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは30〜300重量部である。水の配合量が該範囲内にあると、塗布性が良好になるため好ましい。
【0053】
第1のコーティング材に増粘材を配合する場合において増粘材として粘土を用いるときは、混合物中の粘土の配合量は、混合物中の第1の固形原料の合計量を100重量%として、通常0〜30重量%、好ましくは3〜10重量%である。粘土の配合量が該範囲内にあると第1のコーティング材が塗布性に優れると共に、コーティング後の乾燥時に結晶化ガラス被覆層に亀裂が生じ難いため好ましい。一方、粘土の配合量が30重量%を超えると、コーティング後の乾燥時に結晶化ガラス被覆層に亀裂が生じ易いため好ましくない。また、増粘材として有機系増粘材を用いるときは、混合物中の粘土の配合量は、混合物中の第1の固形原料の合計量を100重量%として、通常0〜2重量%である。有機系増粘材は、配合量が少量でも塗布性を改善することができる。
【0054】
第1のコーティング材は、粘度が、通常0.01〜5Pa・s、好ましくは0.05〜3Pa・sである。粘度が該範囲内にあると、塗布性がよくなるため好ましい。
【0055】
第1のコーティング材の具体例としては、例えば、合成コーディライト50〜90重量%、コロイダルシリカ10〜20重量%、カオリン0〜10重量%及びメチルセルロース0.1〜0.5重量%からなる第1の固形原料を、上記粘度範囲内になるように適当量の水と混合したものが挙げられる。
【0056】
第1工程では、耐熱基材の少なくとも表面に、第1のコーティング材を塗布又は含浸する。第1のコーティング材を塗布する方法としては、スプレー等を用いて吹き付ける方法、刷毛やブレードで塗りつける方法を用いることができる。また、第1のコーティング材を含浸する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0057】
第1のコーティング材の塗布量又は含浸量は、第1の固形原料への換算量が、通常0.01〜2g/cmである。塗布量又は含浸量が該範囲内にあると、耐熱構造体が低発塵性のものとなり、また結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層に割れが発生し難いため好ましい。
【0058】
第1の製造方法においては、第2工程として、上記コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を乾燥する。乾燥装置としては、例えば、電気炉、ガス炉及びランプヒーター等を用いることができる。乾燥温度は、通常40〜180℃、好ましくは60〜110℃であり、乾燥時間は、成形体の大きさにもよるが、通常3〜24時間、好ましくは6〜12時間である。乾燥が終了すると、耐熱構造体が得られる。
【0059】
なお、本発明において、第1のコーティング材の組成及び粘度、第1のコーティング材の塗布又は含浸の方法、及び第1のコーティング材の塗布量又は含浸量等を適宜調整することにより、結晶化ガラス被覆層のみが形成された耐熱構造体を作製することもできるし、結晶化ガラス被覆層及び結晶化ガラス含浸層の両方が形成された耐熱構造体を作製することもできる。
【0060】
第1の製造方法によれば、結晶化ガラス粉末を含む第1のコーティング材を用いるため、焼成せずに結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を生成することができる。
【0061】
(第2の製造方法)
第2の製造方法について説明する。該方法においては、第1工程として、耐熱基材の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含む第2のコーティング材を塗布又は含浸する。
【0062】
第2のコーティング材で用いられる結晶性ガラス粉末とは、熱処理や紫外線照射等によりガラス内部から結晶を析出して結晶化ガラスを生成し得るものであって、未だ結晶化していない状態にあるガラスの粉末である。結晶性ガラス粉末は、800〜1300℃程度の比較的低温域で焼成すると、結晶化ガラスを生成する。
【0063】
本発明に用いられる結晶性ガラス粉末の種類は、結晶化ガラスを生成し得るものであり、且つ1300℃以下の使用時において揮発成分が発生しないものであればどのようなものでもよく特に限定されるものでないが、例えば、上記結晶化ガラスの組成と同一又は略同一の組成を有するものが挙げられる。具体的には、LiO−SiO−Al系結晶化ガラス、NaO−Al−SiO系結晶化ガラス、NaO−CaO−MgO−SiO系結晶化ガラス、MgO−Al−SiO系結晶化ガラス、2ZnO−SiO系結晶化ガラス、Al−SiO−CaO系結晶化ガラス、MgO−SiO系結晶化ガラス等の組成と同一又は略同一の組成を有し、且つ結晶化していない状態にあるガラスが挙げられる。
【0064】
このうち、MgO−Al−SiO系結晶化ガラスであるコーディライト結晶化ガラス(2MgO−2Al−5SiO)の組成と同一又は略同一の組成を有するコーディライトフリット、及びZnO−SiO系結晶化ガラスであるウィレマイト結晶化ガラス(2ZnO−SiO)の組成と同一又は略同一の組成を有するウィレマイト(Willemite)フリットを用いると、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層が強度及び耐熱性に優れるため好ましい。
【0065】
結晶性ガラス粉末は、金属酸化物やセラミックス、鉱物等の原料を上記結晶化ガラスを生成し得る組成比で調合してなる混合物を、加熱により焼成し、急冷して得られたガラスを、アルミナボール等で破砕して得ることができる。結晶性ガラス粉末は市場から容易に入手が可能なものであり、例えば、日本フェロー株式会社から商品名14−3635、14−3982等として販売されているものを本発明に用いることができる。
【0066】
結晶性ガラス粉末は、平均粒径が、通常1〜45μm、好ましくは5〜20μmである。平均粒径が1μm未満であると、乾燥時又は焼成時に割れが発生し易くなるため好ましくない。一方、平均粒径が45μmを超えると、焼成時の結晶化が不十分になり易く、また表面の平滑性が不十分になり易いため好ましくない。
【0067】
第2のコーティング材には、必要により、さらに、増粘材を配合してもよい。第2のコーティング材に用いられる増粘材としては、第1のコーティング材に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0068】
第2のコーティング材は、上記結晶性ガラス粉末及び必要により配合される増粘材等の固形原料(以下、単に「第2の固形原料」という。)と水とを混合してなる混合物である。第2の固形原料と水とを混合する方法としては、第1の固形原料と水とを混合する場合に用いられる方法と同様の方法を用いることができる。
【0069】
第2のコーティング材中における結晶性ガラス粉末の配合量は、第2のコーティング材中にある第2の固形原料の合計量を100重量%として、通常50〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。結晶性ガラス粉末の配合量が50重量%未満であると、特に軽量の耐熱基材で乾燥時にクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0070】
第2のコーティング材中における水の配合量は、第2のコーティング材中にある第2の固形原料の合計量100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは40〜500重量部である。水の配合量が該範囲内にあると、塗布性に優れるため好ましい。
【0071】
第2のコーティング材に増粘材を配合する場合において増粘材として粘土を用いるときは、増粘材の配合量及びその理由は第1のコーティング材の場合と同様である。また、第2のコーティング材の粘度の範囲及びその理由も、第1のコーティング材の場合と同様である。
【0072】
第2のコーティング材の具体例としては、例えば、コーディライトフリット60〜100重量%、カオリン0〜35重量%、ベントナイト0〜5重量%及びメチルセルロース0.1〜0.5重量%からなる第2の固形原料を、上記粘度範囲内になるように適当量の水と混合したものが挙げられる。
【0073】
第1工程では、耐熱基材の少なくとも表面に、第2のコーティング材を塗布又は含浸する。第2のコーティング材を塗布する方法としては、第1のコーティング材の場合と同様の方法を用いることができる。
【0074】
第2のコーティング材の塗布量又は含浸量は、第2の固形原料への換算量が、通常0.01〜1g/cmである。塗布量又は含浸量が該範囲内にあると乾燥時のクラックが起こり難く、結晶化ガラス被覆層表面の平滑性が良好になり易いため好ましい。
【0075】
第2の製造方法においては、第2工程として、上記コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を焼成する。焼成装置としては、例えば電気炉、ガス炉及びランプヒーター等を用いることができる。本発明では、比較的低温焼成で結晶化ガラスを生成する結晶性ガラス粉末を含む第2のコーティング材を用いるため、焼成温度は焼成する結晶化ガラスの組成により異なるが、通常800〜1300℃、好ましくは1000〜1200℃、さらに好ましくは1100〜1200℃と、比較的低い。
【0076】
なお、コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材は、焼成前に予め乾燥させておくと、焼成時において、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層にクラックが入ったり、結晶化ガラス被覆層が剥離したりすることが起こり難くなるため好ましい。乾燥方法としては、例えば、初めに室温で10分〜1時間乾燥させた後、さらに60〜120℃で1〜24時間乾燥させる方法が挙げられる。このような段階的に乾燥温度を高くする方法を用いると、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層にクラックが入ったり、結晶化ガラス被覆層が剥離したりすることが起こり難くなるため好ましい。
【0077】
なお、本発明において、第2のコーティング材の組成又は粘度、第2のコーティング材の塗布又は含浸の方法、及び第2のコーティング材の塗布量又は含浸量等を適宜調整することにより、結晶化ガラス被覆層のみが形成された耐熱構造体を作製することもできるし、結晶化ガラス被覆層及び結晶化ガラス含浸層の両方が形成された耐熱構造体を作製することもできる。
【0078】
第2の製造方法によれば、結晶性ガラス粉末を含む第2のコーティング材を用いるため、比較的低温域の焼成で結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を生成することができる。
【0079】
(第3の製造方法)
第3の製造方法について説明する。該方法においては、第1工程として、耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラスを生成し得る金属酸化物組成比のガラス生成原料粉末を含む第3のコーティング材を塗布又は含浸する。
【0080】
第3のコーティング材で用いられる、結晶化ガラスを生成し得る金属酸化物組成比のガラス生成原料粉末とは、熱処理することにより結晶化ガラスを生成し得る複数の金属酸化物、セラミックス又は鉱物等からなる粉末混合物である。ガラス生成原料粉末としては、例えば、ムライト、タルク、粘土、アルミナ、マグネシア及び珪石を、元素の組成比がコーディライトと略同一となるように混合してなる配合コーディライト、酸化亜鉛及び珪石を、元素の組成比がウィレマイトと略同一となるように混合してなる配合ウィレマイト(Willemite)等が挙げられる。このうち、配合コーディライトを用いると、結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層が強度及び耐熱性に優れるため好ましい。
【0081】
ガラス生成原料粉末は、平均粒径が、通常1〜45μm、好ましくは4〜30μmである。平均粒径が該範囲内にあると、熱処理を行った時に、結晶化ガラスを生成し易いため好ましい。
【0082】
第3のコーティング材には、必要により、さらに、バインダーや増粘材を配合してもよい。第3のコーティング材に用いられるバインダーや増粘材としては、第1のコーティング材に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0083】
第3のコーティング材は、上記ガラス生成原料粉末及び必要により配合される増粘材等の固形原料(以下、単に「第3の固形原料」という。)と水とを混合してなる混合物である。第3の固形原料と水とを混合する方法としては、第1の固形原料と水とを混合する場合に用いられる方法と同様の方法を用いることができる。
【0084】
第3のコーティング材中におけるガラス生成原料粉末の配合量は、第3のコーティング材中にある第3の固形原料の合計量を100重量%として、通常50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%である。ガラス生成原料粉末の配合量が該範囲内にあると、結晶化ガラスを容易に生成するため好ましい。
【0085】
第3のコーティング材中における水の配合量は、第3のコーティング材中にある第3の固形原料の合計量100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは40〜500重量部である。水の配合量が該範囲内にあると、塗布性に優れるため好ましい。
【0086】
第3のコーティング材に増粘材を配合する場合において増粘材として粘土を用いるときは、増粘材の配合量及びその理由は第1のコーティング材の場合と同様である。また、第3のコーティング材の粘度の範囲及びその理由も、第1のコーティング材の場合と同様である。
【0087】
第3のコーティング材の具体例としては、例えば、ムライト粒子85〜95重量%、酸化マグネシウム4〜8重量%、コロイダルシリカ1〜7重量%、メチルセルロース0.1〜1.0重量%からなる第3の固形原料を、上記粘度範囲内になるように適当量の水と混合したものが挙げられる。
【0088】
第1工程では、耐熱基材の少なくとも表面に、第3のコーティング材を塗布又は含浸する。第3のコーティング材を塗布する方法としては、第1のコーティング材の場合と同様の方法を用いることができる。
【0089】
第3のコーティング材の塗布量又は含浸量は、第3の固形原料への換算量が、通常0.01〜3g/cmである。塗布量又は含浸量が該範囲内にあると、乾燥時や焼成時の割れがなく耐熱性に優れるため好ましい。
【0090】
第3の製造方法においては、第2工程として、上記コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を焼成する。焼成装置としては、例えば電気炉、ガス炉及びランプヒーター等を用いることができる。本発明では、ガラスの焼成が必要なガラス生成原料粉末を含む第3のコーティング材を用いるため焼成温度は焼成する結晶化ガラスの組成により異なるが、通常1350〜1500℃、好ましくは1450〜1480℃である。焼成が終了すると、耐熱構造体が得られる。
【0091】
なお、本発明において、第3のコーティング材の組成又は粘度、第3のコーティング材の塗布又は含浸の方法、及び第3のコーティング材の塗布量又は含浸量等を適宜調整することにより、結晶化ガラス被覆層のみが形成された耐熱構造体を作製することもできるし、結晶化ガラス被覆層及び結晶化ガラス含浸層の両方が形成された耐熱構造体を作製することもできる。
【0092】
本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体は、結晶化ガラス被覆層が形成されることにより、加熱の際に耐熱基材と結晶化ガラス被覆層との熱膨張又は熱収縮の状態が異なる場合でも、クラックの発生や結晶化ガラス被覆層の剥離が生じ難くなるため、耐熱基材から発生する発塵を抑えることができ、1300℃程度の高温においても使用することができる。また、さらに結晶化ガラス含浸層が形成されると、結晶化ガラス被覆層のみが形成される場合に比べて、耐熱性及び断熱性並びに低発塵性がより付与される。
【0093】
本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体は、例えば、焼成炉等の炉壁、焼成道具材、その他耐熱部材等に用いられる耐熱構造体として使用することができる。
【0094】
【実施例】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
【0095】
実施例1
(耐熱基材の作製)
アルミノシリケート繊維(ニチアス株式会社製、製品名ファインフレックス)100重量部、コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製、製品名シリカドール30)8重量部、及び有機バインダーとしてポリアクリルアミド1重量部を混合調製したスラリーから吸引脱水成形法により厚さ50mm、幅300mm、長さ300mmの成形体を形成し、乾燥させた。該乾燥した成形体を、シリカの固形分換算量で10重量%の上記コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、シリカドール30)にディッピングし、その後60〜110℃で乾燥させて、1000℃での熱伝導率0.25W/(m・K)、密度0.25g/cm、熱膨張係数4.1×10−6/℃、空隙率92%のアルミノシリケート繊維質断熱材(A)を得た。
(コーティング液の作製)
水30重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径7μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)を60重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末10重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度2Pa・sの被覆層用のコーティング液(a)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、アルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(a)を配合した全固形分に換算して0.06g/cmの面密度になるようにスプレーで塗布し、室温で30分乾燥させた後、105℃の乾燥機で1時間以上乾燥させた。乾燥体を900℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0096】
実施例2〜5
耐熱構造体の作製の際に、焼成温度を1000℃(実施例2)、1100℃(実施例3)、1200℃(実施例4)又は1300℃(実施例5)とした以外は実施例1と同様にして、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0097】
実施例6
(コーティング液の作製)
水30重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径30μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)を60重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末10重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度2Pa・sの被覆層用のコーティング液(b)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(b)を、実施例1と同様に塗布し、乾燥した後、さらに1100℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0098】
実施例7
(耐熱基材の作製)
アルミナ繊維(ニチアス株式会社製、製品名ルビール)30重量部、平均粒子径5μmのアルミナ粉末(昭和電工株式会社製、製品名A42−2)70重量部、コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製、製品名シリカドール30)8重量部、及び有機バインダーとしてポリアクリルアミド1重量部を混合調製したスラリーから吸引脱水成形法により厚さ50mm、幅300mm、長さ300mmの成形体を形成し、乾燥させた。該乾燥した成形体を、シリカの固形分換算量で10重量%の上記コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、シリカドール30)にディッピングし、その後60〜110℃で乾燥させて、1000℃での熱伝導率0.5W/(m・K)、密度1.20g/cm、熱膨張係数6.0×10−6/℃、空隙率80%のアルミナ繊維質断熱材(B)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、アルミナ繊維質断熱材(B)の表面に、実施例1で作製したコーティング液(a)を配合した全固形分に換算して0.045g/cmの面密度になるようにスプレーで塗布し、室温で30分乾燥させた後、105℃の乾燥機で1時間以上乾燥させ、1100℃にて焼成し、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数6.2×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0099】
実施例8
(コーティング液の作製)
水30重量部、結晶性ガラス粉末として平均粒径1μmのコージェライト質結晶性ガラス粉末(日本フェロー株式会社製、製品名14−3635)を65重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末5重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度2Pa・sの被覆層用のコーティング液(c)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(c)を、実施例1と同様に塗布し、乾燥した後、さらに1100℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0100】
実施例9
(コーティング液の作製)
まず、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及びコロイダルシリカを2MgO・2Al・5SiOの組成比になるように調合して平均粒径10μmの配合コーディライト粉末を得た。次に、水30重量部、配合コーディライト粉末60重量部、平均粒径10μmのカオリン粉末10重量部、メチルセルロース0.2重量部及び平均粒径10μmのベントナイト粉末0.2重量部を混合し、ボールミルにて撹拌して粘度1.8Pa・sの被覆層用のコーティング液(d)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(d)を、実施例1と同様に塗布し、乾燥した後、さらに1450℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0101】
実施例10
(コーティング液の作製)
実施例9で得たものと同様の配合コージェライト粉末を1470℃で、3時間焼成し、合成コージェライト粉末を得た。コージェライト結晶の確認は粉末X線回折で確認を行った。この合成コージェライト粉末をボールミルにて粉砕し平均粒径10μmの粉末得た。次に、水30重量部、合成コージェライト粉末63重量部にコロイダルシリカ7重量部、メチルセルロース0.1重量部を混合し攪拌機により攪拌し粘度1.7Pa・Sの被服層用のコーティング液(e)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(d)を、実施例1と同様に塗布し、乾燥した後、さらに1150℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0102】
実施例11
(耐熱基材の作製)
アルミノシリケート繊維(ニチアス株式会社製、製品名ファインフレックス)100重量部、コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製、製品名シリカドール30)8重量部、及び有機バインダーとしてポリアクリルアミド1重量部を混合調製したスラリーから吸引脱水成形法により厚さ50mm、幅300mm、長さ300mmの成形体を形成し、乾燥させて、1000℃での熱伝導率0.25W/(m・K)、密度0.25g/cm、熱膨張係数4.1×10−6/℃、空隙率92%のアルミノシリケート繊維質断熱材(C)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、アルミノシリケート繊維質断熱材(A)に代えてアルミノシリケート繊維質断熱材(C)を用いた以外は実施例4と同様にして、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0103】
比較例1
(コーティング液の作製)
水60重量部、Al−SiO−MgO−KO系ガラスからなる磁器用ガラス粉末70重量部及びメチルセルロース0.2重量部を混合し、粘度2Pa・sのコーティング液(f)を得た。
(耐熱構造体の作製)
次に、実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)の表面に、コーティング液(f)を、実施例1と同様に塗布し、乾燥した後、さらに1100℃で焼成して、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0104】
比較例2
耐熱構造体の作製の際に、焼成温度を1150℃とした以外は実施例9と同様にして、耐熱基材上に厚さ400μm、熱膨張係数4.0×10−6/℃の被覆層が形成された耐熱構造体を得た。
【0105】
比較例3
実施例1で作製したアルミノシリケート繊維質断熱材(A)を、このまま1150℃で焼成して、耐熱構造体を得た。
【0106】
上記各実施例及び比較例で得られた耐熱構造体について、耐熱性、発塵性、平滑性及び光沢性を評価した。結果を表1に示す。
(耐熱性の評価)
耐熱構造体のコート面上に直方体状の耐熱煉瓦を載置した状態で室温から1300℃に加熱した後、室温まで冷却した。冷却後、コート面の割れ、及びコート面と耐熱煉瓦との付着具合を目視により観察した。
評価基準は、コート面にクラック及び剥がれの発生がなく耐熱煉瓦と付着していないものを「◎」、コート面に小さなクラックが発生しているか、又は脱落しない程度の若干の剥がれが発生しているが耐熱煉瓦と付着していないものを「○」、コート面に大きなクラックが発生しているか、又は若干の剥がれが発生しているが耐熱煉瓦と付着していないものを「△」、コート面に大きなクラックが発生しているか、又は剥がれが発生しており耐熱煉瓦と付着しているものを「×」とした。
(発塵性の評価)
発塵性の評価は、下記のような方法で得られる発塵指数で評価した。
(1)サンプル(耐熱構造体)の上面からサンプルの表面に圧力3×104N/mで「ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標);CT−24 幅24mm」を貼り付けた。
(2)5秒の静置後、サンプルから粘着テープを剥がした。
(3)剥がした粘着テープを黒色紙上に貼り付け、明度指数を測定した。
(4)次式により求められる数値を発塵指数とした。明度指数の測定は同一サンプルについて5回行い、その平均値を採用した。
発塵指数=サンプルから剥がした粘着テープの明度指数−ブランクから剥がした粘着テープの明度指数
ここで、明度指数とは、例えば色彩色差計(形式「CR−300」、測定ヘッド91mm幅×201mm高さ×60mm奥行×670g重量×測定径8mm、ミノルタ株式会社製)等を用いて測定されるL表色系のL値である。塵芥が付着していない粘着テープは光源からの光が粘着テープをほとんど透過し黒色紙からは光がほとんど反射しないからL値が低いのに対し、塵芥が付着した粘着テープは光源からの光が塵芥で反射されるからL値が高くなる。発塵指数は、このような性質を利用したものであり、塵芥の付着量が多いほど発塵指数も大きい数値を示す。また、ブランクの明度指数とは粘着テープに何も付着させない状態で黒色紙上に貼り付けたときの明度指数を示す。明度指数が10未満のものを「◎」、明度が10以上〜20未満のものを「○」、20以上のものを「△」とした。
(平滑性及び緻密性の評価)
平滑性及び緻密性の評価は、着色した水をコート面に滴下し、コート面への水の染み込み状況を目視する方法で行った。
水が滴下して3分経っても染み込まないものを「◎」、水が滴下した直後は染み込まないが3分以内に染み込むものを「○」、水が滴下した直後に染み込むものを「×」として評価した。
(光沢性の評価)
光沢性は目視により観察した。光沢があるものを「◎」、部分的に光沢があるもの「○」、光沢が無いもの「△」とした。
【0107】
【表1】
Figure 0004373691
【0108】
【発明の効果】
本発明に係る耐熱構造体及び本発明で得られた耐熱構造体によれば、結晶化ガラスで構成された結晶化ガラス被覆層又はさらに結晶化ガラス含浸層が形成されるため、1000℃以上で連続使用可能な耐熱性及び断熱性を有する。また、本発明に係るコーティング材によれば、耐熱基材の表面又は内部に結晶化ガラス被覆層又は結晶化ガラス含浸層を形成することができ、耐熱基材に1000℃以上で連続使用可能な耐熱性及び断熱性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る耐熱構造体の一例の断面写真である。
【符号の説明】
2 結晶化ガラス被覆層
3 結晶化ガラス含浸層
4 耐熱基材

Claims (10)

  1. 無機繊維または無機粒子を無機バインダーで結合させてなる、1000℃での熱伝導率が0.5W/m・K以下、空隙率が50%以上であり、表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の表面に、
    該耐熱基材の熱膨張係数に対する熱膨張係数が−25%〜+25%の範囲にあり、厚さが30μm〜1mmである結晶化ガラス被覆層が形成されてなることを特徴とする電子部品焼成用耐熱構造体。
  2. 前記耐熱基材内に、前記結晶化ガラス被覆層に連続して結晶化ガラス含浸層が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の電子部品焼成用耐熱構造体。
  3. 前記結晶化ガラス被覆層及び前記結晶化ガラス含浸層を形成する結晶化ガラスが、ホウ素化合物又は鉛化合物を含まないものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品焼成用耐熱構造体。
  4. 前記結晶化ガラス被覆層及び前記結晶化ガラス含浸層を形成する結晶化ガラスが、コーディライト結晶化ガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子部品焼成用耐熱構造体。
  5. 表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラス粉末及びバインダーを含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法。
  6. 前記結晶化ガラス粉末が、合成コーディライトであることを特徴とする請求項記載の電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法。
  7. 表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶性ガラス粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を800〜1300℃で焼成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法。
  8. 前記結晶性ガラス粉末が、コーディライトフリットであることを特徴とする請求項記載の電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法。
  9. 表面に硬化処理層が形成された耐熱基材の少なくとも表面に、結晶化ガラスを生成し得る金属酸化物組成比のガラス生成原料粉末を含むコーティング材を塗布又は含浸する工程、及び、該コーティング材が塗布又は含浸された耐熱基材を1350〜1500℃で焼成する工程を含むことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項記載の電子部品焼成用耐熱構造体の製造方法。
  10. 前記ガラス生成原料粉末が、配合コーディライトであることを特徴とする請求項記載の耐熱構造体の製造方法。
JP2003073687A 2003-03-18 2003-03-18 電子部品焼成用耐熱構造体及びその製造方法 Expired - Lifetime JP4373691B2 (ja)

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