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JP4358807B2 - 高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法 - Google Patents

高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法 Download PDF

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JP4358807B2 JP2005274339A JP2005274339A JP4358807B2 JP 4358807 B2 JP4358807 B2 JP 4358807B2 JP 2005274339 A JP2005274339 A JP 2005274339A JP 2005274339 A JP2005274339 A JP 2005274339A JP 4358807 B2 JP4358807 B2 JP 4358807B2
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Description

本発明は、高張力鋼(ハイテン鋼)の連鋳片の置き割れ防止方法に関する。
近年、自動車の分野では、二酸化炭素排出量の削減運動の一環として軽量化による燃費改善の取り組みが盛んに行われている。その一例として、車体や部品の薄肉化を可能とする高張力鋼(ハイテン鋼)の導入が挙げられる。
また、車両の衝突時における車体等の変形を防ぎ、乗員の安全を確保する必要性から車体・部品等の強度を高めるためにも高張力鋼の需要は拡大傾向にある。
上記高張力鋼は、強度を高めることを目的として、CやSi、Mn(以下、ハイテン添加物ともいう。)が添加されている。
しかし、ハイテン添加物の増加傾向(ハイテン化)に伴って新たな問題が発生していた。即ち、高張力鋼の連続鋳造片(以下、連鋳片ともいう。)を、連続鋳造(以下、連鋳ともいう。)直後から室温に至るまでの冷却速度を軟鋼同様に特別に管理することなく冷却すると、図3や図4・5に示すような置き割れを生じてしまうのである。この種の置き割れは冷却時に生じる熱応力によるものと考えられ、軟鋼でも極稀に発生していたが、高張力鋼の分野では、特に昨今のハイテン化に伴って頻繁に発生するようになっていた。
この種の技術として、特許文献1や特許文献2は、軸受鋼の連鋳片の置き割れ防止方法を開示する。これら特許文献1及び特許文献2の記載によれば、連鋳後の軸受鋼(連鋳片)をその表面温度が600℃以下に冷却される前に加熱炉に装入すれば、連鋳片の冷却時における熱応力を軽減できるとされている。
特許第3149763号公報(請求項1、0013) 特許第3149764号公報(請求項1、0013)
上記の特許文献1及び特許文献2によると、連鋳後〜加熱炉の工程間において連鋳片を600℃以下、例えば100℃前後の室温にまで冷却することはない。一方で、連鋳片の表面欠陥(小さな割れや不純物析出物等)は、室温にまで冷却されて初めて検出できるものである。
従って上記の方法では、特許文献1や2でいうように冷却時における熱応力は軽減できるかもしれないが、連鋳片の表面欠陥は検出できないし、当然それを補修することもできない。
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、連続鋳造設備で鋳造した高張力鋼の連鋳片を室温まで冷却しても置き割れの生じない置き割れ防止方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
炭素(C)含有率を0.12w%以上0.25w%以下とし、珪素(Si)含有率を1.2w%以上2.0w%以下とし、マンガン(Mn)を1.2w%以上4.0w%以下とする高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法において、連鋳片の広面中央部における表面温度(T:℃)に応じて、連鋳片の冷却速度(V:℃/時間)を以下を満足するように制御する。
・ T≧500において、V≦70
・500>T≧300において、V≦55
・300>T≧200において、V≦25
・200>T≧150において、V≦15
なお、ここでいう「連鋳片の冷却速度」とは上記表面温度に基づいて求められるものとする。
これにより、高張力鋼の連鋳片を、置き割れを発生させることなく室温に至るまで冷却することができる。また室温まで冷却すると、連鋳片の表面欠陥を検出かつ補修可能となるので、表面欠陥のない高張力鋼を提供できる。
前記連鋳片の冷却速度は、当該連鋳片を他の2枚の連鋳片により挟むことにより制御することが好ましい。これによれば、前記冷却速度を制御するための特別な装置は一切必要とされず、単に他の連鋳片により当該連鋳片を挟むだけでよいので、本発明を極めて安価かつ容易に導入できる。
前記他の2枚の連鋳片により、複数枚の前記連鋳片を同時に挟むことが好ましい。これにより、前記連鋳片の冷却速度をさらに抑制できる。また、生産効率を向上できる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
最初に、本実施形態に係る高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法(以下、単に「置き割れ防止方法」ともいう。)が対象としている鋼種に関して説明する。本実施形態の対象鋼種は、連続鋳造設備において連続鋳造された連鋳片のうち高張力鋼に分類されるものであって、その化学成分が下記の範囲内のものとする。
・炭素含有率:0.12w%以上0.25w%以下
・珪素含有率:1.2w%以上2.0w%以下
・マンガン含有率:1.2w%以上4.0w%以下
本実施形態において対象とする鋼種の一例を表1に示す。本表の鋼種(ハイテン鋼A〜C)のうち、ハイテン鋼A及びBが上記対象鋼種となる。一方、炭素含有量が比較的低いハイテン鋼Cは、冷却時に特別な配慮をしなくても置き割れを生じないので、本実施形態では対象外とする。言い換えれば、炭素含有量が0.11w%以下のものは冷却時においてそもそも置き割れを生じないので、特別な対策を講じる必要がないのである。
その他の、炭素含有量の上記範囲の上限値(0.25w%)や珪素・マンガンについての範囲の規定に関しては、高張力鋼の一般的な値となっている。
次に、図6及び図7に基づいて、上記高張力鋼の特性を説明する。図6はハイテン鋼Bの800℃前後における引張試験の結果をグラフで示す図であり、図7はハイテン鋼Bの150℃前後におけるシャルピー衝撃試験の結果をグラフで示す図である。
図6に示すように高張力鋼は通常、800℃前後の温度帯域(脆化III域)において顕著な脆性を有する。
また図7に示すように高張力鋼は、150℃前後の温度帯域において脆性が急激に変化する性質を有する。具体的には当該試験片温度が150℃以下となった途端に急激に脆化する。これは、昨今のハイテン化に伴って珪素含有量が著しく増加したことに起因するものである。
そこで本実施形態に係る置き割れ防止方法は、前記脆化III域に対しては当該温度帯域を通過する時の冷却速度を適宜に制御し、一方、前記150℃前後で発生する急激な脆性の増加に対しては150℃よりも高温側の温度帯域、具体的には500℃〜150℃の帯域における冷却速度を適宜に制御する。
具体的に上記置き割れ防止方法は、連鋳片の冷却速度(V:℃/時間)を、連鋳片の広面中央部における表面温度(T:℃)に基づいて以下の如くとする。
・ T≧500において、V≦70
・500>T≧300において、V≦55
・300>T≧200において、V≦25
・200>T≧150において、V≦15
なお、ここでいう「連鋳片の冷却速度」とは上記表面温度に基づいて求められるものとする。
次に、連鋳片の上記冷却速度の具体的制御方法を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る高張力鋼の冷却方法を示す図である。
図1(a)に示すように本実施形態において連鋳直後の連鋳片は、同じく連鋳直後の他の連鋳片と共に5枚に段積みされる。そして図1(b)で示すように、上下側から他の2枚の連鋳片により挟まれた状態で空冷により徐冷される。当該他の2枚の連鋳片は、積重された5枚の前記連鋳片を挟み始める時点においては、室温(200℃未満の適宜の温度、例えば100℃など)でもよく、或いは500℃程度に予熱しておいてもよい。また、当該他の2枚の連鋳片は、専ら連鋳片を挟んで徐冷させるためだけに用いられるものであってもよいし、一度室温にまで冷却された他の半製品としての連鋳片であってもよい。
このように連鋳直後の連鋳片を他の連鋳片と共に平積みし、上下側から他の2枚の連鋳片により挟まれた状態で冷却することにより、連鋳片の冷却速度を上記の如くに制御できるのである。
その後、室温にまで徐冷された連鋳片の表面に小さな疵や不純物析出物がないか目視で確認する。もしそのような表面欠陥があった場合には、研磨機等により当該表面欠陥を取り除く。
そして、すべての表面欠陥が解消されたら、次工程である加熱炉に移されて適宜の温度まで加熱され、圧延装置にて圧延される。
次に、図2を参照しつつ、本発明の効果を確認する試験(試験A〜C)を説明する。図2は、連鋳片の表面温度の測定結果を示す図である。本図において符号CRで示される折れ線は、本実施形態に係る上記置き割れ防止方法に規定される条件を満足する冷却パターンのうち、最も冷却速度の速いものを示すものである。尚、連鋳片の広面中央部における表面温度は、熱電対を用いて計測した。
〔試験A〕
本試験Aは、上記実施形態に係る置き割れ防止方法に規定される条件を満足するように実施された試験である。即ち、すべての温度帯域(表面温度:1000℃〜100℃)において、冷却パターンCRと比較して常に遅い冷却速度となるよう連鋳片を徐冷した。
具体的には連鋳直後の当該連鋳片を連鋳直後の他の3枚の連鋳片と共に積み重ね、上下側から他の連鋳片によって挟んだ状態で徐冷した。
本試験Aの条件において徐冷された連鋳片の広面中央部における表面温度の測定結果を本図において符号Aで示す。
〔試験B〕
本試験Bは、上記実施形態に係る置き割れ防止方法に規定される条件を全く満足しないように実施された試験である。即ち、すべての温度帯域において、冷却パターンCRと比較して常に速い冷却速度となるよう連鋳片を冷却した。
具体的には連鋳直後の連鋳片を、他の連鋳直後の連鋳片と共に重ねて平積みしたり、上下側から他の連鋳片で挟んだりすることなく、単に1枚のみで連鋳直後から室温に至るまで空冷した。
本試験Bの条件において冷却された連鋳片の広面中央部における表面温度の測定結果を本図において符号Bで示す。
〔試験C〕
本試験Cは、上記実施形態に係る置き割れ防止方法に規定される条件を完全には満足しないように実施された試験である。即ち、表面温度が500℃に至るまでの温度帯域においては上記試験Aのと同様の条件において連鋳片を冷却した。言い換えれば、当該温度帯域において連鋳片は上記実施形態に係る置き割れ防止方法の一部のみが適用された。
一方、500℃から室温に至るまでの温度帯域においては上記試験Bのと同様の条件において連鋳片を冷却した。言い換えば、当該温度域において連鋳片を、積重することもなければ上下側から他の連鋳片で挟むこともなく個別に空冷させた。
端的に言えば、本試験Cは、本実施形態に係る上記置き割れ防止方法が適用されていない。
本試験Cの条件において冷却された連鋳片の広面中央部における表面温度の測定結果を本図において符号Cで示す。
そして、室温に至るまで冷却された連鋳片を観察し、図3〜5に示すような置き割れが発生していないか調査した。
〔試験A(防止方法の適用あり)〕
本図符号Aで示す如く徐冷された連鋳片には、上記置き割れが全く発生しなかった。言い換えれば、置き割れを発生させることなく、連鋳片を室温に至るまで冷却することができた。
〔試験B(防止方法の適用なし)〕
本図符号Bで示す如く冷却された連鋳片には、図3〜図5に示すような置き割れが発生した。
〔試験C(防止方法の一部のみの適用はあり)〕
本図符号Cで示す如く、連鋳直後から室温に至るまでの温度帯域の一部のみに前述の置き割れ防止方法が部分的に適用される場合でも、試験Bの場合と同様、図3〜図5に示すような置き割れが発生した。
これらの結果より前述の置き割れ防止方法は、連鋳直後から室温(少なくとも200℃未満)に至るまでのすべての温度帯域において満遍なく適用されることが、置き割れを防止するために必要であるといえる。
以上説明したように本実施形態において、炭素(C)含有率を0.12w%以上0.25w%以下とし、珪素(Si)含有率を1.2w%以上2.0w%以下とし、マンガン(Mn)を1.2w%以上4.0w%以下とする高張力鋼の連鋳片を、その広面中央部における表面温度(T:℃)に応じて冷却速度(V:℃/時間)を以下のように制御して冷却することで下記の効果を奏する。
・ T≧500において、V≦70
・500>T≧300において、V≦55
・300>T≧200において、V≦25
・200>T≧150において、V≦15
なお、上述した如く「連鋳片の冷却速度」とは上記表面温度に基づいて求められるものとする。
(効果)
高張力鋼の連鋳片を、置き割れを発生させることなく、室温まで冷却することができる。言い換えれば、図6及び図7に示すような高張力鋼特有の脆性による影響を回避することができる。
また室温まで冷却すると、連鋳片の表面欠陥を検出かつ補修できるので、表面欠陥のない高張力鋼を提供できる。
また以上説明したように本実施形態において、前記連鋳片の冷却速度は、当該連鋳片を他の2枚の連鋳片により挟むことにより制御することが好ましい。これによれば、前記冷却速度を制御するための特別な装置は一切必要とされず、単に他の連鋳片により当該連鋳片を挟むだけなので、本発明を極めて安価かつ容易に導入することができる。
また以上説明したように本実施形態において、前記他の2枚の連鋳片により、複数枚の前記連鋳片を同時に挟むことが好ましい。これにより、前記連鋳片の冷却速度をさらに抑制できる。また、生産効率を向上できる。
尚、上記試験(試験条件や試験結果)は、本発明やそれによる作用効果を何ら限定するものではない。
以上に本発明の好適な実施形態及び実施例を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
例えば、上記実施形態において連鋳直後の連鋳片は、冷却時において複数枚で積重されるとしたが、必ずしも積み重ねる必要はなく、前述の冷却速度についての条件を満足してれば十分である。従って、連鋳片が積重されずに1枚のみで、その上下側を他の2枚の連鋳片によって挟まれた状態で冷却される場合も考えられる。
また上記実施形態において連鋳片は、上下側から他の2枚の連鋳片によって挟まれた状態で冷却されるとしたが、これに限るものではなく、単に他の鋳造直後の連鋳片と積重された状態で冷却されてもよい。
また連鋳片の冷却速度を制御する方法として、例えば加熱器を備えた冷却抑制装置などを利用してもよい。
なお上記の如く連鋳片の冷却速度は、熱応力の発生という観点から適度に遅い方がよいとしたが、操業上の理由から、室温(例えば100℃)程度の温度まで5日間以内に冷却することとする。
本発明の一実施形態に係る高張力鋼の冷却方法を示す図。 連鋳片の表面温度の測定結果を示す図。 連鋳片の置き割れを示す模式図。 連鋳片の置き割れの実際の写真を示す図。 連鋳片の置き割れの実際の写真を示す図。 高張力鋼の800℃前後における引張試験の結果をグラフで示す図。 高張力鋼の150℃前後におけるシャルピー衝撃試験の結果をグラフで示す図。

Claims (3)

  1. 炭素(C)含有率を0.12w%以上0.25w%以下とし、珪素(Si)含有率を1.2w%以上2.0w%以下とし、マンガン(Mn)を1.2w%以上4.0w%以下とする高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法において、
    連鋳片の広面中央部における表面温度(T:℃)に応じて、連鋳片の冷却速度(V:℃/時間)を以下を満足するように制御する、ことを特徴とする高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法。
    ・ T≧500において、V≦70
    ・500>T≧300において、V≦55
    ・300>T≧200において、V≦25
    ・200>T≧150において、V≦15
  2. 前記連鋳片の冷却速度は、当該連鋳片を他の2枚の連鋳片により挟むことにより制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法。
  3. 前記他の2枚の連鋳片により、複数枚の前記連鋳片を同時に挟む、ことを特徴とする請求項2に記載の高張力鋼の連鋳片の置き割れ防止方法。

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