JP4352268B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
こうした電動パワーステアリング装置は、その電源として車載バッテリが使用されるが、電力消費量がかなり高く、バッテリの能力(バッテリ電圧)が低下した場合には、操舵アシスト力を発生させる電動モータへの通電を停止して電源電圧の低下を防止する。
この場合、電源電圧が所定電圧に上昇するまではアシスト機能が復帰しない。しかも、電源電圧が復帰してアシスト機能を再開したときに再度電源電圧が低下するというハンチング現象を防止するために、アシスト機能の再開に必要な電源電圧が高めに設定されている。従って、アシスト停止期間が長くなってしまう。
つまり、この特許文献1のものは、電源電圧が低下した場合に、単にアシストトルクを低減するものであって、電源電圧を所定電圧以上に維持しようとする制御を行っていないため、簡単に電源電圧が作動停止レベルまで低下して操舵アシスト機能が停止してしまう。
この場合、上記比例ゲインと微分ゲインの少なくとも一方を、上記電動アクチュエータの上限電流値を減らす側に制御する場合に比べて増やす側に制御する場合の値を小さく設定するとよい。
また、操舵力の変化を抑えることができる。
つまり、電圧維持制御手段の制御応答性、例えば、フィードバック制御の周期が、電源保持手段の電源保持期間よりも短い(速い)ため、アクチュエータ制御手段への電源電圧が最低作動電圧を下回る前に、電圧維持制御手段による電流制限により電源電圧の上昇を図ることができる。
この結果、瞬間的な電源電圧の低下あるいは電源供給の停止が生じても、アクチュエータ制御手段の機能が停止してしまうことがない。従って、電動パワーステアリング機能が突然停止してしまうといった不具合を防止することができる。
この場合、上記電動アクチュエータへの供給電流の上限値を低減する速度は、上記検出した車速が所定速度を超える場合は、所定速度を超えない場合に比べて遅くするとよい。
また、車速が速い場合には、上限電流値を低減する速度を遅くしているため、ドライバーに対して操舵操作に違和感を与えにくくなる。
この結果、電源電圧低下抑制と操舵操作性確保とをバランスよく図ることができる。
尚、以下の説明において、電動モータ15に流す電流をアシスト電流と呼ぶ。
電動パワーステアリング装置1への電源となる電源装置70は、バッテリ71と発電機であるオルタネータ72とから構成される。本実施形態では、定格電圧12Vのバッテリ71を使用する。
このバッテリ71の電源端子(+端子)73に接続される電源供給元ライン62は、イグニッションスイッチ80に接続され、そのイグニッションスイッチ80の二次側から電子制御装置40に電源供給する制御電源供給ライン63と、イグニッションスイッチ80の一次側(電源側)からモータ駆動回路50に電源供給する駆動電源供給ライン64とに分岐する。
また、制御電源供給ライン63には、連結ライン66との接続点よりも電源側に、電源側への電流の流れを防止する逆流防止素子としてのダイオード68が設けられる。
駆動電源供給ライン64に設けられた電源リレー65は、電子制御装置40からの信号により開閉される。
また、電動パワーステアリング装置1へ供給される電源の電圧検出は、駆動電源供給ライン64側の電圧と制御電源供給ライン63側の電圧の2箇所で行う。具体的には、ダイオード67の一次側電圧およびダイオード68の一次側電圧をそれぞれ上限電源制限部43にてモニタし、その2つのモニタ電圧のうち低いほうの電圧を電源検出電圧Vxとみなしている。
図3は、そのアシスト制御ルーチンを表すもので、電子制御装置40のROM内に制御プログラムとして記憶され、短い周期で繰り返し実行される。
このアシスト制御ルーチンは、所定の操舵アシストトルクを発生させる電動モータ15の通電制御の概要を表すもので、本発明の特徴となる電流制限に関する処理については後述する。
基本アシスト電流Iasとは、車速や操舵トルクに応じて決まる目標アシストトルクを得るために必要となる電動モータ15への通電量である。
続いて、決定された目標アシスト電流が電動モータ15に流れるように、電流センサ53で通電量をモニタしつつモータ駆動回路50のスイッチング素子SW11、SW12、SW21、SW22、SW31、SW32のデューティ比を調整する(S4)。
尚、電源電圧が低下していない場合には、ステップS2にて求められた基本アシスト電流Iasを目標アシスト電流として電動モータ15が駆動制御され(後述の通常制御)、電源電圧が低下している場合には、ステップS3にて基本アシスト電流Iasに上限電流制限をして電動モータ15が駆動制御される(後述の電圧フィードバック制御、抑制復帰制御)。
図5は、電動モータ15の上限電流値を調整して、電源電圧が目標電圧になるようにフィードバック制御する制御ブロック図である。以下、この制御を電圧フィードバック制御と呼ぶ。
上限電流制限部43は、電源装置70から電動パワーステアリング装置1に供給される電源の電源電圧を常時検出しており、この検出電圧Vxと目標電圧V0(本実施形態では10V)との偏差ΔVを求める。尚、この目標電圧V0は、電動パワーステアリング装置1の作動が保証される電圧に設定する。
更に、上限電流初期値Ilim0から電流補償値を減算した値と、直前回に同様に算出した値(S104)のうち小さいほうの値を、フィードバックベース部100で算出した基本上限電流値として出力する(S105)。
比例ゲインKp2は比例ゲインKp1よりも大きな値(例えば数倍)に設定されているため、上限電流値Ilimを下げる側(電流制限を強める側)への補償量が上限電流値Ilimを上げる側(電流制限を緩める側)への補償量に対して大きく設定される。
上限電流値を設定するにあたり、その初期値として、電圧フィードバック制御を開始するときの実電流あるいは最大電流値Imax/2の小さい側の値を選択して設定する。
また、電圧フィードバック制御の開始により操舵アシスト力がすぐに低下するため、ドライバーに対してアシスト力低減状態になったことを認識させやすいという効果も奏する。
また、この制御応答性の調整により電源電圧のハンチングも防止される。つまり、上限電流の制限により電源電圧が復帰した場合には上限電流値が緩められる(増大する)が、この上限電流の緩め調整を規制側と同じ応答性で行うと、再度電圧低下が発生しハンチングが生じてしまう。そこで、上限電流の緩和側の制御応答性を遅くすることで、電圧のハンチングを防止するとともに、上限電流の規制側の制御応答性を早くすることで、電源電圧の低下を確実に防止している。
つまり、電子制御装置40は、電源電圧がその最低作動電圧を下回った場合にはリセットされてしまうが、その電源部に設けた平滑コンデンサ82,83に貯まった電力により所定の短時間はリセットされない。
一般に、従来の電動パワーステアリング装置は、電源電圧が最低作動電圧を下回って一旦リセットされた場合には、操舵アシスト機能が停止してしまうだけでなく、再起動するまでに時間を要する。つまり、再起動するためには、電源電圧がかなり高い値にまで上昇しなければならず、しかも再起動しても初期診断等の実施によりすぐには操舵アシスト制御を開始できない。また、リセット発生時には、操舵アシスト力が急になくなって操舵ハンドルにキックバックを生じる可能性もある。
これに対して、本実施形態の電動パワーステアリング装置1によれば、電子制御装置40のリセットを防いで、そうした不具合を抑制できる。
電源装置70の電源電圧が正常範囲であれば、通常のアシスト制御が行われる。つまり、車速センサ28からの車速信号および操舵トルクセンサ20からの操舵トルク信号を入力するとともに、図4に示すアシスト電流テーブルを参照して、基本アシスト電流Iasを算出し、この基本アシスト電流Iasを電動モータ15に通電する。これにより、運転状況に応じた最適な操舵アシスト力が得られる。
尚、この第1基準電圧V1が本発明のフィードバック制御開始電圧に相当する。
この抑制復帰制御は、上限電流値Ilimを徐々に増加させるもので、その値が最大電流値Imaxに達した段階で終了して通常のアシスト制御に移行する。
尚、この第2基準電圧V2が本発明のフィードバック制御終了電圧に相当する。
図7は、電子制御装置40の実行するアシスト制御切替ルーチンを表すもので、電子制御装置40のROM内に制御プログラムとして記憶されている。
このアシスト制御切替ルーチンは、イグニッションスイッチ80のオンにより起動し、所定の短い周期で切替し実行される。
本ルーチンの起動時においては、フラグFはF=0(通常制御)に設定されており、ステップS1の判断は「YES」となる。続いて、電源電圧を検出し、検出電圧Vxが第1基準電圧V1を下回っているかを判断する(S12)。検出電圧Vxが第1基準電圧V1以上であれば、本切替制御ルーチンを一旦抜ける。つまり、通常制御が行われる。
従って、上述した電圧フィードバック制御が開始される。これにより、電源電圧の低下が抑えられるようにアシスト電流が調整される。
図示するように、時刻t0において検出電圧Vxが第1基準電圧V1を下回ると、電圧フィードバック制御の開始により上限電流Ilimが制限されて電源電圧の低下が抑えられる。そして、電源電圧(検出電圧Vx)は、目標電圧V0近傍に維持される。
従って、抑制復帰制御に移行することとなる。
また、抑制復帰制御中に、検出電圧Vxが第1基準電圧V1まで下回らなければ、上限電流値Ilimが最大電流値Imaxに達した時点で(S22:YES)抑制復帰制御を終了して通常制御に復帰し、フラグFをF=0に設定し(S23)同様の処理を繰り返す。
更に、上限電流値Ilimの補償量を決める制御ゲインを上限電流値Ilimを規制する側(減らす側)に制御する場合は、その制御ゲインが大きく設定されているため、従来のように電源電圧の急激な低下により操舵アシスト機能が停止してしまうといった不具合を防止でき、逆に、電源電圧が上昇して上限電流値Ilimを増大する側に制御する場合には、その制御ゲインが小さく設定されるため、徐々に上限電流値Ilimが上昇することになり、電源電圧のハンチングを防止できる。
<変形例1>
第1実施形態の電圧フィードバック制御においては、微分項補償部120は、一定の微分ゲインKdを使っているが、図10に示すように、電源電圧(検出電圧Vx)に応じて可変するようにしてもよい。つまり、電源電圧が高いほど微分ゲインKdの値を小さくして過剰な操舵アシスト制限を排除し、逆に、電源電圧が低いほど微分ゲインKdの値を大きくして電源電圧低下を確実に防止するようにしてもよい。
また、微分ゲインKdに限らず比例ゲインにおいても電源電圧に応じて(例えば、電源電圧が高いほど小さな値に)可変するようにしてもよい。
第1実施形態の電圧フィードバック制御においては、微分項補償部120は、目標電圧V0と検出電圧Vxとの偏差ΔVを微分処理しているが、図13に示すように、検出電圧Vxそのものを使って微分補償量を算出するようにしてもよい。
第1実施形態のアシスト制御切替処理では、第1基準電圧V1を下回らないと電圧フィードバック制御を開始しないが、比例要素による上限電流値の補償処理(例えば、フィードバックベース部100と比例項補償部110とによるフィードバック制御)に関しては、電源電圧が高い段階から開始してもよい。
例えば、比例要素による上限電流値の補償処理は、電源電圧の低下を検出しなくても常時行うようにし、微分要素による上限電流値の補償処理(微分項補償部120の処理)については、電源電圧が所定電圧より下回った段階で開始するようにする。
また、微分要素による補償処理の開始条件となる電源電圧値は、目標電圧V0よりも制御応答性を考慮した分だけ高く設定すると、電圧低下抑制効果が大きくなって好ましい。
第1実施形態の電圧フィードバック制御においては、目標電圧V0と検出電圧Vxとの偏差ΔVに対してフィルタ処理を行っているが、検出電圧Vxに対して同様なフィルタ処理を行っても良い。
以下、電子制御装置40の実行するアシスト制御処理について説明する。
図11は、第2実施形態のアシスト制御ルーチンを表すもので、電子制御装置40のROM内に制御プログラムとして記憶され、短い周期で繰り返し実行される。
そして、検出電圧Vxが基準電圧Vr以上あれば、電源装置70が良好であるとして、ステップS32で算出された基本アシスト電流を電動モータ15に通電して(S37)本制御ルーチンを一旦抜ける。従って、電動モータ15への通電により、走行状態に応じた最適な操舵アシストトルクが得られる。
そして、その上限電流値が制限された範囲内で電動モータ15にアシスト電流を通電する。つまり、ステップS32にて算出された基本アシスト電流Iasが上限電流値Ilimよりも大きければ、上限電流値Ilimの電流を電動モータ15に通電し、基本アシスト電流Iasが上限電流値Ilimよりも小さければ、基本アシスト電流を電動モータ15に通電する。
この結果、電源電圧低下抑制と操舵操作性確保とをバランスよく図ることができる。
Claims (12)
- 電源装置から電源供給され操舵輪に対して所定の操舵力を発生する電動アクチュエータと、
操舵ハンドルの操舵状態に応じて上記電動アクチュエータへの通電量を制御するアクチュエータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、
上記電源供給される電源電圧を検出する電源電圧検出手段を備えるとともに、
上記アクチュエータ制御手段は、上記検出した電源電圧と設定電圧との偏差と対応関係にある上記電動アクチュエータの上限電流値を算出することで上記電動アクチュエータへの供給電流量を調整して、上記電源電圧が上記設定電圧になるようにフィードバック制御を行う電圧維持制御手段を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記電圧維持制御手段は、上記検出した電源電圧と上記設定電圧との偏差の比例要素と微分要素とに基づいて、あるいは上記偏差の比例要素と上記電源電圧の微分要素とに基づいて、上記電動アクチュエータの上限電流値を調整して上記電源電圧が上記設定電圧になるようにフィードバック制御することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記フィードバック制御の比例ゲインと微分ゲインの少なくとも一方を、上記電動アクチュエータの上限電流値を減らす側に制御する場合と増やす側に制御する場合とで異なる値に設定することを特徴とする請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記比例ゲインと微分ゲインの少なくとも一方を、上記電動アクチュエータの上限電流値を減らす側に制御する場合に比べて増やす側に制御する場合の値を小さく設定したことを特徴とする請求項3記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記検出した電源電圧に応じて、上記フィードバック制御の比例ゲインあるいは微分ゲインの少なくとも一方を設定することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の電動パワーステアリング。
- 上記アクチュエータ制御手段は、上記電源電圧検出手段により検出した電源電圧が所定のフィードバック制御開始電圧にまで低下したときに、上記電圧維持制御手段を作動させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記アクチュエータ制御手段は、上記検出した電源電圧が上記フィードバック制御開始電圧よりも高いフィードバック制御終了電圧にまで上昇したときに、上記フィードバック制御を終了するとともに、上記電動アクチュエータの上限電流値を所定の速度で増大していくことを特徴とする請求項6記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記電圧維持制御手段は、上記電源電圧検出手段により検出した電源電圧が所定電圧より高い場合には、上記微分要素に基づかずに上記比例要素に基づいて上記電動アクチュエータの上限電流値を調整し、上記電源電圧が上記設定電圧になるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
- 上記電源装置からの給電によりコンデンサに電荷を貯め、上記電源装置の電源電圧の低下に対して、上記コンデンサに貯めた電荷により上記アクチュエータ制御手段に電源供給されることで、上記アクチュエータ制御手段に供給される電源電圧の低下を遅らせる電源保持手段を備えるとともに、
上記電圧維持制御手段は、上記電源電圧が上記アクチュエータ制御手段の最低作動電圧を下回った場合に上記電源保持手段により上記アクチュエータ制御手段への電源電圧を上記最低作動電圧以上に保持できる期間よりも速い制御応答性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。 - 上記電源電圧検出手段で検出した電圧信号、あるいは、上記検出した電源電圧と設定電圧との偏差信号に含まれるノイズを除去するフィルタを設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
- 電源装置から電源供給され操舵輪に対して所定の操舵力を発生する電動アクチュエータと、
操舵ハンドルの操舵状態に応じて上記電動アクチュエータへの通電量を制御するアクチュエータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置において、
上記電源供給される電源電圧を検出する電源電圧検出手段と、
車両の走行速度を検出する車速検出手段と
を備えるとともに、
上記アクチュエータ制御手段は、上記検出した電源電圧が所定電圧にまで低下したときには、上記電源電圧が設定電圧以上になるまで、上記電動アクチュエータへの供給電流の上限値を、上記検出した車速に応じて決定した速度で低減していくことにより、上記電源電圧が上記設定電圧以上に維持されるように、上記電動アクチュエータの供給電流量を制御する電圧維持制御手段を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記電動アクチュエータへの供給電流の上限値を低減する速度は、上記検出した車速が所定速度を超える場合は、所定速度を超えない場合に比べて遅くしたことを特徴とする請求項11記載の電動パワーステアリング装置。
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