JP4208270B2 - 純水の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は純水の製造方法に係り、特に、被処理水に酸を添加して脱気処理した後、多段に直列配置した逆浸透(RO)膜分離装置に順次通水して純水を製造する方法において、RO膜分離装置の入口水のpH変動を抑え、RO膜分離処理に好適なpH条件を安定に維持することにより、高水質の純水を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、市水、井水、工水、回収水、その他の水から純水(一次純水)を製造する方法として、これらの水を必要に応じて前処理(除濁、除塩素)した後、酸を添加して脱炭酸処理し、脱炭酸処理水を2段に直列配置したRO膜分離装置に順次通水処理(2段RO処理)する方法がある。
【0003】
また、このような2段RO処理において、処理水質の改善を図るために、RO膜分離装置の給水に水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリを注入し、RO膜分離装置に供給される水中に残留する炭酸(CO2 )をイオン化(HCO3 -,CO3 2- )してRO処理する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特公平6−49191号公報には、原水に酸を添加した後、脱炭酸塔で脱炭酸処理し、脱炭酸処理水にアルカリを添加した後、2段RO処理する方法が記載され、また、特公平8−29315号公報には、原水に酸を添加した後、脱気装置で脱炭酸処理し、脱気処理水にアルカリを添加した後、2段RO処理する方法が記載されている。
【0005】
なお、このようにして得られる2段RO処理水は、必要に応じてイオン交換処理を施して、更に純度を高める。
【0006】
また、水の純度をより一層高めるために3段に直列配置したRO膜分離装置に順次通水処理(3段RO処理)する方法も公知であり、例えば、特開平5−220479号公報には、第1段目のRO膜として負荷電膜を用い、第1段目のRO処理水(第1段目のRO膜分離装置の透過水)にアルカリを添加した後、第2段目のRO膜分離装置及び第3段目のRO膜分離装置に順次通水し、第2,3段目のRO膜分離装置の濃縮水を前段のRO膜分離装置に返送する方法が記載されている。更に、特開平7−16565号公報には、3段RO処理において、2段目のRO膜分離装置の濃縮水のpHに基いて2段目のRO膜分離装置の給水にアルカリを添加する方法が記載されている。
【0007】
なお、従来、超純水製造工程において、活性炭処理を採用する場合があるが、従来の活性炭処理工程は、TOCの吸着除去や塩素の除去を目的とするものであり、脱炭酸処理後のRO膜分離装置への給水のpH調整を目的としたものはない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法のうち、特公平6−49191号公報及び同8−29315号公報に開示される方法では、酸添加後の水のpH幅を小さく押えても、脱炭酸処理後のpHは酸添加後のpH幅の5倍以上の変動を示す。
【0009】
例えば、図2は、水に硫酸(H2 SO4 )を添加した後、膜脱気装置で脱気処理した場合の膜脱気装置入口水(酸添加後の水)のpH変動と膜脱気装置出口水(脱気処理後の水)のpH変動を示すグラフであるが、膜脱気装置入口水のpHを4.8〜4.9の範囲に抑えても、膜脱気装置出口水のpHは5.3〜5.8と大きく変動していることがわかる。
【0010】
このように酸添加後のpH幅が±0.05であっても、脱気処理後のpH幅は±0.25にもなるのは、膜脱気装置の入口水のpH条件のわずかな変化により、脱気膜におけるCO2 除去性能が異なるものとなり、脱気処理後のpHが大きく変動することによる。
【0011】
以上のように、酸添加後脱炭酸処理する方法では、脱炭酸処理水のpH幅が大きいことから、RO処理に際してアルカリを添加した場合、pH幅を例えば±0.05というように小さくすることは極めて困難であり、RO膜分離装置の給水はpH変動の大きいものとなる。
【0012】
特に、特開平5−220479号公報に記載される3段RO処理のように、後段のRO処理の濃縮水を前段のRO膜分離装置に返送する方法を採用した場合には、当該RO膜分離装置の入口水のpHを一定に制御することは極めて困難なものとなる。なお、この方法のように、低圧の後段のRO処理の濃縮水を高圧の前段のRO膜分離装置に戻すためには、更に、この返送のためのブースターポンプ等の高圧ポンプが必要となり、コスト高騰につながる。
【0013】
また、特開平7−16565号公報に記載されるように、RO膜分離装置の濃縮水のpHに基いてアルカリ添加量を制御する方法では、RO膜分離装置における滞留時間に相当する時間のタイムラグが生じる。このため、水質変動に対応してpHを制御することが難しい。
【0014】
ところで、RO膜分離装置による処理においては、その給水の水質に応じて最適なpH条件が存在し、高水質のRO処理水を得るためには、RO膜分離装置の給水をその最適pH条件に調整する必要がある。
【0015】
しかしながら、従来においては、上述の如く、RO膜分離装置の給水のpHを最適pH条件に調整することが難しく、このため、良好な水質の処理水を安定に得ることができなかった。
【0016】
本発明は上記従来の問題点を解決し、被処理水に酸を添加して脱気処理した後、多段に直列配置したRO膜分離装置に順次通水して純水を製造する方法において、RO膜分離装置の入口水のpH変動を抑え、RO処理に好適なpH条件を安定に維持することにより、高水質の純水を製造する方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の純水の製造方法は、被処理水に酸を添加して脱気処理した後、3段に直列配置した逆浸透膜分離装置に順次通水して純水を製造する方法において、3段目の逆浸透膜分離装置の逆浸透膜が正荷電膜であり、2段目及び3段目の逆浸透膜分離装置の濃縮水を前段工程に戻し、前記脱気処理後の水を、該2段目及び3段目の逆浸透膜分離装置から返送された前記濃縮水と共に活性炭と接触させ、該活性炭接触後の水を3段に直列配置した前記逆浸透膜分離装置に順次通水することを特徴とする。
【0018】
脱気処理水を活性炭で処理して得られる水のpHは、脱気処理水より若干高く、小さいpH幅で安定している。この活性炭処理水のpH幅が小さく安定するのは、活性炭処理における撹拌、滞留、加圧効果等の物理的作用によるものが主であり、一部にイオンの吸脱着による化学的安定作用があると考えられる。また、活性炭処理水のpHが脱気処理水のpHより高いのは、活性炭には、炭酸(CO2 )をイオン化(HCO3 -,CO3 2- )する触媒的な化学作用があるためと考えられる。このような物理、化学的なpH安定化作用は、本発明に係る研究によってはじめて明らかになったものである。活性炭のほかに濾過砂のようなものを用いても物理的作用は期待できるが、上記のような化学的作用は期待できないため、pH安定効果は落ちるものである。
【0019】
本発明では、このように脱気処理水を活性炭処理することでpHを安定させ、3段RO処理の給水を容易に最適pH条件に調整することにより、高純度の純水を安定に製造する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明の純水の製造方法の実施の形態を示す系統図である。
【0022】
図示の方法は、脱気処理水を3段に直列配置したRO膜分離装置に順次通水して純水を製造するものであり、まず、市水、工水、井水、回収水(半導体製造工程等排出される使用済超純水)等に必要に応じて凝集沈殿、浮上、濾過、活性炭吸着などの前処理を施して得られる原水を、原水タンク1からポンプP−1で抜き出し、酸を添加した後、脱気装置2で脱気処理する。なお、ここで添加される酸としては硫酸(H2 SO4 )、塩酸(HCl)等が好適であり、その添加量は原水中の炭酸イオン、重炭酸イオンを炭酸の形態に変換するようなpHとなるような量であり、処理温度にもよるが、通常、脱気装置2に導入される水のpHが5以下、好ましくは5〜4以下、より好ましくは5〜4.5となる量とするのが好ましい。pH4より低くすると、後述するようにRO処理に好適なpHに調整するアルカリ剤が多くなり、好ましくない。従って、酸添加後、撹拌機M−1で十分に混合均一化した水のpHをpH計H−1で計測し、このpH計H−1に連動する薬注ポンプP−2により、上記pH範囲となるように酸添加量を制御する。制御方法としては、比例制御、またはPID制御などのコントローラにより制御する。
【0023】
脱気装置2としては、気体分離膜の一方の側に給水し、他方の透過側を減圧して水中のガス成分を除去する膜脱気装置、気液接触充填材に散水し、ガスを真空ポンプで吸引する真空脱気装置等を使用することができる。脱気装置2では、原水中の炭酸が炭酸ガスとして水から分離、除去される。脱気(脱炭酸)された水のpHは、多少上昇する。この上昇度は脱炭酸量に関係し、脱炭酸量の変化により脱気装置2からの流出水のpHは変動する。なお、この脱気処理により、水中の溶存酸素も除去される。
【0024】
脱気装置2の流出水は次いで活性炭塔3に通水される。この活性炭塔3としては、粒状活性炭の充填層を形成したものを使用し、下降流又は上向流で通水する。通水条件には特に制限はないが、通水流速としてはSV=10〜30hr-1が適当である。
【0025】
一般に、活性炭の充填層内には、微生物等が繁殖して目詰りし、1週間〜数カ月程度で逆洗したり、活性炭を取り替えたりする必要があるが、本発明では脱気処理により微生物の増殖に必要な溶存酸素が除去された水が導入されるため、活性炭塔内の微生物繁殖の問題がなく、目詰り等のトラブルも殆どない。このため、活性炭の取り替えの必要はなく、また、逆洗頻度も著しく少なくて足り、年に数回の逆洗で十分な機能を得ることができる。
【0026】
この活性炭塔3に通水することにより得られる活性炭処理水のpHは、脱気処理水のpHよりも若干高い値で、極めて小さい変動幅で安定する。
【0027】
例えば、脱気装置2の入口水のpHが4.8〜4.9の場合、前述の如く、脱気装置2の出口水のpHは脱気処理の程度の差により、pH5.3〜5.8と大きく変動するが、これを活性炭塔3に通水して得られる活性炭塔3の出口水はpH6.0〜6.1程度と、pH変動幅は極めて小さく、pH値が安定する。
【0028】
活性炭塔3の流出水は、必要により酸又はアルカリを添加してRO処理に好適なpH値に調整した後、第1段目のRO膜分離装置(以下「第1RO装置」と称す。)4、第2段目のRO膜分離装置(以下「第2RO装置」と称す。)5、第3段目のRO膜分離装置(以下「第3RO装置」と称す。)6に順次通水して純水を得る。
【0029】
ところで、RO処理に当り、RO処理の給水のpHは得られる処理水(透過水)の水質に大きく影響し、RO処理に好適なpH値が存在する。また、この好適なpH値は原水水質(主に全炭酸濃度)によって異なる。
【0030】
例えば、図3,4は、3段RO処理の給水と得られる処理水(第3RO装置の透過水)の比抵抗との関係を示すグラフであり、図3は全炭酸濃度が14ppmの原水(水道水単独)を脱気処理した後3段RO処理する場合を示し、図4は全炭酸濃度が4.3ppmの原水(水道水:回収水=3:7)を脱気処理した後3段RO処理する場合を示すものであるが、これらのグラフから、3段RO処理の給水のpHは、原水の全炭酸濃度が14ppmの場合はpH7.1程度が好ましく、原水の全炭酸濃度が4.3ppmの場合は、pH6.0〜6.1程度が好ましいことがわかる。このように、原水の全炭酸濃度に応じて、RO処理の最適pH値が異なるものとなり、全炭酸濃度が高い程最適pH値が高くなるが、これは、原水の全炭酸濃度に対応して脱気処理後の全炭酸濃度も高くなり、その分、炭酸のイオン化に必要なアルカリ量が増えるためである。アルカリ添加量を最適pH値より多くすると逆にアルカリ負荷が大となり生産水比抵抗は低下してくるため、最適pH範囲が存在する。
【0031】
このようなことから、RO処理の給水は、その原水の水質に応じて最適pH値に調整する必要がある。この場合、最適pHは原水の水質により、一概に特定できないので、装置運転開始に先立ち、最終処理水(純水)に要求される純度とRO処理の給水のpHとの関係を、給水pHを変化させることにより確認し、最適pH値を予め設定しておくのが好ましい。
【0032】
このRO処理の給水のpH調整は、狭いpH範囲で制御できる程、得られる処理水の純度が高いものとなるが、本発明では、活性炭処理によりpH値が安定した水をRO処理の給水とするため、pH調整により狭いpH範囲に容易に制御することができる。
【0033】
前述の如く、脱気処理水を活性炭処理して得られる水のpHは約6.0〜6.1であるため、図4に示す如く、原水の全炭酸濃度が4.3ppmの場合には特にpH調整することなくRO処理することができる。
【0034】
また、図3に示す如く、原水の全炭酸濃度が比較的多い場合には、一般にアルカリを添加してpHを高める必要があり、逆に原水の全炭酸濃度が比較的少ない場合には、一般に酸を添加してpHを下げる必要がある。
【0035】
ここで、アルカリとしては、水酸化ナトリウム(NaOH)等を用いることができ、また、酸としては、HCl,H2 SO4 等を用いることができる。
【0036】
図1においては、活性炭塔3の流出水に必要に応じて酸又はアルカリを添加後、撹拌機M−2で十分に混合均一化した水のpHをpH計H−2で計測し、このpH計H−1に連動するポンプP−3,P−4により、好適pH値となるように制御する。
【0037】
pH調整後の水は、高圧ポンプP−5で加圧して第1RO装置4に供給する。この第1RO装置4の給水圧力は、原水の塩類濃度にもよるが、通常の場合、5〜7.5kg/cm2 とすると、原水中の塩類,TOCの殆どを排除することができる。この第1RO装置4の濃縮水は系外へ排出し、透過水は、第1RO装置4に給水される活性炭塔3の流出水と同様に、pH計H−3とこれに連動するポンプP−6,P−7により必要に応じて酸又はアルカリを添加した後撹拌機M−3で混合し、再度pH調整した後、第2RO装置5に供給する。第2RO装置5では第2RO装置4の透過水中に微量残留する塩類が除去され、一次純水となる。特に、この第2RO装置5では残留アニオンを効果的に除去でき、アニオンは殆ど残らない。
【0038】
第2RO装置5の透過水は更に第3RO装置6に供給し、極微量残留するイオンが除去された透過水を、高純度の一次純水として取り出す。
【0039】
この一次純水は、イオン交換装置又は、サブシステム(二次純水装置)に送られ、更に高度処理され、得られた超純水は、半導体製造工程や医薬品製造工程等に供給される。
【0040】
一方、第2RO装置5及び第3RO装置6の濃縮水は、第1RO装置4でRO処理された透過水から得られる比較的良好な水質の水であるため、水回収率の向上の面から、これを前段工程に戻して再処理する。この場合、この濃縮水をRO処理のpH調整後の工程に戻すとpH変動の恐れがあり、また、高圧ポンプP−5の下流側に戻すには、前述の如く、別途ポンプを必要とするため、この高圧ポンプ及びpH調整位置よりも前段に戻す。濃縮水の好適な返送先としては、酸添加前の原水ラインや活性炭塔3の前後が考えられるが、特に、図示の如く、活性炭塔3の入口側に返送する。即ち、原水ラインに返送した場合には、脱気装置2の被処理水が増え不経済である。活性炭塔3の出口側に返送した場合にはこのような問題はないが、活性炭塔3の入口側に返送し、活性炭処理することにより、活性炭処理によるpH安定化作用でpH変動幅が小さく抑えられ、極めて有利である。
【0041】
なお、図1では、RO処理のpH調整を第1RO装置4の入口側と第2RO装置5の入口側の双方で行うが、このpH調整は、第1RO装置4の入口側のみ、或いは、第2RO装置5の入口側のみで行っても良い。
【0042】
第1RO装置4の入口側でpH調整すると、原水中の塩類の大部分を除去する第1RO装置4が最適条件となるため、効率的な処理を行える。また、第2RO装置5の入口側でpH調整すると、この水は、第1RO装置4で塩類の大部分が除去されているため、水中のイオンの影響を受けることなく容易にpH調整することができ、pH調整のための酸又はアルカリが少量で足りるという利点がある。
【0043】
図1の如く、第1RO装置4の入口側と第2RO装置5の入口側の両方でpH調整した場合には、上記効果を共に得ることができる上に、一方のpH調整手段にトラブルが発生した場合でも、他方のpH調整手段でこれを補って、水質を安定化することができる。
【0044】
本発明において、RO処理のRO膜としては、各RO装置共に、脱塩率の高いRO膜、特に脱塩率99.5%以上のRO膜を使用するのが好ましい。
【0045】
特に、図1に示す如く、3段RO処理する場合、第3RO装置6に流入する第2RO装置5の透過水は、既に2段階のRO処理を経ることで、十分に純度が高められたものである。このように純度の高い第2RO装置5の透過水をRO処理する第3RO装置6のRO膜としては、低塩類濃度域における脱塩率の高いRO膜を用いるのが好ましい。このようなRO膜であれば、2段RO処理により既にイオン濃度が相当に低減された第2RO装置の透過水中のイオンを極低濃度にまで除去して、著しく高水質の処理水を得ることができる。
【0046】
従って、この第3段RO装置6のRO膜としては、正に荷電したRO膜を使用する。
【0047】
即ち、前述の如く、第1RO装置4では原水中の塩類、TOCの殆どが除去され、第2RO装置5では特に残留アニオンが除去される。従って、第3RO装置6では、カチオンを反発してカチオンを効果的に除去する正荷電膜を用い、特に残留カチオンを効率的に除去する。
【0048】
なお、通常のRO膜は負荷電膜が一般的であり、アニオン除去効果が高い。
【0049】
本発明において3段RO処理を行う場合、第1RO装置及び第2RO装置のRO膜としては、日東電工株式会社製「ES20」、東レ株式会社製「SU910」等の負荷電膜を用いるのが好ましい。また、第3RO装置のRO膜としては、塩類濃度1〜10ppmというような低塩類濃度域における脱塩率が99%以上のRO膜、例えば、日東電工社製「NTR−719HF」,「ES10C」(共にNaCl濃度1〜10ppmでのNaCl阻止率99%以上)等の正荷電膜を用いる。
【0051】
3段RO処理を行うことにより、一層の高純度化が図れ、従来の一次純水装置で用いられているイオン交換装置を省略することができるため、本発明では3段RO処理とする。
【0052】
即ち、イオン交換装置を必要とする場合には、イオン交換樹脂の再生のための操作や薬剤、再生廃液の処理が必要となり、装置や操作が複雑となる上に、コストが高騰する。従って、3段RO処理を採用してイオン交換装置を省略するのが有利である。
【0053】
ただし、3段RO処理を採用した場合でも、より高純度の純水が必要とされる場合には、小容量の非再生型イオン交換装置で処理した後、サブシステムに送るようにしても良い。
【0054】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0055】
実施例1
図1に示す方法に従って、水道水と半導体工場の回収水とを水道水:回収水=3:7で混合した水(全炭酸濃度4.3ppm)を原水として処理を行った。この水の3段RO処理の好適pH値は、図4に示す如く、約pH6.0〜6.1である。
【0056】
まず、原水に酸(H2 SO4 )を添加してpH4.7〜4.8にした後、膜脱気装置(大日本インキ工業社製「SEPAREL EF040P」)2に通水し、真空ポンプ(リーチャリー社製「VCE−40」)で吸引した。その後、活性炭(CW10/32)塔3にSV=20hr-1で通水した。
【0057】
活性炭塔3の出口水のpHは6.0〜6.1であったので、この水をpH調整することなくそのまま、高圧ポンプP−5で運転圧15kg/cm2 で3段RO処理した。用いたRO膜は、第1RO装置4及び第2RO装置5では日東電工社製ポリアクリルアミドRO膜「ES−20」(4インチ)であり、第3RO装置6では日東電工社製ポリアクリルアミドRO膜「ES10C」である。
【0058】
その結果、第3RO装置の透過水として、比抵抗16〜17MΩ/cmの高純度の純水を安定に得ることができた。
【0059】
なお、この実施例における原水タンク1の出口水のpH,活性炭塔3の出口水のpH及び得られた純水の比抵抗の経時変化を図5に示す。
【0060】
比較例1
実施例1において、脱気処理水を活性炭塔に通水せずに直接pH調整して3段RO処理したこと以外は同様にして処理を行った。
【0061】
その結果、脱気処理水のpHは5.2〜5.8の範囲で大きく変動し、この脱気処理水にNaOHを添加してpH6.0〜6.1に調整したものの、3段RO処理の給水のpHは結果的にpH5.9〜6.5の間で変動したため、得られた純水の比抵抗は6〜16MΩ/cmとなった。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の純水の製造方法によれば、被処理水に酸を添加して脱気処理した後、3段に直列配置したRO膜分離装置に順次通水して純水を製造する方法において、RO膜分離装置の入口水のpH変動を抑え、RO処理に好適なpH条件を安定に維持することにより、高水質の純水を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の純水の製造方法の実施の形態を示す系統図である。
【図2】膜脱気装置の入口水と出口水のpH変動を示すグラフである。
【図3】3段RO処理の給水のpHと得られる処理水の比抵抗との関係を示すグラフである。
【図4】3段RO処理の給水のpHと得られる処理水の比抵抗との関係を示すグラフである。
【図5】実施例1における原水タンク1の出口水のpH,活性炭塔3の出口水のpH及び得られた純水の低抵抗の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 原水タンク
2 脱気装置
3 活性炭塔
4 第1RO装置
5 第2RO装置
6 第3RO装置
P−1,P−2,P−3,P−4,P−6,P−7 ポンプ
P−5 高圧ポンプ
M−1,M−2,M−3 撹拌機
H−1,H−2,H−3 pH計
Claims (1)
- 被処理水に酸を添加して脱気処理した後、3段に直列配置した逆浸透膜分離装置に順次通水して純水を製造する方法において、
3段目の逆浸透膜分離装置の逆浸透膜が正荷電膜であり、2段目及び3段目の逆浸透膜分離装置の濃縮水を前段工程に戻し、
前記脱気処理後の水を、該2段目及び3段目の逆浸透膜分離装置から返送された前記濃縮水と共に活性炭と接触させ、該活性炭接触後の水を3段に直列配置した前記逆浸透膜分離装置に順次通水することを特徴とする純水の製造方法。
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