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JP4293334B2 - セラミックス超多孔体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス超多孔体関し、より詳細には人工臓器等に用いられる機能性組織細胞の培養に好適な気孔率の高いセラミックス超多孔体関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、種々の植物や動物の細胞が培養されており、その培養技術の開発も進められている。
近年、細胞培養技術は、生物学的な研究だけでなく、例えば、酵素、ホルモン、抗体、核酸等の医療、薬剤、食品工学等の分野において、有用な物質を工業的に生産する方法としても注目されている。
また、再生医療においては、生体の外部で培養した細胞や組織を人工材料と共存させて、生体内の細胞や組織がもつ本来の機能を発現させ、かつ、それを長期間維持することを目的としたハイブリッド型人工臓器の研究開発が進められている。
【0003】
ところで、例えば、肝臓の機能を果たす主な細胞である肝細胞等、動物細胞の多くは、物質に付着して育成される付着依存性を有しており、一般に生体外の浮遊状態では失活し、死滅しやすい。このため、このような細胞の培養には、細胞が付着するための足場、すなわち、細胞培養用基材が必要とされる。
また、前記細胞は、単独では機能を発揮し難く、球状組織体またはスフェロイドと呼ばれる複数の細胞の凝集状態において、機能が活発化される傾向にある。
このようなスフェロイドを形成するためには、細胞、栄養分等が進入することができる幅の通路と、細胞が定着することができる大きさの空間が必要である。
【0004】
このため、前記ハイブリッド型人工臓器等に用いられる人工材料からなる細胞培養用基材としては、上記のような要件を満たす材料、構造等を有していなければならない。
例えば、人工肝臓の研究開発においては、従来、細胞培養用基材に用いられる人工材料としては、ポリウレタンフォーム等の有機化合物が用いられている。
しかしながら、ポリウレタンフォームは、原料として、生体に有害なイソシアネートが用いられており、また、その他の有機化合物についても、生体への悪影響がないことが完全には確認されておらず、安全性の面から、人体への適用は未だに行われていない。
【0005】
このため、上記のような有機化合物に代わる材料として、無機材料を用いることも研究されている。この無機材料の中でも、生体為害性のないものとして、チタン等の金属材料、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系等のセラミックス材料は、既に人体の治療のために生体内において用いられているものであり、有望視されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記細胞培養用基材として用いられているポリウレタンフォームは、気孔率が98〜99%程度と非常に高いものであり、金属やセラミックスにより、このような高い気孔率を有する多孔体を得ることは困難であった。
【0007】
例えば、セラミックス多孔体の製造方法としては、有機化合物を混入させて、これを焼き抜いて気孔を形成させる方法や、ポリウレタンフォームをセラミックス原料スラリーで被覆し、ポリウレタンを焼き抜いて気孔を形成させる方法等があるが、これらの方法によっては、気孔率85%以上、ましてや90%を超えるものを製造することはほとんど不可能である。
また、セラミックス原料スラリーを撹拌起させた状態で架橋重合剤を添加し、架橋重合させた後、焼成して、気孔率の高いセラミックス多孔体を製造する方法も提案されているが、この方法によっても、気孔率85%以上のものは、焼成時に崩壊する等、十分な強度を有するセラミックス多孔体を得ることは困難であった。
【0008】
このように、セラミックスは、焼結体であるため、気孔の制御が困難であり、しかも、脆く、崩れやすいため、上記ポリウレタンフォームのような成形体を得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、90%を超える高い気孔率を有し、気孔径および気孔相互の連通孔径も大きく、しかも、形状保持性、均質性に優れ、生体内においても使用可能であり、生体適合性に優れ、かつ、長期間使用することができるセラミックス超多孔体提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るセラミックス超多孔体は、三次元網状気孔構造からなるセラミックス多孔体であって、気孔率が91%以上99%以下であり、かつ、気孔径100μm以上2000μm以下の気孔が前記セラミックス多孔体に占める体積が50%以上であり、前記三次元網状気孔構造を形成する骨格の棒状部分の幅が、気孔相互間に形成される連通孔の孔径よりも小さく、かつ、前記骨格は中実であり、前記骨格の棒状部分の本数の少なくとも60%は、最も太い部分の断面積が、最も細い部分の断面積の2倍以下であり、前記骨格の棒状部分は、該骨格の交差部分の根元の幅の2倍以上の長さを有していることを特徴とする。
このような90%を超える高い気孔率を有するセラミックス多孔体は、触媒担体、細胞培養用基材等として好適に用いることができる。
また、このような構造からなるセラミックス超多孔体は、高気孔率にもかかわらず、構造物としての十分な強度を得ることができる。
【0011】
前記セラミックス超多孔体は、その外周および/または内部の少なくとも一部に、形状維持部材が設けられていることが好ましい。
この形状維持部材としては、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ハイドロキシアパタイトのうちの少なくとも1種からなることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面を参照して、より詳細に説明する。
本発明に係るセラミックス超多孔体は、三次元網状気孔構造からなるセラミックス多孔体であって、気孔率が91%以上99%以下であり、かつ、気孔径100μm以上2000μm以下の気孔が前記セラミックス多孔体に占める体積が50%以上であることを特徴とするものである。
本発明によれば、このような、90%を超える高い気孔率を有し、かつ、気孔径が大きく、しかも、形状保持性、均質性に優れたセラミックス超多孔体が実現可能である。
なお、上記気孔体積は、水銀ポロシメータ、顕微鏡観察等により、測定することができる。
【0013】
図1に、下記実施例1に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示す。図1においては、白い部分が、セラミックスからなる骨格部分を、黒い部分が、気孔を示している。
図1に示したセラミックス超多孔体は、気孔率95%であり、気孔径200μm以上800μm以下の気孔が前記セラミックス多孔体に占める体積が50%以上である。
【0014】
前記セラミックス超多孔体は、触媒担体、細胞培養用基材等の様々の用途に適用することができるが、特に、細胞培養用基材として用いられる場合には、後述するように、前記気孔率は、できる限り大きいことが好ましく、91%以上、より好ましくは、93%以上、さらには、95%以上であることが好ましい。
また、強度および均質性の観点から、気孔径100μm以上1000μm以下の気孔が前記セラミックス多孔体に占める体積が50%以上であることが、より好ましい。
【0015】
図9は、前記セラミックス超多孔体の三次元網状気孔構造を形成する骨格の構成を模式的に示した拡大図である。
図9に示した骨格3の棒状部分の幅aは、気孔相互間に形成される連通孔の平均孔径よりも小さい。
また、前記骨格3の棒状部分は、最も太い部分の断面積Smaxが、最も細い部分の断面積Sminの2倍以下、すなわち、Smax≦2Sminである。
さらに、前記骨格3の棒状部分の長さcは、該骨格3の交差部分の根元の幅bの2倍以上、すなわち、c≧2bである。好ましくは、4倍以上、すなわち、c≧4bである。
前記骨格3の棒状部分の本数の少なくとも60%以上が、上記のような関係を有していることが好ましい。より好ましくは、80%以上である。
このような構造からなる本発明に係るセラミックス超多孔体は、気孔径のみならず、連通孔径も大きいものであるが、骨格自体は、中実である、すなわち、内部に空洞がない状態であることにより、高気孔率にもかかわらず、構造物としての十分な強度を得ることができる。
また、前記骨格3は、その棒状部分の幅aを50μm以上150μm以下の範囲となるように制御することにより、本発明に係る超多孔体を安定して製造することが容易となる。
【0016】
上記図1に示したようなセラミックスの三次元網状気孔構造は、撹拌起泡により容易に形成することができる。撹拌起泡によれば、骨格が中空状態とならず、連通孔の歪みも小さく、かつ、気孔径の均一化を図りやすいため、十分な強度を得ることができる。
【0017】
また、前記セラミックス超多孔体を構成するセラミックスの材質としては、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ(ムライトを含む)、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、リン酸カルシウム系セラミックス等が挙げられる。これらの中でも、強度の観点から、特に、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニアを用いることが好ましい。
【0018】
また、前記セラミックス超多孔体の外周および/または内部の少なくとも一部に、該セラミックス超多孔体の強度を補充するための形状維持部材が設けられていることが好ましい。
図10に、形状維持部材の一例を模式的に示す。
図10に示した形状維持部材2は、セラミックス超多孔体1の内部に、円柱体が組み合わされたものが設けられているものである。
形状維持部材は、その他にも、セラミックス超多孔体内部にハシゴ状に形成したもの、セラミックス超多孔体の外周に円筒状や壁状に形成したもの等でもよく、その形態は特に限定されない。
また、形状維持部材を設ける方法も、特に限定されるものではなく、例えば、予め形成しておいた形状維持部材に対して接するように、セラミックス超多孔体を作製してもよい。また、セラミックス超多孔体を形成させた後、形状維持部材を接着等により複合させてもよい。
【0019】
前記形状維持部材の材質としては、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア(ムライトを含む)、シリカ、アルミナ−シリカ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ハイドロキシアパタイト等が好適に用いられる。
【0020】
前記セラミックス超多孔体、平均粒径1nm以上2μm以下のセラミックス原料粉末と、界面活性剤と、分散媒と、セラミックス原料粉末に対して40重量%以上300重量%以下の架橋重合性樹脂とを、撹拌して起泡させ、泡沫スラリーを調製する工程と、前記泡沫スラリーに架橋剤を添加して成形し、架橋重合させる工程と、前記成形体を焼成して、気孔率91%以上のセラミックス多孔体を得る工程とを経ることにより製造することができる
上記製造方法によれば、90%を超える高い気孔率を有する上記のような本発明に係るセラミックス超多孔体を容易に得ることができる。
【0021】
前記架橋重合性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂等、通常用いられるもので差し支えなく、セラミックス原料粉末に対して40重量%以上300重量%以下、より好ましくは、230重量%以上300重量%以下添加される。
さらに、泡沫スラリー中のセラミックス原料の濃度が、30重量%以下とされていることがより好ましい。
【0022】
上記製造方法において、前記界面活性剤は、セラミックススラリーの起泡剤および分散剤としての役割を果たすものであり、陰イオン系または非イオン系界面活性剤であることが好ましい。
陰イオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
また、非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体等の特殊非イオン活性剤等が好適に用いられる。
【0023】
また、前記泡沫スラリー調製工程においては、さらに、分散媒に対して0.1重量%以上5重量%以下の吸液剤を添加してもよい。
前記吸液剤としては、ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリロニトリルグラフと共重合体、架橋ポリビニルアルコール等の高分子系吸液剤、いわゆる超吸水剤が好適に用いられる。
図2に、下記実施例3において、分散媒に対して1重量%のポリアクリル酸塩を吸液剤として添加した場合に得られたセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示す。
図2に示したように、セラミックス超多孔体のセラミックスからなる骨格表面が凹凸状に形成され、多孔体内部の表面積が大きくなり、また、吸液剤が添加されていない場合に比べて、強度の向上を図ることもできる。
【0024】
前記吸液剤の添加量は、分散媒に対して0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5重量%以上1重量%以下である。
前記添加量が0.1重量%未満である場合には、上記のような、多孔体内部の表面積の増加等の効果は得られない。
一方、添加量が5重量%を超える場合には、セラミックススラリーの粘性が高くなりすぎ流動性に劣り、十分な撹拌起泡が困難となる。
【0025】
また、上記製造方法においては、さらに高い気孔率を得るため、また、連通孔径を大きくするために、前記焼成工程により得られたセラミックス多孔体は、さらに、酸により表面をエッチングしてもよい。
【0026】
上記セラミックス超多孔体は、90%を超える高い気孔率を有しているため、酸素、栄養素の供給および老廃物の除去等の物質交換を円滑に行い、細胞を均等かつ高密度で培養させることができ、しかも、高い気孔率にもかかわらず、実用上十分な強度を有しているため、セラミックス超多孔体の内部に、生体細胞を担持させて、細胞培養用基材として好適に用いることができる。
【0027】
また、前記セラミックス超多孔体は、気孔相互の連通孔径も大きく、また、気孔径が100μm以上2000μm以下の気孔がセラミックス多孔体の体積の50%以上を占めるため、均等に大きな気孔の割合が大きいため、セラミックス多孔体内部まで均等に細胞を導入することができる。
上記のように、前記セラミックス超多孔体は、細胞の足場としての役割を果たすことから、気孔率は91%以上であり、かつ、気孔径が100μm以上1000μm以下の気孔がセラミックス多孔体の体積の50%以上を占めることが好ましい。さらに、気孔率は93%以上、特に、95%以上と高いほど好ましいが、99%を超えるものは、実際上、形成困難である。
【0028】
さらにまた、前記セラミックス超多孔体の骨格表面の少なくとも一部に、細胞の定着性を向上させる観点から、細胞付着性を有する有機化合物が形成されていてもよい。
このような細胞付着性を有する有機化合物としては、分子量により細胞付着性を制御することができる観点から、高分子材料であることが好ましく、例えば、乳酸および/またはグリコール酸の重合体、乳酸および/またはグリコール酸の重合体とポリエチレングリコールとのブロック共重合体、コラーゲン等が好適に用いられる。
これらの有機化合物を多孔体の骨格表面にコーティング等によって形成させることにより、細胞培養用基材に対する細胞の定着性等の向上を図ることができる。さらに、該有機化合物内に各種増殖因子、薬剤等を含有させることにより、新たな機能を付加することができる。
【0029】
例えば、繊維芽細胞成長因子(FGF;fibroblast growthfactor)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF;vascular endothelial growth factor)、形質転換成長因子−竈(TGF−竈;transforming growth factor−竈)等の血管増殖因子を、前記細胞付着性を有する有機化合物に含有させて徐放させてもよい。
これにより、生体細胞培養においては、毛細血管の形成が促進され、細胞の活性化を図ることができる。
【0030】
前記細胞培養用基材は、上記のようなセラミックス超多孔体の優れた効果により、生体細胞機能の発現性およびその持続性に優れていることから、各種細胞や微生物の培養担体として有用であるが、特に、生体細胞が肝細胞である場合に好適に用いることができ、人工肝臓等の人工臓器として適用することができる。
また、前記細胞培養用基材は、生体適合性に優れており、セラミックス超多孔体により構成されているため、一方向への血漿等の流れが要求される人工臓器にも好適に用いることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
セラミックス原料として平均粒径1μmのアルミナ粉末85gと、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩0.65gと、分散媒として水40gとをボールミルで5時間撹拌混合して原料スラリーを得た。
この原料スラリーに、起泡剤としてポリオキシエチレン高級アルコールエーテル3.5gと、架橋重合剤としてエポキシ樹脂14gとを添加し、5分間撹拌して起泡させ、泡沫スラリーを調製した。
さらに、硬化剤としてイミノビスプロピルアミン3.8gを添加して撹拌した。このときの泡沫スラリー中のセラミックス原料以外の重量は、セラミックス原料の重量の約73%であった。
前記泡沫スラリーを120mm×120mm×40mmの成形型に鋳込み、デシケータ中で2時間静置して架橋重合によりゲル化させた後、脱型した。
得られた成形体を40℃、湿度90%の加湿状態で、72時間かけて乾燥させた後、500℃までは25℃/hr、500℃〜1600℃においては50℃/hrで昇温し、1600℃で4時間保持した後、放冷し、表1の実施例1に示すような気孔率および気孔径を有するアルミナセラミックス超多孔体を得た。
得られたアルミナセラミックス超多孔体の電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0032】
[実施例2〜5、参考例1
撹拌起泡の際の空気導入量を変化させることによって気孔率を変化させ、また、添加する界面活性剤の種類を変化させることによって連通孔径を変化させて、それ以外については、実施例1と同様の工程により、表1の実施例2〜5、参考例1に示すような気孔率および気孔径を有するアルミナセラミックス超多孔体を作製した。なお、実施例3においては、原料スラリーを調製する際、分散媒に対して約1重量%のポリアクリル酸塩を吸液剤として添加した。
実施例3〜5、参考例1において得られた各アルミナセラミックス超多孔体の電子顕微鏡写真を図2〜5に示す。
【0033】
[比較例1〜5]
撹拌起泡の際の空気導入量を変化させることによって気孔率を変化させ、また、添加する界面活性剤の種類を変化させることによって連通孔径を変化させて、それ以外については、実施例1と同様の工程により、表1の比較例1〜5に示すような気孔率および気孔径を有するアルミナセラミックス多孔体を作製した。
比較例1および5において得られた各アルミナセラミックス多孔体の電子顕微鏡写真を図6および7に示す。
【0034】
[比較例6および7]
ポリウレタンフォームにアルミナ粉末含有スラリーを含浸させ、余分なスラリーを除去し、乾燥させた後、1600℃で焼成して、表1の比較例6、7に示すような気孔率および気孔径を有するアルミナセラミックス多孔体を得た。
比較例7において得られたアルミナセラミックス多孔体の電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0035】
なお、表1に示した気孔径の範囲内にある気孔の体積が、アルミナセラミックス多孔体に占める体積は、いずれも50%以上であった。
また、表1における骨格の幅は、連通孔径と比較した場合の大小を示したものである。
比較例2の場合には、気孔率が99.5%と高すぎて、強度が不十分であり、アルミナセラミックス多孔体は、焼成時に崩壊してしまった。
また、比較例6の場合には、骨格内部が中空であり、この場合も、焼成時に崩壊してしまった。
【0036】
[実施例1’〜5’、参考例1’
実施例1〜5’、参考例1’において作製したアルミナセラミックス超多孔体にコラーゲンを0.1mg/mm2コーティングして、細胞培養用基材とした。
【0037】
[細胞培養試験
上記実施例1〜5、参考例1および比較例1〜7において作製したアルミナセラミックス多孔体をそのまま細胞培養基材とし、また、実施例1’〜5’、参考例1’において作製した細胞培養用基材を用いて、それぞれ、滅菌後、ポリスチレン製シャーレ内において、無菌状態で細胞培養試験を行った。
培養細胞としては、ラットの肝臓実質細胞の初代培養系で、生存率98%以上のものを使用した。培養液は、10%血清含有培養液を用いた。
各細胞培養用基材が用意されたシャーレに、細胞密度が培養液1ml当たり5×105個の細胞懸濁液を4ml播種して、肝細胞培養を開始した。
培養開始24時間後、無血清培養液に切り替えて培養を継続し、24時間経過するごとに、培養液を4mlずつ全交換した。
【0038】
評価は、経日的に肝の特異的機能であるアルブミン産生量を酵素免疫測定法(ELISA法;Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)により定量し、1×106個の細胞が24時間(1日)で産生するアルブミンの量に換算して、肝細胞の活性度を評価した。
これらの結果を表1に示す。
なお、最大機能発現能は、播種肝細胞数1×106個につき1日当たりのアルブミン産生量が最大であった日の産生量とする。
また、機能発現能の維持期間は、播種肝細胞数1×106個につき1日当たり10μg以上のアルブミン産生量が持続した培養日数とした。
【0039】
【表1】
Figure 0004293334
【0040】
表1に示したように、肝臓実質細胞の培養試験の結果、本発明に係るセラミックス超多孔体を用いた細胞培養用基材(実施例1〜5、参考例1)は、最大機能発現能が高く、また、機能維持期間も30日よりも長く、肝細胞培養のための良好な基材として用いることができることが認められた。また、コラーゲンコーティングした場合(実施例1’〜5’、参考例1’)も、同様に、良好な結果が得られた。
【0041】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係るセラミックス超多孔体90%を超える高い気孔率を有し、気孔径および気孔相互の連通孔径も大きく、しかも、十分な強度を有している
さらに、このセラミックス超多孔体は、形状保持性、均質性に優れており、また、生体内においても使用可能であり、生体適合性に優れ、かつ、長期間使用することができるため、細胞培養用基材、特に、生体細胞培養用基材として好適に用いることができる。
したがって、本発明に係るセラミックス超多孔体を用いた細胞培養用基材は、細胞培養キット、機能性組織細胞が生産する有用物質の大量生産用バイオリアクタ等に好適に使用することができる。
さらには、本発明に係るセラミックス超多孔体を用いた細胞培養用基材によれば、人工肝臓等のハイブリッド人工臓器等の実現化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図2】 実施例3に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図3】 実施例4に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図4】 実施例5に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図5】 参考例1に係るセラミックス超多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図6】 比較例1に係るセラミックス多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図7】 比較例5に係るセラミックス多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図8】 比較例7に係るセラミックス多孔体の顕微鏡写真を示したものである。
【図9】 本発明に係るセラミックス超多孔体の骨格の構成を模式的に示した拡大図である。
【図10】 本発明に係る形状維持部材の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 セラミックス超多孔体
2 形状維持部材
3 骨格

Claims (3)

  1. 三次元網状気孔構造からなるセラミックス多孔体であって、気孔率が91%以上99%以下であり、かつ、気孔径100μm以上2000μm以下の気孔が前記セラミックス多孔体に占める体積が50%以上であり、
    前記三次元網状気孔構造を形成する骨格の棒状部分の幅が、気孔相互間に形成される連通孔の孔径よりも小さく、かつ、前記骨格は中実であり、
    前記骨格の棒状部分の本数の少なくとも60%は、最も太い部分の断面積が、最も細い部分の断面積の2倍以下であり、
    前記骨格の棒状部分は、該骨格の交差部分の根元の幅の2倍以上の長さを有していることを特徴とするセラミックス超多孔体。
  2. その外周および/または内部の少なくとも一部に、形状維持部材が設けられていることを特徴とする請求項記載のセラミックス超多孔体。
  3. 前記形状維持部材は、アルミナ、ジルコニア、アルミナ−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ハイドロキシアパタイトのうちの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項記載のセラミックス超多孔体。
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