JP4292702B2 - 交流発電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体の回転に伴って交流出力を発生する交流発電機に関するもので、特に乗用車やトラック等の車両に搭載される内燃機関により回転駆動される車両用交流発電機に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、界磁巻線を有する回転子と、この回転子の回転に伴って交流出力を発生する三相の電機子巻線を有する固定子と、三相の電機子巻線で発生した交流出力を整流する複数個のダイオード、これらのダイオードのうち正極側ダイオードを冷却するための正極側冷却フィン、複数個のダイオードのうち負極側ダイオードを冷却するための負極側冷却フィン、および複数個のダイオードで整流された直流出力をバッテリーに取り出すための直流出力端子を有する三相整流装置と、界磁巻線の励磁電流を制御して三相の電機子巻線の発電出力を制御する電圧調整装置とを備えた車両用交流発電機が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、車両用交流発電機の直流出力端子にバッテリーを誤って逆接続した場合、車両用交流発電機内に数百A以上の大電流が流れ込み、瞬時に車両用交流発電機の電気部品、例えば電圧調整装置の電子制御回路(集積回路)が故障してしまう。この対策として、車両用交流発電機の直流出力端子に接続された充電線は、直流出力端子よりも車両側(ボデー)に固定されたヒューズやヒュージブルリンクを介してバッテリーのプラス側に接続されている。
【0004】
また、その他に、特開平10−80117号公報のように、車両用交流発電機のブラケットに補助出力端子を設け、車両用交流発電機の直流出力端子から補助出力端子までの間にヒュージブルリンクを接続したものや、特開平5−30653号公報のように、充電線からバッテリーまでの間にダイオードとリレースイッチを組み合わせてバッテリーを逆接続した場合に接続回路を遮断する構造としたものが提案されている。
【0005】
ところが、従来の車両用交流発電機においては、直流出力端子よりも車両側にヒューズやヒュージブルリンクを設けたり、車両側に保護回路を増設したりすることは、車両用交流発電機の部品点数および組付工数が増加するので、コストアップとなるという問題が生じる。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑み、交流発電機のターミナルボルトにバッテリーを誤って逆接続しても交流発電機内の電気部品が故障しないように保護する過電流保護手段を設けた場合でも、交流発電機の部品点数および組付工数の増加を最小限に止めることにより、コストダウンを図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、正極側冷却フィンに交差するように組み付けられるターミナルボルトと、このターミナルボルトの正極側冷却フィンとは逆側の端部に、バッテリーに充電電流を供給するための充電線を挟み込んで固定するための一対のナットと、ターミナルボルトおよび一対のナットと正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための絶縁部材とを備えた交流発電機において、絶縁部材に、一対のナットから正極側冷却フィンを経て電気部品へ流れる過負荷電流を遮断する過電流保護手段を一体的に設けている。
【0008】
それによって、交流発電機のターミナルボルトにバッテリーを誤って逆接続した場合でも、過電流保護手段が作動して、交流発電機の電気部品へ過負荷電流が流れ込むことはないので、交流発電機の電気部品が故障しない。したがって、ターミナルボルトおよび一対のナットと正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための絶縁部材に、過電流保護手段を一体的に設けているので、実質的な部品点数および組付工数の増加を抑えることができるので、コストダウンを図ることができる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明によれば、正極側冷却フィンの当接面とナットの当接面との間に挟み込まれた電気絶縁樹脂よりなる筒状体に、過電流保護手段をインサート成形しているので、実質的な部品点数および組付工数の増加を抑えることができるので、コストダウンを図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、過電流保護手段を、正極側冷却フィンの当接面とナットの当接面との両面に共に電気的に接続することにより、一対のナットから正極側冷却フィンへ流れる過負荷電流を遮断できるので、交流発電機の電気部品へ過負荷電流が流れ込むことはない。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、過電流保護手段を、正極側冷却フィンの当接面または前記ナットの当接面のいずれかの当接面に接続端子金具を介して電気的に接続しても良い。また、請求項4に記載の発明によれば、一対のナットと正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体に、過電流保護手段をインサート成形しているので、実質的な部品点数および組付工数の増加を抑えることができるので、コストダウンを図ることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、正極側冷却フィンの当接面と前記ナットの当接面との間に挟み込まれた電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体に、正極側冷却フィンの当接面とナットの当接面との両面にそれぞれ電気的に接続された一対の接続端子金具をインサート成形し、且つ第1絶縁部材の外周面に当接するように組み付けられる電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体に、過電流保護手段をインサート成形すると共に、一対の接続端子金具と過電流保護手段とをコネクタ接合により電気的に接続しているので、実質的な部品点数および組付工数の増加を抑えることができるので、コストダウンを図ることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、過電流保護手段として、過電流が流れるとそれ自身の発生熱で溶断するように設けられた可溶体を有するヒューズを用いても良い。また、請求項7に記載の発明によれば、ナットは、前記充電線を前記ターミナルボルトの先端側に接続する充電線接続手段であることを特徴としている。さらに、請求項8に記載の発明によれば、電気部品とは、界磁巻線へ供給する励磁電流を制御して多相の電機子巻線の出力電圧を調整する電子制御回路を有する電圧調整装置であることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
〔第1実施形態の構成〕
図1ないし図4は本発明の第1実施形態を示したもので、図1は車両用交流発電機のリヤ側構造を示した図で、図2は車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した図で、図3は車両用交流発電機の電気回路を示した図である。
【0014】
本実施形態の車両用交流発電機は、例えば乗用車やトラック等の車両に搭載される内燃機関(以下エンジンと言う)によって回転駆動されることにより発電する車両用回転発電機(車両用オルタネータとも言う)である。この車両用交流発電機は、外郭を形成するハウジング1と、このハウジング1内において回転自在に支持されて、例えば周方向にN極とS極とが交互に配置される複数個の爪状磁極片を持つランデル型のポールコア(図示せず)の中央部に巻装された界磁巻線2を有する回転子と、ハウジング1の内周に支持固定された固定子鉄心(図示せず)に巻装された三相の電機子巻線3を有する固定子と、ハウジング1の後端側に一体的に設置された電圧調整装置4と、この電圧調整装置4の近傍に設置された三相整流装置5と、この三相整流装置5の端部に設けられた直流出力ターミナル装置6と、バッテリー7へ充電電流を供給するための充電線8とから構成されている。
【0015】
ハウジング1は、一対のフロントフレーム11およびリヤフレーム12よりなる。フロントフレーム11およびリヤフレーム12には、ポールコアの軸方向の両端面に取り付けられた冷却ファン(図示せず)の回転に伴って冷却風が通過する通気孔11a、12aが多数形成されている。また、リヤフレーム12は、複数本のスタッドボルト14を用いてフロントフレーム11のリヤ側端面に締め付け固定されている。また、リヤフレーム12のリヤ側には、三相整流装置5を構成する整流装置構成部材およびリヤカバー13が複数個の固定ボルト15およびナット16を用いて締め付け固定されている。なお、リヤカバー13には、冷却風が通過する通気孔13aが多数形成されている。
【0016】
回転子は、界磁として働く部分で、フロント側端部にプーリを固定したシャフト(回転軸)と一体的に回転するロータである。界磁巻線2は、ランデル型のポールコアの中央部に巻回された界磁コイルで、両端の端末部が2個のスリップリング18にそれぞれ電気的に接続されている。そして、界磁巻線2に励磁電流が流れると、ランデル型のポールコアの一方の爪状磁極片が全てN極となり、他方の爪状磁極片が全てS極となる。なお、2個のスリップリング18は、2個のブラシ19と摺接することにより電圧調整装置4から励磁電流が供給される。
【0017】
三相の電機子巻線3は、固定子鉄心(電機子鉄心、ステータコア)の多数のスロットに巻装され、ポールコアの回転に伴って三相交流出力が誘起する電機子巻線(ステータコイル)であって、Y結線により接続されている。また、三相の電機子巻線3の中性点および各端末線は、図4(a)に示したように、三相整流装置5の各交流入力端子29に電気的に接続されている。なお、三相の電機子巻線3をΔ結線しても良い。
【0018】
電圧調整装置4は、本発明の電気部品に相当するもので、界磁巻線2へ供給する励磁電流を制御して三相の電機子巻線3の出力電圧を調整するハイブリッドIC等の集積回路(電子制御回路:図示せず)を有している。この電圧調整装置4は、バッテリー7や三相整流装置5等の他の電気部品と電気的に接続するための各種外部接続端子が電気絶縁樹脂にインサート成形された端子台(図示せず)、およびこの端子台内に保持された発熱部品を冷却するための冷却フィン21等から構成されている。また、端子台は、内部にハイブリッドIC等の集積回路を収容しており、車両用交流発電機の外部の電気部品(例えばバッテリー7)に接続するための略長円筒形状のコネクタ部22を一体成形している。そして、冷却フィン21は、端子台と共にリヤフレーム12に固定ねじ(図示せず)により締め付け固定されている。
【0019】
なお、各種外部接続端子として、正極側直流出力端子(B端子)、発電検出用入力端子(P端子)、励磁電流出力端子(F端子)、アース端子(E端子)、バッテリー7の正極側にイグニッションスイッチ24を介して電気的に接続する外部接続端子(IG端子)、バッテリー電圧を検出するための電圧検出用端子(S端子)、チャージランプ25に電気的に接続する外部接続端子(L端子)等を有している。ここで、イグニッションスイッチ24およびバッテリー7の正極側は、スイッチ26を介して電気負荷(例えば照明装置、表示装置、警報装置または空調装置等の車載電気部品)27に電気的に接続されている。
【0020】
三相整流装置5は、図4(a)、(b)に示したように、端子台31、絶縁スペーサ32、正極側冷却フィン33および負極側冷却フィン34等を積層して構成されている。端子台31は、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等の電気絶縁樹脂よりなり、内部に4個の交流入力端子29をインサート成形した端子保持部材である。絶縁スペーサ32は、PPS樹脂等の電気絶縁樹脂よりなり、端子台31のボス部31aの外周に嵌め合わされ、正極側冷却フィン33と負極側冷却フィン34とを電気的に絶縁するためのインシュレータである。正極側冷却フィン33と負極側冷却フィン34とは、所定の絶縁隙間を隔てて重なり合うように積層されて、純アルミニウム等の熱伝導性に優れる導電性金属板により略C字形状に一体成形され、リヤフレーム12の側壁面に沿うように配されている。正極側、負極側冷却フィン33、34は、正極側、負極側ダイオード35、36を4個ずつ保持固定すると共に、正極側、負極側ダイオード35、36の発熱を放熱する放熱フィンである。
【0021】
複数個の正極側、負極側ダイオード35、36は、三相の電機子巻線3で発生した交流出力を整流して直流出力に変換する複数個の整流素子である。これらの正極側、負極側ダイオード35、36の一端側の各リード線35a、36aは、図4(a)に示したように、各交流入力端子29に半田付け等の手段により電気的に接続され、他端側は、正極側、負極側冷却フィン33、34の各保持部33a、34aに半田付け等の手段により電気的に接続されている。4個の正極側ダイオード35は、本発明の正極側整流素子を構成する。
【0022】
また、正極側、負極側冷却フィン33、34には、複数個のパイプリベット37が挿通する複数個の貫通穴がそれぞれ形成されている。また、正極側冷却フィン33の端部には、直流出力ターミナル装置6を取り付けるための丸穴形状の取付穴38が形成されている。なお、これらの端子台31、絶縁スペーサ32、正極側、負極側冷却フィン33、34およびパイプリベット37等の整流装置構成部材は、図4(b)に示したように、複数個の固定ボルト15およびナット16によりリヤカバー13と共に、リヤフレーム12の共締め支持部39に締め付け固定されている。
【0023】
直流出力ターミナル装置6は、正極側冷却フィン33の取付穴38内に挿入または圧入されたターミナルボルト40と、このターミナルボルト40の先端部に組み付けられる一対のナット41、42と、正極側冷却フィン33とターミナルボルト40および一対のナット41、42とを電気的に絶縁するための絶縁部材とから構成されている。
【0024】
ターミナルボルト40は、正極側冷却フィン33の図示下端面側に配置されて、正極側冷却フィン33の図示上端面(当接面)より先端側が突出するように取付穴38内に保持される鍔状部51、およびこの鍔状部51の中央部より軸方向外方(図示上方)に延びる軸状部52等を有している。軸状部52は、正極側冷却フィン33の面方向に対して直交する方向(正極側冷却フィン33の板厚方向、三相整流装置5の積層方向)に延びるように設けられている。軸状部52の先端部の外周には、一対のナット41、42が螺合する雄ねじ部(外周ねじ部)53が形成されている。
【0025】
一対のナット41、42間には、バッテリー7に充電電流を供給するための充電線8の接続端子金具23が挟み込まれている。一対のナット41、42は、充電線8をターミナルボルト40の軸状部52の先端側に接続する充電線接続手段である。なお、充電線8の接続端子金具23に設けられた取付穴(図示せず)をターミナルボルト40の軸状部52に嵌め合わせた後に、一対のナット41、42間に挟み込まれる。
【0026】
絶縁部材は、正極側冷却フィン33とターミナルボルト40とを電気的に絶縁するための筒状のインシュレータ43、および正極側冷却フィン33と一対のナット41、42とを電気的に絶縁するための筒状のブッシュ44等から構成されている。インシュレータ43は、PPS樹脂等の電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体で、正極側冷却フィン33の取付穴38内に挿入または圧入されている。このインシュレータ43は、正極側冷却フィン33の図示下端面とターミナルボルト40の鍔状部51の図示上端面との間に挟み込まれる円環状の鍔状部54、および正極側冷却フィン33の穴壁面と軸状部52の外周面との間に挟み込まれた円筒状部55等から構成されている。なお、円筒状部55内には、ターミナルボルト40の軸状部52が挿通する挿通孔55aが形成されている。
【0027】
ブッシュ44は、ゴム等の電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体(本発明の筒状体に相当する)で、軸状部52の外周に嵌め合わされ、正極側冷却フィン33の当接面と一対のナット41、42の当接面との間に挟み込まれて保持固定されている。そして、ブッシュ44は、電気絶縁樹脂に、後記する保護回路9がインサート成形されている。このブッシュ44の図示下端面には、正極側冷却フィン33の図示上端面(当接面)に液密的に密着(接触)するフィン側接触面が形成され、図示上端面には、一対のナット41、42の図示下端面(当接面)に液密的に密着(接触)するナット側接触面が形成されている。
【0028】
なお、ブッシュ44の図示下端面には、正極側冷却フィン33の当接面が当接する座部56が設けられ、ブッシュ44の図示上端面には、一対のナット41、42の当接面が当接する座部57が設けられている。また、座部57は、ブッシュ44の図示上端面よりも所定寸法だけ凹んだ凹状部58に設けられている。また、ブッシュ44内には、ターミナルボルト40の軸状部52が挿通する挿通孔44aが形成されている。
【0029】
保護回路9は、車両用交流発電機の電気部品(例えば電圧調整装置4の集積回路)が故障しないように保護するための過電流保護手段を含んで構成される導電線で、ブッシュ44を構成する電気絶縁樹脂にインサート成形されている。この保護回路9は、一対のナット41、42から正極側冷却フィン33へ流れる過負荷電流を遮断するヒューズ10、このヒューズ10の一端側に半田付けや溶接等により接続された接続端子金具(ターミナル)48、およびヒューズ10の他端側に半田付けや溶接等により接続された接続端子金具(ターミナル)49等を有している。
【0030】
そして、ヒューズ10は、本発明の過電流保護手段に相当するもので、車両用交流発電機の許容電流以上の過電流が流れるとそれ自身の発生熱で溶断するように設けられた可溶体(ヒューズエレメント)を有している。可溶体の一端は、正極側冷却フィン33の接触面に接続端子金具48を介して直列接続され、可溶体の他端は、一対のナット41、42の接触面に接続端子金具49を介して直列接続されている。なお、可溶体の素材としては、一般に銀、銅、亜鉛、錫、鉛あるいはこれらの合金が使用される。接続端子金具48、49の端部は、正極側冷却フィン33、一対のナット41、42の接触面への接触面積を大きくするために略円環状に形成されている。この円環状部48a、49aは、ブッシュ44の筒方向の両端面にて露出している。なお、接続端子金具48、49は、純アルミニウム等の導電性金属が使用される。
【0031】
〔第1実施形態の組付方法〕
次に、本実施形態の直流出力ターミナル装置6の組付方法を図1および図2に基づいて簡単に説明する。
【0032】
先ず、正極側冷却フィン33の取付穴38内に、鍔状部54が正極側冷却フィン33の図示下端面側に位置するように、インシュレータ43の円筒状部55を差し込む。次に、正極側冷却フィン33の図示上端面(当接面)よりターミナルボルト40の軸状部52の先端側が突出するように、軸状部52を円筒状部55の挿通孔55a内に挿入または圧入する。
【0033】
次に、ターミナルボルト40の軸状部52の外周に、保護回路9、すなわち、ヒューズ10、接続端子金具48、49をインサート成形したブッシュ44を嵌め合わせる。次に、ブッシュ44の図示上端面(座部57)よりも図示上方に突出した軸状部52の雄ねじ部53に一対のナット41、42を螺合させる。そして、工具を用いて一対のナット41、42を軸状部52に締め付けることにより、ターミナルボルト40の鍔状部51の図示上端面と一対のナット41、42の図示下端面との間に、インシュレータ43の鍔状部54、正極側冷却フィン33およびブッシュ44が軸方向(正極側冷却フィン33の板厚方向)に積層された状態で締め付け固定される。
【0034】
次に、充電線8の接続端子金具23に設けられた取付穴をターミナルボルト40の軸状部52に引っ掛けて嵌め合わせた後に、軸状部52の雄ねじ部53にナット41を螺合させる。そして、工具を用いてナット41を軸状部52に締め付けることにより、ナット41の図示下端面とナット42の図示上端面との間に、充電線8の接続端子金具23が挟み込まれて締め付け固定される。これらにより、複数の保持部33aにて各正極側ダイオード35が半田付け等された正極側冷却フィン33は、保護回路9(接続端子金具48、ヒューズ10、接続端子金具49)、一対のナット41、42を介して、バッテリー7に充電電流を供給するための充電線8の接続端子金具23と電気的に接続されることになる。
【0035】
〔第1実施形態の作用〕
次に、本実施形態の車両用交流発電機の作用を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
【0036】
エンジンが停止している時に、イグニッションスイッチ24をONすると、IG端子にバッテリー電圧が加わるので、これを電圧調整装置4が検出し、界磁巻線2に初期励磁電流を流す。このとき、車両用交流発電機の回転子がまだ回転していないので、発電が行われず、P端子の電圧は0Vで、これを電圧調整装置4が検出し、チャージランプ25を点灯させる。
【0037】
エンジンの回転動力がベルト等の伝動手段を介してプーリに伝達されると、シャフトが回転することにより回転子が回転する。このとき、シャフトと一体的にランデル型のポールコア、界磁巻線2および2個のスリップリング18が回転する。そして、電圧調整装置4の作用によりF側、B側ブラシターミナル、2個のブラシ19、2個のスリップリング18を介して界磁巻線2に励磁電流が供給されることにより、ポールコアの一方の爪状磁極片が全てN極となり、他方の爪状磁極片が全てS極となる。
【0038】
そして、回転子と相対回転する固定子の固定子鉄心に巻かれた三相の電機子巻線3に順次交流電流が誘起する。この三相の交流電流は、各交流入力端子29を経て4個の正極側ダイオード35および4個の負極側ダイオード36に入力されることにより、三相の交流電流が整流され直流電流に変換される。そして、三相の電機子巻線3の発電電圧がバッテリー電圧を越えると、三相整流装置5によって整流された直流電流が正極側冷却フィン33→接続端子金具48→ヒューズ10→接続端子金具49→ナット42→接続端子金具23→充電線8を経てバッテリー7に供給される。これにより、バッテリー7に充電電流が流れることによりバッテリー7が充電される。
【0039】
〔第1実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置6は、正極側冷却フィン33とターミナルボルト40とを、正極側冷却フィン33とターミナルボルト40との間に圧入または挿入される電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体としてのインシュレータ43によって電気的に絶縁するように構成している。また、接続端子金具23を挟み込んで締め付け固定することで、バッテリー7へ充電電流を供給するための充電線8の端末線を電気的に接続するための一対のナット41、42と三相整流装置5の正極側冷却フィン33とを、正極側冷却フィン33の当接面と一対のナット41、42の当接面との間に挟み込まれる電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体としてのブッシュ44によって電気的に絶縁するように構成している。
【0040】
したがって、一対のナット41、42の当接面と正極側冷却フィン33の当接面との間に電気的に接続されるヒューズ10を含んで構成される導電線(保護回路9)は、従来では一対のナット41、42と正極側冷却フィン33とを電気的に接続するターミナルボルト40に対して独立した導電体となり、ターミナルボルト40に充電電流は流れることはなく、ターミナルボルト40を介してバッテリー7と車両用交流発電機の電気部品(電圧調整装置4、三相整流装置5)とが導通することはない。これにより、バッテリー7と車両用交流発電機の電気部品とは、一対のナット41、42の当接面と正極側冷却フィン33の当接面との間に形成される保護回路9を介して電気的に接続される。
【0041】
そして、ターミナルボルト40にバッテリー7を誤って逆接続しても、車両用交流発電機内の電気部品(例えば電圧調整装置4の集積回路等)が故障しないように保護する保護回路9の途中に接続したヒューズ10をブッシュ44内にインサート成形している。すなわち、ヒューズ10をインサート成形したブッシュ44を、インシュレータ43を介して挿入または圧入されたターミナルボルト40の鍔状部51と一対のナット41、42との間に挟み込んで締め付け固定している。
【0042】
それによって、車両用交流発電機のターミナルボルト40にバッテリー7を誤って逆接続した場合でも、車両用交流発電機の許容電流以上の過電流が保護回路9に流れ、ヒューズ10自身の発生熱でヒューズ10が溶断することにより、車両用交流発電機内の電気部品(例えば電圧調整装置4の集積回路等)へ過負荷電流が流れ込むことはないので、交流発電機内の電気部品が故障しない。
【0043】
また、本実施形態の車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置6では、車両用交流発電機内の電気部品が故障しないように保護する保護回路9の途中に接続したヒューズ10を、本来は正極側冷却フィン33と一対のナット41、42とを電気的に絶縁するための電気絶縁樹脂よりなるブッシュ44内にインサート成形している。これにより、車両用交流発電機内に保護回路9を一体的に構成することができる。すなわち、車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置6を構成する部品は、実質的に増加することはないので、従来の技術で発生する部品点数および組付工数の増加を最小限に止めることが可能となる。これにより、車両用交流発電機のコストダウンを図ることができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図5は本発明の第2実施形態を示したもので、車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した図である。
【0045】
本実施形態のブッシュ44は、フィン接触面側が接続端子金具48で正極側冷却フィン33の当接面に間接的に接続し、ナット接触面側がヒューズ10で一対のナット41、42の当接面に直接的に接続し、これらを電気絶縁樹脂によりインサート成形している。なお、ヒューズ10の図示上端部は、一対のナット41、42の接触面への接触面積を大きくするために略円環状に形成されている。この円環状部10aは、ブッシュ44の図示上端面(座部57)にて露出している。
【0046】
〔第3実施形態〕
図6は本発明の第3実施形態を示したもので、車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した図である。
【0047】
本実施形態のブッシュ44は、フィン接触面側がヒューズ10で正極側冷却フィン33の当接面に直接的に接続し、ナット接触面側が接続端子金具49で一対のナット41、42の当接面に間接的に接続し、これらを電気絶縁樹脂によりインサート成形している。なお、ヒューズ10の図示下端部は、正極側冷却フィン33の接触面への接触面積を大きくするために略円環状に形成されている。この円環状部10bは、ブッシュ44の図示下端面(座部56)にて露出している。
【0048】
〔第4実施形態〕
図7は本発明の第4実施形態を示したもので、車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した図である。
【0049】
本実施形態のブッシュ44は、フィン接触面側がヒューズ10で正極側冷却フィン33の当接面に直接的に接続し、ナット接触面側もヒューズ10で一対のナット41、42の当接面に直接的に接続し、これらを電気絶縁樹脂によりインサート成形している。なお、ヒューズ10の両端部には、円環状部10a、10bがそれぞれ設けられている。
【0050】
〔第5実施形態〕
図8は本発明の第5実施形態を示したもので、車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した図である。
【0051】
本実施形態の絶縁部材は、ターミナルボルト40および一対のナット41、42と正極側冷却フィン33とを電気的に絶縁するための第1絶縁部材(以下ブッシュ44と言う)、およびこのブッシュ44とは独立して設けられた第2絶縁部材(以下ヒューズホルダ61と言う)を有している。ブッシュ44は、正極側冷却フィン33の当接面と一対のナット41、42の当接面との間に挟み込まれた電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体である。
【0052】
そして、ブッシュ44は、正極側冷却フィン33の当接面と一対のナット41、42の当接面との両面にそれぞれ電気的に接続された一対の接続端子金具(雌型コネクタ端子)48、49がインサート成形されている。接続端子金具48、49の端部は、正極側冷却フィン33、一対のナット41、42の接触面への接触面積を大きくするために略円環状に形成されている。この円環状部48a、49aは、ブッシュ44の筒方向の両端面にて露出している。なお、接続端子金具48、49は、純アルミニウム等の導電性金属が使用される。
【0053】
ヒューズホルダ61は、ブッシュ44の外周面に当接するように組み付けられる電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体である。そして、ヒューズホルダ61は、車両用交流発電機の電気部品(例えば電圧調整装置4の集積回路)が故障しないように保護するための保護回路(過電流保護手段を含んで構成される導電線)62がインサート成形されている。
【0054】
なお、保護回路62は、一対のナット41、42から正極側冷却フィン33へ流れる過負荷電流を遮断するヒューズ(図示せず)、このヒューズの一端側に半田付けや溶接等により接続された接続端子金具(雄型コネクタ端子)63、およびヒューズの一端側に半田付けや溶接等により接続された接続端子金具(雄型コネクタ端子)64等を有している。そして、接続端子金具63、64は、一対の接続端子金具48、49とコネクタ接合により電気的に接続されるように構成されている。
【0055】
〔他の実施形態〕
本実施形態では、本発明を、例えば乗用車やトラック等の車両に搭載される内燃機関(エンジン)により回転駆動される車両用交流発電機(車両用オルタネータとも言う)に適用したが、本発明を、車両搭載用エンジンを除く内燃機関、電動モータ、水車、風車等の駆動源により回転駆動される交流発電機に適用しても良い。
【0056】
本実施形態では、複数個の整流素子として複数個の正極側、負極側ダイオード35、36を使用したが、複数個の整流素子としてMOS−FET等の半導体スイッチング素子を使用しても良い。また、本実施形態では、正極側冷却フィン33と負極側冷却フィン34とが所定の絶縁隙間を隔てて重なり合うように積層されているが、正極側冷却フィン33と負極側冷却フィン34とが所定の絶縁隙間を隔てて同一平面上に位置するように配しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用交流発電機のリヤ側構造を示した平面図である(第1実施形態)。
【図2】図1のA−A断面図である(第1実施形態)。
【図3】車両用交流発電機の電気回路を示した回路図である(第1実施形態)。
【図4】(a)、(b)は車両用交流発電機の三相整流装置の主要構造を示した断面図である(第1実施形態)。
【図5】車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した断面図である(第2実施形態)。
【図6】車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した断面図である(第3実施形態)。
【図7】車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した断面図である(第4実施形態)。
【図8】車両用交流発電機の直流出力ターミナル装置を示した斜視図である(第5実施形態)。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 界磁巻線
3 三相の電機子巻線
4 電圧調整装置(電気部品)
5 三相整流装置
6 直流出力ターミナル装置
7 バッテリー
8 充電線
9 保護回路(過電流保護手段を含んで構成される導電線)
10 ヒューズ(過電流保護手段)
33 正極側冷却フィン
34 負極側冷却フィン
35 正極側ダイオード(正極側整流素子)
36 負極側ダイオード(負極側整流素子)
40 ターミナルボルト
41 ナット(充電線接続手段)
42 ナット(充電線接続手段)
48 接続端子金具
49 接続端子金具
43 インシュレータ(絶縁部材、第1筒状体)
44 ブッシュ(絶縁部材、第2筒状体)
Claims (8)
- (a)界磁巻線を有する回転子と、
(b)この回転子の回転に伴って交流出力を発生する多相の電機子巻線を有する固定子と、
(c)前記多相の電機子巻線で発生した交流出力を整流して直流出力に変換する複数個の整流素子と、
(d)これらの整流素子のうち正極側の整流素子を冷却するための正極側冷却フィンと、
(e)この正極側冷却フィンに交差するように組み付けられるターミナルボルトと、
(f)このターミナルボルトの前記正極側冷却フィンとは逆側の端部に、バッテリーに充電電流を供給するための充電線を挟み込んで固定するための一対のナットと、
(g)前記ターミナルボルトおよび前記一対のナットと前記正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための絶縁部材と、
(h)この絶縁部材に一体的に設けられて、前記一対のナットから前記正極側冷却フィンを経て電気部品へ流れる過負荷電流を遮断する過電流保護手段とを備えた交流発電機において、
前記絶縁部材は、前記正極側冷却フィンの当接面と前記ナットの当接面との間に挟み込まれた電気絶縁樹脂よりなる筒状体で、
前記筒状体には、前記過電流保護手段がインサート成形されていることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1に記載の交流発電機において、
前記過電流保護手段は、前記正極側冷却フィンの当接面と前記ナットの当接面との両面に共に電気的に接続されていることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1に記載の交流発電機において、
前記過電流保護手段は、前記正極側冷却フィンの当接面または前記ナットの当接面のいずれかの当接面に接続端子金具を介して電気的に接続されていることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1ないし請求項3のうちいずれかに記載の交流発電機において、
前記絶縁部材は、前記ターミナルボルトと前記正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体、および前記一対のナットと前記正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体を有し、
前記第2筒状体には、前記過電流保護手段がインサート成形されていることを特徴とする交流発電機。 - (a)界磁巻線を有する回転子と、
(b)この回転子の回転に伴って交流出力を発生する多相の電機子巻線を有する固定子と、
(c)前記多相の電機子巻線で発生した交流出力を整流して直流出力に変換する複数個の整流素子と、
(d)これらの整流素子のうち正極側の整流素子を冷却するための正極側冷却フィンと、
(e)この正極側冷却フィンに交差するように組み付けられるターミナルボルトと、
(f)このターミナルボルトの前記正極側冷却フィンとは逆側の端部に、バッテリーに充電電流を供給するための充電線を挟み込んで固定するための一対のナットと、
(g)前記ターミナルボルトおよび前記一対のナットと前記正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための絶縁部材と、
(h)この絶縁部材に一体的に設けられて、前記一対のナットから前記正極側冷却フィンを経て電気部品へ流れる過負荷電流を遮断する過電流保護手段とを備えた交流発電機において、
前記絶縁部材は、前記ターミナルボルトおよび前記ナットと前記正極側冷却フィンとを電気的に絶縁するための第1絶縁部材、およびこの第1絶縁部材とは独立して設けられた第2絶縁部材を有し、
前記第1絶縁部材は、前記正極側冷却フィンの当接面と前記ナットの当接面との間に挟み込まれた電気絶縁樹脂よりなる第1筒状体で、
前記第2絶縁部材は、前記第1絶縁部材の外周面に当接するように組み付けられる電気絶縁樹脂よりなる第2筒状体であり、
前記第1筒状体には、前記正極側冷却フィンの当接面と前記ナットの当接面との両面にそれぞれ電気的に接続された一対の接続端子金具がインサート成形され、
前記第2筒状体には、前記一対の接続端子金具とコネクタ接合により電気的に接続される前記過電流保護手段がインサート成形されていることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1ないし請求項5のうちいずれかに記載の交流発電機において、
前記過電流保護手段は、過電流が流れるとそれ自身の発生熱で溶断するように設けられた可溶体を有するヒューズであることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1ないし請求項6のうちいずれかに記載の交流発電機において、
前記一対のナットは、前記充電線を前記ターミナルボルトの先端側に接続する充電線接続手段であることを特徴とする交流発電機。 - 請求項1ないし請求項6のうちいずれかに記載の交流発電機において、
前記電気部品とは、前記界磁巻線へ供給する励磁電流を制御して前記多相の電機子巻線の出力電圧を調整する電子制御回路を有する電圧調整装置であることを特徴とする交流発電機。
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