JP4283360B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はプラズマ処理装置に関し、特に、半導体産業における集積回路上での化学的気相成長あるいはミクロン規模要素のエッチングの処理に有用なイオン、電子、中性ラジカル、紫外線、可視光を供給できる改善されたプラズマ源を備えたプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体産業への300mmSi(シリコン)ウェハー(基板)の進展に伴って、処理されるべき基板の表面全体にわたって均一なプラズマ密度を有する高密度プラズマが大きく要求されている。例えば200mmウェハーを処理するために設計された現存するプラズマ装置の規模を拡大することが上記要求を満足させるための1つのアプローチであるとしても、現存するプラズマ装置のハードウェア上の困難性がそのようにすることを妨げる。このことは図15と図16に従って2つの従来のプラズマ源を利用して説明され、これらの2つのプラズマ源は主に従来の200mmウェハー用のプラズマ処理装置に用いられている。
【0003】
図15に示された従来のプラズマ源の一例は金属で作られた反応容器50を備え、この反応容器はトッププレート51とボトムプレート52と円筒型側壁53によって形成されている。反応容器50において、ウェハーすなわち基板61が置かれた基板ホルダ54はボトムプレート52に近い下側位置に配置され、基板ホルダはトッププレート51とボトムプレート52の両者に対し平行である。基板ホルダ54は絶縁体57によって反応容器50から電気的に絶縁されており、高周波電源55によって整合回路56とキャパシタ60を通して高周波電流が供給されている。反応容器50はワイヤ58を通して電気的に接地されている。反応容器50の構成によれば、プラズマは、高周波電力の静電結合に基づいてトッププレート51と基板ホルダ54の間のスペース59で発生させられる。図15に示されたプラズマ源は単一高周波電力供給システムである。
【0004】
図16は従来のプラズマ源の他の例を示す。この例では、反応容器70の構成は、付加された高周波電極71を除いて、図15に示された反応容器50とほとんど同じである。反応容器70は、同様にまたトッププレート51とボトムプレート52と円筒型側壁53を有し、金属で作られる。さらに反応容器70は基板61が載置された基板ホルダ54、高周波電源55、整合回路56、キャパシタ60、絶縁体57、そしてワイヤ58が備えられている。高周波電極71は基板ホルダ54に平行なトッププレート50の少し下側に配置されている。上部の高周波電極71は反応容器70から電気的に絶縁されており、整合回路73を通して高周波電源72から高周波電流が与えられる。高周波電極71に供給される高周波電流の周波数は、通常、基板ホルダ54に供給される周波数と同じか、あるいは、当該周波数よりも高い。プラズマは高周波電極71と基板ホルダ54の間で高周波電力の静電結合によって発生させられる。図16に示されたプラズマ源は2高周波電力供給システムである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図15と図16に示された従来のプラズマ源の主たる問題の1つは高周波電源(55,72)からプラズマへの電力伝送効率が低いということである。このことは、使用された高周波電力のかなりの部分が望ましくないイオン加速に消費されたことに起因する。これは静電結合型プラズマの固有な属性である。これは低いプラズマ密度という結果をもたらす。さらに、300mmウェハーの処理は0.25ミクロン技術に結び付けられるので、化学的処理は低い圧力、例えば約10mTorr という圧力において実行されなければならないということが考慮される。しかしながら、静電的に結合されるプラズマのプラズマ密度は、圧力の低下と共にさらに低下する。こうして、経済的に実行可能な装置に要求されるより高い処理速度を達成することを得ることができない。
【0006】
もし処理されるべき基板の直径が小さいとき、例えば200mmであるとき、プラズマ密度を増大させるようにより大きい高周波電力を適用することができる。しかしながら、もし処理されるべき基板の直径が300mmであるならば、適用される高周波電力は少なくとも同じ電力密度を維持するために2.25倍だけ増加されなければならない。何故ならば、300mmウェハーの表面面積は200mmウェハーの表面面積よりも2.25倍大きいからである。それ故に、望ましい電力密度を維持するための高周波電力に関する要求はいくつかの応用に制限されることになる。
【0007】
加えて、200mmウェハー処理装置を300mmウェハー処理装置として用いるべくその規模を大きくするとき、処理チャンバにおける排気速度も同様にまた同じ反応速度を維持するために増大させられなければならない。
【0008】
上記ハードウェアにおける困難性のため、図15と図16に示された200mmウェハー用の従来のプラズマ源は、300mmウェハープラズマ源用に単純にその規模を大きくすることはできない。これらの問題を避けるために、直径300mmの領域にわたってより高いプラズマ密度を作り出すプラズマ源を設計することが重要である。さらに300mmウェハーの表面全体にわたってより高いプラズマの均一性がなければならない。何故ならば、プラズマアシスト異方性エッチング方法のごときいくつかの半導体処理方法は、処理されるべき基板の表面全体にわたって95%より良好なプラズマ均一性を必要とする。
【0009】
本発明の目的は、磁気的に強化され静電的に結合された平面状プラズマを作り、半導体産業で用いられる大面積基板の化学的気相成長とエッチングのため、静電結合機構とカスプ磁界による電子の閉じ込め効果との組合せによって大面積にわたって均一なプラズマ密度を有する高密度プラズマを生成できるプラズマ処理装置を提供することにある。
【0010】
さらに本発明の他の目的は、低アスペクト比のプラズマ源を実現することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマ処理装置は、上記目的を達成するために、非磁性金属で作られたトッププレートと、金属で作られたボトムプレートと、少なくとも一部に誘電体物質によって作られた部分を有する側壁とによって構成された反応容器と、該反応容器内に設けられた基板ホルダと、前記トッププレートの外側に配置されて当該トッププレートの内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットとを備え、前記トッププレートと前記基板ホルダの少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力が供給されるプラズマ処理装置において、
前記マグネットが、碁盤目状に複数連なる四角形の各角部に対応する位置に配置されており、しかも前記各四角形の辺方向に隣接するマグネットの極性が反対の極性となっていることを特徴とするプラズマ処理装置を提供するものである。
【0012】
前述の本発明によれば、トッププレートにおけるマグネットの配列はトッププレートの下側に望ましいカスプ磁界を作る。当該カスプ磁界において、磁束線はトッププレートの内側面に近い空間において生成され、すべての磁束線はループを作るように閉じている。このカスプ磁界は、電子を制御し、大面積にわたって均一なプラズマ密度を有するプラズマを生成する静電的結合型の平面状プラズマのプラズマ密度を強化する。
【0013】
前述の構成において、トッププレートは平板円形状であり、マグネットは平板状トッププレートの外側表面に直接に固定されている。
【0014】
前述の構成において、トッププレートはドーム型の形状である。このドーム型トッププレートは、異なる寸法のカスプ磁界を用いて使用することができる。
【0015】
前述の構成において、マグネットは上記ドーム型トッププレートを覆うようにして存在するドーム型カバーの内側面の上に配列される。マグネットの配列によって反応容器内に形成されるカスプ磁界は望ましい寸法になり得る。
【0016】
ドーム型トッププレートが使用された前述の構成において、上記ドーム型カバーは回転可能である。
【0017】
前述の構成において、トッププレートは反応容器の他の部分から電気的に絶縁されており、高周波電力が当該トッププレートに供給されることが好ましく、またトッププレートは、反応容器の他の部分から電気的に絶縁された状態又は電気的に接地された状態にあり、基板ホルダに高周波電力が供給される一方、トッププレートには高周波電力が供給されないことも好ましい。
【0018】
前述の構成において、トッププレートの中心部付近の隣り合う2つのマグネット間の間隔が、トッププレートの周縁部付近の隣り合う2つのマグネットの間隔より大きくなっていることが好ましい。
【0019】
前述の構成において、マグネットは、トッププレートの周縁部分にのみ帯状に配置されていることも好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、添付された図面に従って好ましい実施形態が説明される。この実施形態の説明を通して本発明の詳細が明らかにされる。
【0021】
本発明の第1の実施形態は図1〜図4に従って説明される。図1は第1の実施形態によるプラズマ処理装置に用いられるプラズマ源の全体構成を示す。特に、図1はプラズマ源の上壁(外側)における構造とその内側の構造を示す。プラズマ源を形成する反応容器10の幾何学的構造が最初に説明される。反応容器10はトッププレート11と円筒型側壁12とボトムプレート13から形成される。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は金属、例えばステンレススチールまたはAl(アルミニウム)によって作られている。円筒型側壁12の上側部分12aはセラミック(誘電体物質)によって作られている。トッププレート11は平板円形形状を有し、非磁性金属、例えばAlによって作られているトッププレート11は、円筒型側壁12の上側部分12aの上に置かれているので、反応容器10の他の部分から電気的に絶縁されている。トッププレート11は、プラズマを生成するときに電極として作用する。円筒型側壁12の上側部分12aと下側部分12bの直径は同じである。当該直径の値は重要な問題ではなく、40cmから60cmの間で変わり得る。円筒型側壁12のセラミック部分(12a)の高さは同様にまた重要ではなく、1cmから5cmの範囲に存在する。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は接地線14を通して電気的に接地されている。トッププレート11の直径は、円筒型側壁12の直径に相当する。
【0022】
反応容器10の内部空間にはボトムプレート13に取り付けられた基板ホルダ15が存在する。この基板ホルダ15は、例えば整合回路9を通して良く知られた高周波電源8に結合されている。高周波電源8は反応容器10の外側に配置されている。処理されるべきウェハーすなわち基板17は基板ホルダ15の上に配置されている。参照符号18は排気ポートとして使用されるガス排出ポートを示している。ガス排出ポート18は良く知られた排気装置(図示されず)に接続される。トッププレート11は整合回路20を通して高周波電源19に結合されている。トッププレート11は高周波電源19から必要な高周波電力が供給される。
【0023】
反応容器10の下側に配置された基板ホルダ15はボトムプレート13に平行である。基板ホルダ15は絶縁体16によって反応容器10から電気的に絶縁されている。図1は整合回路9を通して基板ホルダ15に接続された高周波電源8を示しているが、基板ホルダ15は、実際には応用の目的に応じて高周波電源に接続しても良いし、接続しなくても良い。もし基板ホルダ15に高周波電力が与えられるときには、高周波電力の周波数は、普通、高周波電源19によってトッププレート11に供給される高周波電力の周波数よりも低い。しかしながら、いくつかの応用に関しては、高周波電力供給源8,19の2つの高周波は同じであってもよい。そうでない場合には、基板ホルダ15は接地される。
【0024】
図1、図3、図4に示されるように、複数のマグネット21がトッププレート21の上に配置され、さらにトッププレート11の外側表面に固定されている。マグネット21は対称的な位置関係で配置されるので、トッププレート11の1/4の領域だけが平面図の状態にて図4に示される。マグネット21は、トッププレート11の内側にカスプ磁界を生成するように、トッププレート11の外側表面の上に配置される。この場合、厳密に述べると、カスプ磁界23は、4つのマグネット21で決められるポイント・カスプ(point-cusp)磁界と呼ばれる。ポイント・カスプ磁界を形成するためのただ1つの要求は、各々隣り合うマグネットがトッププレート11に向かう極で反対の極性を持たなければならないということである。このことは反応容器の内側に向かうマグネットの極性が交互に変化するということを意味する。例えば図4に示されるごとくトッププレート11の上で点線によって描かれた四角形22の各々の角部分(コーナー)に配置される。図3と図4においてNとSはマグネット21の磁気的極性を意味する。いかなる2つの隣り合うマグネットの間隔(距離)は重要なことではなく、マグネットの強さとトッププレート11の直径に依存して2cmから10cmの範囲で変えることができる。マグネット21の配列は、図3に示されるように、トッププレート11の下側で、ポイント・カスプ磁界23を、2つの隣り合う当該磁界23の間に作られるカスプ23aと共に、作る。符号23bは磁束線を示している。磁極から出た磁束線23bは直接に最も近い反対の磁極に向かって曲がる。こうして、ポイント・カスプ磁界23が形成される。トッププレート11の内側表面の近くの空間において生成されたポイント・カスプ磁界23は、ループを作るように閉じられた磁束線23bを形成する。トッププレート11の内側表面の近傍において、多くの磁束ループが形成され、その結果として磁界のカスプ23aが形成される。トッププレート11上のマグネット21によって形成された配列構造に依存してトッププレート11の下側のプラズマの均一性が変化する。
【0025】
マグネット21の形状は、好ましくは、断面の形状がそれぞれ四角と円である立方体または円柱体である。図2に示されるようにマグネット21の各々はトッププレート11の外側表面上に形成された穴11aの中に配置される。例えば、トッププレート11の厚みはおよそ20mmであり、穴11aの深さはおよそ17mmである。従って、マグネット21の底の面は反応容器10の内部空間に接近している。
【0026】
マグネット21の断面形状は円形または四角形である。もしマグネット21の断面形状が円形であるならば、その直径は10mmから40mmの範囲の中に含まれる。直径の値は重要ではない。もしマグネット21の断面形状が四角であるならば、円形断面形状を有するマグネットのそれらに相当する寸法が選択される。マグネット21の高さは同様にまた重要ではなく、3mmから10mmの範囲内にある。マグネット21の磁気的強さはトッププレート11の下側におよそ50ガウス(Gauss) から500ガウスの磁界の強さを持つように選択される。
【0027】
加えて図3に示されるように、円形ガス通路24がトッププレート11の内部に形成される。円形ガス通路24はガス供給パイプ25を通してガス供給源(図示されず)に結合されており、トッププレート11の内側表面に複数のガス導入孔6を有している。ガス供給源によって供給されるプロセスガスは円形ガス通路24とガス導入孔26を通して反応容器10の内部空間に導入される。プロセスガスは第1に円形ガス通路24に供給され、それからいくつかのガス導入孔26を通して反応容器10の内部空間に導入される。
【0028】
反応容器10の内部圧力は、ガスの流速を調整すること、およびガス排気ポート18に配置された良く知られた可変オリフィス(図示されず)を調整することによって制御される。反応容器10の内部圧力は例えば1mTorr から100mTorr の範囲で変化される。適切な圧力は応用のタイプによって決定される。
【0029】
高周波電源19の周波数はおよそ1MHzから100MHzの範囲にあり、代表的に13.56MHzの周波数において動作する。高周波電源19は通常低いインピーダンスを持ち、代表的におよそ50オームであり、およそ10アンペアから50アンペアの電流を作り出すことができる。高周波電源19の出力は、整合回路20を通してトッププレート11の中心部に供給される。
【0030】
もし高周波電源8によって高周波電力が基板ホルダ15に供給されるならば、高周波電力の周波数は100kHzから15MHzの範囲にある。この高周波電源8は同様にまた低いインピーダンスを有し、代表的にはおよそ50オームであり、およそ1アンペアから50アンペアの電流を作ることができる。当該高周波電力は整合回路9を通して基板ホルダ15に適用される。
【0031】
次に、前述のプラズマ源を備えた反応容器10におけるプラズマ発生の機構が説明される。高周波電流19aが高周波電源19からトッププレート11に供給されるとき、高周波電力の静電的結合の機構によってプラズマが生成される。その時プラズマにおける電子はトッププレート11上に配置されるマグネット21によって作られたポイント・カスプ磁界23の存在に基づきサイクロトロン回転を受ける。このことは電子の通過路の長さを増大させ、それによってプロセスガスのより高いイオン化割合をもたらす。加えて、電子とイオンのトッププレート11の衝突がポイント・カスプ磁界23によって部分的に抑圧される。それ故に、磁界23の存在はプラズマ密度の増大という結果をもたらす。
【0032】
一般的に磁界が存在しない場合、2つの平行プレートの間に静電的結合の機構によって生成されたプラズマは、より高い半径方向の均一性を持つ。磁界が存在する場合においては、このプラズマ均一性は変化する。上記第1実施形態におけるトッププレート11上に配置されたマグネット21はトッププレート11の下側にポイント・カスプ磁界23を形成する。トッププレート11に平行に存在する磁界23の強さが最大である場所においてプラズマ密度は最大である。同様にトッププレートに平行に存在する磁界23の強さが最小であるところの場所ではプラズマ密度は低い。それ故に、トッププレート11の近傍においてプラズマ密度は最大と最小となる。しかしながら、プラズマ密度のこれらの最大と最小は互いに接近しているので、下流側におけるトッププレート11からより短い距離において拡散がプラズマの均一性を作る。さらに、マグネット21は交互に反対の極性となるように配置されているので、ポイント・カスプ磁界23の磁束線23bはトッププレート11の内側表面から近い距離で曲がる。それ故に、トッププレート11からより近い距離において磁界がない環境が得られる。
【0033】
均一なプラズマ密度を得る目的で、前述された構成とは異なる他のマグネット21の配列を見出だすこともできる。例えば、トッププレート11の中心部付近の2つの隣り合うマグネットの間の間隔を周辺部付近の隣り合う2つのマグネットの間隔よりも大きくすることができるし、あるいは、図5に示されるように、中央部におけるマグネットを取り除くこともできる。ここで、マグネット21はトッププレート11の周縁部分に接近した所のみに帯状に(バンドとして)配置されている。半径r1 はトッププレート11の半径であり、半径r2 はマグネットが配置されていない円形領域の半径である。これらの配列によって、トッププレート11の中心部付近のマグネット21の個数は周縁部に近い部分の個数よりも少なくなる。すなわち、トッププレート11の中心部およびその周縁の磁束密度は、その周縁部に近い部分の磁束密度よりも低くなる。
【0034】
次に、前述のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置に基づくプラズマ処理について実験的結果を説明する。2つの異なるマグネット配列(I)と(II)に関して実験が実行される。これらのマグネット21の配列とそれらの磁界の強さはすでに説明された。マグネット配列(I)において、マグネット21は図4に示されるようにトッププレート11の上で均一な密度を伴って配置されている。マグネット配列(II)において、マグネット21は図5に示されるようにトッププレート11の半径r1 とr2 の間にある領域内のみに配列されている。r1 によって示されたトッププレート11の半径は例えば240mmである。半径r2 の値は例えば110mmである。両方の場合において10mm×10mm×12mmの寸法を有したSm−Coマグネットが用いられた。マグネット21はトッププレート11の上でお互いに40mmの間隔を保って配置された。マグネット21の表面における磁界23の強さは915kA/m(Br =12.1kGauss)である。トッププレート11の下側の磁界のパターンと強さはコンピュータシミュレーションによって計算され、データが図6,7,8,9,10で示される。
【0035】
図6と図7は上記コンピュータシミュレーションに使用されたマグネット配列の構造と生成された磁束のパターンを示す。図6で太い線によって描かれた四角の領域31はコンピュータシミュレーションのために用いられる。図7に示されるように、拡大された四角の領域31内の多くの矢32はX−Y平面における磁界の強さと方向を示している。トッププレート11に平行な平面はX−Y平面として扱われる。X−Y平面に垂直な軸はZ軸として扱われる。マグネット21の下側表面はZ=0mmとみなされる。Zはマグネット21の下側表面からその下側(下流側)に向かって測定される。
【0036】
図8,9,10は拡大された四角の領域31においてX−Y平面でそれぞれZ=20mm,30mm,50mmにおける磁束の輪郭33を示している。図8から図10に示されるように、マグネット21からその下流に向かうに従ってその距離の増大に伴って磁界の強さが減少する。Z=50mmにおいては、ポイント・カスプ磁界の強さは5ガウスより小さくなる。それ故に、もしZ≧50mmである場所に基板17が配置されるならば、その基板17の表面で起きる反応処理に対する磁界23による影響は全くなくなる。
【0037】
マグネット配列(I)と(II)に関して、プラズマは、13.56MHzの周波数で動作する1000Wの高周波電力を適用することによって生成された。反応容器10の内側における圧力は2mTorr に設定された。プラズマガスとしては流量100sccmのアルゴンが用いられた。プラズマのイオン電流密度はトッププレート11から75mmの距離においてラングミュラープローブを用いることによって観測され、それらの観測されたグラフが図11に示される。半径方向のプラズマ密度の不均一性は±[(Imax −Imin )/(Imax +Imin )](%)の式によって見積もられ、データは図12に示される表1で与えられた。ここで、Imax とImin は最大イオン電流密度と最小イオン電流密度である。
【0038】
上記実験の結果は、もしトッププレート11の下側のポイント・カスプ磁界パターンが均一であるならば、反応容器10の中心はより高いプラズマ密度を示すということを指摘している。中心部付近のマグネット21を取り除くことによってトッププレート11の周縁部に向かって高密度プラズマ生成領域がシフトするとき、トッププレート11からより近い距離で径方向に均一なプラズマを得ることができる。
【0039】
次に本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態は図13を用いて説明される。トッププレートの構成とマグネットの配列を除いて、他の構成はすべて第1実施形態におけるそれらと実質的に同じものである。
【0040】
図13において、プラズマ源を形成する反応容器10は、非磁性金属によって作られたトッププレート41、円筒型側壁12、ボトムプレート13によって構成されている。円筒型側壁12の下側部分12bとボトムプレート13は金属で作られている。円筒型側壁12の上側部分12aはセラミックで作られている。ボトムプレート13は接地線14を通して電気的に接地されている。反応容器10はその内部に基板ホルダ15を備えており、基板ホルダは絶縁体16によってボトムプレート13に配置される。処理されるべき基板17は基板ホルダ15の上に搭載されている。ガス排出ポート18が基板ホルダ15の下側のボトムプレート13の下側に形成されている。
【0041】
図13に示されるように、第2の実施形態で用いられるトッププレート41はドーム型を有している。ドーム型の構造は一般的に平板形状の構造よりもいっそう強いので、トッププレート41の厚みをかなり減少させることができる。さらに、ドーム型トッププレート41の中心部における厚みはその開放された周縁の境界部分における厚みよりもより薄く選択することができる。ドーム型トッププレート41の内径は重要なことではない。通常、図13において記号hとして示されたドーム型トッププレート41の高さは5cmから20cmの範囲に含まれる。この高さは基本的に円筒型側壁の半径に依存している。円筒型側壁12の半径は第1実施形態において述べたように変化する。加えて、ドーム型トッププレート41の内部構造はトッププレート11と同じである。
【0042】
高周波電力が整合回路20を通して高周波電源19からドーム型トッププレート41の中心部に供給される。ドーム型トッププレート41は電極として周波数と他の電気的極性は第1実施形態で説明されたものと同じである。
【0043】
マグネット21は金属で作られたドーム型カバー42の内側表面に固定される。ドーム型カバー42はドーム型トッププレート41の上側に配置される。ドーム型カバー42の頂部において、3cmから5cmの直径を持つ孔42aが形成される。この孔42aは、ドーム型カバー42の下側に存在するドーム型トッププレート41に、整合回路20からの高周波電力線43を接続するために作られている。マグネット21の配列は第1の実施形態において説明されたものと同じである。しかしながら、マグネットは、表面のドーム形状の故に、正方形のコーナの代わりに不等辺四辺形のコーナに配置される。マグネット21が固定されたドーム型カバー42は回転機構44の上に支持され、ギヤ機構46を介して電気モータ45に接続されている。ドーム型カバー42はその軸の回りに回転できるように回転機構44のベアリング44aの上に配置されている。電気モータ45はギヤ機構46を介してドーム型カバー42の外側表面に接続されている。電気モータ45はたいてい0.5Hz(すなわち1秒間に180度)の回転周波数にてドーム型カバー42を回転させる。しかしながら、当該回転周波数は10Hz程度まで高くしても良い。このように、多くのマグネット21を備えたドーム型カバー42は電気モータ45によって望ましい角速度で回転させられる。ドーム型カバー42の内側表面に固定されたマグネット21の各々とドーム型トッププレート41の間の間隔はおよそ5mmから10mmに保持されている。
【0044】
次に、前述の第2の実施形態の技術的利点を説明する。
【0045】
さらに、ドーム型トッププレートの厚みがより薄くなるので、ドーム型トッププレート41の下側でより高い磁束密度をもたらす結果となる。これはプラズマ密度の増大の原因となる。さらに、この構成を用いれば、高価でない低磁力度のマグネットを用いることができる。
【0046】
ドーム型トッププレートの表面領域は第1実施形態で用いられた平板形状のトッププレートの表面領域よりも高くなる。このことはプラズマ発生領域の体積の増大をもたらす。
【0047】
マグネット配列(I)を備える第1実施形態によって得られた径方向のプラズマ密度は反応容器の円筒型チャンバの中心部でより高いプラズマ密度を示す。この傾向はドーム型トッププレートを用いる場合には避けられる。ドーム型トッププレートが用いられる場合には、ドーム型トッププレートの中心部におけるプラズマ生成領域は円筒型側壁に近いプラズマ生成領域に比較して基板のレベルからさらに遠くなっている。それ故に、ドーム型トッププレートの中心部付近に生成されたプラズマは、円筒型側壁の近くで生成されたプラズマに比較してより長い距離を流れる。このことは円筒型チャンバの中心部においてプラズマ密度の低下をより大きくする原因となる。しかしながら、当該中心部でのプラズマ密度の低下は円筒型側壁に近い所で生成されたプラズマの拡散によって補われる。これは基板のレベルにおいて径方向に均一なプラズマをもたらす結果となる。
【0048】
加えて、第2の実施形態で配列されたマグネット21はドーム型トッププレート41から離れている。このことは、いくつかの基板処理で必要とされるドーム型トッププレートの加熱を容易にする。
【0049】
他の利点は、ドーム型トッププレート41の上でマグネット21を回転させるため、ドーム型トッププレート41の近傍での時間平均化学作用が均一になるという点である。それ故に、もしドーム型ドッププレート41の内側表面に膜が堆積するならば、当該膜の厚みが均一になる。同様に、もしドーム型トッププレート41の内側表面でエッチングが起きるならば、エッチング形状(エッチング深さ)は全表面にわたって同じとなる。このことは反応容器10のクリーニング処理を容易にする。しかしながら、第2の実施形態におけるマグネット21を回転させる機構は、マグネットを分離されたプレート上に固定し、それをトッププレートの上方の少しばかり上側に配置することによって採用することもできる。
【0050】
前述の実施形態で説明されたプラズマ源は2周波供給システムのタイプである。本発明によるプラズマ源の構成は以下のように変形することができる。
【0051】
本発明の第3の実施形態は、プラズマ源の断面図を示す図14に従って説明される。この実施形態と第1の実施形態との差異は、このプラズマ源はトッププレート11のための高周波電力源を持たないこと、それ故にトッププレート11は高い周波数の高周波電力が供給されないこと、そして基板ホルダ15に電力を供給する高周波電力源80が前述した高周波電力源8のそれに比較して高い周波数帯域を持つこと、である。この場合において、トッププレート11は電気的に浮いた状態、すなわち電気的に絶縁された状態、または電気的に接地された状態にある。これらの違いを除いて、第3の実施形態によって与えられるプラズマ源の構成は、第1の実施形態で与えられたそれらと実質的に同じである。このようにして、このプラズマ源は1周波供給システムのタイプに属する。
【0052】
第3の実施形態において、基板ホルダ15は、高周波電極と基板ホルダの両方として機能する。基板ホルダに与えられる高周波電流の周波数は、高周波電力源80から与えられ、10MHzから100MHzの範囲に含まれ、代表的には13.56MHzで動作する。高周波電力源80は、通常、低いインピーダンスを持ち、代表的にはおよそ50オームであり、そして0.5kWから3kWの高周波電力を作ることができる。高周波電力源80の出力は整合回路9を通して基板ホルダ15に供給される。
【0053】
プロセスガス導入方法、真空を作る方法、そして圧力を決める方法は、第1実施形態で説明されたものと同じである。プラズマ生成のメカニズムも同様にまたほとんど第1実施形態で先に述べられたものと類似している。唯一の違いは、この実施形態におけるプラズマが基板ホルダ15によって高周波電力の静電結合によってのみ生成されることである。しかしながら、トッププレート11と基板ホルダ15の間に磁界があるので、先に述べたようにプラズマ密度は増加する。さらに、電子の閉込めに起因して、トッププレート11への電子損失が同様に減じられる。この事象は、トッププレート11の内側表面におけるシース電圧とシースの厚みを低下する。シース電圧の減少は、トッププレート11のスパッタリング速度の低下の原因となる、トッププレート11上で衝突するイオンのエネルギを減少させる。
【0054】
第3の実施形態の技術的な利点は以下に説明される。このプラズマ源は前述の実施形態で説明されたすべての利点を備えている。付け加えて、このプラズマ源は1つの高周波電力源のみを用いる。このことは、プラズマ源の構成を簡単化し、製造コストを減じる。第2にトッププレートは高周波の電気的接続を持たないので、トッププレートの構成が簡単である。それ故に、トッププレートのボリューム(体積)が小さくなり、プラズマ源のアスペクト比の更なる減少をもたらすという結果となる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によるプラズマ処理装置は基板の表面の全面にわたって均一な分布を有する大面積高密度プラズマを作ることができ、低アスペクト比を有するプラズマ源を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図はプラズマ処理装置の内部と外部の構造を示す第1実施形態の透視図である。
【図2】この図はマグネットの固定構造を示すトッププレートの部分断面図である。
【図3】この図は、内部構造と磁界を示す、プラズマ源に配置されたトッププレートの部分断面図である。
【図4】この図はマグネット配列(I)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図5】この図はマグネット配列(II)を示すトッププレートの1/4領域の平面図である。
【図6】この図はX−Y平面でのZ=0mmにおけるコンピュータシミュレーションに用いられたマグネット構造と四角領域を示す図である。
【図7】この図はX−Y平面での四角領域におけるZ=0mmでの磁束線の強さと方向を示す図である。
【図8】この図はX−Y平面での四角領域におけるZ=20mmでの磁束線密度のコンピュータシミュレーションの輪郭を示す図である。
【図9】この図はX−Y平面の四角領域におけるZ=30mmでのコンピュータシミュレーションの磁束線密度の輪郭を示す図である。
【図10】この図はX−Y平面での四角領域におけるZ=50mmでの磁束線密度のコンピュータシミュレーションによる輪郭を示す図である。
【図11】この図はZ=−75mmでの半径線に沿った電流密度の変化を示すグラフである。
【図12】この図はマグネット配列(I),(II)の各々の場合における不均一性のデータを示す表を示す。
【図13】この図はプラズマ処理装置の内部構造を示す第2の実施形態の垂直断面図であある。
【図14】この図は本発明の第3実施形態を示す垂直断面図である。
【図15】この図はプラズマ処理装置に用いられる第1の従来のプラズマ源を示す概略図である。
【図16】この図はプラズマ処理装置に用いられる第2の従来のプラズマ源を示す概略図である。
【参照符号の説明】
10 反応容器
11 トッププレート
12 円筒型側壁
13 ボトムプレート
15 基板ホルダ
16 絶縁体
17 ウェハーすなわち基板
21 マグネット
23 磁界
41 ドーム型トッププレート
42 ドーム型カバー
Claims (9)
- 非磁性金属で作られたトッププレートと、金属で作られたボトムプレートと、少なくとも一部に誘電体物質によって作られた部分を有する側壁とによって構成された反応容器と、該反応容器内に設けられた基板ホルダと、前記トッププレートの外側に配置されて当該トッププレートの内側にカスプ磁界を形成する複数のマグネットとを備え、前記トッププレートと前記基板ホルダの少なくとも一方にプラズマ形成用の高周波電力が供給されるプラズマ処理装置において、
前記マグネットが、碁盤目状に複数連なる四角形の各角部に対応する位置に配置されており、しかも前記各四角形の辺方向に隣接するマグネットの極性が反対の極性となっていることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記トッププレートは平板かつ円形の形状を有し、前記マグネットは前記平板状トッププレートの外側面に直接に固定されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記トッププレートはドーム型の形状を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記マグネットは前記ドーム型トッププレートを覆って存在するドームカバーの内側面に配置されていることを特徴とする請求項3記載のプラズマ処理装置。
- 前記ドーム型カバーは回転可能であることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理装置。
- 前記トッププレートは前記反応容器の他の部分から電気的に絶縁されており、前記高周波電力が当該トッププレートに供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記トッププレートは、前記反応容器の他の部分から電気的に絶縁された状態又は電気的に接地された状態にあり、前記基板ホルダに前記高周波電力が供給される一方、前記トッププレートには前記高周波電力が供給されないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記トッププレートの中心部付近の隣り合う2つの前記マグネット間の間隔が、前記トッププレートの周縁部付近の隣り合う2つの前記マグネットの間隔より大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
- 前記マグネットは、前記トッププレートの周縁部分にのみ帯状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
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