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JP4258955B2 - 電磁駆動弁を有する内燃機関 - Google Patents

電磁駆動弁を有する内燃機関 Download PDF

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JP4258955B2 JP2000152099A JP2000152099A JP4258955B2 JP 4258955 B2 JP4258955 B2 JP 4258955B2 JP 2000152099 A JP2000152099 A JP 2000152099A JP 2000152099 A JP2000152099 A JP 2000152099A JP 4258955 B2 JP4258955 B2 JP 4258955B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁力を利用して吸気弁およびまたは排気弁を開閉駆動する電磁駆動式動弁機構を備えた内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車などに搭載される内燃機関では、吸排気弁の開閉駆動に起因した機械損失の防止、吸気のポンピング損失の防止、正味熱効率の向上等を目的として、吸気弁及び排気弁の開閉タイミングを任意に変更可能な電磁駆動式動弁機構の開発が進められている。
【0003】
電磁駆動式動弁機構としては、例えば、磁性体からなり吸排気弁と連動して進退動作するアーマチャと、励磁電流が印加されたときにアーマチャを閉弁方向へ変位させる電磁力を発生する閉弁用電磁石と、励磁電流が印加されたときにアーマチャを開弁方向へ変位させる電磁力を発生する開弁用電磁石と、前記アーマチャを開弁側変位端と閉弁側変位端との中立位置に弾性支持する弾性部材とを備えたものが提案されている。
【0004】
このような電磁駆動式動弁機構によれば、従来の動弁機構のように機関出力軸(クランクシャフト)の回転力を利用して吸排気弁を開閉駆動させる必要がないため、吸排気弁の駆動に起因した機械損失が防止される。
【0005】
更に、上記した電磁駆動式動弁機構によれば、機関出力軸の回転動作と独立して吸排気弁を開閉駆動させることが可能となるため、吸排気弁の開閉時期や開度を制御する場合の自由度が高い等、種々の利点がある。
【0006】
一方、上記したような電磁駆動式動弁機構では、内燃機関の始動時等に、中立位置に静止しているアーマチャを開弁側変位端もしくは閉弁側変位端へ変位させる、いわゆる初期駆動が必要となる。
【0007】
アーマチャを初期駆動する方法としては、例えば、特公平4−67005号公報に記載されたような方法が知られている。この公報に記載された方法は、開弁用電磁石およびまたは閉弁用電磁石に対して、アーマチャ及び弾性部材からなるばね−質量系の固有振動周期に略同期して励磁電流を印加することにより、前記アーマチャの振動運動を励起し、その振動振幅を徐々に増大させる初期駆動方法である。
【0008】
このような初期駆動方法によれば、開弁用電磁石又は閉弁用電磁石に過大な電磁力を発生させることなく、中立位置に保持されているアーマチャを開弁側変位端もしくは閉弁側変位端まで変位させることが可能となる。
【0009】
また、上記したような初期駆動を終了させる方法としては、特開平10−288014号公報に記載されているようにアーマチャの振動回数(言い換えれば、開弁用電磁石およびまたは閉弁用電磁石に励磁電力を印加した回数)が予め設定された回数以上となった時点で初期駆動を終了させる方法が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来の初期駆動終了方法では、アーマチャの振動回数が所定回数未満であるときに、アーマチャの最大変位が開弁側変端およびまたは閉弁側変位端に到達したとしても、アーマチャの振動回数が所定回数以上となるまでは初期駆動が継続されることになる。
【0011】
アーマチャの最大変位が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達した後に初期駆動が継続されると、初期駆動に係る消費電力が不要に増加するばかりか、アーマチャ及び吸排気弁の速度が過剰に増加するため、吸排気弁が過剰な速度で弁座に衝突し、吸排気弁が弁座から跳ね返るバウンスや騒音が発生する場合がある。
【0012】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、電磁駆動式動弁機構を備えた内燃機関において、電磁駆動式動弁機構の初期駆動を適当な時期に終了することができる技術を提供することにより、初期駆動にかかる消費電力を低減するとともに、吸排気弁のバウンスや騒音の発生を防止することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明に係る電磁駆動弁を有する内燃機関は、
内燃機関の吸気弁又は排気弁と連動して変位する磁性体と、
前記磁性体を開弁側変位端と閉弁側変位端との中立位置に弾性支持する弾性部材と、
励磁電力が印加されたときに前記磁性体を開弁側又は閉弁側へ変位させるための電磁力を発生する電磁石と、
前記磁性体が中立位置に保持されているときに、前記電磁石に対して所定の周期で励磁電力を印加することにより、前記弾性部材と前記電磁石を協動させて前記磁性体の振動運動を励起する初期駆動手段と、
前記初期駆動手段により前記磁性体の振動運動が励起されているときの該磁性体の運動状態に基づいて、前記初期駆動手段の作動終了時期を決定する初期駆動終了手段と、
を備えることを特徴としている。
【0014】
このように構成された電磁駆動弁を有する内燃機関では、内燃機関の始動時のように中立位置に保持されている磁性体を開弁側変位端又は閉弁側変位端まで変位させる場合に、初期駆動手段は、電磁石に対して所定の周期で励磁電力を印加する。
【0015】
この場合、電磁石は、磁性体を開弁側又は閉弁側へ変位させる電磁力を所定の周期で発生することになる。これにより、磁性体は、電磁石が電磁力を発生している間は、弾性部材の付勢力に抗して開弁側と閉弁側の何れか一側へ変位し、電磁石が電磁力を発生していないときには、弾性部材の付勢力を受けて前記した一側と反対側へ変位する動作を繰り返す。この結果、磁性体が振動運動しつつ、該磁性体の振幅が徐々に増幅されることになる。
【0016】
初期駆動手段により磁性体の振動運動が励起されているときに、初期駆動終了時期決定手段は、磁性体の運動状態に基づいて初期駆動手段の作動終了時期を決定する。初期駆動手段は、初期駆動終了時期決定手段によって決定された作動終了時期に従って磁性体の初期駆動を終了する。
【0017】
ここで、初期駆動終了時期決定手段は、例えば、磁性体が開弁側変位端もしくは閉弁側変位端に到達するような運動状態にあるときに、初期駆動手段の作動終了時期を決定する。
【0018】
この場合、磁性体が開弁側変位端もしくは閉弁側変位端に到達した後に、該磁性体の初期駆動が継続されることがなくなる。この結果、初期駆動に係る消費電力が不要に増加することがなくなるとともに、磁性体およびまたは吸排気弁の振動が過剰に励起されて前記磁性体およびまたは前記吸排気弁が過剰な速度で変位端に衝突することがない。
【0019】
尚、磁性体が開弁側変位端もしくは閉弁側変位端に到達するか否かを判別する方法としては、磁性体の速度をパラメータとして判定する方法、磁性体の最大変位をパラメータとして判定する方法を例示することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電磁駆動弁を有する内燃機関の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び図2は、本実施の形態に係る内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1及び図2に示す内燃機関1は、4つの気筒21を備えた4ストローク・サイクルの水冷式ガソリンエンジンである。
【0022】
内燃機関1は、4つの気筒21及び冷却水路1cが形成されたシリンダブロック1bと、このシリンダブロック1bの上部に固定されたシリンダヘッド1aとを備えている。
【0023】
前記シリンダブロック1bには、機関出力軸たるクランクシャフト23が回転自在に支持され、このクランクシャフト23は、各気筒21内に摺動自在に装填されたピストン22とコネクティングロッド19を介して連結されている。
【0024】
前記クランクシャフト23の端部には周縁に複数の歯が形成されたタイミングロータ51aが取り付けられ、そのタイミングロータ51a近傍のシリンダブロック1bには電磁ピックアップ51bが取り付けられている。これらタイミングロータ51aと電磁ピックアップ51bは、クランクポジションセンサ51を構成する。
【0025】
前記シリンダブロック1bには、前記冷却水路1c内を流れる冷却水の温度に対応した電気信号を出力する水温センサ52が取り付けられている。
各気筒21のピストン22上方には、ピストン22の頂面とシリンダヘッド1aの壁面とに囲まれた燃焼室24が形成されている。前記シリンダヘッド1aには、各気筒21の燃焼室24に臨むよう点火栓25が取り付けられ、この点火栓25には、該点火栓25に駆動電流を印加するためのイグナイタ25aが接続されている。
【0026】
前記シリンダヘッド1aにおいて各気筒21の燃焼室24に臨む部位には、吸気ポート26の開口端が2つ形成されるとともに、排気ポート27の開口端が2つ形成されている。そして、前記シリンダヘッド1aには、前記吸気ポート26の各開口端を開閉する吸気弁28と、前記排気ポート27の各開口端を開閉する排気弁29とが進退自在に設けられている。
【0027】
前記シリンダヘッド1aには、励磁電流が印加されたときに発生する電磁力を利用して前記吸気弁28を進退駆動する電磁駆動機構30(以下、吸気側電磁駆動機構30と称する)が吸気弁28と同数設けられている。各吸気側電磁駆動機構30には、該吸気側電磁駆動30に励磁電流を印加するための駆動回路30a(以下、吸気側駆動回路30aと称する)が電気的に接続されている。
【0028】
前記シリンダヘッド1aには、励磁電流が印加されたときに発生する電磁力を利用して前記排気弁29を進退駆動する電磁駆動機構31(以下、排気側電磁駆動機構31と称する)が排気弁29と同数設けられている。各排気側電磁駆動機構31には、該排気側電磁駆動機構31に励磁電流を印加するための駆動回路31a(以下、排気側駆動回路31aと称する)が電気的に接続されている。
【0029】
上記した吸気側電磁駆動機構30と排気側電磁駆動機構31とは、本発明に係る電磁駆動式動弁機構を実現するものである。
内燃機関1のシリンダヘッド1aには、4つの枝管からなる吸気枝管33が接続され、前記吸気枝管33の各枝管は、各気筒21の吸気ポート26と連通している。
【0030】
前記シリンダヘッド1aにおいて前記吸気枝管33との接続部位の近傍には、その噴孔が吸気ポート26内に臨むよう燃料噴射弁32が取り付けられている。
前記吸気枝管33は、吸気の脈動を抑制するためのサージタンク34に接続されている。前記サージタンク34には、吸気管35が接続され、吸気管35は、吸気中の塵や埃等を取り除くためのエアクリーナボックス36と接続されている。
【0031】
前記吸気管35には、該吸気管35内を流れる空気の質量(吸入空気質量)に対応した電気信号を出力するエアフローメータ44が取り付けられている。前記吸気管35において前記エアフローメータ44より下流の部位には、該吸気管35内を流れる吸気の流量を調整するスロットル弁39が設けられている。
【0032】
前記スロットル弁39には、ステッパモータ等からなり印加電力の大きさに応じて前記スロットル弁39を開閉駆動するスロットル用アクチュエータ40と、前記スロットル弁39の開度に対応した電気信号を出力するスロットルポジションセンサ41とが取り付けられている。
【0033】
前記スロットル弁39には、該スロットル弁39と独立に回動自在であり、且つアクセルペダル42に連動して回動する図示しないアクセルレバーが取り付けられ、そのアクセルレバーには、該アクセルレバーの回動量に対応した電気信号を出力するアクセルポジションセンサ43が取り付けられている。
【0034】
一方、前記内燃機関1のシリンダヘッド1aには、4本の枝管が内燃機関1の直下流において1本の集合管に合流するよう形成された排気枝管45が接続され、前記排気枝管45の各枝管が各気筒21の排気ポート27と連通している。
【0035】
前記排気枝管45は、排気浄化触媒46を介して排気管47に接続され、排気管47は、下流にて図示しないマフラーと接続されている。前記排気枝管45には、該排気枝管45内を流れる排気、言い換えれば、排気浄化触媒46に流入する排気の空燃比に対応した電気信号を出力する空燃比センサ48が取り付けられている。
【0036】
ここで、上記した排気浄化触媒46としては、例えば、該排気浄化触媒46に流入する排気の空燃比が理論空燃比近傍の所定の空燃比であるときに排気中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する三元触媒、該排気浄化触媒46に流入する排気の空燃比がリーン空燃比であるときは排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を吸蔵するとともに該排気浄化触媒46に流入する排気の空燃比が理論空燃比もしくはリッチ空燃比であるときは吸蔵していた窒素酸化物(NOx)を放出しつつ還元・浄化する吸蔵還元型NOx触媒、該排気浄化触媒46に流入する排気の空燃比が酸素過剰状態にあり且つ所定の還元剤が存在するときに排気中の窒素酸化物(NOx)を還元・浄化する選択還元型NOx触媒、もしくは上記した各種の触媒を適宜組み合わせてなる触媒である。
【0037】
次に、吸気側電磁駆動機構30と排気側電磁駆動機構31の具体的な構成について述べる。尚、吸気側電磁駆動機構30と排気側電磁駆動機構31とは同様の構成であるため、吸気側電磁駆動機構30のみを例に挙げて説明する。
【0038】
図3は、吸気側電磁駆動機構30の構成を示す断面図である。図3において内燃機関1のシリンダヘッド1aは、シリンダブロック1bの上面に固定されるロアヘッド10と、このロアヘッド10の上部に設けられたアッパヘッド11とを備えている。
【0039】
前記ロアヘッド10には、各気筒21毎に2つの吸気ポート26が形成され、各吸気ポート26の燃焼室24側の開口端には、吸気弁28の弁体28aが着座するための弁座12が設けられている。
【0040】
前記ロアヘッド10には、各吸気ポート26の内壁面から該ロアヘッド10の上面にかけて断面円形の貫通孔が形成され、その貫通孔には筒状のバルブガイド13が挿入されている。前記バルブガイド13の内孔には、吸気弁28の弁軸28bが貫通し、前記弁軸28bが軸方向へ進退自在となっている。
【0041】
前記アッパヘッド11において前記バルブガイド13と軸心が同一となる部位には、第1コア301及び第2コア302が嵌入される断面円形のコア取付孔14が設けられている。前記コア取付孔14の下部14bは、その上部14aに比して径大に形成されている。以下では、前記コア取付孔14の下部14bを径大部14bと称し、前記コア取付孔14の上部14aを径小部14aと称する。
【0042】
前記径小部14aには、軟磁性体からなる環状の第1コア301と第2コア302とが所定の間隙303を介して軸方向に直列に嵌挿されている。これらの第1コア301の上端と第2コア302の下端には、それぞれフランジ301aとフランジ302aが形成されており、第1コア301は上方から、また第2コア302は下方からそれぞれコア取付孔14に嵌挿され、フランジ301aとフランジ302aがコア取付孔14の縁部に当接することにより第1コア301と第2コア302の位置決めがされて、前記間隙303が所定の距離に保持されるようになっている。
【0043】
前記第1コア301の上方には、筒状のアッパキャップ305が設けられている。このアッパキャップ305は、その下端に形成されたフランジ部305aにボルト304を貫通させてアッパヘッド11上面に固定されている。この場合、フランジ部305aを含むアッパキャップ305の下端が第1コア301の上面周縁部に当接した状態で固定されることになり、その結果、第1コア301がアッパヘッド11に固定されることになる。
【0044】
一方、前記第2コア302の下部には、コア取付孔14の径大部14bと略同径の外径を有する環状体からなるロアキャップ307が設けられている。このロアキャップ307にはボルト306が貫通し、そのボルト306により前記ロアキャップ307が前記径小部14aと径大部14bの段部における下向きの段差面に固定されている。この場合、ロアキャップ307が第2コア302の下面周縁部に当接した状態で固定されることになり、その結果、第2コア302がアッパヘッド11に固定されることになる。
【0045】
前記第1コア301の前記間隙303側の面に形成された溝部には、第1の電磁コイル308が把持されており、前記第2コア302の間隙303側の面に形成された溝部には第2の電磁コイル309が把持されている。その際、第1の電磁コイル308と第2の電磁コイル309とは、前記間隙303を介して向き合う位置に配置されるものとする。そして、第1及び第2の電磁コイル308、309は、前述した吸気側駆動回路30aと電気的に接続されている。
【0046】
前記した第1コア301と第1の電磁コイル308は、本発明に係る電磁石を実現するとともに、前記した第2コア302と第2の電磁コイル309も、本発明に係る電磁石を実現する。
【0047】
前記間隙303には、該間隙303の内径より径小な外径を有する環状の軟磁性体からなるアーマチャ311が配置されている。このアーマチャ311の中空部には、該アーマチャ311の軸心に沿って上下方向に延出した円柱状のアーマチャシャフト310が固定されている。これらアーマチャ311とアーマチャシャフト310は、本発明に係る磁性体を実現するものである。
【0048】
前記アーマチャシャフト310は、その上端が前記第1コア301の中空部を通ってその上方のアッパキャップ305内まで至るとともに、その下端が第2コア302の中空部を通ってその下方の径大部14b内に至るよう形成され、前記第1コア301及び前記第2コア302によって軸方向へ進退自在に保持されている。
【0049】
前記アッパキャップ305内に延出したアーマチャシャフト310の上端部には、円板状のアッパリテーナ312が接合されるとともに、前記アッパキャップ305の上部開口部にはアジャストボルト313が螺着され、これらアッパリテーナ312とアジャストボルト313との間には、アッパスプリング314が介在している。また、前記アジャストボルト313と前記アッパスプリング314との当接面には、前記アッパキャップ305の内径と略同径の外径を有するスプリングシート315が介装されている。
【0050】
一方、前記径大部14b内に延出したアーマチャシャフト310の下端部には、吸気弁28の弁軸28bの上端部が当接している。前記弁軸28bの上端部の外周には、円盤状のロアリテーナ28cが接合されており、そのロアリテーナ28cの下面とロアヘッド10の上面との間には、ロアスプリング316が介在している。
【0051】
このように構成された吸気側電磁駆動機構30では、吸気側駆動回路30aから第1の電磁コイル308及び第2の電磁コイル309に対して励磁電流が印加されていないときは、アッパスプリング314からアーマチャシャフト310に対して下方向(すなわち、吸気弁28を開弁させる方向)への付勢力が作用するとともに、ロアスプリング316から吸気弁28に対して上方向(すなわち、吸気弁28を閉弁させる方向)への付勢力が作用し、その結果、アーマチャシャフト310及び吸気弁28が互いに当接して所定の位置に弾性支持された状態、いわゆる中立状態に保持されることになる。これにより、アッパスプリング314とロアスプリング316は、本発明に係る弾性部材を実現することになる。
【0052】
尚、アッパスプリング314とロアスプリング316の付勢力は、前記アーマチャ311の中立位置が前記間隙303において前記第1コア301と前記第2コア302との中間の位置となるよう設定されており、構成部品の初期公差や経年変化等によってアーマチャ311の中立位置が前記した中間位置からずれた場合には、アーマチャ311の中立位置が前記した中間位置と一致するようアジャストボルト313によって調整することが可能になっている。
【0053】
前記アーマチャシャフト310及び前記弁軸28bの軸方向の長さは、前記アーマチャ311が前記間隙303の中間位置に位置するときに前記弁体28aが開弁側変位端と閉弁側変位端との中間の位置(以下、中開位置と称する)となり、且つ、前記アーマチャ311が第1コア301に当接したときに前記弁体28aが弁座12に着座するように設定されている。
【0054】
前記した吸気側電磁駆動機構30では、吸気側駆動回路30aから第1の電磁コイル308に対して励磁電流が印加されている時は、第1コア301と第1の電磁コイル308とアーマチャ311との間に、アーマチャ311を第1コア301側へ変位させる方向の電磁力が発生するため、アーマチャ311がアッパスプリング314の付勢力に抗して第1コア301に当接した状態となる。
【0055】
アーマチャ311が第1コア301に当接した状態にあると、吸気弁28は、ロアスプリング316の付勢力を受けて退行し、該吸気弁28の弁体28aが弁座12に着座した状態、すなわち全閉状態となる。
【0056】
また、前記した吸気側電磁駆動機構30では、吸気側駆動回路30aから第2の電磁コイル309に対して励磁電流が印加されている時は、第2コア302と第2の電磁コイル309とアーマチャ311との間に、アーマチャ311を第2コア302側へ変位させる方向の電磁力が発生するため、アーマチャ311がロアスプリング316の付勢力に抗して第2コア302に当接した状態となる。
【0057】
アーマチャ311が第2コア302に当接した状態にあると、アーマチャシャフト310がロアスプリング316の付勢力に抗して弁軸28bを開弁方向へ押圧することになり、その押圧力によって吸気弁28が全開状態に保持される。
【0058】
次に、上記した吸気側電磁駆動機構30では、全閉状態にある吸気弁28を開弁させる場合は、先ず吸気側駆動回路30aが第1の電磁コイル308に対する励磁電流の印加を停止する。
【0059】
このとき、第1コア301と第1の電磁コイル308とアーマチャシャフト310との間でアーマチャ311を第1コア301側へ変位させる方向の電磁力が消滅するため、アーマチャ311及び吸気弁28がアッパスプリング314の付勢力を受けて開弁方向へ変位する。
【0060】
続いて、吸気側駆動回路30aは、アーマチャ311がアッパスプリング314の付勢力を受けて第2コア302の近傍まで変位した時点で、第2の電磁コイル309に対して励磁電流を印加することにより、第2コア302と第2の電磁コイル309とアーマチャ311との間にアーマチャ311を第2コア302側へ引き寄せる電磁力を発生させる。この電磁力によりアーマチャ311が第2コア302に当接する位置まで変位し、その結果、吸気弁28が全開状態となる。
【0061】
一方、上記した吸気側電磁駆動機構30では、全開状態にある吸気弁28を閉弁させる場合は、先ず吸気側駆動回路30aが第2の電磁コイル309に対する励磁電流の印加を停止する。
【0062】
このとき、第2コア302と第2の電磁コイル309とアーマチャシャフト310との間でアーマチャ311を第2コア302側へ引き寄せる電磁力が消滅するため、アーマチャ311及び吸気弁28がロアスプリング316の付勢力を受けて閉弁方向へ変位する。
【0063】
続いて、吸気側駆動回路30aは、アーマチャ311がロアスプリング316の付勢力を受けて第1コア301の近傍まで変位した時点で、第1の電磁コイル308に対して励磁電流を印加することにより、第1コア301と第1の電磁コイル308とアーマチャ311との間に、アーマチャ311を第1コア301側へ引き寄せる電磁力を発生させる。この電磁力によりアーマチャ311が第1コア301に当接する位置まで変位し、その結果、吸気弁28の弁体28aが弁座12に着座する。
【0064】
従って、上記した吸気側電磁駆動機構30では、吸気側駆動回路30aからの励磁電流が第1の電磁コイル308と第2の電磁コイル309とに交互に印加されることにより、アーマチャ311が進退動作し、それに伴って弁軸28bが進退駆動されると同時に弁体28aが開閉駆動されることになる。
【0065】
その際、第1の電磁コイル308及び第2の電磁コイル309に対する励磁電流の印加タイミングを変更することにより、吸気弁28の開閉タイミングを任意に制御することが可能となる。
【0066】
尚、前記吸気側電磁駆動機構30には、吸気弁28の変位を検出するバルブリフトセンサ317が取り付けられている。このバルブリフトセンサ317は、アッパリテーナ312の上面に取り付けられた円板状のターゲット317aと、アジャストボルト313における前記アッパリテーナ312と対向する部位に取り付けられたギャップセンサ317bとから構成されている。
【0067】
このように構成されたバルブリフトセンサ317では、前記ターゲット317aが前記吸気側電磁駆動機構30のアーマチャ311と一体的に変位し、前記ギャップセンサ317bが該ギャップセンサ317bと前記ターゲット317aとの距離に対応した電気信号を出力することになる。
【0068】
その際、アーマチャ311が中立状態にあるときのギャップセンサ317bの出力信号値を予め記憶しておき、その出力信号値と現時点におけるギャップセンサ317bの出力信号値との偏差を算出することにより、アーマチャ311及び吸気弁28の変位を特定することが可能となる。
【0069】
ここで図1及び図2に戻り、前述したように構成された内燃機関1には、該内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)20が併設されている。
【0070】
前記ECU20には、スロットルポジションセンサ41、アクセルポジションセンサ43、エアフローメータ44、空燃比センサ48、クランクポジションセンサ51、水温センサ52、バルブリフトセンサ317等の各種センサが電気配線を介して接続され、各センサの出力信号がECU20に入力されるようになっている。
【0071】
前記ECU20には、イグナイタ25a、吸気側駆動回路30a、排気側駆動回路31a、燃料噴射弁32、スロットル用アクチュエータ40等が電気配線を介して接続され、ECU20が各種センサの出力信号値をパラメータとしてイグナイタ25a、吸気側駆動回路30a、排気側駆動回路31a、燃料噴射弁32、スロットル用アクチュエータ40を制御することが可能になっている。
【0072】
ここで、ECU20は、図4に示すように、双方向性バス400によって相互に接続されたCPU401とROM402とRAM403とバックアップRAM404と入力ポート405と出力ポート406とを備えるとともに、前記入力ポート405に接続されたA/Dコンバータ(A/D)407を備えている。
【0073】
前記A/D407には、スロットルポジションセンサ41、アクセルポジションセンサ43、エアフローメータ44、空燃比センサ48、水温センサ52、バルブリフトセンサ317等のようにアナログ信号形式の信号を出力するセンサと電気配線を介して接続されている。このA/D407は、上記した各センサの出力信号をアナログ信号形式からデジタル信号形式に変換した後に前記入力ポート405へ送信する。
【0074】
前記入力ポート405は、前述したスロットルポジションセンサ41、アクセルポジションセンサ43、エアフローメータ44、空燃比センサ48、水温センサ52、バルブリフトセンサ317等のようにアナログ信号形式の信号を出力するセンサと前記A/D407を介して接続されるとともに、クランクポジションセンサ51のようにデジタル信号形式の信号を出力するセンサと接続されている。
【0075】
前記入力ポート405は、各種センサの出力信号を直接又はA/D407を介して入力し、それらの出力信号を双方向性バス400を介してCPU401やRAM403へ送信する。
【0076】
前記出力ポート406は、イグナイタ25a、吸気側駆動回路30a、排気側駆動回路31a、燃料噴射弁32、スロットル用アクチュエータ40等と電気配線を介して接続されている。前記出力ポート406は、CPU401から出力された制御信号を双方向性バス400を介して入力し、その制御信号をイグナイタ25a、吸気側駆動回路30a、排気側駆動回路31a、燃料噴射弁32、又はスロットル用アクチュエータ40へ送信する。
【0077】
前記ROM402は、燃料噴射量を決定するための燃料噴射量制御ルーチン、燃料噴射時期を決定するための燃料噴射時期制御ルーチン、吸気弁28の開閉タイミングを決定するための吸気弁開閉タイミング制御ルーチン、排気弁29の開閉タイミングを決定するための排気弁開閉タイミング制御ルーチン、吸気側電磁駆動機構30に印加すべき励磁電流量を決定するための吸気側励磁電流制御ルーチン、排気側電磁駆動機構31に印加すべき励磁電流量を決定するための排気側励磁電流量制御ルーチン、各気筒21の点火栓25の点火時期を決定するための点火時期制御ルーチン、スロットル弁39の開度を決定するためのスロットル開度制御ルーチン等のアプリケーションプログラムに加え、吸気側電磁駆動機構30及び排気側電磁駆動機構31を初期駆動するための初期駆動制御ルーチンを記憶している。
【0078】
前記ROM402は、前記したアプリケーションプログラムに加え、各種の制御マップを記憶している。前記した制御マップは、例えば、内燃機関1の運転状態と燃料噴射量との関係を示す燃料噴射量制御マップ、内燃機関1の運転状態と燃料噴射時期との関係を示す燃料噴射時期制御マップ、内燃機関1の運転状態と吸気弁28の開閉タイミングとの関係を示す吸気弁開閉タイミング制御マップ、内燃機関1の運転状態と排気弁29の開閉タイミングとの関係を示す排気弁開閉タイミング制御マップ、内燃機関1の運転状態と吸気側電磁駆動機構30に印加すべき励磁電流量との関係を示す吸気側励磁電流量制御マップ、内燃機関1の運転状態と排気側電磁駆動機構31に印加すべき励磁電流量との関係を示す排気側励磁電流量制御マップ、内燃機関1の運転状態と各点火栓25の点火時期との関係を示す点火時期制御マップ、内燃機関1の運転状態とスロットル弁39の開度との関係を示すスロットル開度制御マップ等である。
【0079】
前記RAM403は、各センサの出力信号やCPU401の演算結果等を記憶する。前記演算結果は、例えば、クランクポジションセンサ51の出力信号に基づいて算出される機関回転数等である。前記RAM403に記憶される各種のデータは、クランクポジションセンサ51が信号を出力する度に最新のデータに書き換えられる。
【0080】
前記バックアップRAM404は、内燃機関1の運転停止後もデータを保持する不揮発性のメモリであり、各種制御に係る学習値や、異常を発生した箇所を特定する情報等を記憶する。
【0081】
前記CPU401は、前記ROM402に記憶されたアプリケーションプログラムに従って動作し、燃料噴射制御、点火制御、吸気弁開閉制御、排気弁開閉制御、スロットル制御等の周知の制御に加え、本発明の要旨となる吸気側電磁駆動機構30及び排気側電磁駆動機構31の初期駆動制御を実行する。
【0082】
以下、吸気側電磁駆動機構30及び排気側電磁駆動機構31の初期駆動制御について述べる。尚、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動制御と排気側電磁駆動機構31の初期駆動制御とは同一の制御となるため、ここでは吸気側電磁駆動機構30の初期駆動制御のみを説明する。
【0083】
吸気側電磁駆動機構30では、内燃機関1の運転が停止されているときのように、吸気側駆動回路30aから第1の電磁コイル308及び第2の電磁コイル309に対して励磁電流が印加されていないときは、前述の図3の説明で述べたように、アーマチャ311及び吸気弁28が中立位置に保持される。
【0084】
このため、内燃機関1の始動時などには、アーマチャ311及び吸気弁28を中立位置から開弁側変位端もしくは閉弁側変位端へ変位させる必要がある。
中立位置に保持されているアーマチャ311を開弁側変位端(第2コア302と当接する位置)もしくは閉弁側変位端(第1コア301と当接する位置)まで変位させる方法としては、第1の電磁コイル308又は第2の電磁コイル309に連続的に励磁電流を印加する方法を例示することができる。
【0085】
ところで、第1の電磁コイル308及び第1コア301からなる電磁石(又は第2の電磁コイル309及び第2コア302からなる電磁石)からアーマチャ311に作用する電磁力の大きさは、前記電磁石と前記アーマチャ311との距離が短くなるほど大きくなる。このため、中立位置にあるアーマチャ311を閉弁側変位端もしくは開弁側変位端まで変位させるには、第1の電磁コイル308又は第2の電磁コイル309に対して過大な励磁電流を連続的に印加する必要があり、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動にかかる消費電力が過剰に大きくなるという問題がある。
【0086】
これに対し、第1の電磁コイル308と第2の電磁コイル309に対して比較的少量の励磁電流を交互に印加することにより、アーマチャ311、吸気弁28、アッパスプリング314、及びロアスプリング316からなるバネ−質量系の固有振動を励起し、その固有振動の振幅を徐々に増大させ、以てアーマチャ311及び吸気弁28を開弁側変位端もしくは閉弁側変位端まで変位させる方法が提案されている。
【0087】
このような方法によれば、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動にかかる消費電力を過剰に増大させることなく、アーマチャ311及び吸気弁28を開弁側変位端又は閉弁側変位端まで変位させることが可能となる。
【0088】
その際、アーマチャ311及び吸気弁28が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達する時期を正確に見極め、初期駆動制御の実行終了時期を正確に決定することも重要である。
【0089】
これは、アーマチャ311及び吸気弁28が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達していないにも関わらず初期駆動制御の実行が終了されると、その後に吸気弁28を正確に開閉動作させることが困難になるとともに、アーマチャ311及び吸気弁28が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達したにも関わらず初期駆動制御の実行が継続されると、初期駆動制御にかかる消費電力が不要に増加する上に、アーマチャ311及び吸気弁28が過剰な速度で変位端に衝突し、アーマチャ311及び吸気弁28が変位端から跳ね返るバウンスや騒音が発生することになるからである。
【0090】
そこで、本実施の形態に係る初期駆動制御では、アーマチャ311及び吸気弁28からなる可動体が固有振動している際の該可動体の運動状態に基づいて、可動体が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達する時期を予測し、予測された時期に従って初期駆動制御の実行を終了させるようにした。
【0091】
前記可動体が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達する時期を予測する方法としては、1周期毎にアーマチャ311の開弁側又は閉弁側の最大変位を検出し、前回の最大変位と今回の最大変位との偏差から次回の最大変位を予測し、予測された最大変位が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達するか否かを判別する方法を例示することができる。
【0092】
例えば、アーマチャ311の閉弁側の最大変位に基づいて初期駆動制御の実行終了時期を予測する場合は、CPU401は、図5に示すように、バルブリフトセンサ317を利用してアーマチャ311の変位をセンシングすることにより、アーマチャ311の閉弁側の最大変位:Xを1周期毎に算出し、算出された最大変位:XをRAM403に記憶させる。
【0093】
ここで、n周期目の最大変位をXnと表し、(n−1)周期目の最大変位をXn-1と表した場合には、CPU401は、n周期目の最大変位:Xnを算出した時点で、(n−1)周期目の最大変位:Xn-1をRAM403から読み出し、それら2つの最大変位:Xn、Xn-1に基づいて、1周期当たりに最大変位が増加する割合(増加率)を算出する。続いて、CPU401は、n周期目の最大変位:Xnと前記増加率とをパラメータとして(n+1)周期目の最大変位:Xn+1を予測する。
【0094】
尚、図5に示される例のように、アーマチャ311の閉弁側最大変位が直線的に増加するような場合には、CPU401は、n周期目の最大変位:Xnから(n−1)周期目の最大変位:Xn-1を減算して、1周期当たりに最大変位が増加する量(増加量):(Xn−Xn-1)を算出し、その増加量:(Xn−Xn-1)をn周期目の最大変位:Xnに加算して(n+1)周期目の最大変位:Xn+1(=2Xn−Xn-1)を算出するようにしてもよい。
【0095】
上記したように(n+1)周期目の最大変位:Xn+1が予測されると、CPU401は、前記最大変位:Xn+1が閉弁側変位端:Xmax以上であるか否かを判別する。
【0096】
前記最大変位:Xn+1が閉弁側変位端:Xmax以上であると判定した場合は、CPU401は、次の周期((n+1)周期目)においてアーマチャ311が閉弁側変位端に到達するとみなし、(n+1)周期目で吸気側電磁駆動機構30の初期駆動を終了する。
【0097】
CPU401は、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動を終了するにあたり、アーマチャ311を閉弁側変位端に保持するに足る少量の励磁電流(以下、保持電流と称する)のみを第1の電磁コイル308に印加すべく吸気側駆動回路30aを制御する。これにより、アーマチャ311が閉弁側変位端に到達する間際に、第1コア301及び第1の電磁コイル308からアーマチャ311に対して過大な電磁力が作用することがなくなる。
【0098】
この結果、アーマチャ311が過剰に高い速度で第1コア301に衝突することがなくなり、アーマチャ311が第1コア301から跳ね返るバウンスが発生し難くなるとともに、アーマチャ311が第1コア301に衝突することによる騒音の発生も抑制することが可能となる。
【0099】
一方、第1コア301及び第1の電磁コイル308からなる電磁石によって発生された電磁力は、該電磁石とアーマチャ311との距離が短くなるほどアーマチャ311に対して強く作用する。このため、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動においては、アーマチャ311の最大変位が増加する程、電磁石からアーマチャ311に作用する電磁力が強くなる。従って、本実施の形態では、CPU401は、吸気側電磁駆動機構30の初期駆動制御において、図6に示すように、アーマチャ311の閉弁側最大変位が増加するのに伴い、吸気側駆動回路30aから第1の電磁コイル308に対して印加される励磁電流量を徐々に減少させ、最終的に保持電流に収束するようにしてもよい。
【0100】
この場合、必要最小限の励磁電流により、アーマチャ311の最大変位を増加させることが可能になるとともに、アーマチャ311の最大変位を1周期毎に略一定の割合で増加させることが可能となる。
【0101】
次に、本実施の形態に係る初期駆動制御について具体的に述べる。
本実施の形態に係る初期駆動制御では、CPU401は、図7に示すような初期駆動制御ルーチンを実行することになる。この初期駆動制御ルーチンは、予めROM402に記憶されているルーチンであり、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31を初期駆動する必要が生じたときにCPU401によって実行されるルーチンである。
【0102】
初期駆動制御ルーチンでは、CPU401は、先ずS701において、RAM403の所定領域に予め設定されている初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cを“1”に書き換える。
【0103】
前記初期駆動カウンタ記憶領域は、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の初期駆動において、第1の電磁コイル308に励磁電流を印加した回数、言い換えれば、アーマチャ311が振動した回数(周期数)を記憶する領域である。
【0104】
S702では、CPU401は、アーマチャ311、吸気弁28、アッパスプリング314、及びロアスプリング316からなるバネ−質量系の固有振動周期に従って第1の電磁コイル308と第2の電磁コイル309とに交互に1回ずつ励磁電流を印加すべく吸気側駆動回路30a又は排気側駆動回路31aを制御する。
【0105】
S703では、CPU401は、バルブリフトセンサ317の出力信号を入力し、アーマチャ311の閉弁側最大変位を算出する。CPU401は、前記閉弁側最大変位をRAM403の所定領域に記憶させる。
【0106】
S704では、CPU401は、前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cが“2”より小さいか否かを判別する。
前記S704において前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cが“2”より小さいと判定した場合は、CPU401は、S705へ進み、前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cを1つインクリメントする。
【0107】
S705の処理を実行し終えたCPU401は、前述したS702以降の処理を繰り返し実行する。その際、CPU401は、S704において前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cが“2”以上であると判定することになる。
【0108】
前記S704において前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cが“2”以上であると判定した場合は、CPU401は、S706へ進み、RAM403から最新の閉弁側最大変位とその1周期前の閉弁側最大変位とを読み出す。
【0109】
S707では、CPU401は、前記S706で読み出された、最新の閉弁側最大変位とその1周期前の閉弁側最大変位とに基づいて、1周期当たりの閉弁側最大変位の増加率を算出し、その増加率と最新の閉弁側最大変位とをパラメータとして次の周期における閉弁側最大変位を予測する。
【0110】
S708では、CPU401は、前記S707で予測された次周期の閉弁側最大変位が閉弁側変位端以上であるか否かを判別する。
前記S708において次周期の閉弁側最大変位が閉弁側変位端未満であると判定した場合は、CPU401は、S705へ進み、前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cを1つインクリメントする。
【0111】
続いて、CPU401は、前記S702以降の処理を再度実行する。その際、CPU401は、S704において前記初期駆動カウンタ記憶領域の値:Cが“2”以上であると判定して、S706へ進むことになる。
【0112】
S706では、CPU401は、RAM403から最新の閉弁側最大変位とその1周期前の閉弁側最大変位とを読み出す。
S707では、CPU401は、前記S706で読み出された、最新の閉弁側最大変位とその1周期前の閉弁側最大変位とに基づいて、1周期当たりの閉弁側最大変位の増加率を算出し、その増加率と最新の閉弁側最大変位とをパラメータとして次の周期における閉弁側最大変位を再度予測する。
【0113】
S708では、CPU401は、前記S707で予測された次周期の閉弁側最大変位が閉弁側変位端以上であるか否か、言い換えれば、次の周期においてアーマチャ311が閉弁側変位端に到達するか否かを判別する。
【0114】
前記S708において次周期の閉弁側最大変位が閉弁側変位端以上であると判定すると、CPU401は、次の周期においてアーマチャ311が閉弁側変位端に到達するとみなし、S709へ進む。
【0115】
S709では、CPU401は、次の周期において第1の電磁コイル308へ保持電流のみが印加されるように吸気側駆動回路30a又は排気側駆動回路31aを制御して、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の初期駆動制御を終了する。
【0116】
この場合、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の初期駆動において、アーマチャ311が閉弁側変位端に到達する際、言い換えれば、アーマチャ311が第1コア301に到達するとともに吸排気弁28、29が弁座12に着座する際には、第1コア301及び第1の電磁コイル308からなる電磁石は、アーマチャ311を閉弁側変位端に保持するに足る比較的小さな電磁力のみを発生することになる。
【0117】
この結果、電磁石からアーマチャ311に対して過大な電磁力が作用することがなくなるため、アーマチャ311が第1コア301に到達する間際のアーマチャ311の速度、及び吸排気弁28、29が弁座12に着座する間際の吸排気弁28、29の速度が過剰に高くならず、アーマチャ31が静穏に第1コア301に到達するとともに吸排気弁28、29が静穏に弁座12に着座することになる。
【0118】
このようにCPU401が初期駆動制御ルーチンを実行することにより、本発明に係る初期駆動制御手段、及び初期駆動終了時期決定手段が実現されることになる。
【0119】
従って、本実施の形態に係る電磁駆動弁を有する内燃機関によれば、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の初期駆動は、アーマチャ311が閉弁側変位端に到達した時点で終了されるため、アーマチャ311が閉弁側変位端に到達する前に初期駆動が終了されることがなくなるとともに、アーマチャ311が閉弁側変位端に到達した後も初期駆動が継続されることがなくなり、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の動作不良や初期駆動にかかる消費電力が不要に大きくなることがない。
【0120】
また、上記した初期駆動制御ルーチンによれば、吸気側電磁駆動機構30又は排気側電磁駆動機構31の初期駆動を終了する際に、アーマチャ311が第1コア301に到達する速度及び吸排気弁28、29が弁座12に着座する速度を適当な速度とすることが可能になる。
【0121】
尚、本実施の形態では、初期駆動制御の実行終了時期を決定する方法として、アーマチャ311の最大変位に基づいて初期駆動制御の実行終了時期を決定する例について述べたが、アーマチャ311の速度に基づいて初期駆動制御の実行終了時期を決定するようにしてもよい。
【0122】
その場合、CPU401は、例えば、アーマチャ311が中立位置を通過する際の速度を1周期毎に検出し、前回の速度と今回の速度との偏差から次回の速度を予測し、予測された速度が所定の速度以上であれば次回の最大変位が開弁側変位端又は閉弁側変位端に到達すると判定するようにしてもよい。
【0123】
【発明の効果】
本発明に係る電磁駆動弁を有する内燃機関では、吸気弁又は排気弁と連動して変位する磁性体が中立位置に保持されているときに、電磁石に対して所定の周期で励磁電力を印加することにより、磁性体の振動運動を励起し、以て磁性体を閉弁側変位端もしくは開弁側変位端まで変位させる電磁駆動弁の初期駆動において、磁性体の運動状態に基づいて電磁駆動弁の初期駆動終了時期が決定される。
【0124】
この場合、磁性体の運動状態が該磁性体が閉弁側変位端又は開弁側変位端に到達し得る運動状態にあるときに、電磁駆動弁の初期駆動を終了させることが可能となる。
【0125】
この結果、磁性体が開弁側変位端もしくは閉弁側変位端に到達した後まで電磁駆動弁の初期駆動が継続されることがなくなるため、初期駆動に係る消費電力が不要に増加することがない。
【0126】
更に、磁性体が開弁側変位端もしくは閉弁側変位端に到達した後まで電磁駆動弁の初期駆動が継続されることがなくなると、磁性体およびまたは吸排気弁の振動運動が過剰に促進されることもなくなるため、磁性体およびまたは吸排気弁が過剰な速度で変位端に衝突するようなこともない。
【0127】
従って、本発明に係る電磁駆動弁を有する内燃機関によれば、電磁駆動弁の初期駆動を適当な時期に終了することができるため、初期駆動にかかる消費電力を低減することが可能になるとともに、磁性体およびまたは吸排気弁が変位端に衝突することによるバウンスの発生や騒音の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る内燃機関の概略構成を示す平面図
【図2】 本発明に係る内燃機関の概略構成を示す断面図
【図3】 吸気側電磁駆動機構の内部構成を示す図
【図4】 ECUの内部構成を示すブロック図
【図5】 吸気側電磁駆動機構の初期駆動終了時期を予測する方法を説明する図
【図6】 初期駆動制御において第1の電磁コイルに印加すべき励磁電流量の一例を示す図
【図7】 初期駆動制御ルーチンを示すフローチャート図
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
20・・・ECU
25・・・点火栓
26・・・吸気ポート
27・・・排気ポート
28・・・吸気弁
29・・・排気弁
30・・・吸気側電磁駆動機構
30a・・吸気側駆動回路
31・・・排気側電磁駆動機構
31a・・排気側駆動回路
32・・・燃料噴射弁
46・・・排気浄化触媒
47・・・排気管
48・・・空燃比センサ
51・・・クランクポジションセンサ

Claims (1)

  1. 内燃機関の吸気弁又は排気弁と連動して変位する磁性体と、
    前記磁性体を開弁側変位端と閉弁側変位端との中立位置に弾性支持する弾性部材と、
    励磁電力が印加されたときに前記磁性体を開弁側又は閉弁側へ変位させるための電磁力を発生する電磁石と、
    前記磁性体が中立位置に保持されているときに、前記電磁石に対して所定の周期で励磁電力を印加することにより、前記弾性部材と前記電磁石とを協動させて前記磁性体の振動運動を励起する初期駆動手段と、
    前記初期駆動手段により前記磁性体の振動運動が励起されているときの該磁性体の運動状態に基づいて、前記初期駆動手段の作動終了時期を決定する初期駆動終了時期決定手段と、
    を備え
    前記初期駆動終了時期決定手段は、前記磁性体の速度に基づいて前記初期駆動手段の作動終了時期を決定することを特徴とする電磁駆動弁を有する内燃機関。
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