JP4256239B2 - 共同住宅団地の増築方法および共同住宅団地の増築構造 - Google Patents
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Description
このような共同住宅の多くは、隣接する住戸間に各住戸への出入口に接続する屋外階段を備えた構造のいわゆる階段室型共同住宅であり、その多くは老朽化がすすんでいるため、早急な建て替え等が望まれている。しかし、既存の全ての住棟を建て替えるのは、膨大な量の建築廃材の発生や建て替えに伴う居住者の引越し等の問題があり、現実的には容易なことではない。
また、既存の階段室型共同住宅の居住者は高齢者が多いことから、上層階に居住する高齢者にとっては階段での上り下りが大変であるという問題があり、このことも建て替えが要望される一つの大きな要因となっている。
そこで、本願出願人は特願2002−291484号において、この先行技術の問題点を解決することが可能な階段室型共同住宅の増築方法を提案している。
すなわち、この開示技術は、既存共同住宅の上方に新たな居住階を設けるものであるため、各共同住宅の高さがそれぞれ高くなり、複数の共同住宅が並列して構築された共同住宅団地に適用した場合には、建築基準法に定める日影規制をクリアすることが難しい場合があった。
また、この開示技術は、災害発生時の避難を容易にするための改善がなされているものの、高層化されることで、例えば火災が発生した際に、発生現場の上層階に住む居住者の避難が困難となってしまうおそれがあった。
また、共同住宅団地においては、居住者同士が親しくなって頻繁にお互いの住居を行き来することもあるが、別棟の共同住宅の上層階に住む居住者同士の場合には、例えそれがすぐ隣りの棟であったとしても、相手の住居を訪問するのが大変であり、日常生活に不便を感じることがあった。
請求項2に係る発明は、前記既存共同住宅が階段室型共同住宅であって、前記既存共同住宅の廊下を、前記梁の架設前に、該既存共同住宅の各住戸間を連絡するように新たに設けることを特徴とする請求項1記載の共同住宅団地の増築方法に関する。
請求項3に係る発明は、前記複数の既存共同住宅が平面視における長手方向が互いに平行となるように配置されており、これら平行に配置された複数の共同住宅において、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に前記新たな基礎を設けることを特徴とする請求項1又は2記載の共同住宅団地の増築方法に関する。
請求項5に係る発明は、前記連絡通路が、前記既存共同住宅の屋上同士を繋ぐように設けられてなることを特徴とする請求項4記載の共同住宅団地の増築構造に関する。
請求項6に係る発明は、前記複数の既存共同住宅が平面視における長手方向が互いに平行となるように配置されており、これら平行に配置された複数の共同住宅において、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に前記新たな基礎が設けられてなることを特徴とする請求項4又は5記載の共同住宅団地の増築構造に関する。
また、並列する既存の共同住宅同士が連絡通路によって連結されることによって、増築された共同住宅は建築基準法の日影規制をクリアすることが容易となる。
さらに、連絡通路を通って隣り合う他の共同住宅へと移動することができるようになるため、災害発生時の避難経路を確実に確保することが可能となるとともに、新たに形成されたエレベーターと廊下を利用しての住戸間の往来が可能となるため、日常生活の利便性をも大幅に向上させることが可能となる。
また、連絡通路を既存共同住宅の屋上同士を繋ぐように設けることによって、既存の共同住宅部分の居住者と増築された部分の居住者に対して、共に避難の利便性を容易に確保することができるとともに、連絡通路の構築を容易に行うことが可能である。
さらに、複数の既存共同住宅が平面視における長手方向が互いに平行となるように配置されており、これら平行に配置された複数の共同住宅において、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に新たな基礎を設けた場合、増築の施工性に優れるとともに、増築部分の構造が強度的に安定したものとなる。
本発明は、複数の共同住宅が並列して構築された共同住宅団地、特に階段室型共同住宅からなる団地において好適に適用することができるものであり、以下の説明では、鉄筋コンクリート造5階建ての既存の階段室型共同住宅を10階建ての片廊下型共同住宅へと増築する場合を例に挙げて説明する。
但し、本発明は以下の例に限定されず、既存の共同住宅が4階建て以下や6階建て以上の場合或いは片廊下型共同住宅の場合、更に増築後の共同住宅が9階建て以下や11階建て以上の場合にも適用することが可能である。
図1は本発明に係る増築方法の施工前の状態を示す平面図、図7は本発明に係る増築方法の施工前の状態を示す立面図である。尚、図においては2棟の既存の共同住宅が並列された状態が示されているが、本発明は3棟以上の既存の共同住宅が並列されている場合にも適用可能である。
図示例では、既存共同住宅(1)として、隣接する住戸(2)の間に、各住戸(2)への出入口に接続する屋外階段(3)を備えた構造の階段室型共同住宅が示されており、本発明に係る増築方法においては、既存共同住宅(1)が階段室型共同住宅の場合、この既存共同住宅(1)を片廊下型共同住宅へと改築する。
図示例では、並列する既存共同住宅(1)が2棟であるため、新規基礎(5)は少なくとも3つ設ければよいが、3棟の場合には少なくとも4つ、4棟の場合には少なくとも5つ設けられる。
但し、本発明においては、複数の既存共同住宅(1)が図2と異なる配置となっている場合にも適用可能である。図14は、複数の既存共同住宅(1)の配置の異なる例を示す概略平面図であり、それぞれの場合における新規基礎(5)の位置と、新規基礎(5)の上部に構築される増築部分(直線で図示)を示している。
(a)は複数の既存共同住宅(1)が平面視における長手方向が互いに平行となるように且つ長手方向の位置が一致するように配置されている場合、(b)は前記長手方向が一直線上に配置されている場合、(c)は前記長手方向が直角となり既存共同住宅(1)が平面視においてT字状に配置されている場合、(d)は複数の既存共同住宅(1)が平面視における長手方向が互いに平行となるように且つ長手方向の位置が大きくズレて配置されている場合である。
この増築用基礎(6)の設置は、新規基礎(5)の設置前、設置後のいずれの時期に行ってもよいし、新規基礎(5)の設置と並行して行ってもよい。
次いで、増築用基礎(6)の上部に鉄骨柱等からなる柱(7)を立設し、これら各柱(7)の間に梁(4)を設け(図2参照)、この梁(4)の上部に既存共同住宅(1)の各階において、全ての隣接する住戸(2)に面する新たな廊下(8)を設ける(図3及び図9参照)。また、廊下(8)に面する外側位置には、図3に示す如く、新たに避難階段(9)を設置する。
尚、既存共同住宅(1)が当初から片廊下型共同住宅である場合には、この改築工程は不要となり、廊下(8)は新たなものではなく既存のものを利用することができる。
次いで、複数(図示例では2棟)の並列する既存共同住宅(1)を跨ぐように、該既存共同住宅(1)の上方において支持柱(10)の間に梁(11)を架設する(図4及び図11参照)。
そして、これら梁(11)の上部に屋根(12)、床(13)及び廊下(14)を設けることによって、図5,11に示す如く、既存共同住宅(1)の上方に多数の住戸(15)を有する新たな居住階(16)が形成される。図示例では、5階分の新たな居住階(16)を形成した様子が示されている。
さらに、増築された新たな居住階(16)に設けられた廊下(14)に面する位置には、地面まで降りることが可能な避難階段(18)が設けられる。
これらエレベーター(17)及び避難階段(18)の設置は、梁(11)の架設工程と同時にもしくはその前後いずれかの工程で行うことが好ましく、梁(11)の架設後に設ける場合、梁(11)の上部に屋根(12)、床(13)及び廊下(14)を設ける前後いずれかの工程で行うことがより好ましい。
このように、並列する既存の共同住宅同士が連絡通路によって連結されることによって、増築された共同住宅は全体で1つの建築物とみなされるようになり、建築基準法の日影規制をクリアすることが容易となる。
特に、複数の共同住宅が比較的狭い間隔にて並列して建築されている共同住宅団地においては、各共同住宅を個別に上方へ増築しようとすると個々の建物毎に日影規制を検討しなければならないが、各共同住宅を連結して1つの建築物とみなせるように増築することによって、増築後の建物では個々の建物についての日影規制の検討が不要となり、連結された建物全体での日影規制のみを検討すればよいことになり、上方への増築を行うことが容易となる。
このとき、図13に示すように、連絡通路(19)に沿った適宜箇所に避難階段(20)やエレベーター(21)を設置しておくと、地上への避難をより迅速に行うことが可能となるため好ましい。尚、図12と図13は共に増築完了状態の図であるが、避難階段(19)等の配置が若干異なったものを示している。
2 既存共同住宅の住戸
5 新たな基礎(新規基礎)
8 既存共同住宅に設けられた廊下
10 支持柱
11 梁
12 新たな居住階に設けられた屋根(屋上)
13 新たな居住階に設けられた床
14 新たな居住階に設けられた廊下
16 新たな居住階
17 エレベーター
19 連絡通路
Claims (6)
- 複数の共同住宅が並列して構築された共同住宅団地における増築方法であって、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に新たな基礎を設け、該基礎の上部にそれぞれ支持柱を立設し、次いで複数の前記既存共同住宅を跨ぐように該既存共同住宅の上方において該支持柱の間に梁を架設した後、該梁の上部に屋根、床及び廊下を設けることにより、前記既存共同住宅の上方に新たな居住階を形成するとともに、前記既存共同住宅に設けられた各階の廊下と新たな居住階に設けられた各階の廊下との往来を可能とするエレベーターと、隣り合う既存共同住宅同士を繋ぐ連結通路とを設けることを特徴とする共同住宅団地の増築方法。
- 前記既存共同住宅が階段室型共同住宅であって、前記既存共同住宅の廊下を、前記梁の架設前に、該既存共同住宅の各住戸間を連絡するように新たに設けることを特徴とする請求項1記載の共同住宅団地の増築方法。
- 前記複数の既存共同住宅が、平面視における長手方向が互いに平行となるように配置されており、これら平行に配置された複数の共同住宅において、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に前記新たな基礎を設けることを特徴とする請求項1又は2記載の共同住宅団地の増築方法。
- 複数の共同住宅が並列して構築された共同住宅団地を増築して得られる共同住宅団地の増築構造であって、隣接する既存共同住宅同士間および両端に位置する既存共同住宅の外側に新たな基礎が設けられ、該基礎の上部にそれぞれ支持柱が立設され、複数の前記既存共同住宅を跨ぐように該既存共同住宅の上方において該支持柱の間に梁が架設され、該梁の上部に屋根、床及び廊下を設けることにより、前記既存共同住宅の上方に新たな居住階が形成されてなるとともに、隣り合う既存共同住宅同士を繋ぐ連結通路が設けられ、前記既存共同住宅に設けられた各階の廊下と新たな居住階に設けられた各階の廊下との往来を可能とするエレベーターが設置されてなることを特徴とする共同住宅団地の増築構造。
- 前記連絡通路が、前記既存共同住宅の屋上同士を繋ぐように設けられてなることを特徴とする請求項4記載の共同住宅団地の増築構造。
- 前記複数の既存共同住宅が、平面視における長手方向が互いに平行となるように配置されており、これら平行に配置された複数の共同住宅において、隣接する既存共同住宅間および両端に位置する既存共同住宅の外側に前記新たな基礎が設けられてなることを特徴とする請求項4又は5記載の共同住宅団地の増築構造。
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