JP4256098B2 - 2主軸対向旋盤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、2主軸対向旋盤、特に回転工具駆動装置を備えた工具タレットを主軸の上方に配置した2主軸対向旋盤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
タレット旋盤は、工具タレットに装着された複数の工具をタレットケースの回転割出しにより選択してワークの加工を行う。工具駆動装置を設けた工具タレットは、ドリルやエンドミルなどの回転工具を装着することが可能で、そのような工具タレットを旋盤のZ−X及びY方向に移動可能に設けることにより、ワークに広汎な加工を行うことが可能になるが、機械コストが上昇する。更に工具駆動装置を備えた工具タレットをY軸回りに旋回位置決め可能に設けることで、ワークに対する傾斜面や傾斜孔の加工が可能になり、更に広汎な加工を実現することができるが、機械コストは更に上昇し、刃物台も大型になる。なお、旋盤におけるZ方向は主軸と平行な方向、X方向は工具の切り込み送り方向、Y方向はZ及びXと直交する方向である。
【0003】
2主軸対向旋盤は、2本の主軸間でワークを受け渡すことにより、チャック把持部を含むワーク全体の加工が可能である。2主軸対向旋盤は、両側の主軸で同時並行加工を可能にするために、通常は2個以上の刃物台を備えている。このような2主軸対向旋盤において、広汎な加工への対応と安価な機械コストとを実現するには、2個設けられた刃物台の一方にY方向に移動可能かつY軸回りに旋回位置決め可能な工具タレットを装着し、他の一方の刃物台に単純で安価な構造の工具タレットを装着する構成が有効である。この場合の2個のタレットは、主軸の上方と下方とにそれぞれ配置し、Z方向に大きなストロークで移動可能にして、2個の工具タレットが2個の主軸のいずれとも協動してワークを加工できるようにする。より高い生産性が求められるときには、簡単で安価な構造のタレットを1個追加して、3タレット型の旋盤とする。
【0004】
工具タレットのタレットケースは、刃物台に固定又はY軸回りに旋回位置決め可能に装着したタレットフレームに回転割出可能に軸支される。タレットケースに装着した回転工具を駆動する工具駆動装置は、タレットケースが回転しても工具の駆動に支障が生じないように、タレットケースの割出中心軸9に中心を一致させて配置した回転伝達軸を介して工具を駆動するようにしている。
【0005】
このような構造の従来の工具タレットは、図4に示すように、タレットケース5の中心からタレットフレーム1に向けて中空の割出軸2が延びており、この割出軸2の中空孔内に配置した回転伝達軸4を介してタレットケース5内に配置された工具駆動軸3を駆動するようになっている。割出軸2は、タレットケースの直近に配置した軸受6と、これからある程度離れた位置に配置した軸受7とで軸支されている。この軸受6、7間の距離は、工具の支持剛性を確保するために、ある程度の長さが必要である。また、割出したタレットを固定するロック装置8は、タレットケース側の軸受6の外周側に配置されている。このロック装置は、通常2ピース型又は3ピース型のフェース歯車継手が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図4に示したような従来構造の工具タレットは、タレットケースの割出中心軸9の方向がZ方向に固定されているときには有利であるが、Y軸回りに旋回位置決めされる工具タレットに図4の構造を採用すると、旋回中心軸に直交する方向の装置寸法が大きいために、旋回のために広い空間を必要とし、機械の大型化、他の部材との干渉、剛性の低下などの問題が生ずる。更に、旋回時の回転慣性が大きくなり、高速動作の妨げとなる。また、2主軸対向旋盤においては、左主軸のワークを加工するときと、右主軸のワークを加工するときとで、新たな加工位置への工具タレットの移動、旋回及び割出し回転を必要とし、これらの動作時間が加工のロスタイムとなる。
【0007】
そこでこの発明は、狭いスペースでY軸回りの旋回が可能なコンパクトな工具タレットを得ること、及び2主軸対向旋盤において、左主軸のワークと右主軸のワークとに加工対象を切換えるときの工具タレットの移動ないし割出し動作時間を可及的に短縮することが可能な工具タレットを備えた2主軸対向旋盤を得ることを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の2主軸対向旋盤ては、工具タレットのタレットケース15をクロスローラ軸受14などの旋回軸受でタレットフレーム11に軸支し、その割出位置を固定する3ピース型のフェース歯車継手からなるリング状のロック装置8を旋回軸受14の内径側に配置することで、タレットケース15を軸支する部分の割出中心軸方向の寸法を短くしている。更に、工具駆動モータ34を割出軸線上に配置した回転伝達軸4の基端と回転継手35で直結することにより、工具タレットの小型化を実現している。
【0009】
また、タレットケース15の直径方向に配置されて回転伝達軸4を介して回転駆動される工具駆動軸31の両端を回転連結端として、タレットケース15に180度背中合わせにして装着した回転工具を同時駆動することで、2主軸対向旋盤において、加工対象となるワークを変換するときの工具タレットの移動ないし割出し動作を短い時間で行うことを可能にしている。
【0010】
本願の発明に係る2主軸対向旋盤は、同一軸線上で互いに対向配置された2本の主軸46、47と、その上方に配置されて当該2本の主軸のいずれとも協動してワークを加工可能な移動ストロークを有する工具タレットとを備えた2主軸対向旋盤であある。
【0011】
本願発明の2主軸対向旋盤における前記工具タレットは、旋盤のY軸回りに旋回可能に装着されたタレットフレーム11と、このタレットフレーム11に軸支されて割出中心軸9回りに回転割出されるタレットケース15と、このタレットケース内にその直径方向に軸支された工具駆動軸31と、前記割出中心軸を軸心とする位置に軸支されて前記工具駆動軸を駆動する回転伝達軸4と、この回転伝達軸を駆動する工具駆動モータ34とを備えている。
【0012】
本願発明は、上記手段を備えた2主軸対向旋盤の工具タレットにおいて、タレットケース15をタレットフレーム11と対向する面に装着されたクロスローラベアリングなどの旋回軸受14で軸支し、当該旋回軸受の内径側にタレットケース15の割出位置を固定する3ピース型のフェース歯車継手からなるロック装置8を配置し、更に、両端に回転工具に連結される回転連結端44を備えた工具駆動軸31を、タレットフレーム11に連結されたインナーフレームで軸支することにより、タレットケース15の回転に関らず常に旋盤のZ−X平面と平行に軸支されるようにし、当該工具駆動軸を前記回転伝達軸4の基端に直結して設けた正逆転可能な前記工具駆動モータ34で駆動する手段を採用することにより、上記課題を解決している。
【0013】
本願の請求項2の発明は、上記手段を備えた請求項1記載の2主軸対向旋盤において、その工具タレットのタレットケース15を回転させる割出モータ17は、旋回軸受14の外径側に位置するリング状の歯車16とこれに噛合するピニオン18とを介してタレットケース15を回転駆動することを特徴とするものである。この構造で割出モータ17をタレットフレーム11の上方(Y軸回りの旋回軸線上)に配置することにより、工具タレットのY軸回りの旋回半径を小さくできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施例を参照してこの発明の実施形態を説明する。図1に示すように、この発明の2主軸対向旋盤における工具タレットのタレットフレーム11は、刃物台12にY軸回りに旋回位置決め可能に装着された旋回フレーム13と実質上一体である。タレットフレーム11の一方の端面には、リング状のクロスローラ軸受14でタレットケース15が自由回転可能に支持されている。クロスローラ軸受は、工具の高い支持剛性を得るために、大径のものを用いて、タレットケース15の外径近くを支持するようにする。図の例では、タレットケース15を割出中心軸9回りに回転させるためのリング状の割出歯車16をクロスローラ軸受14の外輪押えとしている。割出歯車16は、タレットフレーム11の上面(図1の紙面手前側。図1では便宜上図の上方に想像線で示している。)に搭載した減速機付きモータ17の出力軸に固定された駆動ピニオン18と噛合している。
【0015】
クロスローラ軸受14の内径側には、タレットフレーム11の割出位置を固定するリング状のロック装置8が配置されている。このロック装置8は、タレットフレーム11に固定された固定側フェース歯車19、タレットケース15に固定された回転側フェース歯車20及びこれらの歯車と対向するロック用フェース歯車21を備えている。ロック用フェース歯車21は、タレットフレーム11とタレットケース15から延びる円筒部材22との間に形成されたリング状のシリンダ23に嵌装されたロックピストン24のタレットケース側端面に形成されている。
【0016】
工具を割出すためにタレットケース15を回転させるときは、ロックピストン24を反タレットケース側に移動してロック用フェース歯車21の噛合を解き、タレットケース15を固定するときは、ロックピストン24をタレットケース側に移動してロック用フェース歯車21を固定側フェース歯車19と回転側フェース歯車20とに同時に歯合させることにより、回転側フェース歯車20を固定する。なお、図中、25はロックピストン24をタレットケース15に回動不能に連結する回り止めピン、26及び27はロックピストン24の両端に形成されいている油圧室、28及び29は油圧室26、27を封鎖しているOリングである。油圧室26、27には、図示されていない油圧通路を通って作動油が供給されて、ロックピストン24を進退させる。
【0017】
タレットフレーム11の軸芯には、インナーフレーム30が一体的に嵌合されている。このインナーフレーム30の先端は、タレットケース15内に延び、割出中心軸9と直交する方向の工具駆動軸31を軸支している。従って工具駆動軸31は、タレットケース15が回転しても旋回せず、常に一定の方向(旋盤のZ−X平面と平行な方向)を向いている。
【0018】
インナーフレーム30の軸芯には、回転伝達軸4が軸支され、その先端に固定した駆動傘歯車32が工具駆動軸31に設けた従動傘歯車33に噛合している。回転伝達軸4の基端は、タレットフレーム11の反タレットケース側端面に装着した工具駆動モータ34の出力軸に軸継手35を介して連結されている。
【0019】
なお、図中の36及び37は工具駆動軸31を軸支している軸受、38及び39は回転伝達軸4を軸支している軸受である。
【0020】
タレットケース15にドリルやフライスなどの回転工具40を装着するときは、それらの工具を工具ホルダ41に装着した状態で、タレットケース15の外周に設けられた工具取付ステーションに装着する。工具ホルダの工具軸42の基端には、軸直角方向の突起43が設けられ、一方、工具駆動軸31の両端には、対応する方向の溝44が設けられている。工具ホルダ41をタレットケース15に装着すると、この突起43と溝44とが嵌合して、工具駆動軸31の回転が工具軸42に伝達される。
【0021】
タレットケース15を回転させて他の工具を割出すときは、突起43が溝44から外れなければならない。そこで工具駆動モータとして停止位相制御が可能なモータを用い、工具駆動軸31が常に溝44を円周方向にした状態で停止するようにする。一方、インナーフレーム30には、図2に示すように、タレットケースの内側に位置する先端部分を円盤状とし、その周縁に工具軸の突起43を案内する円板45(円周溝でもよい)を設けて、回転工具が他の位置へ移動したときは、突起43の回転がインナーフレームの円板45で防止されて、突起43の方向が変わらないようにしてある。従って、回転工具が再び工具駆動軸31の延長上の位置に割出されたとき、突起43と溝44とが衝突することなく嵌合する。
【0022】
なお、回転工具40をタレットケース15の放射方向に向けるときは、図に実線で示すストレート型の工具ホルダを使用し、正面側に向けるときは、想像線で示すL形の工具ホルダを使用する。
【0023】
この実施例の工具タレットは、タレットケース内の工具駆動軸31の両端に工具との連結要素となる溝44が設けられているので、工具駆動軸31の両端部分に割り出された2本の工具に回転力が伝達される。2主軸対向旋盤において、図3に示すようにタレットの割出中心軸9がX方向を向いているときは、タレットケース15の両側に割り出された工具40、40がそれぞれ左主軸46側及び右主軸47側になる。従って、左主軸46に把持されたワーク48の加工から右主軸47に把持されたワーク49の加工に移るとき、タレットのZ方向の移動や旋回中心軸回りの旋回量を少なくできる場合が多く生じ、またタレットの割出回転が不要になる場合もあるので、対象ワーク変換時の時間ロスを短縮することが可能になる。このときの工具の回転方向は、工具駆動モータを逆転させることで対応できる。
【0024】
工具駆動モータ34は、正逆転可能で、アブソリュート型エンコーダなどによる停止位相制御が可能で、かつ停止位置を保持可能な電動機が用いられている。停止位相制御により、工具の回転停止時に工具駆動軸31の先端の溝44の方向を常にタレットケースの円周方向にすることができる。停止位置の保持は、工具駆動モータ34に内蔵された機械的又は電気的なブレーキを動作させることによって行われる。
【0025】
旋盤の電源が入っていないときは、回転伝達軸4は外力により自由に回転し得る状態になる。そのため旋盤の電源オフ時に工具駆動軸31の先端の溝44の方向がタレットケースの円周方向からずれるおそれがある。そこで旋盤の運転に際しては、電源投入後の最初のタレットの割出指令で、工具駆動モータ34に出力軸の位置決め指令を与えて、溝44の方向を正しい方向に設定し、次に保持指令を与えて出力軸を固定した状態で、タレットケースの割出を実行する。旋盤の電源が投入されている間は、工具駆動モータ34の停止位相制御と停止時における出力軸の位相保持動作とで、タレット回転時の工具駆動軸の溝44の方向を常に所定の方向に保持しておくことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したこの発明の2主軸対向旋盤は、その主軸の上方に設けた工具タレットの割出中心軸方向の長さを短くすることができ、割出中心に配置された回転伝達軸を工具駆動モータに直結する構造を採用することで、工具タレットの軸方向寸法と径方向寸法とを略等しい寸法とすることが可能になる。従って、このような構造を採用することで、工具タレットのY軸回りの旋回半径を小さくすることができ、旋回に必要なスペース及び旋回時の慣性を小さくすることが可能になる。そして、タレットケース内の工具駆動軸で、180度背中合せに配置された回転工具を同時駆動するので、左主軸側のワークと右主軸側のワークとに加工対象ワークを切換えるときの工具タレットの平均動作時間を短縮することができ、より効率のよい加工が実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の2主軸対向旋盤の工具タレットの一例を示す断面図
【図2】 図1の工具タレットにおける工具駆動軸と工具との連結構造を示す斜視図
【図3】 この発明の2主軸対向旋盤の模式的な説明図
【図4】 従来の2主軸対向旋盤の工具タレットの例を示す断面図
【符号の説明】
4 回転伝達軸
8 ロック装置
9 割出中心軸
11 タレットフレーム
15 タレットケース
16 割出歯車
17 減速機付モータ
18 ピニオン
31 工具駆動軸
46 左主軸
47 右主軸
Claims (2)
- 同一軸線上で互いに対向配置された2本の主軸(46,47)と、その上方に配置されて当該2本の主軸のいずれとも協動してワークを加工可能な移動ストロークを有する工具タレットとを備え、当該工具タレットが、タレットフレーム(11)に軸支されて割出中心軸(9)回りに回転割出されるタレットケース(15)と、このタレットケース内に直径方向に軸支されて当該タレットケースの回転に関らず常に旋盤のZ−X平面と平行な工具駆動軸(31)と、前記割出中心軸を軸心とする位置に軸支されて前記工具駆動軸を駆動する回転伝達軸(4)と、この回転伝達軸を駆動する工具駆動モータ(34)とを備えている2主軸対向旋盤において、
前記タレットフレーム(11)が旋盤のY軸回りに旋回可能に装着され、前記タレットケース(15)がタレットフレーム(11)と対向する面に装着された旋回軸受(14)で軸支され、当該旋回軸受の内径側にタレットケース(15)の割出位置を固定する3ピース型のフェース歯車継手(8)が配置され、
前記工具駆動軸(31)は両端に回転工具に連結される回転連結端(44)を備え、
正逆転可能な前記工具駆動モータが前記回転伝達軸の基端に直結して設けられている
ことを特徴とする、2主軸対向旋盤。 - 前記工具タレットのタレットケース(15)を回転させる割出モータ(17)は、旋回軸受(14)の外径側に位置するリング状の歯車(16)とこれに噛合するピニオン(18)とを介してタレットケース(15)を回転駆動する、請求項1記載の2主軸対向旋盤。
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