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JP4138126B2 - 画像処理装置 - Google Patents

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JP4138126B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子化された画像を鮮鋭化や平滑化などにより高画質化するための画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル技術の発達により、複写機のデジタル化が急速に進んでいる。画像信号をデジタル化することにより、プリンタ機能やFAX機能との融合や、デジタル信号処理技術の適用による画像の高画質化などのメリットなどがある。デジタル複写機では原稿画像をスキャナで走査して電気信号として読み取り、A/D変換器によりデジタル信号に変換したのち、像域識別処理、フィルタ処理、階調処理などのデジタル信号処理を施したのち、例えば電子写真方式などで出力紙上に記録画像を形成する。
【0003】
このようなデジタル複写機においては高画質処理が必要になる。スキャナでは、原稿画像を光学系でCCD上に結像させるため、光学系のMTF特性によっては空間周波数の高い成分が劣化し、エッジがぼけるなどの現象がおきる。これは文字や線画などの解像度劣化につながる。また、一般の印刷物原稿では網点法により中間調表現を行っており、周期的な網点パターンが構成されている。これをそのまま処理すると、網点パターンがノイズとなって画質が劣化したり、階調処理部でデジタル処理特有のモアレが生ずる可能性がある。このため、高画質な画像を記録するためには、文字や線画の部分ではエッジ強調フィルタを施して、スキャナによるぼけの影響を補正する必要がある。また、網点印刷原稿では平滑化フィルタを施して網点成分を除く必要がある。
【0004】
これらの処理を選択的に行うために、像域識別を行ない、識別結果に応じて信号処理を切り替える方法が従来知られている。この方法では、まず像域識別処理により画像信号から原稿の領域種別を自動的に識別する。具体的には文字、網点、写真、下地などの領域に識別する。そして、識別信号に応じて、信号処理方式を切り替える。例えば、文字と識別された領域ではエッジ強調処理方式を用い、網点と識別された領域では平滑化処理方式を施すなどの切替えを行うようにしている。
【0005】
このような像域識別の手段としては、例えば、階調領域と文字領域の局所的な濃度の変化の違いや局所的なパ夕一ンの違いを利用する方法が知られている。前者の例として、特開昭58−3374号公報では、画像を小ブロックに分割し、各ブロック内の最大濃度と最小濃度の差を求め、その差が閾値より大きければ当該ブロックを文字画領域とし、小さければ当該ブロックを階調画領域として識別する方法が開示されている。
【0006】
また、後者の例として、特開昭60−204177号公報では、画像にラプラシアン・フィルタをかけた後、2値化し、例えばその4×4画素のパターンの形状により識別を行う方法が開示されている。
【0007】
これらの微小な領域を参照して識別を行う方法では、網点領域や階調画像上の急峻なエッジが文字部と誤識別されやすいなどという問題があった。この問題を解決するため、画像全体を粗い解像度で走査し、画像の構造をソフトウエアにより解析して像域の識別を行うという方式(ミックスモード通信のための文字領域の抽出アルゴリズム、電子通信学会論文誌J67−D,v0111.pp1277−1284(1984))や、これらの手法を組み合わせた方法なども提案されている。それぞれ、性能やコストで得失があり、装置の要求性能や用途に応じて、適した方式が適用されている。
【0008】
このような識別結果に応じた信号処理の切替え方式としては、エッジ強調と平滑化を切替える方式が多く用いられる。エッジ強調と平滑化を切替えると文字領域とそうでない領域の遷移領域でノイズが発生したり、像域識別部での誤識別が生じた場合の画質劣化が大きいため、エッジ強調と平滑化を多段階的に切り替える方式が用いられる。特公平6−5885号公報には、画像にエッジ強調処理と平滑化処理を施したのち、エッジ検出部から出力されるエッジ検出信号で制御される混合比率により、これらの信号を混合する方式が開示されている。
【0009】
また、特開昭60−167574号公報では、画像信号にエッジ成分抽出処理と平滑化処理を施したのち、識別信号で制御される係数をエッジ成分信号に乗じた信号と平滑化信号を加算する方式が開示されている。これらの方式は、構成は若干異なるものの結果としては識別信号に応じてエッジ成分の強度を変調させることになる。
【0010】
しかしながら、従来技術ではエッジ成分の強度を識別結果に応じて変調させているため、処理の切替えの自由度が低くなっている。例えば、前記引例(特公平6−5885号公報)の実施例では強調する周波数の強度のゲインを変えることはできるが、強調周波数自体は固定で変えることはできない。このため、平滑化を行う場合のカットオフ周波数を変えることも不可能である。また、主走査方向と副走査方向の周波数特性も固定となるため、エッジ強調の強度を主走査と副走査について独立に変調することもできない。従来技術で画像処理の自由度を上げるには引例の実施例を拡張して種類以上のフィルタを設け、これらの出力の混合比を変調することにより可能ではあるが、自由度に応じた処理回路が必要となるため、回路規模が増大するという問題がある。
【0011】
このように複写機に適用する上で文字領域と文字領域以外の2種類というように識別領域種が少ない場合には、画像処理の自由度が低いことは大きな問題とならない。しかし、最近では前述したように画像全体の構造を利用した識別手段を用いることにより、よりきめの細かく領域種の多い識別が可能となってきている。例えば、粗い網点と細かい網点の間の識別や小さい文字と太い文字の間の識別も可能となる。この場合、画像の周波数特性は網点の周期や文字の太さにより変わってくるので、平滑化すべき周波数帯域や強調すベき周波数帯域は領域により異なる。そこで、さらなる高画質化を実現するには、識別結果によりフィルタ特性、すなわち周波数帯域やゲインをきめ細かく変化させる必要がある。
【0012】
また、デジタル複写機では拡大縮小を行う場合、副走査方向はスキャナの走査速度を変えることにより行ない、主走査方向は信号処理により行われている。このため、信号処理による拡大縮小の前段にフィルタ処理を設ける場合、フィルタ部での信号の縦横比は拡大縮小率により変わってくる。このため、拡大縮小率に応じて、縦横の周波数特性を変える必要がある。
【0013】
このように従来技術では、きめの細かい像域種類違いに対応することや拡大縮小時での信号の縦横の特性の違いに対処することができなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来技術ではエッジ成分の強度を識別結果に応じて変調させているため、処理の切替えの自由度が低くなっている。最近では前述したように画像全体の構造を利用した識別手段を用いることにより、よりきめの細かく領域種の多い識別が可能となってきて、例えば、粗い網点と細かい網点の間の識別や小さい文字と太い文字の間の識別、この場合、画像の周波数特性が網点の周期や文字の太さにより変わってくるので平滑化すべき周波数帯域や強調すベき周波数帯域が領域により異なり、さらなる高画質化を実現するには識別結果によりフィルタ特性、すなわち周波数帯域やゲインをきめ細かく変化させる必要がある。
【0015】
また、デジタル複写機では拡大縮小を行う場合、副走査方向はスキャナの走査速度を変えることにより行ない、主走査方向は信号処理により行われている。このため、信号処理による拡大縮小の前段にフィルタ処理を設ける場合、フィルタ部での信号の縦横比は拡大縮小率により変わってくる。このため、拡大縮小率に応じて、縦横の周波数特性を変える必要がある。
【0016】
このように、きめの細かい像域種類違いに対応することや拡大縮小時での信号の縦横の特性の違いに対処することができないという問題があった。
【0017】
そこで、この発明は、フィルタ処理の自由度を上げ、細かい網点と粗い網点、細かい文字と太い文字など多くの領域種や拡大縮小時の縦横の画像の周波数特性の違いに応じて信号処理の周波数特性を自由に変調できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
この発明は、入力された画像信号を、周辺画素の濃度差や彩度および網点領域の粗さに基づいて分離する第1の演算手段と、入力された画像信号から濃度分布や濃度変化である構造情報を抽出するとともに、前記第1の演算手段により分離された画像データを参照して、色成分毎に文字領域、網点領域、その他の領域に分離する第2の演算手段と、前記第1の演算手段から出力された分離信号および前記第2の演算手段から出力された分離信号に基づき、全部の画素を前寄せで記録する1画素変調処理または奇数画素目は前寄せ、偶数画素目は後ろ寄せで記録する2画素変調処理を選択する第3の演算手段と、を有し、前記第3の演算手段は、予め決められた固定の係数を含み、その固定の係数と縮退画像信号を用いて平均化する第1の積和演算部と、前記第1の演算手段および前記第2の演算手段のそれぞれの出力に基づいて求められる第2の係数と縮退画像信号を用いて積和演算処理する第2の積和演算部と、を含み、第1及び第2の積和演算部で演算されて求められた結果を加算して出力する加算部を具備したことを特徴とする画像処理装置を提供するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、この発明の画像処理装置を適用した第1実施例のデジタルカラー複写機の構成を示すものである。この装置は、画像入力部101、色変換部102、マクロ像域識別部103、ミクロ像域識別部104、高画質化処理部105、拡大縮小部106、墨入れ処理部107、階調処理部108、画像記録部109、及びこれら各部の制御などを行う制御部110より構成されている。この発明の画像処理装置は高画質化処理部105に適用している。なお、トリミングやマスキングなど、この発明と直接関係しない編集処理などの説明は省略する。
【0024】
まず、全体の構成について簡単に説明する。
【0025】
制御部110は、CPU、RAM、プログラムROMなどにより構成されている。複写機の図示しないコントロールパネルを通してユーザより指示される原稿モードや拡大縮小率などの情報に応じて、各処理部の動作モードや計算パラメータの設定を行う。
【0026】
画像入力部101では、原稿画像を読み取り、カラー画像信号151を出力する。画像入力部101の構成について簡単に説明する。ハロゲンランプなどの線状の光源により原稿面のライン状の領域に光を照射する。そして、可動な3枚のミラーとレンズよりなる縮小光学系により原稿面の前記ライン状領域をカラーラインセンサ上に結像する。カラーラインセンサはそれぞれR,G,Bのカラーフィルタのついた3本のCCDラインセンサを互いに近接して平行に配置したもので、画像情報に応じたCCD受光面上の光量分布を電気信号に変換して順次読みだし、増幅器で増幅したのち、A/D変換器でデジ夕ル信号に変換する。さらに、CCDの感度むらや光源の照度むらの補正のためのシェーディング補正回路やRGBの3つのラインセンサの位置の違いを補正するための遅延/補間回路などがあるが、詳しい説明は省略する。
【0027】
上記の可動ミラーをラインセンサと直角方向に走査しながら読み取りを繰り返すことにより、原稿画像全面の情報を順次読み取る。ここで、ラインセンサの方向を主走査方向、可動ミラーの移動方向を副走査方向とよぶ。画像を拡大縮小する場合は、可動ミラーの副走査方向への走査速度を拡大縮小倍率に反比例させる。CCDでの電気信号の読取り速度は一定としておくので、副走査方向に拡大縮小し、主走査方向には等倍の画像信号が得られる。
【0028】
なお、本実施例での画像入力部101のサンプリング密度は、縦横とも600dpiすなわち、1インチあたり600画素としている。
【0029】
つぎに、色変換部102では、RGB反射率を表すカラー画像信号151を、記録する色材の濃度を表すYMCの濃度信号152に変換する。RGB反射率とYMCの濃度の関係は一般に複雑な非線形な関係となる。このため、この変換処理を実現するには3次元のテーブルルックアップ法や1次元のテーブルルックアップと3×3のマトリクスを組み合わせた方法などが用いられる。具体的な構成については例えば特公平1−055245号や特公昭61−007774号などに詳しく記述されている。
【0030】
マクロ像域識別部103では、入力した画像信号151から画像全体の構造を分析したのち、像域の識別を行ない、マクロ像域信号を出力する。
【0031】
図2は、マクロ像域識別部103の構成例を示すものである。マクロ像域識別部103は、画像分離部201、画像メモリ部202、CPU203、プログラムメモリ204、及び領域信号出力部205から構成されている。すなわち、画像分離部201は、画像入力部151から出力されたカラー画像信号151を周辺画素の濃度差や彩度などの状態により、複数プレーンの画像データに分離し、画像メモリ部202に順次記憶していく。この画像メモリ部202は、画像のプレーン数分の容量を持っており、分離した画像信号を1画面分すべて記憶する。
【0032】
つぎに、プログラムメモリ(ROM)204に格納されたプログラムコードにしたがって、CPU203で画像メモリ部202に記憶された分離画像データの内容を参照しながら、領域の分離を行い、分離結果を画像メモリ部202に書き込んでいく。画像メモリ部202に記憶された領域情報は、領域信号出力部205で、画像入力部101からの2回目の読み取り信号に同期して読み出される。このとき、画像メモリ部202内部の領域分離情報の画素密度と画像入力部101からの画像信号の画素密度が異なるので、領域分離信号の密度変換を行い、両者の画素密度を整合させて出力する。
【0033】
本実施例において領域分離信号は3ビットの信号で表わし、その値と領域の関係は図3に示す通りである。すなわち、信号値0が通常文字領域、信号値1が背景上文字領域、信号値2が連続階調領域、信号値3が網点階調領域、信号値4がその他領域を表している。この他に、領域分離信号を5ビットの信号で表わし、各ビットの信号がそれぞれ5つの領域を表わすようにしてもよい。
【0034】
ミクロ像域識別部104では、入力した画像(濃度)信号152からその濃度分布や濃度変化などのミクロな構造情報を抽出し、さらにマクロ領域識別部103から出力されるマクロ識別信号から参照して、文字領域、網点領域、その他の領域に分離する。ここで、マクロ識別信号を用いてミクロの識別閾値や識別処理を切り替えることにより、階調画像のエッジなどのようにミクロな構造情報が文字領域と類似しているパターンをもつ領域も正しく識別することができる。そして、文字領域では値2、網点領域では値0、その他の領域では値1をとる識別信号153を出力する。
【0035】
なお、文字領域とは文字や線画のエッジおよびその近傍までを含めた領域とする。また、その他領域とは銀塩写真などの非網点の階調画像や文字の書かれていない背景領域などである。像域識別の具体的方式については特開平2−199588号公報や特開平1−3783号公報などに詳しく記述されている。マクロ領域識別信号を用いることにより、画像のマクロな構造情報を利用できるので識別精度が向上する。
【0036】
高画質化処理部105では、YMCのカラー画像信号に鮮鋭化や平滑化の処理を施す。複写機では原稿として主に文書画像が用いられる。このような画像では文字画像や階調画像などが混在している。文字画像は鮮鋭に再現されることが重要である。一方、階調画像は階調が滑らかに再現されることが重要である。また、印刷や市販のプリンタでは階調表現に網点を用いていることが多く、この網点成分を除くことも重要である。
【0037】
このため、高画質化処理部105では、マクロ像域識別部103およびミクロ像域識別部104から出力される像域信号153に応じて、選択的にフィルタ処理の特性を切替える。像域信号が文字を表す場合はエッジ強調フィルタをかけてエッジの強調を行う。また、像域信号が階調のエッジを表す場合は弱いエッジ強調フィルタをかける。また、像域信号がなだらかな階調を表す場合には平滑化フィルタをかけてノイズや網点成分の除去を行う。これにより、文字画像は鮮鋭に、階調画像は滑らかに再現することができる。
【0038】
この高画質処理部105に本発明を適用しており、詳細は後述する。
【0039】
拡大縮小部106では、主走査方向の拡大縮小を行う。拡大縮小処理の方式としては線形補間法、投影法などが知られている。デジタル信号処理により拡大縮小する場合に、拡大時に線がぎざぎざになるジャギーノイズと縮小時に網点画像に生ずるモアレなどが問題となる。線形補間法はジャギーノイズが生じにくく、投影法はモアレノイズが発生しにくい。このため、本実施例では拡大時は線形補間法、縮小時は投影法を用いることでこれらのノイズの発生を抑えている。線形補間法、投影法については特開昭2−308378号公報などに詳しく記述されている。上述したように本実施例では、画像入力部101で副走査方向の拡大縮小を行っており、これらにより2次元の両方向への拡大縮小が実現できる。
【0040】
墨入れ処理部107では、フィルタ処理されたカラーのYMC信号をYMCKの4版の信号に変換する。YMCの3色の色材を重ねても黒を表現できるが、一般に黒の色材はYMCの重ねより濃度が高い、安価であるなどの理由で、一般のカラー記録では黒の色材をも含めたYMCKの4色で記録を行う。具体的にはUCR(Under Color Reduction)やGCR(Gray Component Removal)などの方式が知られ、実際に用いられている。GCR法の計算式を下記に示す。ただし、入力するCMYの濃度信号をCMY、出力するCMYKの濃度信号をC'、M'、Y'、K'と記述している。
K'=k・min(C,M,Y)
C'=(C−K)/(1−K)
M'=(M−K)/(1−K)
Y'=(Y−K)/(1−K)
また、電子写真などの記録では光のオンオフの長さを変調して、中間濃度を表現している。階調処理部108は、この変調処理を行う。具体的には、濃度信号に応じた幅のパルス信号を発生する。このパルスに応じて、前記のレーザ光のオンオフを制御する。ここで、パルスを単位周期の中で前に寄せる制御と後ろに寄せる制御を切替えられるように構成されている。
【0041】
変調方式には、2画素変調と1画素変調の2通りがある。2画素変調方式では、奇数画素目は前寄せ、偶数画素目は後ろ寄せで記録する。一方、1画素変調方式では全部の画素を前寄せで記録する。1画素変調方式はパルスのオンオフの周期が1画素単位なので、1画素単位の解像度で記録できる。一方、2画素変調方式は周期が2画素単位なので1画素変調方式に比べ、解像度が低下する。しかし、同じ濃度を表現するためのパルス幅が2倍となるので、濃度の安定性が高くなり、1画素変調方式に比ベ階調性が良くなる。このように、1画素変調方式は文字画像の記録に適した方式であり、一方2画素変調方式は階調画像の記録に適した方式である。
【0042】
本実施例では、像域信号により、2画素変調処理と1画素変調処理とを選択する。具体的には、像域信号が文字を表す場合には1画素変調処理を選択し、階調のエッジやなだらかな部分を表す場合には2画素変調処理を選択する。これにより、階調領域では階調が滑らかで階調性に富んだ画像を再現でき、文字領域では高解像度でシャープな画像を記録することができる。
【0043】
続いて、画像記録部109について説明する。本実施例では、画像記録部109に電子写真方式を用いる。電子写真方式の原理を簡単に説明する。まず、画像濃度信号に応じてレーザ光などを強度変調し、この変調光を感光ドラムに照射する。感光ドラムの感光面には照射光量に応じた電荷が生じる。したがって、画像信号の走査位置に応じてレーザ光を感光ドラムの軸方向に走査するとともに、感光ドラムを回転走査させることにより、画像信号に応じた2次元の電荷分布が感光ドラム上に形成される。続いて、現像機で帯電したトナーを感光ドラム上に付着させる。この時、電位に応じた量のトナーが付着して画像を形成する。この感光ドラム上のトナーを転写ベルトを介して記録紙の上に転写し、最後に定着器により、トナーを溶融させて記録紙の上に定着する。この操作をYMCKの4色の卜ナーについて順次行うことにより、フルカラーの画像を紙面上に記録することができる。
【0044】
次に、この発明を適用している高画質化処理部105の構成と動作について詳しく説明する。高画質化処理部105の構成を図4に示す。高画質化処理部105は、第1、第2、及び第3のフィルタ部301、302、303と係数発生部304とから構成されている。
【0045】
色変換部102から出力された画像信号152は、第1、第2、及び第3のフィルタ部301、302、303に入力する。フィルタ部301,302,303は、それぞれ画像信号のCMY成分に対応しており、C成分の画像信号351をフィルタ部301でフィルタ処理して画像信号153cを出力し、M成分の画像信号352をフィルタ部302でフィルタ処理して画像信号153mを出力し、Y成分の画像信号353をフィルタ部303でフィルタ処理して画像信号153yを出力する。これらのフィルタの構成はまったく同じであるので、以下第1のフィルタ部301について詳しく説明する。
【0046】
図5は、第1のフィルタ部301の構成を示すものである。フィルタ部301は、遅延回路部401と積和演算部402よりなる。まず、入力した画像信号451は、遅延回路部401で遅延され、注目画素周辺の縦横各5×5画素の25画素の信号452〜476が並列に出力される。遅延回路部401の構成は、図6に示すように、4個のラインディレイ901〜904と20個の画素ディレイ905〜924よりなる。これによりそれぞれ遅延0ラインから遅延4ラインまでの画像信号951、961〜964が生成される。
【0047】
これらの5つの画像信号は、さらにそれぞれ4個の画素ディレイにより遅延され、それぞれ0画素から4画素遅延された画像信号が生成され、計25個の画像信号が生成される。ここで、mラインの遅延とn画素の遅延を受けた画像信号をPm、nと表記する(0≦m<5、0≦n<5、m、nは整数)。
【0048】
これらの画像信号は、積和演算部402に入力され、係数発生部304から出力される25個の係数信号452との積和Qが計算されて出力信号453となる。この計算式を下記に示す。
【0049】
Figure 0004138126
図7は、係数発生部304の構成を示すものである。
【0050】
係数発生部304は、ミクロ像域識別部104で生成した識別信号、及び制御部110より設定される拡大縮小率を示す値を入力し、画像の領域に応じたフィルタ係数を発生する。具体的には25個のテーブルにより構成される。各テーブルはそれぞれ10個の値を持ち、ROM(読出し専用メモリ)により構成される。
【0051】
これら10個の値は、識別信号及び拡大縮小率Rにより選択される。すなわち、拡大縮小率が50%以下、50〜80%、80%〜125%、125%〜200%、200%以上の5通りと識別信号が0、1の2通りの計10通りの場合に応じて、10個のいずれかの値が選択される。すなわち、識別信号及び拡大縮小率を前記の5通りに類別した信号によりアドレスされるROMの内容が係数信号として出力される。このようなテーブル内容の例を図8に示す。
【0052】
なお、本実施例ではテーブルの内容をすべてROM(読出し専用メモリ)に格納しているが、RAM(読み書き可能メモリ)に格納してもよい。この場合、拡大縮小率に応じてRAMの内容を書き換えることにより、テーブルに格納するデータを2個に抑えることができ、メモリの容量を小さくすることができる。
【0053】
また、原稿モードなどの他のモード指定によりフィルタ係数を切り替える場合も同じメモリ容量で実現できる。
【0054】
なお、ここではC成分の画像信号に対するフィルタ301についてのみ説明したが、M成分の画像信号、Y成分の画像信号もまったく同様の処理を行う。
【0055】
次に、本実施例の動作と本発明を適用した効果について、従来例と比較しながら具体的に説明する。
【0056】
本実施例の高画質化処理部105では畳み込み演算、いわゆるデジタルフィルタ処理を行っている。このフィルタ演算は識別信号及び拡大縮小率に応じて図8に示した係数発生部304のテーブルに従って切り替えられる。まず、拡大縮小率が100%すなわち等倍の場合を考えると、識別結果が文字領域、網点領域、その他の領域で選択されるフィルタのカーネルを図9、その周波数応答特性を図10に示す。ただし、フィルタは回転対称で縦横とも同じ周波数特性なので1次元の特性のみ表示する。
【0057】
図10からわかるように、本実施例での網点領域は175dpiの成分を除き、文字領域は150dpiの成分を強調し、その他領域では120dpiの成分をやや強調するような設計となっている。これは、通常のカラー印刷では175dpiの網点画像が多く用いられるのでこの周波数成分を除くこと、文字領域は細かい文字まで鮮鋭に再現するため高い周波数まで強調すること、それ以外の部分では画像入力部101でのぼけを補正することを目的にした設定となっている。ただし、これらは係数発生部304内のテーブルにより自由に設定できるので、画像入力部101の読取り特性、視覚特性や画質目標に応じて適当に設計が可能である。
【0058】
これに対して従来例の高画質化処理について説明する。特公平6−5885号公報には図11に示すとおり、画像にエッジ強調部1003でエッジ強調処理と平滑部1002で平滑化処理を施したのち、エッジ検出部1001から出力されるエッジ検出信号で制御される混合比率により、これらの信号を混合部1004で混合する方式が開示されている。エッジ強調部1003、平滑部1002は、それぞれ2次微分フィルタ、平均化フィルタにより構成されている。それらのフィルタのカーネルと周波数特性を図12、図13に示す。
【0059】
このため、混合部1004までの出力の周波数特性は、2つのフィルタの周波数特性の線形和となり、図13の2つの周波数特性を線形混合したものとなる。この混合した例を破線で示す。このため、平滑化とエッジ強調の周波数特性は独立に設定可能であるが、それ以外の特性はこれらの線形和の範囲しか実現できない。このため、本実施例のように、文字領域、網点領域、その他領域でそれぞれ強調周波数や除去周波数を自由に設定することができず、すべての領域を目標とおりに高画質化することが困難となる。
【0060】
また、本実施例では係数発生部304のテーブルにより拡大縮小率に応じたフィルタ係数を設定することができる。200%拡大時のフィルタのカーネルは図14に示すとおり縦横が非対称であり、縦方向のサイズの大きい構成となっている。前記でも述べたように、既存の多くのデジタル複写機と同様に、本実施例では画像入力部101で副走査方向のサンプリング密度を変えることにより、副走査方向の拡大縮小を行っている。さらに、高画質化処理部105の後段でデジタル処理により主走査方向の拡大縮小を行つているため、高画質化処理部105での画像信号は縦と横のサンプリング密度が異なる。
【0061】
200%拡大の場合、具体的には縦方向1200dpi、横方向600dpiとなる。このため、本実施例のようにフィルタサイズを縦方向より横方向より大きくすることにより、最終的な出力画像の縦横の周波数特性はほぼ同じとなる。ただし、ここで縦とは副走査方向、横とは主走査方向を表わす。なお、拡大時は識別結果によりフィルタを切り替える効果が少ないので、本実施例では拡大時には識別信号によらずフィルタ係数を同じ設定としているが、必ずしもこれに限るものではなく、拡大時にも識別信号によりフィルタ係数を切り変える設定としてもよい。
【0062】
一方、従来例では拡大縮小率に応じてフィルタのカーネルを変えることができないので、拡大縮小時にエッジ強調や平滑化の度合が方向により異なった信号が出力される。このため、線の方向により鮮鋭度の異なる不均一な画像が記録される。
【0063】
以上説明したように上記第1実施例によれば、フィルタを構成する乗算係数を像域信号および拡大縮小倍率に応じて独立に変更することができる。これにより、信号処理部の周波数特性や縦横の方向性を画像の領域と拡大縮小率に応じて自由に変更することが可能となる。これにより、拡大時での画像のぼけや拡大縮小時での画像の縦横方向の解像度の不均一性を防ぐことができる。これらにより、より高画質な画像を再現する処理を提供することが可能となる。
【0064】
次に、第1実施例の第1変形例について説明する。本変形例ではフィルタ部の構成が第1実施例と異なっている。
【0065】
図15は、この構成を示すものである。本変形例では、4個のラインディレイと20個の画素ディレイにから出力された25個の画像信号を生成するまでは第1実施例と同様であるが、これらの信号を加算器群1301に入力したのち、積和計算部1302に入力する。加算器群1301ではX軸、Y軸に関して軸対称位置にある画像信号同士の加算を行う。具体的には下記式に示す加算を行う。なお、Q8は加算ではないが表記の便宜上信号Q8=P2,2とする。
【0066】
Q0=P0,0+P0,4+P4,0+P4,4
Q1=P0,1+P0,3+P4,1+P4,3
Q2=P0,2+P4,2
Q3=P1,0+P1,4+P3,0+P3,4
Q4=P1,1+P1,3+P3,1+P3,3
Q5=P1,2+P3,2
Q6=P2,0+P2,4
Q7=P2,1+P2,3
Q8=P2,2
本変形例の係数発生部1303では9個の係数を発生する。係数の発生にテーブルを用いる点、識別信号と拡大縮小率によりテーブル内の値が選択される点は、第1実施例と同様であるが発生する係数信号が9個である点が異なる。この発生した係数信号と加算器群1301で生成した9個の画像信号とを積和計算部1302で積和演算し、この結果が出力信号となる。
【0067】
本変形例では、通常のフィルタの係数が縦および横の軸について軸対称であることを利用して、軸対称な位置の画像信号を予め加算してから共通な係数を乗算する。本変形例の係数テーブルの内容を図16に示す。第1実施例の係数テーブルと等価な処理になるように構成されている。
【0068】
以上説明したように上記第1実施例の第1変形例によれば、第1実施例の効果に加え、係数発生部のテーブルサイズが小さくなること、積和計算部での乗算演算数が減ることにより回路規模を小さくすることができる。なお、その分フィルタ係数の自由度が減るが、通常の条件ではフィルタのカーネルは縦横とも軸対称であり実用上なんら問題はない。
【0069】
次に、第1実施例の第2変形例について説明する。
【0070】
第1実施例では識別信号は文字領域、網点領域、その他領域の3種類をとったが、本変形例では文字領域識別とその他領域の識別の間に2レべル、および網点領域識別とその他領域の識別の間に2レベル設け、計7種類の識別信号を設ける。すなわち、ミクロ像域識別部104で、文字領域とその他領域の中間的な性質をもつ領域についてはその性質の度合に応じて、中間信号値を出力し、また網点領域とその他領域の中間的な性質をもつ領域についても同様に中間信号を出力する。識別信号の値とその意味を図17に示す。すなわち、識別信号0が網点領域、識別信号1がかなり網点領域、識別信号2がやや網点領域、識別信号3がその他領域、識別信号4がやや文字領域、識別信号5がかなり文字領域、識別信号6が文字領域としている。
【0071】
本変形例の係数発生部では、識別信号の種類(本例では7種類)に応じた係数テーブルを用意しておく。中間信号に応じた係数は中間的な値としておくことで、中間的な識別信号に対しては中間的な処理を行うことができる。
【0072】
以上説明したように上記第1実施例の第2変形例によれば、中間値の信号値を用いることにより上記で示したように係数発生部のテーブルは大きくなるが、一方、識別誤りによる画質劣化を小さくすることと、2つの領域の境界で処理が大きく変化することによる弊害を防ぐことができるという利点がある。
【0073】
次に、第2実施例について説明する。
【0074】
図18は、この発明の画像処理装置を適用した第2実施例のデジタルカラー複写機の構成を示すものである。この装置は、画像入力部1401、色変換部1402、マクロ像域識別部1403、ミクロ像域識別部1404、高画質化処理部1405、拡大縮小部1406、墨入れ処理部1407、階調処理部1408、画像記録部1409、及びこれら各部の制御などを行う制御部1410より構成されている。本実施例では、マクロ像域識別部1403、ミクロ像域識別部1404、高画質化処理部1405の構成、及びその間の信号の流れが第1実施例と異なっている。それ以外の画像入力部1401、色変換部1402、拡大縮小部1406、墨入れ処理部1407、階調処理部1408、画像記録部1409は第1実施例とまったく同様であるので説明を省略する。
【0075】
以下、異なる部分について構成と動作を詳しく説明する。
【0076】
本実施例のマクロ像域識別部1403の構成は、第1実施例と同様であるが、プログラムROMにしたがつて実行するので領域分析の内容と識別信号の種類が若干異なっている。マクロ像域識別部1403は、第1実施例の識別動作に加え、粗い網点領域と細かい網点領域の識別を行う。ここで網点の粗さは、150dpiを目安として、これより周波数が高い領域を細かい、周波数が低い領域を粗い網点と定義する。これらの分離は、ソフト処理で画像の周期成分を調べる処理を追加することにより可能である。
【0077】
図19は、第2の実施例におけるマクロ識別信号の値と領域の関係を示すものである。すなわち、信号値0が通常文字領域、信号値1が背景上文字領域、信号値2が連続階調領域、信号値3が細かい網点階調領域、信号値4が粗い網点階調領域、信号値5がその他領域としている。
【0078】
図20は、ミクロ像域識別部1404の構成を示すものである。ミクロ像域識別部1404は、像域識別部1501,1502,1503から構成されている。このミクロ像域識別部1404では、YMCの色ごとに独立して識別処理を行い、色ごとに独立した識別信号を出力する。
【0079】
まず、色変換部1402から出力された画像信号のCMYのそれぞれの色成分であるC成分の画像信号1551、M成分の画像信号1552、Y成分の画像信号1553は、それぞれの色の像域識別部1501〜1503に入力する。各像域識別部(1501〜1503)には、マクロ識別信号1554も入力する。各像域識別部(1501〜1503)では、各色成分の画像信号とマクロ像域信号とを用いてそれぞれに領域識別を行い、文字、網点、それ以外の3領域に分類し、それぞれ値2、0、1をとるミクロ識別信号1555、1556、1557を出力する。ミクロ識別信号(1555〜1557)は、該当する色成分の文字や網点があるかどうかの識別を行う。
【0080】
例えば、黒色はYMCのすべての成分をもち、緑色はCとYの成分を、赤色はMとYの成分のみをもつので、M成分のミクロ識別信号1556は黒文字や赤文字の領域は文字領域として識別され、緑文字領域はその他の領域と識別される。同様に、黒や赤の網点部分は網点領域として識別されるが、緑色の網点の領域はその他領域として識別される。
【0081】
図21は、高画質化処理部1405の構成を示すものである。高画質化処理部1405は、遅延回路1601、加算器群1602、第1の積和演算部1603、第1の係数発生部1604、第2の積和演算部1605、第2の係数発生部1606、及び加算部1608とから構成されている。なお、第1実施例と同様に高画質化処理部1405は、C,M,Yの3色の色信号ごとに3チャネルの同じ処理により構成されているので、ここではC信号の処理部のみ説明する。
【0082】
まず、色変換部1402から出力されたC成分の画像信号1651は、ライン遅延と画素遅延よりなる遅延回路部1601で遅延され、注目画素周辺の縦横各5×5画素の25個の信号を並列に出力する。なお、この遅延回路部1601は、第1実施例と同様なので説明は省略する。第1実施例と同様にmラインの遅延とn画素の遅延を受けた画像信号をPm,nと表記する。遅延回路部1601から出力された25個の並列画像信号Pm,nは、加算器群1602に入力され上述した加算処理を施され、縮退した画像信号Q0〜Q8が出力される。
【0083】
縮退画像信号Q0〜Q8は、第1の積和演算部1603及び第2の積和演算部1605に入力する。第1の積和演算部1603では、第1の係数発生部1604より出力する9個の第1の係数信号A0〜A8と縮退画像信号との間で下記に示す積和演算処理を行い、その演算結果の信号R0が出力される。
【0084】
R0=ΣAi−Qi

第1の係数発生部1604は、RAMより構成され、ここに9個の係数が格納されている。このRAMの内容が、そのまま第1の係数信号として出力される。9個の係数を図22に示す。これらの係数により第1の積和演算部1603では平均化フィルタ処理が実現される。
【0085】
RAMの内容は、1ページの画像信号を処理している間は固定であるが、その他の期間は制御部1410から設定することができる。このため、例えば拡大縮小時や設定される原稿モードによってこの係数値を書き換えることができる。
【0086】
第2の積和演算部1605では、第2の係数発生部1606より出力する9個の第2の係数信号B0〜B8と縮退画像信号Q0〜Q8の間で下記式に示す積和演算処理を行ない、その演算結果の信号R1が出力される。
【0087】
Figure 0004138126
図23は、第2の係数発生部1606の構成を示すものである。この第2の係数発生部1606は、識別変換部1701と係数テーブル1702とから構成されている。第2の係数発生部1606では、ミクロ像域識別部1404で生成したC色の識別信号、マクロ像域識別部1403から出力するマクロ識別信号を入力し、画像の領域に応じた係数を発生する。
【0088】
識別変換部1701には、マクロ識別信号とC色のミクロ識別信号が入力される。識別変換部1701は、ハードウエア的にはルックアップテーブルにより構成されている。前記で説明したようにマク口識別信号は6通りの値を、ミクロ識別信号は3通りの値をとるが、識別変換部1701はルックアップテーブルにより3ビット(bit)の係数選択信号を出力する。
【0089】
識別変換部1701から出力した3ビット(bit)の係数選択信号により、係数テーブル1702の内容を選択する。係数テーブル1702は、9個の係数の組が8種類格納されており、係数選択信号によりこの8種類の中から選択された信号が出力される。これら2つのテーブルではマクロ識別信号とミクロ識別信号により決まる画像領域に応じて最適な係数が選択される。ここで、マクロ識別信号とミクロ識別信号はそれぞれ6通りおよび3通りで計18通りの組合わせがある。
【0090】
これらの信号は独立ではないのでこの18通りには冗長な分類がある。このため識別変換部1701のテーブルにより5通りに縮退させ、係数テーブル1702の容量を小さくすることができる。この6通りの信号の意味は0:粗い網点、1:細かい網点、2:背景上文字、3:文字、4:階調上のエッジ、5:その他としている。識別変換部1701のルックアップテーブルの入力と出力信号の関係を図24に、係数テーブル1702の内容を図25に示す。
【0091】
図25に示されるように、第2の積和演算部1605では領域に応じた周波数特性の2次微分フィルタ演算が行われる。具体的には粗い網点部では120dpiの周波数成分を除き、細かい網点部では175dpiの周波数成分を除き、背景文字では120dpiの周波数成分を除き、文字領域では150dpiの周波数成分を強調し、階調上のエッジ領域では強調し、120dpiの周波数成分をやや強調その他の領域ではフラットな周波数特性とする。
【0092】
最後に加算部1608で第1の積和演算部1603の出力信号R0と第2の積和演算部1605の出力信号R1に対して下記式の演算を行ない、高画質化処理部の出力信号R2として出力する。
【0093】
R2=R0+f(R1)
ここでf()は非線形変換関数であり、その入出力特性を図26に示す。この変換はエッジ強調による画像エッジ部での過強調を防ぐためのものである。
【0094】
以上はC信号について説明したが、M信号、Y信号についても同様の処理を行う。ただし、入力する画像信号はそれぞれM成分、C成分の画像信号を用いる。
【0095】
以上説明したように上記第2実施例によれば、第1の積和演算部で固定の平均化フィルタ処理、第2の積和演算部で2次微分フィルタ処理を行い、2次微分処理の係数を識別信号に応じて切り替えることにより、第1実施例と同様に全体のフィルタ特性を自由に切替えることができる。
【0096】
また、2次微分処理出力は画像の高域周波数成分、平均化処理出力は画像の低域周波数成分を表わし、これらを分離することによりフィルタ係数の設計が容易になる。
【0097】
また、低域成分は画像の階調再現性に対して大きく寄与するのに対し、高域成分は画像の鮮鋭さに寄与するため、高域成分だけに非線形変換処理を施すことにより、階調再現性をそこなうことなく鮮鋭度を改善することができる。
【0098】
また、本実施例ではマクロ像域識別により識別された結果により直接フィルタ係数を選択できる。例えば、本実施例で粗い網点および細かい網点の場合に選択されるフィルタのカーネルをそれぞれ図28の(a)と(b)に示す。細かい網点では外周部の係数が0となっており、等価的に3×3とサイズの小さいフィルタが選択されることになる。一方、粗い網点では5×5のフィルタが選択され、網点の粗さにより等価的にフィルタサイズすなわちカットオフ周波数を切り替えることが可能となる。このように粗い網点ではカットオフ周波数を下げることによりモアレの発生を防ぎ、細かい網点領域ではカットオフ周波数を上げることにより画像の鮮鋭感を保つことができる。
【0099】
また、本実施例ではCMYの成分ごとに係数発生部をもつので、CMYごとに独立にフィルタ係数の設定が可能である。
【0100】
画像入力部では一般に光学レンズにより原稿をCCD上に結像させるが、レンズの色収差によりRGB成分でMTF特性を同一にすることは難しい。また、3ラインタイプのCCDセンサを用いる場合、センサ間の読取り位置の補正を行う際に、拡大縮小率によっては補間演算を行なう必要があるが、この場合にも副走査方向の解像度が低下する。
【0101】
RGBのうち1つの色成分の解像度が低い場合、色変換後のCMY信号ともに解像度に影響を受けるが、その補色への影響が最も大きい。例えば、B成分の信号のMTF特性が低い場合、Bの補色であるY信号のMTF特性が最も影響を受けて低くなり、記録画像の画質としてはY成分のある赤や緑の文字の鮮鋭度が悪くなる。本実施例ではフィルタの係数をCMYごとにフィルタ係数を適正値に設定することにより、この影響を補正し、どの色の文字も同様に精細に再現することが可能となる。
【0102】
次に、第2実施例の変形例について説明する。本変形例は第2実施例に対し、第2の係数発生部の構成だけが異なっている。そこで、この部分についてのみ説明する。
【0103】
図27は、本変形例に係る第2の係数発生部1607の構成を示すものである。第2の係数発生部1607は、識別変換テーブル1901、乗数テーブル1902、係数テーブル1903、及び乗算器群1904よりなる。
【0104】
識別変換テーブル1901には、マクロ識別信号とミクロ識別信号を入力し、これらの値の組によってアドレスされる3bitの乗数選択信号が出力される。
【0105】
乗数テーブル1902には、8個の乗数値が格納されており、乗数選択信号により8個のいずれかが選択され、乗数信号として出力される。
【0106】
係数テーブル1903には、9個の係数が格納されており、これらの値は常に9個の係数信号として出力され、乗算器群1904内の9個の乗算器でそれぞれ乗数信号と乗算され、係数信号として出力され、第2の積和演算部1605に供給される。
【0107】
本変形例では、識別信号に応じて選択された乗数信号により係数信号が生成され、これによりフィルタの特性を制御することができる。1自由度の乗数信号で制御を行うため、フィルタの周波数特性の自由度は小さくなるが、一方係数テーブルや乗数テーブルなどのテーブルの総サイズを小さくすることができる。
【0108】
また、第2の積和演算処理後に非線形変換などを行ってから加算を行うため、高域成分を低域成分と独立して処理が可能である。
【0109】
なお、本発明の適用例として、フィルタ処理の係数の切替えの例を中心に説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、識別信号に応じて色変換処理の処理パラメータや墨入れ処理部の墨入れ係数を切り替えることも可能である。これにより、画像の領域に応じて記録色度を色再現性重視や濃度重視などの間で切り替えることが可能となる。
【0110】
以上説明したように上記発明の実施の形態によれば、フィルタ処理などの画像処理の特性を画像の領域に応じてきめ細かく制御することができ、細かい文字の精細再現、銀塩写真などの階調画像の鮮鋭再現、網点でのモアレの発生の防止などを同時に実現することができる。
【0111】
【発明の効果】
以上詳述したようにこの発明によれば、フィルタ処理の自由度を上げ、細かい網点と粗い網点、細かい文字と太い文字など多くの領域種や拡大縮小時の縦横の画像の周波数特性の違いに応じて信号処理の周波数特性を自由に変調できる画像処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の画像処理装置を適用した第1実施例のデジタルカラー複写機の構成を示すブロック図。
【図2】マクロ像域識別部の構成例を示す図。
【図3】領域分離信号の値と領域の関係を説明するための図。
【図4】高画質化処理部の構成を示す図。
【図5】第1のフィルタ部の構成を示す図。
【図6】遅延回路部の構成を示す図。
【図7】係数発生部の構成を示す図。
【図8】係数発生部のテーブルの内容を示す図。
【図9】各領域のフィルタカーネルを示す図。
【図10】各領域の周波数応答特性を示す図。
【図11】従来の高画質化処理を説明するための図。
【図12】従来のフィルタカーネルを示す図。
【図13】従来のフィルタの周波数特性を示す図。
【図14】200%拡大時のフィルタのカーネルを示す図。
【図15】第1実施例の第1変形例のフィルタ部の構成を示す図。
【図16】係数発生部のテーブルの内容を示す図。
【図17】係数発生部からの識別信号を説明するための図。
【図18】この発明の画像処理装置を適用した第2実施例のデジタルカラー複写機の構成を示すブロック図。
【図19】マクロ識別信号の値と領域の関係を説明するための図。
【図20】ミクロ像域識別部の構成を示す図。
【図21】高画質化処理部の構成を示す図。
【図22】第1の係数発生部の係数を示す図。
【図23】第2の係数発生部の構成を示す図。
【図24】識別変換部のルックアップテーブルの入力と出力信号の関係を示す図。
【図25】係数テーブルの内容を説明するための図。
【図26】加算部の非線形変換の特性を示す図。
【図27】変形例の第2の係数発生部の構成を示す図。
【図28】粗い網点および細かい網点の場合に選択されるフィルタのカーネルを示す図。
【符号の説明】
101,1401…画像入力部(画像入力手段)
102,1402…色変換部
103,1403…マクロ像域識別部(識別手段)
104,1404…ミクロ像域識別部(識別手段、出力手段)
105,1405…高画質化処理部
106,1406…拡大縮小部
107,1407…墨入れ処理部
108,1408…階調処理部
109,1409…画像記録部
110,1410…制御部
301,302,303…フィルタ部(演算手段)
304…係数発生部(発生手段)
1501,1502,1503…像域識別部
1601…遅延回路部
1602…加算器群
1603…第1の積和演算部(第1の演算手段)
1604…第1の係数発生部
1605…第2の積和演算部(第2の演算手段)
1606…第2の係数発生部(発生手段)
1608…加算部(加算手段)

Claims (3)

  1. 入力された画像信号を、周辺画素の濃度差や彩度および網点領域の粗さに基づいて分離する第1の演算手段と、
    入力された画像信号から濃度分布や濃度変化である構造情報を抽出するとともに、前記第1の演算手段により分離された画像データを参照して、色成分毎に文字領域、網点領域、その他の領域に分離する第2の演算手段と、
    前記第1の演算手段から出力された分離信号および前記第2の演算手段から出力された分離信号に基づき、全部の画素を前寄せで記録する1画素変調処理または奇数画素目は前寄せ、偶数画素目は後ろ寄せで記録する2画素変調処理を選択する第3の演算手段と、
    を有し、
    前記第3の演算手段は、予め決められた固定の係数を含み、その固定の係数と縮退画像信号を用いて平均化する第1の積和演算部と、前記第1の演算手段および前記第2の演算手段のそれぞれの出力に基づいて求められる第2の係数と縮退画像信号を用いて積和演算処理する第2の積和演算部と、を含み、第1及び第2の積和演算部で演算されて求められた結果を加算して出力する加算部
    を具備したことを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記第1の演算手段は、所定の周波数を境界条件として細かい網点領域と粗い網点領域とを識別することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
  3. 前記第3の演算手段は、前記第1の演算手段による演算結果に基づき、フィルタサイズを変更することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
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