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JP4127887B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車用空気入りタイヤに関し、詳しくは、耐久性を損なうことなく、振動乗り心地性および操縦安定性を向上させ、安全性に優れた自動二輪用空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動二輪車用空気入りタイヤは、振動乗り心地性(接地感)の向上を図るため、トレッドゴムの弾性率を低下させてタイヤクラウン部の曲げ剛性を低下させ、タイヤの縦ばね定数を低くするなどの他に、コード径の細いプライコードを使用してタイヤ全体の剛性を下げる手法が採られてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、振動乗り心地性を向上させるためにコード径の細いプライコードを使用すると耐久性に対する安全率が低下し、特に、低内圧にて走行した場合の安全性を著しく損なう傾向にあった。
【0004】
そこで本発明の目的は、耐久性を損なうことなく、振動乗り心地性および操縦安定性を向上させ、安全性に優れた自動二輪用空気入りタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐久性を損なうことなく、走行時の振動乗り心地性と操縦安定性を向上させるべく鋭意検討した結果、少なくとも2層のカーカスプライを有するラジアルタイヤにおいて、一対の相隣接するラジアルプライカーカスの内層プライと外層プライの強度(引張り剛性)の総和を変えずに、即ち減少させずに夫々異なる所定のコードを用いることにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、左右一対のビード部と、該ビード部間でトロイド状に延びるラジアル配列コードの少なくとも2層のプライからなるカーカスと、該カーカスのクラウン部に配置されたベルト層とを備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
一対の相隣接するラジアルプライカーカスが、製品タイヤでのコードヤング率が300〜600kgf/mmのテキスタイルコードから選ばれる、各々コード径または打込み数が異なる異種コード層よりなり、かつ内層プライ(1P)と外層プライ(2P)との引張り剛性比2P/1P(X)が次式、
1<X<10または1/10<X<1
で表される範囲に設定されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、前記内層プライのコード(1P)と前記外層プライ(2P)のコードのコード径比2P/1P(D)が次式、
1/3<D<1または1<D<3
で表される範囲に設定することが好ましい。
【0008】
また、最内層プライ(1P)のコード断面方向に測った25.4mm幅当たりの打込み数が7本以上とすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に具体的に説明する。
本発明においては、少なくとも2層のカーカスプライを有するラジアルタイヤにおいて、一対の相隣接するラジアルプライカーカスの内層プライと外層プライの強度(引張り剛性)の総和を減少させないようにするために、製品タイヤでのコードヤング率が300〜600kgf/mmのテキスタイルコードから選ばれるコード層を用いる。コードヤング率が300kgf/mm未満であると耐久性に劣り、一方600kgf/mmを超えると振動乗り心地性を向上させることが困難となる。
【0010】
なお、テキスタイルコードの材質、撚り条件および接着剤処理条件等は特に制限されるべきものではなく、上記コードヤング率を満たすものを適宜選択すればよいが、材質として好ましくは、6,6−ナイロン等のポリアミドが挙げられる。また、コーティングゴムとしては、例えば、100%伸長時の弾性率が約30kgf/cmのものを用いることができる。
【0011】
また、本発明においては、一対の相隣接するラジアルプライカーカスの内層プライ(1P)と外層プライ(2P)を各々異種コード層より構成し、かかる内層プライ(1P)と外層プライ(2P)との引張り剛性比(X)を次式、
1<X<10または1/10<X<1
で表される範囲に設定する必要がある。この点に関し、以下に詳述する。
【0012】
内層プライ(1P)と外層プライ(2P)の引張り剛性の比を変更したときのタイヤの縦ばね定数(振動乗り心地性の指標)およびコーナリングパワー(C.P.値)(操縦安定性の指標)との関係を有限要素法(FEM)にて計算したところ、夫々図1および図2に示すように、両層の剛性比の差分を大きくすればする程、振動乗り心地性および操縦安定性が共に向上することが判明した。図1において、縦ばね定数は低いほど振動乗心地性が良好である。また、図2において、C.P.値が高い程、応答性が良好となり、操縦安定性が向上する。しかし、縦ばね定数は、下げ過ぎると路面内での変形が大きくなり、転動時のヒステリシスロスが大きくなるため燃費が悪くなるなどの弊害が発生することから、引張り剛性比(X)を次式、
1<X<10または1/10<X<1
好ましくは、次式、
1<X<4または1/4<X<1
で表される範囲に設定することが要求される。
【0013】
また、内層プライ(1P)と外層プライ(2P)とのコード径比(D)も、大き過ぎると、一方のコードが他方のコードの間に侵入し、フレッティングによるコード切れ(CBU)が発生し易くなるため、コード径比(D)を次式、
1/3<D<1または1<D<3
で表される範囲に設定することが好ましく、より好ましくは、次式、
1/2.2<D<1または1<D<2.2
である。
【0014】
さらに、タイヤラジアルタイヤ方向最内層のプライの打込み数は、多い程内層のプライの引張り剛性を大きくし、一方少な過ぎるとインナーライナーがコード間に侵入し易くなり、コード出等の製造上の問題が発生するため、当該内層プライのコード断面方向に測った25.4mm(1インチ)幅当たりの打込み数を7本以上とすることが好ましい。
【0015】
なお、縦ばね定数は、タイヤに静的垂直荷重を掛けた状態での縦たわみから求められ、また、C.P.値は、ドラムにて同一速度同一荷重で正負のスリップアングルを付けてコーナリングフォースを測定し、次式によって求められる値である。
CP={CF(1°)+CF(2°)/2+CF(3°)/3+CF(4°)/4}/4
ここで、CF(1°)、CF(2°)、CF(3°)およびCF(4°)は、それぞれスリップアングルが1度、2度、3度および4度のときのコーナリングフォースの値である。
【0016】
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、カーカスプライの改良に係るものであり、他の部分の構造および材質等は従来のタイヤと何等変更を要するものではなく、既知の構造等を採用することができる。
【0017】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
内層プライコードと外層プライコードとして、下記の表1に示す各種テキスタイルコードを製造した。表1中、カーカス(A)における内層プライと外層プライの引張り剛性比(X)は2.3、コード径比(D)は1.5であり、カーカス(B)においてはともに1.0である。
【0018】
【表1】
Figure 0004127887
【0019】
実施例1〜4,比較例1〜4
実施例1および比較例1として、上記表1に示す2層のプライからなるカーカス(A1)および(B)を用いて、図1に示す如き夫々MCR120/70ZR17サイズの自動二輪車用空気入りタイヤを試作した。かかる試作タイヤ1は、左右一対のビードコア5間でトロイド状に延びる2層プライのカーカス4(内層4a、外層4b)、このカーカス4のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置した2層のベルト3およびこのベルト3のタイヤ径方向外側に配置したトレッド2を具備する。ベルト3のコードとしては、ケブラー繊維(アラミド繊維の商品名)を用いた。
【0020】
実施例2および比較例2として、上記表1に示す内層および外層のプライからなるカーカス(A1)および(B)の他に、さらに半径方向最外層に図2に示す如きプライ4c(コード角度は赤道に対し70〜90°)を用いて、夫々MCR120/70ZR17サイズの自動二輪車用空気入りタイヤを試作した。
【0021】
実施例3および比較例3として、上記表1に示す2層のプライ(但し、1層はキャップに入れてある)からなるカーカス(A1)および(B)を用いて、図3に示す如き夫々MCR120/70ZR17サイズの自動二輪車用空気入りタイヤを試作した。
【0022】
実施例4および比較例4として、上記表1に示す2層のプライからなるカーカス(A2)および(B)を用いて、図1に示す如き夫々MCR120/70ZR17サイズの自動二輪車用空気入りタイヤを試作した。これら試作タイヤについて、縦ばね定数、横剛性、振動乗り心地性および耐久性について評価を行なった。得られた結果を下記の表2に示す。
【0023】
【表2】
Figure 0004127887
1)縦ばね定数:供試タイヤをJATMA標準リムに装着し、内圧を2.0kgf/cmとして平板上に置き、キャンバー角0°で110kgfの静的垂直荷重を掛けた状態での縦たわみを求め、夫々の従来例を100として指数にて表示した。数値が小さい程縦ばね定数が小さいことを示す。
2)振動乗り心地性:熟練ドライバーによるフィーリング評価を行い、夫々の従来例を100として指数にて表示した。数値が大きい程振動乗り心地が良好であることを示す。
3)耐久性:内圧1.4kgf/cm、速度81km/時、荷重230kgの条件下でドラム走行させ、CBUの発生有無を調べ、夫々の従来例を100として指数にて表示した。数値が大きい程耐久性が良好であることを示す。前記実施例はいずれもMCR120/70ZR17サイズの自動二輪車用空気入りタイヤに関するものであるが、MCR180/55ZR17サイズ(MSB構造)の自動二輪車用空気入りタイヤにおいても同様の結果が得られた。
【0024】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、耐久性を損なうことなく、振動乗り心地性および操縦安定性を向上させることができ、安全性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における自動二輪車用空気入りタイヤの部分断面図である。
【図2】実施例2における自動二輪車用空気入りタイヤの部分断面図である。
【図3】実施例3における自動二輪車用空気入りタイヤの部分断面図である。
【図4】内外層プライの剛性比(X)と縦ばね定数との関係を示すグラフである。
【図5】内外層プライの剛性比(X)とCP値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 自動二輪車用空気入りタイヤ
2 トレッド
3 ベルト
4 カーカス
4a 内層
4b 外層
5 ビードコア

Claims (4)

  1. 左右一対のビード部と、該ビード部間でトロイド状に延びるラジアル配列コードの少なくとも2層のプライからなるカーカスと、該カーカスのクラウン部に配置されたベルト層とを備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    一対の相隣接するラジアルプライカーカスが、製品タイヤでのコードヤング率が300〜600kgf/mmのテキスタイルコードから選ばれる、各々コード径または打込み数が異なる異種コード層よりなり、かつ内層プライ(1P)と外層プライ(2P)との引張り剛性比2P/1P(X)が次式、
    1<X<10または1/10<X<1
    で表される範囲に設定されていることを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記内層プライのコード(1P)と前記外層プライ(2P)のコードのコード径比2P/1P(D)が次式、
    1/3<D<1または1<D<3
    で表される範囲に設定されている請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
  3. 最内層プライ(1P)のコード断面方向に測った25.4mm幅当たりの打込み数が7本以上である請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
  4. 前記外層プライ(2P)の引張り剛性が前記内層プライ(1P)の引張り剛性よりも大きい請求項1〜3のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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