JP4118458B2 - クロメン化合物 - Google Patents
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- 0 CCCC1(CI)c2c(C=CC(*)(*C)O3)c3c(CC*C)cc2-c2ccccc12 Chemical compound CCCC1(CI)c2c(C=CC(*)(*C)O3)c3c(CC*C)cc2-c2ccccc12 0.000 description 1
- KHGMYWTYYUADCT-UHFFFAOYSA-N O=C(c1c-2cccc1)c1c-2c(cccc2)c2c2c1C=CC(c1ccccc1)(c1ccccc1)O2 Chemical compound O=C(c1c-2cccc1)c1c-2c(cccc2)c2c2c1C=CC(c1ccccc1)(c1ccccc1)O2 KHGMYWTYYUADCT-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
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Description
本発明は、新規なクロメン化合物、および該クロメン化合物の用途に関する。
【従来の技術】
フォトクロミズムとは、ここ数年来注目されてきた現象であって、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、従来から色々な化合物が合成されてきたが、その構造には特別な共通性は認められない。
例えば、PCT特許出願公開明細書WO96/14596号には、下記式(A)で示されるクロメン化合物が開示されている。
【化7】
しかし、このクロメン化合物は、退色速度が遅く、さらに例えばフォトクロミック材として長期間使用すると光未照射の状態での着色(劣化時の着色ともいう。)が大きくなったり、光照射時の発色濃度が低下するという問題があった。
また、PCT特許出願公開明細書WO97/48762号には、下記式(B)で示されるクロメン化合物が開示されている。
【化8】
しかし、このクロメン化合物には、退色速度が遅いという問題があった。
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記した化合物に比べてフォトクロミック特性をさらに向上させ、退色速度が速く、且つ劣化時の着色が少なく、上記の発色濃度の低下に代表されるようなフォトクロミック性の低下が起こりにくい、すなわちフォトクロミック性の耐久性に優れたクロメン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために提案されたもので、本発明者らによって得られた新規なクロメン化合物は、その退色速度が速く、且つ劣化時の着色が少なく、しかもフォトクロミック性の耐久性が優れているという知見に基づいて完成されたものである。
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【化9】
{式中、
下記式(2)
【化10】
で示される基は、芳香族炭化水素基または不飽和複素環基であり、
下記式(3)
【化11】
で示される環は、
(i) アリール基で置換された、1つのスピロ炭素を有するシクロプロパン環、
(ii)1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内には下記
【化12】
(式中、R8は炭素数1〜10のアルキル基である。)に示されるいずれかの基が1或いは2以上含まれている(但し、オキシ基が2つ含まれることはない。)単環、又は
(iii) 1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内に、−NR 8 −、−C(=O)−、又は−C(=O)−O−で示される基が1つ含まれている単環に芳香族炭化水素環又は不飽和複素環が1つ縮環した縮合環であり、
R1およびR2は、それぞれ独立に、下記式(4)
【化13】
(式中、R5は、アリール基、またはヘテロアリール基であり、R6は、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)で示される基、下記式(5)
【化14】
(式中、R7は、アリール基、またはヘテロアリール基であり、mは1〜3の整数である。)
で示される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、又はR1とR2とが一緒になって、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成していてもよく、
R3はヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と前記式(2)で示される基の環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、pは0〜3の整数であり、
R4は、ヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と対応するベンゼン環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、qは0〜3の整数である。}で示されるクロメン化合物である。
また、他の発明は、上記一般式(1)で示されるクロメン化合物よりなるフォトクロミック材、および該クロメン化合物を含んでなるフォトクロミック光学材料である。
【発明の実施の形態】
前記一般式(1)において、下記式(2)
【化15】
で示される基は、芳香族炭化水素基または不飽和複素環基である。
上記芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましい。好適な芳香族炭化水素基を例示すると、フェニレン基、ナフチレン基、フェナンスリレン基、トリレン基、キシリレン基等のベンゼン環1個、またはそれら2〜4個の縮環よりなる芳香族炭化水素基等が挙げられる。
また、前記の不飽和複素環基としては、特に制限されないが、酸素、硫黄、窒素原子を含む5員環もしくは6員環の不飽和複素環基、またはこれらにベンゼン環が縮環した不飽和複素環基が好ましい。好適な不飽和複素環基を例示すると、ピリジレン基、キノリレン基、ピロリレン基、インドリレン基等の含窒素複素環基、フリレン基、ベンゾフリレン基等の含酸素複素環基、チエニレン基、ベンゾチエニレン基等の含硫黄複素環基などを挙げることができる。
前記一般式(1)において、下記式(3)
【化16】
で示される環は、(i) アリール基で置換された、1つのスピロ炭素を有するシクロプロパン環、(ii)1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内には下記
【化17】
(式中、R8は炭素数1〜10のアルキル基である。)に示されるいずれかの基が1或いは2以上含まれている(但し、オキシ基が2つ含まれることはない。)単環、又は(iii) 1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内に、−NR 8 −(但し、R 8 は炭素数1〜10のアルキル基である。)、−C(=O)−、又は−C(=O)−O−で示される基が1つ含まれている単環に芳香族炭化水素環又は不飽和複素環が縮環した縮合環である。
なお、前記R8は炭素数1〜10のアルキル基であれば特に限定されないが、該アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、ペンチル基、n−ヘキシル基が好適である。
前記のアリール基で置換されたシクロプロパン環及び環員数3〜7の単環は、スピロ原子としての炭素原子(スピロ炭素)を1つ有する。該スピロ炭素は、前記一般式(1)におけるインデン環の1位の炭素であり、この位置でスピロ結合が形成される。
上記のアリール基で置換されたシクロプロパン環におけるアリール基としては特に限定されないが、炭素数6〜10のアリール基が好適であり、具体的に例示するとフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
該アリール基は置換基を有していてもよく、その置換基としては、公知のものが制限無く使用でき、具体的には水酸基;アルキル基;トリフルオロメチル基;アルコキシ基;アラルコキシ基;アミノ基;置換アミノ基(ここで置換基とはアルキル基又はアリール基である。);シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アリール基;ヘテロアリール基;アラルキル基;アシル基;アシロキシ基;アルコキシカルボニル基;窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と該アリール基と結合する複素環基;又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基が挙げられる。なお、これら各置換基の具体例は、後述する、一般式(3)で示される環の単環に縮環する芳香族炭化水素環等における置換基である置換アリール基の置換基として例示されるものと同じである。また、該置換若しくは非置換のアリール基のシクロプロパン環への置換数は少なくとも1個以上あれば特に限定されないが、好適には1又は2個である。
また、前記の1つのスピロ炭素を有する非置換の環員数3〜7の単環とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の炭素数(但し置換基の炭素数は含まない。)3〜7のシクロアルカン単環を構成するメチレン基の1若しくは2以上がイミノ基(−NH−)、アルキルイミノ基(−NR8−)、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、カルボニル基{−C(=O)−}、カルボニルオキシ基{−C(=O)−O−}、およびアミド基{−NH−C(=O)−}からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換された環である。ただし、オキシ基が2個含まれることはない。
この様な単環を具体的に例示すれば、テトラヒドロフラン環、ピラン環等の含酸素環;ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピペラジン環、ヘキサメチレンイミン環等の含窒素環;シクロペンタノン環、シクロヘキサノン環等の含カルボニル環;ブチロラクトン環、テトラヒドロフラノン環、テトラヒドロピラノン環等の含エステル環もしくは含酸素含カルボニル混合環;ピロリジノン環、ピペリジノン環、オキソヘキサメチレンイミン環等の含アミド環若しくは含窒素含カルボニル混合スピロ環等を挙げることができる。
また、前記の1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、具体的には、水酸基;アルキル基;アルコキシ基;アラルコキシ基;アミノ基;置換アミノ基;シアノ基;ハロゲン原子;アラルキル基;アシル基;アシロキシ基;アルコキシカルボニル基;アリール基;窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と前記シクロアルカンとが結合する複素環基;又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基が挙げられる。なお、これら各置換基の具体例は、後述する、一般式(3)で示される環の単環に縮環する芳香族炭化水素環等における置換基として例示されるものと同じである。
また、前記式(3)で示される環は、1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環で あって該単環内に、−NR 8 −、−C(=O)−、又は−C(=O)−O−で示される基が1つ含まれている単環に芳香族炭化水素環又は不飽和複素環が縮環した縮合環であってもよい。
上記芳香族炭化水素環としては、特に制限されないが、炭素数6〜18の芳香族炭化水素環が好ましい。なお、ここで、芳香族炭化水素環は置換基を有していてもよい。このときの置換基については、不飽和複素環の置換基とともに後述する。好適な芳香族炭化水素環を前記単環に縮環したときの基の形で例示すると、フェニレン基、ナフチレン環、フェナンスリレン基、トリレン基、キシリレン等のベンゼン環1個、またはそれら2〜4個の縮環よりなる芳香族炭化水素環基等が挙げられる。
また、前記の不飽和複素環としては、特に制限されないが、酸素、硫黄、窒素原子を含む5員環、6員環またはこれらにベンゼン環が縮環した不飽和複素環が好ましい。好適な不飽和複素環を前記単環に縮環したときの基の形で例示すると、ピリジレン基、キノリレン基、ピロリレン基、インドリレン基等の含窒素複素環基;フリレン基、ベンゾフリレン基等の含酸素複素環基;チエニレン基、ベンゾチエニレン基等の含硫黄複素環基などを挙げることができる。
これら縮環する芳香族炭化水素環若しくは不飽和複素環の数は特に限定されないが、好適には1個もしくは2個である。
なお、上記の芳香族炭化水素環、および不飽和複素環が置換基を有する場合の置換基とは、具体的には、水酸基;アルキル基;アルコキシ基;アラルコキシ基;アミノ基;置換アミノ基(ここで置換基とはアルキル基又はアリール基である。);シアノ基;ハロゲン原子;アラルキル基;アシル基;アシロキシ基;アルコキシカルボニル基;置換もしくは非置換のアリール基(ここでアリール基の置換基とは水酸基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と該アリール基と結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基である。);又は置換もしくは非置換の芳香族複素環基(ここで芳香族複素環基の置換基とは水酸基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と該ヘテロアリール基の炭素原子と結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基である。);窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と前記芳香族炭化水素環又は不飽和複素環とが結合する複素環基又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基等が挙げられる。
以下、これら置換基について説明する。
上記のアルキル基としては、特に限定されないが、一般的には炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
上記のアルコキシ基は特に限定されないが、一般的には炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、 sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等を挙げることができる。
上記のアラルコキシ基としては、特に限定されないが、炭素数6〜10のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すると、フェノキシ基、ナフトキシ基等を挙げることができる。
上記の置換アミノ基は、アルキル基またはアリール基が置換したアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基またはジアリールアミノ基であり、好適な置換アミノ基を具体的に例示すると、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、等を挙げることができる。
上記のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を挙げることができる。上記のアラルキル基は特に限定されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。
上記のアシル基としては特に限定されないが、炭素数2〜12のアシル基が好ましい。好適なアシル基を例示すると、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、トルイル基、ナフトイル基等を挙げることができる。
上記のアシロキシ基としては特に限定されないが、炭素数2〜12のアシロキシ基が好ましい。好適なアシロキシ基を例示すると、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、ベンゾイルオキシ基、トルイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等を挙げることができる。
上記のアルキルカルボニル基としては特に限定されないが、、炭素数1〜10のアルキルカルボニル基が好ましい。好適なアルキルカルボニル基を例示するとトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
上記のアリール基は、特に限定されないが、炭素数6〜10の非置換のアリール基が好ましい。好適な非置換のアリール基を例示すると、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
また、上記アリール基は置換基を有する置換アリール基であってもよい。置換アリール基としては、上記非置換のアリール基の1若しくは2以上の水素原子が、水酸基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、又はアラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基の他、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とアリール基とが結合する複素環基(すなわち、当該複素環基を「−Z」と表し、「−」を未結合手と呼んだ場合に、前記窒素原子に該未結合手が存在する複素環基を意味する。)、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基等が置換したものを挙げることができる。
上記のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、炭素数4〜12のヘテロアリール基が好ましい。具体的に例示すると、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。また、上記の置換のヘテロアリール基の置換基としては、水酸基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、又はアラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基及び窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子に未結合手が存在する(即ち、該窒素原子とヘテロアリール基とが結合する)複素環基又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基等を挙げることができる。
窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と前記芳香族炭化水素環又は不飽和複素環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基として好適なものを具体的に例示すると、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピローリル基、インドール基、インドリル基、インドリル基、テトラヒドロキノリル基、カルバゾール基等を挙げることができる。
これら置換基の数は特に制限されないが、好適には0〜6、さらに好ましくは0〜4個である。
前記一般式(1)中のR1およびR2は、それぞれ独立に、下記式(4)
【化18】
(式中、R5は、アリール基、またはヘテロアリール基であり、R6は、水素原子、アルキル基、またはハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。)で示される基であるか、または下記式(5)
【化19】
(式中、R7は、アリール基、またはヘテロアリール基であり、mは1〜3の整数である。)で示される基であるか、またはアリール基であるか、またはヘテロアリール基であるか、又はアルキル基である。さらにまた、R1及びR2は、これら基に限らず、R1とR2とが一緒になって、脂肪族炭化水素環または芳香族炭化水素環を構成していてもよい。
前記式(4)中のR5は、アリール基、またはヘテロアリール基である。
アリール基およびヘテロアリール基としては、前記式(3)で示される環の説明として前記したのと同じ基が適用される。なお、これら基が置換基を有する場合において、置換基が結合する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、置換アリール基に於いては、アリール基がフェニル基である場合は3位または4位、ナフチル基であれば、4位または6位に置換基を有するのが好ましい。
前記式(4)中のR6は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子である。好適なアルキル基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。また上記のハロゲン原子を具体的に例示すると、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を挙げることができる。
前記式(4)中のnは1〜3の整数である。原料入手の観点から、nが1であることが好ましい。
上記式(4)で示される基の中で好適な基を具体的に例示すると、フェニル−エチレニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−モルホリノフェニル)−エテニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エテニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エテニル基、(4−メトキシフェニル)−エテニル基、(4−メチルフェニル)−エテニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(2−メトキシフェニル)−エテニル基、フェニル−1−メチルエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−メチルエテニル基、(4−メトキシフェニル)−1−メチルエテニル基、フェニル−1−フルオロエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−フルオロエテニル基、2−チエニル−エテニル基、2−フリル−エテニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エテニル基、2−ベンゾチエニル−エテニル基、2−ベンゾフラニル−エテニル基、2−(N−メチル)インドリル−エテニル基等を挙げることができる。
また、前記式(5)中のR7は、置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のヘテロアリール基である。これら基は、前述のR5として説明した基と同義である。
前記式(5)中のmは1〜3の整数であれば特に限定されないが、原料入手の容易さの観点からmは1であるのが好適である。
上記式(5)で示される基の中で好適な基を具体的に例示すると、フェニル−エチリニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−モルホリノフェニル)−エチニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エチニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エチニル基、(4−メトキシフェニル)−エチニル基、(4−メチルフェニル)−エチニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(2−メトキシフェニル)−エチニル基、2−チエニル−エチニル基、2−フリル−エチニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エチニル基、2−ベンゾチエニル−エチル基、2−ベンゾフラニル−エチニル基、2−(N−メチル)インドリル−エチニル基等を挙げることができる。
また、R1、R2としての、アリール基またはヘテロアリール基は、前述のR5として説明した基と同義である。
また、R1、R2としての、アルキル基は、前述の式(3)で示される環の説明で前記したのと同じ基が適用される。
また、R1とR2とが一緒になって脂肪族炭化水素環を形成する場合に於ける、脂肪族炭化水素環としては、特に制限はされないが、好適な環を具体的に例示すると、アダマンチリデン環、ビシクロノニリデン環、ノルボルニリデン環等を挙げることができる。
また、R1とR2とが一緒になって芳香族炭化水素環を形成する場合に於ける、芳香族炭化水素環としては、特に制限はされないが、好適な環としては、フルオレン環等を挙げることができる。
なお、R1、R2の少なくとも1つは、アリール基又はヘテロアリール基、またはこれらに基を有する基であることが好ましい。
さらに、R1およびR2の少なくとも1つは、下記(a)〜(i)に示される何れかの基であることが特に好ましい。
(a) 置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(b) 窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とアリール基またはヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(c) 前記(b)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(d) R5が置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(4)で示される基;
(e) R5が窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とアリール基またはヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(4)で示される基;
(f) R5が前記(e)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(4)で示される基;
(g) R7が置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(5)で示される基;
(h) R7が窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とアリール基またはヘテロアリール基とが結合する複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(5)で示される基;又は
(i) R7が前記(h)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である式(5)で示される基。
なお、上記(a)〜(c)における置換アリール基においては、置換基の置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、置換位置はアリール基がフェニル基であるときは3位または4位に置換されることが好ましく、その数は1であることが好ましい。当該置換アリール基としての、好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、3−(N,Nジメチルアミノ)フェニル基等を挙げることができる。
また、前記(a)〜(c)における置換ヘテロアリール基において、置換基が置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該置換ヘテロアリール基として好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,Nジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等をあげることができる。
また、前記(d)〜(f)の式(4)で示される基において、式(4)中のR5は、前記(a)〜(c)の置換アリール基又は置換ヘテロアリール基と同義である。当該式(4)で示される基として好適な基を例示すると、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−モルホリノフェニル)−エテニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エテニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エテニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−メチルエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−フルオロエテニル基等を挙げることができる。
また、前記(g)〜(i)の式(5)で示される基において、式(5)中のR7は前記(a)〜(c)の置換アリール基又は置換ヘテロアリール基と同義である。当該式(5)で示される基として好適な基を例示すると、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−モルホリノフェニル)−エチニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エチニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エチニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、2−(N−メチル)インドリル−エチニル基、(4−(N−メチルピペラジノ)フェニル)−エチニル等を挙げることができる。
前記一般式(1)において、R3およびR4は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子に未結合手が存在する(すなわち、R3の場合は該窒素原子と前記式(2)で示される基の環とが結合し、R4の場合は、該窒素原子とインデン環とが結合する。)複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基である。
ここで、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、およびアラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、前記式(3)で示される環について説明したものと同義である。
また、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子に未結合手が存在する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基も、窒素原子が結合する環が異なるだけで、基自体は前記式(3)で示される環について説明したものと同義である。
それぞれR3およびR4の置換数を示すpおよびqは何れも0〜3の整数である。これら基が結合する位置は特に制限されず、その総数も特に限定されないが、2以下であるのが好適である。なお、pがそれぞれ2又は3であるときは、各R3は互いに異なっていてもよい。qが2又は3のときのR4についても同様である。
本発明において好適なクロメン化合物としては、前記一般式(1)におて、前記式(2)で示される基が不飽和複素環基であり、R1及びR2が、それぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基であり、R3、R4が、ヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とナフタレン環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であるクロメン化合物が挙げられる。
本発明において好適なクロメン化合物を具体的に例示すれば、次のような化合物を挙げることができる。
【化20】
【化21】
本発明の前記一般式(1)で示されるクロメン化合物は、一般に常温常圧で無色、あるいは淡黄色の固体または粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ハ)のような手段で確認できる。
(イ) プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定することにより、δ5.0〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づくピーク、δ1.0〜4.0ppm付近にアルキル基及びアルキレン基のプロトンに基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
(ロ) 元素分析によって相当する生成物の組成を決定することができる。
(ハ) 13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定することにより、δ110〜160ppm付近に芳香族炭化水素基の炭素に基づくピーク、δ80〜140ppm付近にアルケン及びアルキンの炭素に基づくピーク、δ20〜80ppm付近にアルキル基及びアルキレン基の炭素に基づくピークが現われる。
本発明の一般式(1)で示されるクロメン化合物の製造方法は、特に限定されず如何なる合成法によって得ても良い。一般に好適に採用される代表的な方法について以下に説明する。
(方法A)この方法では、下記の一般式(6)
【化22】
{式中、下記式(2)
【化23】
で示される基、下記式(3)
【化24】
で示される環、R3、R4、p及びqは、前記一般式(1)における定義と同義である。}で示される、フェノール誘導体と、下記一般式(7)
【化25】
{式中、R1およびR2は一般式(1)における定義と同義である。}とを高温、若しくは酸触媒下で反応させることにより、下記一般式(1)の化合物を得ることができる。
上記一般式(1)で示されるクロメンクロメン化合物の合成時の反応条件は特に限定されないが、例えば次のような条件で好適に行うことができる。
すなわち、反応基質としてのフェノール誘導体及びプロパギルアルコールの反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、反応基質の総和に対して0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常0〜200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。
生成物の精製方法としては特に限定されない。例えば、反応液を水洗、溶媒乾燥後、そのまま再結晶による精製を行っても良く、また、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、生成物の精製を行こうことができる。
本発明の前記一般式(1)で示されるクロメン化合物は、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒によく溶ける。このような溶媒に一般式(1)で示されるクロメン化合物を溶かしたとき、一般に溶液はほぼ無色透明であり、太陽光あるいは紫外線を照射すると速やかに発色し、光を遮断すると可逆的に速やかに元の無色にもどる良好なフォトクロミック作用を呈する。このような一般式(1)の化合物におけるフォトクロミック作用は、高分子固体マトリックス中でも同様な特性を示す。かかる対象となる高分子固体マトリックスとしては、本発明の一般式(1)で示されるクロメン化合物が均一に分散するものであればよく、光学的に好ましくは、例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
さらに、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4ーメタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物;ジビニルベンゼン等のラジカル重合性多官能単量体を重合してなる熱硬化性樹脂を挙げることができる。
また、これらの各単量体とアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物等のラジカル重合性単官能単量体との共重合体が挙げられる。
本発明の一般式(1)で示されるクロメン化合物を上記高分子固体マトリックス中へ分散させる方法としては特に制限はなく、一般的な手法を用いることができる。例えば、上記熱可塑性樹脂とクロメン化合物を溶融状態にて混練し、樹脂中に分散させる方法、または上記重合性単量体にクロメン化合物を溶解させた後、重合触媒を加え熱または光にて重合させ樹脂中に分散させる方法、あるいは上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の表面にクロメン化合物を染色することにより樹脂中に分散させる方法等を挙げることができる。
本発明のクロメン化合物はフォトクロミック材として広範囲に利用でき、例えば、銀塩感光材に代る各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料などの種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレイ材料、光量計、装飾などの材料としても利用できる。
例えば、フォトクロミックレンズに使用する場合には、均一な調光性能が得られる方法であれば特に制限がなく、具体的に例示するならば、本発明のフォトクロミック材を均一に分散してなるポリマーフィルムをレンズ中にサンドウイッチする方法、あるいは、本発明のクロメン化合物を前記の重合性単量体中に分散させ、所定の手法により重合する方法、あるいは、この化合物を例えばシリコーンオイル中に溶解して150〜200℃で10〜60分かけてレンズ表面に含浸させ、さらにその表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などがある。さらに、上記ポリマーフィルムをレンズ表面に塗布し、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などもある。
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1
下記構造
【化26】
で示されるフェノール誘導体1.0g(0.003mol)と、下記式
【化27】
で示されるプロパルギルアルコール誘導体1g(0.0034mol)及びトルエン20mlを仕込み、還流温度に加熱してp−トルエンスルホン酸・1水和物0.01gを加え、計2時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、水洗、硫酸マグネシウムによる溶媒乾燥を行い、溶媒留去後、得られたオイルをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、淡黄色粉末状の生成物0.32gを得た。収率は19%であった。
この生成物の元素分析値は、C84.44%、H5.44%、N2.25%、O7.88%であって、C43H33NO3の計算値であるC84.43%、H5.44%、N2.29%、O7.85%に極めてよく一致した。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ3.0〜4.0ppm付近にテトラヒドロフラン環及びモルホリノ基のメチレンプロトンに基づく10Hのピーク、δ5.5〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく30Hのピークを示した。
さらに13C−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ110〜160ppm付近に芳香環の炭素に基づくピーク、δ80〜140ppm付近にアルケンの炭素に基づくピーク、δ20〜60ppmにアルキルの炭素に基づくピークを示した。
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることを確認した。
【化28】
実施例1〜7
参考例1と同様にして表1〜3に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、参考例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1〜3に示す構造式で示される化合物であることを確認した。また、表4〜5にこれらの化合物の元素分析値、各化合物の構造式から求めた計算値及び1H−NMRスペクトルの特徴的なスペクトルを示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
参考例2、実施例8〜14、比較例1、2
参考例1で得られたクロメン化合物0.05部をテトラエチレングリコールジメタクリレート70部、トリエチレングリコールジメタクリレート15部、グリシジルメタクリレート10部、2−ヒドロエチルメタクリレート5部に添加し十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持した。重合終了後、重合体を鋳型のガラス型から取り外した。
得られた重合体(厚み2mm)を試料とし、これに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2,245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、前記試料のフォトクロミック特性を測定した。フォトクロミック特性は次のようなもので評価した。
(1) 最大吸収波長(λmax): (株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。害最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
(2) 初期着色{ε(0)}: 前記最大吸収波長における光未照射状態の吸光度。例えばメガネレンズのような光学材料においては、この値が低いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(3) 発色濃度{ε(120)−ε(0)}: 前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(4) 退色速度〔t1/2(min.)〕: 120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大は長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(5) 残存率(%)={(A200/A0)×100}: 光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた重合体(試料)をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、{(A200/A0)×100}の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
(6) 着色変化度(△YI)=YI(200)−YI(0): 光未照射時の色調の耐久性を評価するために、上記劣化促進試験前後の試料について、スガ試験機(株)製の色差計(SM−4)を用いて色差を測定した。劣化に伴う着色変化度を試験後の着色度の値{YI(200)}から試験前の着色度の値{YI(0)}を引いた差{△YI}を求め、耐久性を評価した。△YIが小さいほど光未照射時の色調の耐久性が高い。
また、クロメン化合物として実施例1ないし7で得られた化合物を用いた以外は、上記と同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表6に示す。
【表6】
さらに、比較のために、下記式(A)、(B)
【化29】
【化30】
で示される化合物を用い同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を表7に示した。
【表7】
本発明のクロメン化合物を用いた実施例では、フォトクロミック重合体は、比較例1、2に比べて退色速度、劣化時の着色、およびフォトクロミック性の耐久性の3つの効果すべてにおいて優れている。
【発明の効果】
本発明のクロメン化合物は、溶液中または高分子固体マトリックス中で、速い退色速度を示し且つ劣化時の着色が少なくフォトクロミック性の耐久性がよい。例えば、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミックレンズは、屋外から室内に戻った時にすばやく元の色調に戻り、さらに長時間使用したときでも劣化に伴う着色は少なく良好な耐久性を示す。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
下記式(2)
下記式(3)
(i) アリール基で置換された、1つのスピロ炭素を有するシクロプロパン環、
(ii)1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内には下記
(iii) 1つのスピロ炭素を有する環員数3〜7の単環であって該単環内に、−NR 8 −(但し、R 8 は炭素数1〜10のアルキル基である。)、−C(=O)−、又は−C(=O)−O−で示される基が1つ含まれている単環に芳香族炭化水素環又は不飽和複素環が1つ縮環した縮合環であり、
R1およびR2は、それぞれ独立に、下記式(4)
で示される基、アリール基、ヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、又はR1とR2とが一緒になって、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成していてもよく、
R3はヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と前記式(2)で示される基の環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、pは0〜3の整数であり、
R4は、ヒドロキシル基、アルキル基、トリフルオロメチル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子と対応するベンゼン環とが結合する複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、qは0〜3の整数である。}で示されるクロメン化合物。 - 請求項1記載のクロメン化合物からなるフォトクロミック材。
- 請求項1記載のクロメン化合物を含有してなるフォトクロミック光学材料。
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