JP4106366B2 - シートスイッチ、シートスイッチの製造方法及びその操作シート - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチールカメラ、電子レンジ、冷蔵庫等の電子機器に搭載されるシートスイッチに関する。本発明は、このシートスイッチにおける回路基板の表側に実装されたメタルドームなどの接点部材をスイッチ動作するための操作シートに関する。
【背景技術】
【0002】
関連のシートスイッチは、例えば、特許文献1に開示される。
前記シートスイッチは、電子機器に搭載されるユニットであり、ユニットベースとして回路基板を備えている。前記回路基板は、その表側(回路側)に、実装されたメタルドームを有する。このメタルドームは、弾性変形してスイッチ動作可能である。
【0003】
従って、メタルドーム上部に設けられた前記操作シートの押圧操作により、前記メタルドームを反転する。前記操作シートを押圧状態から解除することにより、前記メタルドームを弾性復帰させる。これにより、前記メタルドームをスイッチ動作させて、前記回路基板の固定接点と可動接点とを電気的に接続させたり、遮断させたりできる。
【特許文献1】
特開2002−8484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
ところで、前記メタルドームをスイッチ動作させる間、前記操作シートと前記メタルドームとの間には、面圧が作用している。そのため、前記操作シートが前記メタルドーム上を滑ると、又は、メタルドームから離れると、雑音を生じる可能性がある。又、このような雑音は、メタルドーム上にポリエステルなどからなるシートが配置されるような場合に、さらに大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、例えば、メタルドームのような接点部材のスイッチ動作の間に生じる雑音を低減するシートスイッチ及びその操作シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の第1の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチである。シートスイッチは、回路基板上の接触子を含む。前記シートスイッチは、前記接触子と電気的に導通するために変形可能な接点部材を含む。前記シートスイッチは、前記接触子へ向かって前記接点部材を変形するために変位可能に突出した押圧子を有した操作シートを含む。前記押圧子は、半球状からなり、しかも、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有する。
【0007】
以上のシートスイッチにあって、接点部材は、対の接触子と電気的導通を確立する導体に加えて、その導体と共に動作する部材、及び、その導体を動作させるために必要な部材を含む。
【0008】
押圧子とは、接触子へ向かって接点部材を押す部材である。
前記押圧子は、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)を有してもよい。前記押圧子は、粗面促進材がコーティングされた表面を有してもよい。前記接点部材は、前記回路基板に接地されてもよい。前記回路基板は、フレキシブルプリント回路基板を含んでもよい。前記接点部材は、メタルドームを含んでもよい。
【0009】
発明の第2の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチの製造方法である。この製造方法は、操作シート上に、粗面促進材を含有するインクをスクリーン印刷して、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有した半球状の押圧子を形成する工程を含む。製造方法は、回路基板上の接触子と接点部材とを互いに間隔をあけて配置する工程を含む。製造方法は、前記押圧子を前記接点部材に向けた状態で、前記接点部材に対して前記接触子と反対に前記操作シートを配置する工程を含む。
【0010】
前記押圧子は、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)に形成してもよい。
【0011】
発明の第3の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチに用いられる操作シートである。この操作シートは、回路基板上の接触子と接点部材とを電気的に導通するために、変形可能に操作されるベースシートを含む。操作シートは、前記接触子へ向けて前記接点部材を変形するために、前記ベースシートから前記接点部材へ向けて突出し且つ前記ベースシートによって変位可能な押圧子を含む。前記押圧子は、半球状からなり、しかも、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有する。
【0012】
前記押圧子は、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)を有してもよい。前記押圧子は、粗面促進材がコーティングされた表面を有してもよい。
【0013】
発明の第4の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチである。このシートスイッチは、回路基板上の接触子を含む。シートスイッチは、前記接触子と電気的に導通するために変形可能な接点部材を含む。シートスイッチは、前記接触子へ向かって前記接点部材を変形するために変位可能に突出した押圧子を有する。前記押圧子は、1.4(N/10%)以上の硬度を有する。
【0014】
前記押圧子は、1.7(N/10%)以上の硬度を有してもよい。
【0015】
発明の第5の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチである。このシートスイッチは、回路基板上の接触子を含む。シートスイッチは、前記接触子と電気的に導通するために変形可能な接点部材を含む。シートスイッチは、前記接触子へ向かって前記接点部材を変形するために変位可能な押圧子を有した操作シートを含む。前記押圧子は、前記接触子へ向かって前記接点部材を押圧するための突起を含む。シートスイッチは、前記突起及び前記操作シートの間に前記操作シートによって弾性変形可能な緩衝層を含む。
【0016】
前記突起は、1.4(N/10%)以上の硬度を有してもよい。前記突起は、1.7(N/10%)以上の硬度を有してもよい。前記緩衝層は、1.5(N/10%)以下の硬度を有してもよい。前記接点部材は、前記回路基板に接地されてもよい。前記回路基板は、フレキシブルプリント回路基板を有してもよい。前記接点部材は、メタルドームを含んでもよい。
【0017】
発明の第6の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチに用いられる操作シートである。この操作シートは、回路基板上の接触子と接点部材とを電気的に導通するために変形可能に操作されるベースシートを含む。操作シートは、前記接触子へ向けて前記接点部材を変形するために、前記ベースシートから突出し且つ前記ベースシートによって変位可能な押圧子とを含む。前記押圧子は、1.4(N/10%)以上の硬度を有する。
【0018】
前記押圧子は、1.7(N/10%)以上の硬度を有してもよい。
【0019】
発明の第7の特徴は、以下の要素を備えたシートスイッチに用いられる操作シートである。この操作シートは、回路基板上の接触子と接点部材とを電気的に導通するために、変形可能に操作されるベースシートを含む。操作シートは、前記接触子へ向けて前記接点部材を変形するために、前記ベースシートによって変位可能な押圧子とを含む。前記押圧子は、前記接触子へ向かって前記接点部材を押圧するための突起を含む。前記押圧子は、前記突起及び前記ベースシートの間に前記ベースシートによって弾性変形可能な緩衝層を含む。
【0020】
前記突起は、1.4(N/10%)以上の硬度を有してもよい。前記突起は、1.7(N/10%)以上の硬度を有してもよい。前記緩衝層は、1.5(N/10%)以下の硬度を有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上の特徴によれば、例えば、押圧操作により、操作シート又はベースシートを変形して、押圧子を接点部材に向けて変位させる。押圧子は、接点部材を変形させることにより、この接点部材の導体と回路基板上の接触子とを接触させ、電気的導通を確立する。そして、押圧子は、半球状からなり、しかも、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)によって、押圧子と及び接点部材間の粘着作用は抑制される。また、好ましくは、表面粗さは、0.5μm〜2.0μmである。
【0022】
したがって、接点部材のスイッチ動作の間に雑音が低減される。これにより、前記シートスイッチのスイッチ特性を向上し、また、前記シートスイッチを搭載した電子機器に及ぶ悪影響を防止する。
【0023】
また、接点部材のスイッチ動作の間に、前記ベースシートから押圧子の剥離を抑制できる。これにより、シートスイッチを長期に亘って安定して使用することができる。
【0024】
一方、前記押圧子の表面粗さが3.0μm以下好ましくは2μm以下であるため、スイッチ荷重のばらつきを減少できる。これにより、前記シートスイッチのスイッチ特性をより向上する。
【0025】
本発明の実施の形態について図1から図13を参照して説明する。
【0026】
第1の実施形態
【0027】
図1から図4Cに示すように、シートスイッチ1Aは、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチールカメラ、電子レンジ、洗濯機等の電子機器に搭載される。シートスイッチ1Aは、フレキシブルプリント回路基板(以下、回路基板と称する)3をユニットベースとして有する。回路基板3の表側には複数の固定接点(接触子)5を有している。
【0028】
図3Aを参照して、シートスイッチ1Aは、回路基板3に固定されたシート(接点部材)9を有する。シート9は、0.05μm以上の表面粗さで滑らかな表面を有し、例えば、ポリエステルなどの樹脂製のシート又はテープである。シート9は、固定接点5を収容するように変形させたドーム9aを有する。シートスイッチ1Aは、回路基板3の表側であって、ドーム9aの内面に実装されたメタルドーム(接点部材)7を有する。シート9の内面には予め接着剤が塗布されている。ここで、各メタルドーム7はそれぞれ頂部7aを有する。各頂部7aの内面には、固定接点5と対向する可動接点(接点部材)11がそれぞれ設けられている。図4Aを参照して、固定接点5は、第1の配線パターンのターミナルに相当する。可動接点11は、メタルドーム7を介して第2の配線パターンのターミナル6と電気的に導通される。この頂部7aの反転・弾性復帰により、固定接点5と可動接点11とを電気的に接続・遮断して、スイッチ動作を可能にする。可動接点11及び固定接点5が電気的に接続され、これにより、第1及び第2の配線パターンは、メタルドーム7を介して、電気的に接続する(例えば、特開2002−157939号公報、特開2002−290000号公報、特開平11−306914号公報参照)。なお、可動接点11を用いずに、メタルドーム7と固定接点5とを電気的に導通させてもよい。
【0028】
図3Aにおいて、回路基板3の表側には、スペーサ13が接着される。このスペーサ13及び回路基板3は、それらの間にシート9を挟持する。スペーサ13は各メタルドーム7をそれぞれ収容する複数の収容部15を有している。
【0029】
なお、スペーサ13は、フレキシブルプリント回路基板3の表側に粘着又は接着によって固定される代わりに、印刷等によって設けてもよい。
【0030】
スペーサ13の表側又は上端には、複数のメタルドーム7をスイッチ動作させるための操作シート17Aが接着される。この操作シート17Aの具体的な構成は次のようになる。
【0031】
図2を参照して、操作シート17Aは、ベースシート19を有する。このベースシート19の表側には押圧操作可能な複数の操作部21を有している。ここで、ベースシート19は、例えば、ポリカーボネートのフィルム19aを有する。ベースシート19は、フィルム19aに熱硬化型インクをスクリーン印刷して乾燥することによって成形された文字部19bを有する。ベースシート19は、文字部19bに熱硬化型インクをスクリーン印刷して乾燥することによって成形された第1着色部19cを有する。ベースシート19は、この第1着色部19cにUV硬化型インクをスクリーン印刷して乾燥することによって成形された第2着色部19dを有する。ベースシート19の構成は、前記構成に限られるものではなく、インクの色、種類の変更等、種々の変更してもよい。
【0032】
各操作部21に一致した第2着色部19dの裏面には、半球状の突起(押圧子)23Aが固定される。突起23Aは、例えば、50〜500μmの厚さを有する。突起23Aは、それぞれ、相対するドーム9aの頂部あるいはメタルドームの頂部7aに圧接(接触の一つ)可能である。複数の突起23Aは、例えば、第2着色部19dの裏面にUV硬化型インクをスクリーン印刷して乾燥することによって成形された。
【0033】
各突起23Aの表面にはそれぞれ、表面粗さが少し粗くなるように多数の微小な凹凸25が形成されている。突起23Aの表面の構造を、具体的に説明する。
【0034】
凹凸25に基づく表面粗さは、0.2μm以上で2μm以下、また、望ましくは0.7μm以上で2μm以下に設定する。「表面粗さ」とは、算術平均粗さ(Ra)を意味する。すなわち、平均線を基準に粗さ曲線f(x)、及び、平均線の方向に基準長Lさを設定する。この基準長さLについて粗さ曲線f(x)の絶対値を積分する。この積分値を基準長さLで除算して、表面粗さRaを求める(数式(1)、JISB0601参照)。
【0035】
表面粗さ0.2μm以上の突起23Aでは、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音が低減する。一方、表面粗さ2μm以下の突起23Aでは、操作部21を押圧操作して可動接点11と固定接点5が電気的に接続させるためのスイッチ荷重のばらつきが小さくなる。「スイッチ荷重」とは、可動接点11と固定接点5が電気的に接続するときの操作部21を押圧操作する荷重である。スイッチ荷重のばらつきは、標準偏差を平均値で除算した値で表される。
【0036】
突起23A上の凹凸25の形成では、ベースシート19の第2着色部19dの裏面にUV硬化型インクをスクリーン印刷する前に、適量の粉状の粗面促進材がUV硬化型インクに添加される。ここで、前記粗面促進材としては、粉末状のタルク等の無機フィラー、ウレタン又はナイロンの粒状絶縁材が用いられる。なお、例えば、粗面促進材である無機フィラーの適量は、インクに対して1重量%以上で10重量%以下の含有率である。
【0037】
凹凸25の形成では、前述の形成態様の他に、複数の突起23Aの表面に粗面促進材をコーティングしてもよい。前記粗面促進材としては、カーボンペースト、又は、無機フィラーを含有したレジスト等が用いられる。この粗面促進材により、突起23Aの表面粗さは大きくなる。
【0038】
次に、シートスイッチ1Aの動作について説明する。
図3Aを参照して、操作部21を押圧操作F1することにより、突起23Aを可動接点11へ向かって変位させる。突起23Aがメタルドーム7の頂部7aを反転させ、これにより、固定接点5へ向かって可動接点11を変位させる。この変位により、可動接点11及び固定接点5を互いに接触させ、電気的に導通させる。これにより、回路基板3に形成された第1及び第2の配線パターンを電気的に接続し、スイッチをオンにする。
【0039】
操作部21の押圧状態を解除することにより、メタルドーム7の頂部が弾性的に復帰する。このメタルドーム7のスイッチ動作により、回路基板3の固定接点5と可動接点11とは、互いに離反される。これにより、第1及び第2の配線パターンは電気的に遮断され、スイッチをオフにする。
【0040】
以上のように、固定接点5と可動接点11とは、電気的に接続又は遮断できる。
【0041】
ここで、表面粗さを少し粗くなるように突起23Aの表面に多数の微小な凹凸25が形成されている(突起の表面粗さが0.2μm以上である)。これにより、突起23Aとシート9の頂部との間に作用する、例えば、粘着作用を十分に抑制できる。
【0042】
また、表面粗さ2μm以下の突起23Aは、スイッチ荷重のばらつきを少なくできる。
【0043】
さらに、シートスイッチ1Aは、回路基板3をユニットベースとしているため、シートスイッチ1A全体として可とう性を有する。
【0044】
以上の実施形態によれば、例えば、突起23Aとメタルドーム7あるいはシート9の頂部との間に働く粘着作用を十分に抑制できる。これにより、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音を低減して、シートスイッチ1Aのスイッチ特性を向上する。「雑音」には、例えば、スイッチの操作中に、突起23A及びドーム9a間の剥離又は滑りにより発生する音を含む。
【0045】
また、シートスイッチ1Aを搭載した電子機器に悪影響が及ぶことを極力阻止できる。特に、スイッチ荷重のばらつきを少なくできるため、シートスイッチ1Aのスイッチ特性が向上する。
【0046】
また、シートスイッチ1A全体が可撓性を有する。これにより、シートスイッチ1Aの収納性(実装性)を向上させて、様々な電子機器に利用することができる。
なお、図3Aの接点システムの代りに、図3Bから図3Dの接点システムを用いてもよい。
【0047】
図3Bを参照して、可動接点11は、メタルドーム7の頂部7aの内面に固定する代わりに、回路基板3とメタルドーム7の間に介在させた中間材10に固定してもよい。中間材10は、例えば、ポリエステルで作られ、可撓性を有する。図4Bを参照して、可動接点11は、隔離された一対の固定接点5のそれぞれに一致するように配置される。一対の固定接点5は、それぞれ配線パターンと接続される。
【0048】
この接点システムによれば、操作シート17Aと共に突起23Aを押し下げると、突起23Aがメタルドーム7を中間材10へ向かって弾性変形させる。メタルドーム7は、中間材10を固定接点5へ向かって変形させる。この変形により、固定接点5へ向かって可動接点11を変位させる。この変位により、可動接点11及び一対の固定接点5は互いに接触し、電気的に導通される。これにより、配線パターン同士は、可動接点11を介して電気的に接続される。
【0049】
なお、図4Cを参照して、固定接点5及び可動接点11は、それぞれ別の配線パターンに接続されてもよい。
【0050】
一方、図3Cに示す接点システムでは、メタルドーム7を用いない。シート(接点部材)9は、2つのスペーサ13に挟まれて保持される。シート9には、可動接点11が固定される。なお、シート9は、前述と同様、0.05μm以上の表面粗さで滑らかな表面を有する。シート9には、例えば、ポリエステルのような樹脂製のシート又はテープが使われる。
【0051】
この接点システムによれば、突起23Aが、シート9を変形させ、可動接点11を固定接点5へ向かって変位させる。これにより、可動接点11及び固定接点5が互いに接触し、電気的に導通する。
【0052】
また、図3Dに示す接点システムでは、メタルドーム(接点部材)7の頂部7aが、シート9の一部に形成した孔から、露出される。この頂部7aは、突起23Aと接触するように配置される。可動接点11は頂部7aから除去されている。もちろん、可動接点11が含まれた態様でもよい。
【0053】
この接点システムによれば、突起23Aが、固定接点5に向かってメタルドーム7を変形させる。これにより、メタルドーム7の頂部7aと固定接点5とを互いに接触させ、電気的に導通する。この接点システムにおいても、突起(押圧子)23Aとメタルドーム(接点部材)7との間に働く粘着作用を十分に抑制することができる。
【0054】
第2の実施形態
【0055】
図5、6を参照して、シートスイッチ1Bは、第1の実施形態に係わるシートスイッチ1Aと略同じ構成を有している。以下、シートスイッチ1Aと異なるシートスイッチ1Bの構成要素について説明する。シートスイッチ1Aと同一視される構成要素については図中の同一又は類似の参照符号を付して、説明を省略する。
【0056】
この実施の形態では、操作シート17Bの突起(押圧子)23Bの硬度が、1.4(N/10%)以上で2.8(N/10%)以下に設定される。好ましくは、硬度は、1.7(N/10%)以上で2.8(N/10%)以下に設定する。「硬度」は、試験突起の初期高さに対して10%の歪みが生じたときの圧縮荷重である。試験突起とは、突起23Bを模型化した半球状の突起(φ約2mm、高さ約0.4mm)である。1.4(N/10%)以上の硬度は、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音を30dB以下に低減できる。1.7(N/10%)以上の硬度は、その雑音を20dB以下に低減できる。一方、突起の硬度が増加するにつれて、雑音は減少し、約2.8(N/10%)の硬度で、雑音は一定値に収束する。
【0057】
次に、シートスイッチ1Bの動作について説明する。
【0058】
図5、6を参照して、操作部21の押圧操作F1により、突起23Bがメタルドーム7の頂部7aを反転させる。操作部21の押圧状態の解除により、メタルドーム7の頂部7aを弾性復帰させる。これにより、メタルドーム7がスイッチ動作する。このスイッチ動作により、回路基板3の固定接点5と可動接点11とを、電気的に接続させたり、電気的に遮断させたりできる。
【0059】
ここで、突起23Bの硬度が1.4、好ましくは、1.7(N/10%)以上である。このため、突起23Bとシート9との間で作用する、例えば、粘着作用が抑制される。
前述の作用の他に、シートスイッチ1Bは、フレキシブル回路基板3をユニットベースとしているため、シートスイッチ1B全体が可とう性を有する。
以上の第2の実施形態よれば、突起23Bとメタルドーム7あるいはシート9の頂部との間に働く、例えば、粘着作用を抑制する。これにより、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音を低減する。これにより、シートスイッチ1Bのスイッチ特性が向上し、また、シートスイッチ1Bを搭載した電子機器に及ぼす悪影響が防止される。
【0060】
なお、シートスイッチ1Bの突起23Bは、1.4、好ましくは、1.7以上の硬度に加えて、0.2μm以上で2μm以下の表面粗さを有してもよい。
【0061】
第3の実施形態
【0062】
図7A、8を参照にして、操作シート17Cは、ベースシート19の第2着色部19dにおける操作部21を含む。各操作部21の真裏には、それぞれ、相対するメタルドーム7の頂部に圧接(接触の一つ)可能な突起(押圧子)23Cが固定される。各突起23Cは、ベースシート19に固定された円形の第1突起層(緩衝層)31を含む。突起23Cは、第1突起層31に固定された半球の第2突起層33を含む。第1突起層31と第2突起層33との厚さの比は、例えば、2:8〜8:2の範囲である。
【0063】
ここで、複数の第1突起層31及び複数の第2突起層33は、ベースシート19の第2着色部19dの裏側にUV硬化型インクを2回に亘ってスクリーン印刷して乾燥することによって成形される。第2突起層33の表面粗さが少し粗くなるように、2回目のスクリーン印刷する際に前記UV硬化型インクの中に適量のタルク等の無機フィラーを含有させてもよい。
【0064】
第1突起層31の硬度は、1.5(N/10%)以下に設定する。この硬度によれば、第1突起層31がベースシート19から剥離しない。第1突起層31は、軟質材料により作られ、ベースシート19の弾性変形に追従して弾性変形できる。
【0065】
第2突起層33の硬度が、1.4、好ましくは、1.7(N/10%)以上に設定される。この硬度によれば、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音を低減する。第2突起層33は、硬質材料で作られ、メタルドーム7に対して十分な非粘着性を奏する。
【0066】
次に、シートスイッチ1Cの動作について説明する。
【0067】
図8参照して、操作部21の押圧操作F1によって、突起23Cがメタルドーム7の頂部を反転させる。操作部21を押圧状態から解除することによって、メタルドーム7の頂部を弾性復帰させる。これにより、メタルドーム7をスイッチ動作させて、回路基板3の固定接点5と可動接点11とを電気的に接続させたり、電気的に遮断させたりできる。
【0068】
ここで、突起23Cは第1突起層31と第2突起層33とを含む。第2突起層33はメタルドーム7に対して十分な非粘着性を奏する。これにより、突起23Cとシート9との間に作用する、例えば、粘着作用を抑制できる。一方、第1突起層31はベースシート19の弾性変形に対して追従して弾性変形できる。これにより、メタルドーム7のスイッチ動作の間に、ベースシート19から突起23Cの剥離を抑制する。
【0069】
以上の如き、第3実施形態によれば、突起23Cとメタルドーム7又はシート9の頂部との間に作用する、例えば、粘着作用を抑制する。これにより、メタルドーム7のスイッチ動作の間に生じる雑音を低減する。したがって、シートスイッチ1Cのスイッチ特性が向上する。また、シートスイッチ1Cを搭載した電子機器に及ぼす悪影響が防止される。
また、メタルドーム7のスイッチ動作の間に、ベースシート19から突起23Cの剥離が抑制される。即ち、第1突起層31は、第2突起層33より大きく変形可能なので、ベースシート19及び第2突起層31の間で緩衝層として機能する。これにより、シートスイッチ1Cを長期に亘って安定して使用することができる。
【0070】
本発明は、前述の実施形態に限られず、適宜の変更により、その他種々の態様で実施可能である。例えば、第1突起層31と第2突起層33の間に中間突起層が設けられてもよい。
【0071】
図7B示すように、第1突起層31をベースシート19の全面に固定し、第1突起層31の上に第2突起層32を固定してもよい。
【実施例】
【0072】
次に、上記表面粗さ、硬度に対する音圧レベル、剥離性に関して、実施例を説明する。
【0073】
測定は、無響室又は静粛で周囲から音の反射のない環境で、行われた。シートスイッチは、厚さ10mmのガラスエポキシの板に貼り付けられた。集音マイクは、シートスイッチから真上に10cmに設置された。集音マイクは、JIS C 1502に適合する騒音計に接続された。その聴感補正回路は、A特性を使用し、その指示計器の動特性は、速(fast)を使用した。騒音計は、FFTアナライザに接続された。
【0074】
そして、シートスイッチを押して、雑音を生じさせる。この雑音は、集音マイクで拾われ、騒音計で、測定される。測定音の周波数は、FFTアナライザによって、解析された。音圧のレベルは、発生音のうち周波数帯(0.1〜10kHz)で評価された。この周波数帯は、Steinbergの聴覚特性曲線により可聴しやすいとされている帯域である。
【0075】
図9、10において、第1の実施形態に係わる突起23(押圧子)Aの表面粗さと雑音の音圧との関係を説明する。
【0076】
なお、試験突起としては、突起23Aを模型化した半球状の突起を用いた。試験突起は、φ約2mm、高さ約0.4mmとした。試験突起の表面粗さは、タルクの量を変えて作製した。
【0077】
実施例A1からA5に係わる表面粗さ0.2μm以上の突起では、雑音が30dB以下となった。さらに、実施例A3からA5に係わる表面粗さ0.7μm以上の突起では、雑音が20dB以下になった。
【0078】
ここで、20dB〜30dBの音圧レベルは、静かな部屋で、耳により音を確認できる程度である。20dB以下の音圧レベルは、静かな部屋で耳により音をほとんど確認できない程度である。例えば、本スイッチをビデオカメラなどに実装した場合、その基準は、ビデオ録画中に音として記録されてしまう音圧レベルである。20dB〜30dBの音圧レベルは、実用上、記録されても、問題にならないレベルである。20dB以下の音圧レベルは、音として、ほとんど記録されない。
【0079】
一方、実施例A6に係わる表面粗さ0.1μmの突起では、雑音が40dBになった。また、実施例A7からA8に係わる表面粗さ2.0μmを越える突起では、スイッチ荷重のばらつきが、0.1を越えた。「スイッチ荷重」とは、可動接点と固定接点が電気的に接続するときの操作部を押圧操作する荷重である。スイッチ荷重のばらつきは、標準偏差を平均値で割った値で表される。
【0080】
したがって、突起の表面粗さは、0.2μm以上及び2.0μm以下、好ましくは、0.7μm以上及び2.0μm以下の範囲に設定される。
【0081】
図11、12を参照して、第2の実施形態に係わる突起23Bの硬度と雑音の音圧レベルとの関係を説明する。
【0082】
「硬度」は、試験突起の初期高さに対して10%の歪みが生じたときの圧縮荷重で表される。試験突起とは、突起を模型化した半球状の突起(φ約2mm、高さ約0.4mm)である。そして、頂点部がφ2mmのフラット形状を呈するアルミ製の押圧ロッド(図示省略)が用いられる。この押圧ロッドにより、試験突起に対してその先端から圧縮荷重を徐々に加えて、試験突起に歪を生じさせる。
【0083】
その結果、硬度1.4(N/10%)以上の突起では、雑音は、30dB以下になった。実施例B1からB4及びB7に係わる硬度1.7(N/10%)以上の突起では、雑音はレベル20dB以下になった。一方、実施例B5からB7に係わる硬度1.7(N/10%)より小さい突起では、雑音は20dBを越えた。雑音が2.8(N/10%)を越えると、雑音の音圧レベルは、一定値に収束した。
【0084】
この理由は、軟らかい突起は、大きく変形するので、大きな接触面積及び粘着力を得るからであると考えられる。他方、硬い突起は、変形し難いので、小さな接触面積及び粘着力を得るからであると考えられる。
【0085】
したがって、突起の硬度は、1.4、好ましくは、1.7(N/10%)以上に設定する。
【0086】
図13を参照して、第3の実施形態に係わる突起23Cの硬度と剥離性との関係について説明する。
【0087】
実施例C1からC4に係わる硬度1.5(N/10%)以下の第1突起層は、ベースシートからの剥離しなかった。一方、実施例C5及びC6に係わる硬度1.5(N/10%)を越える第1突起層は、ベースシートから剥離した。
【0088】
硬度1.7(N/10%)以上の第2突起層では、メタルドームのスイッチ動作の間に、雑音は20dB以下になった。一方、硬度が1.7(N/10%)より小さい第2突起層では、雑音は、20dBを越えた。硬度が1.4(N/10%)以上の第2突起層では、雑音は30dB以下になった。
【0089】
したがって、第1突起層は、硬度1.5(N/10%)以下に設定する。第2突起層は、硬度1.4、好ましくは、1.7(N/10%)以上に設定する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のシートスイッチ及び操作シートは、電子機器のスイッチとして利用可能である。このスイッチを用いた電子機器は、雑音を生じることなく、確実な電気的接続を達成する。
きる。これにより、前記シートスイッチのスイッチ特性をより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、第1の実施形態に係わるシートスイッチの分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の操作シートの一部断面図である。
【図3A】図3Aは、図1のシートスイッチの一部断面図である。
【図3B】図3Bは、第1の実施形態の変形に係わるシートスイッチの一部断面図である。
【図3C】図3Cは、第1の実施形態の変形に係わるシートスイッチの一部断面図である。
【図3D】図3Dは、変形したシートスイッチの一部断面図である。
【図4A】図4Aは、図1のシートスイッチの回路基板の平面図である。
【図4B】図4Bは、第1の実施形態の変形に係わる回路基板の平面図である。
【図4C】図4Cは、第1の実施形態に変形に係わる回路基板の平面図である。
【図5】図5は、第2の実施の形態に係わるシートスイッチの操作シートの一部断面図である。
【図6】図6は、第2の実施の形態に係わるシートスイッチの一部断面図である。
【図7A】図7Aは、第3の実施形態に係わるシートスイッチの操作シートの一部断面図である。
【図7B】図7Bは、第3の実施形態の変形に係わる操作シートの一部断面図である。
【図8】図8は、第3の実施形態に係わるシートスイッチの一部断面図である。
【図9】図9は、第1の実施形態の実施例に係わる表を示す。
【図10】図10は、図9の表面粗さと音圧レベルの関係を表わしたグラフを示す。
【図11】図11は、第2の実施形態の実施例に係わる表を示す。
【図12】図12は、図10の硬度と音圧レベルの関係を表わしたグラフを示す。
【図13】図13は、第3の実施形態の実施例に係わる表を示す。○は剥離の未発生を示す。×は剥離の発生を示す。
【符号の説明】
【0092】
1A、1B、1C シートスイッチ
3 フレキシブルプリント回路基板(回路基板)
5 固定接点(接触子)
6 ターミナル
7 メタルドーム(接点部材)
7a 頂部
9 シート(接点部材)
9a ドーム
10 中間部材
11 可動接点(接点部材)
13 スペーサ
15 収容部
17A 操作シート
19 ベースシート
19a フィルム
19b 文字部
19c 第1着色部
19d 第2着色部
21 操作部
23A 突起(押圧子)
23B、23C 突起
25 凹凸
31 第1突起層(緩衝層)
33 第2突起層
Claims (13)
- 回路基板上の接触子と、
前記接触子と電気的に導通するために変形可能なメタルドームからなる接点部材と、
前記接触子へ向かって前記接点部材を変形するために変位可能に突出した半球状の押圧子を有した操作シートを含み、
前記押圧子は、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有するシートスイッチ。 - 前記押圧子は、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)を有する請求項1に記載のシートスイッチ。
- 前記押圧子は、粗面促進材がコーティングされた表面を有する請求項1又は2に記載のシートスイッチ。
- 前記接点部材は、前記回路基板に接地された請求項1又は2に記載のシートスイッチ。
- 前記接点部材のメタルドーム上にポリエステル樹脂を被覆してなるものある請求項1又は2記載のシートスイッチ。
- 前記回路基板は、フレキシブルプリント回路基板を含む請求項1又は2に記載のシートスイッチ。
- 操作シート上に、粗面促進材を含有するインクをスクリーン印刷して、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有した半球状の押圧子を形成し、
回路基板上の接触子とメタルドームからなる接点部材とを互いに間隔をあけて配置し、
前記押圧子を前記接点部材に向けた状態で、前記接点部材に対して前記接触子と反対に前記操作シートを配置した、シートスイッチの製造方法。 - 前記押圧子を、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)に形成した請求項7に記載のシートスイッチの製造方法。
- 前記接点部材のメタルドーム上にポリエステル樹脂を被覆する工程を備えている請求項7又は8に記載のシートスイッチの製造方法。
- 回路基板上の接触子とメタルドームからなる接点部材とを電気的に導通するために、変形可能に操作されるベースシートと、
前記接触子へ向けて前記接点部材を変形するために、前記ベースシートから前記接点部材へ向けて突出し且つ前記ベースシートによって変位可能な半球状の押圧子を含み、
前記押圧子は、0.5μm〜3.0μmの表面粗さ(Ra)を有した、シートスイッチに用いられる操作シート。 - 前記押圧子は、0.5μm〜2μmの表面粗さ(Ra)を有する請求項10に記載の操作シート。
- 前記押圧子は、粗面促進材がコーティングされた表面を有する請求項10又は11に記載の操作シート。
- 前記接点部材のメタルドーム上にポリエステル樹脂が被覆されている請求項10又は11に記載の操作シート。
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