JP4103438B2 - 光励起型光源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、利得媒体を有する導波路型素子と、当該利得媒体の励起光源と、複数の光学素子を備えた光励起型光源装置において、半導体レーザ等による、発散性励起光ビームを空間的に分割して、効率良く導波路型素子の導波路へと結合させることで、導波路型利得媒体の効率的な励起により、エネルギー利用効率を高めるための技術に関する。例えば、誘導放出による光増幅を用いた、投射型映像表示用インコヒーレント高出力光励起型光源装置等に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近時、大画面表示への関心が高まっており(D-Cinemaの登場やホームシアタ等)、大画面ディスプレイ装置に注目が集まっている。現在では、大画面プロジェクタとして、ライトバルブ(Light Valve)型(DMD、ILA、LCD等)や、レーザビームを変調走査するビームスキャニング(beam scanning)型等の、特長ある種々のシステムが実用化されている。そして、これらの大画面用プロジェクタに使われる光源としては、高輝度ショートアークランプ、高出力固体レーザ、ガスレーザ(Y.Hwang, J. Lee, Y. Park, J. Park, S. Cha, Y. Kim, “200 Inches Full Color Laser Projection Display,” Proc. SPIE Vol.3296, pp.116-125 (1998)) が一般に用いられている。
【0003】
一方、画像の品質向上のためには、光源の高出力化や、高効率化、小スポットサイズ化等が要求される。
【0004】
大画面表示用光励起型光源装置に関する従来の構成では、動作や出力の安定性、消費電力や装置サイズ、スペックルノイズ等の点で、下記に示す課題をそれぞれに有している。
【0005】
例えば、ショートアークランプは高出力の点で優れているが、小スポットサイズ化についてはアーク長短縮の限界に直面しており、また、アーク安定動作に固有の課題( H. Moench, G. Derra, E. Fischer, X. Riederer, “Arc Stabilisation for Short-Arc Projection Lamps,” SID 2000 Digest, pp.84-87 (2000) )が存在する。
【0006】
また、可視光レーザを光源とする投射型ディスプレイシステムでは、大画面表示が可能であり、光源の単色性のために、広い色再現範囲を備え、高い色再現性実現のメリットが知られている。レーザディスプレイの光源として、ガスレーザ、高出力固体レーザ等が用いられ、三原色光でそれぞれ単色性に優れる光ビームが生成されるが、光ビーム発生装置に大きな消費電力を必要とし、光励起型光源装置に係るサイズの大型化等が問題点として指摘されている。
【0007】
さらに、映像のスクリーン投射の際に、レーザビーム固有の高いコヒーレンス(可干渉性)に起因するスペックルノイズについては、映像品質の低下要因として知られており、その解消は従来からの技術課題である。
【0008】
これまで、スペックルノイズ解消のアプローチとして、いくつかの方式が知られている(J.C. Dainty ed. , ”Laser Speckle and Related Phenomena,” Springer-Verlag, p.127 (1975) )。
【0009】
例えば、拡散板であるスクリーンを振動させる方式では、具体的な提案として、特開平03−040694号公報に提示された方法が挙げられる。この例では、拡散板の振動に表面超音波を利用しているので、スクリーンの側辺に超音波発生器を設置する必要が生じる。よって、ディスプレイ装置の構成が複雑になり、スクリーンの製作設置上の困難さやシステムコストの増加を招く虞が生じる(特に、大画面ディスプレイの場合には、そのデメリットがいっそう顕著になるものと予想される。)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
大画面表示等への適用において、各種の光源装置がそれぞれに抱える課題について、総合的に有効な解決策が講じられていないため、実用化に際して困難や不具合を伴うという問題がある。
【0011】
そこで、本願出願人は、半導体レーザ等による励起光ビームを導波路へ結合させ、導波路型利得媒体を励起するとともに波長変換後の放射光ビームを出力する光励起型発光素子及び当該素子を利用した光源装置を、既に特願2002−29434号にて提案しているが、このような光励起型光源装置では、エネルギー利用効率を高くすることが、均一な光出力を得るために望ましい。
【0012】
本発明は、光励起型光源装置において、励起光の導波路への結合効率を高めてエネルギー利用効率を向上させることを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る光励起型光源装置は、上記した課題を解決するために、利得領域を備える導波路型素子と、励起光ビームを放射するもので、光軸と直交し且つ互いに直交する2方向のうち、その一方向又は両方向におけるそれぞれの放射パターンの強度分布について単峰性を有する励起光源と、上記励起光ビームを、その光軸を含む平面に関して略対称に2分割するものであり、その2面が鏡面とされ該鏡面の境界線が上記励起光ビームの光軸に対して直交し上記励起光ビームの強度について光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布がそのピーク強度を中心に2等分されるように該境界線の方向が規定されている反射手段を有する光ビーム分割手段と、この光ビーム分割手段により分割された励起光ビームを上記導波路型素子の導波路に結合させるグレーティング結合器とを備え、上記ビーム分割手段により2分割された一方の光ビームには上記反射手段によって反射された後に上記結合器に到達し、他方の光ビームには上記反射手段によって反射されずに上記結合器に到達するものである。
【0014】
従って、本発明によれば、励起光ビームを分割して、それぞれのビームを結合器(グレーティング結合器又はプリズム結合器)により導波路型素子の導波路へと結合させることで、単一の励起光ビームを導波路へ結合する構成に比べて、結合効率を高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、利得領域(利得媒体を含む領域)を備える導波路型素子と、当該利得領域の励起光源(励起用光源)と、複数の光学素子とを用いて構成される光励起型光源装置に関するものであり、例えば、大画面表示装置や均一照明を必要とする各種装置への適用に好適である。
【0016】
図1は、本発明に係る光励起型光源装置1を応用した、投射型表示装置の構成例を示すものである。
【0017】
投射型表示装置は、下記に示す三つの主要部分から構成される。
【0018】
・光源部(Light Source Subsystem) 10
・光変調部(Spatial Light Modulation Subsystem) 20
・光合波走査部(Light Multiplexing and Scanning Subsystem) 30。
【0019】
光源部10は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)用の各光源モジュール(Light Source modules)10R、10G、10Bと、電源部(Power Supply)12を備えている。赤色、緑色、青色用の均一光源モジュール10R、10G、10Bは、電源部12から電力供給を受けることで、指向性のある、一定の光出力かつ均一化された光ビーム(Homogenized Light Beams)を生成する(図に示す赤色光ビーム11R、緑色光ビーム11G、青色光ビーム11Bを参照。)。
【0020】
尚、本発明に係る光励起型光源装置については、狭義の意味における光源部10に限らず、これを用いて画像表示や計測等を行うための各種装置が含まれる。
【0021】
生成された各光ビーム11R、11G、11Bは、光変調部20に入射し、そこに設けられた、赤色、緑色、青色用の空間光変調器20R、20G、20Bを用いて、赤色、緑色、青色用の映像色信号によりそれぞれ強度変調されて、赤色、緑色、青色の変調光ビーム21R、21G、21Bが生成される。ここで、空間光変調器20R、20G、20Bとしては、一次元空間変調素子、例えば、グレーティング・ライト・バルブ(GLV:Grating Light Valve)が用いられる。また、変調に用いるRGBの各色信号は、信号分離部22においてビデオ(映像)信号から得られる。
【0022】
各変調光ビーム21R、21G、21Bは、光合波走査部30に入射され、光合波器(Optical Multiplexer)31により、スクリーン40上での色ズレが生じないように合波され、RGB合波ビーム(RGB Multiplexed Light Beam)32が生成される。このRGB合波ビームは、ビーム走査装置(Beam Scanner)33により、走査光ビーム(Scanned Light Beam)34として投射され、これにより所望の映像がスクリーン40上に再生表示される。ここで、ビーム走査装置33には、例えば、ガルバノメータを用いる。また、ビーム走査装置33はビーム走査信号を受けて走査されるが、当該信号はビデオ信号の同期信号に基づく信号である(例えば、信号分離部22で分離された同期信号を用いる場合には、当該同期信号が信号分離部22からビーム走査装置33に送られる。)。
【0023】
尚、図1に示す例では、光変調部20において一次元空間変調素子を用いているが、これに限らず各種のシステム構成が可能である。例えば、光変調部20の空間光変調器として、二次元空間変調器である、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル等の液晶式デバイス(LCD)や、DMD(Digital Mirror Device)を用いた投射型ディスプレイシステムに適用することができる。その場合、図1中の光合波走査部30におけるビーム走査装置33は省略される。
【0024】
次に、本発明の要部をなす光源モジュールについて詳細に説明する。尚、各色の光源モジュール(10R、10G、10B)に係る基本構成については、波長の相違に起因する仕様の違いを除いて共通であるので、以下では、基本構成の共通部分に関して説明する。
【0025】
図2は、光源モジュールについてシステム構成図の一例を示すものである。
【0026】
光源モジュール50は、光励起型発光素子(Photo-pump Light Emitting System)51及びその光出力制御系(Light Output Control System)52から構成される。
【0027】
光励起型発光素子51は、下記に示す構成要素を備えている。
【0028】
・励起光源511
・光ビーム分割部512
・導波路型素子513、出力モニタ用受光部514と、これらを設置するための単一の平坦な基板(Base Plate)510
尚、以上の構成要素については、気密容器(Housing)515の内部に固定されて収納されている。
【0029】
また、本例において、導波路型素子(Planar Waveguide Device)513には、平面導波路基板(Planar Waveguide Substrate)を用いており、励起光源511として、光励起用LD(Pump Laser Diode)が用いられ、出力モニタ用受光部514には、励起光出力モニタ用PD(Monitor Photo Diode)が用いられている。
【0030】
励起光源511は、平面導波路基板上に成膜される有機薄膜利得媒体の最大吸収波長に概ね整合する発光波長で、高出力の励起光(Pump Light)「Lpmp」を発生する。つまり、後述の利得媒体に用いられる有機利得材料の吸収波長帯において高吸収断面積を有する波長領域に整合する波長帯で励起光を発光するものである。励起光源511については、例えば、主に窒化ガリウム(GaN)系半導体材料からなる半導体レーザを用い、その発光波長については実用上、ほぼ380乃至430nm(ナノメートル)の範囲であることが好ましく(組成を変えることにより波長設定が可能である。)、RGBの3原色について光源の共通化が可能である(同じ励起光源を用いて、波長変換により各色の発光波長を得ることができる。)。尚、励起光源511に対しては、後述するように、励起光ビームのコリメート用に光学素子(レンズ)が設けられる。
【0031】
光ビーム分割部(ビーム分割手段)512は、上記励起光Lpmpを分割して、高い結合効率を実現するために好適な強度プロファイルの光ビーム(Divided Pump Light)「Ldpl」を生成するために設けられており、複数の光学素子を用いて構成される。これは、当該光学素子により分割された励起光ビームを、結合器により導波路型素子513の導波路に対して効率良く結合させるためである。尚、結合器については、後述するように、グレーティング結合器やプリズム結合器が挙げられるが、例えば、グレーティング結合器を用いる場合には、光ビーム分割部512により分割された光ビームが、平面導波路基板上に設けたグレーティング結合器に対して、グレーティング周期、励起光発光波長により定まる、最も高い結合効率が得られる入射角度及び光ビーム強度プロファイルをもって入射される。
【0032】
導波路型素子513を構成する平面導波路基板(あるいは平板導波路基板)については、例えば、Si(シリコン)単結晶基板や水晶基板等からなる、光学的に平坦で、一辺が5mm〜30mmの方形平板が用いられる。そして、その一方の面上には、励起光及び所望の発光波長に対して、透明な材料からなる、三層スラブ型導波路構造を備えている。当該導波路構造については、高屈折率コア領域と、当該領域よりも低い屈折率をもって高屈折率コア領域の両側に位置されるクラッド領域からなる。コア領域(あるいはコア層)については、例えば、有機光吸収発光材料を含む、1.6〜1.7程度の高屈折率薄膜、あるいは、有機光吸収発光材料薄膜と、SiN(窒化シリコン)のような、より高い屈折率の誘電体薄膜からなる多層薄膜とされる。また、下部クラッド層については、より低屈折率な材料、たとえば、SiO2(二酸化シリコン)薄膜とされ、上部クラッド層は、空気(air)で構成される。
【0033】
各層の膜厚を調整した導波路構造により、複数の導波モードが形成されるが、特に、高い変換効率を実現するためには、各層の膜厚について、単一の伝搬モードとして基本モードのみが立つように調整されることが望ましい。例えば、上記の材料構成において、コア層として、膜厚200〜300nm(ナノメートル)の有機薄膜を用い、下部クラッド層として、膜厚1μm(ミクロン)のSiO2薄膜を用いることが望ましい。これにより、励起波長及び発光波長の光波に対して伝搬可能な単一モードを形成することができる。
【0034】
分割された光ビームLdplの各々は、上記のように結合器(図2には示さないが、後で詳述する。)を介して導波路型素子513の導波路に結合する。そして、高効率で基本導波モードに結合して、導波路を伝搬する伝搬光が、有機利得媒体に吸収され、その伝搬エネルギーの大部分は有機利得媒体中に蓄積される。蓄積されたエネルギーは、誘導放出により、所望の波長の放射光(Emission Light)「Lemis」として放射される(その一部がモニタ光「Lmon」として利用される。)。
【0035】
出力モニタ用受光部(受光素子を含む。)514は、放射光Lemisの検出を行うために設けられ、平面導波路基板から放射された発散する光成分の一部をその受光面が効率良く受光できるように配置されている。つまり、放射光の波長に対して受光感度を有しており、当該受光部を構成する励起光出力モニタ用PD(フォトダイオード)については、上記モニタ光Lmonの受光量に比例するモニタ光電流(Monitor Photo Current)「Smpc」を発生する。
【0036】
光出力制御系52を構成する光出力制御回路は、励起光源駆動回路521と制御信号処理回路522を備えている。
【0037】
制御信号処理回路522は、上記のモニタ光電流Smpcを、励起光パワーの設定値に対応する電流基準値と比較し、励起光パワーが一定になるように制御するものである。つまり、上記放射光Lemisの一部を出力モニタ用受光部514が受光することで発生する電気信号を、所定の設定値と比較するための比較回路を備えており、当該回路による比較結果に応じて励起光源511の駆動電流を制御するための制御信号を生成する(比較結果として得られる誤差信号のレベルがゼロになるように制御が行われる。)。本回路は、励起光量制御回路(Auto Power Controller)としての機能をもち、上記モニタ光電流Smpcを、励起光に係るパワー設定値に対応する電流基準値と比較して、励起光パワーが一定になるようにLD駆動回路制御信号(LD Driver Control Signal)「Scnt」を生成し、これを励起光源駆動回路521に対して出力する。
【0038】
励起光源駆動回路521は、上記制御信号Scntを受けて、励起光源511を制御するための回路であり、励起LD駆動回路(Pump LD Driver)としての機能を有する。つまり、上記制御信号Scntに基いて、励起LD駆動電流(LD Drive Current)に係る出力「Sdrv」を励起光源511に送出し、当該励起光源511から放射される励起光Lpmpの出力パワーが所望の一定値に保たれる(励起光源、光導波路型素子、光出力制御回路を含めたフィードバック制御系が形成される)。
【0039】
以上の回路は、励起光パワーを一定に保つことにより、所望の波長の放射光Lemisに係る出力パワーを一定値に制御するのに有用である。
【0040】
尚、パッケージングに関して、光励起型発光素子51を構成する各要素510乃至514については、気密容器515内に設置される。同容器は、放射光Lemisの出力ビームを外部に取り出すための、放射光の波長において透明な光学材料からなる薄板を窓材料として気密性を保持した(光学的な)開口部を備える。また、同容器(気密容器)は、励起光源511の駆動電流に係る上記Sdrvを供給するための複数の電流端子や、出力モニタ用受光部514からのモニタ光電流Smpcを取り出すための複数の電流端子を備えている。
【0041】
光励起型発光素子51については、一辺が概ね40mm〜50mm程度とされた方形の薄型パッケージに納められており、当該パッケージ(容器)については、水分や酸素を含まない、窒素ガス等の不活性なガスが注入されて封止される。
【0042】
次に、分割された光ビームによる励起光学系について説明する。尚、上記したように、分割後の光ビームについて導波路への結合のために必要な結合器に関して、グレーティング結合器を用いた構成形態と、プリズム結合器を用いた構成形態が挙げられるが、以下では、先ず、前者の構成形態について説明する。
【0043】
図3は、光ビーム分割部及び平面導波路基板の構成について一例を示した模式図である。
【0044】
光ビーム分割部512については、下記に示す光学的要素を用いて構成されている。
【0045】
・コリメート用の光学素子580
・二面が鏡面とされる反射手段581
・2つのプリズム582L、582R。
【0046】
本例では、励起光源511として、レーザダイオード(LD)が用いられており、そのLDチップ接合面が、図3の紙面に垂直となるように設置されている。尚、励起光源に関して、光軸と直交し、かつ、互いに直交する2方向のうち、その一方向の放射パターン又は両方向におけるそれぞれの放射パターンの強度分布(Intensity Profile of Pump Light)については、単峰性を有することが好ましく、本例では、少なくとも図3の紙面に平行な面内において、ほぼガウス型形状の強度分布をもって光ビームを放射する(図には、ガウシアン分布を概略的に示すグラフ「ga」を、励起光源511の右側に示しており、光軸に直交する面内での位置座標軸を横軸にとり、縦軸には強度をとって示している。)。
【0047】
励起光源511から放射された光ビームは、光学素子(単レンズ又はレンズ群)580を透過するが、当該素子580は、コリメーティングレンズ(Collimating Lens)の作用をもつので、透過した光は平行光となる。
【0048】
コリメート後の励起光ビームは、二面581L、581Rが鏡面とされる反射手段581によって2分割される。本例では、図3の紙面を含む切断面における形状が二等辺三角形状をなした、楔型反射鏡が用いられており、当該反射鏡は、上記光学素子580によって平行光とされた励起光ビームの光軸上に配置されている。そして、当該反射鏡のエッジ部、つまり、上記二面(鏡面581L、581R)の境界線が図3の紙面に垂直に延びるように設置される。
【0049】
反射手段581は、これに入射されるガウス型強度分布の励起光ビームを、二つの光ビーム(互いに対称な強度分布をもつビーム)に分割する役割を有する。尚、反射手段581として用いている楔型反射鏡については、励起光ビームの水平成分(紙面に対して垂直な成分)の拡がり幅より広い幅をもっており、励起光ビームをほぼ全量反射することができる。また、2つの鏡面581L、581Rでの損失を極力低減するために、これらの鏡面については、光学研磨された金属若しくは金属薄膜又は所定の波長において高反射率を備える誘電体多層膜コートされた光学材料を用いて形成することが好ましい。
【0050】
反射手段581において分割された各光ビームは、プリズム(Prism)582L、582Rによりそれぞれ反射される。つまり、反射手段581の二鏡面581L、581Rのうち、一方の鏡面581Lによる反射光が、図3の左側に位置する3角プリズム582Lにおいて2回反射されることで光路変更を受ける。また、他方の鏡面581Rによる反射光が、図3の右側に位置する3角プリズム582Rにおいて2回反射されることで光路変更を受ける。
【0051】
それから、それぞれの光ビームは、入射プリズム(Input Prism)585L、585Rを介して、導波路型素子513上に設けられた、グレーティング結合器583L、583Rの面上にそれぞれ入射する。
【0052】
尚、図3に示す導波路型素子513の上下関係については、前述した当該素子の説明とは反対になっており、導波路513aの表面側に形成されるグレーティング結合器583L、583Rや利得領域584については、図の下方に示し、また、導波路513aの裏面側に設けられる入射プリズム585L、585Rについては図の上方に示している。また、同図において、入射プリズム585Lが左側に配置されていて、その入射面(傾斜面)に対して上記プリズム582Rからの光線がほぼ垂直に入射され、また、入射プリズム585Rが右側に配置されていて、その入射面(傾斜面)に対して上記プリズム582Lからの光線がほぼ垂直に入射される。グレーティング結合器583L、583Rについては、図3において利得領域584の左側に583Lが位置され、利得領域584の右側に583Rが位置されている。
【0053】
このように、励起光源511による励起光ビームについては、その光軸を含む平面(図3では、紙面に直交する平面)に関して、概ね対称に2分割されるとともに、分割された光ビームを導波路へと結合させるにあたって、各光ビームがグレーティング結合器583L、583Rにそれぞれ入射する前に、それぞれのビーム光軸が互いに交差する。このような光軸の交差配置は、装置の小型化やコンパクト化にとって都合が良い。また、導波路基板上に形成される複数のグレーティング結合器を、利得領域584に係る放射光の光軸に関して概ね対称に配置することが好ましく、光軸の交差配置に対応し易い。尚、ビーム分割数については、2以上にしても良いが、構成の複雑化や部品点数の増加等を考慮した場合に、分割数は極力少ない方が望ましい。
【0054】
図3に示す角度「θi」は、グレーティング結合器583L、583Rへの入射角(Incident Angle)を表しており、当該入射角については、グレーティング結合器の格子周期と入射光波長、導波路の物理パラメータにより決定される、1ビーム結合条件に整合する。即ち、2ビーム結合では光の逃げ量が多くなるので、分割された光ビームが、導波モードのみと結合する1ビーム結合条件を満たすように入射角「θi」の値を規定することが好ましい。
【0055】
三層スラブ型導波路について、入射角の条件は、以下の式により与えられる。
【0056】
nc・k・sin θqc = ns・k・sin θqs
=βq=N・k + q・K
尚、各記号の意味は以下の通りである。
【0057】
・「q」=二次元導波路内に設けられた、格子定数「K」のグレ―ティング結合器に、導波光が入射したときに生じる、空間高調波の次数
・「k」=入射波の波数
・「θqc」=上部クラッド側(図3では基板下側)からの入射角
・「θqs」=下部クラッド側(図3では基板上側)からの入射角
・「nc」 =上部クラッド側の屈折率
・「ns」 =下部クラッド側の屈折率
・「βq」 =空間高調波のz方向伝搬定数(=N・k+q・Kで与えられる。)
・「N」=等価屈折率。
【0058】
例えば、上部クラッドを空気(nc=1.0)層とし、下部クラッドをSiO2(ns=1.45)層として、SiO2側からの1ビーム結合を実施する場合、励起光源の波長を405nm、等価屈折率をN=1.5とすると、次数「q=−1」の後進波結合となり、格子周期は147nm、入射角度(θqs)は60゜(degree)となる(上記θiをこの値に設定すれば良い。)。
【0059】
尚、分割された光ビームに係る強度分布については、そのピーク位置が、上記グレーティング結合器において利得領域に近い側の端部(エッジ)の位置とほぼ一致するように規定することが好ましい。
【0060】
上記のように、光ビーム分割部512により、励起光ビームがその光軸を含む平面に関して、概ね対称に2分割されるが、その際、グラフgaで示すような、単峰性の強度分布をもつ場合に、そのピーク強度を中心とし強度を2等分し、それぞれ半分ずつの強度分布を有するビームを各入射プリズムからグレーティング結合器にそれぞれ入射すると結合効率の向上にとって有効である。つまり、上記した反射手段581における鏡面581L、581Rについては、両者の境界線が、励起光ビームの光軸に対して直交し、かつ、当該励起光ビームに係る強度分布(光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布)が、そのピーク強度を中心に2等分されるように境界線の方向が規定されている。尚、図3では、入射プリズム585L、585Rの枠内に、分割された強度分布(Intensity Profile of Divided Pump Light)の概略的なグラフgaL、gaRをそれぞれ示している。グラフgaLが585L及び583Lへの入射ビームに係る強度分布を示し、上記グラフgaの左半部に対応しており、グラフgaRが585R及び583Rへの入射ビームに係る強度分布を示し、上記グラフgaの右半部に対応する。
【0061】
これら入射ビームに関して、分割された強度分布gaL、gaRにおけるピーク位置が、グレーティング結合器583L、583Rにおける、利得媒体584から最も近い端部(Nearest Edge of Grating Coupler)555L、555Rに対して整合するように入射する(図3では、各グレーティング結合器への入射光線の位置と、555L、555Rの位置との差「d」を、故意に長く示すことで見易くしているが、この差が小さいこと、つまり、強度ピークの位置が555L、555Rの位置にほぼ一致することが望ましい。)。
【0062】
このとき、入射光が導波路へ結合する際の、入射結合効率(これを「η」と記す。)は、下式に示すように、グレーティングカプラの理論により、出力結合の対応するビームへのパワー分配比「Pi q」と、重なり積分との積で与えられる(西原浩 他、「光集積回路」、オーム社、1985年)。
【0063】
【数1】
【0064】
尚、ここで、パワー分配比「Pi q」に付した下付き添え字「q」は、二次元導波路内に設けられた、格子定数「K」のグレ―ティングカプラ(結合器)に、所定方向(z方向)へ伝搬する導波光が入射したときに生じる、空間高調波の次数を示している。また、上付き添え字「i」は、上部クラッド、あるいは下部クラッド側への放射モードを表わす。
【0065】
関数g(z)は、グレーティング結合器による出力結合時の放射ビーム振幅分布を表し、関数h(z)は、グレーティング結合器上の入射光強度分布を表す。
【0066】
図4は、グレーティング結合器へ入射する、分割された光ビームの振幅分布、及びグレーティング結合器による放射ビームの振幅分布について例示したグラフ図であり、横軸に上記z方向の位置(光励起型素子におけるグレーティング結合器の形成領域の長さを任意単位で表したものに相当し、g(z)やh(z)のピーク位置を原点に設定している。)をとり、縦軸に強度(ピーク値を1とする相対値で示す。)をとって示したものである。
【0067】
図示するように、g(z)については、z値の増加に伴って指数関数的に減少する関数で表わされ、また、h(z)は上記グラフgaRに相当する、ガウス型分布の右半部で表される(尚、上記グラフgaRに相当する左側部分については、対称性を考慮すると、図4に示すh(z)のグラフをz=0の軸に関して折り返す操作(鏡像操作)により得られる分布に相当する。)。
【0068】
結合条件を1ビーム結合とすると、上記[数1]式において、「Pi q=1」となり、よって、入射結合効率ηは、重なり積分の値により決定される。つまり、重なり積分の値は、g(z)とh(z)のと積の積分値を2乗したものとして表される分子を、g(z)やh(z)の、各2乗値の積分値(各パワーに相当する。)の積として表される分母で割ることで計算される。明らかに、h(z)とg(z)との間に相似関係がある場合には、重なり積分の値が1となり、最も効率の高い状態(入射結合効率η=1)が実現される。但し、現実には、z値の増加につれて指数関数的に減少する振幅分布g(z)に対して入射光の振幅分布を整形することは、技術的に複雑となり、容易でない。
【0069】
実用的な励起光源として、レーザダイオード光源を利用する場合において、ガウス型の強度分布形状を示す光源を想定して、当該光源が放射する光ビームを直接(分割なしに)、グレーティング結合器に入射させる場合、入射結合効率ηは、最大0.8(80%)に達することが分かっている。
【0070】
従って、これによりも、さらに入射結合効率ηを高めるには、単峰性をもつ強度分布、例えば、ガウス型強度分布を、そのピークにて等分に分割することによって、図4に示すh(z)のグラフ形状が、g(z)のグラフ形状に対してほぼ重なるようにする(重なり合う部分の面積が大きくなるようにする)。そして、強度のピーク位置において2等分された強度分布の光ビームを、それぞれに対応するグレーティング結合器に入射すれば良い。この場合、両方のビームを合わせて、さらに、10%程度の入射結合効率の向上が全体として可能である(η=0.9、つまり9割程度に効率を上げることができる。)。
【0071】
尚、本発明に係る励起光ビームの強度分布については、単峰性をもつ分布が好ましく(例えば、双峰性では、ビーム中心部の強度が低いので入射結合効率が悪化する。)、ガウス型分布(半値幅の設定や調整によりビーム径を変更できることや、対称性等を考慮した場合に、取り扱いが容易である。)を取りあげて説明したが、勿論、ガウス型分布のみに限定される訳ではない。
【0072】
また、図3では、三層スラブ型導波路構造を例示したので、当該構造について、補足説明すると、例えば、Si単結晶基板上に、SiO2薄膜を下部クラッド層として形成し、空気(air)を上部クラッド層とする(図3では、上下の関係を逆転させて考える必要がある。)。また、コア層については、例えば、厚さ200nm程度のSiN薄膜と、その上面に有機光吸収発光材料薄膜を成膜して、後者は利得領域に形成する。SiO2薄膜側からの後進波について1ビーム結合とするために、グレーティング結合器583L、583Rの直下にあたるSi基板領域を除去し、そこに、入射プリズム585L、585Rを基板の裏面側から接着する。入射プリズム585L、585Rについては、励起光の波長領域にて透明であって、かつ、屈折率がSiO2に整合する光学材料を用いて形成する。そして、それらの入射面に対して入射ビームの光軸が垂直をなすように設定し、また、励起光の波長領域に対して無反射コーティングを施している。
【0073】
図5は、利得領域を備える導波路型素子513として、平面導波路素子の構成例を示す模式図である。
【0074】
本例では、利得領域584を示す、ほぼ方形をした枠内に利得媒体が配置されており、その左右両側に一対のグレーティング結合器583L、583Rがそれぞれ配置された構成を有する。つまり、上記した1ビーム結合条件の仕様を満たす、グレーティング結合器583L、583Rが、利得領域584を挟んで対称的に配置されている。
【0075】
放出光反射器(Grating Reflector for Emission Light)586は、利得領域584における一辺(下辺)において、ほぼ接近して設けられている。つまり、利得領域584の外縁を示す矩形の構成辺、第1辺(左辺)が、グレーティング結合器583Lに接近し、当該矩形の第2辺(右辺)がグレーティング結合器583Rに接近しており、第3辺(下辺)が放出光反射器586に接近している。
【0076】
そして、波長選択されて増幅された光は、利得領域584に係る矩形の第4辺(上辺)を通過して、平面導波路素子の出射端部(output edge)587から放射される。
【0077】
図5において、グレーティング結合器583L、583Rの裏側に上記した入射プリズム585L、585Rがそれぞれ配置されているので、図6に示すように、それらを介してグレーティング結合器に入射された後、導波モードに結合した励起光は、利得媒体が形成された利得領域584に入射して、伝搬とともに利得媒体を励起して減衰する。励起された利得媒体は、蛍光、あるいは、リン光を放出して基底状態に遷移して、再び励起光により励起され、同様に吸収及び発光過程を繰り返す。そして、放出された蛍光、あるいは、リン光の一部は、導波路を伝搬して、放出光反射器586により、所定の波長をもって選択的に反射され、励起された利得領域584を再び伝搬する。その際に、誘導放出により選択した波長成分が所定の強度にまで増幅されて、導波路の出射端部587から放射される。その出射光は、著しく低減されたコヒーレンス性と、光増幅による高密度パワーを備えることになる(これが、図1の光変調部20へと入射される。)。
【0078】
尚、励起光源511からの発光波長λpの励起光を、結合器から導波路へと結合させ、利得媒体を励起させる場合、当該利得媒体については、励起発光波長λp付近に吸収スペクトルのピークを持ち、放出光の中心波長λemis 付近に、発光スペクトルのピークを持つ。
【0079】
また、利得領域584において増幅された放出光の後進波成分は、放出光反射器586に入射されるが、当該放出光反射器の反射スペクトルについては、波長λemis を含む領域とされ、中心波長λemisでの反射率がほぼ1である。放出光反射器586に入射した後進波成分は、その波長幅の広い放出スペクトルから、特定の帯域を含む狭い波長成分が選択的に反射されて、利得領域584に再び戻され、前進波成分として導波路内を出射端面に向かって伝搬する。
【0080】
以上のように、励起波長λpに対して波長変換された光、つまり、λemisに中心波長をもつ、放射光を得ることができ、しかも、その際にはコア層に含まれる有機材料の選択等によって比較的自由な設計が可能である。
【0081】
尚、図3では、2つの鏡面を有する反射手段581と、2つのプリズム582L、582Rを用いて光ビーム分割部512を構成した例を示したが、2つの反射手段だけを用いて光ビーム分割部を構成した変形例を図7に示す。尚、この変形例によれば、分割光学系の構成を簡略化することができる。
【0082】
図7において、励起光源511には、LD(レーザダイオード)が用いられ、そのLDチップ接合面が、図の紙面に垂直となるように設置されている。そして、励起光源511により放射されるビームの強度については、少なくとも図の紙面に平行な面内で、ほぼガウス型形状の強度分布(Intensity Profile of Pump Light)とされ、放射された光ビームは、光学素子(コリメーティングレンズの作用をもつ)580を透過して平行光とされる。
【0083】
反射鏡581aは、その直線状の一端部(図の右端)が、平行光とされた励起光ビームの光軸に一致するように設置される。
【0084】
反射手段581を構成する反射鏡581aは、入射したガウス型強度分布をもつ励起光ビームについて、そのピーク強度を中心に二等分して、一方の光を反射鏡581bに向けて反射させるとともに、他方の光についてはこれを直進させて、互いに対称な強度分布をもつ、二つの光ビームに分割する。そして、直進した分割光ビームは、直接、入射プリズム585Rを介して、グレーティング結合器583Rに角度θiで入射する。また、反射鏡581aにおいて反射された方の分割光ビームは、反射鏡581bで反射されて、入射プリズム585Lを介して、グレーティング結合器583Lに角度θiで入射する。
【0085】
このように、本例において、励起光ビームが反射手段(本例では反射鏡581a)によって2分割されるとともに、当該励起光ビームの強度について、光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布が、そのピーク強度を中心に2等分されることになる。そして、その一方の光ビームについては反射手段(本例では反射鏡581b)での反射の後に、一方のグレーティング結合器583Lに到達し、他方の光ビームについては当該反射手段によって反射されずにグレーティング結合器583Rに到達する。これによって、部品点数の減少及びコストの削減に適した、より簡単な構成で分割光学系を構築できる。
【0086】
次に、結合器として、プリズム結合器を用いた構成形態について、図8乃至図12に従って説明する。
【0087】
本形態において、導波路型素子を構成する平面導波路基板上には、分割された励起光を導波路へ高効率に結合するために、プリズム結合器を設けている点が、前記した構成との相違点である。即ち、分割された励起光は、複数のプリズム結合器により、高効率に基本導波モードに結合して、導波路を伝搬する。そして、伝搬光は、有機利得媒体に吸収され、その伝搬エネルギーの大部分は有機利得媒体中に蓄積される。蓄積されたエネルギーは、誘導放出により、最終的には所定波長の放射として放射される。
【0088】
図8は、分割光ビームによる励起光学系の構成例を概略的に示す模式図である。
【0089】
励起光源511には、レーザダイオード(LD)が用いられ、そのLDチップ接合面が、図8の紙面に垂直となるように設置されている。尚、励起光源511による放射ビームの強度は、少なくとも図8の紙面に平行な面内で、放射角度について、ほぼガウス型強度分布とされている(図には、ガウシアン分布を概略的に示すグラフ「ga」を、励起光源511の右上に示しており、光軸に直交する面内での位置座標軸を横軸にとり、縦軸には強度をとって示している。)。
【0090】
放射された励起光ビームは、光学素子(コリメーティングレンズの作用をもつ)580により平行光とされて、伝達プリズム589に入射する。
【0091】
本例では、プリズム結合器588として複数の入力結合プリズム(Input Coupling Prism)588a、588bが設けられており、光ビーム分割部512として、伝達プリズム589と、励起光ビームの分割手段590が設けられている。つまり、分割手段590によって2分割された励起光ビームの一方が、入力結合プリズム588aを介して、導波路型素子513の導波路513aへと結合され、分割された励起光ビームの他方が、伝達プリズム589内で複数回反射されてから入力結合プリズム588bを介して、導波路型素子513の導波路513aへと結合される構成を備えている。
【0092】
伝達プリズム589は、これに入射される励起光の一部を分割手段590へと導く役目と、分割された励起光ビームを内部で反射させて、入力結合プリズム588bに伝搬する役目を有している。そのために、伝達プリズム589に入射する励起光、少なくともそのP偏光成分に対して、入射領域及び複数の出射領域、並びに当該プリズム内を伝搬する光に対する複数の反射領域を備えることで、伝達プリズム589の素子構造が複雑化しないように配慮すべきである。例えば、図9に示すような多角形の断面形状を有しており、1箇所の入射領域589iと、4箇所の反射領域589r1乃至589r4、2箇所の出射領域589o1、589o2を含む面で構成される。
【0093】
光学素子580によって平行光化された光ビーム(Collimated Beam)Lcbは、伝達プリズム589の入射領域589iを構成する入射面(Incident Plane)に入射する。この入射面は、光ビームLcbの光軸に対してほぼ直交するように配置されている。尚、入射面には、少なくとも入射する励起光波長において、高透過率の無反射コートが施されていることが好ましい。これは、損失を低減するためであり、入射面から損失なく伝達プリズム589の内部に入射された光ビームは、図8のA部拡大図(大円枠内参照)や図10に示すように、当該プリズムの底面(Bottom Plane)589bに到達する。
【0094】
この底面589bは反射領域589r1及び出射領域589o1、589o2を有しており、その表面(入力結合プリズム588a側の面)には、透過膜や反射膜を形成することで、励起光ビームに対する透過面及び反射面を有している。例えば、透過面として、少なくとも入射する励起光波長において高透過率の無反射コート領域(Anti-Reflection Coating Region)590arを形成し、また、反射面として、少なくとも入射する励起光波長において高反射率の反射コート領域(High Reflection Coating Region)590hrを形成する。尚、これらの領域は、図10に示すように、直線状の境界(Boundary)590bにて互いに接しており、両者は図8、図9の紙面に垂直な方向に延びる短冊(長方形)状の形状をもって各領域にコーティング処理が施されている。尚、直線状とされる境界590bは、伝達プリズム589の入射面589iと底面589bとがなす稜辺に対して平行であり、境界線で透過面と反射面が区分されている。これによって、励起光源511について、その発光領域の奥行きが大きいタイプ、例えば、ブロードエリア型レーザダイオードや、マルチビームレーザダイオード等を用いる場合に、アライメントが容易になる。
【0095】
また、上記した透過面と反射面にそれぞれ対応する、領域590ar、590hrを用いて励起光ビームの分割手段590が構成されるが、透過面の透過率については、励起光波長のP偏光成分に対して高くされ、また、反射面の反射率については、励起光波長のP偏光成分に対して高くされていることが好ましい。その理由は、透過膜や反射膜の成膜条件が緩和され、製作コストを低減できるからである。そして、性能やコスト面からは、透過面に誘電体多層膜を用い、反射面には金属薄膜又は誘電体多層膜を用いることが好ましい。
【0096】
伝達プリズム589の底面589bに達した光ビームは、その強度分布のピーク位置が境界590bの位置に一致するように、高透過率の無反射コート領域590ar及び高反射率の反射コート領域590hrに入射する。
【0097】
入射した光ビームのうち、グラフgaの左側半分に相当する強度分布をもつ光は、そのまま直進して無反射コート領域590arを透過し、入力結合プリズム588aに入射する。
【0098】
入力結合プリズム588aや588bは四角柱状をなし、図8、図9の紙面に平行な面で切断した断面形状において、上面と下面が平行な四角形(あるいは台形)をなしている。そして、図8、図9の紙面に対して垂直な方向に延びる各稜線については、伝達プリズム589において当該方向に延びる稜線と平行な関係をもって設置される。
【0099】
入力結合プリズム588aに入射した光ビームは、当該プリズムの底面に到達するが、この到達した光ビームについては、上記グラフgaのうち左半部に相当する強度分布(Intensity Profile of Divided Pump Light)「gaL」を示す。結合効率を高めるには、当該光ビームの強度分布に係るピーク位置(空間的位置)が、入力結合プリズム588aの底面において、導波路型素子513の利得領域513eに対して最も直近な稜(Ridge)588agの位置に一致するように調整する。
【0100】
本例において、導波路型素子513は、基板(Substrate)513bと、その上に設けられた導波路(Wave guide)513aからなる。導波路513aは、基板513bの上に、下部クラッド層(Cladding Layer)513d、コア層(Core Layer)513cをこの順序で形成し、さらに上層の上部クラッド層については、空気(air)層で構成する。例えば、Si単結晶基板を用い、その基板上において、下部クラッド層513dとして、SiO2薄膜を用い、また、コア層513cとして、屈折率が1.7程度の有機光学材料の薄膜を用いる。尚、上部クラッド層については、励起光、放射光に対して透明で、コア層513cよりも屈折率の小さい光学材料を用いても良い。一般に、導波路には、複数の導波モードが成立するが、特に、高いエネルギー変換効率を実現するためには、各層の膜厚を調整して、基本モードのみが単一の伝搬モードとして成立するように設計することが望ましい。そのためには、導波路513aのカットオフ波長が、発光波長より長波長側に位置するように、導波路パラメータを設定することが望ましい。
【0101】
利得領域(Gain Region)513eについては、入力結合プリズム588aと588bとの間に挟まれるコア層513cの領域において、励起光を高効率に吸収し、かつ所望の波長の放射光を放射する、有機材料を用いるとともに、当該有機材料をコア層にドーピングするか、あるいは薄膜層として挿入することで形成する。
【0102】
入力結合プリズム588aは、その底面と導波路型素子513上に形成された光導波路513aとが、極薄の媒質、例えば、空気層を挟むように設置する(このことは、入力結合プリズム588bについても同様であり、後述するように、本例では空気層を形成するためにスペーサを用いている。)。尚、入力結合プリズムに用いる光学材料の、空気に対する臨界角よりも、大きな入射角で入力結合プリズムの底面に励起光ビームを入射するときに生じるエバネセント成分が、導波路領域に達すると、このとき、入射光ビームが、入力結合プリズムを介した位相整合により、導波路型素子513上に設けられた光導波路の導波モードと効率よく結合し、これによって励起光エネルギーを導波モードに移行させることができる。
【0103】
伝達プリズム589に入射した光ビームのうち、グラフgaの右側半分に相当する強度分布をもつ光については、上記した高反射率の反射コート領域590hrで反射される。よって、この光は入力結合プリズム588aに入射されることなく、伝達プリズム589の内部を進む反射光ビーム(Reflected Beam)Lrbとなる。そして、当該反射光ビームについては、引き続いて、上記反射領域589r2、589r3(図9参照)をそれぞれに構成する反射面(Reflection Plane)によって反射され、さらに、反射領域589r4において高反射率の反射コート領域(High Reflection Coating Region)591として形成された反射面で反射されてから、伝達プリズム589の底面589b(入力結合プリズム588b側の面)に到達する。
【0104】
尚、伝達プリズム589内を伝搬する励起光が、各反射領域(励起光ビームを分割するための反射領域を除く。)を構成する反射面に入射するとき、その入射角については、当該伝達プリズムを構成する光学材料及び当該伝達プリズムの外部領域の屈折率によって規定される臨界角より大きくすることによって、全反射を利用することができるので、高反射率のコーティング処理が不要となり、コスト面で有利である。例えば、伝達プリズムに係る光学材料の屈折率を1.45とし、当該プリズムの外部を空気(屈折率1)とした場合に、全反射の臨界角が43.6゜となるので、入射角度が、これよりも大きな値をもつように規定すれば良い。
【0105】
また、伝達プリズム589の反射領域については、全反射に限らず、当該領域を構成する反射面に、金属薄膜又は誘電体多層膜が用いることで、高性能化や低コスト化を図るようにしても構わない。図9に示す例では、反射領域589r4において、高反射率の反射コート領域を得るために、プリズムの外表面に反射膜を形成している。
【0106】
本例では、入力結合プリズム588a、588bに対する複数の出射領域589o1、589o2が、伝達プリズム589における同一面(底面589b)上に設けられているが、これは、光学的に平坦な研磨面の数を削減することで、当該プリズムの製作コストを低減するためである。同様の考え方を適用して、伝達プリズムにおいて、励起光ビームの入射面と、当該プリズムの内部を伝搬する励起光ビームを反射する、少なくとも一つの反射面とが当該プリズムの同一面上に設けられた構成を用いることができる。
【0107】
反射領域589r4で反射されてから伝達プリズム589の底面589bに達した反射光ビームは、無反射コート領域592を透過して、入力結合プリズム588bに入射する。
【0108】
この入力結合プリズム588bに入射した光ビームは、当該プリズムの底面に到達するが、この到達した光ビームについては、上記グラフgaのうち右半部に相当する強度分布(Intensity Profile of Divided Pump Light)「gaR」を示す。結合効率を高めるには、当該光ビームの強度分布に係るピーク位置(空間的位置)が、入力結合プリズム588bの底面において、平面導波路基板の利得領域513eに対して最も直近な稜(Ridge)588bgの位置に一致するように調整する。
【0109】
このように、複数のプリズム結合器(588a、588b)を設けるとともに、分割された光ビームに係る強度分布のピーク位置が、各プリズム結合器において利得領域に近い側の端部(エッジ)の位置とほぼ一致するように配置し、関係する光学的要素の位置関係を設定することが好ましい。
【0110】
入力結合プリズム588bは、入力結合プリズム588aと同様に、底面が、導波路型素子513上に設けられた導波路513aと、プリズム入力結合に適する微小な距離を隔てて配置される。つまり、入力結合プリズム588bの底面と、コア層513c、あるいは導波路型素子の上面の間に、プリズム入力結合に好適な距離を保持するために、必要な厚さのスペーサが挿入される。
【0111】
図11は、平面導波路素子の構成例を模式的に示した概略図であり、伝達プリズム589を取り去った状態で、平面導波路基板に直交する方向から見たものである。
【0112】
入力結合プリズム588a、588bは、ほぼ方形状をなした利得領域513eを挟んで、互いに対向する位置関係をもって配置されている。つまり、一方の入力結合プリズム588aが、利得領域513eの外縁を示す四角形の第一辺の直ぐ左側に位置され、他方の入力結合プリズム588bが利得領域513eの外縁を示す四角形の第二辺(上記第一辺に対して平行な辺)の直ぐ右側に位置されている。そして、これらは、導波路との間に微小な間隔を保持するためのスペーサ593、593、…を介して平面導波路基板上に設置される。図示のように、各スペーサは入力結合プリズムの長手方向における両端部にそれぞれ配置されており、図の大円枠内に拡大して示すように、入力結合プリズムの底面(スペーサ593との接触面)と、導波路との間に、「δ」で示す僅かな間隙(本例では空気間隙)が形成される。
【0113】
放出光反射器586は、利得領域513eの外縁を示す四角形の第三辺に接近して設けられている。この放出光反射器586は、利得媒体の分子から放出され導波路を伝搬する光ビームを、例えば、導波路に光学的に結合するブラッグ反射器により、波長選択して反射し、所定の波長成分のみを利得領域513eに戻す。その結果、放出光反射器586で波長選択的に反射された光ビーム成分は、励起光吸収により、反転分布が形成された利得領域513eを伝搬する過程で、誘導放出により増幅される。その後、増幅された所定波長の光ビームは、利得領域513eの外縁を示す四角形の第四辺(上記第三辺に対して平行な辺)の部分を通過して、導波路の出射端部(Emission Edge)587から、上記した光変調部20へ向けて放射される。その出射光は、誘導放出による光増幅と、共振器を用いない平面導波路素子構造により、高密度パワーと、著しく低減されたコヒーレンス性を備えることになる。
【0114】
上記のように、プリズム結合器である、複数の入力結合プリズム588a、588bについては、導波路基板上で利得領域513eに係る放射光の光軸に関して概ね対称に配置した構成を有し、分割された励起光ビームが、各プリズム結合器を介して導波路へと結合されることになるが、ここで、プリズム入力結合について説明する。
【0115】
分割された二つの入射光ビームは、高屈折率の入力結合プリズム588a、588bを介して、導波路型素子513上の光導波路513aの導波モードと高効率に結合し、これにより励起光パワーを導波光に移行させることができる。
【0116】
入射光ビームの入力結合プリズムの底面への入射角を「θ」とすると、入射光の導波路に沿う方向の伝搬定数は、「np・k0・sinθ」で与えられる。ここで、「np」は入力結合プリズムの屈折率、「k0」は励起光の波数である。この値が、導波路型素子の導波モードの伝搬定数「k0・N」(「N」は、導波モードの等価屈折率を示す。)に整合するとき、入力結合プリズムの底面から低屈折率の媒質(本例では空気)側にしみ出した励起光のエバネセント場が導波モードに結合して、励起光パワーが導波光に移動する。
【0117】
このとき、入射光が導波路へ結合する際の、入射結合効率ηは、出力結合の対応するビームへのパワー分配比「Pi q」と重なり積分との積で与えられ、前記[数1]式において、Pi q=1とおいた式で表される。
【0118】
但し、ここで、関数「g(z)」は、プリズム結合器による出力結合時の放射ビーム振幅分布を表し、また、関数「h(z)」は、プリズム結合器への入射光強度分布を表す。つまり、本例において、図4は、伝達プリズムの底面において分割された光ビームの振幅分布h(z)及びプリズム結合器による出力放射ビームの振幅分布g(z)を示すことになり、「z」はプリズム結合器に係る位置座標あるいは距離を任意単位で表す(強度ピークの位置を原点に選んでいる。)。
【0119】
尚、g(z)はz値の増加とともに減少する指数関数「exp(−αr・z) で表わされる。ここで、「αr」は放射損失係数である。
【0120】
本例でも、h(z)とg(z)とが相似関係のときに、重なり積分の値が1となり、従って、入射結合効率ηとして1が得られることになるが、指数関数的に減少する振幅分布に対して入射光の振幅分布を整形することは、光学系が複雑になり、技術的に容易でない。
【0121】
一方、実用的励起光源として、レーザダイオード光源を利用することは、光源装置の小型化、消費電力低減、低コスト化、信頼性向上の点から好ましく、ガウス型の強度分布形状を示す光ビームを放射する光源を使用することができる。
【0122】
入射結合効率ηを高めるには、例えば、ガウス型強度分布を、そのピーク強度の位置にて等分に分割して、それぞれ光ビームを用いて入力結合の最適化を行うと、全体として、0.9(90%)程度にまで入射結合効率を高めることが可能である(これは、上記の入射結合効率ηの式による計算から分かる。)。
【0123】
例えば、励起光の波長を405nm、導波路パラメータとして、上部クラッド層の屈折率を1.0、下部クラッド層の屈折率を1.45、コア層の屈折率を1.7として、コア層の厚さを170nmとすると、基本導波モードの伝搬定数Nは、1.5616となる。入力結合プリズムの屈折率npを1.80とすると、励起光ビームの入射角は60.18°なる。また、入力結合プリズムの底面と導波路との間隔(δ)を200nmとしたときの放射損失係数αrは、0.68mm-1となる。
【0124】
分割された光ビームのパワーが、プリズム底面上で「2/αr」程度の範囲に分布するようにビーム径を調整することにより、当該分割された2本の光ビームの総合による結合効率が90%以上に向上するという計算結果が得られる。
【0125】
このように、複数のプリズム結合器を用いた構成形態では、励起光ビームの強度について、光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布が、そのピーク強度を中心に2等分されるように、分割手段を設けること、そして、分割された2つの光ビームのうち、その一方のビームについては、伝達プリズムに形成された反射領域において反射された後に、一方の入力結合プリズムに到達し、また、他方の光ビームについては分割手段の透過面を透過してから入力結合プリズムに直接到達するように構成することが、エネルギー利用効率の向上にとって好ましい。
【0126】
プリズム結合器を透過して導波モードに結合した励起光は、導波路513aに設けられた利得領域513eを伝搬しつつ、利得媒体を励起して減衰する。励起された利得媒体分子は、吸収した励起パワーを、蛍光、あるいはリン光として放出して基底状態に遷移する。この吸収発光過程により、導波路に結合した励起光を、所望の波長を含む光ビームに変換する。利得媒体から放出された光ビームの一部は、導波路513aを伝搬して、放出光反射器586(図11参照)に向かう。放出光反射器586は、伝搬する発光ビームのブロードなスペクトルから所定の波長成分を選択的に反射して、励起されて反転分布が形成された利得領域513eに戻す。選択された波長成分は、誘導放出により励起された利得媒体からエネルギーを引き出して、所望の強度にまで増幅されて、導波路の出射端部587から外部に放射されることになる。
【0127】
尚、上記に示した例では、伝達プリズムにおいて、内部の反射領域と、出射領域又は入射領域とが、同一平面上に形成されていない構成を示したが、これに限らず、例えば、複数の反射領域を構成する反射面のうち、ある反射面を、複数の出射領域と同一面上に設けた構成でも良い。
【0128】
図12は、光ビームの分割に係る光学系について変形例を示したものである。
【0129】
この変形例では、光ビームの伝達プリズム589Aへの入出力及び反射に関与する光学的に平坦な領域の数が4面からなるプリズム構造を示している。つまり、入射領域589iについて1面、2つの反射領域589r2、589r4についてそれぞれ1面、2つの出射領域589o1、589o2及び2つの反射領域589r1、589r3について1面とされ、合計4面が伝達プリズム589Aにおいて利用される。
【0130】
入射領域589iから入射される励起光のうち、高反射率の反射コート処理が施された反射領域589r1において反射された光は、反射領域589r2、589r3をこの順で反射(全反射)される。
【0131】
伝達プリズム589Aの内部を進む光ビームについて、その反射回数は4回であり、図8、図9に示す例と同数であるが、伝達プリズム589Aの底面589bを反射面として利用している点で相違する(図8、図9の例では、伝達プリズム589の底面を出射領域としてしか利用していない。但し、反射領域589r1は除く。)。つまり、図8、図9の構成との比較において、伝達プリズムを構成する光学的に平坦な平面の数が5面であったものが、本例では一面少なくなり、4面となる。これにより、高い角度精度、平面精度が要求される、プリズムの加工コストを低減する効果が得られる。
【0132】
尚、図8、図9や図12に示されるように、プリズムによる分割光学系を採用する場合の利点として、光軸調整の容易さが挙げられる。即ち、断面形状が多角形状のプリズムを用いて構成した分割光学系では、それぞれの分割光ビームが入力結合プリズムを介して、導波路へ結合する際の入射位置間の距離を、励起光ビームの入射位置の変動に依存せず、常に一定に保つことができるという特徴をもつため、光軸調整が容易になる。
【0133】
また、グレーティング結合器やプリズム結合器の如何に関わらず、励起光源としては、単一又は複数のエミッタを有するレーザダイオードを用いることが好ましく、特に、複数のエミッタを有する場合には、照射範囲や光量の増加にとって有効である。尚、レーザダイオードのエミッタが、発光領域幅の大きいブロードエリア構造を有する場合には、レーザダイオードの電力効率が上がるので、効率化の面で好ましい。
【0134】
しかして、以上に説明した構成を、例えば、映像表示装置等に適用することにより、例えば、下記に示す利点が得られる。
【0135】
・線状発光領域からの均一な光出力を得ることができること(利得領域の両側からの同時励起、つまり、図5や図11の構成では左右の各方向からの同時励起を行うことで、より広い幅の利得媒体を均一に励起化することができることによる。)。
【0136】
・高光出力が得られるので、ディスプレイ映像の高輝度化や、スクリーンサイズの大型化にとって有利であること(高効率の波長変換材料や、高出力及び高効率の励起光源の採用による。)。
【0137】
・高指向性放射光によって、光利用効率の向上(光学的結合損失の低減)を実現できること(導波路内に閉じ込めた伝搬光の放射による、放射光ビームの指向性が向上する。)。
【0138】
・線状発光領域が得られ、光利用効率が向上すること(GLV等の、一次元空間変調素子の場合であり、伝搬光の薄膜導波路内への閉じ込めによる。)。
【0139】
・安価な利得材料、少ない部品点数で済み、コスト低減が可能であること(つまり、低コストの有機利得材料を利用できること、及び光導波路への機能集積化を実現できることによる。)。
【0140】
・筐体の小型化、軽量化によって、設置場所の制約が緩和され、設置自由度を拡大できること(光導波路型素子、励起光源、モニタ用受光素子等、構成部品の集積化や小型化による。)。
【0141】
・放射光出力の安定化により、映像表示品質が向上すること(放射光出力モニタ用受光素子が出力する受光電流に基づく、光励起用LD光源の駆動電流へのフィードバック制御によるものである。)。
【0142】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1に係る発明によれば、励起光ビームを分割し、それぞれのビームについて結合器を用いて導波路型素子の導波路へと結合させることで、単一の励起光ビームを導波路へ結合する構成に比べて、結合効率を高めることができる。従って、エネルギー利用効率が高くなり、均一な光出力を得ることが可能となる。
【0143】
請求項2に係る発明によれば、結合器としてグレーティング結合器を用いることによって、これを導波路型素子に形成することで集積化が可能である。
【0144】
請求項3に係る発明によれば、プリズム結合器を用いることで構成が簡単化され、光軸調整等が容易になる。
【0145】
請求項4乃至6に係る発明によれば、励起光ビームを、その光軸を含む平面に関して、ほぼ対称に2分割することによって、結合効率を高めることができる。
【0146】
請求項7に係る発明によれば、一つの部材で2鏡面を形成できるので、励起光に係る2分割用の反射手段が1つで済み、構成が簡単である。
【0147】
請求項8に係る発明によれば、鏡面での損失を低減することにより、効率を高めることができる。
【0148】
請求項9や請求項30に係る発明によれば、分割後の強度分布を均等化することができるので、結合効率を高くすることができる。
【0149】
請求項10に係る発明によれば、分割光学系の構成を簡素化することができる。
【0150】
請求項11に係る発明によれば、分割光学系の構成をコンパクトにすることができるので、小型化等に好適である。
【0151】
請求項12、請求項31に係る発明によれば、利得領域の両側からの同時励起が可能であり、均一な励起を実現できる。
【0152】
請求項13に係る発明によれば、励起光の逃げが少ないので、結合効率が高くなる。
【0153】
請求項14、請求項32に係る発明によれば、強度分布のピーク位置と、結合器における利得領域側の端部位置とを合わせるという位置関係の設定により、結合効率を高めることができる。
【0154】
請求項15に係る発明によれば、放射パターンの強度分布について、単峰性を有する励起光源を用いることにより、結合器による出力結合時の放射ビーム振幅分布と、結合器の入射光強度分布との間の相違を極力小さくして、両者の重なり積分の値を1に近づけることが可能になる。
【0155】
請求項16に係る発明によれば、レーザダイオードを用いることで、装置の小型化や、省電力化、低コスト化、信頼性の向上を図ることができる。
【0156】
請求項17に係る発明によれば、電力効率を高くすることができるので、小型化や省電力化に有利である。
【0157】
請求項18に係る発明によれば、励起光ビームに対するコリメートによって平行光化されるので、光学的に制御し易い構成が得られる。
【0158】
請求項19に係る発明によれば、ビーム分割のための構成及び分割法が簡単になる。
【0159】
請求項20に係る発明によれば、大きな発光領域幅をもつ励起光源の利用において対応が容易になる。
【0160】
請求項21や請求項23に係る発明によれば、成膜条件が緩和されるので、コスト低減が可能である。
【0161】
請求項22、請求項24、請求項29に係る発明によれば、透過面や反射面について、高性能化やコストの低減が可能である。
【0162】
請求項25に係る発明によれば、伝達プリズムについて素子構造を簡単化することができる。
【0163】
請求項26や請求項27に係る発明によれば、光学的に平坦な研磨面の数を減らすことによって、伝達プリズムの加工コストを低減できる。
【0164】
請求項28に係る発明によれば、プリズム内での全反射を利用することにより、コストのかかる高反射率コーティング処理が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光励起型光源装置を用いた構成例を示す図である。
【図2】光源モジュールの構成について一例を示す図である。
【図3】光ビームを分割した励起光学系について説明するための模式図である。
【図4】分割された光ビームの振幅分布h(z)及び結合器による出力放射ビームの振幅分布g(z)について説明するためのグラフ図である。
【図5】図6とともに導波路型素子の構成例について説明するための概略図であり、本図は平面導波路基板に直交する方向からみた図を示す。
【図6】分割された励起光の入射結合について説明するための図である。
【図7】光ビームを分割した励起光学系について変形例を示す図である。
【図8】図9乃至図12とともに、プリズム結合器を用いた構成例について説明するための図であり、本図は、光ビームを分割した励起光学系について説明するための模式図である。
【図9】伝達プリズムの形状例を示す要部の側面図である。
【図10】伝達プリズムの底面部を拡大して示す概略図である。
【図11】導波路型素子の構成例について説明するための概略図である。
【図12】光ビームを分割した励起光学系について変形例を示す図である。
【符号の説明】
1…光励起型光源装置、511…励起光源、513…導波路型素子、513a…導波路、513e…利得領域、581…反射手段、581L、581R…鏡面、583L、583R…グレーティング結合器、584…利得領域、588…プリズム結合器、588a、588b…入力結合プリズム、589、589A…伝達プリズム、589i…入射領域、589o1、589o2…出射領域、589r1乃至589r4…反射領域、590…分割手段、590b…境界
Claims (23)
- 利得領域を備える導波路型素子と、
励起光ビームを放射するもので、光軸と直交し且つ互いに直交する2方向のうち、その一方向又は両方向におけるそれぞれの放射パターンの強度分布について単峰性を有する励起光源と、
上記励起光ビームを、その光軸を含む平面に関して略対称に2分割するものであり、その2面が鏡面とされ該鏡面の境界線が上記励起光ビームの光軸に対して直交し上記励起光ビームの強度について光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布がそのピーク強度を中心に2等分されるように該境界線の方向が規定されている反射手段を有する光ビーム分割手段と、
この光ビーム分割手段により分割された励起光ビームを上記導波路型素子の導波路に結合させるグレーティング結合器とを備え、
上記ビーム分割手段により2分割された一方の光ビームには上記反射手段によって反射された後に上記結合器に到達し、他方の光ビームには上記反射手段によって反射されずに上記結合器に到達する
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
上記反射手段の鏡面が、光学研磨された金属若しくは金属薄膜又は所定の波長において高反射率を備える誘電体多層膜コートされた光学材料を用いて形成されている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
分割された光ビームを導波路へと結合させる場合に、当該分割された光ビームについて、上記グレーティング結合器に入射する前にそれぞれのビームの光軸が互いに交差する
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
複数のグレーティング結合器が、導波路型素子の基板上で利得領域に係る放射光の光軸に関して概ね対称に配置される
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
上記グレーティング結合器に入射する、分割された光ビームは、導波モードのみと結合する1ビーム結合条件を満たす
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項5に記載した光励起型光源装置において、
分割された光ビームに係る強度分布のピーク位置が、上記グレーティング結合器において利得領域に近い側の端部の位置とほぼ一致する
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
上記励起光ビームに対するコリメート用の光学素子を備えている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項1に記載した光励起型光源装置において、
上記励起光源として、単一又は複数のエミッタを有するレーザダイオードを用いた
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項8に記載した光励起型光源装置において、
レーザダイオードのエミッタがブロードエリア構造を有する
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 利得領域を備える導波路型素子と、
励起光ビームを放射するもので、光軸と直交し且つ互いに直交する2方向のうち、その一方向又は両方向におけるそれぞれの放射パターンの強度分布について単峰性を有する励起光源と、
上記励起光ビームに対する透過面及び反射面を有し、両者の境界が直線状とされて各面が区分されており、該励起光ビームの強度について、光軸に直交する面に対して垂直な方向における強度分布が、そのピーク強度を中心に2等分することで、該励起光ビームを2分割する光ビーム分割手段と、
この光ビーム分割手段により分割された励起光ビームを上記導波路型素子の導波路に結合させる複数の入力結合プリズムと、
上記光ビーム分割手段により分割された励起光ビームを該入力結合プリズムに伝搬するための伝達プリズムを備えたプリズム結合器とを備え、
上記入力結合プリズムと上記伝達プリズムとを接合する界面に上記光ビーム分割手段を設け、上記光ビーム分割手段により2分割された一方の光ビームは上記反射面によって反射された後に上記入力結合プリズムのうちの一方に到達し、他方の光ビームは上記透過面を透過して上記入力結合プリズムのうちの他方に到達する
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記透過面の透過率が、励起光波長のP偏光成分に対して高くされている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記透過面に誘電体多層膜が用いられている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記反射面の反射率が、励起光波長のP偏光成分に対して高くされている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記反射面に金属薄膜又は誘電体多層膜が用いられている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記伝達プリズムは、当該プリズムに入射する励起光のための入射領域及び上記入力結合プリズムに対して光を出射するための複数の出射領域、そして、当該プリズム内を伝搬する光に対する複数の反射領域を備えている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項15に記載した光励起型光源装置において、
上記複数の出射領域が、伝達プリズムを構成する同一面上に設けられている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項16に記載した光励起型光源装置において、
上記複数の反射領域のうち、ある反射面が、上記複数の出射領域又は上記入射面と同一面上に設けられている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記伝達プリズム内を伝搬する励起光が、当該プリズム内の反射領域に係る反射面へ入射するときの入射角は、当該プリズムを構成する光学材料及び当該プリズムの外部領域の屈折率によって規定される臨界角より大きくされている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
伝達プリズムの反射領域に、金属薄膜又は誘電体多層膜が用いられている
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
各入力結合プリズムを、上記導波路基板上で利得領域に係る放射光の光軸に関して概ね対称に配置した
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
分割された光ビームに係る強度分布のピーク位置が、各入力結合プリズムの利得領域において近い側の端部の位置とほぼ一致するように配置した
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項10に記載した光励起型光源装置において、
上記励起光源として、単一又は複数のエミッタを有するレーザダイオードを用いた
ことを特徴とする光励起型光源装置。 - 請求項22に記載した光励起型光源装置において、
レーザダイオードのエミッタがブロードエリア構造を有する
ことを特徴とする光励起型光源装置。
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