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JP4160772B2 - 合成潤滑油基油 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成潤滑油基油、特に流体軸受油基油、これを使用した流体軸受油、グリース基油及びこれを使用したグリースに関する。さらに詳細には、本発明は、低粘度で幅広い温度範囲で長時間にわたって優れた潤滑性を有する合成潤滑油基油、特に焼結含浸軸受または流体軸受用として好適な、低粘度でありかつ温度変化が激しい状況下で使用される潤滑油基油に関する。本発明はまた高温、高速回転で使用される転がり軸受等に封入されて使用されるグリースの基油として好適な合成潤滑油基油に関する。
【0002】
【従来の技術】
潤滑油基油には、高粘度指数、良好な低温流動性、優れた熱安定性、低揮発性等の性質が求められている。従来、潤滑油基油として種々のものが提案されているが、上記性質のすべてを充分に満足するものは知られていない。。
例えば、1−デセンの重合体を水素化処理して得られるポリ−α−オレフィンは、高温安定性に優れるが、低温時の粘度上昇が大きく、また低温時の流動抵抗が大きく、低温流動性を満足しない。
アジピン酸やセバシン酸の2−エチルヘキシルエステルはDOAやDOSとして潤滑油基油として使用されてきた。しかしながら使用環境が高温などの厳しい用途では揮発量が多くなるなどの問題が明らかになってきた。
ネオペンチルグリコールやペンタエリスリトール等のアルコールの、β位に水素を持たないヒンダードエステルが熱安定性に優れることから、高温などの厳しい環境での使用にはほぼ耐えるものが提案されているが、流動点がDOA、DOSと比較して高く低温流動性を満足しない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の第1の目的は、粘度指数、低温流動性、熱安定性及び低揮発量の全てを満足しうる、幅広い温度範囲でかつ長時間にわたって優れた潤滑性を有する合成潤滑油基油、特に流体軸受油基油又はグリース基油を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記流体軸受油基油を使用した流体軸受油を提供することである。
本発明の第3の目的は、上記グリース基油を使用したグリースを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、脂肪族2価アルコールの飽和脂肪族モノカルボン酸ジエステルを主成分とする流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第2は、脂肪族2価アルコールの炭素原子数が2〜20である上記流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第3は、飽和脂肪族モノカルボン酸の炭素原子数が2〜36である上記流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第4は、脂肪族2価アルコールが2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールである上記流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第5は、飽和脂肪族モノカルボン酸がn−オクチル酸である上記流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第6は、脂肪族2価アルコールが2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールでありかつ飽和脂肪族モノカルボン酸がn−オクチル酸である上記流体軸受油基油又はグリース基油を提供するものである。
本発明の第7は、上記流体軸受油基油を使用した流体軸受油を提供するものである。
本発明の第8は、上記グリース基油を使用したグリースを提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の合成潤滑油基油の流動点(油が流動しうる最低の温度)は、低温時における流動性をより一層向上させる観点から好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−50℃以下である。
基油の低温時の流動抵抗はその温度における動粘度に相関する。本発明の合成潤滑油基油の0℃における動粘度は、好ましくは1〜200mm2/s、さらに好ましくは10〜100mm2/s、最も好ましくは50mm2/s以下、例えば、10〜50mm2/sである。
【0006】
粘度指数とは、温度変化に伴う潤滑油の粘度変化を示す実験的に求められる指数であり、指数が大きい潤滑油ほど温度変化に対して粘度変化が少ない。本発明の合成潤滑油基油の粘度指数は、高温下での潤滑性をより一層向上させる観点から、好ましくは120以上、さらに好ましくは140以上、例えば、140〜150である。
潤滑油基油が高温に長時間放置された場合、潤滑油基油の分解もしくは潤滑油基油自身に含まれる低分子量化合物の蒸発が起こりうる。そのため高温時の熱安定性として、高温蒸発減量が少ないほうが望ましい。本発明の潤滑油基油の高温蒸発減量は、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0007】
本発明の潤滑油基油に使用される脂肪族2価アルコールとしては、特に限定はされないが、炭素原子数2〜20の直鎖または分岐状の脂肪族2価アルコールが好ましい。具体例としては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられ、中でも、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが特に好ましい。
上記脂肪族2価アルコールは、単独でまたは2種類以上混合して用いれらる。
【0008】
本発明の潤滑油基油に使用される飽和脂肪族モノカルボン酸としては、特に限定はされないが、炭素原子数2〜36の直鎖または分岐状の飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。具体例としては、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、n−オクチル酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられ、中でも、n−オクチル酸が特に好ましい。
これらは単独または2種類以上混合して用いられる。
【0009】
脂肪族2価アルコールと飽和脂肪族モノカルボン酸とのエステル化反応は、通常、150〜300℃、好ましくは200〜250℃で行われる。反応時間は、反応のスケール等により変わるため、特に限定されないが、好ましくは1〜10時間である。圧力は常圧または減圧で実施するが、減圧の場合は通常0.1〜80kPaである。脂肪族2価アルコールと飽和脂肪族モノカルボン酸とのエステルはフルエステルであることが好ましい。エステル中に水酸基が残ると熱安定性が低下するので、モノエステルの生成を防止するように反応条件を選択する。このため、脂肪族2価アルコールと飽和脂肪族モノカルボン酸との仕込みモル比は、好ましくは1.0:1.5〜3.0、さらに好ましくは1.0:1.8〜2.0とすることが望ましい。
エステル化反応においては触媒を使用しても良く、この場合の該触媒の使用量は、原料仕込み量の0.01〜0.5質量%が好ましい。この場合の触媒としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、スズ酸化物、アルキルチタネート等が挙げられる。
【0010】
本発明の基油を使用した流体軸受油は、その性能を向上させるため、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡性等の添加剤の1種又は2種以上を適宜配合することも可能である。これらの添加剤は、通常流体軸受油基油に対して好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%添加される。
また本発明の流体軸受油基油は、その性能を低下させない範囲で、他の潤滑油基油、すなわち、鉱物油、ポリαオレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、動植物油、有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニールエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を適宜併用することも可能である。併用する基油の量は脂肪族2価アルコールに対して0〜50質量%が好ましく、低温性を損なわないためには脂肪族2価アルコールに対して0〜20質量%であることがより好ましい。
【0011】
本発明の基油を使用したグリースに使用される増ちょう剤は、特に限定されず、通常のグリースに使用されているものを適宜使用できる。例えば、金属石けん、複合石けん、ウレア、有機ベントナイト、シリカ等が挙げられる。本発明のグリース中、増ちょう剤の含有量は、通常3〜30質量%が適当である。
本発明のグリースには一般に配合される、酸化防止剤、極圧剤、防錆剤、金属腐食防止剤、油性剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、付着性向上剤等の添加剤の1種又は2種以上を適宜配合することも可能である。これらの添加剤は、通常グリース基油に対して好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%添加される。
本発明のグリースは従来公知の方法により製造することができる。
【0012】
合成例
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのジn−オクチル酸エステルを次のように合成した。
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却器付きの脱水管を取り付けた3Lの4つ口フラスコを用意し、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(641.2g)(4モル)と、n−オクチル酸(1730.6g)(12モル)を仕込み、常圧で200℃、8時間反応させた。減圧(3mmHg)下、過剰の脂肪酸を留去した後、20%の水酸化ナトリウム水溶液(630g)(80℃)で洗浄し、さらに1Lの水で4回水洗し、減圧下脱水(275℃以下、4mmHg以下)を2時間行った。さらに上記の残留物から、4mmHg減圧下、280〜283℃で目的の脂肪酸エステルを得た。
【0013】
実施例1
表1に示す各種エステル又はポリ−α−オレフィンの潤滑油基油としての性能を調べた。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
Figure 0004160772
比較例4:ペンタエリスリトール1モルとn−ヘプタン酸1.0モル、i−オクタン酸1.4モル及びn−オクタン酸1.6モルのエステル化物
【0015】
評価試験方法
・動粘度は、ウペローデ粘度計による、各温度条件においての測定値であり、また粘度指数は(JIS K 2283)動粘度の測定法により求めた。
・流動点は、JIS K 2269 規定の方法で測定を行った。
・蒸発減量は、50gの試料を100mlのビーカに入れ、150℃の恒温槽内における200時間の加熱前後の試料の質量を測定し、(加熱前の試料の質量−加熱後の試料の質量)/(加熱前の試料の質量)×100(質量%)により算出した。
【0016】
実施例1の基油は、粘度指数が大きく高温での潤滑性に優れ、流動点が低く低温流動性に優れ、蒸発減量が少なく熱安定性が高い。
これに対して、比較例1のポリ−α−オレフィンは、蒸発減量が少なく高温安定性に優れるが、低温時の粘度上昇が大きく、また低温時の流動抵抗が大きく、低温流動性が劣っている。
比較例2のオクチルアルコールのセバシン酸ジエステルは、粘度指数が大きく高温での潤滑性に優れ、流動点が低く低温流動性に優れているが、蒸発減量が大きく高温安定性が劣っている。
比較例3のネオペンチルグリコールのノナン酸フルエステルは粘度指数が大きく高温での潤滑性に優れている、流動点が高く低温流動性が劣っており、また蒸発減量が大きく高温安定性が劣っている。
比較例4のペンタエリスリトール1モルとn−ヘプタン酸1.0モル、i−オクタン酸1.4モル及びn−オクタン酸1.6モルのエステルは、蒸発減量が少なく高温安定性に優れるが、低温時の粘度上昇が大きく、また低温時の流動抵抗が大きく、低温流動性が劣っている。
【0017】
実施例2
実施例1、及び比較例1〜4で使用した合成エステル又はポリ−α−オレフィンを基油として使用し、下記の処方、操作によりグリースを調製した。
基油: 87質量%
増ちょう剤(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム): 12質量%
酸化防止剤(アルキルジフェニルアミン): 1質量%
12−ヒドロキシステアリン酸リチウム全量を基油全量に加熱溶解し、冷却した。室温まで冷却した後、酸化防止剤全量を加え、3段ロールミルでミリングを行い、脱泡処理してグリースを調製した。
得られたグリースの低温トルク(−40℃)(N・cm)を、JIS K2220 5.14に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0018】
【表2】
Figure 0004160772
【0019】
実施例1の基油を使用したグリースは、−40℃における起動トルクが5N・cm以下であり、回転トルクも2N・cm以下であり、低温性に優れていることが分かる。
【発明の効果】
表1から明らかなように、本発明の合成潤滑油基油は、低温流動性に優れ、高温で長期間使用した場合であっても優れた潤滑性を維持することができる。従って、本発明の合成潤滑油基油は、温度変化が激しい条件で使用される軸受用潤滑油、特に焼結含浸軸受用潤滑油基油または流体軸受用潤滑油基油として好適である。本発明はまた高温、高速回転で使用される転がり軸受等に封入されて使用されるグリースの基油としても優れている。
本発明のグリースは低温性に優れている。

Claims (6)

  1. 2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのn−オクチル酸ジエステルを主成分とする流体軸受油基油。
  2. 2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのn−オクチル酸ジエステルを主成分とするグリース基油。
  3. 請求項1記載の流体軸受油基油を使用した流体軸受油。
  4. 請求項2記載のグリース基油を使用したグリース。
  5. 2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのn−オクチル酸ジエステルの流体軸受油基油としての使用。
  6. 2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのn−オクチル酸ジエステルのグリース基油としての使用。
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