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JP4158332B2 - カラー画像処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力されたカラー画像データに基づき画像を再現するデジタル複写機やプリンタ等の画像形成装置、デジタルカメラのようなデジタル画像撮影装置に適用され、カラー画像データを人間の視覚特性を考慮して色補正処理するカラー画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種の画像処理装置においては、入力されたカラー画像を忠実に再現させるための種々の補正方法が提案されている。例えば、特開平9−270932号公報には、使用される記録媒体(用紙など)の色に応じて画像再現のマスキング係数を設定することによりカラー画像データを補正し、種々の色の用紙が使われた場合であっても、カラー画像を忠実に再現しようとするものが開示されている。また、特開平9−102882号公報には、例えばカラー印刷物とカラーモニタ画像とがある周囲光のもとで色空間上において等色が得られていても、周囲光の変化によって両カラー画像の見え方が変化してしまう課題を解決するために、周囲光の情報を検出して、それに応じて再現する色を変換する手法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したいずれの従来技術においても、人間の視覚特性を考慮して補正する技術は提案されていない。例えば、高精度なカラースキャナやカメラを用いてカラー画像データを忠実に取り込んで、周囲光や使用される用紙色に応じて補正して忠実に画像を再現したとしても、人間の視覚的に生じる色の見え方の違いは補正することができない。すなわち、画像の前景部が背景部によってその色の見え方が異なってしまうことには対応できていなかった。この色の見え方が異なってくる現象とは、一般的に対比現象と言われているもので、色相であれば前景部の色相が背景色の補色の色みを帯びて見える現象であり、明度であれば背景色が明るければ暗く見え、同様に彩度であれば背景色が鮮やかであれば前景部がくすんで見えるというものである。この色の見え方が異なってくる現象により、例えば、図13(a)(b)に示すように、彩やかな海の青さや草の緑の中(背景)に人(前景)が映っているような場合、人(前景)の肌が、海の青の中では黄色みを帯び、草の緑の中では赤みを帯びて見える。
【0004】
本発明は、上記問題を解消するものであり、背景色に応じて前景色を補正することで、人間の視覚特性として背景部の画像によって生じる前景部の色みの変化(対比現象)を補正することができ、視覚的に正確な色みを再現可能とするカラー画像処理装置を提案することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記目的を達成するため、本発明は、入力されたカラー画像データを補正処理するカラー画像処理装置において、入力されたカラー画像データから前景部と背景部を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された背景部の色相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された色相に基づいて、前景部の色相を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前景色の色相を背景色の色相の補色の方向とは反対方向に補正するものである。
【0006】
本発明によれば、画像データから前景部と背景部を抽出し、さらに、抽出された背景部の色相を検出し、この色相に基づいて前景部の色相を補正するので、背景部の画像によって視覚的に画像の色の見え方が変化する現象が起こる場合にあっても、この現象が補正されるように色再現が行われ、色の見え方が変わらないものとなり、忠実な色みを伝達することができる。
【0007】
また、補正手段は、前景色の色相を背景色の色差方向に補正するものとすることで、前景部は背景色の補色方向に色みを帯びてくるので、これを相殺することができる。
【0008】
また、補正手段は、前景色と背景色の占める面積がある所定の大きさ以上のときに補正し、それ以下のときには補正しないものとすることで、人間の視覚特性に影響を与える大きさ以上の場合のみ補正することになり、不必要な補正による忠実再生の劣化を防止することができる。
【0009】
また、上記請求項1における補正対象を色相に代えて、明度を補正することで、明度対比効果を補正することができる。また、上記請求項1における補正対象を色相に代えて、彩度を補正することで、彩度対比効果を補正することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態によるカラー画像処理装置について図面を参照して説明する。なお、図面において同一の参照符号は同一または同様なものを示す。図1は、カラーデジタル複写機の全体構成を示す。この複写機は、自動原稿送り装置100と、画像読み取り部200と、タンデム方式の画像形成部300とから構成される。本複写機は、1スキャン4色同時カラー出力が可能で、通常は自動原稿送り装置100により画像読み取り位置に搬送された原稿を画像読み取り部200で読み取り、読み取られた画像データを画像形成部300に転送し、画像を形成する(複写機能)。また、インターフェイス207により外部機器との接続が可能である。そのため、画像読み取り部200で読み取った画像データを外部機器に出力でき(画像読み取り機能)、逆に、外部機器から受け取った画像データを画像形成部300に送ることにより、画像を形成できる(プリンタ機能)。
【0011】
次に、自動原稿送り装置100について説明する。自動原稿送り装置100は、原稿セットトレイ101にセットされた原稿を画像読み取り部200の画像読み取り位置に搬送し、画像読み取り終了後に原稿排出トレイ103上に排出する。原稿搬送の動作は操作パネル(図示しない)からの指令に従って行い、原稿排出の動作は画像読み取り装置200の読み取り終了信号に基づいて行う。複数枚の原稿がセットされている場合には、これらの制御信号が連続的に発生され、原稿搬送、読み取り、原稿排出の動作が効率よく行われる。
【0012】
次に、画像読み取り部200について説明すると、露光ランプ201により照射された原稿ガラス208上の原稿の反射光は、3枚のミラー群202によりレンズ203に導かれCCDセンサ204に結像する。露光ランプ201と第1ミラーはスキャナモータ209により矢印の方向へ倍率に応じた速度Vでスキャンすることにより原稿ガラス208上の原稿を全面にわたって走査することができる。また、露光ランプ201と第1ミラーのスキャンに伴い、第2ミラーと第3ミラーは速度V/2で同方向へスキャンされる。露光ランプ201の位置はスキャナホームセンサ210とホーム位置からの移動量(モータのステップ数)により算出され、制御される。CCDセンサ204に入射した原稿の反射光はセンサ内で電気信号に変換され、画像処理回路205により電気信号のアナログ処理、A/D変換、デジタル画像処理が行われた後、インターフェイス部207と画像形成部300へ送られる。原稿ガラス208の原稿読み取り位置とは別に白色のシェーディング補正板209が配置されており、原稿上の画像情報の読み取りに先立ちシェーディング補正用の補正データを作成するため、シェーディング補正板209を読み取る。
【0013】
次に、タンデム方式の画像形成部300について説明する。まず、露光とイメージングについて説明する。画像読み取り部200またはインターフェイス207から送られてきた画像データは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の印字用データに変換され、各露光ヘッドの制御部(図示せず)に送られる。各露光ヘッド制御部では送られてきた画像データの電気信号に応じてレーザーを発光させて、その光をポリゴンミラー301により1次元走査し、各イメージングユニット302c、302m、302y、302k内の感光体を露光する。イメージングユニット302c、302m、302y、302kは、用紙搬送ベルト304の用紙搬送方向に沿って縦に1列に並んで配置される。各イメージングユニット内部には感光体を中心に電子写真プロセスを行うために必要なエレメントが配置されている。C,M,Y,K用の各感光体が時計周りに回転することにより各画像形成プロセスが連続的に行われる。また、これらの画像形成に必要なイメージングユニットは各プロセスごとに一体化され、本体に着脱自在な構成になっている。各イメージングユニット内の感光体上の潜像は各色現像器により現像される。感光体上のトナー像は用紙搬送ベルト304内に上述の各感光体と対向して設置された転写チャージャ303c、303m、303y、303kにより、用紙搬送ベルト304上の用紙に転写される。
【0014】
次に、給紙/搬送/定着について説明する。転写される側の用紙は以下の順序で転写位置に供給されて画像をその上に形成する。給紙カセット群310a、310b、310cの中には様々なサイズの用紙がセットされており、所望のサイズの用紙が各給紙カセット310a、310b、310cに取付けられている給紙ローラー312により搬送路へ供給される。搬送路へ供給された用紙は搬送ローラー対313により用紙搬送ベルト304へ送られる。ここではタイミングセンサ306により、用紙搬送ベルト304上の基準マークを検出し、搬送される用紙の搬送タイミング合わせが行われる。また、イメージングユニットの最下流には、3個のレジスト補正センサ314が、ベルト304の搬送方向と垂直な方向(主走査方向に)に一列に配置されている。用紙搬送ベルト304上のレジストパターンを形成した際、このセンサによってC,M,Y,K画像の主・副走査方向の色ずれ量を検出し、プリントイメージング制御部(PIC部)での描画位置補正と画像歪み補正を行うことによって、用紙上のC,M,Y,K画像の色ずれを防止している。そして転写された用紙上のトナー像は定着ローラー対307により加熱され溶かされて用紙上に定着された後、排紙トレイ311へ排出される。
【0015】
また、両面コピーの場合には、裏面の画像形成のため、定着ローラー対307により定着された用紙は用紙反転ユニット309により反転され、両面ユニット308により導かれ、両面ユニットから用紙を再給紙する。なお、用紙搬送ベルト304はベルト退避ローラー305の挙動により、C,M,Y,の各イメージングユニットから退避でき、用紙搬送ベルト304と感光体が非接触状態にできる。そこで、モノクロ画像形成時にはC,M,Yの各イメージングユニットの駆動を停止できるため、感光体や周辺プロセスの摩擦を削減できる。
【0016】
次に、画像読み取り部200の信号処理について説明する。図2と図3は画像読み取り部200における画像処理部205の全体ブロック図である。縮小型光学系によって原稿面からの反射光をCCDセンサ204に結像させて、R,G,Bの各色分解情報に光電変換されたアナログ信号を得る。A/D変換部401では、CCDセンサ204で光電変換された400dpiの画像データを基準駆動パルス生成部411より転送されるタイミング信号によって、A/D変換器を用いてR,G,Bの色情報毎に8ビット(256階調)のデジタルデータに変換する。シェーディング補正部402では、R,G,Bデータの主走査方向の光量ムラをなくすため、各R,G,B毎に独立して、原稿読み取りに先立ってシェーディング補正用白色板209を読み取ったデータを内部のシェーディングメモリに基準データとして格納しておき、原稿走査時に逆数変換し、原稿情報の読み取りデータと乗算して、補正を行う。
【0017】
ライン間補正部403では、R,G,Bの各センサチップのスキャン方向の読み取り位置を合わせるためにスキャン速度(副走査倍率に依存)に応じて、内部のフィールドメモリを用いて、各色データをライン単位でディレイ制御する。光学レンズによって生じる色収差現象によって、主走査側の原稿端部側ほどR,G,Bの読み取り位相差が大きくなる。この影響によって、単なる色ずれ以外に後述するACS判定や黒文字判別で誤判定を引き起こす。そこで色収差補正部404では、R,G,Bの位相差を彩度情報に基づいて補正する。
【0018】
変倍、移動処理部405では、R,G,Bデータ毎に変倍用ラインメモリを2個用いて、1ライン毎に入出力を交互動作させ、そのライト・リードタイミングを独立して制御することで主走査方向の変倍・移動処理を行う。すなわち、メモリ書き込み時にデータを間引くことで縮小を行い、メモリ読み出し時にデータを水増しして拡大を行っている。この制御において、変倍率に応じて縮小側ではメモリ書き込み前に、拡大側ではメモリ読み出し後に補間処理を行い、画像欠損やガタツキを防止している。このブロック上の制御とスキャン制御を組み合わせて、拡大と縮小だけでなく、センタリング・イメージリピート・拡大連写・綴じ代縮小などを行う。
【0019】
ヒストグラム生成部412および自動カラー判定(ACS)部413では、原稿をコピーする動作に先立ち、予備スキャンして得られたR,G,Bデータから明度データ生成をして、そのヒストグラムをメモリ(ヒストグラムメモリ)上に作成する一方、彩度データによって1ドット毎にカラードットか否かを判定し、原稿上512ドット角のメッシュ毎にカラードット数をメモリ(ACSメモリ)上に作成する。この結果に基づいて、コピー下地レベル自動制御(AE処理)およびカラーコピー動作かモノクロコピー動作かの自動カラー判定(ACS処理)をする。
【0020】
ラインバッファ部414では、画像読み取り部200で読み取ったR,G,Bデータを1ライン分記憶できるメモリを有し、A/D変換部401でのCCDセンサの自動感度補正や自動クランプ補正のための画像解析用に画像データのモニタができる。また、紙幣認識部415では、原稿ガラス208上に紙幣などの有価証券が積載されコピー動作した場合に正常なコピー画像ができないように、R,G,Bデータの領域切り出しを随時行い、パターンマッチングによって紙幣か否かを判断する。紙幣と判断した場合すぐに、画像読み取り部200の読み取り動作および画像処理部205を制御するCPUがプリントイメージング制御部側に対して黒べた塗りつぶし信号(−PNT=“L”)を出力して、プリントイメージング制御部側でKデータを黒べたに切替えて正常コピーを禁止している。
【0021】
HVC変換部422では、データセレクタ421を介して入力されたR,G,Bデータから3*3の行列演算によって、色相(Hue)、明度(Value)および彩度(Chroma)である色差信号(Cr、Cbデータ)に一旦変換する。次に、AE処理部423で前記した下地レベル制御値に基づいてVデータを補正し、操作パネル上で設定された彩度レベルおよび色相レベルに応じてCr、Cbデータの補正を行う。この後、逆HVC変換部424で3*3の逆行列演算を行い、R,G,Bデータに再変換する。さらに、色補正判別部425(詳細は図4)がHVC変換部422とAE処理部423とに接続され、この色補正判別部425には画像メモリ430が接続されている。
【0022】
LOG補正部431では、各R,G,Bデータを濃度データ(DR,DG,DBデータ)に変換後、墨抽出部432でDR,DG,DBデータの最小色レベルを原稿下色成分として検出し、同時にR,G,Bデータの最大色と最小色の階調レベル差を原稿彩度データとして検出する。DR,DG,DBデータは、マスキング演算部433で3*6の非線型行列演算処理がされて、プリンタのカラートナーにマッチングした色データ(C,M,Y,Kデータ)に変換される。
【0023】
下色除去・墨印刷処理部(UCR・BP処理部)434では、前述した原稿下色成分(Min(R,G,B))に対して、原稿彩度データに応じたUCR・BP係数を算出して、乗算処理によってUCR・BP量を決定し、マスキング演算後のC,M,Yデータから下色除去量(UCR量)を差分して、C,M,Yデータを算出し、BP量=Kデータを算出する。また、モノクロデータ生成部435では、R,G,Bデータから明度成分を作成し、LOG補正してブラックデータ(DVデータ)として出力する。最後に色データ選択部436で、カラーコピー用画像であるC,M,Y,Kデータとモノクロコピー用画像であるDVデータ(C,M,Yは白)を選択する。
【0024】
領域判別部441では、データセレクタ441を介して入力されたR,G,Bデータより最小色(Min(R,G,B))と最大色と最小色との差(Max(R,G,B)−Min(R,G,B))を検出し、黒文字判別・色文字判別・網点判別など行う。また、黒文字判別時の文字エッジ補正を行い、判別結果とともに文字エッジ再生部451に転送する。同時にプリントイメージング制御部側およびプリントヘッド制御部側に対して、階調再現方法を切り替えるための属性信号を作成して転送する。
【0025】
文字エッジ再生部451では、領域判別結果から、色データ選択部436からのC,M,Y,Kデータに対して、各判別領域に適した補正処理(エッジ強調・スムージング・文字エッジ除去)を行う。最後に、シャープネス・ガンマ・カラーバランス調整部452は、操作パネル上で指定されたシャープネス・カラーバランス・ガンマレベルに応じてC,M,Y,Kデータの画像補正を行い、階調再現属性信号−LIMOSをプリントイメージ制御インターフェイス453に転送する。また、C,M,Y,Kデータを、データセレクタ461を介して画像インターフェイス部462へ送る。
【0026】
階調再現属性信号−LIMOSについて説明すると、階調再現属性信号は、後段でのプリントイメージング制御部内の階調再現処理およびプリントヘッド制御部での階調再現周期を自動的に切り替える目的で、C,M,Y,Kの画像データとともに転送される。この信号は、エッジ処理をするべく領域(非網点領域かつ文字エッジ領域かつ文字内部側のエッジ領域)において“L”レベルとなり、解像度を優先した文字がたつきがない階調再現処理を指示する。プリントイメージング制御部での階調再現処理では、通常多値誤差拡散と呼ばれる擬似256階調処理を行うが、−LIMOS=“L”に相当する文字エッジ部では、単純量子化処理を行い、エッジのがたつきを防止している。
【0027】
また、画像形成部300のプリントヘッド制御部では、通常45°方向のスクリーン角に設定された2ドットパルス幅変調再現を行うが、−LIMOS=“L”に相当する領域では、解像度を優先した1ドットパルス幅変調再現を行う。なお、文字エッジ部内の内側エッジに対して処理を切り替えることで、文字エッジ境界部で、プリントヘッド制御部の階調再現周期が切り替わるため、それによる濃度ジャンプ(ガンマ特性の違いによる)が目立ちにくくなる。最後に、画像インターフェイス部462について説明すると、外部装置と画像入出力を行う。動作は、R,G,Bデータの同時入出力とC,M,Y,Kデータの面順次入出力が可能であり、外部装置側は、スキャナ機能やプリント機能としてカラー複写機を利用できる。
【0028】
図4は上記色補正判別部425のブロック構成を示す。色補正判別部425は、入力された画像データ中のH,V,Cの各信号(各8ビット)に基づいて、ベタ画像部を判別するベタ画像判別部426と、ヒストグラム作成部427(検出手段)と、前景/背景判別部428(抽出手段)と、色数判別部429とから構成される。入力画像データは一旦、画像メモリ430に格納されて各種判別処理される。色補正判別部425での処理が終わると、色補正判別部425からHVC調整部423へ、画像データH,V,C及び制御データが送られる。この判別結果に基づいて、HVC調整部423(補正手段)は、視覚的に生じる対比現象(色相対比、明度対比、彩度対比など)を補正するように画像データを補正する。制御データとしては、補正要否(1ビット)、前景・背景・他(2ビット)の信号が含まれる。なお、HVC調整部423は、前述の色補正と上記対比現象の色補正とを処理することになる。
【0029】
以下に、視覚的に生じる対比現象を補正する手法について説明する。補正は、基本的には、画像データから前景部と背景部を抽出し、背景部の色相、明度または彩度に基づいて、前景部の色相、明度または彩度の一つ以上を、背景色の色差などの方向に補正し、また、前景色と背景色との占める面積がある所定の大きさ以上のときに補正する。図5にY(黄色)とB(青色)の色差軸上での補正手法を示す。実際の色差がB0で、視覚的な色差がB0’であるとした時、その差ΔB分だけ実際の色差より視覚的な色差方向とは逆方向に補正し、出力色差B0”(補正後)を取る。
【0030】
図6(a)(b)(c)に、ある画像についてヒストグラム作成部427により作成した色相、彩度、明度のヒストグラム例を示す。「th」は、補正を行うか否かの判断基準となる「しきい値」である。B0,BG,GB,GY,Y0,R0は、いずれも、しきい値を超える色相であり、後述する前景/背景判別に用いられる。
【0031】
図7は上記補正手法の処理手順を示すフローチャートである。まず、色数を判別し(#1)、色数がフルカラーであるしきい値thCLを越えているかを判定し(#2)、 フルカラーであれば#3に進み、フルカラーでなければ本処理は行わない。#3では、ベタ画像判別を行い(この判別方法の詳細は後述)、ベタ画像部の色相、明度、彩度の各ヒストグラムを作成する(#4)。各ヒストグラムは、256階調のカウント結果数を示すH(θ)CNT、V(0〜255)CNT、C(0〜255)CNTで表される(CNTはカウント結果であることを示す記号として、通常のH,V,Cと区別している)。次に、各値がしきい値(th)を越えているかを判定する(#5、図示ではH(θ)についてのみ記すが、明度、色彩についても同様に行なう)。図6(a)の例では、B0,BG,GB,GY,Y0,R0が抽出される。これがYESであって、全てのデータについて判定が終了したなら(#6でYES)、しきい値を越えているH(θ)等が複数有るかを判定し(#7)、これがYESなら、それらが前景もしくは背景を成しているか、又は、前景、背景のいずれでもない他の領域に属するかを判定し(#8、この判別方法の詳細は後述)、これがYESなら、色補正処理を行う(#9)。いずれかの判定がNOであれば、本処理は行わない。
【0032】
上記処理により、前景色と背景色の占める面積がある所定(任意に設定すればよい)の大きさ以上のときに補正し、それ以下のときには補正しないものとすることができ、これにより、人間の視覚特性に影響を与える大きさ以上の場合のみ補正することになり、不必要な補正による忠実再生の劣化を防止することができる。
【0033】
上記色補正処理の各種例を図8、図9、図11に示す。図8は色相の補正処理手順である。本処理では、まず、背景色の色相(H)を抽出し(#11)、Hの色差軸方向の補正レベルΔHを抽出し(#12)、次いで、前景色の色相(H)を抽出し(#13)、H+ΔHを前景色の新たな色相Hとする(#14)。このような補正処理を行わなければ、前景部は視覚的に背景色の補色方向に色みを帯びてくるが(色相対比現象)、本補正処理を経て色再現を行うことで、上記現象を相殺することができ、色の見え方が変わらないものとなり、忠実な色みの伝達が可能となる。
【0034】
図9は明度の補正処理手順を示す。本処理では、まず、背景色の明度(V)を抽出し(#21)、次いで、前景色の明度(V)を抽出し(#22)、その後、VがVを越えているかを判定し(#23)、これがYESであれば、V+ΔVを前景色の新たな明度Vとし(#24)、NOであれば、V−ΔVを前景色の新たな明度Vとする(#24)。つまり、#24では、背景色が前景色よりも明るい場合で、前景色の明度を上げ、#25では背景色が前景色よりも暗い場合で、前景色の明度を下げる。
【0035】
図10に上記明度の補正処理の手法を示す。背景色の明度よりも前景色の実際の明度が低い場合、視覚的に見える前景色の明度は、実際の明度よりも暗くなる(明度対比現象)。そこで、この場合、補正後の前景色の出力明度は実際の前景色の明度よりも明るいものとする。このような補正を行うことで、明度対比現象を抑えることができる。逆に、背景色が前景色よりも暗い場合、前景色が視覚的に実際の明るさよりも明るく見えるので、この場合は、前景色の出力明度は実際の明度よりも暗いものとする。
【0036】
図11は彩度の補正処理手順を示す。本処理では、まず、背景色の彩度(C)を抽出し(#31)、次いで、前景色の彩度(C)を抽出し(#32)、その後、CがCを越えているかを判定し(#33)、これがYESであれば、C+ΔCを前景色の新たな彩度Cとし(#34)、NOであれば、C−ΔCを前景色の新たな彩度Cとする(#35)。つまり、#34では、背景色が前景色よりも彩度が高い場合で、前景色の彩度を上げ、#35では背景色が前景色よりも彩度が低い場合で、前景色の彩度を下げる。
【0037】
図12に上記彩度の補正処理の手法を示す。背景色の彩度よりも実際の前景色の彩度が低い場合、視覚的に見える彩度は、実際の彩度よりも低くなる(彩度対比現象)。そこで、補正後の前景色の出力彩度は実際の前景色の彩度よりも高いものとする。このような補正を行うことで、彩度対比現象を抑えることができる。逆に、背景色の彩度が前景色よりも低い場合、前景色が視覚的に実際の彩度よりも高く見えるので、この場合は、前景色の出力彩度は実際の彩度よりも低いものとする。
【0038】
以上のように、背景色の色みに応じて前景色の色みを補正することにより、例えば、前述した図13(a)(b)に示すような場合、人(前景)の肌が、海の青(背景)の中で黄色みを帯びて見えることが抑制され、また、草の緑(背景)の中で赤みを帯びて見えることが抑制され、正確な色みの伝達が可能となる。なお、上記では、各種の色補正処理を挙げたが、それら全ての処理を併せて行う必要はなく、画像の状況に応じて適宜に少なくとも1つ以上の補正を行えばよい。
【0039】
次に、図14及び図15を参照して前景/背景の判別方法を説明する。前述の図6で作成された色相ヒストグラムから、しきい値th以上の色相を抽出し(#41)、その各色相について、図14に示した画像のX方向及びY方向に頻度ヒストグラムをそれぞれ作成する(#42)。この頻度ヒストグラムより、X方向及びY方向での分布のアドレスを抽出し(#43)、最大/最小アドレスを抽出する(#44)。これにより、画像内における各色相の分布を把握することができる。ここに、最大/最小アドレスが同一色相であれば、それを背景画像とし(#45,#46)、最大/最小アドレスに包含される色相があれば、それを前景画像とする(#47,#48)。この前景画像を色補正する(#49)。図14では、色相GY,B0について頻度ヒストグラムを作成した例を示す。色相GYは、X0´〜X1´、Y0´〜Y1´の位置に分布し、色相B0は、X0〜X1、Y0〜Y1の位置に分布している。これらから外側に分布している色相B0を背景画像、内側に分布している色相GYを前景画像とすることができる。
【0040】
次に、ベタ画像判別方法を示す。ベタ画像判別は、所定の色相の頻度ヒストグラムにおいて、或るしきい値以上の色相の画像が所定画素数以上連続している領域を抽出することにより行なうことができる。図16は或る色相の頻度ヒストグラムを示す。頻度がしきい値を越えているアドレスX0〜X1の範囲がベタ部、それ以外が非ベタ部である。なお、色相が同じでも、明度/彩度が大きく異なると、ベタとは言えないので、明度/彩度についてもヒストグラムを作成し、同じ位置において頻度がしきい値以上であればベタと判断すればよい。
【0041】
上述実施形態では、本発明をカラーのデジタル複写機及びプリンタ等の画像形成装置に適用した場合を示したが、デジタルカメラの表示部やデジタルカメラの画像を表示する装置にも適用可能である。図17は、本発明の他の実施形態によるデジタルカメラの画像表示システムの全体構成を示す。デジタルカメラ1は、LCD表示装置1000と、プリンタ2000とに接続されている。LCD表示装置1000には、撮影待機状態においてはデジタルカメラ1の撮像部により1/30秒毎に撮像された画像が表示され、再生モードにおいてはメモリカードから読み出された撮影済み画像を表示することが可能である。
【0042】
図18はデジタルカメラ1とLCD表示装置1000のブロック構成を示す。撮像部の構成要素であるCCDカラーエリアセンサ503(以下、センサという)は、撮影レンズ501により結像された被写体の撮像を、R(赤)、G(緑)、B(青)の色成分の画像信号(各画素で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換して出力する。
【0043】
上記デジタルカメラ1は絞りが固定絞りとなっているので、撮像部における露出制御はセンサ503の露光量、すなわち、シャッタスピードに相当するセンサ503の電荷蓄積時間を調節することにより行われる。被写体輝度が低輝度のときに適切なシャッタスピードが設定できない場合は、センサ503から出力される画像信号のレベル調整を行うことにより露光不足による不適正露出が補正される。すなわち、低輝度時は、シャッタスピードとゲイン調整とを組み合わせて露出制御が行われる。画像信号のレベル調整は、信号処理回路504内のAGC回路のゲイン調整において行われる。
【0044】
タイミングジェネレータ514は、タイミング制御回路502から送信される基準クロックに基づき、上記センサ503の駆動制御信号を生成するものである。上記タイミングジェネレータ514は、積分開始/終了(露出開始/終了)のタイミング信号、各画素の受光信号の読出し制御信号(水平同期信号、垂直同期信号、転送信号等)等のクロック信号を生成し、センサ503に出力する。
【0045】
信号処理回路504は、センサ503から出力される画像信号(アナログ信号)に所定のアナログ信号処理を施すものである。信号処理回路504は、CDS(相関二重サンプリング)回路とAGC(オートマチック・ゲイン・コントロール)回路とを有し、上記CDS回路により画像信号のノイズの低減を行い、上記AGC回路のゲインを調整することにより画像信号のレベル調整を行う。
【0046】
調光回路515は、フラッシュ撮影における内蔵フラッシュ518の発光量を全体制御部511により設定された所定の発光量に制御するものである。フラッシュ撮影においては、露出開始と同時に被写体からのフラッシュ光の反射光が調光センサ516により受光され、上記発光量が所定の発光量に達すると、調光回路515から全体制御部511内に設けられたFL制御回路に発光停止信号が出力される。FL制御回路は、この発光停止信号に応答して内蔵フラッシュ518の発光を強制的に停止し、これにより内蔵フラッシュ518の発光量が所定の発光量に制御される。
【0047】
カメラ本体部内において、A/D変換器505は、画像信号の各画素信号を10ビットのデジタル信号に変換するものである。A/D変換器505は、図示しないA/Dクロック発生回路から入力されるA/D変換用のクロックに基づいて各画素信号(アナログ信号)を10ビットのデジタル信号に変換する。タイミング制御回路502は、全体制御部511により制御され、基準クロックを生成するとともに、タイミングジェネレータ514、A/D変換器505に対するクロックを生成する。
【0048】
黒レベル補正回路506は、A/D変換された画素信号(以下、画素データという)の黒レベルを基準の黒レベルに補正するものである。また、WB回路507は、γ補正後にホワイトバランスも合わせて調整されるように、R,B,Gの各色成分の画素データのレベル変換を行うものである。WB回路507は、全体制御部511から入力されるレベル変換テーブルを用いてR,G,Bの各色成分の画素データのレベルを変換する。なお、レベル変換テーブルの各色成分の変換係数(特性の傾き)は全体制御部511により撮影画像毎に設定される。
【0049】
γ補正回路508は、画素データのγ特性を補正するものであり、γ特性の異なる例えば6種類のγ補正テーブルを有し、撮影シーンや撮影条件に応じて所定のγ補正テーブルにより画素データのγ補正を行う。画像メモリ509は、γ補正回路508から出力される画素データを記憶するメモリである。画像メモリ509は、1フレーム分の記憶容量、すなわち、センサ503がn行×m列の画素を有している場合、n×m画素分の画素データの記憶容量を有し、各画素データが対応する画素位置に記憶されるようになっている。
【0050】
VRAM510は、デジタルカメラ1に備えられたLCD表示部10に再生表示される画像データのバッファメモリである。VRAM510は、表示部10の画素数に対応した画像データの記憶容量を有している。
【0051】
撮影待機状態においては、撮像部により1/30(秒)毎に撮像された画像の各画素データがA/D変換器504乃至γ補正回路508により所定の信号処理を施された後、画像メモリ509に記憶されるとともに、全体制御部511を介してVRAM510に転送され、表示部10に表示される。なお、表示部10の画素数は、320×240ピクセルであるが、VRAM自身は900KB、すなわち、640×480×24ビットの容量があり、表示部10で表示する際に、1/2に縮小するようにしている。
【0052】
これにより、撮影者は、表示部10に表示された画像により被写体像を視認することができる。また、再生モードにおいては、メモリカード20から読み出された画像が全体制御部511で所定の信号処理が施された後、VRAM510に転送され、VRAM510を介して表示部10に再生表示される。
【0053】
デジタルカメラ1には、VGAサイズ(640×480ピクセル)の感圧式のタッチパネルを有するLCD表示装置1000がデジタルカメラ1の外部に接続可能である。これを接続した場合には、撮影モードにおいては、VRAM510に転送されたデータが上記LCD表示装置1000にも表示される。また、再生モードでは、メモリカード20から読み出された画像データが全体制御部511で所定の信号処理を受けた後,VRAM510に転送され、VRAM510を介して画像が表示部10及びLCD表示装置1000に表示される。
【0054】
カードI/F512は、メモリカード20への画像データの書込み及び読出しを行なうためのインタフェースである。また、通信用I/F513は、パーソナルコンピュータ30を通信可能に外部接続するための、例えば、USB規格に準拠したインタフェースである。フラッシュ制御回路517は内蔵フラッシュ518の発光を制御する回路である。RTC519は時計回路であり、操作部520はシャッタボタンを含む各種スイッチを備え、全体制御部511に操作指示を与える。
【0055】
デジタルカメラに設けられたLCD表示部10、LCD表示装置1000は、それぞれ画像データ変換・補正部10a,1000aとLCD駆動部10b,1000bとを備える。これらの画像データ変換・補正部10a,1000aは、上述の図4に示した例と同様であって、図19に示すように、HVC変換部422、色補正判別部425(抽出手段、検出手段)、HVC調整部423(補正手段)、逆HVC変換部424の回路機能を有する。これにより、上述の実施形態と同等の色補正が行なえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるカラーデジタル複写機の全体構成図。
【図2】 画像読み取り部における画像処理部の全体ブロック図。
【図3】 画像読み取り部における画像処理部の全体ブロック図。
【図4】 色補正判別部のブロック構成図。
【図5】 YとBの色差軸上での補正手法を説明する図。
【図6】 (a)(b)(c)はある画像について作成した色相、彩度、明度のヒストグラム例を示す図。
【図7】 補正手法の処理手順を示すフローチャート。
【図8】 色相の補正処理手順のフローチャート。
【図9】 明度の補正処理手順のフローチャート。
【図10】 明度の補正処理の手法を示す図。
【図11】 彩度の補正処理手順のフローチャート。
【図12】 彩度の補正処理の手法を示す図。
【図13】 (a)は海の青さの中(背景)に人(前景)が映っている場合を示す図、(b)は草の緑の中(背景)に人(前景)が映っている場合を示す図。
【図14】 前景/背景を判別する方法を説明する図。
【図15】 前景/背景判別処理手順を示すフローチャート。
【図16】 ベタ画像を判別する方法を説明する図。
【図17】 本発明の他の実施形態によるデジタルカメラの画像表示システムの全体構成図。
【図18】 同システムの部分ブロック図。
【図19】 色補正判別部のブロック構成図。
【符号の説明】
423 HVC調整部(補正手段)
425 色補正判別部
426 ベタ画像判別部
427 ヒストグラム作成部(検出手段)
428 前景/背景判別部(抽出手段)
436 色データ選択部

Claims (2)

  1. 入力されたカラー画像データを補正処理するカラー画像処理装置において、入力されたカラー画像データから前景部と背景部を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された背景部の色相を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された色相に基づいて、前景部の色相を補正する補正手段とを備え
    前記補正手段は、前景色の色相を背景色の色相の補色の方向とは反対方向に補正することを特徴とするカラー画像処理装置。
  2. 前記補正手段は、前景色と背景色の占める面積がある所定の大きさ以上のときに補正し、それ以下のときには補正しないことを特徴とする請求項1に記載のカラー画像処理装置。
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