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JP4142766B2 - 超音波診断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管部の血流動態、微小血流(パフュージョン)の検出による臓器実質レベルの血行動態の観測、およびそれらの定量評価を行うために、超音波造影剤を被検体に投与して、それによるコントラストエコーを映像化する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波の医学的な応用としては種々の装置があるが、その主流は超音波パルス反射法を用いて生体の軟部組織の断層像を得る超音波診断装置である。この超音波診断装置は無侵襲検査法で、組織の断層像を表示するものであり、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴映像装置(MRI)および核医学診断装置などの他の診断装置に比べて、リアルタイム表示が可能、装置が小型で安価、X線などの被曝がなく安全性が高い、および超音波ドプラ法により血流イメージングが可能であるなどの特徴を有している。このため心臓、腹部、乳腺、泌尿器、および産婦人科などで広く超音波診断が行われている。特に、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。
(造影剤について)
このような超音波診断装置において、例えば心臓および腹部臓器などの検査で静脈から超音波造影剤を注入して、その広がりの様子から血流動態を評価しようとする試みが実用化されつつある。カテーテルを用いて行う動脈投与型造影エコーと異なり、静脈からの造影剤注入は侵襲性が小さいので、この血流動態の評価法による診断が普及するものと考えられている。造影剤の多くは微小気泡(マイクロ微小気泡)が強反射源となり、その注入量や濃度に応じて造影効果を高めることができるが、気泡の性質上、超音波の照射を受けると崩壊するので、造影効果の持続時間が短いという反面もある。ただし、近年、持続性のよい耐圧型の造影剤も開発されているが、体内に長時間存続することは侵襲性を増すことが予想されるためその実用化はまだまだ先のことになると考えられる。
【0003】
臨床における被検体の部位を考えた場合、関心領域には血流によって造影剤が次々に供給されるわけであるから、1度の超音波照射によって関心領域内の気泡が消失しても、次の送信の時点までに新しい気泡が関心領域に流入していれば造影効果は保たれる。しかしながら、超音波の送受信は通常1秒間に数千回行われるし、臓器実質もしくは比較的細い血管では血流速度が遅いので、新しいフレッシュな造影剤が流入する暇無く、造影効果は瞬時に衰弱することは十分予想され得る。
【0004】
ところで造影剤を用いた診断の最も基本的なものは、造影剤による輝度増強の有無を調べることにより診断部位における血流の有無を知るというものである。さらに進んだ診断としては、診断部位における造影剤の空間分布の時間変化の様子を輝度変化の広がりや輝度増強の程度を見て行われており、また、造影剤注入から関心領域(ROI)にそれが到達するまでの時間およびROI内での造影剤によるエコー輝度の経時変化(TIC;Time Intensity Curve)、あるいは最大輝度などを求めることにより行われている。
(ハーモニックイメージングについて)
このような造影剤を用いたコントラストエコー法は、ハーモニックイメージングという手法で更に効果的な診断を獲得している。ハーモニックイメージングは、微小気泡が超音波励起されることによって起こる非線形挙動による高調波成分を、基本周波数成分から分離して映像化するという手法であり、生体臓器は比較的非線形挙動を起こしにくいため、造影剤が良好なコントラスト比で観測できる。
(フラッシュエコー・イメージングについて)
また、上記のように超音波照射によって微小気泡が消滅してしまう現象を積極的に活用する手法としては、“フラッシュエコーイメージング”(参考文献:6795フラッシュエコー映像法の検討(1)、神山直久他、第67回日本超音波医学会研究発表会、1996.6)、あるいは“Trangient Response Imeging”によって輝度増強が改善されることが報告されている。これらは、原理的には、従来型の1秒間に数十フレームといった連続スキャンを、数秒間に1フレームといった間欠的送信にすることで、関心領域に微小気泡が流入し密集する時間を与えて、その微小気泡が集まったところで音圧の高い超音波を送受信して、コントラストの強いエコー信号を得ようとする手法である。
(持続注入法)
また、造影剤を体内に投与する方法にも様々な手法があり、その代表的なものとしては、注射器内に吸入した造影剤を比較的短時間のうちに被検体に投与するボーラス投与法と、点滴のように少量を長時間かけて投与する持続注入方式がある。前者は、投与が比較的簡便で、造影剤が関心領域へ到達したピーク時の輝度は高く、TICに適しているが、ある程度の造影剤濃度が保たれる時間は短く一定でない。後者は、持続注入機といった専用器具を用いて制御する必要があるが、関心領域の造影剤濃度をある程度長時間、一定に保てるという長所があり、ある程度希釈しても造影効果のあるような、優れた造影剤を用いれば、より効果的である。
【0005】
上述のように、静注型造影剤と、ハーモニックイメージングあるいはフラッシュエコーイメージングなどの映像法を用いることで、臓器の微小血流(パフュージョン)の映像化が可能となった。しかしながら、それは常に可能というわけではなく、以下に述べるような問題が生じ、検出が困難となる場合も起こり得ることが知られている。
【0006】
ハーモニックイメージングの原理は、造影剤気泡での非線形な反射に主に由来する高調波成分のみを映像化するものであり、臓器組織での非線形な伝搬に由来する高調波成分が気泡由来の高調波成分に比べて非常に小さいことを前提としているものである。しかし、この臓器由来の高調波成分の小ささには、個人差があり、臓器由来の高調波成分が比較的強く表れる被検体もしばしば見られる。その結果、造影剤投与前であっても臓器自体のエコー輝度が上がってしまい、造影剤投与後も、特に血流が微小な部分は、エコー輝度が造影剤によるものかどうかの確認が困難となってしまう。
【0007】
我々の経験では、臓器の診断時には、肝硬変や脂肪肝とそうでない場合の、エコー輝度は大きく異なっている。同様のことは心筋パフュージョン検出についても言える。心筋組織はやはりエコー信号に比較的高調波成分を多く含む組織である。特に心筋後壁のエコー信号は、心腔内を通過するため、その部分での血液(液体)によって波形が歪み高調波成分が増大してしまう。このため、心筋後壁は造影剤投与前にも関わらずエコー輝度が大きい場合が多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、造影剤を用いたコントラストエコー法を効果的に活用できる超音波診断装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、造影剤として微小気泡を投与した被検体内の断面を第1の超音波で繰り返し走査し、画像を次々と生成する超音波診断装置において、前記第1の超音波による走査の間に、前記微小気泡を崩壊するための第2の超音波を前記第1の超音波の走査範囲の一部分に相当する局部的な範囲に送信し、前記第2の超音波が送信された範囲が、前記第2の超音波の送信後に得られた画像上にマーカで表示されることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明による超音波診断装置を好ましい実施形態により説明する。本発明は、被検体に造影剤を投与して血流状態を増強して観察するコントラストエコー法の改良に関する。ここでは、コントラストエコー法が最も頻繁に使われる肝臓実質又は心臓筋肉へ流入する血流の動態を観測してその中の異常部位を同定するというケースを想定して説明するものとする。
【0011】
図1に、本実施形態に係る超音波診断装置の構成をブロック図により示している。超音波プローブ1の先端付近には、超音波信号と電気信号とを可逆的に変換する振動子が複数配列されている。このプローブ1には、装置本体20が接続され、さらにこの装置本体20には、操作者と装置本体20との間のインタフェースを担う操作パネル10、トラックボール11A、キーボード11B、マウス11C等の入力機器が接続されている。これら入力機器は、従来装置では専ら送受信条件の設定、関心領域(ROI;region of interest)の設定を行うためのものであるが、後述するような本実施形態独自の送信条件を設定し又は変更するための機能も装備している。
【0012】
装置本体20は、超音波送信部3、超音波受信部2、レシーバ部4、Bモードディジタルスキャンコンバータ部(DSC)5、メモリ合成部6、表示部7、イメージメモリ8、ドプラユニット9、送信制御回路12、タイミング信号発生器13及び心拍検出部15を具備している。心拍検出部15には、心電計(ECG)14が接続されている。
【0013】
超音波送信部3は、パルス状の超音波を任意のレートで、任意の向きに送信するために、パルス発生器3A、遅延回路3Bおよびパルサ3Cを有している。一般的に、超音波パルスの送信は、パルス繰り返し周波数(PRF;pulse repetition frequency)に従って、1/PRFという周期で繰り返される。
【0014】
この超音波送信部3は、送信条件制御回路12からの制御信号に従って、送信条件、つまり送信音圧(駆動電圧の振幅)、同時駆動素子数(送信口径)、送信する超音波の中心周波数(基本周波数)、バースト波数等を自由に変えられるようになっている。送信タイミング信号発生器13は、送信条件制御回路12からの制御信号に従って任意のタイミングを超音波を送信させるために送信遅延回路3Bを制御する。
【0015】
プローブ1から送信され、そして被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射した反射波は、同じプローブ1を介して超音波受信部2で受信され、チャンネル毎にプリアンプ2Aで増幅され、受信遅延回路2Bにより受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えられ、加算器2Cで加算される。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより送受信の総合的な超音波ビームが形成される。
【0016】
レシーバ部4は、一般的なBモード画像と、高調波成分により輝度変調をかけたハーモニクス画像とのいずれでも選択的に生成できるように、図示しないが、帯域通過型フィルタ、対数増幅器、包絡線検波回路、アナログディジタルコンバータから構成される。帯域通過型フィルタは、Bモードイメージング法が選択されたとき実質的にパスされ、また、ハーモニックイメージング法が選択されたとき、基本周波数の整数倍、例えば2倍の高調波成分を主に通過するように通過帯域が図示しないシステムコントローラにより調整される。
【0017】
このレシーバ部4からは、超音波スキャンの手順に応じた順序でBモード画像やハーモニクス画像に関するデータが一次元信号として出力される。このデータの順序は、Bモード用ディジタルスキャンコンバータ部5により、ビデオフォーマットの順番に並び替えられ(座標変換され)、メモリ合成部6に送られる。メモリ合成部6では、この画像データに、設定パラメータ等のグラフィックデータが合成され、実際の表示画面に相当するビデオ信号が生成される。このビデオ信号は、表示部7に送られ、そこで表示される。
【0018】
カラードプラモード時には、受信部2の出力信号はドプラユニット9に送られる。ドプラユニット9は、この出力信号を直交検波して、ドプラ効果により偏移した偏移周波数成分、いわゆるドプラ信号を取り出し、このドプラ信号から目的とする血流に関する高周波成分以外の比較的低周波のクラッタ成分を除去し、高周波成分を抽出し、この抽出した高周波信号を自己相関にかけて、そしてその相関結果に基づいて平均速度、パワー、分散を多数点各々に関して計算する。そして、この平均速度、パワー、分散それぞれ単独で、又は任意に組み合わせられてカラーフローマッピング画像を作成する。このカラーフローマッピング画像も、メモリ合成部6を介して表示部7にカラーで表示される。
【0019】
イメージメモリ8は、ディジタルスキャンコンバータ部5で座標変換前又は座標変換後のいずれか一方の形式で、又は両方の形式で画像データを記憶保持しておき、超音波スキャンの後に操作者が適時自由に呼び出して再生表示するために設けられている。
【0020】
心電計14は、電極を被検体の体表の適当な場所に付着させて、心電波形を得るものである。心拍検出部15は、得られた心電波形を超音波画像と共に表示部7へ表示させるためにメモリ合成部6へ送る。また、心電波形に同期して収集された心臓の画像、いわゆる心電同期画像を得るためのトリガ信号として、タイミング信号発生器13に対し心電波形を出力する。
【0021】
次に、本実施形態で特徴的な送信条件制御回路12の制御による送信方法について説明する。この送信方法は、Bモード又はハモニクスモードのいずれでも適用できる。この送信条件制御回路12の制御により、第1と第2の2種類の超音波がプローブ1から送信され得る。第1の超音波は、被検体内部の軟部組織をイメージするのに好適な第1の送信条件(プローブ1の種類、送信駆動音圧、送信駆動素子数(送信口径)、中心周波数、バースト波数等)に従って送信され、また、第2の超音波は、超音波造影剤(微小気泡)を崩壊させるのに好適な第2の送信条件で送信される。
【0022】
図2には、送信条件制御回路12の制御による送信手順を示している。まず、第1の送信条件による第1の超音波が被検体に送信され、そして被検体からの反射波が受信される。この送信及び受信の方向が少しずつ移動されて、被検体内の断面が一通り走査される。図3(a)には、この走査範囲(ここでは、超音波走査線番号1から99)を示している。ここでは、99本の超音波走査線(中央が50番目)で1枚の画像が構成されるものと仮定する。例えば、1フレーム(1枚の画像)分の走査に要する時間、つまりフレーム間隔は、通常、Bモードやハモニクスモードの場合、超音波走査線本数/PRFで与えられる。この第1の超音波による1フレーム分の走査は、ここでは、心電同期により1心拍周期で間欠的に繰り返される。なお、図2の例のように1心拍周期で走査を間欠的に繰り返してもよいが、これには限定されず、例えば2,3又はそれ以上の比較的長い心拍周期で繰り返してもよいし、さらには、心電同期を採らずに、内部のクロック信号を使って1秒,2秒,…といった固定周期で繰り返してもよい。これら走査の周期は、操作者が操作パネル10を走査して自由に設定、変更できるようになっている。
【0023】
このような第1の超音波による1フレーム分の間欠的な走査各々の直前に、微小気泡を消失させるための第2の超音波が局部的に送信される。図3(b)には、この第2の超音波を送信する局部的な範囲(ここでは、超音波走査線番号48から52)を示している。第2の超音波を送信する局部的な範囲は、第1の超音波による走査範囲よりも狭く、その一部分に相当する。この場合、第2の超音波を目的方向に送信するための遅延データは、微小気泡を崩壊するのに、より効率的な独自の遅延データを用いて構成しても良い。例えば心腔部に強い音場ピークを持つような遅延データが考えられる。また、第1の超音波の遅延データの一部を流用すれば、データの共有によって効率化を図ることができる。
【0024】
ここでは、超音波走査線番号48から52まで第2の超音波を1回ずつ一通り送信し、このセットを2回繰り返すようにしているが、これ以上の回数繰り返してもよいし、さらには隣り合う1フレーム分の走査のインターバルの期間に継続的に送信するようにしてもよい。
【0025】
この第2の超音波の送信により生じるエコーは、受信されないか、受信してもそのエコー信号に基づく画像生成処理は行わないで破棄してしまうか、或いは画像生成処理して超音波走査線番号48から52までの部分的な画像を生成するが表示や記録には供さないか、いずれにしても画像として表示や記録するのは、第1の超音波によるものだけであって、第2の超音波の送信による画像は表示しないし、記録もしないものである。
【0026】
このようにイメージングのための走査の直前に、微小気泡を崩壊させるために第2の超音波を局部的に送信することにより、次のような効果が奏される。まず、第2の超音波が送信されると、ある程度の音圧が確保される領域において、その中の微小気泡が崩壊され、殆ど消失された状態になる。この後、血流にのって新しい微小気泡が当該領域に流入してくるが、第1の超音波による走査を開始する時点においては、その猶予は殆ど無く、当該領域内には殆ど微小気泡が存在しない状態にある。
【0027】
従って、図4に示すように、当該第2の超音波が送信された領域A以外の領域Bには微小気泡が充分存在するので輝度増強されているが、一方、第2の超音波が送信された領域Aには微小気泡が殆ど存在していないので輝度増強されていない。このような画像からは、輝度増強された領域Bの輝度を、輝度増強されていない領域Aの輝度と比較しながら観察することができ、例えばハーモニックイメージングの時には高調波成分が、微小気泡の弾性散乱(非線形挙動)に由来するのか、あるいは臓器の非線形伝搬に由来するものなのかを、1枚の画像のみで判断可能であり、これにより臓器の血流パフュージョンを診断する際に非常に効果的に微小な血流を認識できる。
【0028】
つまり、1枚の画像で、輝度増強効果を受けた部分と、輝度増強効果を受けていない部分とを観察することができる。従って、両部分の輝度を比較することにより、輝度増強効果の程度を知り得る。これは、輝度が、造影剤に由来して高くなっているのか、あるいは組織に由来して高くなっているのか、換言すると、造影剤だけによる輝度増強はどの程度なのかを、個人差の大きい組織由来の輝度レベルに左右されることなく、観察者が把握することができるようになる。
【0029】
また、操作者は、トラックボール11A等を用いて、第2の超音波を送信する範囲を、リアルタイムに変更可能であるので、例えば第2の超音波を送信する超音波走査線を48〜52から50〜55に変更しながら、所望の領域が第2の超音波によって影響を受けるかどうか、すなわちその領域に気泡が存在するかどうかをリアルタイムに評価することが可能である。
【0030】
もう少し具体的に述べると、領域A、Bの境界付近で、A、Bの輝度レベルが共に30程度で同等であれば、心臓に微小気泡はあまり流入されずに微小気泡のコントラスト増強効果はあまり発揮されていなくて、当該領域Bの部分の輝度は心筋のエコー信号に由来するものと考えられる。もし、領域Aの輝度が10程度と領域Bのそれよりも低ければ、領域Bの輝度レベルは微小気泡(造影剤)によるものであるとわかる。
【0031】
上述のように第2の超音波を送信する領域は、第1の超音波による走査範囲の一部であれば、その場所や広さには特に制限はない。例えば、図5に示すように、図3(b)とちょうど逆に、走査範囲の中央付近を挟んで両側の広い範囲に第2の超音波を送信して、この範囲に対応する領域おいて微小気泡を消失させるようにしてもよい。
【0032】
このように比較的広範囲に第2の超音波を送信することにより、次のような効果が奏されるものである。すなわち、流動速度の大きい心腔内の微小気泡をより壊すことができるという点である。例えば、第2の超音波を送信しない領域Bを心腔内に合わせると、その心腔内の血液は流動が速いため、第1の超音波で走査を開始する時点では、当該心腔内に気泡濃度の低い血液が流れ込み、結果的に、当該心腔内の血液の気泡濃度は中程度になって、超音波の心腔内の微小気泡による減衰や歪みが少ない状態で、イメージングのための第1の超音波が、心腔後壁部まで到達することができ、心筋後壁を高感度に得られ、後壁の血流パフュージョンの検出を容易にすることが可能となる。なお、この場合の心筋部は、血流速が非常に遅いため、領域A、Bの血液が互いに入れ替わったりすることはない。
【0033】
次に、操作者の操作手順について、図6を参照して説明する。
ステップ1(S1);まず、イメージングのための第1の超音波に関する第1の送信条件を設定する。送信条件には、プローブ1の種類、送信駆動音圧、送信駆動素子数(送信口径)、中心周波数、バースト波数等が含まれる。
【0034】
S2;第1の超音波による断面の間欠的な走査を、心電同期で行うか、内部時計による固定的な周期で行うかを設定する。あるいは心電同期以外の外部トリガであってもよい。
【0035】
S3;S2で設定したトリガの選択に合わせて、走査のインターバルt1を設定する。心電同期の場合、1心拍期間を単位としてその整数倍に、また内部時計による固定的な周期で行う場合、0.1,0.2,…1,2,…[秒]などと設定する。
【0036】
S4;次に、微小気泡を崩壊させるための第2の送信条件を設定する。この第2の送信条件は、送信駆動音圧等の一般的なものと、後述するような本発明に独自のものとがある。まず、第2の送信条件のうち一般的なものが、第1の送信条件と比較して、送信駆動音圧、送信駆動素子数(送信口径)、中心周波数、駆動波数のうち少なくとも1つが、微小気泡の崩壊効率が高くなるように相違される。例えば、中心周波数は第2の送信条件の方が、第1の送信条件よりも低く設定され、また、送信駆動音圧は第2の送信条件の方が、第1の送信条件よりも高く設定され、また、送信駆動素子数(送信口径)は第2の送信条件の方が、第1の送信条件よりも多く(広く)設定される。あるいは、両者は同じ条件であっても、ある程度の微小気泡崩壊効果は得られる。
【0037】
また、入力機器を操作して、第2の送信条件に含まれる第2の超音波を送信する範囲の広さの初期値を、図7に示すアングルマーカ200の開き角度を動かしながら、または第2超音波を送信する超音波走査線の幅(本数)を数値入力することにより、設定する。なお、これは後述のように、観測時にトラックボール11A等の入力機器を操作してリアルタイムに変更可能である。
【0038】
次に、入力機器を操作して、第2の送信条件に含まれる第2の超音波を送信する範囲の位置(向き)の初期値を、図7に示すアングルマーカ200の向きを動かしながら設定する。これも、観測時にトラックボール11A等の入力機器を操作してリアルタイムに変更可能である。
【0039】
さらに、第2の送信条件のなかの第2の超音波を送信するセット数、つまり各走査線に第2の超音波を何回送信(ショット)するかを選択する。これも、観測時にトラックボール11A等の入力機器を操作してリアルタイムに変更可能である。第2の超音波は第1の超音波による画像に影響を及ぼすため、このセット数は特に重要である。
【0040】
S5;以上のように第2の送信条件の初期値の設定が完了すると、図2に示した送信シーケンスの実行が開始される。
S6;その後、造影剤(微小気泡)を被検体に投与し、観測する。この間、図7に示すように、第2の超音波の送信範囲が、アングルマーカ200で表示されているのが、これが造影効果の観測の妨げになる場合もあるため、操作パネル10で、このマーカ200の表示/非表示を選択することができるようになってる。
【0041】
また、第2の送信条件の一部(図7の例では、インターバル=3[心拍毎]、第2の超音波の送信のセット数=10)が表示されている)がテキストで表示される。言うまでもないが、第2の送信条件も、通常の送信条件のごとく表示することができる。
【0042】
さらにこれらアングルマーカ200や第2の送信条件は、診断後にイメージメモリ8から画像データを呼び出して再生する場合にも、同様に表示される。
S7;そして、必要に応じて、上記S4の第2の送信条件を、キーボード11Bやトラックボール11A等の入力機器を使って、適当に変更する。特に、第2の超音波の送信/停止をリアルタイムに行うことができ、両者での領域Aの染影の違いを比べることができる。
【0043】
なお、上述のステップ4(S4)においては、図8(a)に示すように、第2の超音波の送信終了から第1の超音波による走査開始までの時間間隔t2についても、自由に設定できるようになっている。また、この時間間隔t2を、図8(b)に示すように、t2−1,t2−2,t2−3,…というように、走査毎に変えていくようにプログラムすることも可能とする。具体値としては、t2−1,t2−2,t2−3,…,t2−8=0.1,0.2,…0.8[秒]などである。
【0044】
このように消失から走査までの時間間隔t2を適当に設定することにより、次のような効果が奏される。図9において、領域Aは、第1の超音波によって走査される全領域(断面)のうち、第2の超音波による微小気泡の崩壊効果の大きい範囲を示している。時間間隔t2が長くなればなるほど、第2の超音波によって微小気泡が消失された後に、新しい微小気泡が血流にのって流入してくる量が増加して、輝度がより増強されていく。この時間間隔t2がある長さを越えると、輝度レベルは収束(飽和)する。
【0045】
図10には、図8(b)のように時間間隔t2を変えながら輝度時間グラフ生成部(TIC)16により収集された領域Aの輝度と時間間隔t2との関係を示している。微小気泡が消失してから、輝度が飽和レベルまで回復するのに要する時間は、図10のdata1,data2に示すように、部位によって、つまり血流の速さに依存して変わる。例えばdatalに示す血流速度の比較的速い心臓等の部位では、回復時間は約0.2秒であり、一方、datalに示す血流速度の比較的遅い腹部等の部位では、回復時間は約0.4秒を要する。このように、部位の血流速度を考慮して、時間間隔t2を最適に設定することができる。また、輝度の収束値(造影剤が充分流入した時の輝度値)からは、data1の部位が、data2の部位よりも、血液の容量が多いという情報だけでなく、臓器組織の関心領域への血流スピードや、血流容量を定量的に求めることも可能となる。
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、造影剤を用いたコントラストエコー法を効果的に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態による送信シーケンスを示す図。
【図3】(a)はイメージングのための第1の送信条件の超音波で被検体を走査する範囲を示し、(b)は微小気泡を消失させるための第2の送信条件で超音波を送信する範囲を示す図。
【図4】本実施形態のコントラストエコー法により得られる画像を示す図。
【図5】第2の送信条件で超音波を送信して微小気泡を消失させる範囲を広範囲にした場合の画像を示す図。
【図6】本実施形態による操作者の操作手順を示すフローチャート。
【図7】第2の送信条件の表示例を示す図。
【図8】(a)は時間間隔t2を変更した送信シーケンスを示す図、(b)は時間間隔t2を経時的に変動させるようにプログラムした送信シーケンスを示す図。
【図9】第2の送信条件で送信された超音波によって微小気泡が局部的に消失し、その後、血流にのって新たな微小気泡が流入する様子を模式的に示す図。
【図10】領域Aの輝度が時間間隔t2に依存して変化する様子をグラフで見た図。
【符号の説明】
1…超音波プローブ、
2…受信部、
2A…プリアンプ、
2B…受信遅延回路、
2C…加算器、
3…送信部、
3A…パルス発生器、
3B…送信遅延回路、
3C…パルサ、
4…レシーバ部、
5…Bモードディジタルスキャンコンバータ部、
6…メモリ合成部、
7…表示部、
8…イメージメモリ、
9…ドプラユニット、
10…操作パネル、
11A…トラックボール、
11B…キーボード、
11C…マウス、
14…心電計、
15…心拍検出部、
16…輝度時間グラフ生成部、
20…装置本体。

Claims (20)

  1. 造影剤として微小気泡を投与した被検体内の断面を第1の超音波で繰り返し走査し、画像を次々と生成する超音波診断装置において、
    前記第1の超音波による走査の間に、前記微小気泡を崩壊するための第2の超音波を前記第1の超音波の走査範囲の一部分に相当する局部的な範囲に送信し、
    前記第2の超音波が送信された範囲が、前記第2の超音波の送信後に得られた画像上にマーカで表示されることを特徴とした超音波診断装置。
  2. 前記第2の超音波を送信する領域は、前記第1の超音波で走査する断面の一部分であることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  3. 前記第1の超音波による走査は、心電波形に同期して間欠的に繰り返されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  4. 前記第1の超音波による走査は、任意の周期で間欠的に繰り返されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  5. 前記第2の超音波は、同一方向に繰り返し送信されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  6. 前記第2の超音波は、前記第1の超音波とは、送信駆動音圧、送信駆動素子数、中心周波数、バースト波数の少なくとも1つが異なることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  7. 前記第2の超音波の送信条件は、操作者によって任意の設定可能であることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  8. 前記第2の超音波の送信の向きを決める遅延データは、前記第1の超音波で走査するために使われる遅延データが流用されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  9. 前記第2の超音波の送信の向きを決める遅延データは、前記第1の超音波で走査するために使われる遅延データとは別のものが使われていることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  10. 前記第2の超音波を送信する範囲、方向の少なくとも一方は、操作者により任意に設定可能になっていることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  11. 前記第2の超音波を送信する範囲、方向の少なくとも一方は、前記第1の超音波により断面を走査している最中に、操作者により任意に変更可能であることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  12. 前記第2の超音波の送信は、前記第1の超音波により断面を走査している最中に、操作者により一時的に中断させることが可能になっていることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  13. 前記第2の超音波の送信条件の少なくとも一部が、前記画像と同画面に表示されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  14. 前記第2の超音波の送信条件の少なくとも一部は、再生表示される前記画像と同画面に表示されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  15. 前記第1の超音波の走査によって得られる画像のみが表示されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  16. 前記第1の超音波の走査によって得られる画像のみが記録されることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  17. 前記マーカの表示と非表示が操作者の指示により選択可能になっていることを特徴とした請求項記載の超音波診断装置。
  18. 前記第2の超音波を送信してから前記第1の超音波による断面走査を開始するまでの時間間隔は、操作者により任意に調整可能になっていることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  19. 前記第2の超音波を送信してから前記第1の超音波による断面走査を開始するまでの時間間隔は、前記第1の超音波による断面走査ごとに変動するようにプログラムできるようになっていることを特徴とした請求項1記載の超音波診断装置。
  20. 前記時間間隔の変化に対する前記第2の超音波を送信した場所の輝度の変化を表すグラフを生成可能になっていることを特徴とした請求項19記載の超音波診断装置。
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