JP4019549B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機は、例えば自動車用の変速機の変速ユニットとして、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図13〜14に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシング5(後述する図15〜17)の内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸6、6を中心として揺動するトラニオン7、7を設けている。
【0003】
即ち、これら各トラニオン7、7は、両端部外側面に上記各枢軸6、6を、互いに同心に設けている。従って、これら各枢軸6、6は、上記両ディスク2、4の中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向に設けられている。又、これら各トラニオン7、7の中心部には変位軸8、8の基端部を支持し、上記各枢軸6、6を中心として各トラニオン7、7を揺動させる事により、上記各変位軸8、8の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン7、7に支持された変位軸8、8の周囲には、それぞれパワーローラ9、9を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ9、9を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持している。これら入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸6を中心とする円弧を上記入力軸1及び出力軸3を中心に回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した各パワーローラ9、9の周面9a、9aを、上記各内側面2a、4aに当接させている。
【0004】
上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置10を設け、この押圧装置10によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装置10は、入力軸1と共に回転するカム板11と、保持器12により保持した複数個(例えば4個)のローラ13、13とから構成している。上記カム板11の片側面(図13〜14の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面14を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図13〜14の右側面)にも、同様のカム面15を形成している。そして、上記複数個のローラ13、13を、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板11が回転すると、カム面14によって複数個のローラ13、13が、入力側ディスク2の外側面に形成したカム面15に押圧される。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ9、9に押圧されると同時に、上記1対のカム面14、15と複数個のローラ13、13との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸6、6を中心として前記各トラニオン7、7を所定方向に揺動させ、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図13に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸8、8を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各枢軸6、6を中心として上記各トラニオン7、7を反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図14に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸8、8を傾斜させる。各変位軸8、8の傾斜角度を図13と図14との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】
上述の様なトロイダル型無段変速機により、実際の自動車用変速機を構成する場合、入力側ディスク2と出力側ディスク4とパワーローラ9、9とを2組設け、これら2組の入力側ディスク2と出力側ディスク4とパワーローラ9、9とを、動力の伝達方向に対して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機も、従来から広く知られている。図15〜17は、この様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の一種で、特公平8−23386号公報に記載されて従来から知られているものを示している。
【0008】
ケーシング5の内側には入力軸1aを、回転のみ自在に支持している。そして、この入力軸1aの周囲に円管状の伝達軸16を、この入力軸1aと同心に、且つこの入力軸1aに対する相対回転を自在に支持している。この伝達軸16の中間部両端寄り部分には、請求項2に記載した第一、第二外側ディスクに相当する第一、第二両入力側ディスク17、18を、互いの内側面2a、2a同士を対向させた状態で、それぞれボールスプライン19、19を介して支持している。従って、上記第一、第二両入力側ディスク17、18は、上記ケーシング5の内側に、互いに同心に且つ互いに同期した回転自在に支持されている。
【0009】
又、上記伝達軸16の中間部の周囲には、請求項2に記載した第一、第二内側ディスクに相当する第一、第二両出力側ディスク20、21を、スリーブ22を介して支持している。このスリーブ22は、中間部外周面に出力歯車23を一体に設けたもので、上記伝達軸16の外径よりも大きな内径を有し、上記ケーシング5内に設けた支持壁24に、1対の転がり軸受25、25により、上記伝達軸16と同心に、且つ回転のみ自在に支持している。上記第一、第二両出力側ディスク20、21は、この様に上記伝達軸16の中間部周囲に、この伝達軸16に対し回転自在に支持したスリーブ22の両端部に、それぞれの内側面4a、4aを互いに反対に向けた状態で、スプライン係合させている。従って、上記第一、第二両出力側ディスク20、21は、それぞれの内側面4a、4aを上記第一、第二何れかの入力側ディスク17、18の内側面2a、2aに対向させた状態でこれら第一、第二両入力側ディスク17、18と同心に、且つこれら第一、第二両入力側ディスク17、18とは独立した回転自在に支持されている。
【0010】
又、前記ケーシング5の内面で上記第一、第二両出力側ディスク20、21の側方位置には、これら両出力側ディスク20、21を両側から挟む状態で、1対のヨーク26a、26bを支持している。これら両ヨーク26a、26bは、請求項2に記載した第一、第二支持手段を構成するヨークに対応するもので、それぞれ、鋼等の金属板にプレス加工を施す事により、或は鋼等の金属材料に鍛造加工を施す事により、矩形枠状に形成している。これら各ヨーク26a、26bは、それぞれの四隅部に、後述する第一、第二両トラニオン27、28の両端部に設けた第一、第二両枢軸29、30を揺動自在に支持する為の円形の支持孔31、31を、上記伝達軸16の軸方向(図15の左右方向)両端部の幅方向(図16〜17の左右方向)中央部に、円形の係止孔32、32を、それぞれ形成している。それぞれがこの様な形状を有する上記1対のヨーク26a、26bは、上記ケーシング5の内面で互いに対向する部分に形成した支持ポスト33a、33bに、若干の変位自在に支持している。これら各支持ポスト33a、33bはそれぞれ、第一入力側ディスク17の内側面2aと第一出力側ディスク20の内側面4aとの間部分である第一キャビティ34、第二入力側ディスク18の内側面2aと第二出力側ディスク21の内側面4aとの間部分である第二キャビティ35に、それぞれ対向する状態で設けている。従って、上記各ヨーク26a、26bを上記各支持ポスト33a、33bに支持した状態で、これら各ヨーク26a、26bの一端部は上記第一キャビティ34の外周部分に、他端部は上記第二キャビティ35の外周部分に、それぞれ対向する。
【0011】
又、上記第一キャビティ34内で第一入力側ディスク17及び第一出力側ディスク20の直径方向反対位置には1対の第一トラニオン27、27を、上記第二キャビティ35内で第二入力側ディスク18及び第二出力側ディスク21の直径方向反対位置には1対の第二トラニオン28、28を、それぞれ配置している。このうち、上記各第一トラニオン27、27の両端部に互いに同心に設けた、各第一トラニオン27、27毎に2本ずつ、合計4本の第一枢軸29、29は、図16に示す様に、上記1対のヨーク26a、26bの一端部に、揺動並びに軸方向に亙る変位自在に支持している。即ち、これら各ヨーク26a、26bの一端部に形成した支持孔31、31の内側に上記各第一枢軸29、29を、ラジアルニードル軸受36、36により支持している。これら各ラジアルニードル軸受36、36はそれぞれ、外周面が球状凸面であり内周面が円筒面である外輪37と複数本のニードル38、38とから成る。従って上記各第一枢軸29、29は、上記各ヨーク26a、26bの一端部の幅方向両側に、各方向の揺動並びに軸方向に亙る変位自在に支持されている。又、上記各第二トラニオン28、28の両端部に互いに同心に設けた1対ずつの第二枢軸30、30は上記第二キャビティ35内に、図17に示す様に、上記第一トラニオン27、27に設けた上記各第一枢軸29、29と同様の構造により支持している。
【0012】
上述の様にして前記ケーシング5の内側に、揺動及び上記第一、第二各枢軸29、30の軸方向に亙る変位自在に支持した、上記第一、第二各トラニオン27、28の中間部にはそれぞれ、図16〜17に示す様に円孔39、39を形成している。そして、これら各円孔39、39部分に、第一、第二各変位軸40、41を支持している。これら第一、第二各変位軸40、41はそれぞれ、互いに平行で且つ偏心した支持軸部42、42と枢支軸部43、43とを有する。このうちの各支持軸部42、42を上記各円孔39、39の内側に、ラジアルニードル軸受44、44を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部43、43の周囲に第一、第二各パワーローラ45、46を、別のラジアルニードル軸受47、47を介して回転自在に支持している。
【0013】
尚、前記第一、第二各キャビティ34、35毎に1対ずつ設けた、上記第一、第二各変位軸40、41は、上記第一、第二各キャビティ34、35毎に、前記入力軸1a及び伝達軸16に対して180度反対側位置に設けている。又、これら第一、第二各変位軸40、41の各枢支軸部43、43が各支持軸部42、42に対し偏心している方向は、前記第一、第二入力側、出力側各ディスク17、18、20、21の回転方向に関して同方向(図16〜17で上下逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸1aの配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各第一、第二各パワーローラ45、46は、上記入力軸1a及び伝達軸16の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、トロイダル型無段変速機により伝達するトルクの変動に基づく、構成各部材の弾性変形量の変動等に起因して、上記各第一、第二各パワーローラ45、46が上記入力軸1a及び伝達軸16の軸方向(図15の左右方向、図16〜17の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、構成各部材に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0014】
又、上記各第一、第二各パワーローラ45、46の外側面と前記第一、第二各トラニオン27、28の中間部内側面との間には、第一、第二各パワーローラ45、46の外側面の側から順に、スラスト玉軸受48、48と、滑り軸受或はニードル軸受等のスラスト軸受49、49とを設けている。このうちのスラスト玉軸受48、48は、上記各第一、第二各パワーローラ45、46に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各第一、第二各パワーローラ45、46の回転を許容する。又、上記各スラスト軸受49、49は、上記各第一、第二各パワーローラ45、46から上記各スラスト玉軸受48、48の外輪50、50に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記枢支軸部43、43及び上記外輪50、50が前記支持軸部42、42を中心に揺動する事を許容する。
【0015】
更に、上記第一、第二各トラニオン27、28の一端部(図16〜17の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド51、51を結合し、これら各駆動ロッド51、51の中間部外周面に駆動ピストン52、52を固設している。そして、これら各駆動ピストン52、52を、それぞれ駆動シリンダ53、53内に油密に嵌装している。これら各駆動ピストン52、52と駆動シリンダ53、53とが、それぞれ上記第一、第二各トラニオン27、28を第一、第二各枢軸29、30の軸方向に亙って変位させる為のアクチュエータを構成する。又、上記各駆動シリンダ53、53内には、図示しない制御弁の切り換えに基づいて、圧油を給排自在としている。
【0016】
更に、前記入力軸1aと前記第一入力側ディスク17との間には、ローディングカム式の押圧装置10を設けている。この押圧装置10は、上記入力軸1aの中間部にスプライン係合すると共に軸方向に亙る変位を阻止された状態で支持されて、上記入力軸1aと共に回転するカム板11と、保持器12に転動自在に保持された複数のローラ13とを含んで構成している。そして、上記入力軸1aの回転に基づいて上記第一入力側ディスク17を、第二入力側ディスク18に向け押圧しつつ回転させる。
【0017】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の運転時、入力軸1aの回転は押圧装置10を介して第一入力側ディスク17に伝えられ、この第一入力側ディスク17と第二入力側ディスク18とが、互いに同期して回転する。そして、これら第一、第二両入力側ディスク17、18の回転が、前記第一、第二両キャビティ34、35内にそれぞれ1対ずつ設けた第一、第二各パワーローラ45、46を介して、第一、第二両出力側ディスク20、21に伝えられ、更にこれら第一、第二両出力側ディスク20、21の回転が、前記出力歯車23より取り出される。入力軸1aと出力歯車23との間の回転速度比を変える場合には、上記制御弁の切り換えに基づいて、上記第一、第二両キャビティ34、35に対応してそれぞれ1対ずつ設けた駆動ピストン52、52を、各キャビティ34、35毎に互いに逆方向に同じ距離だけ変位させる。
【0018】
これら各駆動ピストン52、52の変位に伴って上記1対ずつ合計4個のトラニオン27、28が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図16〜17の右側の第一、第二両パワーローラ45、46が各図の下側に、図16〜17の左側の第一、第二両パワーローラ45、46が各図の上側に、それぞれ変位する。この結果、これら各第一、第二各パワーローラ45、46の周面9a、9aと上記第一、第二両入力側ディスク17、18及び第一、第二両出力側ディスク20、21の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って前記第一、第二各トラニオン27、28が、ヨーク26a、26bに枢支した第一、第二各枢軸29、30を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図13〜14に示した様に、上記各第一、第二各パワーローラ45、46の周面9a、9aと上記各ディスク17、18、20、21の内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸1aと出力歯車23との間の回転速度比が変化する。
【0019】
図15〜17に示した従来構造の場合、第一、第二各トラニオン27、28をケーシング5の内側に、それぞれ支持ポスト33a、33b及びヨーク26a、26bを介して支持している。この為、部品点数の増大により、部品製作、部品管理、組立作業が面倒になるだけでなく、図15〜17の上下方向に関する、トロイダル型無段変速機の高さ寸法が嵩み、小型・軽量化を図りにくくなる。又、限られた空間に設置可能にすべく、無理に小型・軽量化を図ると、各部の強度が不足し、十分な耐久性を確保できなくなる。
【0020】
これに対して、特開平10−274300号公報には、トロイダル型無段変速機を構成する各トラニオンの両端部に設けた枢軸を、ケーシングの内面に直接固定した支持部材に枢支する構造が記載されている。この様な構造によれば、部品点数の低減による小型・軽量化を或る程度図る事は可能である。但し、上記公報に記載されたトロイダル型無段変速機の場合には、各トラニオン端部の枢軸を支持する為の支持部材を、トラニオン毎に独立して設けている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
上述の特開平10−274300号公報に記載された構造の場合には、トロイダル型無段変速機の運転時に各トラニオンに作用する荷重が、そのままケーシングに加わる。即ち、トロイダル型無段変速機の運転時には、入力側、出力側両ディスクの内側面と各パワーローラの周面との当接部に加わる大きな面圧に基づき、これら各パワーローラに大きなスラスト荷重が加わる。そして、このスラスト荷重は、各トラニオンを介して、これら各トラニオンの端部に設けた枢軸の支持部に加わる。上記公報に記載された構造の場合には、この様にして枢軸に加わる大きな荷重が、そのままケーシングに加わる。変速機のケーシングは、軽量化の為にアルミニウム合金等の軽合金により造る場合が多く、上記大きな荷重に拘らず、上記枢軸の変位を防止すると共に上記ケーシングの耐久性を確保する為には、このケーシングの肉厚を大きくする等の対策が必要になり、小型・軽量化に逆行する。
【0022】
又、トロイダル型無段変速機の運転時に上記各トラニオンは、上記各パワーローラから加わる大きなスラスト荷重に基づいて、それぞれの内側面が凹面となる方向に弾性変形する。この結果、上記各トラニオンの端部に設けた枢軸の中心軸と、ケーシングの内面に固定した支持部材に設けた円孔の中心軸とが、僅かとは言え非平行になる。上記公報に記載された構造は、この様な状態でも上記各トラニオンの変位を円滑に、構成各部材を損傷する事なく行なう事に就いて考慮していない。
本発明のトロイダル型無段変速機は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機のうち、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機は、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、ケーシングと、このケーシングの内側に互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら両ディスクの間部分で、これら両ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な偶数本の枢軸と、これら各枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面から突出した変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラと、これら各パワーローラの側方に設けられて上記各枢軸を揺動変位並びに軸方向に亙る変位自在に支持する支持手段とを備える。
特に、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記支持手段を構成して複数個のトラニオンの端部に設けた枢軸をその端部に支持するヨークを、上記ケーシングの内面に直接支持固定している。これと共に、このヨークの端部に対して上記各枢軸を、ボールスプラインと、このボールスプラインの内径側に設けられたニードル軸受とにより、揺動及び軸方向の変位を自在に支持している。このうちのボールスプラインは、部分球面状の凸面である外周面を上記ヨークに形成した円孔に揺動変位自在に内嵌したボールスプライン用外輪の内周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した複数本の外輪側ボールスプライン溝と、このボールスプライン用外輪の内径側に配置したボールスプライン用内輪の外周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した内輪側ボールスプライン溝との間に、それぞれ複数個ずつのボールを配置して成るものである。又、上記ニードル軸受は、上記ボールスプライン用内輪の内周面に設けた円筒面状の外輪軌道と上記各枢軸の外周面に形成した円筒面状の内輪軌道との間に複数本のニードルを配置して成るものである。
【0024】
又、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機も、前述した従来のトロイダル型無段変速機と同様に、ケーシングと、このケーシングの内側に互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に且つ互いに同期した回転自在に支持された第一、第二外側ディスクと、その内側面を第一外側ディスクの内側面に対向させた状態でこれら第一、第二外側ディスクと同心に、且つこれら第一、第二外側ディスクとは独立した回転自在に支持された第一内側ディスクと、その内側面を第二外側ディスクの内側面に対向させた状態で上記第一内側ディスクと同心に、且つこの第一内側ディスクと同期した回転自在に支持された第二内側ディスクと、上記第一外側ディスクと第一内側ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な4本の第一枢軸と、これら各第一枢軸を中心として揺動する1対の第一トラニオンと、これら各第一トラニオンの内側面から突出した第一変位軸と、これら各第一変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第一外側ディスクの内側面と第一内側ディスクの内側面との間に挟持された1対の第一パワーローラと、上記第二外側ディスクと第二内側ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な4本の第二枢軸と、これら各第二枢軸を中心として揺動する1対の第二トラニオンと、これら各第二トラニオンの内側面から突出した第二変位軸と、これら各第二変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第二外側ディスクの内側面と第二内側ディスクの内側面との間に挟持された1対の第二パワーローラと、第一、第二内側ディスクの側方に、これら両内側ディスクを両側から挟む状態で、且つ一端部を上記第一外側ディスクと第一内側ディスクとの間部分に、他端部を上記第二外側ディスクと第二内側ディスクとの間部分に、それぞれ位置させた状態で、互いにほぼ平行に設けられた第一、第二支持手段とを備える。
そして、このうちの第一支持手段は、上記4本の第一枢軸のうちの2本の第一枢軸と上記4本の第二枢軸のうちの2本の第二枢軸とを揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、第二支持手段は、上記4本の第一枢軸のうちの残り2本の第一枢軸と上記4本の第二枢軸のうちの残り2本の第二枢軸とを揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものである。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記第一、第二両支持手段を構成して複数個のトラニオンの端部に設けた枢軸をその四隅部に支持するヨークを、上記ケーシングの内面に直接支持固定している。これと共に、このヨークの四隅部に対して上記各枢軸を、ボールスプラインと、このボールスプラインの内径側に設けられたニードル軸受とにより、揺動及び軸方向の変位を自在に支持している。このうちのボールスプラインは、部分球面状の凸面である外周面を上記ヨークに形成した円孔に揺動変位自在に内嵌したボールスプライン用外輪の内周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した複数本の外輪側ボールスプライン溝と、このボールスプライン用外輪の内径側に配置したボールスプライン用内輪の外周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した内輪側ボールスプライン溝との間に、それぞれ複数個ずつのボールを配置して成るものである。又、上記ニードル軸受は、上記ボールスプライン用内輪の内周面に設けた円筒面状の外輪軌道と上記各枢軸の外周面に形成した円筒面状の内輪軌道との間に複数本のニードルを配置して成るものである。
【0025】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機により、入力側ディスク又は第一、第二両外側ディスクと、出力側ディスク又は第一、第二両内側ディスクとの間で回転力の伝達を行なうと共に、これら入力側ディスク又は第一、第二両外側ディスクと、出力側ディスク又は第一、第二両内側ディスクとの間の変速比を変える際の作用は、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様である。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、支持手段又は第一、第二両支持手段を構成するヨークを、上記ケーシングの内面に直接支持固定している為、部品点数の低減による、部品製作、部品管理、組立作業の簡略化を図ると同時に、高さ寸法を小さくして、耐久性を確保しつつ、小型・軽量化を図れる。
しかも、上記ヨークには複数のトラニオンの端部に設けた枢軸を支持している為、これら複数のトラニオンに加わる力の全部又は一部を、上記ヨーク内で相殺させる事ができる。この為、このヨークを支持したケーシング内に大きな荷重が加わる事がなくなる為、このケーシングの肉厚を特に大きくしなくても、上記各枢軸の支持部が変位したり、或はこのケーシングの耐久性が損なわれたりする事を防止できる。
更には、上記枢軸とヨークとの間に、ボールスプラインとニードル軸受とを設けているので、ヨークに対するトラニオンの変位を、円滑且つ正確に行なえる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1〜7は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、各第一トラニオン27、27の両端部に設けた第一枢軸29、29をケーシング5に対し支持する部分の構造、並びに上記各第一トラニオン27、27の傾斜角度を確実に同期させる為の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図15〜17に示した従来構造と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。又、各第二トラニオン28、28の両端部に設けた第二枢軸30、30(図17)に関しても、上記各第一枢軸29、29と同様の構造により、上記ケーシング5に対し支持すると共に、上記各第二トラニオン28、28の傾斜角度を確実に同期させる様にしている。以下の説明は、第二トラニオン28、28との関連で説明しなければならない部分を除き、原則として上記各第一トラニオン27、27に就いてのみ行なう。
【0027】
上記ケーシング5内の互いに対向する部分には、第一、第二支持手段を構成する1対のヨーク54、55を、上記ケーシング5に対し直接、互いに平行に結合固定している。尚、上記ケーシング5に対するこれら各ヨーク54、55の位置決め精度は、一方に突設したノックピンと他方に形成した係止孔(何れも図示省略)との係合により厳密に規制する。この様な各ヨーク54、55の四隅部で互いに整合する位置には、それぞれ円形の支持孔31、31を形成している。そして、これら各支持孔31、31のうち、上記各ヨーク54、55の一端側に形成した支持孔31、31の内側に上記各第一枢軸29、29を、それぞれボールスプライン56、56とラジアルニードル軸受57、57とにより、軸方向に亙る変位及び揺動自在に支持している。
【0028】
このうちのボールスプライン56、56を構成するボールスプライン用外輪58、58は、上記各支持孔31、31の開口側半部に、若干の揺動変位自在に、且つ軸方向に亙る変位を制限した状態で内嵌している。この為に、上記各支持孔31、31の開口側半部には、奥側に比べて内径が小さくなった小径部59、59を形成している。そして、これら各小径部59、59に、上記各ボールスプライン56、56を構成する上記ボールスプライン用外輪58、58を内嵌している。これら各ボールスプライン用外輪58、58の軸方向中間部外周面は、部分球面状の凸面60、60としている。これら各凸面60、60の曲率半径は、上記各支持孔31、31の内径の1/2とほぼ同じとしている。
【0029】
又、上記各ボールスプライン用外輪58、58の軸方向一端部外周面には、外向フランジ状の鍔部61、61を、軸方向他端部外周面には係止溝62、62を、それぞれ全周に亙って形成している。この様な各ボールスプライン用外輪58、58はそれぞれ、上記各鍔部61、61を上記各支持孔31、31の奥側に位置させ、これら各鍔部61、61と上記各係止溝62、62に係止した止め輪63、63との間で上記各小径部59、59を軸方向両側から挟持する状態に組み付ける。尚、この状態で、上記各鍔部61、61と上記各止め輪63、63との間隔は、上記各小径部59、59の軸方向長さよりも少し大きくしている。従って、上記各ボールスプライン用外輪58、58はそれぞれ、上記各支持孔31、31内に若干の揺動変位自在に支持された状態となる。
【0030】
又、上記各ボールスプライン用外輪58、58の内周面には複数本の外輪側ボールスプライン溝64、64を、それぞれ軸方向(図1、3〜5の上下方向)に亙って形成している。そして、この様な各ボールスプライン用外輪58、58の内径側に、前記各ラジアルニードル軸受57、57の外輪でもある、ボールスプライン用内輪65、65を、これら各ラジアルニードル軸受57、57と同心に配置している。これら各ボールスプライン用内輪65、65の外周面で上記各外輪側ボールスプライン溝64、64に対向する部分には、それぞれ内輪側ボールスプライン溝66、66を、それぞれ軸方向に亙って形成している。そして、これら各内輪側ボールスプライン溝66、66と上記各外輪側ボールスプライン溝64、64との間に、それぞれ複数個ずつのボール67、67を配置して、前記各ボールスプライン56、56を構成している。
【0031】
又、上記各ボールスプライン用内輪65、65の内周面には、上記各ラジアルニードル軸受57、57の為の、円筒面状の外輪軌道68、68を設けている。そして、これら各外輪軌道68、68と、前記各第一トラニオン27、27の両端部に設けた第一枢軸29、29の外周面に形成した円筒面状の内輪軌道69、69との間に、それぞれ複数本ずつのニードル70、70を配置して、上記各ラジアルニードル軸受57、57を構成している。
【0032】
又、上記各第一トラニオン27、27の両端部に設けた上記各第一枢軸29、29のうち、駆動ロッド51、51を結合した一端側(図1、3の下端側)の第一枢軸29、29の先端部には、後述する歯車伝達機構71を構成する為のピニオン72、72を外嵌固定している。一方、駆動ロッド51、51と反対側の他端側(図1、3〜5の上端側)の第一枢軸29、29の先端部には、円板状の抑え板73を、その中心部に設けたねじ杆74をこれら各第一枢軸29、29の中心部に設けたねじ孔75、75に螺合させる事により、固定している。この様なピニオン72、72及び抑え板73、73が、上記各ボールスプライン用内輪65、65の軸方向移動、並びに上記各ボール67、67の脱落を防止する。尚、これら各ボール67、67の反対側への脱落防止は、上記各ボールスプライン用内輪65、65の基端部(上記各第一トラニオン27、27の軸方向中央側の端部)外周面に係止した止め輪85、85により図っている。
【0033】
尚、本例の構造のうち、上述の様なボールスプライン56及びラジアルニードル軸受57部分の組立作業は、次の様にして行なう。上記ボールスプライン用内輪65を含む上記ラジアルニードル軸受57は、図4に示す様に、予め上記第一トラニオン27の他端部に設けた第一枢軸29に装着し、間座76と止め輪77とにより抜け止めしておく。又、ボールスプライン用外輪58は、同図に示す様に、予めヨーク54に形成した支持孔31の内側に装着しておく。この状態で上記ボールスプライン56を構成するボール67、67を、前記ケーシング5の一部で上記支持孔31に整合する部分に形成した通孔86を通じて、上記ボールスプライン用内輪65の外周面に形成した前記各内輪側ボールスプライン溝66、66と、前記ボールスプライン用外輪58の内周面に形成した各外輪側ボールスプライン溝64、64との間に、それぞれ複数個ずつ挿入する。そして、挿入後、図5に示す様に、上記抑え板73を装着してから、上記通孔86を蓋板87により塞ぐ。
【0034】
又、本例の場合には、互いに対向して設けた1対の第一トラニオン27、27同士を、歯車伝達機構71で互いに結合する事により、これら両第一トラニオン27、27に支持した1対の第一パワーローラ45、45の傾斜角度を互いに厳密に一致させる様にしている。上記歯車伝達機構71を設ける為、一方(図1〜3の下方)のヨーク55に、凹部78を設けている。従って、このヨーク55とシリンダケース79とを重ね合わせた状態で、これら両部材55、79同士の間には、上記歯車伝達機構71を収納する為の空間80が形成される。この空間80内に収納される歯車伝達機構71は、互いに同形で且つ同じ歯数を有する1対のピニオン72、72と、両端縁に互いに同ピッチの歯を形成した1個のラック81とから成る。このうちの各ピニオン72、72は、それぞれ前記第一トラニオン27、27の端部に設けた第一枢軸29、29の先端部に形成した非円筒部に外嵌固定している。従って、上記各第一トラニオン27、27は、上記各ピニオン72、72と同期して回転する。尚、変速比を変える際に上記各第一トラニオン27、27は、それぞれ上記各第一枢軸29、29の軸方向に変位する。従って、上記各ピニオン72、72とラック81との噛合部に適度の(上記傾斜角度を一致させる事に就いて問題を生じない程度の)バックラッシュを設けて、上記各ピニオン72、72とラック81との相対変位を可能にする。
【0035】
又、上記ラック81は、入力軸1aの軸方向(図1、3の表裏方向)に亙る変位のみ自在として、上記空間80内に支持している。この為に図示の例では、上記ラック81をヨーク55に対して、直動式の転がり軸受(リニアベアリング)82、82により、平行移動自在に支持している。即ち、ケーシング5の内面に固定したヨーク55の下面で上記ラック81に対向する部分にガイド凹部83、83を、それぞれラック81の変位方向に形成している。
【0036】
又、上記ラック81の中間部で上記各ガイド凹部83、83に整合する部分には、それぞれガイド鍔部84、84を形成している。これら各ガイド鍔部84、84の厚さは、上記各ガイド凹部83、83の幅よりも少し小さくし、これら各ガイド鍔部84、84をこれら各ガイド凹部83、83内に、緩く挿入している。そして、これら各鍔部84、84の片側面とこれら各ガイド凹部83、83の一方の内側面との間に、上記各転がり軸受82、82を設けている。この様な転がり軸受82、82は、上記ラック81に設けた各鍔部84、84を両側から挟む位置に(或は図示の場合とは逆に、各鍔部84、84が転がり軸受82、82を両側から挟む位置に)配置している。
【0037】
従って、上記ラック81は上記ヨーク55に対し、上記各ガイド凹部83、83の方向に、傾斜したりする事なく、軽い力で円滑に変位自在である。又、上記ラック81に、変位方向に対し直角方向の力が加わった場合には、このラック81に付設した1対の転がり軸受82、82のうちの何れか一方の転がり軸受82、82が上記力を支承し、上記ラック81の円滑な変位を補償する。
【0038】
それぞれを上述の様に支持したピニオン72、72とラック81とは、これら各ピニオン72、72の外周縁に形成した歯とラック81の両側縁に形成した歯とを互いに噛合させた状態に組み合わせて、上記歯車伝達機構71を構成する。この歯車伝達機構71は、バックラッシュを極力抑えると共に、上記各ピニオン72、72のピッチ円直径を或る程度(他の部材との干渉防止を図れる範囲内で)大きくしたものとしている。従って、これら各ピニオン72、72を固定した各第一トラニオン27、27、並びにこれら各第一トラニオン27、27に支持した各第一パワーローラ45、45の傾斜角度を互いに厳密に一致させる事ができる。尚、図示は省略したが、上記各第一トラニオン27、27と第二トラニオン28、28(図17)との間にも、同様構造の歯車伝達機構を設けて、これら各第一トラニオン27、27と第二トラニオン28、28との傾斜角度を、互いに一致させる様にしている。
【0039】
以上に述べた通り、本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、第一、第二両支持手段を構成する部材である前記ヨーク54、55を、前記ケーシング5の内面に直接支持固定している。この為、前述した従来構造で必要としていた支持ポスト33a、33b(図15〜17)が不要になり、部品点数の低減による、部品製作、部品管理、組立作業の簡略化を図ると同時に、高さ寸法を小さくして、耐久性を確保しつつ、小型・軽量化を図れる。
【0040】
しかも、本発明の場合には、上記ヨーク54、55の四隅部分で、第一、第二各トラニオン27、28をそれぞれ2本ずつ、合計4本のトラニオン27、28の端部に設けた第一、第二枢軸29、30を支持している。この為、これら各第一、第二トラニオン27、28に加わる力の全部を、上記各ヨーク54、55内で相殺する事ができる。この点に就いて、図6により説明する。前述した様にトロイダル型無段変速機の運転時に上記各第一、第二トラニオン27、28には、各第一、第二パワーローラ45、46から大きなスラスト荷重が、それぞれ図6に矢印αで示す方向に加わる。これら各スラスト荷重はそれぞれ、同図に矢印βで示した、第一、第二両キャビティ34、35(図2)の直径方向の分力と、同図に矢印γで示した、入力軸1aの軸方向に亙る分力とに分けられる。
【0041】
この様な力の方向を示した図6から明らかな通り、第一、第二両キャビティ34、35の直径方向の分力βは、同一キャビティ内に配置した上記各第一、第二トラニオン27、28で反対方向で且つ同じ大きさとなる。又、入力軸1aの軸方向に亙る分力γは、隣り合うキャビティ内に配置した上記各第一、第二トラニオン27、28で反対方向で且つ同じ大きさとなる。従って、上記各第一、第二トラニオン27、28に加わる力の全部が、上記各ヨーク54、55内で相殺され、これら各ヨーク54、55を支持したケーシング5にまで、この力が加わる事はない。この為、このケーシング5に大きな荷重が加わる事がなくなり、このケーシング5の肉厚を特に大きくしなくても、上記各第一、第二枢軸29、30の支持部が変位したり、或は上記ケーシング5の耐久性が損なわれたりする事を防止できる。
【0042】
又、上記各第一枢軸29、29とヨーク54、55との間に、ボールスプライン56とラジアルニードル軸受57とを設けているので、これら各ヨーク54、55に対する上記各第一トラニオン27、27の変位を、円滑且つ正確に行なえる。即ち、前述の説明から明らかな通り、トロイダル型無段変速機の変速動作時に、上記各第一トラニオン27、27は、上記各第一枢軸29、29の軸方向に変位し、この軸方向変位に基づいてこれら各第一枢軸29、29を中心に揺動変位する。本例の場合、これら各変位のうちの軸方向変位を、上記ボールスプライン56により、揺動変位をラジアルニードル軸受57により、それぞれ円滑に行なわせて、これら各変位に基づく、上記トロイダル型無段変速機の変速動作を、迅速且つ正確に行なわせる事ができる。
【0043】
更に、前記各ボールスプライン用外輪58、58の外周面を、それぞれ部分球面状の凸面60、60としている為、上記各第一トラニオン27、27の弾性変形に拘らず、前記各ラジアルニードル軸受57、57を構成する各ニードル70、70の転動面と、前記外輪軌道68及び内輪軌道69との当接部にエッヂロードが加わるのを防止できる。即ち、トロイダル型無段変速機の運転時に各第一パワーローラ45、45には大きなスラスト荷重が加わり、このスラスト荷重に基づいて上記各第一トラニオン27、27は、図7に誇張して示す様に、互いに対向する内側面側が凹面となる方向に弾性変形する。そして、この弾性変形に基づき、上記各第一枢軸29、29の中心軸と前記各支持孔31、31の中心軸とが、僅かとは言え不一致になる。そこで、この様な場合に本例の構造では、上記各ボールスプライン用外輪58、58が上記各支持孔31、31内で揺動変位する。そして、これら各ボールスプライン用外輪58、58の中心軸及び内径側に配置した、上記各ラジアルニードル軸受57、57の外輪でもある、前記各ボールスプライン用内輪65、65の中心軸を、上記各第一枢軸27、27の中心軸と一致させたままにする。本例の構造は、この様にして上記各第一枢軸29、29の中心軸と各支持孔31、31の中心軸との不一致を補償し、前述したエッヂロードが加わる事を防止する。
【0044】
更に、図示の例の様に、歯車伝達機構71により各第一パワーローラ45、45の傾斜角度を互いに一致させる為、これら各第一パワーローラ45、45の周面9a、9aと各ディスク17、20の内側面2a、4aとの当接部で著しい滑りが発生するのを防止して、トロイダル型無段変速機の効率を十分に確保できる。尚、上記歯車伝達機構71は、上記各第一パワーローラ45、45同士、更にはこれら各第一パワーローラ45、45と各第二パワーローラ46、46(図17参照)との傾斜角度を厳密に一致させる為に有効であるが、本発明を実施する場合に、これら各パワーローラ45、46同士の傾斜角度を一致させる為の同期機構は、図示の様な歯車伝達機構71に限定しない。従来から広く知られている、ケーブル式の同期機構を使用しても良い。
【0045】
又、本発明は、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機で実施する事が、ヨークに加わる荷重をこのヨーク内でほぼ完全に相殺し、このヨークを支持しているケーシングに大きな力が加わるのを防止する面から有効である。但し、前述の図13〜14に示す様に、入力側ディスク2と出力側ディスク4とを1個ずつ設けた、シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機でも、或る程度の効果を得る事ができる。但し、シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機で実施した場合には、図8に示す様に、運転状態によってはヨーク88を固定したケーシングに、各パワーローラ9、9から各トラニオン7、7に加わった荷重の一部が加わる。
【0046】
即ち、入力側ディスク2と出力側ディスク4との回転速度を互いに同じにする(変速比を1とする)場合には、図8(A)に示す様に、上記各トラニオン7、7に、互いに同じ大きさの荷重が逆方向に加わる。従って、上記各トラニオン7、7に加わった荷重は、上記ヨーク88内でほぼ完全に相殺されて、このヨーク88を支持したケーシングにまで荷重が加わる事はない。これに対して、入力側ディスク2と出力側ディスク4との回転速度を互いに異ならせる(変速比を1以外とする)場合には、図8(B)に示す様に、上記各トラニオン7、7に加わる荷重のうち、上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の軸方向に亙る分力が相殺されずに残り、ケーシングに加わる。この様にケーシングに加わる分力の大きさは、元々上記各トラニオン7、7に加わる荷重よりも小さい為、上記ヨーク88を上記ケーシングに対し複数個所で固定すれば、前述の特開平10−274300号公報に記載された構造の様に、各トラニオンに加わる荷重をそのままケーシングに伝達する構造の場合とは異なり、ケーシングの変形防止及び耐久性確保を実用上問題ないレベルで図れる。
【0047】
次に、図9〜11は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例は、各第一トラニオン27、27の両端部に設けた第一枢軸29、29のうち、駆動ロッド51、51と反対側の他端寄り部分の第一枢軸29、29をケーシング5に対し支持する部分の構造を、上述した第1例と異ならせている。即ち、本例は、上記他端寄り部分の第一枢軸29、29をヨーク54に支持する為のボールスプライン56、56を組み立てるのに、上述の第1例の様な通孔86(図4〜5)を不要とし、この通孔86を塞ぐ蓋板87(図5)を不要にしてコスト低減を図ると共に、上記ケーシング5の強度向上を図ったものである。
【0048】
この為に本例の場合には、ヨーク54の支持孔31の開口側半部に形成した小径部59の直径方向反対側2個所位置に、この支持孔31の直径方向外方に凹入した切り欠き89、89を形成している。又、ボールスプライン用外輪58の基端部(図9〜10の上端部)外周面の直径方向反対側2個所位置には、それぞれ上記各切り欠き89、89を通過自在な突片90、90を形成している。そして、このうちの一方(図10の右方、図11の右上方)の突片90の外周縁中央部に、係止切り欠き91を形成している。又、上記ヨーク54に設けた支持孔31の小径部59に対応する部分で、上記各切り欠き89、89同士の間に位置し、係止切り欠き91に整合する部分には、ねじ孔92を形成し、このねじ孔92に螺着した止めねじ93の先端部を、上記係止切り欠き91に係合させている。
【0049】
上述の様な本例の構造は、次の様にして組み立てる。第一枢軸29の端部にラジアルニードル軸受57とボールスプライン56とを、予め組み付けておく。このボールスプライン56を構成する複数のボール67、67の抜け止めは、上記ボールスプライン用外輪58の端部内周面或はボールスプライン用内輪65の端部外周面に係止した止め輪により図っておく。そして、上記各切り欠き89、89と上記各突片90、90とを整合させた状態で、これら各突片90、90を上記支持孔31内に挿入してから、上記ボールスプライン用外輪58を90度回転させ、上記係止切り欠き91と上記ねじ孔92とを整合させる。次いで、このねじ孔92に上記止めねじ93を螺入し、この止めねじ93の先端部を上記係止切り欠き91内に進入させる。この結果、上記各切り欠き89、89と上記各突片90、90との位相がずれたままの状態となり、上記ボールスプライン用外輪58を上記支持孔31内に支持したままにできる。その他の構成及び作用は、前述した第1例の場合と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
次に、図12は、本発明に関する参考例の1例を示している。本参考例の場合には、ボールスプライン用外輪58の内周面に形成した外輪側ボールスプライン溝64、64と、ボールスプライン用内輪65の外周面に形成した内輪側ボールスプライン溝66、66との間に、それぞれころ94、94を介在させている。従って、スプライン部のラジアル負荷容量を大きくできる。尚、上記各ころ94、94は、第一枢軸29、29の軸方向移動に伴って転動する事はない。従って、本参考例の場合、これら第一枢軸29、29の軸方向移動に要する力は、前述した本発明の実施の形態の第1〜2例の場合よりも大きくなるが、上記第一枢軸29、29の軸方向移動は、駆動シリンダ53(図1、9)により強い力で行なうので、この駆動シリンダ53の径、及び油圧を確保できれば、実用上十分な応答性を得られる。その他の構成及び作用は、前述した本発明の実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0051】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、小型且つ軽量で安価に製作でき、しかも優れた伝達効率及び耐久性を有するトロイダル型無段変速機の実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、図15のA−A断面に相当する図。
【図2】図1のB−B断面図。
【図3】図1の右部を拡大して示す断面図。
【図4】組立途中の状態を示す、図1のC部に相当する図。
【図5】組立完了の状態を示す、図1のC部に相当する図。
【図6】ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を構成するヨークに加わる力の状態を、図1の上方から見た状態で示す図。
【図7】運転時に於けるトラニオンの変形状態を誇張して示す、図1の右上部に相当する部分断面図。
【図8】シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を構成するヨークに加わる力の状態を示す、図6と同様の図。
【図9】本発明の実施の形態の第2例を示す、図15のA−A断面に相当する図。
【図10】図9のD部拡大図で、イ線より上側は図11のE−O−F断面、同じく下側は図11のE−O−G断面を、それぞれ示している。
【図11】ケーシングを省略して図10の上方から見た図。
【図12】 本発明に関する参考例の1例を示す、図3と同様の図。
【図13】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。
【図14】同じく最大増速時の状態で示す側面図。
【図15】従来の具体的構造の1例を示す断面図。
【図16】図15のA−A断面図。
【図17】同H−H断面図。
【符号の説明】
1、1a 入力軸
2 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 ケーシング
6 枢軸
7 トラニオン
8 変位軸
9 パワーローラ
9a 周面
10 押圧装置
11 カム板
12 保持器
13 ローラ
14 カム面
15 カム面
16 伝達軸
17 第一入力側ディスク
18 第二入力側ディスク
19 ボールスプライン
20 第一出力側ディスク
21 第二出力側ディスク
22 スリーブ
23 出力歯車
24 支持壁
25 転がり軸受
26a、26b ヨーク
27 第一トラニオン
28 第二トラニオン
29 第一枢軸
30 第二枢軸
31 支持孔
32 係止孔
33a、33b 支持ポスト
34 第一キャビティ
35 第二キャビティ
36 ラジアルニードル軸受
37 外輪
38 ニードル
39 円孔
40 第一変位軸
41 第二変位軸
42 支持軸部
43 枢支軸部
44 ラジアルニードル軸受
45 第一パワーローラ
46 第二パワーローラ
47 ラジアルニードル軸受
48 スラスト玉軸受
49 スラスト軸受
50 外輪
51 駆動ロッド
52 駆動ピストン
53 駆動シリンダ
54 ヨーク
55 ヨーク
56 ボールスプライン
57 ラジアルニードル軸受
58 ボールスプライン用外輪
59 小径部
60 凸面
61 鍔部
62 係止溝
63 止め輪
64 外輪側ボールスプライン溝
65 ボールスプライン用内輪
66 内輪側ボールスプライン溝
67 ボール
68 外輪軌道
69 内輪軌道
70 ニードル
71 歯車伝達機構
72 ピニオン
73 抑え板
74 ねじ杆
75 ねじ孔
76 間座
77 止め輪
78 凹部
79 シリンダケース
80 空間
81 ラック
82 転がり軸受
83 ガイド凹部
84 ガイド鍔部
85 止め輪
86 通孔
87 蓋板
88 ヨーク
89 切り欠き
90 突片
91 係止切り欠き
92 ねじ孔
93 止めねじ
94 ころ
Claims (3)
- ケーシングと、このケーシングの内側に互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら両ディスクの間部分で、これら両ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な偶数本の枢軸と、これら各枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面から突出した変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラと、これら各パワーローラの側方に設けられて上記各枢軸を揺動変位並びに軸方向に亙る変位自在に支持する支持手段とを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、この支持手段を構成して複数個のトラニオンの端部に設けた枢軸をその端部に支持するヨークを、上記ケーシングの内面に直接支持固定すると共に、このヨークの端部に対して上記各枢軸を、ボールスプラインと、このボールスプラインの内径側に設けられたニードル軸受とにより、揺動及び軸方向の変位を自在に支持しており、このうちのボールスプラインは、部分球面状の凸面である外周面を上記ヨークに形成した円孔に揺動変位自在に内嵌したボールスプライン用外輪の内周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した複数本の外輪側ボールスプライン溝と、このボールスプライン用外輪の内径側に配置したボールスプライン用内輪の外周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した内輪側ボールスプライン溝との間に、それぞれ複数個ずつのボールを配置して成るものであり、上記ニードル軸受は、上記ボールスプライン用内輪の内周面に設けた円筒面状の外輪軌道と上記各枢軸の外周面に形成した円筒面状の内輪軌道との間に複数本のニードルを配置して成るものである事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
- ケーシングと、このケーシングの内側に互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に且つ互いに同期した回転自在に支持された第一、第二外側ディスクと、その内側面を第一外側ディスクの内側面に対向させた状態でこれら第一、第二外側ディスクと同心に、且つこれら第一、第二外側ディスクとは独立した回転自在に支持された第一内側ディスクと、その内側面を第二外側ディスクの内側面に対向させた状態で上記第一内側ディスクと同心に、且つこの第一内側ディスクと同期した回転自在に支持された第二内側ディスクと、上記第一外側ディスクと第一内側ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な4本の第一枢軸と、これら各第一枢軸を中心として揺動する1対の第一トラニオンと、これら各第一トラニオンの内側面から突出した第一変位軸と、これら各第一変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第一外側ディスクの内側面と第一内側ディスクの内側面との間に挟持された1対の第一パワーローラと、上記第二外側ディスクと第二内側ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な4本の第二枢軸と、これら各第二枢軸を中心として揺動する1対の第二トラニオンと、これら各第二トラニオンの内側面から突出した第二変位軸と、これら各第二変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記第二外側ディスクの内側面と第二内側ディスクの内側面との間に挟持された1対の第二パワーローラと、第一、第二内側ディスクの側方に、これら両内側ディスクを両側から挟む状態で、且つ一端部を上記第一外側ディスクと第一内側ディスクとの間部分に、他端部を上記第二外側ディスクと第二内側ディスクとの間部分に、それぞれ位置させた状態で、互いにほぼ平行に設けられた第一、第二支持手段とを備え、このうちの第一支持手段は、上記4本の第一枢軸のうちの2本の第一枢軸と上記4本の第二枢軸のうちの2本の第二枢軸とを揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、第二支持手段は、上記4本の第一枢軸のうちの残り2本の第一枢軸と上記4本の第二枢軸のうちの残り2本の第二枢軸とを揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであるトロイダル型無段変速機に於いて、上記第一、第二両支持手段を構成して複数個のトラニオンの端部に設けた枢軸をその四隅部に支持するヨークを、上記ケーシングの内面に直接支持固定すると共に、このヨークの四隅部に対して上記各枢軸を、ボールスプラインと、このボールスプラインの 内径側に設けられたニードル軸受とにより、揺動及び軸方向の変位を自在に支持しており、このうちのボールスプラインは、部分球面状の凸面である外周面を上記ヨークに形成した円孔に揺動変位自在に内嵌したボールスプライン用外輪の内周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した複数本の外輪側ボールスプライン溝と、このボールスプライン用外輪の内径側に配置したボールスプライン用内輪の外周面にそれぞれ軸方向に亙って形成した内輪側ボールスプライン溝との間に、それぞれ複数個ずつのボールを配置して成るものであり、上記ニードル軸受は、上記ボールスプライン用内輪の内周面に設けた円筒面状の外輪軌道と上記各枢軸の外周面に形成した円筒面状の内輪軌道との間に複数本のニードルを配置して成るものである事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
- 複数のトラニオン同士の間に歯車伝達機構を設けて、これら各トラニオンの傾動を同期させる、請求項1〜2の何れかに記載したトロイダル型無段変速機。
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