JP4014679B2 - 排水の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水からセレン(Se)を除去する排水の処理方法に関し、また、排煙脱硫排水の処理に適用した際には、排煙脱硫排水からは酸化性物質及びセレン(Se)を同時に効率良く除去するようにした排水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製品、工業製品を製造する工場等からは、各種の化学物質を含む排水が排出されている。かかる工業排水は、従来から、排水処理設備で所定の処理が施された後に河川、海等に放流されていた。
ところで、環境汚染について関心が高まるにつれて、排水中の含有濃度が極めて低いため、従来、汚染に対する影響が看過されていた化学物質であっても、そのような化学物質の蓄積により環境汚染が進行することが認識されるようになり、処理した後の排水中のそのような化学物質の濃度を規制する傾向が強まって来ている。
そのような化学物質のうちの代表的な一つが、セレン(Se)であって、排水中のセレン、セレン化合物の濃度が、近年、0.1mg/l以下に規制されている。
【0003】
ところで、排水中のセレン及びセレン化合物(以下、セレン化合物を含めてセレンと総称する)を除去する方法として、例えば特開平第7−2502号公報に開示されているように、排水を鉄又は鉄系金属(以下、鉄又は鉄系金属をまとめて鉄と総称する)と接触させることによって、鉄金属表面にセレンを析出させて、排水中のセレン濃度を低減し、そして除去する方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した排水中のセレンの除去方法では、鉄金属の消費量及びスラッジ発生量が極めて大きく、従って、セレンの除去コストが嵩み、実際の排水処理に適用するのは、経済的な観点から難しいという問題があった。
特に、火力発電所から排出された排ガスを処理して硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫処理装置から流出する排煙脱硫排水のように、セレンを含有する排水を大量に処理する際には、その適用が難しかった。尚、排煙脱硫排水については、最後の定義欄で詳細に定義している。
【0005】
そこで、本発明の目的は、鉄又は鉄系金属の少ない消費量及び少ないスラッジ発生量で、排水中からセレンを除去する方法、特に排煙脱硫排水の処理のようにセレン含有排水を大量に処理する場合にも適用可能な排水の処理方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スラッジ中に大量のFe(OH)3 が含有されていることに着目し、以下の式(1)に示す反応により、鉄金属の酸化還元反応によりセレンを還元して遊離させ、セレンを排水から分離する第1の反応と、式(2)に示す第2の反応により、酸化した鉄金属を亜硫酸イオン系還元剤により還元して再び第1の反応に寄与させる第2の反応とを組み合わせることにより、鉄金属の消費を抑制することを着想した。
Fe、Fe2++SeO4 2- →Fe2+、Fe3++SeO3 2- (1)
Fe3++HSO3 - →Fe2++SO4 2- (2)
そして、後述するような種々の実験を行って、着想した反応が効果を奏することを確認し、本発明方法を完成するに到った。
【0007】
また、排煙脱硫排水中からセレンを除去する際には、第1の反応により、排煙脱硫排水中の酸化性物質も同時に除去でき、更に第2の反応により、亜硫酸イオン系還元剤が第1の反応の残余の酸化性物質を完全に除去し、しかも、亜硫酸イオン系還元剤として湿式排煙脱硫装置から出る亜硫酸含有液体を使用できることを実験で確認した。尚、亜硫酸含有液体は、最後の定義欄に詳細に定義されている。
【0008】
セレンを含有する排水の処理方法
上記目的を達成するために、本発明に係る排水の処理方法は、金属鉄及び低価数の鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属又は1種類の金属化合物をpHを6.5以上に調整した排水に接触させる工程及び前記金属化合物の溶液又はスラリをpHを6.5以上に調整した排水に混合する工程の少なくとも一つからなる第1工程と、
第1工程を経た排水に亜硫酸イオン系還元剤を添加する第2工程と、
第2工程を経た排水中に沈殿物を生成し、沈殿物を含む濃縮液と沈殿物の濃度が濃縮液より小さい処理水とに分離する第3工程と
を備え、
排水中のセレン(Se)を除去することを特徴としている。
【0009】
第1工程
第1工程では、金属鉄及び低価数の鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属又は1種類の金属化合物(以下、金属と総称する。尚、最後の定義欄に低価数について定義している。)の還元作用により、SeO4イオンは、SeO3イオン、更にはSe単体に転化し、それにより沈殿し易くなる。また、金属から解離して金属イオンが、別の金属化合物として沈殿し、その沈殿物にSeが共沈等の形態で随伴することにより、Seを除去することができる。
排水は、金属と接触すると、pHが低下し、除去率が低下することを見い出したので、接触前にpHを高く調整するか、金属又は金属化合物と接触させつつ同時にpHを調整する。すなわち、第1工程において、排水のpHを6.5以上、好ましくは7.5以上に調整する。この範囲のpHに調整することにより、効果的にセレンを除去することができる。
Seの除去のためには、Se濃度の2倍から10000倍の範囲の規定モル濃度になるように低価数の鉄化合物を第1工程で排水に添加する。金属鉄のような固体は、循環使用でき、かつ回分操作で添加することができるので、その添加量は、溶解する鉄化合物のように、Se濃度の倍率で表現できない。従って、実用的には、消費した量だけ添加することになる。
【0010】
本発明では、金属として金属鉄を用いる。それは、コストが低く、安全で、しかも液体中からのFe及びFe化合物の除去が容易であるからである。また、溶液中に含まれるSeを鉄水酸化物又は鉄酸化物との共沈により除去する第3工程でも効果的であるからである。
使用する金属鉄の種類は、特に限定は無く、メッキ等の表面処理されていない金属鉄であれば良く、例えば、純度の高い還元鉄でも、また鉄屑のような廃鉄材でも良い。尚、表面が酸化されている場合には、酸化皮膜を除去する。金属鉄の形状は、固定床式の接触槽の場合には、粒状でも、粉状でも、塊状でも良く、流動床式の接触槽の場合には、流動層を形成できる限り、粒状でも、粉状でも良い。また、塊状の金属鉄を排煙脱硫排水中に沈積させるだけでも良い。
【0011】
第2工程
第2工程では、亜硫酸イオン系還元剤は、例えば、
SO3 2-(HSO3 - )+Fe3+→SO4 2-(HSO4 - )+Fe2+
のように、第1工程で酸化した金属を還元して、再び還元剤として機能させ、結果的に金属消費量を節減する働きをする。
以上のように、本発明者らは、亜硫酸イオンによるSeの還元は起きないが、金属を介することにより、亜硫酸イオンがSeを見かけ上還元し、その除去に寄与することを見い出した。
第2工程のpHは、3以上で、好ましくは4以上で、8以下にする。pH3以下では亜硫酸イオン系還元剤が揮散し、亜硫酸イオンの濃度を高くできないので、亜硫酸イオン系還元剤による還元反応が進行しないからである。pH8以上では、Fe(OH)2 が沈殿し、好ましくない。
亜硫酸イオン系還元剤として、勿論、H2 SO3 、Na2 SO3 、NaHSO3 等の市販の還元剤を使用できる。
【0012】
第3工程
第3工程では、pHを調整して、例えば8〜12の範囲に調整して第1工程で使用した金属の金属化合物を含む沈殿物を生成し、Seをそれらに随伴させて、又はそれらとの共沈状態で沈殿させることによりSeを除去し、添加/投入した金属、金属化合物をも合わせて除去する。金属がFeの場合には、Fe(OH)3よりは寧ろFe(OH)2として沈殿する。
尚、pHは12以上でも良いが、pH12以上ではSeの沈殿率は飽和の傾向にあり、しかもアルカリの消費量が増えて、コストが嵩むので、実用的ではない。
【0013】
本発明方法の特長は、次に示す実験例1と比較例1との比較から判るように、少ない金属の消費量でSeを効果的に除去できることである。即ち、第1工程では、金属又は金属化合物によりセレンを還元、除去する。第2工程では、亜硫酸イオン系還元剤を使用して、第1工程で酸化された金属又は金属化合物を還元し、再び還元剤として使用できるようにしている。第3工程では、第1工程で使用した金属の沈殿物にSeを共沈等の形態で随伴させて排水から除去している。
よって、第1工程で溶解した金属又は金属化合物を第3工程で沈殿させつつSeを除去することにより、溶解した金属又は金属化合物をセレンの除去に利用できる。
また、本発明方法は、第3工程で排水中の金属イオンも除去できるので、排水の金属汚染度を更に低減することができる。
【0014】
実験例1
1.6mg/l(0.020mmol/l)の濃度でSeを含有する、金属精錬工場から排出された排水1リットルを排水試料とし、それに3mm径の球状で純度99%の100gの鉄粒を添加し、pH7.5に調整して、振動攪拌しつつ排水と鉄との接触状態を60分間保持した。次いで、pHを6.0に調整し、亜硫酸イオン系還元剤として、1モルのSe当たり20モルの割合でNa2 SO3 を排水試料に添加し、振動攪拌しつつ20分間保持した。続いて、球状の鉄粒を分別した後、NaOHを排水試料に添加してpHを9.0に調整して濾過し、残渣として実験例1のスラッジと、濾液として実験例1の処理済排水試料とを得た。
実験例1の処理済排水試料のSe濃度を測定したところ、Se濃度は0.06mg/lに低下していた。また、濾過した時に得た実験例1のスラッジを乾燥して、その重量を測定したところ、スラッジ重量は0.6g/l であった。
【0015】
比較例1
亜硫酸イオン系還元剤を添加しなかったことを除いて、実験例1と同様にして比較例1の処理済排水試料を得た。
比較例1の処理済排水試料のSe濃度を測定したところ、Se濃度は0.17mg/lであった。また、処理済排水試料を吸引濾過し、乾燥して得たスラッジ量を測定したところ、スラッジ量は1.2g/l であった。
【0016】
実験例1は、比較例1に比べてSeをより効果的に排水から除去し、スラッジ量は鉄の消費量に相当することから、実験例1は、比較例1に比べて鉄の消費量が遙に少ない。
【0017】
セレンを含有する排煙脱硫排水の処理方法
本発明方法を排煙脱硫排水の処理に適用した場合には、排煙脱硫排水中の酸化性物質とセレンとを同時に除去することができる。
第1工程
第1工程では、金属の酸化性物質との酸化還元反応により、Seに加えて、酸化性物質を還元、分解除去することができる。
酸化性物質及びSeの両者を効率的に除去するのに好適なpHは、沈殿物の生成の有無およびその生成速度の見地から、6.5以上、望ましくは7.5である。但し、pH7.5以上ではSe除去率が飽和する傾向にある。また、第1工程では、50°C から100°C の範囲の温度に排水を昇温する。これにより、酸化性物質を一層効率的に除去できる。酸化性物質の除去ためには、酸化性物質濃度の1倍から1000倍の範囲の規定モル濃度になるように低価数の金属化合物を第1工程で排水に添加する。従って、実際には、酸化性物質及びSeの双方を除去できるモル濃度になるように低価数の金属化合物を排水に添加する。金属を使用する場合も、上述の濃度に準じた濃度になるように比較的過剰量の金属を排水に溶解させる。
【0018】
第2工程
第1工程で酸化性物質は殆ど除去されるが、実際の排水の処理では酸化性物質及びSeの濃度が変動し、特に排煙脱硫排水の処理では、排ガスの含有成分及びその含有比率が変動するために、排煙脱硫排水の酸化性物質の含有量が変動する。その結果、第1工程で酸化性物質を完全に除去することができずに、酸化性物質が排煙脱硫排水中に残留することがしばしば生じる。
第2工程では、第1工程で消費した金属を還元して金属の消費量を節減すると共に、次に示す実験例2と比較例2との比較から判るように、残余の酸化性物質を亜硫酸イオン系還元剤により還元して、分解除去することができる。
【0019】
実験例2
石灰石を吸収剤として使用したスート混合型湿式排煙脱硫装置でもって石炭焚排ガスを処理して得た排煙脱硫排水に試薬の過硫酸ナトリウムを添加したものを1リットル採取し、それを排水試料とした。排水試料は、pHが5.8、温度が45℃、及び酸化性物質濃度が10.0mg/l(残留塩素換算値)であった。
次いで、排水試料に3mm径の球状で純度99%の100gの鉄粒を添加し、pH7.5に調整して、振動攪拌しつつ排水と鉄との接触状態を60分間保持した。次いで、pHを6.0に調整し、亜硫酸イオン系還元剤として、Na2 SO3 を30mg/lの割合で排水試料に添加し、振動攪拌しつつ20分間保持した。続いて、鉄粒を分別した後、NaOHを排水試料に添加してpHを9.0に調整して濾過し、実験例2の処理済排水試料を得た。
実験例2の処理済排水試料の酸化性物質の濃度を測定したところ、濃度は0.31mg/l(残留塩素換算値)に低下していた。
【0020】
比較例2
亜硫酸イオン系還元剤を添加しなかったことを除いて、実験例1と同様にして比較例1の処理済排水試料を得た。
比較例1の処理済排水試料の酸化性物質の濃度を測定したところ、濃度は0.73mg/lであった。
【0021】
実験例2では、処理済排水試料中の酸化性物質の濃度が、比較例1に比べて、遙に低いことが判る。
【0022】
第3工程
第3工程では、上述のようにSeを沈殿、除去すると共に添加した金属を沈殿物として排水から除去、回収できる。
以上の第1、第2及び第3工程を実施することにより、少ない金属消費量で、しかも同時に酸化性物質とSeとを排煙脱硫排水から除去することができる。
【0023】
好適な実施態様は、硫黄酸化物を含有する排ガス中に液体を噴霧して予備的に気液接触させる第1次気液接触と、続いて第1次気液接触を経た排ガスと吸収液とを気液接触させて酸素含有ガスの存在下で主として排ガス中の硫黄酸化物を除去する第2次気液接触とを実施して、排ガス中の硫黄酸化物を除去する際には、次の実験例3及び実験例4で示すように、第1次気液接触を経た排ガスから分離して得た亜硫酸含有液体を亜硫酸イオン系還元剤とすることもできる。尚、亜硫酸含有液体の例は、具体的に、最後の定義欄に説明されている。
【0024】
実験例3
石灰石を吸収剤として使用したスート分離型湿式排煙脱硫装置でもって石炭焚排ガスを処理した際、除塵冷却塔と吸収塔の双方から抜き出し、混合、濾過して得た排煙脱硫排水を1リットル採取し、それを排水試料とした。排水試料は、pHが6.8、温度が45℃、及び酸化性物質濃度が0.18mg/l(残留塩素換算値)、Se濃度が1.6mg/lであった。
次いで、排水試料に2000mgの塩化第1鉄(FeCl2 )を添加し、pH7.5に調整して、攪拌しつつ排水と鉄との接触状態を60分間保持した。次いで、pHを6.0に調整し、亜硫酸イオン系還元剤として、図2に示す後述の下降管62から得た150mlの亜硫酸含有液体を添加し、攪拌しつつ20分間保持した。亜硫酸含有液体は、スラリー状であって、亜硫酸ガス濃度が190mg−SO3 /l、煤塵含有率が0.8wt%、及び石膏含有率が4.7wt%であった。続いて、NaOHを排水試料に添加してpHを9.5に調整して濾過し、残渣として実験例3のスラッジと、濾液として実験例3の処理済排水試料とを得た。
実験例3の処理済排水試料を分析したところ、Se濃度は0.04mg/l、及び酸化性物質濃度は0.01mg/l(残留塩素換算値)以下であった。これにより、亜硫酸含有液体が亜硫酸イオン系還元剤として有効であることが確認できた。
次いで、濾過した際に得た実験例3のスラッジを乾燥し、その重量を測定したところ、スラッジ重量(石膏を含む)は13.3g/lであった。
更に、上述の操作と同様にして、別の処理済排水試料を調製し、これにスート分離型湿式排煙脱硫装置から得た、石膏濃度が21wt%の石膏スラリを加え、スラッジ中の石膏含有率を90%とし、吸引濾過した。濾過性が良く、かつスラッジ(固形物)はセメント原料として利用できることを確認することができた。
【0025】
実験例4
実施例3と同様にして、排水試料を調製し、塩化第1鉄と接触させた。次いで、pHを6.0に調整し、亜硫酸イオン系還元剤として、図3に示す後述の亜硫酸含有液体の受け溜82から得た150mlの亜硫酸含有液体を添加し、攪拌しつつ20分間保持した。亜硫酸含有液体は、スラリー状であって、亜硫酸ガス濃度が261mg−SO3 /l、煤塵の含有率が0.5wt%、及び石膏の含有率が3.8wt%であった。続いて、NaOHを排水試料に添加してpHを9.5に調整して濾過し、実験例4の処理済排水試料を得た。
実験例4の処理済排水試料を分析したところ、Se濃度は規制値以下であり、酸化性物質濃度も所定値以下であることが確認できた。
【0026】
更に別の好適な実施態様は、排水から固形分を除去する固液分離工程を第1工程の前に有し、固液分離工程に導入される排水に第3工程で分離した濃縮液を混合する。固液分離工程を設けて、固形分、例えば排ガスから移行した煤塵、石膏、消石灰、及び未反応の石灰石などを排煙脱硫排水から除去し、本発明方法による処理を円滑にすると共に第3工程での沈殿物を合わせて除去できる。また、固形分と沈殿物とを合わせ固液分離することにより、分離し難い沈殿物を容易に分離することができる。また、第3工程の後に必要な固液分離操作を固液分離工程で合わせて行うことにより、工程及び設備を簡略にすることができる。更に、第3工程で分離した濃縮液(沈殿物)から還元作用を有する金属、金属化合物が溶解し、再利用できる。
【0027】
本発明方法の更に好適な実施態様は、第3工程で分離した沈殿物を含む濃縮液の一部を第1工程で処理中の排水に混合する。
沈殿物を還流し、pHの変化により、沈殿物から金属又金属イオンを排水中に溶解又は解離させることにより、再びそれらを第1工程での酸化還元反応の際の金属イオンとして及び第3工程での金属イオンによる共沈作用の際の沈殿物として利用できるので、金属の消費量を軽減することができる。
【0028】
本発明方法の更に好適な実施態様は、排煙脱硫排水が、カルシウム系吸収剤を用いた吸収液と排ガスとを気液接触させ、排ガス中に含まれる亜硫酸ガスを主として除去する湿式排煙脱硫装置の排ガス処理槽から送出された石膏スラリから石膏を固液分離した後の排煙脱硫排水であって、
固液分離工程に導入される排煙脱硫排水に石膏スラリ又は固液分離した石膏を混入させることを特徴としている。
第1工程に導入される排煙脱硫排水中に含まれる固形分、例えば残留石膏及び未反応の石灰石は微細な結晶粒であって比較的固液分離し難く、また第3工程で分離した沈殿物を含む濃縮液もスラッジ状であって固液分離し難い。そこで、排ガス処理槽から送出された結晶粒が大きい石膏を含む石膏スラリ又は石膏を排煙脱硫排水中に混入することにより、固液分離工程での分離効率を高めることができる。これによって、共沈等により沈殿物として取り扱うことができるようになったSeを確実に固液分離できることから全体としてのSeの除去が効率的に行える。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明方法の実施装置として、第1工程を実施する処理槽は、塩酸等の酸又は苛性ソーダ等のアルカリを添加してpHを調整する手段と攪拌手段とを備えている。処理槽内に、還元剤として例えば金属鉄を沈積させても良く、また金属鉄を添加して排煙脱硫排水中に流動層を形成しても良い。また、金属及び金属化合物の充填層を備えた固定床式の処理槽でも良い。また、循環式の充填層でも良い。
第2工程を実施する処理槽は、第1工程を経た排水と亜硫酸イオン系還元剤とを混合する通常の混合槽である。
第3工程を実施する設備は、酸又はアルカリを添加してpHを調整する手段を備えて、例えば金属として鉄を使用した場合には、Fe(OH)2 等の鉄水酸化物を生成する槽と、それら沈殿物とSeとを共沈させて排煙脱硫排水から分離する沈殿槽とを備える。
以下に、添付図面を参照し、実施例を挙げて本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
【0030】
【実施例】
実施例1
本実施例は、請求項3と請求項6及び7のいずれかを組み合わせた本発明方法の基本的なプロセスを排煙脱硫排水の処理に適用した例であって、図4は本実施例を実施する処理装置のフローシートである。
本処理装置100は、図1に示す従来の石膏分離装置9の固液分離装置6より流出した排煙脱硫排水を処理する装置で、排水処理装置8に向かう排煙脱硫排水ライン3、排煙脱硫装置2に戻る母液ライン5の石灰石粉末注入位置より上流、又は固液分離装置6の下流で排水処理装置8に向かう排煙脱硫排水ライン3と排煙脱硫装置2に戻る母液ライン5とに分岐する上流のライン7のいずれの場所に設けても良い。
【0031】
装置100は、排水の流れに沿って、固液分離装置102と、第1工程を実施する第1処理槽104と、第2工程を実施する第2処理槽106と、第3工程でpHを調整する第3処理槽108と、第3工程で沈殿物を生成させる沈殿槽110とを備えている。
【0032】
固液分離装置102には、排水を導入する導入管112が接続されている。また、固液分離装置102と第1処理槽104とはライン114により、第1処理槽104と第2処理槽106とはライン116により、第2処理槽106と第3処理槽108とはライン118により、第3処理槽108と沈殿槽110とはライン120により、排水が順次流れるようにそれぞれ接続されている。更に、沈殿槽110には、処理排水を送出する送出管122と、槽底から沈殿物を含む濃縮液を導入管112に返す濃縮液管124とが接続されている。
それぞれのラインにはポンプを設けて次の槽に送水しても良く、高低差により流水させても良い。
【0033】
固液分離装置102は、第1工程に導入される排水中に存在する固形分、例えば石膏スラリから固液分離した後に残る石膏及び未反応の石灰石、更には煤塵などと、沈殿槽110から排水に還流された濃縮液中に存在する沈殿物とを混合スラッジとして除去する固液分離装置である。
この装置には、例えば回転ドラム型又は濾布走行型真空吸引式フィルタ或いは遠心分離機を使用する。
【0034】
第1処理槽104は、本発明方法の第1工程を実施する槽で、酸、例えば塩酸又はアルカリ、例えばNaOHを添加して排水のpHを6.5以上、好ましくは7.5以上に調整する手段126と、 金属還元剤として金属鉄又はFeCl2 等の鉄化合物の粉粒体を添加する手段128と、攪拌機130とを備えている。第1処理槽104では、添加された金属鉄等の粉粒体を排水中で攪拌機130で攪拌することにより、流動層を形成することもできる。
攪拌機130による攪拌により金属鉄等の粉粒体の流動層を形成する代わりに、排水の噴流による攪拌を利用して金属鉄等の粉粒体の流動層を形成することもできる。
【0035】
また、第1処理槽104として、横型固定床式処理槽及び縦型固定床式処理槽を使用することもできる。固定床式処理槽では、金属鉄を充填した固定床(充填層)が槽内に形成されていて、そこで金属鉄と排水との接触が行われる。金属鉄として、大きな粒状又は塊状の鉄材を使用できる。充填層に代えて、塊状の鉄材を排水に沈積させても良い。
また、循環式の充填塔を使用すれば、排水を循環して金属鉄と排水とを接触させ、金属鉄の充填量及び排水の循環量を調節して、接触時間を調整することもできる。
【0036】
第2処理槽106は、本発明方法の第2工程を実施するために、亜硫酸イオン系還元剤と排水とを混合して、亜硫酸イオンと酸化性物質との酸化還元反応及び亜硫酸イオンと金属イオンとの酸化還元反応を起こさせる槽である。第2処理槽106には、亜硫酸イオン系還元剤を添加する手段134と、必要に応じて、攪拌機136とを設ける。
所定流量で流入する排水と亜硫酸イオン系還元剤との酸化還元反応により酸化性物質を還元して除去するのに必要な時間だけ排水及び亜硫酸イオン系還元剤を滞留できる容積を有している。亜硫酸イオン系還元剤の投入量は、残留するSe濃度、酸化性物質濃度の検出、若しくは酸化還元電位(温度、pH調整の後でも良い)の検出によって、調整できる。更に、必要により、pH調整用のNaOH/HClを添加する手段(図示せず)を設ける。
【0037】
第3処理槽108は、第3工程を実施するために排水のpHを調整する槽で、例えば苛性ソーダ等のアルカリ、又は例えば塩酸等の酸を添加する手段140と、槽内の排水を攪拌して苛性ソーダ又は塩酸を均一に混合する攪拌機142とを備えている。
第3処理槽108では、排水に苛性ソーダ又は塩酸を添加してpHを8〜12に調整することにより、沈殿性の鉄水酸化物を生成することができる。
アルカリとして苛性ソーダ以外にも、KOH、Ca(OH)2 、Mg(OH)2 も使用できる。これらのアルカリを混合使用したり、異なるアルカリをpH上昇段階により区別して使用することもできる。但し、石膏を生成し、スケーリングやスラッジ量を増大させず、しかもコストも比較的安価なNaOH、Mg(OH)2 が好ましい。
【0038】
沈殿槽110は、第3工程の後半の操作を実施する装置で、第3処理槽108で生成した鉄水酸化物等の沈殿物をSeと共沈させると共に沈殿物を含む濃縮液と沈殿物の濃度が濃縮液より小さい処理排水とに分離し、処理排水をライン32を経由して系外に送出する。一方、沈殿物を含む濃縮液は、濃縮液管124を経由して鉄イオンの再利用のために導入管112に戻される。
沈殿槽110としては、常用の沈降分離装置、例えばシックナを使用できる。濃縮液を再利用しない場合には、沈殿槽110に代えて、遠心分離機、濾布濾過機などの固液分離機を用いて、固形物を分離する。
【0039】
本実施例では、上述した装置100を使用して、先ず、固液分離装置102で排水から固形分を固液分離して、固形分を含まない排水を第1処理槽104に導入して、pHを6.5以上、好ましくは7.5以上に調整しつつ水溶液の塩化第1鉄を所定の濃度に成るように排水に添加する。
これにより、塩化第1鉄は排水中の酸化性物質の大部分を還元して例えば硫黄過酸化物を硫酸イオンに転化すると共に塩化第1鉄自身は塩化第2鉄に、即ち2価から3価の鉄イオンに酸化され、排水中に解離する。金属鉄を添加すると、同じ作用により水酸化第1鉄、更には水酸化第2鉄に転化して鉄イオンが解離する。鉄イオンの一部は、鉄水酸化物として、Seを随伴させつつ沈殿する。
【0040】
次いで、排水は、第2処理槽106に導入される。第2処理槽106内で、添加された亜硫酸イオン系還元剤は、還元反応により排水中の残部の酸化性物質を還元、除去し、かつ第1工程で酸化された鉄イオンを還元して再び鉄イオンに還元能を付与する。亜硫酸イオン系還元剤として、H2 SO3 、Na2 SO3 、NaHSO3 、亜硫酸含有液体を使用する。
次に、排水は、第3処理槽108に入り、苛性ソーダを添加して攪拌混合することにより、pHが8〜12に調整される。これにより、水酸化第1鉄、水酸化第2鉄が形成される。
【0041】
沈殿槽110では、第3処理槽108で形成された鉄化合物の沈殿物をSeと共沈させつつ、Seを保持する沈殿物を含む濃縮液と沈殿物の濃度が濃縮液より小さい処理排水とに分離する。処理排水を送出管122を経由して系外に送出する一方、沈殿物を含む濃縮液を濃縮液管124を経由して導入管112に戻し、鉄イオンを再利用する。
濃縮液中のSeを含む沈殿物は、排水中の固形分と共に固液分離装置102でスラッジとして固液分離され、系外に排出される。
【0042】
本実施例では、また、第1工程を実施する第1処理槽104と、第2工程を実施する第2処理槽106との間に固液分離装置を設けても良く、また第1工程と第2工程とを同じ処理槽で行っても良い。以下の実施例でも、同様である。
【0043】
実施例2
本実施例は、請求項4と請求項6及び7のいずれかを組み合わせた本発明方法の基本的なプロセスを排煙脱硫排水の処理に適用した例であって、図5は本実施例を実施する処理装置のフローシートである。
本実施例方法を実施する装置150は、実施例1の装置100の構成に加えて、濃縮液管124から分岐して第1処理槽104に接続するライン152を備えている。尚、本実施例では、第1処理槽104は、濃縮液が導入されるので、流動層式処理槽が好ましい。
濃縮液管124及びライン152を経由して沈殿物を含む濃縮液を第1処理槽104に戻し、高いpH環境、即ち第3処理槽108の8〜12の範囲のpHから多少低いpHの第1処理槽104に移行させることにより、沈殿物中の水酸化第1鉄及び水酸化第2鉄から鉄イオンを解離させ、再利用することができる。
よって、本実施例では、第1処理槽104での鉄の添加量を減少させることができるので、固液分離装置102から出るスラッジの量が減少し、スラッジの廃棄コストを軽減できる。
【0044】
実施例3
本実施例は、酸化性物質の含有量に比べてSeの含有量が相対的に大きい排煙脱硫排水を処理する場合に最適な請求項5と請求項6及び7のいずれかを組み合わせた本発明方法の実施の形態を示す例であって、図6は本実施例を実施する処理装置160のフローシートである。
本処理装置160では、実施例1の処理装置100の構成に加えて、第2処理槽106と第3処理槽108との間に攪拌機162を備えた溶解槽164が設けられていて、濃縮液管124から分岐したライン166が溶解槽164に接続されている。
本実施例では、濃縮液管124及びライン166を経由して沈殿物を含む濃縮液を溶解槽164に戻して溶解槽164内で混合、攪拌し、それにより排水に沈殿物の一部又は全部を再溶解して鉄イオンを解離させる。また、必要により、pHを3〜7.5に調整するために、酸を添加しても良い。
これにより、一度使用した鉄を次の第3処理槽108での鉄化合物の形成に再利用することができるので、本実施例では、第1処理槽104での鉄の添加量を減少させ、従って固液分離装置102から出るスラッジの量を減少させると共に廃棄コストを軽減することができる。
尚、本実施例では、沈殿物を含む濃縮液を実施例2と同様に第1処理槽104に戻すようにすることもできる。
【0045】
実施例4
本実施例は、請求項9に記載の本発明方法の実施の形態を示す例であって、図7は本実施例を実施する処理装置170のフローシートである。
本処理装置170では、実施例1の処理装置100の構成に加えて、導入管112に接続されて、石膏スラリを排水に添加する石膏スラリ管172が設けてある。
【0046】
本実施例では、濾過助剤として、排水に石膏スラリを添加することにより、固液分離性を高めてスラッジの量を減少することができる。また、スラッジ中の石膏成分を80%程度になるように石膏スラリを添加することにより、スラッジを低品位の石膏に変えて、それをセメント等の原料として使用することができる。尚、石膏スラリに代えて湿式排煙脱硫装置の固液分離装置で分離した石膏を添加しても良い。
これにより、管理型処分場に廃棄せざるを得ないスラッジの量を減少できるので、廃棄コストを大幅に軽減することができる。
【0047】
実施例1から4で第1工程を実施する第1処理槽104において、金属還元剤として流動性を有する金属粒、金属粉等を使用する場合、例えば鉄粒を使用する場合には、過剰に投入された鉄粒が第1処理槽104から移動して第2又は第3工程でのpH調整の際に不必要に消費されないように、又は系外に逸出しないように、第1工程以降のpH調整操作の前で、実験例1及び2と同様に、鉄粒を分離、回収するのが好ましい。また、FeCl2 等の金属化合物を使用する場合にあっても、溶解しないものがある場合には、鉄粒の場合と同様に分離、回収するのが好ましい。
【0048】
以下、本明細書で使用した技術用語を纏めて定義する。
排水及び排煙脱硫排水の定義
本明細書では、排水とは、工業排水を含む全ての排水を言い、特に、排煙脱硫排水とは、湿式又は乾式、スート混合式又はスート分離式にかかわらず、排煙脱硫装置より排出されて排水処理装置(排水処理装置は、湿式排煙脱硫装置の一部として設けられている装置でも良く、また湿式排煙脱硫装置とは独立して設けられている装置でも良い。)に送水され、そこで処理される排水を言う。更に言えば、排煙脱硫排水は、排煙脱硫装置より排出される排水の全てを含む概念で、例えば、吸収液と同一組成の排水、即ち石灰石等の亜硫酸ガス脱硫剤及び石膏等の亜硫酸ガスを固定した生成物を含む吸収液を排出した排水、その吸収液を固液分離した後の母液、更に除塵塔から排出された排水、その排水を固液分離した後の母液、また定期的に排水される定期点検時の排水や各種洗浄水も含む概念である。従って、排煙脱硫排水は、亜硫酸、脱硫助剤を含むこともある。
【0049】
低価数の鉄化合物の定義
第1工程で使用する低価数の鉄化合物とは、酸化されて価数の高い鉄化合物に転化する鉄化合物を言い、塩化第1鉄(FeCl2)は低価数の鉄化合物であり、塩化第2鉄(FeCl3)は最高次の価数の鉄化合物である。
Feの低価数の化合物の例は、Fe 2+ の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硫酸塩などである。
【0050】
酸化性物質の定義
ここで、酸化性物質とは、排煙脱硫排水に含まれている酸化能を有する物質を意味し、その中には硫黄過酸化物、例えばS2 08 2-も含まれている。酸化性物質は、JIS K0102 工業排水試験方法のジエチル−P−フェニレンジアミン比色法において発色時間を長くしたこと以外はそれに準じて操作し、安定した発色状態になった時の比色による塩素換算値で定量できる成分である。以下、この方法をDPD法と言う。また、例えばイオンクロマトグラフィを使用することにより、酸化性物質のうち硫黄過酸化物のみを定量することもできる。
排水中の酸化性物質の濃度が高いと、排煙脱硫排水の処理装置の脱窒素工程で利用されている硝化菌及び脱窒素菌の成長が阻害され、そのために排水処理装置から放流される処理水の窒素量が増大する。また、排煙脱硫排水中のCODを吸着させる吸着剤として使用されている有機物吸着樹脂を急激に劣化させる。更には、排煙脱硫排水中のホウ素、フッ素を除去する樹脂についても同様の現象が起こる。
従って、排煙脱硫排水を処理装置に送水する前に、予め、酸化性物質を排煙脱硫排水から除去しておくことが、排煙脱硫排水の排水処理では重要である。
【0051】
亜硫酸含有液体の定義
本明細書で、亜硫酸含有液体とは、硫黄酸化物を含有する排ガス中に液体を噴霧して予備的に気液接触させる第1次気液接触と、続いて第1次気液接触を経た排ガスと吸収液とを気液接触させて酸素含有ガスの存在下で主として排ガス中の硫黄酸化物を除去する第2次気液接触とを実施して、排ガス中の硫黄酸化物を除去する際に、第1次気液接触を経た排ガスから分離して得た液体又はスラリを言う。
【0052】
例えば、亜硫酸含有液体は、図2に示すジェットバブリング管の第1下降管62の下部に滞留する液、又はスラリである。
先ず、図2を参照して、ジェットバブリング反応槽の構成を説明する。ジェットバブリング反応槽10(以下、反応槽10と言う)は、吸収剤として石灰石を使用して排ガス中の硫黄酸化物を除去する排煙脱硫装置の主要部である。反応槽10は、上から順に槽を横断するように設けられた、排ガス出口室12と、排ガス入口室14と、石灰石を含む吸収液を収容する下部空間とに区画されている。排ガス出口室12と排ガス入口室14とは、槽を横断して水平に伸びる第1隔板16によって仕切られ、排ガス入口室14と下部空間とは、第1隔板16と同様に槽を横断する方向に伸びる第2隔板18によって仕切られている。第2隔板18は、吸収液層20の液面より上方に位置し、その間に排ガス流出用の空間部22を形成している。
【0053】
排ガス出口室12は出口ダクト24に接続し、その下の排ガス入口室14は入口ダクト26に接続している。また、吸収液と気液接触した処理排ガスを空間部22から排ガス出口室12に流出させるガスライザとして、複数本のパイプ状の連通管28(図2では、簡単に1本のみ図示)が排ガス入口室14を貫通して、空間部22と排ガス出口室12とを連通させている。
【0054】
排ガス分散管30は、上端部で排ガス入口室14に連通し、下端部で吸収液20に浸漬するように排ガス入口室14の第2隔板18から下方に下降している。その下端部には開口部、例えば多数の小さな開口が設けてあり、排ガスはそれら開口から吸収液層20中に分散して、ジェットバブリング層(フロス層)Aを形成する。ジェットバブリング層Aは、排ガスの気泡と石灰石を含む吸収液とからなる液連続相の気液接触層である。
反応槽10の下部は、吸収液層20を収容するようになっており、槽下部には吸収液を攪拌するための攪拌機32と、亜硫酸ガスの石膏固定化に必要な酸素を供給するための酸素含有ガス、例えば空気を噴出する空気ノズルを備えた空気供給管34とが設けられている。
【0055】
主として排ガスの除塵、冷却を目的とする第1次気液接触を行うために、入口ダクト26と排ガス入口室14とにそれぞれ冷却液ノズル36、38が設けられていて、そこに、冷却液として吸収液が、吸収液ポンプ40により反応槽10の下部より送給されている。冷却液として吸収液の排ガス中への噴霧では、第1次気液接触において吸収液と排ガスとを気液接触させることにより、排ガスの冷却を行うと同時に除塵に加えて排ガス中の硫黄酸化物の一部の除去が起こる。更に、入口ダクト26には、排ガスを予備冷却するために工業用水を排ガス中に噴霧する工業用水ノズル42が、冷却液ノズル36の上流に設けてある。
【0056】
反応槽10に吸収剤を供給するために、石膏を含む吸収液を反応槽底部から抜き出すための排出管44、排出ポンプ46、吐出管54、吸収液から石膏を分離する固液分離装置48、及び、石膏を分離した母液の一部に石灰石粉末を添加した後、吸収剤スラリとして反応槽10に供給する吸収剤供給管50が設けてある。更に、母液の一部を排水処理装置に送るために、排水管52が吸収剤供給管50から分岐して設けてある。
図2の排出ポンプ46及び固液分離装置48は、図8の排出ポンプ4及び固液分離装置6に相当する。
【0057】
反応槽10は、更に、第1液下降管62と、第2液下降管64と、第1液下降管62の管内に滞留する、石膏を含むと共に亜硫酸ガスを高濃度に溶解したスラリ(以下、簡単に亜硫酸含有液体と略称する)を抜き出すための抜き出しポンプ66と、抜き出しポンプ66の吸い込み側に接続された亜硫酸含有液体の抜き出し管68と、抜き出しポンプ66の吐出側に接続された亜硫酸含有液体の送出管70と及びその他の接続配管系とを備えている。
【0058】
入口ダクト26内で噴霧され、排ガスと第1次気液接触して亜硫酸ガスを高濃度で溶解した吸収液を出来るだけ酸化させることなく回収するために、第1液下降管62は、入口ダクト26と反応槽10との接続口付近に設けられている。第1液下降管62は、通常、排ガス分散管30に比べて比較的大径のパイプの複数の管で構成され、第1液下降管62の下端部は、相互に連通するように連通管(図示せず)で結ばれた連通部を形成し、そこに抜き出しポンプ66の抜き出し管68が挿入されている。
【0059】
本装置では、吸収液ノズル36より噴霧された吸収液は、比較的高い亜硫酸ガス濃度を有する排ガスと気液接触して亜硫酸ガスを高濃度で吸収溶解し、亜硫酸含有液体となる。さらに飛灰(煤塵)も捕集される。
亜硫酸含有液体は、主として入口ダクト空間26で気液分離され、排ガスとの接触を継続することなく第1液下降管62を流下する。次いで、抜き出しポンプ66により抜き出される。
【0060】
また、別の亜硫酸含有液体は、図3に示すジェットバブリング反応槽に設けた亜硫酸含有液体の受け溜に受けた液、又はスラリである。
図3を参照して、ジェットバブリング反応槽80(以下、反応槽80と言う)を説明する。反応槽80は、図2の反応槽10の下降管62に代えて、図3に示すように、入口ダクト26が排ガス入口室14に入る直前に受け溜82を備え、抜き出し管68は受け溜82に接続されている。亜硫酸含有液体は、受け溜82から抜き出し管68を介して抜き出され、抜き出しポンプ66により送出管70を介して送出される。
その他の構成は、反応槽10と同じである。
【0061】
吸収液ポンプ40により抜き出された石膏スラリは、主として吸収液ノズル36に送液され、そこで、比較的高い亜硫酸ガス濃度を有する排ガスと気液接触して亜硫酸ガスを高濃度で溶解し、入口ダクト空間26内で気液分離されて亜硫酸含有液体となり、排ガスとの接触を継続することなく受け溜82に入る。
【0062】
【発明の効果】
本発明方法によれば、第1工程では、特定した金属又は金属化合物の酸化還元反応により排水中のセレンを還元、除去し、第2工程では第1工程で酸化された金属イオンを酸化して再び還元能を付与して第1工程での金属又は金属化合物の消費量を軽減し、第3工程では第1工程で生成した金属イオンを金属化合物の沈殿物として沈殿させつつSeを沈殿物に随伴させて除去する。また、下流の排水処理装置に送水される排水中の金属イオンの量を低減させることができる。
また、排煙脱硫排水の処理に適用した場合には、一つのプロセスで、排煙脱硫排水から酸化性物質とSeとを効率良く同時に、しかも少ない金属消費量で除去することができる。
また、本発明では金属又は金属化合物の沈殿物を含む濃縮液をリサイクルすることにより、金属又は金属化合物の使用量を低減しており、更には、これにより金属等のスラッジ発生量を低減できるので、2次的環境汚染防止に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の石膏分離装置のフローシートである。
【図2】ジェットバブリング槽の構成図である。
【図3】別の形式のジェットバブリング槽の構成図である。
【図4】本発明方法の実施例1方法を実施する処理装置のフローシートである。
【図5】本発明方法の実施例2方法を実施する処理装置のフローシートである。
【図6】本発明方法の実施例3方法を実施する処理装置のフローシートである。
【図7】本発明方法の実施例4方法を実施する処理装置のフローシートである。
【符号の説明】
2 反応槽等
4 排出ポンプ
6 固液分離装置又は石膏脱水機
8 排水処理装置
9 従来の石膏分離装置
10 ジェットバブリング反応槽
12 排ガス出口室
14 排ガス入口室
16 第1隔板
18 第2隔板
20 吸収液層
22 空間部
24 出口ダクト
26 入口ダクト
28 連通管
30 排ガス分散管
32 攪拌機
34 空気供給管
36、38 冷却液ノズル
40 吸収液ポンプ
42 工業用水ノズル
44 排出管
46 排出ポンプ
48 固液分離装置
50 吸収剤供給管
52 排水管
62 第1液下降管
64 第2液下降管
66 抜き出しポンプ
68 抜き出し管
70 送出管
80 別の形式のジェットバブリング槽
82 受け溜
100実施例1方法を実施する処理装置
102 固液分離装置
104 第1処理槽
106 第2処理槽
108 第3処理槽
110 沈殿槽
112 導入管
114、116、118、120 ライン
122 送出管
124 濃縮液管
126 酸添加手段
128 金属添加手段
130 攪拌機
134 亜硫酸イオン系還元剤の添加手段
136 攪拌機
140 苛性ソーダ添加手段
142 攪拌機
150 実施例2方法を実施する処理装置
152 ライン
160 実施例3方法を実施する処理装置
162 攪拌機
164 溶解槽
166 ライン
170 実施例4方法を実施する処理装置
172 石膏スラリ管
Claims (9)
- 金属鉄及び低価数の鉄化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種類の金属又は1種類の金属化合物をpHを6.5以上に調整した排水に接触させる工程及び前記金属化合物の溶液又はスラリをpHを6.5以上に調整した排水に混合する工程の少なくとも一つからなる第1工程と、
第1工程を経た排水に亜硫酸イオン系還元剤を添加する第2工程と、
第2工程を経た排水中に沈殿物を生成し、沈殿物を含む濃縮液と沈殿物の濃度が濃縮液より小さい処理水とに分離する第3工程と
を備え、
排水中のセレン(Se)を除去することを特徴とする排水の処理方法。 - 亜硫酸イオン系還元剤がH2SO3、Na2SO3及びNaHSO3の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の排水の処理方法。
- 排水から固形分を除去する固液分離工程を第1工程の前に有し、固液分離工程に導入される排水に第3工程で分離した濃縮液を混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水の処理方法。
- 第3工程で分離した濃縮液の一部を第1工程で処理中の排水に混合することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の排水の処理方法。
- 第3工程で分離した濃縮液の一部を排水に混合する混合工程を第2工程と第3工程との間に設けたことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の排水の処理方法。
- 排水が、排ガス中の硫黄酸化物を除去する排煙脱硫装置から排出される排煙脱硫排水であって、排煙脱硫排水中の酸化性物質とセレンとを除去することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の排水の処理方法。
- 硫黄酸化物を含有する排ガス中に液体を噴霧して予備的に気液接触させる第1次気液接触と、続いて第1次気液接触を経た排ガスと吸収液とを気液接触させて酸素含有ガスの存在下で主として排ガス中の硫黄酸化物を除去する第2次気液接触とを実施して、排ガス中の硫黄酸化物を除去する際に、
第1次気液接触を経た排ガスから分離して得た亜硫酸含有液体を亜硫酸イオン系還元剤とすることを特徴とする請求項6に記載の排水の処理方法。 - 前記排煙脱硫排水が、カルシウム系吸収剤を用いた吸収液と排ガスとを気液接触させ、排ガス中に含まれる亜硫酸ガスを主として除去する湿式排煙脱硫装置の排ガス処理槽から送出された石膏スラリから石膏を固液分離した後の排煙脱硫排水であって、
固液分離工程に導入される排煙脱硫排水に石膏スラリ又は固液分離した石膏を混入させることを特徴とする請求項6又は7に記載の排水の処理方法。 - 第1工程と第2工程とを一つの工程で同時に行うことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の排水の処理方法。
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