JP4003122B2 - トロイダル型無段変速機用パワーローラユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トロイダル型無段変速機用パワーローラユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図3および図4に略示するようなトロイダル型無段変速機を使用することが一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、入力軸1と同心に第1のディスクである入力側ディスク2を支持し、入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に、第2のディスクである出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5,5を中心として揺動するトラニオン6,6が設けられている。
【0003】
すなわち、各トラニオン6,6は、図5および後述する図7に示すように、このトラニオン6を構成する支持板部7の長手方向(図5および図7において左右方向)の両端部に、この支持板部7の内側面側(図5において左側)に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部8,8を有している。そして、この折れ曲がり壁部8,8によって、トラニオン6には、後述するパワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部8,8の外側面(支持板部7と反対側の面)には、各枢軸5,5が互いに同心的に設けられている。
【0004】
支持板部7の中間部には円孔10が形成され、この円孔10には変位軸9の基端部が支持されている。そして、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させることにより、これらの各トラニオン6,6の中間部に支持された変位軸9,9の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各支持板部7,7の内側面から突出する変位軸9、9の先端部の周囲には、パワーローラ11,11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、入力側および出力側の両ディスク2,4の間に挟持されている。なお、各変位軸9,9の基端部と先端部は、互いに偏心している。
【0005】
入力側および出力側の両ディスク2,4の互いに対向する内側面2a,4aの断面はそれぞれ、枢軸5を中心とする円弧或いはこのような円弧に近い曲線を回転させて得られる凹面を成している。そして、球状の凸面に形成された各パワーローラ11,11の周面11a,11aが各内側面2a,4aに当接されている。
【0006】
入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置12が設けられている。この押圧装置12は、入力側ディスク2を出力側ディスク4に向けて弾性的に押圧している。また、押圧装置12は、入力軸1と共に回転するカム板13と、保持器14により保持された複数個(例えば4個)のローラ15,15とから構成されている。また、カム板13の片側面(図3および図4の左側面)には、周方向に亙って凹凸面であるカム面16が形成され、入力側ディスク2の外側面(図3および図4において右側面)にも同様のカム面17が形成されている。そして、複数個のローラ15,15は、入力軸1に対して放射方向に延びる軸を中心に回転できるように、支持されている。
【0007】
このような構成のトロイダル型無段変速機においては、入力軸1を回転させると、その回転に伴ってカム板13が回転し、カム面16によって複数個のローラ15,15が、入力側ディスク2の外側面に設けられたカム面17に押圧される。この結果、入力側ディスク2が複数のパワーローラ11,11に押圧されると同時に、1対のカム面16,17と複数個のローラ15,15の転動面との押し付け合いに基づいて、入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、各パワーローラ11,11を介して、出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定された出力軸3が回転する。
【0008】
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合であって、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図3に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。
【0009】
反対に、増速を行なう場合には、各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図4に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。各変位軸9,9の傾斜角度を図3と図4との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比が得られる。
【0010】
更に、図6および図7は、従来から知られているトロイダル型無段変速機を示している。入力側ディスク2および出力側ディスク4はそれぞれ、円管状の入力軸18の周囲に、ニードル軸受19,19を介して、回転自在および軸方向に変位自在に支持されている。また、ローディングカム式の押圧装置12を構成するためのカム板13は、入力軸18の端部(図6において左端部)の外周面にスプライン係合され、鍔部20によって入力側ディスク2から離れる方向への移動が阻止されている。また、出力側ディスク4には出力歯車21がキー22,22により結合されており、これらの出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転するようになっている。
【0011】
前述の図5に示すような構成を成す一対のトラニオン6,6の両端部にはそれぞれ枢軸5,5が設けられており、これらの枢軸5,5は一対の支持板23,23に対して揺動自在および軸方向(図6において表裏方向、図7において左右方向)に変位自在に支持されている。すなわち、各枢軸5,5は、支持板23,23に形成された支持孔23aの内側にラジアルニードル軸受32によって支持されている。そして、各トラニオン6,6の支持板部7,7の中間部に形成された円孔10には、基端部9aと先端部9bとが互いに平行で且つ偏心した変位軸9の基端部9aが、回転自在に支持されている。また、各支持板部7,7の内側面から突出する各変位軸9,9の先端部9b,9bの周囲には、パワーローラ11,11が回転自在に支持されている。
【0012】
なお、一対のトラニオン6,6毎に設けられた一対の変位軸9,9は、入力軸18に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸9,9の先端部9bが基端部9aに対して偏心している方向は、入力側および出力側の両ディスク2,4の回転方向に対して同方向(図7において左右逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸18の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸18の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸18の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0013】
また、各パワーローラ11,11の外側面と各トラニオン6,6の各支持板部7,7の内側面との間には、パワーローラ11の外側面側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これらの各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これらの各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0014】
また、スラストニードル軸受25は、各支持板部7,7の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、各パワーローラ11,11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらの各パワーローラ11,11および外輪28が各変位軸9の基端部9aを中心として揺動変位することを許容する。
【0015】
更に、各トラニオン6,6の一端部(図7において左端部)にはそれぞれ駆動ロッド29が結合されており、各駆動ロッド29の中間部外周面に駆動ピストン30が固設されている。そして、これらの各駆動ピストン30はそれぞれ、駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。
【0016】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸18の回転は、押圧装置12を介して、入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。
【0017】
入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン30,30を互いに逆方向に変位させる。これらの各駆動ピストン30,30の変位に伴って、一対のトラニオン6,6が互いに逆方向に変位する。例えば、図7において下側のパワーローラ11が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ11が同図の左側にそれぞれ変位する。その結果、これらの各パワーローラ11,11の周面11a,11aと入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a,4aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン6,6が、支持板23,23に枢支された枢軸5,5を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0018】
その結果、前述の図3および図4に示したように、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,4aとの当接位置が変化し、入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。また、これらの入力軸18と出力歯車21との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11及びこれらの各パワーローラ11に付属の外輪28が、各変位軸9の基端部9aを中心として僅かに回動する。これらの各外輪28の外側面と各トラニオン6,6の支持板部7,7の内側面との間には、各スラストニードル軸受25が存在するため、前記回動は円滑に行なわれる。したがって、前述のように各変位軸9,9の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0019】
前述のようなトロイダル型無段変速機の運転時において、各トラニオン6,6の内側面側(ポケット部P側)に回転自在に支持されたパワーローラ11には、入力側および出力側の両ディスク2,4の内側面2a,4aからスラスト荷重が加わる。そして、このスラスト荷重は、スラスト玉軸受24及びスラストニードル軸受25を介して、各トラニオン6,6の内側面に伝達される。したがって、トロイダル型無段変速機の運転時に各トラニオン6,6は、図5に誇張して示すように、パワーローラ11が位置する内側面側が凹面となる方向に、僅かとは言え弾性変形する。
【0020】
そして、この弾性変形量が大きくなると、スラスト玉軸受24を構成する転動体である玉26,26及びスラストニードル軸受25を構成するニードルに加わるスラスト荷重が不均一になる。すなわち、各トラニオン6,6の弾性変形の結果、これらの各トラニオン6,6の各支持板部7,7の内側面と各パワーローラ11の外側面との距離が不均一になる。そして、これらの両面同士の距離が大きくなった部分に存在する転動体に加わるスラスト荷重が小さくなる代わりに、この距離が小さくなった部分に存在する転動体に加わるスラスト荷重が大きくなる。この結果、一部の転動体に過大なスラスト荷重が加わり、この一部の転動体と当該転動体の転動面が当接している軌道面との当接圧が過大となって、これらの転動面及び軌道面の疲れ寿命が著しく短くなる。
【0021】
また、トラニオン6の両端部に設けられた傾転軸受の転動面である各枢軸5,5と、パワーローラ11を支持するためのトラニオン6との結合部位A(図8参照)には応力が集中し易く、過大なトルクが入力されて前述のようにトラニオン6が弾性変形した場合には、前記結合部位Aに亀裂等の損傷が発生し易くなる。そのため、従来は、トラニオン6の肉厚を大きくして、このような損傷の発生を防止しているが、大型化して重量が増加するとともに、コストも増大するため、好ましくない。また、枢軸5と支持板部7とを必要以上に大きな半径で結合する必要があり、加工上においても問題が生じていた。
【0022】
また、トラニオン6が図5に示すように弾性変形すると、変位軸9がトラニオン6に対し傾斜する。その場合、変位軸9の基端部9aとトラニオン6との係合部B(図8参照)に応力が集中して、この部分に亀裂等の損傷が発生し易くなる。また、変位軸9がトラニオン6に対し傾斜すると、変位軸9の先端部9bに支持されたパワーローラ11の位置がずれるため、パワーローラ11の周面11aと各ディスク2,4の内側面2a,4aとの接触点が所定位置からずれ、変速動作が不安定になる。
【0023】
そのため、図9に示すように、パワーローラ11が位置するトラニオン6の支持板部7の内側面側に、一対の折れ曲がり壁部8,8の先端部同士を連結する連結部材33を設け、この連結部材33によって、トラニオン6の支持板部7の内側面側が凹面となる方向にトラニオン6が弾性変形することを規制する技術が提案されている(特許文献1参照。)。
【0024】
このようなトロイダル型無段変速機においては、トラニオン6に、変位軸9、パワーローラ11、スラスト玉軸受24、スラストニードル軸受25を組み付けた後、連結部材33をピン等の締結部材によってトラニオン6の折れ曲がり壁部8,8に結合固定することにより、トロイダル型無段変速機用パワーローラユニット34が構成される。
【0025】
【特許文献1】
特開2001−304366号公報
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のパワーローラユニット34においては、パワーローラユニット34をトロイダル型変速機に組み込むときに、パワーローラ11および外輪28が連結部材33に向けて移動すると、スラストニードル軸受25が、外輪28とトラニオン6との間から脱落することがあり、トロイダル型無段変速機の組み立て性に劣るという問題があった。
また、スラストニードル軸受25が脱落した状態のまま、パワーローラユニット34をトロイダル型無段変速機に組み付けた場合には、パワーローラ11と各ディスク2,4の内側面2a,4aとの接触点がずれて、変速動作が不安定になって、動力伝達の効率が低下してしまい、最悪の場合には、動力伝達が不可能になってしまうという問題があった。
【0027】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、トロイダル型無段変速機の組み立て性の向上を図ることができるとともに、動力伝達の効率の低下を防止することができるトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットを提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、前記課題を解決するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットは、両端部に互いに同心の枢軸が設けられたトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中間部に支持された変位軸に回転自在に支持されたパワーローラと、このパワーローラの大端面と前記支持板部の内側面との間に設けられかつ前記パワーローラとともに転動体を挟持する外輪と、この外輪の外側面と前記支持板部の内側面との間に設けられ、前記パワーローラから前記トラニオンに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ揺動を許容するスラスト軸受とを備え、前記トラニオンの前記支持板部の長手方向の両端部には、前記パワーローラを収容するポケット部を形成するように前記支持板部の内側面側に折れ曲がるとともに、連結部材により連結された一対の折れ曲がり壁部が形成され、前記スラスト軸受の外周は、前記支持板部の内側面に設けられた保持部に保持されているトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットにおいて、前記保持部は前記支持板部の内側面に設けられた段差部からなり、この段差部に前記外輪の外側面の外径よりも小さい外径の前記スラスト軸受の外周が保持されており、前記連結部材には前記パワーローラの小端面に向けて突出する突出部が設けられているとともに、前記パワーローラの小端面が平坦に形成されており、前記パワーローラの小端面と前記突出部との間の距離dと、前記外輪の外側面と前記段差部との間の距離bとの合計が、前記スラスト軸受の厚さcよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0029】
請求項1に記載の発明においては、パワーローラの小端面と連結部材の突出部との間の距離dと、外輪の外側面と段差部との間の距離bとの合計が、スラスト軸受の厚さcよりも小さく(d+b<c)設定されているので、パワーローラユニットをトロイダル型無段変速機に組み込むときに、パワーローラおよび外輪が連結部材に向けて移動して、外輪の外側面と段差部との間の距離bが大きくなっても、この距離bがスラスト軸受の厚さよりも大きくならないため、スラスト軸受が外輪とトラニオンとの間から脱落しない。したがって、トロイダル型無段変速機の組み立て性が向上するとともに、動力伝達の効率が低下しない。
また、スラスト軸受が脱落しないので、パワーローラユニットの運搬時に、スラスト軸受の脱落を防止するための部材がいらないため、パワーローラユニットの運搬コストが低減する。
また、連結部材にパワーローラの小端面に向けて突出する突出部が設けられているので、この突出部以外のパワーローラの小端面と連結部材との間の空間が広くなるため、高速で回転するパワーローラのまわりの潤滑油の流れが良くなり、動力伝達の効率が向上する。
【0030】
請求項2に記載のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットは、請求項1に記載の発明において、前記距離dは、前記距離bよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0031】
請求項2に記載の発明においては、パワーローラの小端面と連結部材の突出部との間の距離dが、外輪の外側面と段差部との間の距離bよりも大きく(d>b)設定されているので、パワーローラの小端面と連結部材の突出部との間の空間が広くなる。したがって、潤滑油の流れを良くすることができ、動力伝達の効率が向上する。
【0034】
請求項3に記載のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットは、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記連結部材の前記突出部は、前記パワーローラの回転の中心部に対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0035】
請求項3に記載の発明においては、連結部材の突出部が、パワーローラの回転の中心部に対向する位置に設けられているので、パワーローラの小端面の外周部と連結部材との間の空間が広くなるため、パワーローラのまわりの潤滑油の流れがさらに良くなり、動力伝達の効率がさらに向上する。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の各図において、図3乃至図9と同様な構成要素には同一の符号を付してその説明を簡略化する。
図1は本発明の第1の実施の形態を示している。同図に示すように、本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット50は、トラニオン35と、変位軸9と、パワーローラ39と、スラスト玉軸受42と、スラストニードル軸受45とを備えている。
【0037】
トラニオン35は、このトラニオン35を構成する支持板部36の長手方向(図1において、左右方向)の両端部に、支持板部36の内側面側(図1において、上側)に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部8,8を有している。そして、各折れ曲がり壁部8,8の外側面にはそれぞれ、枢軸5,5が互いに同心的に設けられている。
また、支持板部36の中間部には、変位軸9の基端部9aを回転自在に支持するために、有底の支持孔37が形成されている。すなわち、支持孔37の後述する外輪41と反対側には、底板部37aが支持板部36と一体に設けられており、この底板部37aによって支持孔37の開口が塞がれている。
【0038】
また、トラニオン35においては、パワーローラ39が位置する支持板部36の内側面側(ポケット部P側)に、トラニオン35が、支持板部36の内側面側が凹面となる方向に弾性変形することを規制する連結部材38が設けられている。この連結部材38は、一対の折れ曲がり壁部8,8の先端部8a,8a間に架設されるように延びている。この連結部材38は、ポケット部P内に位置しており、スラスト方向と略直交する方向でポケット部Pの内面に当接して、ポケット部Pを押し潰すように作用する押圧力を受ける。なお、連結部材38は、例えば、鋼等の十分な剛性を有する材料に、鍛造加工の如き、大きな剛性を得られる加工を施すことにより直線状に成形される。
【0039】
パワーローラ39には、変位軸9の先端部9bを挿入するために、有底の挿入孔40が形成されている。すなわち、挿入孔40の外輪41と反対側には、底板部40aがパワーローラ39と一体に設けられており、この底板部40aによって挿入孔40の開口が塞がれている。
【0040】
また、パワーローラ39の大端面39bと、支持板部36の内側面との間には、パワーローラ39とともに円環状の保持器44に保持された玉(転動体)43を挟持する外輪41が変位軸9に一体に形成されている。そして、これらの玉43と保持器44と外輪41とでスラスト玉軸受42が構成されている。
【0041】
この外輪41の外側面41aと、支持板部36の内側面との間には、パワーローラ39から外輪41に加わる荷重を支承しつつ、パワーローラ39および外輪41が変位軸9の基端部9aを中心として揺動変位することを許容するスラストニードル軸受(スラスト軸受)45が設けられている。このスラストニードル軸受45は、保持器45aとニードル45bとから構成されており、このスラストニードル軸受45の外周は、支持板部36の内側面に形成された段差部(保持部)36aに保持されている。また、スラストニードル軸受45を受けるレース(受座)46が、支持板部36の内側面に形成された凹部36cの底面に取り付けられている。
【0042】
このパワーローラユニット50においては、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aとの間の距離aと、外輪41の外側面41aと段差部36aの外輪41に対向する対向面36bとの間の距離bとの合計が、スラストニードル軸受25の厚さcよりも小さく(a+b<c)なるように設定されている。さらには、上記距離aは、上記距離bよりも大きく(a>b)なるように設定されている。
【0043】
このように構成されたトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット50においては、トラニオン35に、変位軸9、パワーローラ39、スラスト玉軸受42およびスラストニードル軸受45を組み付けた後、トラニオン6の折れ曲がり壁部8,8の各先端部8a,8aに、ピン等の締結部材47によって連結部材38の両端を固定することにより組み立てられる。
【0044】
このようなトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット50にあっては、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aとの間の距離aと、外輪41の外側面41aと段差部36aの対向面36bとの間の距離bと、スラストニードル軸受45の厚さcとが、a+b<cの関係にあるので、パワーローラユニット50をトロイダル型無段変速機に組み込むときに、パワーローラ39が外輪41と一緒に連結部材38に向けて移動して、外輪41の外側面41aと段差部36aの対向面36bとの距離が大きくなっても、この距離bがスラストニードル軸受45の厚さcよりも大きくなることがない。したがって、スラストニードル軸受45が、外輪41の外側面41aと支持板部36の段差部36aの間から脱落することを確実に防止することができる。よって、トロイダル型無段変速機の組み立て性を向上させることができるとともに、パワーローラユニット50における動力伝達の効率の低下を防止することができる。
さらには、スラストニードル軸受45が脱落しないので、パワーローラユニット50の運搬時に、スラストニードル軸受45の脱落を防止するための部材を必要としないため、パワーローラユニット50の運搬コストの低減を図ることができる。
【0045】
また、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aとの間の距離aと、外輪41の外側面41aと段差部36aの対向面36bとの間の距離bとが、a>bの関係にあるので、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aと間の空間を広くすることができる。したがって、潤滑油の流れを良くすることができ、パワーローラユニット50における動力伝達の効率を向上させることができる。
【0046】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示している。なお、図2において、図1と同様な構成要素には、同一符号を付してその説明を簡略化する。
同図に示すように、本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット51では、連結部材38のパワーローラ39の回転の中心部に対向する位置に、パワーローラ39の小端面39aに向けて突出する突出部49が、連結部材38に一体に設けられている。
【0047】
このパワーローラユニット51においては、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の突出部49のパワーローラ39の内側面に対向する対向面49aとの間の距離dと、外輪41の外側面41aと段差部36aの対向面36bとの間の距離bとの合計が、スラストニードル軸受25の厚さcよりも小さく(d+c<b)なるように設定されている。また、上記距離dは、上記距離bよりも大きく(d>b)になるように設定されている。
【0048】
このようなトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット51にあっては、第1実施の形態と同様な作用効果を奏するとともに、連結部材38にパワーローラ39の小端面39aに向けて突出する突出部49が設けられているので、この突出部49以外のパワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aとの間の距離eが大きくなり、この間の空間を広くすることができる。したがって、高速で回転するパワーローラ39のまわりの潤滑油の流れが良くなり、動力伝達の効率が向上する。
【0049】
また、連結部材38の突出部49が、パワーローラ39の回転の中心部に対向する位置に設けられているので、パワーローラ39の小端面39aの外周部と連結部材38との空間を広くすることができるため、パワーローラ39のまわりの潤滑油の流れがさらに良くなり、動力伝達の効率がさらに向上する。
【0050】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは言うまでもない。例えば、第1実施の形態においては、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の内側面38aとの間の距離aと、外輪41の外側面41aと段差部36aの対向面36bとの間の距離bとを、a>bの関係になるように設定していたが、これに代えて、上記距離aと上記距離bとを、a<bの関係になるように設定するようにしても良い。
同様に、第2実施の形態においても、パワーローラ39の小端面39aと連結部材38の突出部49の対向面49aとの間の距離dと上記距離bとを、d<bの関係になるように設定するようにしても良い。
【0051】
また、上記各実施の形態では、スラスト軸受としてころがり軸受であるスラストニードル軸受45を用いたが、これに代えて、すべり軸受を用いるようにしても良い。
【0052】
また、第2実施の形態では、連結部材38のパワーローラ39の回転の中心部に対向する位置に突出部49を設けたが、これに代えて、連結部材38のパワーローラ39の小端面39aの外周部近傍に対向する位置等に、突出部49を設けるようにしても良い。要は、連結部材38のパワーローラ39の小端面39aに対向する位置の少なくとも一部に突出部49が形成されていれば良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、トロイダル型無段変速機の組み立て性の向上を図ることができるとともに、動力伝達の効率の低下を防止することができるトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットを示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係るトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットを示す断面図である。
【図3】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本構成を最大減速時の状態で示す側面図である。
【図4】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本構成を最大増速時の状態で示す側面図である。
【図5】トラニオンの具体的形状をスラスト荷重により弾性変形した状態で示す断面図である。
【図6】従来のトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図7】図6のX−X線に沿う断面図である。
【図8】トラニオンおよびパワーローラの従来構造を示す拡大断面図である。
【図9】従来のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
5 枢軸
8 折れ曲がり壁部
9 変位軸
35 トラニオン
36 支持板部
36a 段差部(保持部)
38 連結部材
39 パワーローラ
39a 小端面
39b 大端面
41 外輪
41a 外側面
43 玉(転動体)
45 スラストニードル軸受(スラスト軸受)
49 突出部
50,51 トロイダル型無段変速機用パワーローラユニット
P ポケット部
Claims (3)
- 両端部に互いに同心の枢軸が設けられたトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中間部に支持された変位軸に回転自在に支持されたパワーローラと、このパワーローラの大端面と前記支持板部の内側面との間に設けられかつ前記パワーローラとともに転動体を挟持する外輪と、この外輪の外側面と前記支持板部の内側面との間に設けられ、前記パワーローラから前記トラニオンに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ揺動を許容するスラスト軸受とを備え、前記トラニオンの前記支持板部の長手方向の両端部には、前記パワーローラを収容するポケット部を形成するように前記支持板部の内側面側に折れ曲がるとともに、連結部材により連結された一対の折れ曲がり壁部が形成され、前記スラスト軸受の外周は、前記支持板部の内側面に設けられた保持部に保持されているトロイダル型無段変速機用パワーローラユニットにおいて、
前記保持部は前記支持板部の内側面に設けられた段差部からなり、この段差部に前記外輪の外側面の外径よりも小さい外径の前記スラスト軸受の外周が保持されており、
前記連結部材には前記パワーローラの小端面に向けて突出する突出部が設けられているとともに、前記パワーローラの小端面が平坦に形成されており、
前記パワーローラの小端面と前記突出部との間の距離dと、前記外輪の外側面と前記段差部との間の距離bとの合計が、前記スラスト軸受の厚さcよりも小さく設定されていることを特徴とするトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット。 - 前記距離dは、前記距離bよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット。
- 前記連結部材の前記突出部は、前記パワーローラの回転の中心部に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトロイダル型無段変速機用パワーローラユニット。
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