JP4097874B2 - マルチスペクトル画像の画像圧縮方法および画像圧縮装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被写体を撮影する際の撮影波長領域を複数のバンド帯域に分割して撮影したバンド画像を用いて得られるマルチスペクトル画像の画像データに対して、画像品質を損なうことなく効率的に圧縮することのできる画像データの圧縮処理の技術分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、デジタル画像処理の進歩によって、画像の色情報(明度、色相、彩度)を完全に表現する手段として、画像の各画素毎に分光情報(スペクトル画像)を備える画像、すなわちマルチスペクトル画像が利用されている。
このマルチスペクトル画像は、撮影被写体の撮影波長領域を複数のバンド帯域に分割して各バンド帯域毎に撮影被写体を撮影した複数のバンド画像から構成されるマルチバンド画像に基づいて分光反射率分布を各画像毎に推定して得られるものである。このマルチバンド画像は、赤(R)、緑(G)および青(B)画像からなる従来のRGBカラー画像では十分に表現できない色情報を再現することができ、例えばより正確な色再現の望まれる絵画の世界にとって有効である。そこで、この色情報を正確に再現するといった特徴を生かすために、例えば380〜780nmの撮影波長帯域を10nm帯域毎に区切って41バンドさらには5nm帯域毎に区切って81バンドといった多くのバンド数を備えたマルチバンド画像に基づいてマルチスペクトル画像を得ることが望まれる。
【0003】
しかし、画素毎に分光情報を備えるマルチスペクトル画像は、撮影波長帯域を分割した各帯域(チャンネル)毎に、例えば41チャンネル毎に分光反射率データを有するため、従来から用いられてきた3チャンネルのRGBカラー画像に比べ、例えば約13倍(41チャンネル/3チャンネル)の画像データ量を備えなければならない。
そのため、得られたマルチスペクトル画像の画像データを保存する場合、大きな記憶容量が必要となり、保存に要する時間も長い。また、画像データをネットワークを介して転送する際にも多大の時間がかかり、取り扱いが困難になる。
【0004】
このような問題に対して、マルチスペクトル画像の各画素ごとの分光情報から得られるスペクトル波形を3つの等色関数、例えばRGB表色形の等色関数で展開するとともに、等色関数で表されないスペクトル波形の部分を、主成分分析法を用いて、主成分基底ベクトルで展開し、その中からスペクトル画像の画像情報を代表する主成分を抽出して採用し、それ以外の主成分は取り除き、最終的に等色関数を含め合計6〜8個の基底ベクトルで上記スペクトル波形を表現する方法が提案されている(Th.Keusen, Multispectoral Color System wuth an Encoding Format Compatible with the Conventional Tristimulus Model, Journal of Imaging Science and Technology 40: 510-515 (1996))。これを用いて、上記スペクトル波形を6〜8個の基底ベクトルとそれに対応した係数の対とで表わすことによって、マルチスペクトル画像の画像データを圧縮することができる。特に、RGB表色形の等色関数で表される場合の等色関数の係数は、R、GおよびBの三刺激値となるので、R、GおよびB画素による3刺激値に基づいて画像処理や画像表示等が行われる従来の画像処理装置や画像表示装置に対応して適合するように特別な変換を施す必要がなく、直接画像データを送ることができるといった処理の低減に対して優れた効果を備える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような方法によって得られる画像データは、例えば41個のスペクトル画像から構成されるマルチスペクトル画像の場合、例えば8個の基底ベクトルとその係数によって表すことによって、マルチスペクトル画像の画像データ量の約20%(8個/41個×100)に圧縮することができる。
しかし、41個のスペクトル画像から構成されるマルチスペクトル画像の場合、RGBカラー画像の画像データ量に比べて約13倍も大きく、上記方法で約20%に圧縮できたとしても、RGBカラー画像の画像データ量に対して、依然として約2.5倍(13×20/100)ものデータ量を有することになる。そのため、上述したように記録メディア等に記録保存する際の記録時間や画像データをネットワークを介して転送する際の転送時間も長く、依然として取り扱いが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、被写体を撮影する際の撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割することで得られる複数のスペクトル画像に対して、視覚的に劣化することが少なく画像圧縮の際の圧縮率を高め、画像データの取り扱いが向上するマルチスペクトル画像の画像圧縮方法および画像圧縮装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、被写体を撮影する際に撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割して撮影したバンド画像を用いて得られるマルチスペクトル画像を画像圧縮する方法であって、
マルチスペクトル画像の画像データを対数変換して対数変換画像データとし、この対数変換画像データを用いて、主成分分析を行い、マルチスペクトル画像に基づく主成分ベクトルと主成分画像の複数の対を得、
この複数の対の中から、マルチスペクトル画像の画像情報を最適に代表する主成分ベクトルと主成分画像の対の最適主成分数を求めて、最適主成分ベクトルとこれに対応する最適主成分画像を得、
得られた各最適主成分画像に対して、像構造圧縮を行い最適主成分圧縮画像データを得ることによって、前記マルチスペクトル画像の画像データを前記最適主成分ベクトルおよび前記最適主成分圧縮画像データに圧縮することを特徴とするマルチスペクトル画像の画像圧縮方法を提供するものである。
【0008】
ここで、前記最適主成分数は、色空間上の測色値に基づいて決定されるのが好ましく、前記最適主成分数は、前記主成分ベクトルと前記主成分画像の中から選ばれて構成される合成画像の測色値の画像情報の、前記マルチスペクトル画像に基づいて構成されるオリジナル画像の測色値の画像情報に対する誤差の値が、所定値以下となる最小の主成分数であるのが好ましい。
ここで、さらに好ましくは、前記最適主成分数は、前記マルチスペクトル画像に対する寄与の大きい主成分ベクトルを、寄与の大きい主成分ベクトルの順に、順次含め、これに対応した前記主成分ベクトルと前記主成分画像によって構成される前記合成画像を求めた時の前記オリジナル画像に対する前記誤差の変動が、所定値以下に収まる最小の主成分数であるのが好ましい。
【0009】
また、前記像構造圧縮は、離散フーリエ変換またはウェーブレット変換による画像データの高周波成分の圧縮であるのが好ましい。
さらに、前記像構造による圧縮は、画像データの符号化により画像データを圧縮する符号化圧縮処理が付加されるものであってもよい。
【0010】
また、本発明は、被写体を撮影する際に撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割して撮影したバンド画像を用いて得られるマルチスペクトル画像を画像圧縮するマルチスペクトル画像の画像圧縮装置であって、
マルチスペクトル画像の画像データを対数変換して対数変換画像データを得る画像データ変換部と、
この画像データ変換部で得られた対数変換画像データを用いて、主成分分析を行い、マルチスペクトル画像に基づく主成分ベクトルと主成分画像の複数の対を得る主成分分析部と、
この主成分分析部で得られた主成分ベクトルと主成分画像の複数の対の中から、マルチスペクトル画像の画像情報を最適に代表する主成分ベクトルと主成分画像の対の最適主成分数を求めて、最適主成分ベクトルと最適主成分画像を得る最適主成分ベクトル・画像抽出部と、
この最適成分ベクトル・画像抽出部で得られた各最適主成分画像の画像データに対して、像構造圧縮を行う画像圧縮部とを有することを特徴とするマルチスペクトル画像の画像圧縮装置を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法を実施するマルチスペクトル画像取得システムについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法を実施し、本発明のマルチスペクトル画像の画像圧縮装置を含むマルチスペクトル画像取得システム(以下、本システムという)10を示す。
本システム10は、撮影被写体Oを撮影し、得られたマルチスペクトル画像MS の画像データを記録メディアに保存するものであって、撮影被写体Oを照らす光源12と、撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割する可変フィルタ14と、撮影被写体Oを撮影してマルチバンド画像MB を得るCCDカメラ16と、画像データを一時保持するマルチバンド画像データ記憶装置18と、マルチバンド画像から各画素毎に分光反射率分布を推定してマルチスペクトル画像MS を得るマルチスペクトル画像取得装置20と、マルチスペクトル画像MS の画像データを、視覚的な劣化が少なく、圧縮率を高くして圧縮するマルチスペクトル画像圧縮装置22と、得られた圧縮画像データを保存する記憶メディアドライブ装置24とを主に有して構成される。なお、本発明において、マルチスペクトル画像Ms は、少なくとも6チャンネル以上のスペクトル画像を備え、すなわち、分光反射率分布のデータを持つ構成波長数が6以上であるのが好ましい。
【0013】
光源12は、撮影被写体Oを撮影するものであって、光源の種類等は特に制限されないが、撮影されたマルチバンド画像MB から分光反射率を推定し、マルチスペクトル画像MS を取得するために、分光強度分布が既知の光源であることが好ましい。
可変フィルタ14は、撮影被写体Oを撮影してマルチバンド画像MB を得るために、撮影波長帯域を分割するバンド帯域が可変に設定可能なバンドパスフィルタであり、例えば16バンド、21バンド、41バンド、81バンドや201バンド等に分割することができる。このような可変フィルタとして、例えば液晶チューナブルフィルタが挙げられる。
【0014】
CCDカメラ16は、撮影被写体Oの反射光を可変フィルタ14を介して所望の波長帯域に分光された透過光によって結像される像を黒白のバンド画像として撮影するカメラであって、受光面には、エリアセンサとしてCCD(charge coupled device ) 撮像素子が面状に配置されている。
また、CCDカメラ16には、撮影される画像の明度値のダイナミックレンジを適切に定めるため、撮影被写体Oの撮影前に行うホワイトバランスの調整機構を備える。
【0015】
マルチバンド画像データ記憶装置18は、撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割して撮影され、各バンドに対応するホワイトバランスの調整された複数のバンド画像からなるマルチバンド画像MB を一時記憶保持する部分である。
マルチスペクトル取得装置20は、CCDカメラ16で撮影された分光反射率の既知の撮影被写体の画像データ、例えばマクベスチャートのグレーパッチの画像データとその既知の分光反射率の値との対応関係から予め作成された1次元ルックアップテーブル(1次元LUT)を備え、この1次元LUTを用いて、マルチバンド画像データ記憶装置18より呼び出された撮影被写体Oのマルチバンド画像MB の画像データから各画素毎の撮影被写体Oの分光反射率を推定し、マルチスペクトル画像MS を取得し、マルチスペクトル画像圧縮装置22に送る部分である。
撮影被写体Oの分光反射率の推定において、可変フィルタ14のフィルタ特性、すなわち可変フィルタ14の分光透過率分布がバンド間で一部分が重なった特性を有する場合、得られるマルチスペクトル画像MS の分光反射率分布は鈍り、精度の高い分光反射率分布を推定することができないため、マトリクス演算やフーリエ変換を用いて、上記フィルタ特性を排除するデコンボリューション処理を施してもよい。
【0016】
記録メディアドライブ装置24は、ハードディスクやフロッピーディスクやMOやCD−RやDVD等の記録メディアに記録するドライブ装置であり、マルチスペクトル画像MS の画像データを後述するマルチスペクトル画像圧縮装置22で圧縮した圧縮マルチスペクトル画像データを記録することができる。また、記録メディアドライブ装置24と共に、またこれに替えて、後述する圧縮マルチスペクトル画像データを各種ネットワークを介して転送するために、ネットワーク接続装置を備えてもよい。
【0017】
マルチスペクトル画像圧縮装置22は、マルチスペクトル取得装置20で得られたマルチスペクトル画像MS を構成するマルチスペクトル画像データから、視覚的な劣化が少なく画像圧縮率の高い画像データに変換する部分であり、画像データ変換部22aと、主成分分析部22bと、最適主成分ベクトル・画像抽出部22cと、画像圧縮部22dとを備える。また、本装置は、以下に示すような機能を備えるソフトウェアで構成してもよく、また1つのハードウェアとして構成してもよい。
【0018】
画像データ変換部22aは、マルチスペクトル画像取得装置20から送られたマルチスペクトル画像の画像データを対数変換、すなわち、Log変換して対数変換画像データを得、この対数変換画像データを主成分分析部22bに送る部分であり、一次元ルックアップテーブル等の公知の変換手段を用いて変換を行う。画像データを対数変換するのは、後述するように、画像の圧縮率を高めることができるからである。
【0019】
主成分分析部22bは、マルチスペクトル画像MS の各画素毎に備える分光反射率分布の対数変換画像データの主成分分析を行い、主成分ベクトルで展開する部分である。なお、以降では、撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割するバンド数をnとして説明する。
【0020】
本発明における主成分分析として具体的には、観測波形から、統計的手法および固有値解析法を用いて、観測波形に固有の1次独立な固有ベクトルを主成分ベクトルとして求め、この主成分ベクトルから、本来観測波形に雑音成分が無ければ、固有値が0となる固有値の小さな主成分ベクトルを取り除き、バンド数nより少ない数の最適主成分ベクトルを求め、この最適主成分ベクトルによって観測波形を線型的に表す、南茂夫著、「科学計測のための波形データ処理」、220−225頁に記載の方法が挙げられる。この分析方法は、主成分分析部22bおよび後述する最適主成分ベクトル・画像抽出部22cにおいて主に行われる。
このように主成分分析法を用いる場合には、分光反射率波形に含まれる雑音成分が、分光反射率の値と無関係な雑音であることが好ましい。
【0021】
本実施例に沿って大きく説明すると、マルチスペクトル画像MS は、各画素毎に、可変フィルタ14を用いて被写体の撮影波長帯域を分割したバンドの数nだけ、分光反射率の値を有する。すなわち、n個のバンド帯域からなるマルチバンド画像MB によって得られたマルチスペクトル画像MS は、n個の分光反射率の値からなる分光反射率分布を有する。また、マルチスペクトル画像MS は、例えば1024×1024画素、すなわち約106 個の画素で構成され、この画素数は、分光反射率の個数であるnよりも圧倒的に大きいため、統計的処理、すなわち、画像領域全体またはその一部分の画素に関する自己相関行列Tを求め、これを用いて分光反射率の主成分分析を行うことができる。この場合、主成分分析により主成分を効果的に求めるために、分光反射率波形のデータを対数変換した対数変換画像データに基づいて行う。
【0022】
ここで主成分分析から求められる主成分とは、統計的処理を用いて得られるもので、例えばnバンドの数に相当するn個の分光反射率の値からなる正規直交化された自己相関行列Tの固有ベクトルである主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)と自己相関行列Tの固有値uk (k=1〜n(kは1以上n以下の整数を示す))の対である。また、主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)を用いて、スペクトル画像の画素位置(i,j) での分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ) を線型展開し、その際得られる各主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)に係る係数sk (i,j) (k=1〜n)を求め、これを画素位置(i,j) での画像データとする主成分画像Sk (k=1〜n)を得ることができる。
得られた主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)および主成分画像Sk (k=1〜n)は、最適主成分ベクトル・画像抽出部22cに送られる。
【0023】
最適主成分ベクトル・画像抽出部22cは、主成分分析部22bで得られた主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)とそれに対応した主成分画像Sk (k=1〜n)とを用いて、最適主成分数m1 を定め、最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )を抽出する部分である。
最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )を抽出するのは、主成分分析部22bで求められた主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)には、マルチスペクトル画像の画像データの雑音成分の影響を受けて、本来主成分ベクトルに当たらない固有ベクトルも主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)として含まれて求められるため、この主成分ベクトルpk (λ)を排除し、最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )を抽出する必要があるからである。
【0024】
すなわち、n個の主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)とそれに対応した主成分画像Sk (k=1〜n)の対の中から、それより少ないm(m<n)個の主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m)とそれに対応した主成分画像Sk (k=1〜m)の対を用いて合成画像Gを求め、この合成画像Gの画像情報の、マルチスペクトル画像Ms に基づくオリジナル画像の画像情報に対する誤差を用いて、m個の主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m)とそれに対応した主成分画像Sk (k=1〜m)が最適な主成分であるかどうか判断する。
【0025】
ここで、主成分ベクトルpk(λ)は、対応した固有値ukが大きい程、マルチスペクトル画像MSの分光反射率分布における主成分の寄与は大きい。そこで、固有値ukの大きい順に、この固有値ukに対応する主成分ベクトルpk(λ)を合成画像Gを求めるために順次増やして、一定の照明光源下で再構成される合成画像Gを求めていくと、n個の主成分ベクトルから構成されるマルチスペクトル画像MSに基づくオリジナル画像に対する合成画像Gの画像情報の誤差が、採用する主成分ベクトル数mの増加に伴って単調減少する。そのため、この誤差が予め定めた所定値以下に減少する最初の主成分ベクトル数mを求めることによって、最小の最適主成分数m1を求めることができる。これによって、最適主成分数m1で合成画像Gを求める際に採用した主成分ベクトルpk(λ)およびこれに基づいて得られる主成分画像Skを、それぞれ、最適主成分ベクトルpk(λ)(k=1〜m1)および最適主成分画像Sk(k=1〜m1)として抽出することができる。
【0026】
ここで、上記画像情報とは、例えば、CIEL* a* b* 色空間に於ける一定の光源下の測色値L* 、a* およびb* 、例えばCIED65の標準光条件下の測色値L* 、a* およびb* であり、その際、上記誤差とは下記式(1) で表される色差ΔE0 である。この場合、この色差ΔE0 が例えば1.0以下となるような主成分画像の数mを見出すことによって最適主成分数m1 を求めることができる。
ΔE0 ={(ΔL* )2 +(Δa* )2 +(Δb* )2 }1/2 (1)
ここで、ΔL* 、Δa* およびΔb* は、上記合成画像とマルチスペクトル画像の画像全体または一部分における平均測色値L* 、a* およびb* の差分である。このようにして、最適主成分数m1 は、合成画像Gの色空間上の測色値とオリジナル画像の測色値の色差ΔE0 に基づいて適応的に決定される。
【0027】
また、上記画像情報の誤差、すなわち、オリジナル画像に対するm個の主成分ベクトルpk によって再構成される合成画像Gの、画像全体または一部分の画素のスペクトルの自乗誤差E1 であってもよい。合成画像Gの画像データ値も、マルチスペクトル画像の測色値の一例と見做され、合成画像Gの色空間上の測色値である画像データ値とオリジナル画像の測色値であるスペクトルの画像データ値の自乗誤差E1 に基づいて,最適主成分数m1 を適応的に決定してもよい。この場合、この自乗誤差E1 またはLog(E1)は、主成分ベクトル数mに対して単調減少となるため、mを増やすことによって、自乗誤差E1 またはLog(E1)の減少幅が予め定められた所定値より小さくなる時のmの値、すなわちmの増加に対して自乗誤差Eの減少が所定値以下で飽和する時の最小のmの値を求めればよい。
【0028】
画像圧縮部22dは、最適主成分ベクトル・画像抽出部22cで求めた最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )の各々の画像データに対して像構造に基づく像構造圧縮を行う部分である。
最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )は、その画像データが第k主成分ベクトルpk (λ)の係数に基づく明度値で表現された画像データからなる黒白画像である。画像圧縮部22cは、このような画像データに対して、各主成分の主成分画像毎に、像構造圧縮を行う。なお、像構造圧縮方法として、例えば、JPEG(Joint Photographics Expert Group) で用いられるDCT(Discrete Cosine Transformation) 方式が挙げられる。以下では、JPEG方式について説明するが、この方式に制限されれず、例えば、DFT(Discrete Fourier Transformation)方式やFFT(Fast Fourier Transformation) 方式やWT(Wavelet Transformation)方式であってもよい。
【0029】
JPEG方式とは、例えば1024×1024画素の主成分画像Sk を8×8画素のブロック画像に分解し、このブロック画像各々に対して、cosine関数による2 次元の離散型のフーリエ展開であるDCTを施し、得られ低周波成分から高周波成分に至る複数のフーリエ係数をDCT係数として求めたのち、予め与えられた量子化テーブルによって上記DCT係数を除して、高周波成分のフーリエ係数を0として省略することで、高周波成分の画像データを圧縮し、その後DCT係数の0次低周波成分である直流成分とそれ以外の周波数成分に分け、ハフマン符号化方式や公知の算術符号化方式を用いて、DCT係数の画像データを符号化し圧縮する方式である。ここで、上記量子化テーブルの値は、主成分画像Sk の像構造によって変化するものである。
本発明においては、上記DCT係数の高周波成分を量子化テーブルによって除去した画像データを、ハフマン符号化方式や公知の算術符号化方式を用いることなく、圧縮マルチスペクトル画像データとして、画像圧縮部22dから出力させてもよい。また、最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )の画像像データに対して、符号化による圧縮を直接施してもよい。
【0030】
本システム10は、以上のように構成される。
次に、本発明のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法について、本システム10に沿った画像圧縮方法の流れを、図3を参照しつつ説明する。
【0031】
まず、光源12、可変フィルタ14およびCCDカメラ16によって形成されるマルチバンドカメラによって撮影被写体Oを撮影し、複数のバンド帯域、例えば41個のバンド帯域に分割された複数のバンド画像からなるマルチバンド画像MBを取得する(ステップ100)。得られたマルチバンド画像MBは、マルチバンド画像データ記憶装置18に一時記憶されると共に、マルチスペクトル画像取得装置20に送られる。
【0032】
マルチスペクトル画像取得装置20では、例えばマクベスチャートのグレーパッチの画像データとその分光反射率の値との関係から作成された1次元ルックアップテーブル(1次元LUT)が備えられており、この1次元LUTを用いて、マルチバンド画像データ記憶装置18から呼び出された撮影被写体Oのマルチバンド画像MB の画像データを用いて各画素毎の撮影被写体Oの分光反射率を推定しマルチスペクトル画像MS の画像データを取得する(ステップ102)。この撮影被写体Oの分光反射率の推定において、精度の高い分光反射率分布を推定するために、マトリクス演算やフーリエ変換を用いたデコンボリューション処理が付加されてもよい。
【0033】
次に、得られたマルチスペクトル画像MS の画像データを、対数変換して、主成分分析をし、最適主成分数m1 を決定する(ステップ104)。
まず、主成分分析を行う前に、マルチスペクトル画像の画像データを対数変換処理し、すなわち画像データのLog変換を行う(ステップ105)。
【0034】
ここで、対数変換を行うのは以下の理由による。
すなわち、マルチスペクトル画像MS の画像データは、所定のピーク波長を中心とする急峻な山型分布を示す可変フィルタ14の分光透過特性に従って得られる画像データであるので、得られる画像データの値は、実際、上記所定のピーク波長における光源12 の照明光の分光波長の強度分布の値と、撮影被写体Oの分光反射率分布の値と、CCDカメラ16の分光感度特性の値との積によって近似的に表されるが、対数変換を施すことによって、マルチスペクトル画像MS の画像データの対数変換画像データの値は、光源12 の照明光の分光波長の強度分布の値の対数値と、撮影被写体Oの分光反射率分布の値の対数値と、撮影被写体Oの分光反射率分布の値の対数値の和に分解され、後述する式(3)に示されるように、主成分分析において行われる主成分ベクトルの線型和に対応させることができるからである。
【0035】
一方、同一分光反射率を有する撮影被写体Oであっても、光源12の分光強度分布が異なる部分がある場合、対数変換の施されないマルチスペクトル画像MS の画像データでは、分光波長の強度分布の値と、撮影被写体Oの分光反射率分布の値と、CCDカメラ16の分光感度特性の値との積によって表されることから、主成分ベクトルpk (λ)の線型和で表現する主成分分析に対応して表現することはできず、従って、主成分数を大きくして、マルチスペクトル画像MS の画像データを表現しなければならず、本発明の目的である画像圧縮の際の圧縮効率を十分に高めることができない。
【0036】
次に、このようにマルチスペクトル画像データを対数変換して得た対数変換画像データに対して、主成分分析を行い(ステップ106)、主成分画像Sk (k=1〜n)および主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜n)を求める。
以下、主成分分析法について説明する。
【0037】
マルチスペクトル画像Ms は、画素位置(i,j) においてそれぞれn個の分光反射率の値を持つ分光反射率分布を有し、マルチスペクトル画像Ms の画像データを対数変換した対数変換画像データをR(i,j,λ) =( R (i,j ,λ1),R(i,j,λ2),R(i,j ,λ3),・・・,R(i,j ,λn ) )T (小文字T は転置を示す))として、画像全体の画素または画像の一部分、例えば画像全体の画素から一定間隔で画素を間引いた残りの画素における自己相関行列T(Tの(k,l)成分TklはRT ・R/nであり、・は画素位置に関する内積である)を求める。
【0038】
得られた自己相関行列Tはn×nの正方行列であり、この自己相関行列Tを用いて、下記式(2)を満足する固有値uk (u1 >u2 >・・・>un ,k=1〜n)および正規直交化された固有ベクトルである主成分ベクトルpk (λ)=(pk (i,j ,λ1),pk (i,j,λ2),pk (i,j ,λ3),・・・,pk (i,j ,λn ) )T (k=1〜n)を求める。固有値および固有ベクトルを求める方法は、jacobi法やべき乗法等の公知の方法であればよく、特に制限されない。
T・pk (λ)= uk pk (λ) (2)
【0039】
また、画素位置(i,j)における分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ)が下記式(3)のように、固有ベクトルである主成分ベクトルpk(λ)(k=1〜n)で表されるため、
【数1】
下記式(4)に従って、主成分ベクトルpk(λ)(k=1〜n)がお互いに正規直交関係にあることを利用して、sk(i,j)求める。
sk(i,j)=R(i,j,λ)・pk(λ) (4)
ここで、記号・は、n個の成分から成るバンド帯域の分光波長に関するベクトルの内積であり、sk(i,j)は、マルチスペクトル画像の画素位置(i,j)での分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ)に含まれる第k主成分ベクトルpkの大きさを示す量である。また、このsk(i,j)を各画素位置で求め、その値を各々の画素位置での画像データとする第k主成分画像Sk(k=1〜n)を求める。
【0040】
ところで、分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ)における第1〜第nの各主成分の寄与は、上述したように、各主成分に付随した固有値ukの値が小さくなるに連れて小さくなることから、分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ)は、画像情報を最適に保持する限りにおいて、小さな固有値ukを持つ主成分ベクトルpkを省略して近似することができる。
すなわち、下記式(5)に示すように、固有値uk(k=1〜n)を大きい順に並べた際の、上からm番目以内の固有値uk(k=1〜m)に対応する固有ベクトルである主成分ベクトルpk(λ) (k=1〜m)を採用し、それ以外の固有値ukの小さい固有ベクトルである主成分ベクトルpk(λ) (k=m+1〜n)を切り捨てることによって、分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ)を近似し、画像データを圧縮することができる。
【数2】
【0041】
特に、上述した様に、分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ) は、マルチバンド画像の画像データを対数変換して、分光波長の強度分布の対数値と、撮影被写体Oの分光反射率分布の対数値の和で表すことができるので、撮影被写体Oの分光反射率が同一の部分であるが、光源12の照明強度が異なる部分が存在する場合、例えば、撮影被写体Oの同一の材質の表面上に照明光による陰影部分がある場合、撮影被写体Oの同一の材質の分光反射率分布の対数変換された画像データの主成分ベクトルpk (λ)に、照明光の陰影部分による分光強度分布の対数変換されたバイアス量分、加算されたデータとなる。そのため、撮影被写体Oの分光反射率に基づく主成分を、対数変換した状態で、照明光の分光強度分布によるバイアス量と区別して効果的に抽出するこができる。その結果、対数変換せずに主成分分析を行う場合に比べて、最適主成分数m1 を抑えることができ、本発明の目的とする画像の圧縮率を高めることができる。
【0042】
そこで、分光反射率分布の対数変換画像データR(i,j,λ) が、画像情報を損なうことなく、近似的に表されるような主成分ベクトルpk の採用数、すなわち最適主成分数m1 を見いだし、これを用いて、マルチスペクトル画像Ms を圧縮する。これによって、マルチスペクトル画像Ms の画質を劣化させることなく、画像データを圧縮することができる。
ここで、固有値uk の大きい固有ベクトルである主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )を採用し、固有値uk の小さい固有ベクトルpk (λ)(k=m1 +1〜n)を切り捨てるための最適主成分数m1 の設定を以下の判断基準によって行なう(ステップ108)。
【0043】
まず、固有値ukの大きい順に主成分ベクトルpk(λ)を順次式(5)の主成分ベクトルpk(λ)に含め、下記式(6)で示されるマルチスペクトル画像に対応する分光反射率分布の近似対数変換画像データR’(i,j,λ)を求める。
【数3】
近似対数変換画像データR’(i,j,λ) は、対数変換画像データR(i,j,λ)を近似しているため誤差が存在するが、この近似対数変換画像データR’(i,j,λ)を真数変換し、一定の分光強度分布を、照明光の分光強度分布として掛け合わせて得られる合成画像Gの画像情報の、マルチスペクトル画像MSに上記分光強度分布を掛け合わせて得られるオリジナル画像の画像情報に対する誤差も、主成分数mが大きくなるに連れて減少する。そこで、判断基準として、所定値を設定し、近似対数変換画像データR’(i,j,λ)に分光強度分布を掛け合わせて得られる合成画像Gの画像情報の上記オリジナル画像の画像情報に対する誤差が、上記判断基準として定めた所定値より小さくなる最初の主成分数mを求めることによって、最小の最適主成分数m1が取得される。
【0044】
例えば、合成画像Gの画像情報のマルチスペクトル画像MSの画像情報に対する誤差を、CIED65の標準光条件下のCIEL*a*b*色空間における測色値L*、a*およびb*の色差ΔE0として、この色差ΔE0に対する上記所定値を定め、最小の最適主成分数m1を求める。
また、上記誤差は、合成画像Gの画像全体または一部分のスペクトルの自乗誤差E1であってもよく、その際、主成分数mの増加に対して自乗誤差E1の減少量が所定値以内に飽和する時の最小の最適主成分数m1の値を求めてもよい。
【0045】
このようにして、マルチスペクトル画像Ms の画像情報を保持し最適に代表する最小の最適主成分数m1 を求め、これによって、固有値u1 〜um1(u1 〜um1>um1>um1+1>・・・>un )に対応するm1 個の最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )を取得する。ここで、取り除かれる主成分ベクトルpk (λ)(k=m1 +1〜n)は、マルチスペクトル画像Ms に含まれるノイズ成分が支配的な場合が比較的多く、マルチスペクトル画像Ms から寄与の小さな主成分ベクトルpk (λ)(k=m1 +1〜n)を除去することで、マルチスペクトル画像Ms に含まれるノイズ成分の抑制も行うことができる。
【0046】
次に、得られた最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )に対して、画像圧縮部22dで画像圧縮(ステップ110)を行う。画像圧縮は、像構造に基づく対数変換画像データの圧縮(ステップ112)および符号化データの圧縮(ステップ114)から構成される。
像構造に基づく対数変換画像データの圧縮は、例えば、JPEG方式の圧縮が行われ、例えば1024×1024画素の主成分画像Sk を8×8画素のブロック画像に分解し、このブロック画像各々に対して、cosine関数による2 次元の離散型のフーリエ展開であるDCTを施し、得られ低周波成分から高周波成分に至る複数のフーリエ係数をDCT係数として求めたのち、予め与えられた量子化テーブルによって上記DCT係数を除した商を画像データとする。ここで、上記DCT係数を除する量子化テーブルの係数は、高周波成分になるほど、値が大きく、しかも高周波成分のDCT係数は、低周波成分に比べて小さいため、高周波成分のDCT係数を除した商は大部分が0となる。すなわち、最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )の画像データに含まれる高周波成分の画像データの大部分を、像構造に基づいた量子化テーブルによって0とするのである。一般的に画像データに含まれる高周波成分は、低周波成分に対して、画像に対する寄与が小さく、高周波成分を除去しても原画像の画像情報に対する影響は少なく、高周波成分を省略しても構わないからである。また、高周波成分は、撮影被写体Oの画像成分よりもノイズ成分が支配的である場合が多く、高周波成分を除去することで、画像データに含まれるノイズ成分を除去することができる。
【0047】
このように大部分の対数変換画像データの高周波成分のDCT係数を0とすることで、情報エントロピーを低減することができ、後述する符号化データ圧縮( ステップ114)の際において、対数変換画像データを大きく圧縮することが可能となる。
【0048】
次に、高周波成分の大部分が0となったDCT係数で構成される主成分画像Sk (k=1〜m1 )をそれぞれ、符号化し、対数変換画像データを圧縮する(ステップ114)。符号化は、例えばハフマン符号化やその他の算術符号化が行われる。
例えば、ハフマン符号化においては、DCT係数の0次低周波成分である直流成分とそれ以外の周波数成分に分け、例えば、8×8画素のブロック画像を代表した直流成分のみで表示される1/8×1/8の縮尺画像を得、この縮尺画像に対して、隣接する画素値との差分を取ってDPCM符号化により圧縮を行う。
一方、直流成分以外の周波数成分は、高周波成分になるにつれ、DCT係数が0となって行くため、順次低周波から高周波に向けてDCT係数を符号化する際、DCT係数0の連続する個数、すなわちランレングスによって符号化し、対数変換画像データの圧縮率を高めることができる。
【0049】
このようにして、最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )の対数変換画像データを符号化した最適主成分圧縮画像データSdk (k=1〜m1 )を得、ステップ104において求められた最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )とともに、圧縮マルチスペクトル画像データとして、記録メディアドライブ装置24を介して、ハードディスクやMOやCD−RやDVD等の各種記録メディアに保存する(ステップ116)
【0050】
本発明においては、画像データ量の大きなマルチスペクトル画像Ms を対数変換して、対数変換画像データを求め、これを用いて主成分分析し、画像情報を最適に保持する最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )を求めることによって、画像データ量を圧縮し、さらに、JPEG方式等によって、最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )に対応した圧縮画像データSdk (k=1〜m1 )を求めて一層圧縮し,得られた最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および圧縮画像データSdk (k=1〜m1 )を記録保存する。
【0051】
これによって、複数のスペクトル画像が視覚的に劣化することなく画像圧縮の際の圧縮率を高め、画像データの取り扱いが向上する。特に、主成分分析では、主成分ベクトルの線型表示に対応する様に、主成分分析の対象となるマルチスペクトル画像の画像データを対数変換した対数変換画像データを用いて主成分分析を行うので、照明光の分光強度分布と撮影被写体Oの分光反射率分布の寄与を明確に分けることができ、撮影被写体Oの分光反射率が同じであるが照明強度が部分的に異なるマルチバンド画像や、照明強度のみが異なり、撮影被写体Oの分光反射率が同じである領域を大きく占めるようなマルチバンド画像において、画像圧縮の際の圧縮効率を高めることができる。
【0052】
なお、圧縮され記録メディア等に保存された画像データは、必要に応じて呼び出され、符号化データの圧縮および像構造に基づく圧縮の逆変換によって伸張処理が行われて、最適主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m1 )および最適主成分画像Sk (k=1〜m1 )が求められ、この最適主成分ベクトルpk (λ)および最適主成分画像Sk より、近似対数変換画像データR’(i,j,λ) が求められ、最後に真数変換を行ってマルチスペクトル画像が求められる。
【0053】
このようなマルチスペクトル画像の画像圧縮方法および画像圧縮装置において、以下のようなマルチスペクトル画像の圧縮を行った。
CCDカメラ16として、DALSA社製 CA-D4-1024A(画素数1024×1024、ピクセルサイズ12×12ミクロン、PCIインターフェース付き、モノクロ)を用い、可変フィルタ14として、CRI社製Varispec Tunable Filter (液晶チューナブルフィルタ)を用いた。この液晶チューナブルフィルタによって、380〜780nmの撮影波長帯域を、バンド帯域幅を10nmずつに分割し、41バンドとした。人物を撮影被写体Oとし、41画像から成る人物画のマルチバンド画像MB を得た。
【0054】
マルチバンド画像記憶部18、マルチスペクトル画像取得装置20およびマルチスペクトル画像圧縮装置22は、PROSIDE社製ブック型PC(パーソナルコンピュータ)を用いて構成し、Windows(登録商標)95上でC++言語によるソフトウェア処理を行った。なお、PROSIDE社製ブック型PCは、CPUが166MHz であり、RAMは128Mバイトであった。
なお、前処理として、ソフトウェア処理の都合上から、画像データの量子化数を2バイトから1バイトに変換した。この前処理は、以降で述べる画像データ量の圧縮には含まれていないものである。
【0055】
まず、マルチスペクトル画像取得装置20において、マルチバンド画像MB からマルチスペクトル画像MS を抽出し、対数変換を行った後、主成分分析を行い、主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜41)および主成分画像Sk (k=1〜41)を求めた。
【0056】
次に、最適主成分数m1 を求めるために、判断基準として、CIED65の標準光源下のCIED1976L* a* b* 色空間における色度に基づく平均色差を1.5とし、上述した主成分分析法によって固有値uk および固有ベクトルである主成分ベクトルpk を求めた。固有値uk の大きい順に採用したm個の主成分ベクトルpk (λ)(k=1〜m)を真数変換して、再構成される合成画像Gとマルチスペクトル画像Ms から得られるオリジナル画像との上記平均色差を求め、平均色差が1.5以下となる最適主成分数m1 を決定した。
その結果、最適主成分数m1 は5であった。また、対数変換画像データR(i,j,λ) を第1〜第5主成分ベクトルpk (λ)によって近似しても、再構成された合成画像Gは、オリジナル画像の画像情報を依然保持し、しかも視覚的に劣化の少ないことがわかった。すなわち、第1〜5主成分画像Sk (k=1〜5)と第1〜5主成分ベクトルにより、41のバンド帯域からなるマルチスペクトル画像Ms を約1/8に画像データ量を圧縮することができた。
【0057】
さらに、求められた第1〜5主成分画像Sk (k=1〜5)について、上述した像構造に基づく非可逆なDCTによるJPEG方式で画像データの圧縮を行い、最適主成分画像Sk (k=1〜5)の画像データを符号化した。
その結果、最終的に主成分画像Sk (k=1〜5)の画像データは、41Mバイトから0.6Mバイトに、約1/70に圧縮されることがわかった。しかも、画像情報を保持し、視覚的な劣化も見られなかった。
【0058】
このように、本発明の画像圧縮方法およびこれを用いた画像圧縮装置は、複数のスペクトル画像に対して、視覚的な劣化が少なく画像圧縮の際の圧縮率を高め、例えば、1/70程度に高め、画像データの取り扱いを向上するのは明らかである。
【0059】
以上、本発明のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法および画像圧縮装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0060】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、主成分分析法に合わせた形にマルチスペクトル画像データを対数変換して主成分分析を行い、画像データ量を圧縮し、さらに最適主成分画像をJPEG方式等による像構造圧縮を行い、さらに像構造圧縮を行った最適主成分画像の画像データを符号化して圧縮画像データとするので、画像品質を損なうことなく、画像圧縮し、さらに圧縮率を高め、画像データの取り扱いを向上させることができる。
また、マルチスペクトル画像に含まれる主成分ベクトルからノイズ成分が支配的な主成分ベクトルを除去することができ、ノイズ成分の抑制も行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマルチスペクトル画像圧縮装置を含むマルチスペクトル画像取得システムの一例を示す概念図である。
【図2】 本発明に係るマルチスペクトル画像圧縮装置の一例を示すブロック図である。
【図3】 本発明のマルチスペクトル画像圧縮方法における動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 マルチスペクトル画像取得システム
12 光源
14 可変フィルタ
16 CCDカメラ
18 マルチバンド画像データ記憶装置
20 マルチスペクトル画像取得装置
22 マルチスペクトル画像圧縮装置
22a 画像データ変換部
22b 主成分分析部
22c 最適主成分ベクトル・画像抽出部
22d 画像圧縮部
24 記録メディアドライブ装置
Claims (7)
- 被写体を撮影する際に撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割して撮影したバンド画像を用いて得られるマルチスペクトル画像を画像圧縮する方法であって、マルチスペクトル画像の画像データを対数変換して対数変換画像データとし、この対数変換画像データを用いて、主成分分析を行い、マルチスペクトル画像に基づく主成分ベクトルと主成分画像の複数の対を得、
この複数の対の中から、マルチスペクトル画像の画像情報を最適に代表する主成分ベクトルと主成分画像の対の最適主成分数を求めて、最適主成分ベクトルとこれに対応する最適主成分画像を得、
得られた各最適主成分画像に対して、像構造圧縮を行い最適主成分圧縮画像データを得ることによって、前記マルチスペクトル画像の画像データを前記最適主成分ベクトルおよび前記最適主成分圧縮画像データに圧縮することを特徴とするマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。 - 前記最適主成分数は、色空間上の測色値に基づいて決定される請求項1に記載のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。
- 前記最適主成分数は、前記主成分ベクトルと前記主成分画像の中から選ばれて構成される合成画像の測色値の画像情報の、前記マルチスペクトル画像に基づいて構成されるオリジナル画像の測色値の画像情報に対する誤差の値が、所定値以下となる最小の主成分数である請求項1または2に記載のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。
- 前記最適主成分数は、前記マルチスペクトル画像に対する寄与の大きい主成分ベクトルを、寄与の大きい主成分ベクトルの順に、順次含め、これに対応した前記主成分ベクトルと前記主成分画像によって構成される前記合成画像を求めた時の前記オリジナル画像に対する前記誤差の変動が、所定値以下に収まる最小の主成分数である請求項3に記載のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。
- 前記像構造圧縮は、離散フーリエ変換またはウェーブレット変換による画像データの高周波成分の圧縮である請求項1〜4のいずれかに記載のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。
- 前記像構造による圧縮は、画像データの符号化により画像データを圧縮する符号化圧縮処理が付加される請求項5に記載のマルチスペクトル画像の画像圧縮方法。
- 被写体を撮影する際に撮影波長帯域を複数のバンド帯域に分割して撮影したバンド画像を用いて得られるマルチスペクトル画像を画像圧縮するマルチスペクトル画像の画像圧縮装置であって、
マルチスペクトル画像の画像データを対数変換して対数変換画像データを得る画像データ変換部と、
この画像データ変換部で得られた対数変換画像データを用いて、主成分分析を行い、マルチスペクトル画像に基づく主成分ベクトルと主成分画像の複数の対を得る主成分分析部と、
この主成分分析部で得られた主成分ベクトルと主成分画像の複数の対の中から、マルチスペクトル画像の画像情報を最適に代表する主成分ベクトルと主成分画像の対の最適主成分数を求めて、最適主成分ベクトルと最適主成分画像を得る最適主成分ベクトル・画像抽出部と、
この最適成分ベクトル・画像抽出部で得られた各最適主成分画像の画像データに対して、像構造圧縮を行う画像圧縮部とを有することを特徴とするマルチスペクトル画像の画像圧縮装置。
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