JP4097310B2 - 多層回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多層回路基板とその製造方法に関し、特に、フレキシビリティを有するとともに、信号伝播の高速化が可能な多層回路基板とその製造方法に関する。本発明の多層回路基板は、半導体素子あるいはチップコンデンサ/抵抗等の個別部品を搭載可能である。なお、本願明細書において、「フレキシビリティ」とは、柔軟性及び可撓性の両方の性質を総括的に意味するために用いられている。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の高性能化は、心臓とも言うべきLSIなどの半導体素子の高速化や高集積化に負うところが大である。しかしながら、素子の高速性を最大限に生かすために、これらの素子を高密度に実装する回路基板の進歩も見逃せない。回路基板には、微細な導体配線が狭いピッチで高密度に布線されており、さらに導体配線層が何層にも積み重ねられた多層構造となっている。
【0003】
一般に、従来の回路基板は、プリント配線板やセラミック回路基板に見られるように、剛体であり、フレキシビリティをほとんど有しない。しかし、電子機器、とくにパーソナル機器では小型化への要求が強く、限られた空間内に回路基板を収めるために、回路基板にもフレキシビリティが必要になってきている。そして、簡単な配線を形成した回路基板には、例えばフレキシブルプリント板に見られるように、柔軟性、可撓性の条件を満たすものが開発、実用化されている。フレキシブルプリント板は、ポリイミドのような樹脂製フィルムの片面あるいは両面に導体配線を形成したもので、柔軟性に富むことから、屈曲させて、従来の剛体基板(プリント配線板やセラミック回路基板)間の接続に用いるなど、ケーブル的な使い方、あるいはコネクタの代わりとしての使い方をされる例が多い。
【0004】
最近の傾向として、上記したような柔軟性、可撓性を有する回路基板は、適用しようとする電子機器の高性能化や、適用範囲の拡大(例えば、大型コンピュータのような大規模システムなどへの適用)にともない、多層化の要求が強くなってきている。しかしながら、本来柔軟なシートを複数枚位置決めしながら積層し、さらに相互に接続することは極めて困難であり、これを解決する手法が強く望まれている。
【0005】
さらに、高速化の観点からすると、積層時に上下に相隣れる2枚のシートの一方に信号線を形成し、相対する面にグランド層を形成し、これらの間に空気を介在させる構造とすることによって、次のような利点が出てくる。すなわち、信号線を伝播するパルス信号の速度はこれを囲む媒体の誘電率が低いほど速くなることから、最も誘電率が低い空気をシート間に介在させることによって、パルス信号の伝播速度を速くすることが可能となる。このような構成の回路基板に対する要求はますます増大しているが、かかる要求を十分に満足させ得るような回路基板は、未だ提案も実用化もされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、したがって、フレキシビリティを有するとともに、信号伝播の高速化が可能な多層回路基板を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、本発明による多層回路基板を簡単な手法でかつ歩留りよく製造することが可能な多層回路基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、回路パターン及び接続用電極端子を有するフレキシブルな樹脂シートの複数枚を積層しかつ相互に電気的接続を行った多層回路基板であって、
上下に相隣れる樹脂シートの中間に、それらの樹脂シートの積層時に樹脂シートの仮接着、形状保持等のために一時的に介在せしめられた溶剤可溶性充填材料の除去に由来する空気層が含まれていることを特徴とする多層回路基板にある。
【0008】
また、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による多層回路基板を製造する方法であって、下記の工程:
フレキシブルな樹脂シートの複数枚を用意し、
それぞれの樹脂シートの所定の部位に、前記多層回路基板を完成するのに必要な回路パターン及び接続用電極端子を形成し、
前記樹脂シートの少なくとも一方の表面に、樹脂シートの仮接着、形状保持等のための溶剤可溶性充填材料を前記空気層の厚みに対応する厚さで全面に適用し、
前記樹脂シートを所定の順序で積層しかつ相互に電気的に接続し、そして
得られた樹脂シートの積層体から前記溶剤可溶性充填材料を溶解除去すること、
を含んでなることを特徴とする多層回路基板の製造方法にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による多層回路基板は、基本的に、従来常用されている多層回路基板と同様に構成することができ、したがって、回路パターン及び接続用電極端子を有する樹脂シートの複数枚を積層し、相互に電気的接続を行うことによって製造することができる。
【0010】
しかし、本発明の多層回路基板において用いられる樹脂シートは、従来のプリント配線板やセラミック回路基板において用いられている材料とは異なって、フレキシブルな樹脂シートでなければならない。適当な樹脂シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどを挙げることができる。これらの樹脂シートでは、フレキシビリティ、すなわち、柔軟性/可撓性が重要であり、そのフレキシビリティの程度は使用するシート樹脂、回路基板の構成、使途などのファクタによって大きく変動し、しかし、回路基板の製造時あるいは使用時に屈曲させた状態においても破損やヒビ割れを生じない程度にフレキシブルであれば十分である。
【0011】
それぞれの樹脂シートは、その積層枚数や回路基板の使途などに応じていろいろな厚さで使用することができるというものの、通常約20〜500μm、好ましくは約50〜200μmである。なお、1つの積層回路基板において、必要に応じて、厚みを異にする樹脂シートを組み合わせて使用してもよい。
フレキシブルな樹脂シートに対する回路パターン、接続用電極端子等の付与は、多層回路基板の製造において一般的に用いられている技法を使用して行うことができ、また、したがって、回路パターン、接続用電極端子等は、所望とする任意の配置とすることができる。例えば、高速化のため、積層時に相隣れる2枚の樹脂シートの一方に信号線を形成し、相対する面にグランド層を形成することが好ましい。なお、このようなプロセスについては、以下、多層回路基板の製造のところで詳細に説明する。
【0012】
それぞれの樹脂シートに対して回路パターン等の付与及び必要な加工等を行った後、所望枚数の樹脂シートを必要な順序で積層し、相互に電気的に接続する。ここでは、最終的に得られる多層回路基板において、上下に相隣れる樹脂シートの中間に、それらの樹脂シートの積層時に樹脂シートの仮接着、形状保持等のために一時的に介在せしめられた溶剤可溶性充填材料の除去に由来する空気層が含まれているように積層及び接続を行うことが重要である。樹脂シートの仮接着、形状保持等のために使用する溶剤可溶性充填材料は、すでに作り込まれている回路パターン、電極端子等に悪影響を及ぼすことなく所望の機能を奏する限りにおいて特に限定されないというものの、取り扱いの容易さなどの面から、好ましくは低軟化点のワックス、例えばポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、高級脂肪酸エステル樹脂などである。なお、かかる溶剤可溶性充填材料とその使用及びその除去による空気層の形成は、以下において詳細に説明する。
【0013】
本発明の多層回路基板において、上下に相隣れる樹脂シートの中間に介在せしめられるべき空気層は、それらのシートの中間に充填しておいた充填材料を適当な溶剤によって溶解除去することによって形成された空隙に相当するものである。空気層の厚さは、所望とする効果などに応じて広く変更できるというものの、所期の目的である高速化及び樹脂シートの仮接着等のため、一般に約50〜100μmであり、好ましくは70〜90μmである。また、空気層形成のために積層される樹脂シートの枚数は、特に限定されないというものの、一般に2〜8枚、好ましくは2〜4枚である。
【0014】
以上に本発明の多層回路基板の構成を具体的に説明したけれども、これは、引き続く多層回路基板の製造についての説明からより明らかとなるであろう。
本発明によれば、フレキシブルな樹脂シートの所定の部位に、回路パターン、接続用電極端子を通常の方法によって形成した後に、溶剤可溶性充填材料をシートの全面に塗布しておき、これらを半田付け、導電性接着剤などの常用の接続手段によって互いに電気的に接続し、次に先に塗布しておいた充填材料を除去することによって、フレキシビリティを有するとともに、各層(シート)間に空気を介在させる構造を有する多層回路基板を製造できる。
【0015】
以下、本発明による多層回路基板の製造方法を順を追って説明する。なお、以下の説明では、溶剤可溶性充填材料として、その典型例である低軟化点のワックスを使用することにする。
(1)フレキシブルな樹脂シート及び回路パターン等の形成
フレキシブルな樹脂シート、すなわち、ベース材料としてポリエステル、ポリイミド等のフィルムを用い、このフィルムの所定の場所に孔をあけ、無電解めっき、真空蒸着、スパッタ法などによって金属薄膜層を形成する。金属薄膜層を電極層としてさらに電解めっきを施し、所定の厚さの膜とする。なお、別法として、上述の無電解めっき、真空蒸着、スパッタ法などのみによって所定の厚さの膜とすることもできる。
【0016】
このようにして膜を形成する過程で、孔埋めも行う。ここで、孔の内側をすべてを埋めるのか、孔の内表面に電気的導通が確実にとれる程度の厚さの膜にするかなどは、任意である。孔の内表面に所定の厚さの膜を形成し、残りの部分に樹脂、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを充填する方法も、用いることができる。
【0017】
次いで、従来から一般的なフォトリソグラフィ法を用いて、所望の回路パターン及びフィルムどうしを接続するためのパターンを形成する。
ここで、上記のパターン形成作業は、通常フィルムの両面について行い、したがってフィルムの表裏両面に回路パターンを形成する。ただし、必要のないときは、この作業を省略してもよい。
【0018】
さらに、上述のフィルムどうしを接続するためのパターンの形成は、本発明方法の特徴でもある。すなわち、通常は、回路パターンの中にフィルムどうしを接続するための部分も含まれる。しかし、回路パターンには、通常粗密があるので、粗な領域には、各フィルムを接続するためにのみ用いるパターン(ダミー端子)を設けておく。これは、接続後の全体の機械的強度を高めるとともに、接続された各フィルム間の間隔を一定に保つうえで有効である。
(2)各フィルムの積層及び電気的接続
回路パターン等の形成を終えたフィルムは、その所定枚数を所定の順序で積層し、電気的に接続する。この電気的接続には、例えば、半田付け、導体(導電性)ペースト、接着剤などの使用の手法が適用できる。
【0019】
例えば、半田付け法においても種々の方法が適用可能であり、予め所定の場所に半田バンプ(固体状態)を形成しておき、リフローによって接続する方法や、半田ペーストを所定の場所に塗布しておき〔ペースト(糊)状態〕、リフローによって接続する方法などがある。ここで、半田バンプ(固体状態)の形成法としては、これまで実用されている種々の方法、例えば、真空蒸着法、転写法などを用いればよい。また、半田ペーストを用いる場合にも、スクリーン印刷法やディスペンサ法など、適切に選ぶことができる。さらに、フィルムのサイズが小さく、接続点の数が少ないときには、半田ボールを置いておく方法も用いることができる。
【0020】
半田材料としては、下記の実施例では、一般に用いられているSn−37wt%Pb組成の半田を例にとりあげたが、利用可能な温度範囲によって、この半田よりも低融点のSn−Bi系やSn−In系の半田、Sn−37wt%Pb半田よりも高融点のPb−5wt%Sn組成の半田やSn−Ag系半田など、現在工業的に利用可能なすべての半田が使用できる。
【0021】
次に、例えば真空蒸着法、転写法などによって半田バンプ〔例えば、Sn−37wt%Pb組成、融点(共晶点):183℃〕を形成したフィルム上に、低軟化点のポリエチレン(例えば、三井化学工業社製の「三井ハイワックス110P」、軟化点:113℃)の粉末の所定量を撒き散らし、ホットプレート上で130℃に加熱し、ポリエチレンを融解させ、フィルム上を流動させてポリエチレンの膜を形成する。その後、ポリエチレンの膜を室温まで冷却する。このとき、半田バンプは、ポリエチレンの膜から突き出ていても、膜中に隠されていてもよい。なぜならば、フィルムを接続するときに、半田が溶ける温度にまで加熱されるが、このときポリエチレンも流動状態となり、半田(ポリエチレンが流動状態になったときには、まだ固体状態)によって脇に排除され、半田付けを阻害することはないからである。ポリエチレン膜の厚さは、撒き散らすポリエチレン粉末の量によって制御できるので、最初に一度、所定の量をあらかじめ測定しておけば、以後その条件で作業すればよいことになる。
【0022】
ここで、低軟化点ポリエチレンの代わりに、ポリエステル樹脂、例えば、ポリカプロラクトン(ダイセル化学社製の「PLACCEL HIP」、融点:60℃)など、高級脂肪酸エステル樹脂なども、融点が適切であれば、同様に使用できる。
ポリエチレンの膜を形成した後のフィルムは、可撓性がなくなり、通常のハンドリングでは変形を生じなくなる。
(3)半田ペーストのスクリーン印刷
上記したように半田バンプを使用して電気的接続を形成することに代えて、半田ペーストをスクリーン印刷して利用することも可能である。以下に、この場合について説明する。
【0023】
先ず、フィルム上のパターン回路接続用電極の位置に合わせて、半田ペースト印刷用のスクリーンを置き、市販の半田ペースト〔半田組成は、例えば、Sn−37wt%Pb、融点(共晶点):183℃〕を用いて、電極上に半田ペーストの“山”あるいは“こぶ”状のバンプを形成する。これを室温で乾燥後、およそ150℃の温度でさらに乾燥し、ペーストの溶剤成分を飛散させるとともに、ペーストを固化させる。
【0024】
次に、このフィルムの上に低軟化点のポリエチレン(例えば、「三井ハイワックス110P」、軟化点:113℃)の粉末の所定量を撒き散らし、ホットプレート上で130℃に加熱し、ポリエチレンを融解させ、フィルム上を流動させてポリエチレンの膜を形成する。その後、室温まで冷却する。
このとき、半田のバンプは、ポリエチレンの膜から突き出る状態にする。これは、半田ペーストでは、半田が溶解する温度まで加熱したときにフラックスなどの樹脂成分が分解、飛散するので、体積は、溶解前の約半分程度にまで減少するからである。すなわち、この結果として実質的な半田量が不足して、各フィルムどうしを接続するときに、接続不良のおそれが大きくなるからである。
【0025】
なお、半田ペーストをスクリーン印刷後にリフローによって半田を溶解し、バンプにしたときには、前項の説明と同じ状況となる。
(4)導電性接着剤の利用
各フィルムの電気的接続のため、次のように導電性接着剤も利用することができる。
【0026】
先ず、フィルム上のパターン回路接続用電極の位置に合わせて、導電性接着剤を塗布するためのステンレススクリーン(電極部のみが開口している)を置き、市販のエポキシ系導電性接着剤を用いて、電極上に導電性接着剤の“山”あるいは“こぶ”状のバンプを形成する。これを室温で乾燥後、およそ150℃の温度でさらに乾燥し、導電性接着剤の溶剤成分を飛散させるとともに、導電性接着剤を固化させる。
【0027】
次に、このフィルムの上に低軟化点のポリエチレン(例えば、「三井ハイワックス110P」、軟化点:113℃)の粉末の所定量を撒き散らし、ホットプレート上で130℃に加熱し、ポリエチレンを融解させ、フィルム上を流動させてポリエチレンの膜を形成する。その後、室温まで冷却する。
このとき、導電性接着剤のバンプは、半田ペーストを用いるときと同様に、ポリエチレンの膜から突き出る状態にする。これは、導電性接着剤では、半田が溶解する温度まで加熱したときに乾燥処理後に残っていた樹脂成分が分解、飛散するので、体積が減少するからである。すなわち、この結果として、各フィルムどうしを接続するときに、実質的な接着剤量が不足して、接続不良のおそれが大きくなるからである。
【0028】
また、低軟化点ポリエチレンの膜などを形成するときに、膜形成材料が他の形態、例えば液状のときには、フィルムをこの液に浸漬した後、引き上げて、膜を形成することもできる。
さらに、低軟化点ポリエチレンなどが粉末あるいは固体状態であっても、これらの材料を適切な温度で融解させれば、上記と同様に、フィルムをこの融液に浸漬した後引き上げて、膜を形成することもできる。
【0029】
以上に説明したように、本発明の実施においては、半田材料やポリエチレン等の膜形成材料は、それぞれの特性温度(融点及び軟化点)の他に、ベース材料として用いるフィルム材料の耐熱性も考慮して、適切に選択すればよく、上記の説明に挙げた材料に限定されることはない。
(5)各フィルムの接続及び多層回路基板の完成
上記のようにして電気的接続のための必要な処理を完了した後、それぞれのフィルムの接続用電極端子どうし、あるいはダミー端子どうしの位置を合わせる。その際、もともとのフィルムだけであれば、柔軟性に富んでいることから、容易に変形してしまうので、位置合わせの作業は非常に困難で、実質的に不可能なほどであるが、本発明方法によれば、前述のように、例えば低軟化点ポリエチレン膜の存在によって、フィルムは実質的に変形しないので、位置合わせの作業は、従来のプリント配線板の作製工程であるプリプレグの積層工程と、ほぼ同様に行うことが可能である。また、上記のパターン配線の形成の説明において説明しなかったが、フィルムの両面に信号線とグランド/電源層とが相対するような関係で形成するのが好ましく、例えば、表面に信号線を形成したならば、裏面にはグランド/電源層を形成するというようにする。そして、各フィルムを積み重ねるときには、フィルムの両面に信号線とグランド/電源層とが相対するような関係とする。
【0030】
ポリエチレン膜を有するフィルムの所定枚数を積み重ねた後、例えばSn−37wt%Pb半田を用いたときには、ピーク温度を230℃程度に設定し、加熱する。このとき、必要ならば、荷重を加えておく。なぜならば、ポリエチレン膜が軟化するまでは変形が生じないからである。また、電極端子に形成しておいた半田バンプ間にポリエチレンワックスが残っていても、前述のように、半田が溶融して相互に一体化するときに、半田の外へ排除されるので、半田付けが阻害されることはない。さらに、ポリエチレンワックスの別の作用として、半田リフロー時にポリエチレンワックスが大気を遮断する効果もあることから、半田付けが確実に行われるという効果もある。これは、リフロー条件を大気中で行った場合のことであり、窒素雰囲気中でのリフローでは、当然のことであるが、あらわには認められない。
【0031】
半田付けの終了後に、有機溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどで加温洗浄することによって、ポリエチレンワックスを除去する。次いで、エチルアルコールで洗浄する。
このようにして、フレキシビリティを有するとともに、信号線とグランド/電源層とが空気を介して相対するような構成の多層回路基板が得られる。
【0032】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことを、理解されたい。例えは、図示の例では規則的なパターンで積層が行われているけれども、必要に応じて互い違いのパターンで積層することも可能である。
例1
図1及び図2に順を追って示すプロセスで多層回路基板を製造した。
フレキシブルプリント板の用意
図1(1A)に示すように、ベース材としてのポリイミドフィルム1の上に、信号線2、接続用電極端子3及びグランド/電源層4が形成されている市販のフレキシブルプリント板を用意した。ここで、接続用電極端子の径は200μm、ピッチは400μmであった。
半田バンプの形成
図1(1B)に示すように、用意したフレキシブルプリント板の接続用電極端子3の上に半田バンプ5を形成した。ここで、半田材料は、リフロー時にポリイミドに熱的影響を与えるものでなければとくに限定するものではないので、通常のSn−37wt%Pb共晶半田を用いた。最初に、金属導体パターンのないシリコン(Si)基板に、接続用電極端子に相対するような寸法条件(径、ピッチなど)で、真空蒸着法によって、Sn−37wt%Pb共晶半田のバンプ(高さ:150μm)を形成した。次に、Siウエハ上の半田バンプとフレキシブルプリント板の接続用電極端子とを位置合わせし、ピーク温度が230℃程度に加熱した。Siウエハには金属導体パターンがないことから、この加熱によって溶融した半田は、フレキシブルプリント板の接続用電極端子上に移行し、接続用電極端子に半田バンプが形成されることになった。ここで、半田のリフロー条件(温度、時間、雰囲気など)は、これまでの半田付け条件と同じでよく、とくに規定されるものではない。なお、リフロー後の半田バンプの高さはおよそ90−100μmであった。
ポリエチレンワックスの適用
接続用電極端子の上に半田バンプを形成した後、図1(1C)に示すように、フレキシブルプリント板の上に、軟化点が80℃程度のポリエチレンワックス(ろう材)の粉末6を均一に撒き散らした。次いで、ポリエチレンワックスの粉末を撒き散らしたままのフレキシブルプリント板をおよそ100℃に加熱したホットプレート上あるいは恒温槽中に置き、ポリエチレンワックスを融解させ、フレキシブルプリント板上に均一な膜を作った〔図1(1D)を参照されたい〕。この場合、融解した後に固まったポリエチレンワックス膜の厚さは、およそ80μmであった。本例では、撒き散らすポリエチレンワックス粉末の量をあらかじめ測定しておいた。この手法によって、フレキシブルプリント板に可撓性がなくなり、通常のハンドリングでは変形を生じなかった。
フレキシブルプリント板の位置合わせ
フレキシブルプリント板の両面にポリエチレンワックス膜を形成した後、図2(1E)に示すように、それぞれのフレキシブルプリント板の接続用電極端子どうしを位置合わせした。この際、もともとのフレキシブルプリント板であれば、柔軟性に富んでいることから、容易に変形してしまうので、位置合わせの作業は非常に困難で、実質的に不可能なほどであったが、本例では、ポリエチレンワックス膜を存在させたので、フレキシブルプリント板は実質的に変形しなかった。実際、位置合わせの作業は、従来のプリント配線板の作製工程であるプリプレグの積層工程とほぼ同様に行うことが可能であった。また、フレキシブルプリント板を積み重ねるに当っては、図示のように信号線とグランド/電源層とが相対するような関係にした。積層体9が得られた。
電気的接続の形成(半田付け)
ポリエチレンワックス膜を有するフレキシブルプリント板の所定枚数を積み重ねて積層体9を形成した後、ピーク温度が230℃程度になるように加熱した。本例では行なわなかったが、このとき、必要ならば、荷重を加えておくこともできる。なぜならば、ポリエチレンワックス膜が軟化、融解するまでは変形が生じないからである。また、電極端子に形成しておいた半田バンプ間にポリエチレンワックスが残っていても、半田が溶融し相互に一体化するときに、半田の外へ排除されるので、半田付けが阻害されることはなかった。さらに、ポリエチレンワックスの別の作用として、半田リフロー時にポリエチレンワックスが大気を遮断する効果もあることから、半田付けが確実に行われるという効果もあった。これは、リフロー条件を大気中で行った場合のことであり、窒素雰囲気中リフローでは、当然のことであるが、あらわには認められない。図2(1F)に示すように、半田バンプ5が一体化せしめられ、電気的接続が形成された。
空気層の形成
半田付けの完了後、ポリエチレンワックスを溶解除去するため、積層体を有機溶剤で加温洗浄した。なお、本例では有機溶剤としてアセトンを使用したけれども、メチルエチルケトン、その他を使用してもよい。引き続いてエチルアルコールで洗浄したところ、図2(1G)に示すように、フレキシブルプリント板間に空気層8(ポリエチレンワックスの除去によって形成された空隙に相当)を有する多層回路基板10が得られた。この多層回路基板10は、柔軟性及び可撓性にすぐれるとともに、信号線2とグランド/電源層4とが空気層8を介して相対するような構成を有していた。
例2
図3及び図4に順を追って示すプロセスで多層回路基板を製造した。
フレキシブルプリント板の用意
図3(2A)に示すように、ベース材としてのポリイミドフィルム1の上に、信号線2、接続用電極端子3及びグランド/電源層4が形成されている市販のフレキシブルプリント板を用意した。ここで、接続用電極端子の径は200μm、ピッチは400μmであった。
導電性接着剤のバンプの形成
図3(2B)に示すように、用意したフレキシブルプリント板の接続用電極端子3の上に、通常のスクリーン印刷法を用いて、導電性接着剤のバンプ15を形成した。バンプ15の形状は、先が尖った円錐形とした。ここで、導電性接着剤としては、銀粒子とエポキシ樹脂とを混練して得られるのり(糊)状のペースト様の材料を使用した。この導電性接着剤のバンプ15を窒素雰囲気中で100℃に加熱し、導電性接着剤を仮硬化させた。大気中の加熱でも、悪影響は認められなかった。
ポリエチレンワックスの適用
接続用電極端子の上に導電性接着剤のバンプを形成した後、図3(2C)に示すように、フレキシブルプリント板の上に、軟化点が80℃程度のポリエチレンワックス(ろう材)の粉末6を均一に撒き散らした。次いで、ポリエチレンワックスの粉末を撒き散らしたままのフレキシブルプリント板をおよそ100℃に加熱したホットプレート上あるいは恒温槽中に置き、ポリエチレンワックスを融解させ、フレキシブルプリント板上に均一な膜を作った〔図3(2D)を参照されたい〕。この場合、融解した後に固まったポリエチレンワックス膜の厚さは、およそ80μmであった。本例では、撒き散らすポリエチレンワックス粉末の量をあらかじめ測定しておいた。この手法によって、フレキシブルプリント板に可撓性がなくなり、通常のハンドリングでは変形を生じなかった。
フレキシブルプリント板の位置合わせ
フレキシブルプリント板の両面にポリエチレンワックス膜を形成した後、図3(2E)に示すように、それぞれのフレキシブルプリント板の接続用電極端子どうしを位置合わせした。この際、もともとのフレキシブルプリント板であれば、柔軟性に富んでいることから、容易に変形してしまうので、位置合わせの作業は非常に困難で、実質的に不可能なほどであったが、本例では、ポリエチレンワックス膜を存在させたので、フレキシブルプリント板は実質的に変形しなかった。実際、位置合わせの作業は、従来のプリント配線板の作製工程であるプリプレグの積層工程とほぼ同様に行うことが可能であった。また、フレキシブルプリント板を積み重ねるに当っては、図示のように信号線とグランド/電源層とが相対するような関係にした。積層体9が得られた。
電気的接続の形成(導電性接着剤の硬化)
ポリエチレンワックス膜を有するフレキシブルプリント板の所定枚数を積み重ねて積層体9を形成した後、ピーク温度が230℃程度になるように加熱した。このとき、荷重を加えておき、ポリエチレンワックス層が軟化したときに、導電性接着剤のバンプの先端どうしが互いに相手側にもぐり込むようにした。この状態で、窒素雰囲気中にて150℃に加熱し、導電性接着剤を硬化させた。本例の場合、大気中加熱でも悪影響は認められなかった。また、電極端子に形成しておいた導電性接着剤のバンプ間にポリエチレンワックスが残っていても、ポリエチレンワックスが軟化し流動し始めると、導電性接着剤のバンプの外へ排除されるので、導電性接着剤のバンプどうしの接触が阻害されることもなかった。さらに、ポリエチレンワックスの別の作用として、加熱時にポリエチレンワックスが大気を遮断する作用もあることから、導電性接着剤のバンプどうしの接合(噛み合わせ)が確実に行われるという効果もあった。これらの効果は、加熱を大気中で行った場合のことであり、窒素雰囲気中での加熱では、当然のことであるが、あらわには認められない。図4(2F)に示すように、導電性接着剤15が一体化せしめられ、電気的接続が形成された。
空気層の形成
導電性接着剤の硬化及び接合の完了後、ポリエチレンワックスを溶解除去するため、積層体を有機溶剤で加温洗浄した。なお、本例では有機溶剤としてアセトンを使用したけれども、メチルエチルケトン、その他を使用してもよい。引き続いてエチルアルコールで洗浄したところ、図4(2G)に示すように、フレキシブルプリント板間に空気層8(ポリエチレンワックスの除去によって形成された空隙に相当)を有する多層回路基板10が得られた。なお、洗浄時、硬化した導電性接着剤が溶解するようなことはなかった。この多層回路基板10は、柔軟性及び可撓性にすぐれるとともに、信号線2とグランド/電源層4とが空気層8を介して相対するような構成を有していた。
【0033】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によると、柔軟性及び可撓性にすぐれた多層回路基板を提供することができ、また、したがって、電子機器の小型化、高性能化に大きく寄与することができる。
さらに、本発明の多層回路基板では、それを構成するシート間に空気層を介在させたので、パルス信号の伝播速度をより高速化することができる。
【0034】
さらにまた、本発明では、上記のようなすぐれた多層回路基板を、容易な位置決め作業により、高い信頼性をともなって簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多層回路基板の製造方法の好ましい一例(プロセスの前半)を順を追って示す断面図である。
【図2】本発明による多層回路基板の製造方法の好ましい一例(プロセスの後半)を順を追って示す断面図である。
【図3】本発明による多層回路基板の製造方法のもう1つの好ましい例(プロセスの前半)を順を追って示す断面図である。
【図4】本発明による多層回路基板の製造方法のもう1つの好ましい例(プロセスの後半)を順を追って示す断面図である。
【符号の説明】
1…ポリイミドフィルム(ベース材)
2…信号線
3…接続用電極端子
4…グランド/電源層
5…半田バンプ
6…ポリエチレンワックスの粉末
8…空気層
9…積層体
10…多層回路基板
Claims (3)
- 回路パターン及び接続用電極端子を有するフレキシブルな樹脂シートの複数枚を積層しかつ相互に電気的接続を行った多層回路基板であって、上下に相隣れる樹脂シートの中間に空気層が含まれている多層回路基板を製造する方法であって、下記の工程:
フレキシブルな樹脂シートの複数枚を用意し、
それぞれの樹脂シートの所定の部位に、前記多層回路基板を完成するのに必要な回路パターン及び接続用電極端子を形成し、
前記樹脂シートの少なくとも一方の表面に、樹脂シートの仮接着、形状保持等のための溶剤可溶性充填材料を前記空気層の厚みに対応する厚さで全面に適用し、
前記樹脂シートを所定の順序で積層しかつ相互に電気的に接続し、そして
得られた樹脂シートの積層体から前記溶剤可溶性充填材料を溶解除去して前記空気層を形成すること、
を含んでなることを特徴とする多層回路基板の製造方法。 - 前記溶剤可溶性充填材料が低軟化点のワックスであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記電極端子の電気的接続を半田付け及び(又は)導電性接着剤の適用により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
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