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JP4079659B2 - 低アウトガス性感圧接着剤組成物及び感圧接着剤シート - Google Patents

低アウトガス性感圧接着剤組成物及び感圧接着剤シート Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低アウトガス性を有するアクリル系感圧接着剤組成物及び感圧接着剤シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子材料関連の感圧接着剤テープは、各種タイプのものが用いられているが、感圧接着剤層としてアクリル系感圧接着剤を用いたものが各種電子部品の接着やシールに多く使用されている。しかし、この種の感圧接着剤テープをコンピュータのハードディスク部分などの電子機器に使用すると、感圧接着剤から発生する揮発性有機物、いわゆるアウトガスにより動作上の問題が生じる。このため、感圧接着剤からのアウトガスの量を減らす検討が行われている。
【0003】
アクリル系感圧接着剤は、一般に、80℃以上の高温にさらされたときに、アウトガスを発生する。ハードディスクを起動してから1時間程度の初期時間に80℃以上の高温にさらされたときに接着剤から発生するアウトガス、すなわち、初期アウトガスの発生原因としては、感圧接着剤中に含まれる感圧接着性ポリマー製造時に用いる重合開始剤、残存モノマー及び残存溶剤、或いは、粘着付与剤などの添加剤といった揮発性成分が挙げられる。このようなアウトガスの発生を抑制することができる感圧接着剤は既に開発されている。
【0004】
初期アウトガスの発生量が低いことに基づく低アウトガス性をうたった特許文献は数多く存在する。例えば、特開平11−209705号公報は、支持体の片面又は両面に粘着剤層を有し、100℃、1時間の加熱時における発生ガスの量が1μg以下で、室温における一定の接着力を有する粘着シートを請求している。具体的には、アクリル系ポリマーの代わりに脂肪族ポリエステルをベースとする感圧接着剤を粘着剤層として用いている。また、特開平11−199832号公報は、アクリル酸アルキルエステルと、それと共重合可能なエチレン系不飽和モノマー(例えば、アクリル酸)との共重合体を主成分とする感圧接着性シートを開示している。
【0005】
特開2000−186265号公報、特開2001−49210号公報及び特開2001−181594号公報は、脂肪族系ポリカーボネートジオールを必須のポリオール成分としたポリエステル共重合体を50重量%以上の量の主成分として含み、アクリル系重合体を50重量%以下の量の補助的な成分として含む粘着剤組成物を開示している。このような粘着剤組成物は電子機器内部で使用可能なものとして記載されており、電子機器の腐食や誤動作を回避するために、アクリル系重合体は酸成分を実質的に含有しないことが記載されている。
【0006】
以上の従来の粘着剤組成物又はそれを用いた粘着シートは、初期アウトガスの抑制を目的としたものである。しかし、現在は、コンピュータの連続使用時間が延びてきており、ハードディスクなどの電子機器及びそれを構成する電子部品を長時間にわたって使用したときにもアウトガス発生の問題が生じない感圧接着剤の開発が求められている。通常、ハードディスクを2、3時間を超える長時間にわたって稼動すると、初期アウトガスの発生が抑制された感圧接着剤であっても、アウトガス量が増加してしまうという問題が残っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、初期アウトガス発生を抑制するとともに、長時間の加熱時のアウトガス発生をも抑制することができる感圧接着剤組成物及びそれから得られる感圧接着剤シートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの態様によると、モノマー混合物の総量を基準として、
CH2=CHCOOR1(式中、R1は炭素数2〜7のアルキル基である)、50〜98質量%、
架橋形成可能な基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、0.2〜7質量%、及び、
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、酢酸ビニル及びアクリルアミドからなる群より選ばれる、改質性モノマー、1〜15質量%、
を含むモノマー混合物を共重合させ、架橋構造を形成させたアクリル系感圧接着性ポリマーを含み、酸性基を有する化合物を含まない、アクリル系感圧接着剤組成物が提供される。
なお、本明細書中に使用される用語「(メタ)アクリル酸」又は「(メタ)アクリレート」とは、アクリル酸もしくはメタクリル酸又はアクリレートもしくはメタクリレートを意味する。
【0009】
上記の感圧接着剤組成物は、初期アウトガス発生を抑制するとともに、以下の理由により、長時間の加熱時のアウトガス発生をも抑制することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
今回の研究により、感圧接着剤組成物の長時間にわたる加熱によるアウトガスの発生原因は、主に、感圧接着性ポリマーを構成する構造単位、例えば、アクリル酸エステル単位の熱分解による揮発成分であることが確認された。このような揮発成分は、例えば、アクリル酸などの酸基の存在下におけるエステルの加水分解により生じ、また、このような加水分解はモノマーを構成するアクリル酸エステルの炭素数が大きい場合に顕著であることを発見した。かかる知見に基づき、初期アウトガスの発生及び長時間の加熱によるアウトガスの発生を抑制するとともに、感圧接着剤としての性能を十分に確保するような組成物を開発して、本発明を完成した。
【0011】
以下において、本発明のアクリル系感圧接着剤組成物について詳細に説明する。
本発明の感圧接着剤組成物に含まれる感圧接着性ポリマーは、モノマー混合物の総量を基準として、CH2=CHCOOR1(式中、R1は炭素数2〜7のアルキル基である)、50〜98質量%、架橋形成可能な基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、0.2〜7質量%、及び、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、酢酸ビニル及びアクリルアミドからなる群より選ばれる改質性モノマー、1〜15質量%、を含むモノマー混合物を共重合させ、架橋構造を形成させたものである。
【0012】
モノマー成分としてのアクリル酸エステルモノマー(CH2=CHCOOR1)は、炭素数2〜7のアルキル基を有し、好ましくはブチル基(炭素数4)を有する。炭素数が7を超えると、粘着剤の長時間の加熱時には、この構造単位が加水分解を起こし、アウトガスを生じる。また、炭素数の大きいアルキル基を有するモノマーが重合時に未反応のまま残存したときには、粘着剤塗工時の乾燥工程において未反応のこのようなモノマーを粘着剤から蒸発除去することができず、初期アウトガスの発生原因になる。さらに、炭素数が大きすぎると、ポリマーのガラス転移点が高くなりすぎて、接着剤組成物に十分なタックを付与することができない。炭素数が2を下回る場合、すなわち、アクリル酸メチルである場合には、ポリマーのガラス転移温度が高くなり、この側鎖アルキル(メチル)基が主鎖の分子間力を弱めて内部可塑化を行なう効果が薄くなる。したがって、接着剤組成物に十分なタックを付与することができない。
また、上記のアクリル酸エステルモノマーは、モノマーの総量を基準として、50〜98質量%の量で含まれる。50質量%を下回ると、接着剤組成物に十分なタックを付与することができず、また、98質量%を超えると、接着剤組成物に十分なピール接着力などの接着性能を付与することができない。アクリル酸エステルモノマーは好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%の量で含まれる。アクリル酸エステルモノマーとしては、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレートが挙げられる。
【0013】
アクリル系感圧接着性ポリマーを構成するモノマーとして、架橋形成可能な基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが特定の量で含まれる。架橋形成可能な基とは、アクリル系感圧接着性ポリマーに架橋構造を形成することができる基を意味する。架橋構造は感圧接着性ポリマーの凝集力を上げることができる。架橋形成可能な基としては、多官能イソシアネート、エポキシ、アジリジン化合物などの架橋剤との反応性を有する官能基であって、例えば、ヒドロキシル基を挙げることができる。ヒドロキシル基は多官能イソシアネートと反応してウレタン結合による架橋を形成する。このような架橋形成可能な基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートを挙げることができる。また、架橋形成可能な基は(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合可能な基であってもよく、このような場合には、ポリマー生成のための重合時に同時に架橋反応を生じることができるので架橋剤は必要とされない。このような基を有するアクリレートモノマーとしては、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
架橋形成可能な基を有するモノマーは、モノマーの総量を基準として、0.2〜7質量%の量で含まれる。0.2質量%を下回ると、架橋点が少なくなり、ポリマーが十分な凝集力を得ることができない。他方、7質量%を超えると、過度の架橋構造によってポリマーがゲル化し、粘着性を失うことがある。架橋形成可能な基を有するモノマーは好ましくは1〜5質量%の量で含まれる。
【0015】
感圧接着性ポリマーの構成単位としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、酢酸ビニル及びアクリルアミドからなる群より選ばれる改質性モノマーが含まれる。このようなモノマーは、感圧接着剤組成物に接着力を付与するように作用する。改質性モノマーは酸性基を実質的に含まないものである。アクリル酸やメタクリル酸などの酸性基を含むモノマーを用いた場合には、感圧接着性ポリマーに酸性基が導入され、この酸性基は加熱によるアクリル酸エステル構成単位の加水分解を促進し、長時間加熱時のアウトガスの発生原因となるからである。具体的には、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルが挙げられる
上記のような改質性モノマーはモノマーの総量を基準として1〜15質量%の量で用いられる。1質量%を下回ると、接着剤組成物に十分なピール接着力などの接着性能を付与することができず、15質量%を上回ると、アウトガスの発生要因になるからである。改質性モノマーは好ましくは1〜7質量%の量で含まれる。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果を損なわないかぎり、上述のアクリル系感圧接着性ポリマー以外の他のアクリル系感圧接着性ポリマーを含むこともできる。しかしながら、接着剤組成物は、感圧接着性ポリマーの総質量を基準として少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも90質量%の上述のアクリル系感圧接着性ポリマーを含み、最も好ましくは上述のアクリル系感圧接着性ポリマーからなる。
【0017】
感圧接着性ポリマーは好ましくはゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン標準換算で、300,000〜850,000の重量平均分子量(Mw)を有する。分子量が低すぎると、長時間の加熱時に末端から分解を生じ、アウトガスの原因になり、また、分子量が大きすぎると、感圧接着剤層の塗布が困難になるとともに、粘着性がなくなる傾向があるからである。
【0018】
以下において、本発明の接着剤組成物に含まれるアクリル系感圧接着性ポリマーの製造方法について説明する。感圧接着性ポリマーは、一般に、上述のモノマーを含むモノマー混合物を、アゾ系化合物又は過酸化物をベースとする重合開始剤の下でラジカル重合して得ることができる。重合法には、溶液重合法、エマルジョン重合法、懸濁重合法、塊状重合法又はその他の周知・慣用の重合方法を用いることができる。溶液重合法の場合、モノマー混合物、重合開始剤などを酢酸エチルのような適切な溶媒中に溶解させ、窒素などの不活性雰囲気下で、30〜80℃及び1〜24時間、重合を行なうことにより感圧接着性ポリマーが得られる。アゾ系化合物をベースとする重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)などが挙げられる。このようなアゾビス系化合物をベースとする重合開始剤を用いたラジカル重合では、重合時に残存するモノマーの量が低減され、初期アウトガス発生要因を抑制するので望ましい。また、過酸化ベンゾイルなどの開始剤と比較して、開始剤分解物が感圧接着剤組成物中に残留しにくいので初期アウトガスの発生を抑制することができる。重合開始剤の量は、一般に、モノマー混合物100重量部あたり0.03〜0.5重量部の量で使用される。
【0019】
以上のようにして形成されたポリマーは、架橋形成可能な基を有するモノマー中の架橋可能な基が(メタ)アクリロイル基であるモノマーを用いる場合、すなわち、多官能アクリレートモノマーを用いる場合には、上記のポリマーの製造工程と同時に架橋構造が形成されている。しかしながら、ヒドロキシル基などの官能基を架橋形成可能な基としている場合には、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの適切な架橋剤により架橋される。架橋形成可能な基がヒドロキシル基であり、架橋剤がポリイソシアネート化合物であることが好ましい。架橋剤は、一般に、ポリマーの形成後に、架橋に必要な量で添加され、溶剤除去工程などの加熱により架橋は促進される。
【0020】
本発明の感圧接着剤組成物は、上記の感圧接着性ポリマー以外に、粘着付与剤、無機又は有機充填材、金属粉、顔料などの粉体、粒子状物、箔状物などの従来公知の各種の添加剤を含ませることができる。ただし、粘着付与剤は、揮発性を有する場合には、アウトガスの発生要因となりうるので、その選択又は量に注意を要する。また、本発明の感圧接着剤組成物中に含まれる感圧接着性ポリマーは粘着付与剤の添加なしに十分な粘着性を有するので、好ましくは、このような粘着付与剤を含ませない。
【0021】
つぎに、感圧接着剤シート及びその製造方法を説明する。
感圧接着剤シートは、ポリエステルフィルムなどの各種プラスティックフィルム、紙、不織布、発泡体、金属箔又はこれらの積層体などの基材の片面又は両面に上記感圧接着剤組成物からなる層を設けて、シート状、フィルム状、テープ状の形態にして得られる。詳細には、感圧接着剤シートは以下のとおりに製造できる。まず、感圧接着性ポリマーを有機溶媒に溶かしてコーティング溶液を調製する。有機溶媒には、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン又はそれらの混合物を通常使用することができる。つぎに、基材にコーティング溶液を、ダイコーティング、ナイフコーティング、バーコーティング又はその他周知・慣用の塗布方法により均一に塗布する。それから、コーティング溶液を基材とともに加熱して、溶媒や残存モノマーなどの揮発分を除去するとともに、架橋反応を進行させて感圧接着剤シートを得る。
【0022】
アクリル系感圧接着剤層は10μm〜150μmの厚さを有することが望ましい。アクリル系感圧接着剤層の厚さが10μmの未満であると、十分な接着力が得られないおそれがあり、また、150μmより大きいと、アウトガスの原因となる揮発分の除去が行なえなくなることがある。
【0023】
上記のように得られた感圧接着剤シートは、その粘着面に剥離ライナーを貼り付け、それにより、粘着面の表面保護及び取り扱い性の改善を行なうことができる。或いは、上記の基材の感圧接着剤層と反対側が剥離処理(背面剥離処理)されていてよく、このような場合には、巻出式のテープとすることができる。さらに、上記の基材の感圧接着剤層との接触面が剥離処理され、粘着面の保護膜として作用させ、感圧接着剤シートの使用時には基材を有しない独立シートとして使用されることもできる。
【0024】
上記の剥離処理は、パーフルオロポリエーテルポリマー剥離剤又はポリ(メタ)アクリレート剥離剤の処理面への被覆により行なうことができる。パーフルオロポリエーテルポリマー剥離剤は、例えば、特開平2−308882号公報に開示されており、ポリ(メタ)アクリレート剥離剤は、例えば、特開2001−240775号公報に開示されている。このような剥離剤で処理された剥離ライナーはライナーからの粘着面の剥離力が軽いとともに、また、接着剤シートの長期間保存の後にも接着力が低下しないからである。シリコーン剥離剤の使用は避けるべきである。というのは、シリコーン剥離剤では、感圧接着剤層へのシリコーンの移行をまねきやすく、この結果、初期アウトガスとしてシロキサンガスを発生することがあり、また、接着剤シートを長期間保存した場合には接着剤シートの接着力が低下することがあるからである。ただし、ライナーからのシリコーン移行量が少ないシリコーン剥離剤であれば、シリコーン剥離剤で処理したライナーを用いることもできる。
【0025】
本発明の感圧接着剤組成物及びそれから得られる感圧接着剤シートは、感圧接着剤としての十分な性能を有するとともに、初期アウトガス及び長時間にわたる加熱時のアウトガスが低減されるものである。具体的には、感圧接着剤組成物及び感圧接着剤シートはJIS Z0237に規定される90°ピール接着力が8.5N/25mm以上となった。また、接着剤組成物又はシートを120℃で16時間加熱したときに発生される有機物のアウトガスの量は発生するアウトガス/接着剤組成物(又は接着剤シート)の重量比として記載して、100μg/g以下となることができる。また、接着剤組成物(又は接着剤シート)を120℃で1時間加熱したときに発生される有機物のアウトガスの量は、発生するアウトガス/接着剤組成物(又は接着剤シート)の重量比として20μg/g以下となることができる。なお、JIS Z0237に規定される90°ピール接着力は、SUS(ステンレス)304鋼板を耐水研磨紙で磨いた基材に対して2kgローラー1往復で接着剤フィルム(シート)を圧着し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気中で30分間放置後に、剥離速度300mm/分、90°の剥離角度で剥離接着力を測定したものである。また、接着剤シートのサンプルは、25μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布もしくはラミネートされた50μm厚さの感圧接着剤フィルムからなるシートを25mm幅、200mm長さの短冊状にスリットして得られる。
【0026】
【実施例】
1.感圧接着剤シートの製造
下記の表1に示されるモノマー及びその量を含むモノマー混合物(100重量部)を反応容器に入れ、酢酸エチル230部を溶媒として添加し、さらに2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.16部を重合開始剤として添加し、窒素雰囲気下に50℃で16時間反応させて、表1に記載される重量平均分子量のアクリル系ポリマーの溶液(固形分30質量%)を得る。これに、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製のコロネートL)0.5部を添加し、パーフルオロポリマーで剥離処理されたPET基材(米国3M社製の5932ライナー)にコンマロールコーターによりコーティングした後、65℃で3分間、次いで120℃で2分間加熱して乾燥し、感圧接着剤層の厚さが50μmである感圧接着剤シートを得る。
【0027】
2.アウトガス測定
上記のとおりに製造した感圧接着剤シートから基材(ライナー)を剥がし、感圧接着剤層のみからなるフィルムを得る。このフィルムからなる感圧接着剤組成物0.1gを20mlバイアル瓶に入れて密封した後に、120℃で1時間、又は、120℃で16時間加熱したときのガス1mlをガスクロマトグラフィー(GC)測定に供する。なお、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー/質量分析測定(HS−GC/MS)から各ピークの定性分析を行なった。次に、既知の濃度のデカンを含むアセトン溶液1μLをスパイクし、同様にヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー測定(HS−GC)を行い、これにより検量線を作成する。得られた検量線に基づいて、各感圧接着剤組成物サンプルのヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー測定(HS−GC)の各ピークからアウトガス量を求める。
【0028】
3.90°ピール接着力測定
上記のとおりに製造した感圧接着剤シートを25μmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにラミネートして室温にて1日間放置したシートについて、JIS Z0237に規定される90°ピール接着力を測定する。具体的には、上記シートを25mm幅、200mm長さの短冊状にスリットし、これをSUS(ステンレス)304鋼板を耐水研磨紙で磨いた基材に対して2kgローラー1往復で圧着し、温度23℃、相対湿度50%雰囲気中で30分間放置後に、剥離速度300mm/分、90°の剥離角度で剥離接着力を測定する。
【0029】
実施例1〜4及び比較例1〜5
各モノマー組成のモノマー混合物を用いて上記のとおりに接着剤シートを製造し、上記のアウトガス測定及び90°ピール接着力を測定した。モノマー組成、アウトガス量及び90°ピール接着力の測定結果を下記の表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0004079659
【0031】
上記の表1の結果から、実施例1〜4に記載される本発明の感圧接着剤組成物は十分な接着力を有するとともに、1時間加熱時のアウトガス(初期アウトガス)及び16時間加熱時のアウトガス(長時間加熱時のアウトガス)の量が十分に低いことがわかる。また、比較例1及び2では、初期アウトガス及び長時間加熱後のアウトガスの量が高く、特に長時間加熱後のアウトガスの量が高く、このため、電子機器やそれを構成する電子部品のための接着剤としては適さないことが判る。この結果は、感圧接着剤組成物には、アクリル酸モノマーに由来する酸性基による酸性条件下に、アクリル酸ブチルモノマーに由来する構造単位が加水分解したことによるものと考えられる。比較例3では、感圧接着剤組成物は酸性基を含む成分がないので、アウトガス量は小さいが、改質性モノマーが含まれないので、感圧接着剤組成物としての接着力が十分でないことが判る。比較例4及び5では、アクリル酸などの酸性基を含む成分は用いていないが、アクリル酸エステルモノマーのアルキル基の炭素数が8である点で本発明の要件を満たしていない。アルキル基の炭素数が大きすぎると、酸性基が存在しない場合であっても、加水分解によるアウトガスが生じることが判る。
【0032】
【発明の効果】
本発明の感圧接着剤組成物は、十分な接着力を有するとともに、初期アウトガスの発生が低く、また、長時間の加熱時のアウトガス発生も低い。

Claims (5)

  1. モノマー混合物の総量を基準として、
    CH2=CHCOOR1(式中、R1は炭素数2〜7のアルキル基である)、50〜98質量%、
    架橋形成可能な基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、0.2〜7質量%、及び、
    炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸エステルモノマー、酢酸ビニル及びアクリルアミドからなる群より選ばれる、改質性モノマー、1〜15質量%、
    を含むモノマー混合物を共重合させ、架橋構造を形成させたアクリル系感圧接着性ポリマーを含み、酸性基を有する化合物を含まない、アクリル系感圧接着剤組成物。
  2. 請求項1記載の感圧接着剤組成物からなるアクリル系感圧接着剤シート。
  3. 前記架橋形成可能な基はヒドロキシル基であり、かつ、前記アクリル系感圧接着性ポリマーのヒドロキシル基はイソシアネート系架橋剤によって架橋されている、請求項記載のアクリル系感圧接着剤シート。
  4. 前記アクリル系感圧接着剤シートの片面又は両面に基材を有する、請求項2又は3記載のアクリル系感圧接着剤シート。
  5. 前記基材の前記アクリル系感圧接着剤シートとの接触面はパーフルオロポリエーテルポリマー及びポリ(メタ)アクリレート剥離剤からなる群より選ばれる剥離剤により被覆されたものである、請求項記載のアクリル系感圧接着剤シート。
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