JP4058142B2 - 弗化沃化エタンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン等の弗化沃化エタンの製造方法に関する。さらに詳しくは弗化塩化エタンと金属沃化物を極性溶媒中で反応させ、対応する弗化沃化エタンを製造する方法に関するものである。
【0002】
本発明における弗化沃化エタンは、そのものが医薬、農薬中間体として利用されるだけでなく、水酸基やアミノ基などのさまざまな官能基を有する有機化合物の弗化エチル化剤として極めて有用な化合物である。
【0003】
【従来の技術】
従来弗化沃化エタンの製造方法として、いくつかの方法が公知である。例えば、R.S.TipsonらおよびG.V.D.Tiersらは2,2,2−トリフルオロエタノールをトシル化した後、沃化ナトリウムを反応させ2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを得る方法を開示している(Journal of the American Chemical Society, 75, 5978(1953))。またL.C.Kroghらは同様の方法で2,2,2−トリフルオロエタノールをホスホニウム化し、沃化ナトリウムと反応させる方法を開示している(The Journal of Organic Chemistry, 19, 1124(1954))。
【0004】
L.C.Kroghら、およびH.Gilmanらは2,2,2−トリフルオロエチルアミンをジアゾニウム化し、沃素、または沃化水素と反応させ、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを得る方法を開示している(The Journal of Organic Chemistry, 19, 1124(1954)、Journal of the American Chemical Society, 65, 2037(1943))。
【0005】
しかしながら出発原料の2,2,2−トリフルオロエタノールや2,2,2−トリフルオロエチルアミンは一般に高価であり、これらの方法は工業的な製造方法とは成り難い。
【0006】
R.D.ChambersらおよびR.N.Haszeldineらは、弗化ビニリデンを原料とし、これに弗化沃素を付加する2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの製造方法を開示している(Journal of Chemical Society, 3379(1961)、Journal of Chemical Society, 923(1954))。この方法は原料の弗化ビニリデンが重合反応を起こし易く、安全上の問題から運搬が困難であり、入手が難しいばかりでなく、弗化沃素が必要である。通常、弗化沃素は弗素と沃素を反応させて製造する。このため弗素の発生設備が必要となり、特別な設備と技術が必要である。さらに弗化沃素は腐食性が強く、特殊な耐食性材料を用いなければならない。よって、この方法も工業的に経済性に優れた合理的な製造方法とは成り難い。
【0007】
一方、E.T.McBeeら、J.Hineら、およびF.W.Hoffmannらは2,2,2−トリフルオロ−1−ブロモエタンや2−フルオロ−1−ブロモエタンと沃化カリウムまたは沃化ナトリウムを反応させて、対応する弗化沃化エタンを得る製造方法を開示している(Journal of the American Chemical Society, 84, 3157(1962)、The Journal of Organic Chemistry, 23, 1550(1958)、The Journal of Organic Chemistry, 14, 104(1949))。これらの製造方法では弗化臭化エタンが原料として使用される。原料となるこれらの弗化臭化エタンは、例えば対応する弗化エタンを臭素化して製造する必要があり、製造プロセスが長くなり、高価であるうえ、さらに工業的原料として一般に入手が困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の弗化沃化エタンの製造方法は、原料が高価であるとか、原料の輸送に安全上の問題があって、入手が困難であるとか、弗素を発生させる特別な設備が必要であるとか、またプロセスが長くなるといった問題が有り、いずれも弗化沃化エタンの工業的製造方法としては不適当なものであった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、原料の入手が容易かつ安価で、簡便な製造プロセスにより得ることができる弗化沃化エタンの製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、安価で工業的に入手が容易な弗化塩化エタンと金属沃化物を用いて直接弗化沃化エタンを製造する方法を鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は極性溶媒中で一般式(I)
CFmXnCH2Cl (I)
(ただし式中、mは1ないし3の整数であり、nは3−mを示し、Xはnが1のときはClまたはHを、nが2のときはClおよび/またはHを表す)
で表わされる弗化塩化エタンと金属沃化物を反応させることを特徴とする一般式(II)
CFmXnCH2I (II)
(ただし式中、X、mおよびnは前記定義に同じ)
で表わされる弗化沃化エタンの製造方法、
および、アセトン中で2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンと金属沃化物を反応させて、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを製造した後、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとアセトンの共沸組成物を取り出し、該共沸組成物に水を加え、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン相とアセトン−水相に分離した後、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを蒸留することを特徴とする高純度2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの製造方法に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の製造方法において原料として用いられる化合物は前記一般式(I)で表される弗化塩化エタンである。前記一般式(I)で表される弗化塩化エタンは、2−フルオロ−1−クロロエタン、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン、2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタン、2−フルオロ−1,2,2−トリクロロエタンおよび2,2−ジフルオロ−1,2−ジクロロエタンが挙げられる。本発明の原料化合物となる前記一般式(I)で表される化合物は対応する例えばジクロロエタン、塩化ビニリデン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素化合物の弗素化により容易に得ることができ、工業的にも入手が容易である。
【0014】
例えば、2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンは触媒存在下にトリクロロエチレンと弗化水素を反応させて造られており、工業的に重要な1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)の重要な中間体である。これら原料である弗化塩化エタンは一般に市販品として入手できるものをそのまま使用することができる。
【0015】
本発明において弗化塩化エタンと反応させる金属沃化物は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の沃化物である。アルカリ金属の沃化物としては、例えば、沃化リチウム、沃化ナトリウム、沃化カリウム、沃化ルビジウムが挙げられ、アルカリ土類金属の沃化物としては、例えば、沃化マグネシウム、沃化カルシウム、沃化ビスマス等が挙げられる。これらのうち、反応性、収率および経済性から、沃化ナトリウムまたは沃化カリウムが好ましい。
【0016】
本発明において溶媒として用いる極性溶媒は電気双極子を有する液体であれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、スルホキシド類、ニトリル類、エーテル類、アミン類、アミド類、グリコール類、ニトロ化合物が挙げられる。これらの内、好ましい極性溶媒は、ケトン類、スルホキシド類、ニトリル類、エーテル類、エステル類、アミド類である。これらの好ましい極性溶媒の内、ケトン類としてはアセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が、スルホキシド類としてはジメチルスルホキシド、スルホランが、ニトリル類としてはアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルが、エーテル類としてはメチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテルや、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類等が、エステル類としては酢酸エチル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等が、アミド類としてはN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素等が挙げられる。これらの内、より好ましくはケトン類としてはアセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンが、スルホキシド類としてはスルホラン、ジメチルスルホキシドが、ニトリル類としてはアセトニトリルが、エーテル類としてはジグライムが、エステル類としてはγ−ブチロラクトンが、アミド類としてはN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素等が挙げられる。これらの内、最も好ましい極性溶媒はアセトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素である。これらの極性溶媒は必要に応じ混合して用いてもよい。
【0017】
なお、ベンゼン等の無極性溶媒は、原料の金属沃化物が溶解せず、反応が進行しないため、不適当である。
【0018】
本発明方法により製造される弗化沃化エタンは、前記一般式(II)で表される化合物であり、2−フルオロ−1−ヨードエタン、2,2−ジフルオロ−1−ヨードエタン、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン、2−フルオロ−2,2−ジクロロ−1−ヨードエタンおよび2,2−ジフルオロ−2−クロロ−1−ヨードエタンが挙げられる。
【0019】
本発明方法は、これらの原料と極性溶媒を用いて反応を行う。反応はバッチ式、半バッチ式、連続式があるが、いずれの方式でも実施できる。以下に攪拌機を備えた加圧容器を使用するバッチ式を例として説明する。
【0020】
まず加圧容器に金属沃化物および極性溶媒を仕込む。次に加圧容器を閉じ、空隙の空気を原料または反応に対して不活性なガス(以下、不活性ガス)で十分に置換する。その後原料の弗化塩化エタンを充填した後、攪拌しながら昇温し、所定の反応温度で反応する。ここで使用できる不活性ガスは、例えば、原料の弗化塩化エタン、窒素、アルゴン、炭酸ガス等が挙げられる。これらの内、好ましくは原料の弗化塩化エタンおよび/または窒素である。
【0021】
本発明方法において、原料の弗化塩化エタンに対して金属沃化物のモル比は0.1〜5.0倍モルが使用されるが、好ましくは0.5〜1.5倍モルである。モル比が0.1倍モル未満では弗化塩化エタンの転化率が小さく、経済的ではない。一方5.0倍モルを超えると未反応の金属沃化物が多くなり、経済性が損なわれる。
【0022】
極性溶媒の使用量は用いる極性溶媒の種類や、金属沃化物の種類によって異なり、一元的に決定する事は困難であるが、金属沃化物100gに対して極性溶媒100〜5,000mlとすれば良く、好ましくは150〜2,000mlである。極性溶媒が100ml未満では金属沃化物が十分に溶解せず、十分な反応速度が得られない。また弗化塩化エタンの転化率も小さくなり好ましくない。一方極性溶媒が5,000mlを超えると反応一回当たりの生産量が小さくなり経済性が損なわれる。
【0023】
本発明方法における反応温度は、80℃以上250℃以下の範囲で適宜選択すればよい。さらに好ましくは100℃〜200℃である。反応温度が80℃未満では反応速度が著しく遅く、反応を完結させるには長い時間を要し実用的でない。また250℃を超えると副生成物が増加し弗化沃化エ夕ンの選択性が低下する。
【0024】
本発明方法における反応圧力は特に制限はないが、本発明の反応条件下では、自圧で約3MPaとなる。必要があれば反応は不活性な窒素、アルゴンを加えて加圧してもよいが、好ましくは反応条件下で5MPa以下がよい。これ以上の圧力では加圧容器に掛る設備費が増大し、好ましくない。
【0025】
攪拌速度は加圧容器の大きさや形状に応じて異なるが、攪拌が十分にできる速度を選択すればよい。
【0026】
本発明方法における反応時間は特に限定されるものではないが、5〜30時間、好ましくは15〜20時間がよい。5時間未満では弗化塩化エタンの転化率が不十分であり、30時間を超えても反応はそれ以上進行せず不必要である。
【0027】
本発明方法によれば本反応終了後、加圧容器を冷却し、未反応の弗化塩化エタンを冷却トラップで回収し、不活性ガスをパージする。しかる後に加圧容器から所望の弗化沃化エタン、極性溶媒、未反応の金属沃化物、生成した金属塩化物から成る反応混合物を得る。通常、反応混合物中の金属塩化物は塩として沈殿しているので、ろ過や遠心分離器で塩を分離し、弗化沃化エタン、極性溶媒、未反応の金属沃化物からなる反応生成物溶液を得る。この溶液より所望の弗化沃化エタンは常法に従って、蒸留分離し、高純度の弗化沃化エタンを得る事ができる。
【0028】
本発明者らはさらに前記一般式(II)においてm=3、n=0である2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンと本発明の最も好ましい極性溶媒であるアセトンは、重量比約75〜81:19〜25、沸点60〜66℃の最高共沸組成を形成することを見い出した。
【0029】
この最高共沸組成を形成する性質を2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの分離精製プロセスに適用すると、効率的かつ廃棄物の少ない簡便なプロセスとなる。
【0030】
2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとアセトンの沸点は各々55℃、56℃である。これらの沸点の差は約1℃と小さく、これを蒸留分離するには通常の蒸留操作では極めて困難である。そこで前述の最高共沸組成を形成する性質を利用することで初めて効率的、かつ廃棄物の少ない2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの分離プロセスとすることが可能となる。
【0031】
本発明の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの精製方法によれば、例えば、次の手順によって分離精製すればよい。
【0032】
まず加圧容器より未反応の原料の弗化塩化エタンである2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタン、反応生成物の弗化沃化エタンである2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン、および極性溶媒であるアセトンをフラッシュさせ、冷却した容器に移す。これを蒸留して未反応の原料の弗化塩化エタンを分離する。この蒸留を行うにあたっては必要ならば加圧蒸留を行ってもよい。未反応の原料を分離したボトム液は2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとアセトンを含む。この溶液は常圧において蒸留により、沸点56℃のアセトンと沸点62〜64℃の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物に分離する。
【0033】
次にボトム液である2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物に水を加えて、攪拌、静置すると、下層の粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン相と上層のアセトン−水溶液相の2層に分離できる。この時使用する水の量は0.5〜10倍量であり、好ましくは1〜5倍量である。水量が0.5倍量未満ではアセトンを十分に抽出分離できず、また10倍量を超えるとアセトンを回収する水量が多くなり経済性が損なわれる。粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンは常圧蒸留により塔頂から高純度の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンが製品として得られ、ボトム液として2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物が残る。
【0034】
このようにして高純度の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを精製分離することができる。
【0035】
2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを本発明により工業的に製造する場合のプロセスの一実施態様を図1に示した。
【0036】
沃化ナトリウム、2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンおよびアセトンを加圧容器1に投入し、反応させる。その後、ライン6により反応液をフラッシュさせ、十分に冷却して容器2に移送する。その時加圧容器1には未反応の沃化ナトリウムと塩化ナトリウムが固体として分離され残る。その後回分蒸留塔3を用いて加圧下に2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンを回収し、続いて常圧下にアセトンの一部を回収する。回収された2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンは再び原料として用いられ、回収されたアセトンは加圧容器1に戻され、加圧容器1内に残る沃化ナトリウムを溶解し、アセトンに溶解しない塩化ナトリウムと分離する。その後、このアセトン−沃化ナトリウム溶液は加圧容器1に戻され、極性溶媒および原料として再び利用する。蒸留塔3のボトム液は2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン最高共沸組成物である。この共沸組成物をライン7を用い、二相分離器4に送り、水を加えて水洗する。二相分離により得られた下層の粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンはライン8により蒸留塔5に送られ、製品としての高純度の2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンと、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン共沸組成物に分離される。ボトム液として残った2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン−アセトン共沸組成物はライン9により、二層分離器4に戻される。一方、二相分離された上層の水―アセトン組成物は蒸留により、水、アセトンに蒸留分離し、アセトンは再び極性溶媒として利用する。
【0037】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし記載した実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
【実施例】
なお、実施例中の弗化沃化エタン選択率、弗化塩化エタン転化率は下記(1)式により計算した。
【0039】
【数1】
【0040】
実施例1
2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタン(以下、「TFEC」とする)34.0g(0.287mol)、アセトン100ml、沃化ナトリウム(以下、「NaI」とする)43.3g(0.289mol)を200mlオートクレーブに取り、180℃まで加熱、昇温し、その温度を維持して18時間反応させた。
【0041】
その後、室温まで冷却し、反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0042】
その結果、TFEC転化率52.2%、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン(以下、「TFEI」とする)選択率92.0%であった。
【0043】
実施例2
TFEC712.4g(6.0mol)、アセトン2L、NaI903.4g(6.0mol)を5Lのオートクレーブに取り、180℃まで加熱し、180℃を維持して18時間反応させた。
【0044】
その後、室温まで冷却し、反応液を取り出した。この時反応液の分析の結果、この時のTFECの転化率は53.9%、TFEIの選択率は88.0%であった。
【0045】
実施例3〜5
反応温度のみを変更して、実施例1と同様に反応を行い、表1に示したような結果を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例6〜19
実施例1と同様の方法で溶媒の種類について検討を行った結果を表2に示す。なお、各溶媒は100ml使用した。
【0048】
【表2】
【0049】
実施例20
実施例1において、NaIを沃化カリウム(以下、「KI」と略称する)に変えて行う以外同様の方法で行った。
【0050】
TFEC31.4g(0.265mol)、アセトン100ml、KI43.6g(0.263mol)を200mlオートクレーブに取り、180℃まで加熱し、180℃を維持して18時間反応させた。
【0051】
その後、室温まで冷却し、反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0052】
その結果、TFEC転化率21.4%、TFEI選択率35.2%であった。
【0053】
実施例21
2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン30.0g(0.299mol)、アセトン100ml、NaI45.3g(0.302mol)を200mlオートクレーブに取り、160℃まで加熱し、160℃を維持して18時間反応させた。
【0054】
その後、室温まで冷却し、反応液を採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0055】
その結果、2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン転化率55.2%、2,2−ジフルオロ−1−ヨードエタン選択率85.0%であった。
【0056】
実施例22
ガラス製蒸留塔(直径25mm、充填剤スルーザー、有効充填高さ385mm)にアセトン61.8重量%、TFEI38.2重量%を含む混合液203.8gを仕込み、蒸留を行い、表3に示すような結果を得た。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例23
アセトン6.4重量%、TFEI93.6重量%を含む混合液241.7gを用いた以外、実施例16と同じように蒸留を行い、表4に示すような結果を得た。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例22、23の結果により、アセトンとTFEIは最高共沸組成物を作り、その組成はアセトン19〜25重量%、TFEI75〜81重量%であった。
実施例24
実施例2で得られた反応液2343gから単蒸留により、TFEC237.5gおよびアセトン1,162gを回収し、TFEI−アセトン共沸組成物669gを得た。このTFEI−アセトン共沸組成物を水3.3Lで2回洗浄し、純度98.3%の粗TFEI507gを得た。
【0061】
これを蒸留し、純度99.9%のTFEIを498g得た。TFEIの単離収率は39.5%であった。この時蒸留塔ボトムにTFEI−アセトン共沸組成物が残った。
【0062】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、原料の入手が容易かつ安価な弗化塩化エタンと金属沃化物を用い、極性溶媒中で反応させ、高い選択率で弗化沃化エタンを簡便に製造することができ、従来の製造方法に較べて工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弗化沃化エタンの製造方法の一実施態様を示すプロセス図。
【符号の説明】
1 加圧容器
2 容器
3 蒸留塔
4 二相分離器
5 蒸留塔
Claims (16)
- 極性溶媒中で一般式(I)
CFmXnCH2Cl (I)
(ただし式中、mは1ないし3の整数であり、nは3−mを示し、Xはnが1のときはClまたはHを、nが2のときはClおよび/またはHを表す)
で表わされる弗化塩化エタンと金属沃化物を反応させることを特徴とする一般式(II)
CFmXnCH2I (II)
(ただし式中、X、mおよびnは前記定義に同じ)
で表わされる弗化沃化エタンの製造方法。 - 一般式(I)で表される弗化塩化エタンが2−モノフルオロ−1−クロロエタンであり、一般式(II)で表される弗化沃化エタンが2−モノフルオロ−1−ヨードエタンである請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 一般式(I)で表される弗化塩化エタンが2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンであり、一般式(II)で表される弗化沃化エタンが2,2−ジフルオロ−1−ヨードエタンである請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 一般式(I)で表される弗化塩化エタンが2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンであり、一般式(II)で表される弗化沃化エタンが2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンである請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 金属沃化物がアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の沃化物である請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 金属沃化物が沃化ナトリウムおよび/または沃化カリウムである請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 80〜250℃の温度範囲で反応を行う請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 100〜200℃の温度範囲で反応を行う請求項1または請求項7に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- 極性溶媒がケトン類、スルホキシド類、ニトリル類、エーテル類、エステル類およびアミド類から選ばれた少なくとも1種以上である請求項1に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- ケトン類がアセトン、2−ブタノンおよび4−メチル−2−ペンタノンから選ばれる少なくとも1種以上である請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- スルホキシド類がスルホランおよび/またはジメチルスルホキシドである請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- ニトリル類がアセトニトリルである請求項9記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- エーテル類がジグライムである請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- エステル類がγ−ブチロラクトンである請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- アミド類がN−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素から選ばれた少なくとも1種である請求項9に記載の弗化沃化エタンの製造方法。
- アセトン中で2,2,2−トリフルオロ−1−クロロエタンと金属沃化物を反応させて、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを製造した後、2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンとアセトンの共沸組成物を取り出し、該共沸組成物に水を加え、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタン相とアセトン−水相に分離した後、粗2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンを蒸留することを特徴とする高純度2,2,2−トリフルオロ−1−ヨードエタンの製造方法。
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