JP3937808B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは記録ヘッドに設けられた吐出口からインク滴を吐出させ、印刷用紙上に付着させることによって画像を形成する。
【0003】
記録ヘッドには通常複数の吐出口が設けられているが、記録動作中に複数ある吐出口のなかで使用頻度の低い吐出口があると、その吐出口では水分蒸発によりインクの粘度が上昇し、吐出口が目詰まりする現象が発生する。この現象を回避するために記録動作実行時に所定時間間隔、あるいはインク吐出口の使用率などを計算して、記録ヘッドの走査領域外に設けられたインク受容部(以下、予備吐出受けという)に対し、所定のドット数分のインク滴を吐出させることにより、吐出口付近の状態を一定状態に保持している。この動作を予備吐出動作という。
【0004】
図7は、従来のインクジェットプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【0005】
図7において、101は印刷用紙、102は積載された印刷用紙を一枚ずつプリンタ内部へと給紙し、記録が進行するにつれその印刷用紙を図面手前(図中矢印方向)に向かって排出する自動給紙機構、103はキャリッジ、104は下方向(図中印刷用紙方向)に向かってインクを吐出するように取りつけられた記録ヘッドを内蔵するインクカートリッジである。
【0006】
キャリッジ103はインクカートリッジ104を搭載し印刷用紙に対向して印刷用紙の搬送方向とは垂直方向に往復移動する。このとき、インクカートリッジ104内に蓄えられたインクを印刷用紙に向かって吐出することによって画像形成が行われる。
【0007】
105はキャリッジモータ、106は駆動ベルトであり、キャリッジ103は駆動ベルト106によってキャリッジモータ105と連動しており、キャリッジモータ105が正逆駆動することによって、キャリッジ103が往復移動する。さて、107と108は夫々、キャリッジ103をとりつけるガイドシャフトであり、インクカートリッジ104を搭載したキャリッジ103の往復移動を支持する。
【0008】
109と110は予備吐出受けであり、予備吐出動作時にはキャリッジ103が予備吐出受け109、或いは110のいずれかの上に移動し、記録ヘッドは所定のドット数分のインク滴を吐出する。
【0009】
従来のインクジェットプリンタでは、図7からも明らかなように、予備吐出受けを記録ヘッドの走査領域の片端、もしくは両端に設けるのが一般的であり、予備吐出動作を実行する際には記録終了位置から予備吐出受け上まで記録ヘッドを移動していた。
【0010】
図8は、従来のインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。
【0011】
図8に示すように、印刷用紙101上に「A…A」のような画像を印刷する場合、図7で説明した記録ヘッドを搭載したキャリッジ103は図中点xより点yへと至るライン301の範囲で走査を行う。ライン301は印刷用紙上にインクを吐出して画像を形成する記録領域と、加(減)速領域であるa、bからなる。記録領域において画像を形成するためにはキャリッジ103を一定速度で駆動する必要があり、図中点302にてキャリッジ103が停止していた場合、点303より一定速度で移動するために領域aでキャリッジ103を加速する。また、点304まで一定速度で移動していたキャリッジを点305で停止させるために、領域bでキャリッジ103を減速する。
【0012】
点yより点x方向へとキャリッジ103を反対方向に移動させて記録を行う場合は、bが加速領域、aが減速領域となる。従って、記録領域+a領域+b領域の間が一走査分の記録動作に対応したキャリッジ移動範囲となる。
【0013】
一方、予備吐出動作を実行する際には、予備吐出受け109、110上にキャリッジ103を移動して、インクの吐出を行う。予備吐出受け109で予備吐出を行う場合には図中点307へとキャリッジ103を移動する。領域dはキャリッジ停止位置から予備吐出受け109までの移動領域を示している。また、予備吐出受け110で予備吐出を行う場合には図中点306へとキャリッジ103を移動する。領域cはキャリッジ停止位置から予備吐出受け110までの移動領域を示している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来例では、記録用紙の幅が走査領域の最大幅より狭い場合には、記録ヘッドの実際の走査領域は記録用紙の幅の長さにあわせて狭くなり、予備吐出動作を実行する際にその走査領域端から予備吐出受けまでの移動距離が長くなってしまうため、記録実行時間が長くなってしまうという問題があった。
【0015】
図9は、印刷用紙の幅が記録走査可能領域よりもかなり狭い場合の、従来のインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。図8と図9とを比較すると明らかなように、印刷用紙400は図8に示した記録走査可能領域よりもその幅がかなり狭い印刷用紙である。
【0016】
さて、印刷用紙400上に「A…A」のような画像を印刷する場合、図7で説明した記録ヘッドを搭載したキャリッジ103の走査範囲は図中点x'より点y'へと至るライン401が示す範囲となる。ライン401は印刷用紙400上にインクを吐出して画像を形成する記録領域と、加(減)速領域であるa'領域、b'領域からなる。この記録領域において画像を形成するためにはキャリッジ103を一定速度で移動させる必要があり、図中点402にてキャリッジ103が停止していた場合、点403より一定速度で移動するためにa'領域でキャリッジ103を加速する。また、点404まで一定速度で駆動していたキャリッジ103を点405で停止させるために、b'領域でキャリッジ103を減速する。
【0017】
点y'より点x'方向へとキャリッジ103を反対方向に移動して記録を行う場合は、b'領域が加速領域、a'領域が減速領域となる。従って、記録領域+a'領域+b'領域の間が1走査分の記録動作に対応したキャリッジ移動範囲となる。
【0018】
この場合にも、予備吐出動作を実行する際には、予備吐出受け109或いは110上にキャリッジ103を移動して、インクの吐出を行う。予備吐出受け109で予備吐出を行う場合には図中点407へとキャリッジを移動する。領域d'はキャリッジ停止位置から予備吐出受け109までの移動領域を示している。また、予備吐出受け110で予備吐出を行う場合には図中点406へとキャリッジ103を移動する。領域c'はキャリッジ停止位置から予備吐出受け110までの移動領域を示している。
【0019】
ここで、図8と図9とを比較すると、印刷用紙の幅が狭くなったために記録領域の幅も狭くなっているが、予備吐出受け109の位置はかわらないため、予備吐出動作を行うためにキャリッジ停止位置から予備吐出受け109までの移動領域である図9の領域d'の距離が図8の領域dよりも長くなってしまっているのがわかる。このため、記録領域が狭くなっているのにも関わらず、記録動作の合間に予備吐出動作を実行するために必要なキャリッジ移動距離は長くなって、予備吐出動作の度に余分な時間がかかり、記録動作終了までの時間が長くなってしまう。
【0020】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたものであり、予備吐出動作による記録への影響を最小限にし、速い記録時間を保持することができる記録装置を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は以下のような構成からなる。
【0022】
即ち、記録媒体上を往復走査するキャリッジに搭載された記録ヘッドからインクを吐出することで前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置であって、前記キャリッジの往路走査と復路走査との間に予備吐出を前記記録ヘッドに行わせるように制御する予備吐出制御手段と、前記予備吐出制御手段による前記予備吐出を行う位置を、前記走査方向の前記記録媒体の端部から予め定められた距離離れた第1の位置と、前記記録媒体の端部から前記距離よりもさらに離れた第2の位置のいずれかに指定する予備吐出位置指定手段とを有し、前記予備吐出位置指定手段は、第1のインク吐出周波数で予備吐出を行うときは前記第1の位置を指定し、前記第1のインク吐出周波数よりも高い第2のインク吐出周波数で予備吐出を行うときは前記第2の位置を指定することを特徴とするインクジェット記録装置を備える。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0035】
本明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0036】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0037】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0038】
図1は、本発明の代表的な実施形態であるインクジェットプリンタの概略構成を示す斜視図である。なお、図1において、従来例の図7で説明したのと同じ構成要素については同じ参照番号を付し、その説明は省略する。ここでは、この実施形態に特徴的な要素についてのみ説明する。
【0039】
図1において、109a、110aは予備吐出受けであり、その幅は記録走査可能領域と同じ長さになっており、図1に示す印刷用紙の下の部分にも全て予備吐出受けの口があいており、実際には予備吐出受け109aと110aとは連通した構成となっている。
【0040】
従って、この実施形態における予備吐出動作(記録を行わない記録ヘッドの保守のための吐出動作)では、記録ヘッド104を搭載したキャリッジ103が印刷用紙101の端を過ぎた後、印刷用紙101のない部分の予備吐出受け109a、110a上に対して所定のドット数分のインク滴を吐出させる。
【0041】
図2は図1で説明したインクジェットプリンタの記録ヘッド付近を印刷用紙の搬送方向に切断した側断面図である。
【0042】
図2において、図1及び図7で説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付している。図2に示されているように、キャリッジ103に装着されたインクカートリッジ104の下部に取り付けられている記録ヘッド104Nから下方に向かってインクカートリッジ104に蓄えられたインクを吐出することにより印刷用紙101に画像形成を行う。図2においては紙面手前、奥方向にキャリッジ103が往復動作し、印刷用紙101は記録が進むにつれ矢印方向に移動する。
【0043】
また、キャリッジ103には用紙センサ111が取り付けられており、キャリッジ103の移動に伴って印刷用紙101に対向して移動する。用紙センサ111はこのように移動しながら、印刷用紙がある位置と無い位置を判定し、用紙有り状態から用紙無し状態(もしくはその逆)に変化する点を印刷用紙端として検知する。用紙センサ111は、例えば、光学センサのようなものであり、光を印刷用紙に照射し、その反射光を検出することで、印刷用紙の有無の判断ができるようになっている。また、このセンサは照射部と受光部とが印刷用紙を挟んで対となったインタラプティブセンサであっても良い。
【0044】
次に、上述した装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。
【0045】
図3はインクジェットプリンタの制御回路の構成を示すブロック図である。制御回路を示す同図において、1700は記録信号を入力するインタフェース、1701はMPU、1702はMPU1701が実行する制御プログラムを格納するROM、1703は各種データ(上記記録信号や記録ヘッド104Nに供給される記録データ等)を保存しておくDRAMである。1704は記録ヘッド104Nに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース1700、MPU1701、RAM1703間のデータ転送制御も行う。
【0046】
105は記録ヘッド104Nを搬送するためのキャリッジモータ、1709は記録紙搬送のための搬送モータである。1705は記録ヘッド104Nを駆動するヘッドドライバ、1706、1707はそれぞれ搬送モータ1709、キャリッジモータ105を駆動するためのモータドライバである。
【0047】
上記制御構成の動作を説明すると、インタフェース1700に記録信号が入るとゲートアレイ1704とMPU1701との間で記録信号がプリント用の記録データに変換される。そして、モータドライバ1706、1707が駆動されると共に、ヘッドドライバ1705に送られた記録データに従って記録ヘッド104Nが駆動され、記録が行われる。
【0048】
また、DRAM1703には後述する用紙センサ111によって検出された印刷用紙のキャリッジ走査方向に関する両端の座標を示すデータを格納し、これを後述する予備吐出に伴うキャリッジの移動制御に用いる。
【0049】
図4は印刷用紙の幅が記録走査可能領域よりもかなり狭い場合の、図1に示すインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。図4に示されているように、印刷用紙100の用紙幅は最大記録走査可能領域(SMAX)よりもかなり短い。
【0050】
さて、印刷用紙100上に「A…A」のような画像を印刷する場合、図1〜2で説明した記録ヘッドを搭載したキャリッジ103は図中点x"より点y"へと至るライン501の範囲で往復移動して記録を行う。ライン501は印刷用紙上にインクを吐出して画像を形成する記録領域と加(減)速領域であるa"領域、b"領域からなる。
【0051】
記録領域において画像を形成するためにはキャリッジ103を一定速度で移動させる必要があるので、図4において、例えば、点502にキャリッジ103が停止していた場合、点503より一定速度で駆動するためにa"領域でキャリッジ103を加速する。また、点504まで一定速度で移動していたキャリッジ103を点504で停止させるために、b"領域でキャリッジ103を減速する。これに対して、点y"より点x"方向へとキャリッジ103を移動させて記録を行った場合は、領域b"が加速領域、領域a"が減速領域となる。
【0052】
従って、記録領域+領域a"+領域b"の間が一走査分の記録動作に対応したキャリッジ移動範囲となる。
【0053】
また、予備吐出動作を実行する際には、最大記録走査可能領域全体をカバーする幅をもつ予備吐出受け109a(110a)上にキャリッジ103を移動してインクの吐出を行う。
【0054】
図4において、印刷用紙100の右端で予備吐出を行う場合には、点506へとキャリッジ103を移動する。この場合、予備吐出受け109a(110a)はキャリッジ103の走査領域全体に渡っているため、記録ヘッド104Nのインク吐出口が印刷用紙端より外側に出ていればどこでも予備吐出動作が可能であるが、予備吐出動作を行う際に吐出するインクが印刷用紙に付着しないようにある程度印刷用紙から離れた位置で予備吐出動作を行う必要がある。このような理由のため、点506までキャリッジ103を移動して予備吐出動作を実行するのである。領域c"はキャリッジ停止位置(点502)から指定がなされた予備吐出位置(点506)までの移動領域を示している。
【0055】
また、図4において、印刷用紙100の左端で予備吐出を行う場合には、点507へとキャリッジ103を移動する。この場合も印刷用紙右端で予備吐出を行うのと同様に、ある程度印刷用紙から離れた位置で予備吐出動作を行う必要があるため、点507までキャリッジを移動する。領域d"はキャリッジ停止位置(点505)から指定がなされた予備吐出位置(点507)までの移動領域を示している。
【0056】
ここで、図4に示す予備吐出を行う位置までの移動領域d"と、従来例の図9に示す予備吐出を行う位置までの移動領域d′とを比較してみると、移動領域d"が移動距離d′より短くなっているのがわかる。このため記録動作の合間に予備吐出動作を実行する際に必要なキャリッジ移動に要する時間が短くなり、記録動作終了までの時間をより短くすることが可能になる。
【0057】
次に、以上説明したキャリッジ103の走査領域全体にわたる幅をもつ予備吐出受けを用いた予備吐出動作の制御について、図5〜図6を参照して説明する。
【0058】
図5は、用紙センサ111を用いて記録ヘッドを予備吐出位置へ移動させるために印刷用紙の左右端の座標を検知する様子を示す図である。
【0059】
また、図6は予備吐出動作の制御を示すフローチャートである。
【0060】
このフローチャートでは、図5に示した矢印方向に記録ヘッド104Nが移動しながら印刷用紙101にインクを吐出して記録を行い、その後さらに、その記録走査の左端において予備吐出を行う場合について説明している。
【0061】
まず、ステップS10では、記録ヘッド104Nを搭載したキャリッジ103が図5の位置P1から矢印方向に移動を開始するとする。このとき、用紙センサ111は印刷用紙101を検知していない。
【0062】
次に、ステップS20では記録ヘッド104Nを搭載したキャリッジ103が図中左方向に移動し位置P2に来た時に、用紙センサ111は印刷用紙101を検知する。この時、用紙が無い状態から有る状態に変化しているので、位置P2を印刷用紙101の右端と判定する。その後、ステップS30で記録ヘッド104Nはインクを吐出して記録を行う。なお、この間、さらに図中左方向に移動するが、記録ヘッドは用紙センサ111は印刷用紙101の存在を検知しつづけている。この検知状態は記録ヘッド104Nを搭載したキャリッジ103が位置P2からP3を経てP4にくるまでは継続する。
【0063】
さて、処理はステップS40において、記録ヘッド104Nを搭載したキャリッジ103が位置P4にまで達すると、用紙センサ111は印刷用紙101を検知できなくなる。この時、センサの状態は用紙が有る状態から無い状態に変化するので、位置P4を印刷用紙101の左端と判定する。位置P4の座標はDRAM1703に格納される。
【0064】
この地点から予備吐出動作が開始され、予備吐出のインクの飛沫が印刷用紙にかからないようにするため、ステップS50ではさらに記録ヘッド104Nを搭載したキャリッジ103を図中左方向に移動し位置P5にまで移動させる。位置P4〜P5では用紙センサ111はもはやそのセンサの下に印刷用紙101がないために用紙検知はできない。なお、位置P4〜P5の距離は図4に示す移動領域d"に対応する。
【0065】
そして、ステップS60では位置P5において記録ヘッド104Nから予備吐出を行なわせる。
【0066】
なお、以上の説明は記録ヘッド104Nが図4の矢印方向に移動して記録を行った後に予備吐出を行う場合について説明しているが、記録ヘッドがこれとは逆方向に移動して記録を行った後に予備吐出を行う場合にでも同様の制御を行う。その場合、位置P2の座標がDRAM1703に格納され、P2から所定距離だけ離された地点(例えば、位置P1)で予備吐出がなされる。
【0067】
また、記録ヘッドの位置を特定するための座標系はキャリッジ移動方向に沿った一次元座標系であり、所定の位置(例えば、キャリッジのホームポジション)をその原点にしている。
【0068】
従って以上説明した実施形態に従えば、用紙センサによって検知した印刷用紙の左右端の座標に基づいて、その検知座標から予備吐出に必要な距離だけ記録ヘッドを印刷用紙から離し、予備吐出を行うので、たとえ印刷用紙幅や印刷用紙の位置が変わった場合でも最適な位置で予備吐出動作を実行でき、これにより予備吐出動作にかかるキャリッジ移動を最短にすることが可能になる。
【0069】
従って、記録動作時間を最小限に抑えることが可能になる。
【0070】
さらに、キャリッジに印刷用紙検知用のセンサを設けることにより、実際の印刷用紙幅を検知し、その座標位置を記憶しておくことにより、印刷用紙端から予備吐出動作実行位置までの移動距離を正確に制御することができるので、記録ヘッドの走査領域が最短になるようにより正確に制御することが可能になるという利点もある。
【0071】
なお、上述した例では予備吐出位置として印刷用紙の端部から所定距離離れた位置で行うこととしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、その所定距離離れた位置から更に離れた方向に走査しつつ予備吐出を行ってもよく、またその所定距離離れた位置からさらに離れた位置で記録ヘッドの走査方向を切り替える前後で予備吐出を行っても良い。このような場合には、予備吐出を受けるインク受容部の所定の位置にインクが集中することなく分散させることができる。
【0072】
また、前記指定される所定距離は記録の条件によって変更しても良い。例えば、吐出周波数が高い予備吐出の方がインクの周囲への飛散の程度が高いため、相対的に吐出周波数が相対的に低い場合に比べて印刷用紙の端部からより長い距離を指定してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では予備吐出受け部として、キャリッジの走査領域全体にわたる幅を有するものを例として取り上げたが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、印刷用紙として何種類かの定型の用紙(例えば、A3、A4、B4、B5用紙など)を用いるのであれば、走査領域の全体にわたる幅を持つ予備吐出受けではなく、これらの定型の用紙の端部から所定距離はなれた位置に対応した複数の予備吐出受けをもつ構成にしても良い。
【0074】
さて、以上の実施形態においては、記録ヘッドから吐出される液滴はインクであるとして説明し、さらにインクタンクに収容される液体はインクであるとして説明したが、その収容物はインクに限定されるものではない。例えば、記録画像の定着性や耐水性を高めたり、その画像品質を高めたりするために記録媒体に対して吐出される処理液のようなものがインクタンクに収容されていても良い。
【0075】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0076】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状をすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0077】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0078】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0079】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0080】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0081】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0082】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0083】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0084】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0085】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0086】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0087】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0088】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、記録媒体の幅に係らず、指定された位置で予備吐出が可能になるという効果がある。
【0090】
これにより、例えば、記録媒体の幅がキャリッジ走査領域の最大幅より狭い場合であっても、従来のようにその領域の端までキャリッジを移動させて予備吐出を行う必要がなく、必要最小限のキャリッジ移動で予備吐出がなされる。これにより、キャリッジ移動に関わる時間が最小限ですみ、記録実行時間を最小に抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態であるインクジェットプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1で説明したインクジェットプリンタの記録ヘッド付近を印刷用紙の搬送方向に切断した側断面図である。
【図3】インクジェットプリンタの制御回路の構成を示すブロック図である。
【図4】印刷用紙の幅が記録走査可能領域よりもかなり狭い場合の、図1に示すインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。
【図5】用紙センサによって印刷用紙の左右端を検知する動作を表した模式図である。
【図6】予備吐出動作の制御を示すフローチャートである。
【図7】従来のインクジェットプリンタの概略構成を示す斜視図である。
【図8】従来のインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。
【図9】印刷用紙の幅が記録走査可能領域よりもかなり狭い場合の、従来のインクジェットプリンタにおける記録動作および予備吐出動作の制御を示す模式図である。
【符号の説明】
103 キャリッジ
104 インクカートリッジ
104N 記録ヘッド
109a、110a 予備吐出受け
111 用紙センサ
Claims (1)
- 記録媒体上を往復走査するキャリッジに搭載された記録ヘッドからインクを吐出することで前記記録媒体上に記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記キャリッジの往路走査と復路走査との間に予備吐出を前記記録ヘッドに行わせるように制御する予備吐出制御手段と、
前記予備吐出制御手段による前記予備吐出を行う位置を、前記走査方向の前記記録媒体の端部から予め定められた距離離れた第1の位置と、前記記録媒体の端部から前記距離よりもさらに離れた第2の位置のいずれかに指定する予備吐出位置指定手段とを有し、
前記予備吐出位置指定手段は、第1のインク吐出周波数で予備吐出を行うときは前記第1の位置を指定し、前記第1のインク吐出周波数よりも高い第2のインク吐出周波数で予備吐出を行うときは前記第2の位置を指定することを特徴とするインクジェット記録装置。
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