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JP3912705B2 - ネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版 - Google Patents

ネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の印刷分野へ利用されるネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版に関する。さらに詳しくは、特にハイライト部および独立細線の再現性に優れるとともに、白抜き深度の深い解像性の良好なネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版に関する。
【0002】
【従来の技術】
書籍印刷、伝票印刷、一般印刷、シール印刷、印章用母型取り用原版、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷等の印刷分野へ利用される感光性樹脂版(印刷版)に用いられる感光性樹脂組成物として、水溶性、アルカリ可溶性、またはアルコール可溶性のネガ型感光性樹脂組成物が知られている。これら印刷版に用いられる感光性樹脂組成物には、ハイライト部および独立細線の再現性に優れ、白抜き深度が深いものが望まれている。
【0003】
特に近年、情報文化の発展とともに各種印刷物への品質向上の要求も高まり、例えばシール印刷に用いられる感光性樹脂版においては、133線/インチで2〜3%といったハイライト(ネガフィルムの遮光部と光透過部の合計面積に占める光透過部の割合が2〜3%で、遮光部が133分の1インチ幅の黒点の集合により形成されていることを示す)、線幅10〜20μm程度の微細な独立細線の再現性が要求されるなど、印刷に用いる感光性樹脂版には、ますます微細パターン再現性の向上が望まれている。
【0004】
このようなハイライト、独立細線の再現性の良好な印刷版を製造するためには、感光性樹脂版の製版時に露光量を多くし、感光性樹脂の光硬化反応を十分に行わせる必要がある。しかしながら、従来のネガ型感光性樹脂組成物では露光ラチチュード(露光幅)が十分でなく、露光量の増加に伴いネガフィルムの遮光部に対応した感光層の未露光部分での光硬化反応が進行し、白抜き画像部および網点暗部の深度が著しく浅くなるといった不具合があった。
【0005】
深度の浅い感光性樹脂版を印刷版として用いた場合、印刷時に白抜き画像部や網点暗部にインクが目詰まりし、本来白く抜ける部分がインクにより黒くつぶれて再現できなかったり、あるいは調子の暗い印刷物に仕上がってしまう等の問題を生ずる。
【0006】
そこで露光幅を広くする試みとして、感度の異なる2層構造の感光層からなる感光性樹脂版(特開昭55−6392号公報、特開平2−970号公報)、露光により光吸収性物質を生成する化合物を含有する感光性樹脂組成物(特開昭50−122302号公報)、N−ニトロソジフェニルアミンを含む感光層とミヒラーズケトンを含む接着層とからなる感光性樹脂版(特開昭57−93342号公報)等が提案されている。
【0007】
また、イソアロキサジン類、アロキサジン類の中から選ばれる化合物と、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミン、およびヒドロキノンモノメチルエーテルの中から選ばれる化合物を含有する感光性樹脂組成物(特開平3−2757号公報)、スチレン、ブタジエンブロックコポリマー等を用いた感光性組成物にアゾ染料を添加した感光性樹脂組成物(特開平5−273752号公報)、結晶性ポリマーを含有する感光性組成物を40〜120℃で熱処理することにより感光層の透明性を向上させる方法(特開昭59−123836号公報)等も提案されている。
【0008】
ネガ型感光性樹脂組成物は、基本的には被膜形成用ポリマー、ラジカル重合可能な不飽和化合物、および光重合開始剤の組み合わせからなるが、該不飽和化合物の感光性樹脂組成物からのしみ出し現象により、感光層表面が粘着性を帯びることがあり、露光時、ネガフィルム(マスクパターン)密着時に、ネガフィルムと感光層との間に閉じ込められた空気の影響を受けて画像(光硬化パターン)が不鮮明になったり、網点深度、白抜き深度が浅くなってしまう等の不具合を生じる場合がある。
【0009】
このように、微細パターンの再現は、露光時のネガフィルムと感光層表面との密着状態にも関係することから、感光層表面性状を改善することにより、微細パターンの再現性を向上しようとする試みも報告されており、例えば、感光層表面のマット化による粘着防止法(特開昭50−31488号公報、特開昭63−146045号公報、特開平5−313356号公報等)、感光層表面にネガフィルムに粘着し難い樹脂が残存するようにした粘着防止のためのスリップコート法(特開平5−232708号公報、特開平5−27419号公報、特開平4−359256号公報、特開昭51−49803号公報、特開昭58−18633号公報、特開昭57−34557号公報、特開平9−71765号公報、特開平5−297594号公報等)等が提案されている。
【0010】
また、その他に三層マットカバー等の試みも報告されている(特開昭63−259552号公報)。
【0011】
しかしながら現在の印刷業界では、従来にもましてさらに高度な品質が求められるようになっており、これらの諸要求に十分に対応し得るネガ型感光性樹脂組成物の実現には至っていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、特にハイライト部および線幅10〜20μm程度の微細な独立細線の再現性に優れるとともに、製版時に露光量を増加しても白抜き深度が浅くならず、露光幅が改善されたネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ラジカル重合型のネガ型感光性樹脂組成物に、特定の極性基をもつ化合物を所定量含有させることにより、上記課題を解決し得ること、特に、露光量を増加しても白抜き深度の深い感光性樹脂版が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、(A)ポリビニルアルコール、セルロースアセテートフタレート、8ナイロン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン/ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体の中から選ばれる少なくとも1種の被膜形成用ポリマー、(B)ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有する不飽和化合物、(C)光重合開始剤、および(D)熱重合禁止剤を含むネガ型感光性樹脂組成物において、さらに(E)下記一般式(I)
【0015】
【化2】
1−X (I)
〔式中、−Xは、−OR2、−COOH、−SO3H、−CONHR2、−COR2、−SO2NHR2、−HNCONHR2、または−HNCOOR2を表し;R1、R2は、同一であっても異なってもよく、水素原子、置換若しくは未置換の飽和または不飽和炭化水素基(ただし、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合は含まない)、置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、これらは鎖中にエーテル結合を有していてもよい。ただし、−Xが−OHの場合、R1は水素原子および芳香族炭化水素基以外の基を表す。なお式中、極性基は1個だけ含むものとする。
で表され、沸点が95℃以上である化合物の中から選ばれる少なくとも1種を、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.001〜0.3重量%の範囲で含有することを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物に関する。
【0016】
また本発明は、支持体上に、直接または接着層を介して、上記ネガ型感光性樹脂組成物からなる感光層を設けてなる感光性樹脂版に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のネガ型感光性樹脂組成物およびこれを用いた感光性樹脂版について詳述する。
【0018】
(A)被膜形成用ポリマーとしては、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコール、アルカリ可溶性ポリマーとしてセルロースアセテートフタレート、アルコール可溶性ポリマーとして8ナイロン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン/ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体が用いられる。(A)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
(A)成分の含有量は、本発明感光性樹脂組成物の全固形分中に15〜70重量%が好ましく、より好ましくは20〜65重量%、特には25〜60重量%である。上記範囲より多い場合は、未露光部分の洗い出し性能が低下したり、露光部の光硬化反応が十分に進行しない等の不具合を生じやすく、一方、上記範囲より低い場合は、感光性樹脂版が高温時に生版形態がくずれてしまうコールドフロー現象が発現する傾向がみられる。
【0024】
(B)ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有する不飽和化合物としては、感光性樹脂組成物に一般に用いられ得るものであれば特に制限されることなく用いることができる。具体的には、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシモノアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロピロールアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−プロピロールメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレート、トリアクリルホルマール、ジアクリルアミドジメチレンエーテル、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、オリゴウレタンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、およびビスエポキシ化合物とアクリル酸の付加物等が例示的に挙げられる。ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有する不飽和化合物は1種だけを用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)成分の含有量は、本発明感光性樹脂組成物の全固形分中に20〜50重量%が好ましく、より好ましくは25〜45重量%である。上記範囲より多い場合は、相分離を起こして版の保存中に滲出する傾向がみられ、一方、上記範囲より低い場合は、画像の再現性が低下する傾向がみられる。
【0026】
(C)光重合開始剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを任意に用いることができる。具体的には、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アルコキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体;キサントン、チオキサントン、2−エチルチオキサントン等のキサントン誘導体;アントラキノン、メチルアントラキノン、エチルアントラキノン、カルボキシアントラキノン、2、6−アントラキノンジスルホン酸ソーダ、2、7−アントラキノンジスルホン酸ソーダ等のアントラキノン誘導体;ベンジルジメチルケタール、アセトフエノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン等が例示的に挙げられるが、これらに限定されるものでないことはもちろんである。光重合開始剤は1種だけを用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(C)成分の含有量は、本発明感光性樹脂組成物の全固形分中に0.5〜5重量%が好ましく、より好ましくは1〜4重量%である。上記範囲より多い場合は、(C)成分自体の紫外線吸収増大により、画像下部の光硬化反応が十分に進行しなくなる等の不具合を生じやすく、一方、上記範囲より低い場合は、細線、独立点の画像再現が劣化する傾向がみられる。
【0028】
(D)熱重合禁止剤は、組成物の加熱攪拌中の重合反応を抑制するとともに、製造後の感光性樹脂版の保存安定性向上のために含有される。熱重合禁止剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを任意に用いることができる。具体的には、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン等のキノン誘導体;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール誘導体;その他ニトロベンゼンあるいはその誘導体等が例示的に挙げられるが、これらに限定されるものでないことはもちろんである。熱重合禁止剤は1種だけを用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(D)成分の含有量は、本発明感光性樹脂組成物の全固形分中に0.01〜1重量%が好ましい。上記範囲より多い場合は、感光性樹脂版使用時に感度低下をきたす等の不具合を生じやすく、一方、上記範囲より低い場合は、重合反応の抑制、保存安定性が劣化する傾向がみられる。
【0030】
(E)本発明では、上記(A)〜(D)成分に加えてさらに、下記一般式(I)
【0031】
【化3】
1−X (I)
〔式中、−Xは、−OR2、−COOH、−SO3H、−CONHR2、−COR2、−SO2NHR2、−HNCONHR2、または−HNCOOR2を表し;R1、R2は、同一であっても異なってもよく、水素原子、置換若しくは未置換の飽和または不飽和炭化水素基(ただし、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合は含まない)、置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、これらは鎖中にエーテル結合を有していてもよい。ただし、−Xが−OHの場合、R1は水素原子および芳香族炭化水素基以外の基を表す。なお式中、極性基は1個だけ含むものとする。
で表され、沸点が95℃以上である化合物の中から選ばれる少なくとも1種を、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.001〜0.3重量%、好ましくは0.002〜0.25重量%の範囲で含有させることが必要である。
【0032】
一般にラジカル重合型のネガ型感光性樹脂組成物を用いた印刷版の製造においては、画像(レリーフ)の深度および解像性は、光照射時の酸素の影響によるところが強く、これらは、露光時、支持体上に設けられた感光性樹脂組成物からなる感光層表面と、ネガフィルム(マスクパターン)との間に保持された酸素の感光層への拡散量と、感光層内部のラジカル発生量とのバランスによって決定される。
【0033】
感光層へ拡散した酸素はラジカル重合禁止剤として作用し、減感作用を示すため、ネガフィルムと感光層表面との間に保持される酸素の量が少ないと、酸素による減感作用が小さく、白抜き深度は浅くなり、一方、酸素の量が多いと、感度低下、画像部形状の劣化がみられる。
【0034】
よって、感度を損なうことなく白抜き深度を向上させるためには、ネガフィルムと感光層表面間の酸素を適度に感光層中に取り込むことが必要である。
【0035】
一方、アルコール、水、アルカリ水溶液に可溶な被膜形成用ポリマーを用いたネガ型感光性樹脂版は製造直後より3〜7日間程度経過すると「ステップ・タブレット」感度が1〜2段上昇することが経験上知られているが、これは、感光性樹脂組成物中に上記(A)成分や(B)成分中の極性基による水素結合の3次元的網目構造が形成されること、すなわち結晶化することにより、光照射時の感光層への酸素の拡散が妨げられ、酸素による減感作用が抑えられたためであると考えられる。
【0036】
本発明では、上記(E)成分を上記特定量含有させることにより、感光性樹脂組成物中の水素結合による3次元的網目構造を崩すとともに、感光層への酸素の拡散量を適度にコントロールができるようになったと考えられる。そしてこれにより、光照射時のラジカル発生量と酸素拡散量のバランスをとることができ、ハイライト部および独立細線の微細パターン再現性に優れ、特に、製版時に露光量を増加しても白抜き深度が深く、露光幅が改善されたネガ型感光性樹脂組成物が実現された。
【0037】
その理由としては、上記一般式(I)で表される化合物は、いずれもその構造中に極性基を1つだけ有し、その1つの極性基が感光性樹脂組成物中の水素結合部分に近づき、当該化合物の非極性部分が樹脂組成物の水素結合している部分に割り込むことにより、感光性樹脂組成物中の水素結合を阻害して網目構造を崩し、これにより酸素が拡散しやすくなると考えられる。そしてこの樹脂内に拡散した酸素が、露光時、光照射により発生したラジカルを捕捉することで、感光層表面の重合反応が抑えられ、露光量を増やしても深度の低下が抑えられるものと考えられる。
【0038】
本発明で挙げる極性基とは、上記した−OR2、−COOH、−SO3H、−CONHR2、−CO−R2、−SO2NHR2、−HNCONHR2、または−HNCOOR2(R2は上記で定義したとおり)であり、これらは化合物中に1つだけ存在している必要がある。極性基が2つ以上ある場合、感光性樹脂組成物中の水素結合による網目構造を補完する形となり、網目構造を崩す効果が得られないばかりか、逆に深度を浅くする結果となる。
【0039】
(E)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.001〜0.3重量%であり、好ましくは0.002〜0.25重量%である。
【0040】
(E)成分が感光性樹脂組成物に対し相容性の高いものである場合、含有量が上記範囲を超えると、未露光部の洗い出し時(現像時)に(E)成分が光硬化部(画像部)から溶出したり、また、光硬化部の強度を落とし、ブラシを用いた洗い出し時に光硬化部が傷つき、網点、細線が欠けてしまう結果となる。また、スプレー現像法では、洗い出し時にブラシを用いないため、光硬化部に傷はつかないものの、光硬化部からの(E)成分の溶出により網点ハイライト、細線が膜減り、印刷版材としての適性に劣る。
【0041】
一方、(E)成分が感光性樹脂組成物に対し相容性の低いものである場合、含有量が上記範囲を超えると、露光前に感光層から(E)成分が分離析出し、感光層を不透明にしてしまい、光の散乱を引き起こし白抜き深度を浅くする。
【0042】
また(E)成分の配合量が非常に微量であるため、(E)成分の感光層表面への移行、浮き出し現象等は観察されない。
【0043】
なお、−CONH−基、または−COOH基を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物はそれぞれ報告されているが(特開昭59−149354号公報、特開昭61−267055号公報)、これら公報に記載の添加量の範囲では、感光層への酸素の拡散量は逆に低減し、本発明の効果を得ることができない。
【0044】
上記一般式(I)で表される化合物が、その構造中にエーテル結合を有する場合、エーテル結合の数は1〜5、特に1〜3であることが好ましく、具体的にはエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル等が例示される。エーテル結合が5を超えるポリエチレングリコールのモノアルキルエーテル等は、白抜き深度を浅くする傾向がみられる。
【0045】
なお、一般に極性基として知られる−NH2、=NH等のアミノ基を含有する化合物、例えば脂肪族系アミノ基含有化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有する不飽和化合物(例えば(メタ)アクリル化合物)等とマイケル付加縮合を起こし、白抜き深度を浅くするため好ましくない。
【0046】
また、本発明で用いられる極性基のうちの1つである−OH基は、直接芳香核に結合した場合、ラジカル重合禁止剤となるので、感度低下を大きくし好ましくない。
【0047】
上記一般式(I)で表される化合物は、その分子中にラジカル重合可能なエチレン性二重結合を含有しないことが必須である。分子内にラジカル重合可能なエチレン性二重結合を含有する場合、二重結合の重合反応で網目構造を形成するとともに、極性基によって該化合物が樹脂中の水素結合に取り込まれるので、感光性樹脂組成物中の網目構造を崩す効果が得られず、樹脂内への酸素の拡散ができない。このようなラジカル重合可能なエチレン性二重結合としては、カルボニル基等の極性基に直接結合した二重結合等が挙げられ、具体的にはアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0048】
(E)成分の添加により初めて、上述した本発明の効果が奏されるが、さらに特筆すべきことは、冬季(乾燥時期)にポリビニルアルコール等の極性ポリマーを用いた感光性樹脂版が割れやすいという従来の欠点を改善できたということである。かかる効果も(E)成分の添加によって樹脂中の水素結合による網目構造を崩すことができたことによると思われる。
【0049】
上記一般式(I)で表される化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0050】
(E−1)一価アルコール類、エーテル類(−Xが−OR2の場合)
(E−1−1)アルコール類
(E−1−1−1)飽和アルコール類
1−ウンデカノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ノナノール、1−ブタノール、1−プロパノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−ペンタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2,2−ジメチルプロパノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−オクタノール、2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3,5,5,−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−エイコシルアルコール、n−オクタコシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−トリアコンチルアルコール、n−ヘキサコシルアルコール、t−イソペンチルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ペンタメチルエチルアルコール、メチルビニルカルビノール、メリシルアルコール等。
(E−1−1−2)不飽和アルコール類
(E−1−1−2−1)エチレン系不飽和アルコール類
アリルカルビノール、cis−クロチルアルコール、trans−クロチルアルコール、アリルアルコール、メチルプロペニルカルビノール、オレイルアルコール、4−ペンテン−1−オール、2−メチル−4−ペンテン−2−オール、10−ウンデセン−1−オール、9−オクタデセン−1−オール、シトロネロール、シスヘキセノール等。
(E−1−1−2−2)アセチレン系不飽和アルコール類
プロパギルアルコール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、2−ヘキシン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−ペンチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−2−オール等。
(E−1−1−2−3)ジオレフィン系不飽和アルコール類
2,4−ヘキサジエン−1−オール、3,5−ヘキサジエン−2−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、2,4−ペンタジエン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オール等。
(E−1−1−2−4)その他の不飽和アルコール類
2,4−ペンタジイン−1−オール、2,4,6−オクタトリエン−1−オール、2−メチル−5−ヘキセン−3−イン−2−オール、トリプロピニルカルビノール、2,4,6,8,10−ドデカペンタエン−1−オール、2−メチル−3−ヘキセン−5−イン−2−オール、4−ヘキセン−1−イン−3−オール、2,4,6,8−デカテトラエン−1−オール、3−ヘキセン−5−イン−2−オール、5−メチル−4−ヘキセン−1−イン−3−オール、トリ−(tert−ブチニル)カルビノール、5,7,−オクタジイン−4−オール、3,5−ヘキサジイン−2−オール等。
(E−1−1−3)鎖中にエーテル結合を有するアルコール類
2−メトキシエタノール、ポリグリコールエーテル(高級アルコールとエチレンオキシドの縮合物)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘキシルオキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等。
(E−1−1−4)芳香族炭化水素基、複素環基を有するアルコール類
テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、2−ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、2−フェノキシエタノールジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルアルコール等。
(E−1−1−5)脂環式炭化水素基を有するアルコール類
2−エチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、シクロヘキサノール等。
(E−1−2)エーテル類
メチル−n−アミルエーテル、エチル−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−n−ヘキシルエーテル、エチル−n−ヘキシルエーテル、ベンジルエチルエーテル、エチル−n−アミルエーテル、エチルネオペンチルエーテル、n−プロピルイソブチルエーテル、イソプロピル−n−ブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ベンジルエチルエーテル等。
【0051】
(E−2)一価カルボン酸類(−Xが−COOHの場合)
(E−2−1)飽和カルボン酸類
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、バレリアン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ぺラルゴン酸、カプリン酸、n−ウンデカン酸、ラウリン酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、n−ノナデカン酸、アラキジン酸、n−ヘンアイコサン酸、ベヘニン酸、n−トリコサン酸、リグノセリン酸、n−ンタコサン酸、セロチン酸、n−ヘプタコサン酸、モンタン酸、n−ノナコサン酸、メリシン酸、n−ヘントリアコンタン酸、n−ドトリアコンタン酸、n−テトラトリアコンタン酸、セロプラスチン酸、n−ヘキサトリアコンタン酸、n−オクタトリアコンタン酸、n−ヘキサテトラコンタン酸、イソ酪酸、イソバレリアン酸、メチルエチル酢酸、ピバリン酸、イソカプロン酸、β−メチルバレリアン酸、tert−ブチル酢酸、ジエチル酢酸、メチル−n−プロピル酢酸、メチルイソプロピル酢酸、ジメチルエチル酢酸、2−エチルヘキサン酸等。
なお、飽和脂肪酸では、腐食性、悪臭の問題があるので常温で固体のものが好ましく、融点が25℃以上のものが特に好ましい。
(E−2−2)不飽和カルボン酸類
ブテン酸(クロトン酸)、ブテン酸(イソクロトン酸)、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、β−メチルクロトン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、4−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、α−エチルクロトン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、4−デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、オクタデセン酸、アイコセン酸、ドコセン酸、エルカ酸、マイコペン酸、ヘキサデカトリエン酸、リノール酸、リノレン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、アイコサジエン酸、アイコサトリエン酸、ドコサジエン酸、ヘキサジエン酸等。
(E−2−3)芳香族カルボン酸類
安息香酸、トルイル安息香酸の置換体、エチル安息香酸の置換、トリメチル安息香酸の置換体、クミン酸の置換体、テトラメチル安息香酸の置換体、ペンタノメチル安息香酸、ヒドロケイ皮酸の置換体、ヒドロアトロパ酸の置換体等。
【0052】
(E−3)一価カルボン酸アミド類(−Xが−CONHR2の場合)
(E−3−1)第一アミド
アセトアミド、ホルムアミド、プロピオンアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、バレルアミド、カプロアミド、ラウルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、ベンズアミド、2−フェニルアセトアミド等前記カルボン酸のアミノ基置換の第一アミド等。
(E−3−2)一置換第一アミド
N−メチルアセトアミド、N−メチルエチルアミド、N−メチルブチルアミド、N−メチルプロピルアミド、N−メチルペンタアミド、N−メチルヘキサミド、N−メチルヘプタミド、N−メチルベンズアミド等。
【0053】
(E−4)一価ケトン類、アルデヒド類(−Xが−COR2の場合)
(E−4−1)ケトン類
(E−4−1−1)脂肪族ケトン
ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、ジ−sec−ブチルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、ジ−n−アミルケトン、ジイソアミルトン、ジ−tert−アミルケトン、テトラエチルアセトン、ジ−n−ヘキシルケトン、ジ−n−ヘプチルケトン、ジ−n−オクチルケトン、ジ−n−ノニルケトン、ジ−n−ウンデシルケトン、ジ−n−トリデシルケトン、ジ−n−ペンタデシルケトン、ジ−n−ヘプタデシルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−sec−n−アミルケトン、エチルブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ノニルケトン、メチル−n−デシルケトン、メチル−n−ウンデシルケトン、メチル−n−ドデシルケトン、メチル−n−トリデシルケトン、メチル−n−テトラデシルケトン、メチル−n−ペンタデシルケトン、メチル−n−ヘキサデシルケトン、メチル−n−ヘプタデシルケトン等。
(E−4−1−2)芳香族ケトン
フェニルアセトン、ベンジルアセトン、α−メチル−フェニルアセトン、ベンジルケトン、クロルメチルベンジルケトン、ω−フェニルアセルアセトン、ベンゾフェノン等。
(E−4−2)アルデヒド類
(E−4−2−1)飽和アルデヒド
n−バレルアルデヒド、n−ヘキサアルデヒド、n−ヘプトアルデヒド、n−ウンデカアルデヒド、ラウルアルデヒド、トリデカアルデヒド、ミリストアルデヒド、ペンタデカアルデヒド、パルミトアルデヒド、マルガルアルデヒド、ステアルアルデヒド等。
(E−4−2−2)不飽和アルデヒド
クロトンアルデヒド、ビニルアセトアルデヒド、α−メチルクロトンアルデヒド、β−メチルクロトンアルデヒド、2−メチル−ペンテナール、2−ヘキセナール、2,6−ジメチルオクタジエン−(2,6)−アル−(8)、2,4,6−オクタトリエナール、2,6,10−トリメチルドデカトリエン−(1,6,10)−アル−(1,2)、シトラール、シトロネラール、2,4,6,8−デカテトラエナール等。
(E−4−2−3)芳香族アルデヒド
ベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアデヒド、、4−ブトキシベンズアルデヒド、2−エトキシベズアルデヒド、4−エトキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド、3−フルオロベンズアルデヒド、4−イソプロピルベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、p−メチルフェニルアセトアルデヒド、ケイ皮アルデヒドp−t−ブチル−α−メチルヒドロケイ皮アルデヒド、ヘキシルケイ皮アルデヒド、p−メチルフェニルアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、p−トルアルデヒド等。
【0054】
(E−5)一価スルホン酸類(−Xが−SO3Hの場合)
メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、1−プロペン−1−スルホン酸等のアルキルスルホン酸類、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸のごときアルキルベンゼンスルホン酸類、ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、イソブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸類等。
【0055】
(E−6)一価スルホンアミド類(−Xが−SO2NHR2の場合)
前記スルホン酸類とアミノ基置換による一価スルホンアミド類が挙げられる。例えば、N−n−ブチル−p−トルエンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド等。
【0056】
(E−7)一価ペプチド類、尿素類(−Xが−HNCONHR2の場合)
(E−7−1)ペプチド類
ブタンラクタム、バレロラクタム、ε−カプロラクタム等のラクタム類等。
(E−7−2)尿素類
尿素、メトキシ尿素、エトキシ尿素、プロポキシ尿素、ブトキシ尿素、エチレン尿素、チオ尿素、メトキシチオ尿素、エトキシチオ尿素、プロポキシチオ尿素、ブトキシチオ尿素等。
【0057】
(E−8)モノウレタン(カルバミン酸エステル)類(−Xが−HNCOOR2の場合)
N−メチルカルバミン酸エチルエステル、N−フェニルカルバミン酸プロピルエステル、N−メチルカルバミン酸ナフチルエステル、エトキシメチルカルバミン酸エチルエステル、メチルウレタン、エチルウレタン、プロピルウレタン、ブチルウレタン、ベンジルウレタン等。
【0058】
なお、(E)成分は、感光層の乾燥時に感光層から揮散せず、露光時の感光層中に残存していることが必要である。このような点や臭気性等の観点から、沸点が95℃以上のものを用いる。沸点は特に好ましくは100℃以上である。
【0059】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに他の添加成分を添加することができる。このような成分の一つとして可塑剤が挙げられる。可塑剤としては特に制限されるものではないが、例えば水酸基を有する化合物、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、界面活性剤、染料等を加えることにより、種々の機能を有するネガ型感光性樹脂組成物を得ることが可能である。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、例えば以下のようにして本発明の感光性樹脂版を作成することができる。
【0061】
すなわち、まず(A)成分を溶剤に溶解し、ここに(B)〜(E)成分、さらに必要に応じて添加される他の任意添加成分を、任意の順序に添加、混合して感光性樹脂組成液とする。
【0062】
これをポリエチレンテレフタレート等の被覆材(カバーフィルム)上に、感光性樹脂組成物を、カーテンフローコーター、ドクターブレード、リバースコーター等の塗布装置によって塗布、乾燥して、膜厚0.45〜0.8mm程度の感光層を形成する。
【0063】
一方、ポリエステル等のフィルムベース(支持体上)に接着層を設け、これをホットプレート等で加熱処理し、接着層を半硬化状態にする。
【0064】
そして、この半硬化状態になった接着層上に感光層を圧着することによって本発明の感光性樹脂版(生版)が製造される。
【0065】
なお接着層は、ポリエステル系、エポキシ系等の従来公知の接着剤を用いることができる。また、接着層を介さずに感光層を支持体上に直接設けてもよい。
【0066】
このようにして得られた感光性樹脂版(生版)上への光硬化画像形成過程は常法により行うことができ、用いる感光性樹脂組成物に応じ、現像条件、露光条件等、適宜、変更し得る。具体的には、例えば、感光層上からカバーフィルムを剥離した後、これにネガマスクを介して、例えば10〜50W出力程度のケミカルランプを用い、25〜50mmの距離から約2〜15分間露光を行う。次いで、ブラシ等を使用して未露光部分を溶解する溶剤による洗い出しにより未露光部分を除去し、その後70〜90℃で約2〜10分間乾燥を行い、所望により上記のケミカルランプで後露光を約5〜10分間程度行うことにより、光硬化画像の形成された感光性樹脂版(製版)を得ることができる。
【0067】
なお、感光層のマット化、感光層表面にスリップコートを形成する、あるいは粘着防止層を形成する、等の公知の各技術と本発明とを併用することにより、本発明の上記した特有の効果に加えて、これら各技術の効果を有効に併せもつことができる。
【0068】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0069】
実施例に先立ち、本実施例で用いた評価試験方法を示す。
【0070】
[感度評価]
コダック社製「ステップタブレットNo.2」を用い、光硬化部が形成されたステップ段数により評価した。
【0071】
[白抜き深度評価]
150μm独立細線の白抜き画線深度の深さ(μm)により評価した。
【0072】
[ハイライト部再現性評価]
133線/インチ、3%の網点再現性により評価した。
【0073】
なお、以上の評価はすべて、露光量の多い場合の特性を示すために、露光時間を5分間で製版したものと、10分間で製版したものとの2通りについて行った。
【0074】
(比較例1)
(1)感光性樹脂組成物の調製
水200重量部に(A)成分としてポリビニルアルコール(ケン化度70%、重合度500)200重量部を溶解し、次いで(B)成分としてポリエチレングリコールジアクリレート70重量部、(C)成分としてベンジルジメチルケタール4重量部、(D)成分としてメチルヒドロキノン0.1重量部を添加して水溶性感光性樹脂組成物を調製した。
【0075】
(2)感光性樹脂版の製造
上記水溶性感光性樹脂組成物をポリエステルフィルム(カバーフィルム)に塗布、乾燥し、膜厚0.7mmの感光層を形成した。次いで、これにベースを接着して感光性樹脂版(生版)とした。
【0076】
(3)製版
上記感光性樹脂版(生版)からカバーフィルムを剥離し、これにマスクを介し20Wケミカルランプを用い45mmの距離から5分間の露光を行い、次いでブラシを使用して35℃の水による洗い出しにより、未露光部分を除去し、80℃で5分間乾燥して製版を行った。
【0077】
また、上記露光時間を5分間から10分間に代えて、同様の操作で製版を行った。
【0078】
上記方法により得た感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例1〜9)
表1に記載の(E)成分を添加した以外は、比較例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
なお、表1〜2中の(E)成分の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分100重量部中に占める含有量を示す。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、ステアリルアルコールをジエチレングリコールに代えた以外は実施例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて得られた感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例3)
実施例1において、ステアリルアルコールをトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートに代えた以外は実施例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例10〜12)
実施例1において、ステアリルアルコールの添加量を表1に記載のように代えた以外は実施例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例4)
実施例1において、ステアリルアルコールの添加量を表1に記載のように代えた以外は実施例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例13〜29)
実施例1において、(E)成分を表1に記載の化合物に代えた以外は実施例1と同様にして水溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0086】
(比較例5)
比較例1において(A)成分をセルロースアセテートフタレートに代え、水200gをMEK200gにした以外は比較例1と同様にしてアルカリ可溶性感光性樹脂組成物を調製した。
【0087】
また、露光後の洗い出し液を水から2%炭酸ソーダ水溶液に代えた以外は比較例1と同様にして感光性樹脂版を製造した。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
(実施例30)
表2に記載の(E)成分を添加した以外は、比較例5と同様にしてアルカリ可溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例6)
比較例1において(A)成分を8ナイロンに代え、水200gをメタノール250gにした以外は比較例1と同様にしてアルコール可溶性感光性樹脂組成物を調製した。
【0090】
また、露光後の洗い出し液を水からメタノール溶液に代えた以外は比較例1と同様にして感光性樹脂版を製造し、これについて上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
(実施例31)
表2に記載の(E)成分を添加した以外は、比較例6と同様にしてアルコール可溶性感光性樹脂組成物を調製し、これを用いて感光性樹脂版を得た。この感光性樹脂版について、上記の感度評価、白抜き深度評価、ハイライト部再現性評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
【表1】
Figure 0003912705
【0093】
【表2】
Figure 0003912705
表1〜2に示すように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、いずれも133線/インチ、3%の網点再現性は90%以上であり、ハイライト部の再現性に優れていることが証明された。
【0094】
また、感度評価および白抜き深度評価では、比較例と同程度の感度を有しながら深度が深く、解像性に優れた結果となった。
【0095】
さらに、露光時間を5分から10分に代えた評価からは、本発明の感光性樹脂組成物が露光時間を多くした場合においても深度が深く、解像性に優れていることが証明された。
【0096】
また、比較例で作成した版と実施例で作成した版を用い印刷をして比較したところ、実施例の版は比較例の版に比して白抜き画線が明瞭な品質のよい印刷物を得ることができた。
【0097】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、種々の印刷分野へ利用される印刷用感光性樹脂版の製造に有用な、水溶性、アルカリ可溶性、またはアルコール可溶性のネガ型感光性樹脂組成物が得られる。またこれを用いて、特にハイライト部および独立細線の再現性に優れているとともに白抜き深度の深い解像性の良好な感光性樹脂版の製造が可能となった。

Claims (2)

  1. (A)ポリビニルアルコール、セルロースアセテートフタレート、8ナイロン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン/ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸/ε−カプロラクタム共重合体の中から選ばれる少なくとも1種の被膜形成用ポリマー、(B)ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を有する不飽和化合物、(C)光重合開始剤、および(D)熱重合禁止剤を含むネガ型感光性樹脂組成物において、さらに
    (E)下記一般式(I)
    Figure 0003912705
    〔式中、−Xは、−OR2、−COOH、−SO3H、−CONHR2、−COR2、−SO2NHR2、−HNCONHR2、または−HNCOOR2を表し;R1、R2は、同一であっても異なってもよく、水素原子、置換若しくは未置換の飽和または不飽和炭化水素基(ただし、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合は含まない)、置換若しくは未置換の脂環式炭化水素基、置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、これらは鎖中にエーテル結合を有していてもよい。ただし、−Xが−OHの場合、R1は水素原子および芳香族炭化水素基以外の基を表す。なお式中、極性基は1個だけ含むものとする。
    で表され、沸点が95℃以上である化合物の中から選ばれる少なくとも1種を、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.001〜0.3重量%の範囲で含有することを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物。
  2. 支持体上に、直接または接着層を介して、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物からなる感光層を設けてなる、感光性樹脂版。
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