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JP3993697B2 - 微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトおよびその製造方法 - Google Patents

微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れたガス吸着性能、特に窒素吸着性能に優れ、酸素と窒素の混合ガスから吸着法によって酸素を分離濃縮するゼオライト吸着分離剤として有用な、SiO2/Al23モル比が1.9〜2.1の高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
SiO2/Al23モル比が1.9〜2.1の低シリカフォージャサイト型ゼオライト(以下、「LSX」という)の製造方法については種々の方法が開示されている。例えば、特開昭53−8400号公報にはナトリウム、カリウム、アルミネート、及びシリケートを含む混合物を50℃以下の温度で結晶化するか、あるいは50℃以下の温度で15時間から72時間と極めて長い時間熟成し、ついで60〜100℃の温度範囲で結晶化する方法が開示されているが、高純度で微細なLSXを得る方法についての記述はない。
【0003】
ZEOLITES,7巻,September,451〜457頁(1987年)には、原料のSiO2/Al23モル比、K/(Na+K)のモル比、アルカリ濃度、熟成条件、結晶化条件が低シリカフォージャサイト型ゼオライトの生成に与える影響について詳細に開示されており、熟成・結晶化はシールされたプラスチック容器で行われている。このなかで、K/(Na+K)のモル比が生成するLSXの粒子径に及ぼす効果が開示されており、K/(Na+K)のモル比が小さくなるほど生成するLSXの粒径が小さくなり、モル比が0.20では2μm以下のLSXが生成することが示されている。モル比をさらに低下させることにより微細なLSXを合成することが可能となると考えられるが、モル比をさらに低下させた場合A型ゼオライトが副生するため、高純度で微細なLSXを得ることは困難である。
【0004】
また、特公平5−25527号公報には、ナトリウム、カリウム、アルミネートを含む混合物とシリケートを含む混合物を4〜12℃という低温で混合、ゲル化し、次いでこのゲルを36℃で48時間熟成した後、70℃に昇温し結晶化する方法が開示されており、最終混合における冷却及び過大な機械的エネルギー発生の回避が重要であると明示されているが、高純度で微細なLSXを得る方法についての記述はない。
【0005】
以上のように従来の技術では、高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトを得ることは極めで困難である。
【0006】
また、低シリカフォージャサイト型ゼオライトの製造は、ナトリウム、カリウム、アルミネートを及びシリケートを含む溶液を低温で混合し、ゲル化させた後は、静置状態で長時間熟成し、さらに静置状態で結晶化温度まで昇温・結晶化することが必須の条件であると考えられてきた。しかし、原料を低温まで冷却することは工業的に不利であり、さらに、ゲルは伝熱特性が極めて悪いために、大規模での合成においては静置状態で温度の均一化に非常に長時間を必要とするという困難さがあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記記載の背景において、従来知られていなかった高純度で微細なLSXを提供することにあり、さらに高純度で微細なLSXを短時間に合成する方法、特に高純度で微細なLSXを大規模で短時間に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高純度で微細なLSXを大規模に、連続的かつ安定的に合成する方法について鋭意検討した結果、以下の点を見い出し本発明を完成するに至った。すなわち、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液を混合し、ゲル化し、その後、熟成、結晶化を行うことによりSiO2/Al23モル比が1.9〜2.1のLSXを製造する方法において、ゲル化後または熟成の初期に、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間範囲内で熟成を行った10〜20Na2O・Al23・5〜20SiO2・100〜250H20の組成を有する溶液を、生成する低シリカフォージャサイト型ゼオライトに対しAl23基準で0.03%以上10%以下反応容器に加えることで、高純度で微細なLSXを合成することができ、さらに驚くべことにこの方法を用いた場合、極めて短時間の熟成時間で高純度なLSXを合成することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
なお、本発明における低シリカフォージャサイト型ゼオライトのSiO2/Al23モル比は理論的には2.0であるが、化学組成分析の測定上の誤差等を考慮した場合、1.9〜2.1の組成の低シリカフォージャサイト型ゼオライトが本発明の範囲に入ることは明らかである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明における第1の発明は、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液を混合し、ゲル化し、その後、熟成、結晶化を行うことによりSiO 2 /Al 2 3 モル比が1.9〜2.1の低シリカフォージャサイト型ゼオライトを製造する方法において、ゲル化後及び/又は熟成の初期に、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間範囲内で熟成を行った10〜20Na 2 O・Al 2 3 ・5〜20SiO 2 ・100〜250H 2 Oの組成を有する溶液を、生成する低シリカフォージャサイト型ゼオライトに対しAl 2 3 基準で0.03%以上10%以下加えることを特徴とする製造方法により得られ、X線回折法においてフォージャサイト単相であり、SiO2/Al23モル比が1.9〜2.1であり、Na型としたときの水分吸着量が35.0%以上であり、かつ、一次粒子径が0.05μm以上1.0μm未満であることを特徴とする高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトである。
【0012】
ゼオライトの純度を求めるためにX線回折法を用いることは一般的に行われている。LSXの合成時に副生する不純物としてはA型ゼオライトやソーダライト、Breck「Zeolite Molecular Sieves」Krieger1974の144ページに示されているF型ゼオライト、356ページに示されているE型ゼオライト等がある。本発明における高純度なLSXの特徴の一つは、X線回折法においてフォージャサイト単相であり、上記した不純物を含まないことにある。
【0013】
しかし、不純物の結晶性が悪い場合や、微量の不純物が複数存在する場合は、若干の純度の低下があってもX線回折法では不純物のピークが現れないため、X線回折においてフォージャサイト単相であることは、純度が高いことを特徴づけるための、必要条件の1つにすぎない。
【0014】
一方、純粋なゼオライトの水分吸着量はゼオライトの種類とそのカチオンの種類により一定の値を示す。例えば、ナトリウム型のA型ゼオライトではゼオライト100gに対し28gの水を吸着し、ナトリウム型のF型ゼオライトではゼオライト100gに対し27gの水を吸着する。一方、ナトリウム型のLSXは、ゼオライト100gに対し36gの水を吸着し、不純物として生じやすいゼオライトよりも水分吸着量が多い。従って、合成したLSXは水分吸着量をもとに純度を推定することが可能である。本発明における高純度なLSXは、X線回折においてフォージャサイト単相であるだけでなく、Na型としたときの水分吸着量が35.0%以上、より好ましくは35.5%以上の値を示すことが特徴である。
【0015】
ゼオライトをSEMにより観察した場合、ゼオライト粒子の最小単位である一次粒子単独、あるいは複数の一次粒子が凝集した二次粒子で存在する。一般にゼオライトの一次粒子はその種類によって形状が決まっている。例えばA型ゼオライトであれば立方体であり、また、フォージャサイト型ゼオライトでは8面体あるいは球状でかどが発達した多面体の形状をしている。
【0016】
通常これらの粒子の粒子径はある値を中心に分布をもっている。分布を持った粒子から平均粒子径を求める方法としては、たとえば、三輪茂雄著「粉体工学通論」1981年日刊工業新聞社発行1〜30ページに詳細に述べられている。本発明における一次粒子径とは、SEMで観察されるフォージャサイト型ゼオライトの一次粒子を球に近似しその直径の個数平均粒子径いう。
【0017】
本発明におけるLSXは、高純度であるだけでなく、その微細な一次粒子径に特徴がある。本発明におけるLSXは一次粒子径が0.05μm以上1μm以下であり従来知られていなかった微細な一次粒子径である。従来より知られていた、LSXの一次粒子径は3〜5μmであり、また、小さいものでも1μm以上の粒径であった。本発明における高純度で微細なLSXは、例えば種々の物質の吸着剤として用いた場合、内部への拡散が容易となるために各種動的特性の改善が期待できる。
【0018】
本発明においては、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液を混合し、ゲル化し、その後、熟成、結晶化を行うことによりSiO2/Al2O3モル比が1.9〜2.1の低シリカフォージャサイト型ゼオライトを製造する方法において、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間範囲内で熟成を行った10〜20Na2O・Al2O3・5〜20SiO2・100〜250H2Oの組成を有する溶液を、生成する低シリカフォージャサイト型ゼオライトに対しAl2O3基準で0.05%以上10%以下加えることを特徴とする高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトの製造方法をも包含する。
【0019】
本発明における、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液を混合、ゲル化、熟成し、結晶化を行いLSXを製造する方法としては、ナトリウム、カリウム、アルミネート及びシリケートの各イオンを含有する溶液を、ゲル化開始後の粘度を10〜10000cpになるように保ち熟成し、その後結晶化を行う方法、あるいは、アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液を20〜60℃の温度で混合、ゲル化して、ゲル化開始後粘度が10〜10000cpのスラリーを調製した後、熟成し、その後結晶化を行う方法を用いることが望ましい。なぜならば、この方法以外ではLSXを工業的に有利で規模の拡大が容易な条件で合成することが困難であるためである。
【0020】
本発明者らは、上記した方法において、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間で熟成を行った10〜20Na2O・Al23・5〜20SiO2・100〜250H2Oの組成を有する溶液を、ゲル化後または熟成の初期に加えることにより、驚くべきことに従来知られていなかった、高純度で微細なLSXを合成することが可能となること、さらに極めて短時間の熟成時間でLSXが生成することを見いだし、本発明を完成させた。
【0021】
なお、本発明において、10〜20Na2O・Al23・5〜20SiO2・100〜250H2Oの組成を有する溶液を単に「加える溶液」と略して使用する。
【0022】
この「加える溶液」の組成は、10〜20Na2O・Al23・5〜20SiO2・100〜250H2Oの範囲にあることが必須である。なぜならば、加える溶液の組成がこの範囲を外れた場合、高純度で微細なLSXを合成するためには長時間の熟成時間が必要となるために好ましくなく、また、不純物が生じやすくなる可能性もあるからである。
【0023】
「加える溶液」は、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間で熟成を行っておく必要がある。熟成を行った加える溶液中にはProc.7th Int Conf. Zeolites,ページ185〜192 1986年に記載されているようにSiO2/Al23モル比が2.4前後の微細なX型ゼオライトの微小結晶が生成していると考えられる。本発明において原因は不明であるが、「加える溶液」に含まれるこの様な微細なX型ゼオライトの微小結晶が何らかの作用を行い、高純度で微細なLSXを短時間の熟成時間で合成することを可能としたものと推定される。
【0024】
また、「加える溶液」の添加時期としては、ゲル化終了後、すなわちアルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液の混合が終了した時点で加えることが最も好ましいが、若干の添加の遅れは問題ではなく、ゲル化終了後及び/又は生成したゲルを熟成する際の熟成工程の初期に加える。この時期に溶液を加えることにより、短時間の熟成時間で高純度で微細なLSXを合成することができる。
【0025】
さらに本発明者らは「加える溶液」の量に関し詳細に検討を行った結果、驚くべきことに非常に小量より効果を示すことを見いだした。「加える溶液」の量が生成するLSXに対しAl23基準で0.03%以上あれば、短時間の熟成時間で高純度で微細なLSXを合成することができる。加える溶液の量が多いと、同じ熟成条件では粒子径が小さくなり、また、同じ粒子径を得るための熟成時間を短縮することができる。しかし、「加える溶液」の量が生成するLSXに対しAl23基準で10.0%を越えた場合、工業的にLSXを生産する場合、大がかりな投入設備が必要となるだけでなく、得られるフォージャサイト型ゼオライトの組成がSiO2/Al23モル比で1.9〜2.1の範囲から外れ、LSXとならなくなる可能性があり好ましくない。
【0026】
「加える溶液」を加えた後、引き続き熟成を行う。熟成は静置状態あるいは撹拌状態のどちらで行ってもよいが、高純度で微細なLSXを短時間の熟成時間で得るためには撹拌状態で行うことが必要である。静置状態で熟成を行った場合、高純度で微細なLSXを得るためには、長時間の熟成時間が必要となるためである。従来の知見では熟成及び結晶化は静置あるいは静置に近い状態で行うことが必要と考えられてきた。ところが、本発明においてはこの知見とはとはまったく逆の傾向、すなわち熟成時の撹拌が強力であるほど高純度で微細なLSXが生成しやすくなり、従来技術では不可能とされていた短時間の熟成時間でLSXを得ることが可能となる。本発明において熟成時の撹拌は一般に知られているプロペラやタービン、パドルといった撹拌羽根を用いて行うことができる。撹拌は強力であればあるほどよく、最低でも反応槽中にスラリーの停滞部分があると好ましくない。具体的な撹拌の強さとしては、化学工学で定義されている「スラリー単位体積当たりの撹拌所要動力:単位kW/m3」を用いて表現することができ、最低でも0.1kW/m3以上の撹拌の強さが必要であり、好ましくは0.2kW/m3以上、より好ましくは0.4kW/m3以上、さらに好ましくは化学工学において強い撹拌と呼ばれている0.8kW/m3以上の撹拌を行うことが望ましい。また、撹拌は強ければ強いほうがよいが、強い撹拌を行うためには強力なモーターが必要となるため、例えば、工業的に可能な3.0kW/m3程度をスラリー単位体積当たりの撹拌所要動力の上限として例示することができる。
【0027】
本発明における熟成時間としては、「加える溶液」の量や熟成時の温度、撹拌強度等により変化するため一義的に決めることはできないが、本発明の主旨、すなわち、高純度で微細なLSXを短時間に合成する方法を提供することより考えた場合、長時間の熟成時間は意味がなく、少なくとも24時間以下であることが好ましく、より好ましくは15時間以下、さらに好ましくは12時間以下の熟成時間とすることがよい。
【0028】
また、驚くべきことに本発明を用いた場合、従来のLSXの合成において高純度なLSXを得ることは不可能とされてきた短時間の熟成時間、すなわち0.5h以上10h以下であっても、加える溶液の量や熟成温度、撹拌強度しだいでは、高純度で微細なLSXを合成することが可能となる。
【0029】
次に、所定の時間熟成したスラリーを結晶化の温度まで昇温する。本発明の方法により熟成したスラリーからはLSXが生成しやすく、昇温は一般に知られている方法であればどの様な方法でも用いることができる。ラボであれば撹拌を続けながら反応容器を入れたウォーターバスごと昇温してもよいし、また、反応容器を所定の温度に保った乾燥器等に入れることにより昇温してもよい。また、プラントであれば、化学工学で知られている通常の操作、例えば、伝熱を良くするために撹拌を継続しながら反応容器に付属しているジャケット等の熱交換器にスチームあるいは熱媒体を通し昇温する方法を例示することができる。また、昇温に必要な時間も特に限定されず、0.5〜5時間を例示することができる。
【0030】
本発明の方法により熟成したスラリーからは微細で高純度なLSXが生成しやすく、結晶化は従来より知られていた静置下での結晶化は必要条件ではなく、撹拌下で結晶化を行ってもよいし、静置下で行ってもよい。結晶化温度は、従来より知られているLSXの結晶化温度を用いることができ、例えば60〜100℃の温度を例示することができる。また、結晶化の時間としては、熟成の条件や組成、結晶化温度により一定しないが、2〜12時間程度で十分であり、これ以上の時間をかけてもよい。
【0031】
以上のようにして、製造したSiO2/Al23モル比が1.9〜2.1の高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトを、濾過、洗浄し、乾燥する。濾過、洗浄、乾燥の方法としては公知の方法を用いることができる。
【0032】
本発明の方法により得られるLSXは、粘土バインダー等を用いて例えば球状や柱状のペレットに成形したのち、LiイオンやCaイオン等で交換し、例えば400℃で1時間程度活性化すれば、高い吸着性能を有した吸着分離剤となり、その優れたガス吸着性能、特に窒素吸着性能に優れていることから、酸素と窒素の混合ガスから吸着法によって酸素を分離濃縮するゼオライト吸着分離剤として好適に用いられる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例において本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
尚、実施例における各測定方法は以下の通りである。
【0035】
(1)化学組成の測定方法
試料を硝酸とフッ酸を用い溶解した後、ICP発光分析装置(パーキンエルマー社製、型式:optima 3000)を用い、Na、K、Al、Siを測定し、これらをそれぞれ、Na2O、K2O、Al23、SiO2に換算して求めた。
【0036】
(2)結晶構造の測定方法
X線回折装置(マックサイエンス社製、型式:MXP−3)を用い測定した。
(3)粒子の観察方法
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:JSM−T220A、以下SEMと略記する)を用い測定した。
【0037】
(4)水分平衡吸着量の測定方法
100℃で乾燥した粉末を相対湿度80%のデシケーター中で16時間以上放置し、900℃1時間強熱し測定した。すなわち、水分吸着後の重量をX1、これを900℃1時間強熱した後の重量をX2とし、水分平衡吸着量(%)は以下の式から求めた。
【0038】
水分平衡吸着量(%)={(X1−X2)/X2}×100として求めた。
【0039】
(5)Na型LSXへのイオン交換方法
ZEOLITES,7巻,September,456頁(1987年)に記載されている方法で行った。水酸化ナトリウムを加えpH=12に調製した1mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を、LSX1mol当たり塩化ナトリウムが1molとなるように加え、バッチ式で室温でイオン交換した。この操作を5回行った。
【0040】
実施例1
「加える溶液」の調製
内容積0.5リットルのポリエチレン製反応容器にアルミン酸ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%、Al23=22.5重量%)36g、水酸化ナトリウム(純度99%)66g、純水120gを加え撹拌溶解しウォーターバスを用いて40℃に保った。この溶液に3号ケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O=9.3重量%、SiO2=28.9重量%)166gを加え40℃で60分熟成を行った。このときの「加える溶液」の組成は15.0Na2O・Al23・10.0SiO2・180H2Oである。
【0041】
LSXの合成
内容積3リットルのステンレス製反応容器にケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O=3.8重量%、SiO2=12.6重量%)896g、水777g、水酸化ナトリウム(純度99%)231g、工業用水酸化カリウム水溶液(純度48%)455gを入れ250rpmで撹拌しながらウォーターバスを用い40℃に保った。この溶液に40℃に保ったアルミン酸ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%、Al23=22.5重量%)462gを1分かけて投入した。
【0042】
投入直後より白濁しゲル化が始まった。投入終了直前、ゲル全体の粘度は上昇し、反応容器上部でゲルの部分的な停滞が生じかけたものの約1分後には全体が均一に流動化した。スラリー全体が均一に流動化した時点で、上記した「加える溶液」を25g添加した。このときの「加える溶液」の量は、生成するLSXに対し、Al23基準で0.5重量%である。このまま250rpmで撹拌を継続し40℃で4時間熟成を行った。攪拌モーターにかかるトルクをもとに熟成中のスラリーの単位体積当りの攪拌所要動力を計算したところ、0.4kW/m3であった。
【0043】
熟成後、撹拌を継続しながら1時間かけて70℃に昇温した。昇温後撹拌を停止し、70℃で4時間結晶化を行った。得られた結晶を濾過し、純水で十分に洗浄した後、70℃で1晩乾燥した。
【0044】
得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成分析の結果、このものの化学組成は0.71Na2O・0.29K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸着量は34.2%であった。得られた粉末をSEMで観察した結果、一次粒子径は0.2μmの微細なLSXであった。そのSEM写真(倍率=5,000倍)を図1に示した。 また、Na型にイオン交換し水分吸着量を求めたところ37.0%であった。 実施例2
LSXの合成
内容積3リットルのステンレス製反応容器にケイ酸ナトリウム水溶液(Na2O=3.8重量%、SiO2=12.6重量%)917g、水749g、水酸化ナトリウム(純度99%)231g、工業用水酸化カリウム水溶液(純度48%)446gを入れ250rpmで撹拌しながらウォーターバスを用い40℃に保った。この溶液に40℃に保ったアルミン酸ナトリウム水溶液(Na2O=20.0重量%、Al23=22.5重量%)458gを1分かけて投入した。
【0045】
投入直後より白濁しゲル化が始まった。投入終了直前、ゲル全体の粘度は上昇し、反応容器上部でゲルの部分的な停滞が生じかけたものの約1分後には全体が均一に流動化した。スラリー全体が均一に流動化した時点で、実施例1と同じ方法で調製した「加える溶液」を5g添加した。このときの「加える溶液」の量は、生成するLSXに対し、Al23基準で0.1重量%である。このまま250rpmで撹拌を継続し40℃で4時間熟成を行った。攪拌モーターにかかるトルクをもとに熟成中のスラリーの単位体積当りの攪拌所要動力を計算したところ、0.4kW/m3であった。
【0046】
熟成後、撹拌を継続しながら1時間かけて70℃に昇温した。昇温後撹拌を停止し、70℃で4時間結晶化を行った。得られた結晶を濾過し、純水で十分に洗浄した後、70℃で1晩乾燥した。
【0047】
得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォージャサイト型ゼオライト単相であり、また組成分析の結果、このものの化学組成は0.71Na2O・0.29K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸着量は33.8%であった。得られた粉末をSEMで観察した結果、一次粒子径は0.4μmの微細なLSXであった。そのSEM写真を図2(倍率=5,000倍)に示した。また、Na型にイオン交換し水分吸着量を求めたところ36.7%であった。
【0048】
比較例1
「加える溶液」を加えなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0049】
得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォージャサイト型ゼオライトが主成分であり、痕跡量のA型ゼオライト、F型ゼオライト、E型ゼオライト、同定不明相が観察された。また組成分析の結果、このものの化学組成は0.73Na2O・0.27K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸着量は32.6%であった。得られた粉末をSEMで観察した結果、一次粒子径が約10μmのLSX以外に不純物相が目立った。
【0050】
また、Na型にイオン交換し水分吸着量を求めたところ34.9%であった。
【0051】
比較例2
熟成時間を24時間とした以外、比較例1と同様の操作を行った。
【0052】
得られた結晶粉末の構造は、X線回折の結果フォージャサイト型ゼオライト単相であり、このものの化学組成は0.73Na2O・0.27K2O・Al23・2.0SiO2であり、水分平衡吸着量は33.3%であった。得られた粉末をSEMで観察した結果、不純物相がわずかに見られ、一次粒子径も約5μmと大きいLSXであった。そのSEM写真を図3(倍率=5,000倍)に示した。
【0053】
また、Na型にイオン交換し水分吸着量を求めたところ35.8%であった。
比較例1、2で示されるように、本発明以外の方法でも高純度のLSXを得ることは可能であるが、長時間の熟成を必要とするため、生産性に乏しいものであり、また得られるLSXも本発明のものとは異なるものである。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度で微細なLSXを提供することができ、さらに反応工程中長時間を要していた熟成工程の時間を短縮できるために高純度で微細なLSXを大規模で短時間に製造することができ、工業的に有用な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた粉末の結晶の構造をSEMを用い、5000倍の倍率で観察した写真である。
【図2】実施例2で得られた粉末の結晶の構造をSEMを用い、5000倍の倍率で観察した写真である。
【図3】比較例2で得られた粉末の結晶の構造をSEMを用い、5000倍の倍率で観察した写真である。

Claims (3)

  1. アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液を混合し、ゲル化し、その後、熟成、結晶化を行うことによりSiO 2 /Al 2 3 モル比が1.9〜2.1の低シリカフォージャサイト型ゼオライトを製造する方法において、ゲル化後及び/又は熟成の初期に、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間範囲内で熟成を行った10〜20Na 2 O・Al 2 3 ・5〜20SiO 2 ・100〜250H 2 Oの組成を有する溶液を、生成する低シリカフォージャサイト型ゼオライトに対しAl 2 3 基準で0.03%以上10%以下加えることを特徴とする製造方法により得られ、X線回折法においてフォージャサイト単相であり、SiO2/Al23モル比が1.9〜2.1であり、Na型としたときの水分吸着量が35.0%以上であり、かつ、一次粒子径が0.05μm以上1.0μm未満であることを特徴とする高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライト。
  2. アルミネートを含む溶液とシリケートを含む溶液及び水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとからなるアルカリ溶液を混合し、ゲル化し、その後、熟成、結晶化を行うことによりSiO2/Al23モル比が1.9〜2.1の低シリカフォージャサイト型ゼオライトを製造する方法において、ゲル化後及び/又は熟成の初期に、あらかじめ10℃以上60℃以下の温度で10分以上3時間以下の時間範囲内で熟成を行った10〜20Na2O・Al23・5〜20SiO2・100〜250H2Oの組成を有する溶液を、生成する低シリカフォージャサイト型ゼオライトに対しAl23基準で0.03%以上10%以下加えることを特徴とする請求項1記載の高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトを製造する方法。
  3. 請求項2に記載の高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトの製造方法において、熟成の間、攪拌を実施することを特徴とする高純度で微細な低シリカフォージャサイト型ゼオライトの製造方法。
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