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JP3988446B2 - 電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラム - Google Patents

電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電動車両としての電気自動車に搭載され、電動機械としての駆動モータのトルク、すなわち、駆動モータトルクを発生させ、該駆動モータトルクを駆動輪に伝達するようにした車両駆動装置において、駆動モータは、力行(駆動)時に、バッテリから直流の電流を受けて駆動され、前記駆動モータトルクを発生させ、回生(発電)時に、電気自動車のイナーシャによってトルクを受け、直流の電流を発生させ、該電流をバッテリに供給するようになっている。
【0003】
また、電動車両としてのハイブリッド型車両に搭載され、エンジンのトルク、すなわち、エンジントルクの一部を発電機(発電機モータ)に、残りを駆動輪に伝達するようにした車両駆動装置においては、サンギヤ、リングギヤ及びキャリヤを備えたプラネタリギヤユニットを有し、前記キャリヤがエンジンと、リングギヤが駆動輪と、サンギヤが発電機と連結され、前記リングギヤから出力されたリングギヤトルク及び駆動モータトルクを駆動輪に伝達して駆動力を発生させるようにしている。
【0004】
ところで、前記車両駆動装置においては、いずれも、駆動モータを駆動することによって電動車両を走行させるに当たり、駆動モータ回転速度と駆動モータトルクとの積で表される駆動モータの機械的な出力を一定にすることによってバッテリから駆動モータに供給される電気的な出力を一定にし、バッテリを保護するようにしているが、その場合、アクセルペダルの位置(踏込量)を表すアクセルペダル位置を一定にしたとき、車速に対して車両の駆動力が反比例又は逆比例の関係になるように車両に要求されるトルク、すなわち、車両要求トルクが設定され、該車両要求トルクに基づいて更に駆動モータトルクの目標値を表す駆動モータ目標トルクが設定され、駆動モータが駆動されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の車両駆動装置においては、電動車両の周囲の環境等によって、電動車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクが敏感になると、駆動モータ目標トルクが微小変動を繰り返し、駆動モータに振動が発生し、運転者に不快感を与えてしまう。
【0006】
例えば、図14に示されるように、車速Vに対して電動車両の駆動力が、例えば、各アクセルペダル位置APを一定にしたときの車速Vと車両要求トルクTO* との関係を表すライン、すなわち、車速・車両要求トルク線上の領域Ar1、Ar3において反比例の関係になるように、領域Ar2、Ar4において逆比例の関係になるように車両要求トルクTO* が設定され、該車両要求トルクTO* に基づいて更に駆動モータ目標トルクTM* が設定され、駆動モータ25が駆動されるようになっている。
【0007】
そして、領域Ar1、Ar3においては、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が反比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動する。また、前記領域Ar2、Ar4においては、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が逆比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動する。
【0008】
そして、領域Ar3、Ar4においては、アクセルペダル位置APが比較的小さいので、車速Vの微小変動に基づいて駆動モータ目標トルクTM* が微小振動し、電動車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になり、駆動モータに振動が発生してしまう。
【0009】
また、車速Vが低いと、運転者は駆動モータに発生した振動を感じ、運転者に不快感を与えてしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の車両駆動装置の問題点を解決して、電動機械に振動が発生することがなく、運転者に不快感を与えることがない電動車両駆動制御装置、電動車両駆動制御方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そのために、本発明の電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、車速を検出する車速検出部と、前記車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出部と、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて前記電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う演算処理手段とを有する。
そして、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定される。
【0013】
本発明の他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記減速用変換線の演算用車速は、前記増速用変換線の演算用車速より高く設定される。
【0014】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記増速用変換線は、車速と演算用車速とが等しくされる直線で表される。
【0015】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記減速用変換線は、所定の車速より低い領域において、車速が零(0)のときに、演算用車速が零になるように収束させられる。
【0017】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記演算用車速算出処理手段は、エンジン負荷を一定にしたときの所定の領域において演算用車速を算出する。
【0019】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、前記電動機械はエンジンと機械的に連結される。
【0020】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、エンジンと機械的に連結された第1の電動機械と、駆動輪と機械的に連結された第2の電動機械とを有する。そして、前記演算処理手段は、演算結果に基づいて前記第2の電動機械を駆動する。
【0021】
本発明の更に他の電動車両駆動制御装置においては、さらに、少なくとも第1〜第3の歯車要素を備え、第1の歯車要素が前記第1の電動機械と、第2の歯車要素が前記第2の電動機械と、第3の歯車要素が前記エンジンと連結されるプラネタリギヤユニットを有する。
【0022】
本発明の電動車両駆動制御方法においては、車速検出部によって車速を検出し、該車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出し、エンジン負荷を検出し、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う。
そして、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定される。
【0023】
本発明の電動車両駆動制御方法のプログラムにおいては、コンピュータを、車速検出部によって検出された車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出部、並びに前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う演算処理手段として機能させる。
そして、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の実施の形態における電動車両駆動制御装置の機能ブロック図である。
【0026】
図において、25は電動機械としての駆動モータ、39は車速を検出する車速検出部としての駆動モータロータ位置センサ、91は、前記車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段、92は前記演算用車速に基づいて前記駆動モータ25を駆動するための演算処理を行う演算処理手段である。
【0027】
次に、エンジン、駆動モータ及び発電機を備えた電動車両としてのハイブリッド型車両について説明する。なお、電動車両として、エンジン及び発電機を備えず、駆動モータだけを備えた電気自動車、発電機を備えず、エンジン及び駆動モータを備えたパラレル式のハイブリッド型車両等に本発明を適用することもできる。
【0028】
図2は本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
【0029】
図において、11は第1の軸線上に配設されたエンジン(E/G)、12は前記第1の軸線上に配設され、前記エンジン11を駆動することによって発生させられた回転を出力する出力軸、13は前記第1の軸線上に配設され、前記出力軸12を介して入力された回転に対して変速を行う差動歯車装置としてのプラネタリギヤユニット、14は前記第1の軸線上に配設され、前記プラネタリギヤユニット13における変速後の回転が出力される出力軸、15は該出力軸14に固定された出力ギヤとしての第1のカウンタドライブギヤ、16は前記第1の軸線上に配設され、伝達軸17を介して前記プラネタリギヤユニット13と連結され、更にエンジン11と差動回転自在に、かつ、機械的に連結された第1の電動機械としての発電機(G)である。
【0030】
前記出力軸14は、スリーブ状の形状を有し、前記出力軸12を包囲して配設される。また、前記第1のカウンタドライブギヤ15はプラネタリギヤユニット13よりエンジン11側に配設される。
【0031】
そして、前記プラネタリギヤユニット13は、少なくとも、第1の歯車要素としてのサンギヤS、該サンギヤSと噛(し)合するピニオンP、該ピニオンPと噛合する第2の歯車要素としてのリングギヤR、及び前記ピニオンPを回転自在に支持する第3の歯車要素としてのキャリヤCRを備え、前記サンギヤSは前記伝達軸17を介して発電機16と、リングギヤRは、出力軸14及び所定のギヤ列を介して、第2の電動機械としての駆動モータ(M)25と、キャリヤCRは出力軸12を介してエンジン11と連結される。前記駆動モータ25は、前記第1の軸線と平行な第2の軸線上に配設され、前記エンジン11及び発電機16と差動回転自在に、かつ、機械的に連結され、更に、駆動輪37と機械的に連結される。また、前記キャリヤCRと車両駆動装置としてのハイブリッド型車両駆動装置のケース10との間にワンウェイクラッチFが配設され、該ワンウェイクラッチFは、エンジン11から正方向の回転がキャリヤCRに伝達されたときにフリーになり、発電機16又は駆動モータ25から逆方向の回転がキャリヤCRに伝達されたときにロックされ、逆方向の回転がエンジン11に伝達されないようにする。
【0032】
そして、前記発電機16は、前記伝達軸17に固定され、回転自在に配設されたロータ21、該ロータ21の周囲に配設されたステータ22、及び該ステータ22に巻装されたコイル23から成る。前記発電機16は、伝達軸17を介して伝達される回転によって電力を発生させる。前記コイル23は、図示されないバッテリに接続され、該バッテリに直流の電流を供給する。前記ロータ21と前記ケース10との間に発電機ブレーキBが配設され、該発電機ブレーキBを係合させることによってロータ21を固定し、発電機16の回転を機械的に停止させることができる。
【0033】
また、26は、前記第2の軸線上に配設され、前記駆動モータ25の回転が出力される出力軸、27は該出力軸26に固定された出力ギヤとしての第2のカウンタドライブギヤである。前記駆動モータ25は、前記出力軸26に固定され、回転自在に配設されたロータ40、該ロータ40の周囲に配設されたステータ41、及び該ステータ41に巻装されたコイル42から成る。
【0034】
前記駆動モータ25は、コイル42に供給される交流の電流であるU相、V相及びW相の電流によって駆動モータトルクTMを発生させる。そのために、前記コイル42は前記バッテリに接続され、該バッテリからの直流の電流が各相の電流に変換されて前記コイル42に供給されるようになっている。
【0035】
そして、前記駆動輪37をエンジン11の回転と同じ方向に回転させるために、前記第1、第2の軸線と平行な第3の軸線上にカウンタシャフト30が配設され、該カウンタシャフト30に、第1のカウンタドリブンギヤ31、及び該第1のカウンタドリブンギヤ31より歯数が多い第2のカウンタドリブンギヤ32が固定される。前記第1のカウンタドリブンギヤ31と前記第1のカウンタドライブギヤ15とが、また、前記第2のカウンタドリブンギヤ32と前記第2のカウンタドライブギヤ27とが噛合させられ、前記第1のカウンタドライブギヤ15の回転が反転されて第1のカウンタドリブンギヤ31に、前記第2のカウンタドライブギヤ27の回転が反転されて第2のカウンタドリブンギヤ32に伝達されるようになっている。
【0036】
さらに、前記カウンタシャフト30には前記第1のカウンタドリブンギヤ31より歯数が少ないデフピニオンギヤ33が固定される。
【0037】
そして、前記第1〜第3の軸線と平行な第4の軸線上にディファレンシャル装置36が配設され、該ディファレンシャル装置36のデフリングギヤ35と前記デフピニオンギヤ33とが噛合させられる。したがって、デフリングギヤ35に伝達された回転が前記ディファレンシャル装置36によって分配され、駆動輪37に伝達される。このように、エンジン11によって発生させられた回転を第1のカウンタドリブンギヤ31に伝達することができるだけでなく、駆動モータ25によって発生させられた回転を第2のカウンタドリブンギヤ32に伝達することができるので、エンジン11及び駆動モータ25を駆動することによってハイブリッド型車両を走行させることができる。
【0038】
なお、38はロータ21の位置、すなわち、発電機ロータ位置θGを検出するレゾルバ等の発電機ロータ位置センサ、39はロータ40の位置、すなわち、駆動モータロータ位置θMを検出するレゾルバ等の駆動モータロータ位置センサである。そして、検出された発電機ロータ位置θGは、図示されない車両制御装置及び図示されない発電機制御装置に、駆動モータロータ位置θMは前記車両制御装置及び図示されない駆動モータ制御装置に送られる。また、52はエンジン11の回転速度、すなわち、エンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度検出部としてのエンジン回転速度センサである。
【0039】
次に、前記プラネタリギヤユニット13の動作について説明する。
【0040】
図3は本発明の実施の形態におけるプラネタリギヤユニットの動作説明図、図4は本発明の実施の形態における通常走行時の車速線図、図5は本発明の実施の形態における通常走行時のトルク線図である。
【0041】
前記プラネタリギヤユニット13(図2)においては、キャリヤCRがエンジン11と、サンギヤSが発電機16と、リングギヤRが出力軸14を介して前記駆動モータ25及び駆動輪37とそれぞれ連結されるので、リングギヤRの回転速度、すなわち、リングギヤ回転速度NRと、出力軸14に出力される回転速度、すなわち、出力軸回転速度とが等しく、キャリヤCRの回転速度とエンジン回転速度NEとが等しく、サンギヤSの回転速度と発電機16の回転速度、すなわち、発電機回転速度NGとが等しくなる。そして、リングギヤRの歯数がサンギヤSの歯数のρ倍(本実施の形態においては2倍)にされると、
(ρ+1)・NE=1・NG+ρ・NR
の関係が成立する。したがって、リングギヤ回転速度NR及び発電機回転速度NGに基づいてエンジン回転速度NE
NE=(1・NG+ρ・NR)/(ρ+1) ……(1)
を算出することができる。なお、前記式(1)によって、プラネタリギヤユニット13の回転速度関係式が構成される。
【0042】
また、エンジントルクTE、リングギヤRに発生させられるトルク、すなわち、リングギヤトルクTR、及び発電機16のトルク、すなわち、電動機械トルクとしての発電機トルクTGは、
TE:TR:TG=(ρ+1):ρ:1 ……(2)
の関係になり、互いに反力を受け合う。なお、前記式(2)によって、プラネタリギヤユニット13のトルク関係式が構成される。
【0043】
そして、ハイブリッド型車両の通常走行時において、リングギヤR、キャリヤCR及びサンギヤSはいずれも正方向に回転させられ、図4に示されるように、リングギヤ回転速度NR、エンジン回転速度NE及び発電機回転速度NGは、いずれも正の値を採る。また、前記リングギヤトルクTR及び発電機トルクTGは、プラネタリギヤユニット13の歯数によって決定されるトルク比でエンジントルクTEを按(あん)分することによって得られるので、図5に示されるトルク線図上において、リングギヤトルクTRと発電機トルクTGとを加えたものがエンジントルクTEになる。
【0044】
次に、前記ハイブリッド型車両駆動装置の制御を行う電動車両駆動制御装置としてのハイブリッド型車両駆動制御装置について説明する。
【0045】
図6は本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の概念図である。
【0046】
図において、10はケース、11はエンジン(E/G)、13はプラネタリギヤユニット、16は発電機(G)、Bは該発電機16のロータ21を固定するための発電機ブレーキ、25は駆動モータ(M)、28は前記発電機16を駆動するための発電機インバータとしてのインバータ、29は前記駆動モータ25を駆動するための駆動モータインバータとしてのインバータ、37は駆動輪、38は発電機ロータ位置センサ、39は駆動モータロータ位置センサ、43はバッテリである。前記インバータ28、29は電源スイッチSWを介してバッテリ43に接続され、該バッテリ43は前記電源スイッチSWがオンのときに直流の電流を前記インバータ28、29に供給する。
【0047】
そして、該インバータ28の入口側に、インバータ28に印加される直流の電圧、すなわち、発電機インバータ電圧VGを検出するために第1の直流電圧検出部としての発電機インバータ電圧センサ75、及びインバータ28に供給される直流の電流、すなわち、発電機インバータ電流IGを検出するために第1の直流電流検出部としての発電機インバータ電流センサ77が配設される。また、前記インバータ29の入口側に、インバータ29に印加される直流の電圧、すなわち、駆動モータインバータ電圧VMを検出するために第2の直流電圧検出部としての駆動モータインバータ電圧センサ76、及びインバータ29に供給される直流の電流、すなわち、駆動モータインバータ電流IMを検出するために第2の直流電流検出部としての駆動モータインバータ電流センサ78が配設される。そして、前記発電機インバータ電圧VG及び発電機インバータ電流IGは車両制御装置51及び発電機制御装置47に、駆動モータインバータ電圧VM及び駆動モータインバータ電流IMは車両制御装置51及び駆動モータ制御装置49に送られる。なお、前記バッテリ43とインバータ28、29との間に平滑用のコンデンサCが接続される。
【0048】
また、前記車両制御装置51は、図示されないCPU、記録装置等から成り、車両駆動装置の全体の制御を行い、所定のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。前記車両制御装置51は、エンジン制御装置46、発電機制御装置47及び駆動モータ制御装置49に接続される。そして、前記エンジン制御装置46は、図示されないCPU、記録装置等から成り、エンジン11の制御を行うために、スロットル開度θ、バルブタイミング等の指示信号をエンジン11に送る。また、前記発電機制御装置47は、図示されないCPU、記録装置等から成り、前記発電機16の制御を行うために、駆動信号SG1をインバータ28に送る。そして、駆動モータ制御装置49は、図示されないCPU、記録装置等から成り、前記駆動モータ25の制御を行うために、駆動信号SG2をインバータ29に送る。前記エンジン制御装置46、発電機制御装置47及び駆動モータ制御装置49はいずれもコンピュータとして機能する。なお、前記エンジン制御装置46、発電機制御装置47及び駆動モータ制御装置49によって第1の制御装置が、前記車両制御装置51によって、第1の制御装置より上位に位置する第2の制御装置が構成される。
【0049】
前記インバータ28は、駆動信号SG1に従って駆動され、力行時にバッテリ43から直流の電流を受けて、各相の電流IGU、IGV、IGWを発生させ、各相の電流IGU、IGV、IGWを発電機16に供給し、回生時に発電機16から各相の電流IGU、IGV、IGWを受けて、直流の電流を発生させ、バッテリ43に供給する。
【0050】
前記インバータ29は、駆動信号SG2に従って駆動され、力行時にバッテリ43から直流の電流を受けて、各相の電流IMU、IMV、IMWを発生させ、各相の電流IMU、IMV、IMWを駆動モータ25に供給し、回生時に駆動モータ25から各相の電流IMU、IMV、IMWを受けて、直流の電流を発生させ、バッテリ43に供給する。
【0051】
そして、44は前記バッテリ43の状態、すなわち、バッテリ状態としてのバッテリ残量SOCを検出するバッテリ残量検出装置、52はエンジン回転速度センサ、53は選速操作手段としての図示されないシフトレバーの位置、すなわち、シフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ、54はアクセルペダル、55は該アクセルペダル54の位置(踏込量)を表すアクセルペダル位置APを検出するエンジン負荷検出部及びアクセル操作検出部としてのアクセルスイッチ、61はブレーキペダル、62は該ブレーキペダル61の位置(踏込量)を表すブレーキペダル位置BPを検出するブレーキ操作検出部としてのブレーキスイッチ、63はエンジン11の温度tmEを検出するエンジン温度センサ、64は発電機16の温度、例えば、コイル23(図2)の温度tmGを検出する発電機温度センサ、65は駆動モータ25の温度、例えば、コイル42の温度tmMを検出する駆動モータ温度センサである。前記エンジン温度センサ63、発電機温度センサ64及び駆動モータ温度センサ65によって温度検出部が構成される。なお、前記アクセルペダル位置APによってエンジン11に対する負荷、すなわち、エンジン負荷が表される。
【0052】
そして、66〜69はそれぞれ各相の電流IGU、IGV、IMU、IMVを検出する交流電流検出部としての電流センサ、72は前記バッテリ状態としてのバッテリ電圧VBを検出するバッテリ43用の電圧検出部としてのバッテリ電圧センサである。前記バッテリ電圧VBは、発電機制御装置47、駆動モータ制御装置49及び車両制御装置51に送られる。また、バッテリ状態として、バッテリ電流、バッテリ温度等を検出することもできる。なお、バッテリ残量検出装置44、バッテリ電圧センサ72、図示されないバッテリ電流センサ、図示されないバッテリ温度センサ等によってバッテリ状態検出部が構成される。また、電流IGU、IGVは発電機制御装置47及び車両制御装置51に、電流IMU、IMVは駆動モータ制御装置49及び車両制御装置51に送られる。
【0053】
前記車両制御装置51は、前記エンジン制御装置46にエンジン制御信号を送り、エンジン制御装置46によってエンジン11の始動・停止が設定される。また、前記車両制御装置51の図示されない車速算出処理手段は、車速算出処理を行い、駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θMの変化率ΔθMを算出し、該変化率ΔθM、及び前記出力軸26から駆動輪37までのトルク伝達系におけるギヤ比γVに基づいて車速Vを算出する。
【0054】
そして、車両制御装置51は、エンジン回転速度NEの目標値を表すエンジン目標回転速度NE* 、発電機トルクTGの目標値を表す発電機目標トルクTG* 及び駆動モータ目標トルクTM* を設定し、前記発電機制御装置47は発電機回転速度NGの目標値を表す発電機目標回転速度NG* 、前記駆動モータ制御装置49は駆動モータトルクTMの補正値を表す駆動モータトルク補正値δTMを設定する。
【0055】
また、前記発電機制御装置47の図示されない発電機回転速度算出処理手段は、発電機回転速度算出処理を行い、前記発電機ロータ位置θGを読み込み、該発電機ロータ位置θGの変化率ΔθGを算出することによって発電機回転速度NGを算出する。
【0056】
そして、前記駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータ回転速度算出処理手段は、駆動モータ回転速度算出処理を行い、前記駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θMの変化率ΔθMを算出することによって駆動モータ回転速度NMを算出する。
【0057】
なお、前記発電機ロータ位置θGと発電機回転速度NGとは互いに比例し、駆動モータロータ位置θMと駆動モータ回転速度NMと車速Vとは互いに比例するので、発電機ロータ位置センサ38及び前記発電機回転速度算出処理手段を、発電機回転速度NGを検出する発電機回転速度検出部として機能させたり、駆動モータロータ位置センサ39及び前記駆動モータ回転速度算出処理手段を、駆動モータ回転速度NMを検出する駆動モータ回転速度検出部として、又は車速Vを検出する車速検出部として機能させたりすることもできる。
【0058】
本実施の形態においては、前記エンジン回転速度センサ52によってエンジン回転速度NEを検出するようになっているが、エンジン回転速度NEをエンジン制御装置46において算出することもできる。また、本実施の形態において、車速Vは前記車速算出処理手段によって駆動モータロータ位置θMに基づいて算出されるようになっているが、リングギヤ回転速度NRを検出し、該リングギヤ回転速度NRに基づいて車速Vを算出したり、駆動輪37の回転速度、すなわち、駆動輪回転速度に基づいて車速Vを算出したりすることもできる。その場合、車速検出部として、リングギヤ回転速度センサ、駆動輪回転速度センサ等が配設される。
【0059】
次に、前記構成のハイブリッド型車両駆動制御装置の動作について説明する。
【0060】
図7は本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第1のメインフローチャート、図8は本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第2のメインフローチャート、図9は本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第3のメインフローチャート、図10は本発明の実施の形態における第1の車両要求トルクマップを示す図、図11は本発明の実施の形態における第2の車両要求トルクマップを示す図、図12は本発明の実施の形態におけるエンジン目標運転状態マップを示す図、図13は本発明の実施の形態におけるエンジン駆動領域マップを示す図である。なお、図10及び11において、横軸に演算用車速Vcを、縦軸に車両要求トルクTO* を、図12において、横軸にエンジン回転速度NEを、縦軸にエンジントルクTEを、図13において、横軸に車速Vを、縦軸に車両要求トルクTO* を採ってある。
【0061】
まず、車両制御装置51(図6)の図示されない初期化処理手段は、初期化処理を行って各種の変量を初期値にする。
【0062】
次に、前記車両制御装置51は、アクセルスイッチ55からアクセルペダル位置APを、ブレーキスイッチ62からブレーキペダル位置BPを読み込む。そして、前記車速算出処理手段は、駆動モータロータ位置センサ39から駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θMの変化率ΔθMを算出し、該変化率ΔθM及び前記ギヤ比γVに基づいて車速Vを算出する。
【0063】
続いて、前記車両制御装置51の演算用車速算出処理手段91(図1)は、演算用車速算出処理を行い、前記車速算出処理において算出された車速Vを読み込み、該車速Vに基づいて、車両要求トルクTO* を算出するために必要な演算用の車速、すなわち、演算用車速Vcを算出する。
【0064】
次に、前記車両制御装置51の図示されない車両要求トルク決定処理手段は、車両要求トルク決定処理を行い、アクセルペダル54が踏み込まれた場合、前記車両制御装置51の記録装置に記録された図10の第1の車両要求トルクマップを参照し、ブレーキペダル61が踏み込まれた場合、前記記録装置に記録された図11の第2の車両要求トルクマップを参照して、アクセルペダル位置AP、ブレーキペダル位置BP及び演算用車速Vcに対応させてあらかじめ設定された、車両要求トルクTO* を算出し、決定する。
【0065】
続いて、前記車両制御装置51は、車両要求トルクTO* があらかじめ駆動モータ25の定格として設定されている駆動モータ最大トルクTMmaxより大きいかどうかを判断する。車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmaxより大きい場合、前記車両制御装置51はエンジン11が停止中であるかどうかを判断し、エンジン11が停止中である場合、車両制御装置51の図示されない急加速制御処理手段は、急加速制御処理を行い、駆動モータ25及び発電機16を駆動してハイブリッド型車両を走行させる。
【0066】
また、車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmax以下である場合、及び車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmaxより大きく、かつ、エンジン11が駆動中である場合、前記車両制御装置51の図示されない運転者要求出力算出処理手段は、運転者要求出力算出処理を行い、前記車両要求トルクTO* と車速Vとを乗算することによって、運転者要求出力PD
PD=TO* ・V
を算出する。
【0067】
次に、前記車両制御装置51の図示されないバッテリ充放電要求出力算出処理手段は、バッテリ充放電要求出力算出処理を行い、前記バッテリ残量検出装置44からバッテリ残量SOCを読み込み、該バッテリ残量SOCに基づいてバッテリ充放電要求出力PBを算出する。
【0068】
続いて、前記車両制御装置51の図示されない車両要求出力算出処理手段は、車両要求出力算出処理を行い、前記運転者要求出力PDとバッテリ充放電要求出力PBとを加算することによって、車両要求出力PO
PO=PD+PB
を算出する。
【0069】
次に、前記車両制御装置51の図示されないエンジン目標運転状態設定処理手段は、エンジン目標運転状態設定処理を行い、前記車両制御装置51の記録装置に記録された図12のエンジン目標運転状態マップを参照し、前記車両要求出力POを表す線PO1、PO2、…と、各アクセルペダル位置AP1〜AP6におけるエンジン11の効率が最も高くなる最適燃費曲線Lとが交差するポイントA1〜A3、Amを、エンジン目標運転状態であるエンジン11の運転ポイントとして決定し、該運転ポイントにおけるエンジントルクTE1〜TE3、TEmをエンジントルクTEの目標値を表すエンジン目標トルクTE* として決定し、前記運転ポイントにおけるエンジン回転速度NE1〜NE3、NEmをエンジン目標回転速度NE* として決定し、該エンジン目標回転速度NE* をエンジン制御装置46に送る。
【0070】
そして、該エンジン制御装置46は、エンジン制御装置46の記録装置に記録された図13のエンジン駆動領域マップを参照して、エンジン11が駆動領域AR1に置かれているかどうかを判断する。図13において、AR1はエンジン11が駆動される駆動領域、AR2はエンジン11の駆動が停止させられる停止領域、AR3はヒステリシス領域である。また、LE1は停止させられているエンジン11が駆動されるライン、LE2は駆動されているエンジン11の駆動が停止させられるラインである。なお、前記ラインLE1は、バッテリ残量SOCが大きいほど図13の右方に移動させられ、駆動領域AR1が狭くされ、バッテリ残量SOCが小さいほど図13の左方に移動させられ、駆動領域AR1が広くされる。
【0071】
そして、エンジン11が駆動領域AR1に置かれているにもかかわらず、エンジン11が駆動されていない場合、エンジン制御装置46の図示されないエンジン始動制御処理手段は、エンジン始動制御処理を行い、エンジン11を始動する。また、エンジン11が駆動領域AR1に置かれていないにもかかわらず、エンジン11が駆動されている場合、エンジン制御装置46の図示されないエンジン停止制御処理手段は、エンジン停止制御処理を行い、エンジン11の駆動を停止させる。そして、エンジン11が駆動領域AR1に置かれておらず、エンジン11が駆動されていない場合、前記車両制御装置51の図示されない駆動モータ目標トルク算出処理手段は、駆動モータ目標トルク算出処理を行い、前記車両要求トルクTO* を駆動モータ目標トルクTM* として算出するとともに決定し、該駆動モータ目標トルクTM* を駆動モータ制御装置49に送る。駆動モータ制御装置49の図示されない駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ制御処理を行い、駆動モータ25のトルク制御を行う。なお、前記車両要求トルク決定処理手段及び駆動モータ目標トルク算出処理手段によって演算処理手段92が構成され、該演算処理手段92によって駆動モータ25を駆動するための演算処理が行われる。
【0072】
また、エンジン11が駆動領域AR1に置かれていて、かつ、エンジン11が駆動されている場合、エンジン制御装置46の図示されないエンジン制御処理手段は、エンジン制御処理を行い、所定の方法でエンジン11の制御を行う。
【0073】
次に、発電機制御装置47の図示されない発電機目標回転速度算出処理手段は、発電機目標回転速度算出処理を行い、具体的には、駆動モータロータ位置センサ39から駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θM、及び出力軸26(図2)からリングギヤRまでのギヤ比γRに基づいてリングギヤ回転速度NRを算出するとともに、エンジン目標運転状態設定処理において決定されたエンジン目標回転速度NE* を読み込み、リングギヤ回転速度NR及びエンジン目標回転速度NE* に基づいて、前記回転速度関係式によって、発電機目標回転速度NG* を算出し、決定する。
【0074】
ところで、前記構成のハイブリッド型車両をモータ・エンジン駆動モードで走行させているときに、発電機回転速度NGが低い場合、消費電力が大きくなり、発電機16の発電効率が低くなるとともに、ハイブリッド型車両の燃費がその分悪くなってしまう。そこで、発電機目標回転速度NG* の絶対値が所定の回転速度より小さい場合、発電機ブレーキBを係合させ、発電機16を機械的に停止させ、前記燃費を良くするようにしている。
【0075】
そのために、前記発電機制御装置47は、前記発電機目標回転速度NG* の絶対値が所定の第1の回転速度Nth1(例えば、500〔rpm〕)以上であるかどうかを判断する。発電機目標回転速度NG* の絶対値が第1の回転速度Nth1以上である場合、発電機制御装置47は、発電機ブレーキBが解放されているかどうかを判断する。そして、該発電機ブレーキBが解放されている場合、前記発電機制御装置47の図示されない発電機回転速度制御処理手段は、発電機回転速度制御処理を行い、発電機16のトルク制御を行う。また、前記発電機ブレーキBが解放されていない場合、前記発電機制御装置47の図示されない発電機ブレーキ解放制御処理手段は、発電機ブレーキ解放制御処理を行い、発電機ブレーキBを解放する。
【0076】
ところで、前記車両制御装置51において、発電機目標トルクTG* が決定され、該発電機目標トルクTG* に基づいて発電機16のトルク制御が行われ、所定の発電機トルクTGが発生させられると、前述されたように、エンジントルクTE、リングギヤトルクTR及び発電機トルクTGは互いに反力を受け合うので、発電機トルクTGがリングギヤトルクTRに変換されてリングギヤRから出力される。
【0077】
そして、リングギヤトルクTRがリングギヤRから出力されるのに伴って、発電機回転速度NGが変動し、前記リングギヤトルクTRが変動すると、変動したリングギヤトルクTRが駆動輪37に伝達され、ハイブリッド型車両の走行フィーリングが低下してしまう。そこで、発電機回転速度NGの変動に伴う発電機16のイナーシャ(ロータ21及びロータ軸のイナーシャ)分のトルクを見込んでリングギヤトルクTRを算出するようにしている。
【0078】
そのために、前記車両制御装置51の図示されないリングギヤトルク算出処理手段は、リングギヤトルク算出処理を行い、前記発電機目標トルクTG* を読み込み、該発電機目標トルクTG* 、及びサンギヤSの歯数に対するリングギヤRの歯数の比に基づいてリングギヤトルクTRを算出する。
【0079】
すなわち、発電機16のイナーシャをInGとし、発電機16の角加速度(回転変化率)をαGとしたとき、サンギヤSに加わるトルク、すなわち、サンギヤトルクTSは、発電機目標トルクTG* にイナーシャInG分のトルク等価成分(イナーシャトルク)TGI
TGI=InG・αG
を加算することによって得られ、
Figure 0003988446
になる。なお、前記トルク等価成分TGIは、通常、ハイブリッド型車両の加速中は加速方向に対して負の値を、ハイブリッド型車両の減速中は加速方向に対して正の値を採る。また、角加速度αGは、発電機回転速度NGを微分することによって算出される。
【0080】
そして、リングギヤRの歯数がサンギヤSの歯数のρ倍であるとすると、リングギヤトルクTRは、サンギヤトルクTSのρ倍であるので、
Figure 0003988446
になる。このように、発電機目標トルクTG* 及びトルク等価成分TGIからリングギヤトルクTRを算出することができる。
【0081】
そこで、前記駆動モータ制御装置49の図示されない駆動軸トルク推定処理手段は、駆動軸トルク推定処理を行い、前記発電機目標トルクTG* 及びトルク等価成分TGIに基づいて出力軸26におけるトルク、すなわち、駆動軸トルクTR/OUTを推定する。すなわち、前記駆動軸トルク推定処理手段は、前記リングギヤトルクTR、及びリングギヤRの歯数に対する第2のカウンタドライブギヤ27の歯数の比に基づいて駆動軸トルクTR/OUTを推定し、算出する。
【0082】
なお、発電機ブレーキBが係合させられる際に、発電機目標トルクTG* は零(0)にされるので、リングギヤトルクTRはエンジントルクTEと比例関係になる。そこで、発電機ブレーキBが係合させられる際に、前記駆動軸トルク推定処理手段は、エンジン制御装置46からエンジントルクTEを読み込み、前記トルク関係式によって、エンジントルクTEに基づいてリングギヤトルクTRを算出し、該リングギヤトルクTR、及びリングギヤRの歯数に対する第2のカウンタドライブギヤ27の歯数の比に基づいて前記駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
【0083】
続いて、前記駆動モータ目標トルク算出処理手段は、駆動モータ目標トルク算出処理を行い、前記車両要求トルクTO* から、前記駆動軸トルクTR/OUTを減算することによって、駆動軸トルクTR/OUTでは過不足する分を駆動モータ目標トルクTM* として算出し、決定する。
【0084】
そして、前記駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ制御処理を行い、決定された駆動モータ目標トルクTM* に基づいて駆動モータ25のトルク制御を行い、駆動モータトルクTMを制御する。
【0085】
また、発電機目標回転速度NG* の絶対値が第1の回転速度Nth1より小さい場合、発電機制御装置47は、発電機ブレーキBが係合させられているかどうかを判断する。そして、発電機ブレーキBが係合させられていない場合、発電機制御装置47の図示されない発電機ブレーキ係合制御処理手段は、発電機ブレーキ係合制御処理を行い、発電機ブレーキBを係合させる。
【0086】
次に、図7〜9のフローチャートについて説明する。
ステップS1 初期化処理を行う。
ステップS2 アクセルペダル位置AP及びブレーキペダル位置BPを読み込むとともに、車速Vを算出する。
ステップS3 演算用車速算出処理を行う。
ステップS4 車両要求トルクTO* を決定する。
ステップS5 車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmaxより大きいかどうかを判断する。車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmaxより大きい場合はステップS6に、車両要求トルクTO* が駆動モータ最大トルクTMmax以下である場合はステップS8に進む。
ステップS6 エンジン11が停止中であるかどうかを判断する。エンジン11が停止中である場合はステップS7に、停止中でない(駆動中である)場合はステップS8に進む。
ステップS7 急加速制御処理を行う。
ステップS8 運転者要求出力PDを算出する。
ステップS9 バッテリ充放電要求出力PBを算出する。
ステップS10 車両要求出力POを算出する。
ステップS11 エンジン11の運転ポイントを決定する。
ステップS12 エンジン11が駆動領域AR1に置かれているかどうかを判断する。エンジン11が駆動領域AR1に置かれている場合はステップS13に、駆動領域AR1に置かれていない場合はステップS14に進む。
ステップS13 エンジン11が駆動されているかどうかを判断する。エンジン11が駆動されている場合はステップS17に、駆動されていない場合はステップS15に進む。
ステップS14 エンジン11が駆動されているかどうかを判断する。エンジン11が駆動されている場合はステップS16に、駆動されていない場合はステップS26に進む。
ステップS15 エンジン始動制御処理を行い、処理を終了する。
ステップS16 エンジン停止制御処理を行、処理を終了する。
ステップS17 エンジン制御処理を行う。
ステップS18 発電機目標回転速度NG* を決定する。
ステップS19 発電機目標回転速度NG* の絶対値が第1の回転速度Nth1以上であるかどうかを判断する。発電機目標回転速度NG* の絶対値が第1の回転速度Nth1以上である場合はステップS20に、発電機目標回転速度NG* の絶対値が第1の回転速度Nth1より小さい場合はステップS21に進む。
ステップS20 発電機ブレーキBが解放されているかどうかを判断する。発電機ブレーキBが解放されている場合はステップS23に、解放されていない場合はステップS24に進む。
ステップS21 発電機ブレーキBが係合させられているかどうかを判断する。発電機ブレーキBが係合させられている場合は処理を終了し、係合させられていない場合はステップS22に進む。
ステップS22 発電機ブレーキ係合制御処理を行い、処理を終了する。
ステップS23 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS24 発電機ブレーキ解放制御処理を行い、処理を終了する。
ステップS25 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS26 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS27 駆動モータ制御処理を行い、処理を終了する。
【0087】
次に、図7のステップS3における演算用車速算出処理のサブルーチンについて説明する。
【0088】
図14は車両要求トルクの特性を示す図、図15は本発明の実施の形態における演算用車速算出処理のサブルーチンを示す図、図16は本発明の実施の形態における車速を演算用車速に変換する方法を示す図である。なお、図14において、横軸に車速Vを、縦軸に車両要求トルクTO* を、図16において、横軸に車速Vを、縦軸に演算用車速Vcを採ってある。
【0089】
ところで、前記ハイブリッド型車両駆動装置においては、駆動モータ25(図6)を駆動することによってハイブリッド型車両を走行させるに当たり、駆動モータ回転速度NMと駆動モータトルクTMとの積で表される駆動モータ25の機械的な出力を一定にすることによってバッテリ43から駆動モータ25に供給される電気的な出力を一定にし、バッテリ43を保護するようにしているが、その場合、図14に示されるように、アクセルペダル位置APを一定にしたとき、車速Vに対してハイブリッド型車両の駆動力が、例えば、車速・車両要求トルク線上の領域Ar1、Ar3において反比例の関係になるように、領域Ar2、Ar4において逆比例の関係になるように車両要求トルクTO* が設定され、該車両要求トルクTO* に基づいて更に駆動モータ目標トルクTM* が設定され、駆動モータ25が駆動されるようになっている。
【0090】
前記各領域Ar1〜Ar4のうちの領域Ar1においては、ハイブリッド型車両が路面の凹凸を通過した場合等のように、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が反比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動する。ところが、前記領域Ar1においては、アクセルペダル位置APが大きいので、通常、車速Vは短時間で高くなり、ハイブリッド型車両駆動装置は前記領域Ar1から短時間で抜ける。したがって、前記領域Ar1において車速Vが狭い範囲内で大きくなったり、小さくなったりして微小変動を繰り返すようなことはないので、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になることはない。
【0091】
また、前記領域Ar2においても、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が逆比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動するので、仮に、前記領域Ar2において車速Vが狭い範囲内で大きくなったり、小さくなったりして微小変動を繰り返すと、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になり、駆動モータ25に振動が発生してしまう。ところが、前記領域Ar2においては、車速Vが高いので、運転者は駆動モータ25に発生した振動を感じることはなく、運転者に不快感を与えることはない。
【0092】
これに対して、領域Ar3においては、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が反比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動する。
【0093】
例えば、アクセルペダル位置APが所定の開度である場合に、何らかの車速変動要因で車速Vがわずかに高くなると、それに対応して車両要求トルクTO* が小さくなり、駆動モータ目標トルクTM* が小さくなり、その結果、ハイブリッド型車両の駆動力が小さくなる。そして、ハイブリッド型車両の駆動力が小さくなるのに伴って車速Vが低くなると、それに対応して車両要求トルクTO* が大きくなり、駆動モータ目標トルクTM* が大きくなり、その結果、ハイブリッド型車両の駆動力が大きくなって車速Vが再び高くなる。このように、車速Vの微小変動に基づいて駆動モータ目標トルクTM* が微小振動するので、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になり、駆動モータ25に振動が発生してしまう。
【0094】
そして、アクセルペダル位置APが比較的小さいので、通常、車速Vは緩やかに高くなり、ハイブリッド型車両駆動装置が前記領域Ar3から短時間で抜けることはない。しかも、車速Vが低いので、運転者は駆動モータ25に発生した振動を感じ、運転者に不快感を与えてしまう。
【0095】
また、前記領域Ar4においては、何らかの車速変動要因で車速Vが変動するのに伴って、車両要求トルクTO* が逆比例の関係になるように変動し、駆動モータ目標トルクTM* も変動する。しかも、車速Vの変動に伴って車両要求トルクTO* が正及び負の値を採る。
【0096】
例えば、クリープ走行状態のように、アクセルペダル位置APが0〔%〕である場合に、何らかの車速変動要因で車速Vがわずかに高くなると、それに対応して車両要求トルクTO* が小さくなり、駆動モータ目標トルクTM* が小さくなり、その結果、ハイブリッド型車両の駆動力が小さくなる。そして、ハイブリッド型車両の駆動力が小さくなるのに伴って車速Vが低くなると、それに対応して車両要求トルクTO* が大きくなり、駆動モータ目標トルクTM* が大きくなり、その結果、ハイブリッド型車両の駆動力が大きくなって車速Vが再び高くなる。このように、車速Vの微小変動に基づいて駆動モータ目標トルクTM* が微小振動するので、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になり、駆動モータ25に振動が発生してしまう。なお、この状態は、アクセルペダル位置APが0〔%〕である場合だけでなく、0〔%〕に近い場合にも生じる。
【0097】
そして、前記領域Ar4においては、アクセルペダル位置APが0〔%〕であるので、車速Vは常に低く、ハイブリッド型車両駆動装置は前記領域Ar4から短時間で抜けることはない。しかも、車速Vが低いので、運転者は駆動モータ25に発生した振動を感じ、運転者に不快感を与えてしまう。
【0098】
前記車速変動要因には、ハイブリッド型車両が路面の凹凸を通過した場合のほかに、エンジン11を点火したり、点火を停止させたりした場合、エンジン11の燃料カットが行われた場合、駆動モータトルクTMを発生させたときに過渡状態になった場合等が含まれる。
【0099】
なお、前記領域Ar1、Ar3、Ar4より車速Vが低い領域において、車両要求トルクTO* は、車速Vにほとんど依存せず、値が変化しないので、駆動モータ25に振動が発生することはない。また、前記車速算出処理手段における車速Vの分解能が低い場合は、駆動モータ25に振動が顕著に発生する。
【0100】
そこで、本実施の形態においては、前記車速・車両要求トルク線上のすべての領域について、車速算出処理において算出された車速Vに基づいて、図15及び16に示される変換方法によって演算用車速Vcを算出し、該演算用車速Vcを前記車両要求トルク決定処理において使用するようにしている。
【0101】
そのために、図16に示されるように、演算用車速Vcにおいて、車速Vが高くなる際に使用される増速用変換線Ln1、及び車速Vが低くなる際に使用される減速用変換線L2が設定され、前記増速用変換線Ln1と減速用変換線L2との間にヒステリシスVhが設定される。この場合、減速用変換線L2の演算用車速Vcは増速用変換線Ln1の演算用車速Vcより高く設定される。
【0102】
前記増速用変換線Ln1は原点(0)を通り、傾きが1であり、車速Vと演算用車速Vcとが等しくされる第1の直線aで表され、減速用変換線Ln2は、車速Vの絶対値が値Vx以上の領域(区間)において傾きが1であり、前記増速用変換線Ln1と平行に、かつ、ヒステリシスVhだけ低速側にずらして形成された第2の直線b、及び所定の車速Vより低い領域、すなわち、車速Vの値がVx未満の領域(区間)において、傾きが1より大きく、原点を通り、各第2の直線bの原点側の端部を結んで形成された第3の直線cから成る。したがって、車速Vが零のときに、演算用車速Vcが零になるように収束される。
【0103】
なお、車速Vに対する増速用変換線Ln1上の値Vcu、及び車速Vに対する減速用変換線L2上の値Vcdはあらかじめ算出され、車両制御装置51の記録装置において変換テーブルに記録される。そして、該変換テーブルに代えてマップを使用こともできる。また、値Vcu、Vcdを所定の演算式で演算することによって算出することもできる。
【0104】
そして、前記演算用車速算出処理手段91(図1)は、前記変換テーブルを参照して、算出された車速Vに対応する値Vcu、Vcd(>Vcu)を算出し、値Vcuが前回の演算用車速Vc(n−1)より高く、
Vcd>Vcu>Vc(n−1)
である場合、すなわち、車速Vが単純に高くなるように変動している場合は、演算用車速Vcを値Vcuにする。すなわち、演算用車速Vcは矢印q1のように変化する。
【0105】
また、値Vcdが前回の演算用車速Vc(n−1)より低く、
Vc(n−1)>Vcd>Vcu
である場合、すなわち、車速Vが単純に低くなるように変動している場合、前記演算用車速算出処理手段91は、演算用車速Vcを値Vcdにする。すなわち、演算用車速Vcは矢印q3のように変化する。
【0106】
そして、値Vcuが前回の演算用車速Vc(n−1)以下であり、値Vcdが前回の演算用車速Vc(n−1)以上であり、
Vcd≧Vc(n−1)≧Vcu
である場合、すなわち、車速Vが狭い範囲で微小変動している場合、前記演算用車速算出処理手段91は、演算用車速Vcを前回の演算用車速Vc(n−1)と等しくする。すなわち、演算用車速Vcは矢印q2、q4のように変化しない。したがって、車速Vが微小変動しても、車両要求トルクTO* が微小変動せず、駆動モータ目標トルクTM* も微小振動しないので、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感にならない。その結果、駆動モータ25に振動が発生するのを防止することができる。
【0107】
なお、ヒステリシスVhは、走行フィーリング等に影響しない程度に小さくされ、しかも、ハイブリッド型車両に要求される仕様の許容値、ハイブリッド型車両の各要素の制御許容値等を考慮して設定される。
【0108】
また、前述されたように、前記領域Ar1、Ar3、Ar4より車速Vが低い領域において、車両要求トルクTO* は、車速Vにほとんど依存せず、値が変化しないので、駆動モータ25に振動が発生することはない。したがって、前記第3の直線cで示されるようにヒステリシスVhが設定される。
【0109】
本実施の形態において、前記演算用車速Vcは、車両要求トルク決定処理を行う際だけに使用されるが、エンジン制御装置46、発電機制御装置47、駆動モータ制御装置49及び車両制御装置51の各種の処理を行う際にも使用する場合には、演算用車速Vcが車速表示メータに表示されることになる。その場合、前記ヒステリシスVhは、演算用車速Vcと車速Vとの差が交通法規に適合する範囲に収まるように設定される。
【0110】
本実施の形態において、第2の直線bが第1の直線aよりヒステリシスVhだけ低速側にずらして形成されるようになっているが、第2の直線bが第1の直線aよりヒステリシスVhだけ高速側にずらして形成することもできる。また、本実施の形態においては、第1、第2の直線a、bの傾きが1にされるが、1以外の傾きにすることもできる。
【0111】
そして、本実施の形態においては、前記車速・車両要求トルク線上のすべての領域について、車速Vに基づいて演算用車速Vcを算出し、該演算用車速Vcを前記車両要求トルク決定処理において使用するようにしているが、前記車速・車両要求トルク線上における領域Ar3、Ar4のような、ハイブリッド型車両の挙動に対して駆動モータ目標トルクTM* が敏感になり、しかも、運転者に不快感を与えてしまう領域だけについて、車速Vに基づいて演算用車速Vcを算出し、該演算用車速Vcを前記車両要求トルク決定処理において使用することもできる。
【0112】
その場合、前記演算用車速算出処理手段91は、アクセルペダル位置APが閾(しきい)値APthより小さいかどうか、及び車速Vが第1の閾値Vth1より低く、かつ、第2の閾値Vth2(<Vth1)以上であるかどうかを判断し、アクセルペダル位置APが閾値APthより小さく、しかも、車速Vが第1の閾値Vth1より低く、かつ、第2の閾値Vth2以上である場合に、車速Vに基づいて演算用車速Vcを算出し、該演算用車速Vcを前記車両要求トルク決定処理において使用することもできる。
【0113】
次にフローチャートについて説明する。
ステップS3−1 前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcuより小さいかどうかを判断する。前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcuより小さい場合はステップS3−2に、前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcu以上である場合はステップS3−3に進む。
ステップS3−2 演算用車速Vcに値Vcuをセットし、リターンする。
ステップS3−3 前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcdより大きいかどうかを判断する。前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcdより大きい場合はステップS3−4に、前回の演算用車速Vc(n−1)が値Vcd以上である場合はステップS3−5に進む。
ステップS3−4 演算用車速Vcに値Vcdをセットし、リターンする。
ステップS3−5 演算用車速Vcに前回の演算用車速Vc(n−1)をセットし、リターンする。
【0114】
次に、図7のステップS7における急加速制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0115】
図17は本発明の実施の形態における急加速制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0116】
まず、前記急加速制御処理手段は、車両要求トルクTO* を読み込むとともに、駆動モータ目標トルクTM* に駆動モータ最大トルクTMmaxをセットする。続いて、前記車両制御装置51(図6)の図示されない発電機目標トルク算出処理手段は、発電機目標トルク算出処理を行い、前記車両要求トルクTO* と駆動モータ目標トルクTM* との差トルクΔTを算出し、駆動モータ目標トルクTM* である駆動モータ最大トルクTMmaxでは不足する分を発電機目標トルクTG* として算出し、決定し、該発電機目標トルクTG* を発電機制御装置47に送る。
【0117】
そして、前記駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ制御処理を行い、駆動モータ目標トルクTM* に基づいて駆動モータ25のトルク制御を行う。また、前記発電機制御装置47の図示されない発電機トルク制御処理手段は、発電機トルク制御処理を行い、前記発電機目標トルクTG* に基づいて発電機16のトルク制御を行う。
【0118】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS7−1 車両要求トルクTO* を読み込む。
ステップS7−2 駆動モータ目標トルクTM* に駆動モータ最大トルクTMmaxをセットする。
ステップS7−3 発電機目標トルクTG* を算出する。
ステップS7−4 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS7−5 発電機トルク制御処理を行い、リターンする。
【0119】
次に、図9のステップS27、及び図17のステップS7−4における駆動モータ制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0120】
図18は本発明の実施の形態における駆動モータ制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0121】
まず、前記駆動モータ制御処理手段は、駆動モータ目標トルクTM* を読み込む。続いて、前記駆動モータ回転速度算出処理手段は、駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θMの変化率ΔθMを算出することによって駆動モータ回転速度NMを算出する。そして、前記駆動モータ制御処理手段は、バッテリ電圧VBを読み込む。
【0122】
次に、前記駆動モータ制御処理手段は、前記駆動モータ目標トルクTM* 、駆動モータ回転速度NM及びバッテリ電圧VBに基づいて、前記駆動モータ制御装置49(図6)の記録装置に記録された駆動モータ制御用の図示されない電流指令値マップを参照し、d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* を算出し、決定する。なお、d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* によって、駆動モータ25用の交流電流指令値が構成される。
【0123】
また、前記駆動モータ制御処理手段は、電流センサ68、69から電流IMU、IMVを読み込むとともに、該電流IMU、IMVに基づいて電流IMW
IMW=IMU−IMV
を算出する。なお、電流IMWを電流IMU、IMVと同様に電流センサによって検出することもできる。
【0124】
続いて、前記駆動モータ制御処理手段の交流電流算出処理手段は、交流電流算出処理を行い、3相/2相変換を行い、電流IMU、IMV、IMWを、交流の電流であるd軸電流IMd及びq軸電流IMqに変換することによってd軸電流IMd及びq軸電流IMqを算出する。そして、前記駆動モータ制御処理手段の交流電圧指令値算出処理手段は、交流電圧指令値算出処理を行い、前記d軸電流IMd及びq軸電流IMq、並びに前記d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* に基づいて、電圧指令値VMd* 、VMq* を算出する。また、前記駆動モータ制御処理手段は、2相/3相変換を行い、電圧指令値VMd* 、VMq* を電圧指令値VMU* 、VMV* 、VMW* に変換し、該電圧指令値VMU* 、VMV* 、VMW* に基づいてパルス幅変調信号SU、SV、SWを算出し、該パルス幅変調信号SU、SV、SWを前記駆動モータ制御装置49の図示されないドライブ処理手段に対して出力する。該ドライブ処理手段は、ドライブ処理を行い、パルス幅変調信号SU、SV、SWに基づいて駆動信号SG2を前記インバータ29に送る。なお、電圧指令値VMd* 、VMq* によって、駆動モータ25用の交流電圧指令値が構成される。
【0125】
次に、フローチャートについて説明する。なお、この場合、ステップS27及びステップS7−4において同じ処理が行われるので、ステップS7−4について説明する。
ステップS7−4−1 駆動モータ目標トルクTM* を読み込む。
ステップS7−4−2 駆動モータロータ位置θMを読み込む。
ステップS7−4−3 駆動モータ回転速度NMを算出する。
ステップS7−4−4 バッテリ電圧VBを読み込む。
ステップS7−4−5 d軸電流指令値IMd* 及びq軸電流指令値IMq* を決定する。
ステップS7−4−6 電流IMU、IMVを読み込む。
ステップS7−4−7 3相/2相変換を行う。
ステップS7−4−8 電圧指令値VMd* 、VMq* を算出する。
ステップS7−4−9 2相/3相変換を行う。
ステップS7−4−10 パルス幅変調信号SU、SV、SWを出力し、リターンする。
【0126】
次に、図17のステップS7−5における発電機トルク制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0127】
図19は本発明の実施の形態における発電機トルク制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0128】
まず、前記発電機トルク制御処理手段は、発電機目標トルクTG* を読み込み、発電機ロータ位置θGを読み込むとともに、該発電機ロータ位置θGに基づいて発電機回転速度NGを算出し、続いて、バッテリ電圧VBを読み込む。次に、前記発電機トルク制御処理手段は、前記発電機目標トルクTG* 、発電機回転速度NG及びバッテリ電圧VBに基づいて、前記発電機制御装置47(図6)の記録装置に記録された発電機制御用の図示されない電流指令値マップを参照し、d軸電流指令値IGd* 及びq軸電流指令値IGq* を算出し、決定する。なお、d軸電流指令値IGd* 及びq軸電流指令値IGq* によって、発電機16用の交流電流指令値が構成される。
【0129】
また、前記発電機トルク制御処理手段は、電流センサ66、67から電流IGU、IGVを読み込むとともに、電流IGU、IGVに基づいて電流IGW
IGW=IGU−IGV
を算出する。なお、電流IGWを電流IGU、IGVと同様に電流センサによって検出することもできる。
【0130】
続いて、前記発電機トルク制御処理手段の交流電流算出処理手段は、交流電流算出処理を行い、3相/2相変換を行い、電流IGU、IGV、IGWをd軸電流IGd及びq軸電流IGqに変換することによって、d軸電流IGd及びq軸電流IGqを算出する。そして、前記発電機トルク制御処理手段の交流電圧指令値算出処理手段は、交流電圧指令値算出処理を行い、前記d軸電流IGd及びq軸電流IGq、並びに前記d軸電流指令値IGd* 及びq軸電流指令値IGq* に基づいて、電圧指令値VGd* 、VGq* を算出する。また、前記発電機トルク制御処理手段は、2相/3相変換を行い、電圧指令値VGd* 、VGq* を電圧指令値VGU* 、VGV* 、VGW* に変換し、該電圧指令値VGU* 、VGV* 、VGW* に基づいてパルス幅変調信号SU、SV、SWを算出し、該パルス幅変調信号SU、SV、SWを発電機制御装置47の図示されないドライブ処理手段に出力する。該ドライブ処理手段は、ドライブ処理を行い、パルス幅変調信号SU、SV、SWに基づいて駆動信号SG1を前記インバータ28に送る。なお、電圧指令値VGd* 、VGq* によって、発電機16用の交流電圧指令値が構成される。
【0131】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS7−5−1 発電機目標トルクTG* を読み込む。
ステップS7−5−2 発電機ロータ位置θGを読み込む。
ステップS7−5−3 発電機回転速度NGを算出する。
ステップS7−5−4 バッテリ電圧VBを読み込む。
ステップS7−5−5 d軸電流指令値IGd* 及びq軸電流指令値IGq* を決定する。
ステップS7−5−6 電流IGU、IGVを読み込む。
ステップS7−5−7 3相/2相変換を行う。
ステップS7−5−8 電圧指令値VGd* 、VGq* を算出する。
ステップS7−5−9 2相/3相変換を行う。
ステップS7−5−10 パルス幅変調信号SU、SV、SWを出力し、リターンする。
【0132】
次に、図8のステップS15におけるエンジン始動制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0133】
図20は本発明の実施の形態におけるエンジン始動制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0134】
まず、エンジン始動制御処理手段は、図示されないスロットル開度センサによって検出されたスロットル開度θを読み込み、スロットル開度θが0〔%〕である場合に、前記車速算出処理手段によって算出された車速Vを読み込み、かつ、エンジン目標運転状態設定処理において決定されたエンジン11(図6)の運転ポイントを読み込む。
【0135】
続いて、前記発電機目標回転速度算出処理手段は、前述されたように、発電機目標回転速度算出処理を行い、駆動モータロータ位置θMを読み込み、該駆動モータロータ位置θM、及び前記ギヤ比γRに基づいてリングギヤ回転速度NRを算出するとともに、前記運転ポイントにおけるエンジン目標回転速度NE* を読み込み、リングギヤ回転速度NR及びエンジン目標回転速度NE* に基づいて、前記回転速度関係式によって、発電機目標回転速度NG* を算出し、決定する。
【0136】
そして、前記エンジン制御装置46は、エンジン回転速度NEとあらかじめ設定された始動回転速度NEth1とを比較し、エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1より高いかどうかを判断する。エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1より高い場合、エンジン始動制御処理手段は、エンジン11において燃料噴射及び点火を行う。
【0137】
続いて、前記発電機回転速度制御処理手段は、発電機目標回転速度NG* に基づいて発電機回転速度制御処理を行い、発電機回転速度NGを高くし、それに伴ってエンジン回転速度NEを高くする。そして、前記駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。また、前記エンジン始動制御処理手段は、エンジン回転速度NEがエンジン目標回転速度NE* になるようにスロットル開度θを調整する。
【0138】
次に、前記エンジン始動制御処理手段は、エンジン11が正常に駆動されているかどうかを判断するために、発電機トルクTGが、エンジン11の始動に伴うモータリングトルクTEthより小さいかどうかを判断し、発電機トルクTGがモータリングトルクTEthより小さい状態で所定時間が経過するのを待機する。
【0139】
また、エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1以下である場合、前記発電機回転速度制御処理手段は、発電機目標回転速度NG* に基づいて発電機回転速度制御処理を行い、続いて、前記駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。
【0140】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS15−1 スロットル開度θが0〔%〕であるかどうかを判断する。スロットル開度θが0〔%〕である場合はステップS15−3に、0〔%〕でない場合はステップS15−2に進む。
ステップS15−2 スロットル開度θを0〔%〕にし、ステップS15−1に戻る。
ステップS15−3 車速Vを読み込む。
ステップS15−4 エンジン11の運転ポイントを読み込む。
ステップS15−5 発電機目標回転速度NG* を決定する。
ステップS15−6 エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1より高いかどうかを判断する。エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1より高い場合はステップS15−11に、エンジン回転速度NEが始動回転速度NEth1以下である場合はステップS15−7に進む。
ステップS15−7 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS15−8 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS15−9 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS15−10 駆動モータ制御処理を行い、ステップ15−1に戻る。ステップS15−11 燃料噴射及び点火を行う。
ステップS15−12 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS15−13 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS15−14 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS15−15 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS15−16 スロットル開度θを調整する。
ステップS15−17 発電機トルクTGがモータリングトルクTEthより小さいかどうかを判断する。発電機トルクTGがモータリングトルクTEthより小さい場合はステップS15−18に進み、発電機トルクTGがモータリングトルクTEth以上である場合はステップS15−11に戻る。
ステップS15−18 所定時間が経過するのを待機し、経過するとリターンする。
【0141】
次に、図9のステップS23、及び図20のステップS15−7、S15−12における発電機回転速度制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0142】
図21は本発明の実施の形態における発電機回転速度制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0143】
まず、前記発電機回転速度制御処理手段は、発電機目標回転速度NG* を読み込み、発電機回転速度NGを読み込むとともに、発電機目標回転速度NG* と発電機回転速度NGとの差回転速度ΔNGに基づいてPI制御を行い、発電機目標トルクTG* を算出する。この場合、差回転速度ΔNGが大きいほど、発電機目標トルクTG* は大きくされ、正負も考慮される。
【0144】
続いて、前記発電機トルク制御処理手段は、図19の発電機トルク制御処理を行い、発電機16(図2)のトルク制御を行う。
【0145】
次に、フローチャートについて説明する。なお、この場合、ステップS23、及びステップS15−7、S15−12において同じ処理が行われるので、ステップS15−7について説明する。
ステップS15−7−1 発電機目標回転速度NG* を読み込む。
ステップS15−7−2 発電機回転速度NGを読み込む。
ステップS15−7−3 発電機目標トルクTG* を算出する。
ステップS15−7−4 発電機トルク制御処理を行い、リターンする。
【0146】
次に、図8のステップS16におけるエンジン停止制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0147】
図22は本発明の実施の形態におけるエンジン停止制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0148】
まず、前記発電機制御装置47(図6)は、発電機ブレーキBが解放されているかどうかを判断する。発電機ブレーキBが解放されておらず、係合させられている場合、前記発電機ブレーキ解放制御処理手段は、発電機ブレーキ解放制御処理を行い、発電機ブレーキBを解放する。
【0149】
また、前記発電機ブレーキBが解放されている場合、前記エンジン停止制御処理手段は、エンジン11における燃料噴射及び点火を停止させ、スロットル開度θを0〔%〕にする。
【0150】
続いて、前記エンジン停止制御処理手段は、前記リングギヤ回転速度NRを読み込み、該リングギヤ回転速度NR及びエンジン目標回転速度NE* (0〔rpm〕)に基づいて、前記回転速度関係式によって、発電機目標回転速度NG* を決定する。そして、前記発電機制御装置47が図21の発電機回転速度制御処理を行った後、駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。
【0151】
次に、前記発電機制御装置47は、エンジン回転速度NEが停止回転速度NEth2以下であるかどうかを判断し、エンジン回転速度NEが停止回転速度NEth2以下である場合、発電機16に対するスイッチングを停止させ、発電機16のシャットダウンを行う。
【0152】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS16−1 発電機ブレーキBが解放されているかどうかを判断する。発電機ブレーキBが解放されている場合はステップS16−3に、解放されていない場合はステップS16−2に進む。
ステップS16−2 発電機ブレーキ解放制御処理を行う。
ステップS16−3 燃料噴射及び点火を停止させる。
ステップS16−4 スロットル開度θを0〔%〕にする。
ステップS16−5 発電機目標回転速度NG* を決定する。
ステップS16−6 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS16−7 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS16−8 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS16−9 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS16−10 エンジン回転速度NEが停止回転速度NEth2以下であるかどうかを判断する。エンジン回転速度NEが停止回転速度NEth2以下である場合はステップS16−11に進み、エンジン回転速度NEが停止回転速度NEth2より大きい場合はステップS16−5に戻る。
ステップS16−11 発電機16に対するスイッチングを停止させ、リターンする。
【0153】
次に、図9のステップS22における発電機ブレーキ係合制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0154】
図23は本発明の実施の形態における発電機ブレーキ係合制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0155】
まず、前記発電機ブレーキ係合制御処理手段は、発電機ブレーキB(図6)の係合を要求するための発電機ブレーキ要求をオフからオンにして、発電機目標回転速度NG* に0〔rpm〕をセットし、発電機制御装置47が図21の発電機回転速度制御処理を行った後、駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。
【0156】
次に、前記発電機ブレーキ係合制御処理手段は、発電機回転速度NGの絶対値が所定の第2の回転速度Nth2(例えば、100〔rpm〕)より小さいかどうかを判断し、発電機回転速度NGの絶対値が第2の回転速度Nth2より小さい場合、発電機ブレーキBを係合させる。続いて、前記駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。
【0157】
そして、発電機ブレーキBが係合させられた状態で所定時間が経過すると、前記発電機ブレーキ係合制御処理手段は、発電機16に対するスイッチングを停止させ、発電機16のシャットダウンを行う。
【0158】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS22−1 発電機目標回転速度NG* に0〔rpm〕をセットする。
ステップS22−2 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS22−3 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS22−4 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS22−5 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS22−6 発電機回転速度NGの絶対値が第2の回転速度Nth2より小さいかどうかを判断する。発電機回転速度NGの絶対値が第2の回転速度Nth2より小さい場合はステップS22−7に進み、発電機回転速度NGの絶対値が第2の回転速度Nth2以上である場合はステップS22−2に戻る。
ステップS22−7 発電機ブレーキBを係合させる。
ステップS22−8 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS22−9 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS22−10 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS22−11 所定時間が経過したかどうかを判断する。所定時間が経過した場合はステップS22−12に進み、経過していない場合はステップS22−7に戻る。
ステップS22−12 発電機16に対するスイッチングを停止させ、リターンする。
【0159】
次に、図9のステップS24における発電機ブレーキ解放制御処理のサブルーチンについて説明する。
【0160】
図24は本発明の実施の形態における発電機ブレーキ解放制御処理のサブルーチンを示す図である。
【0161】
前記発電機ブレーキ係合制御処理において、発電機ブレーキB(図6)を係合している間、所定のエンジントルクTEが反力として発電機16のロータ21に加わるので、発電機ブレーキBを単に解放すると、エンジントルクTEがロータ21に伝達されるのに伴って、発電機トルクTG及びエンジントルクTEが大きく変化し、ショックが発生してしまう。
【0162】
そこで、前記エンジン制御装置46において、前記ロータ21に伝達されるエンジントルクTEが推定又は算出され、前記発電機ブレーキ解放制御処理手段は、推定又は算出されたエンジントルクTEに相当するトルク、すなわち、エンジントルク相当分を読み込み、該エンジントルク相当分を発電機目標トルクTG* としてセットする。続いて、前記発電機トルク制御処理手段が図19の発電機トルク制御処理を行った後、駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。
【0163】
そして、発電機トルク制御処理が開始された後、所定時間が経過すると、前記発電機ブレーキ解放制御処理手段が、発電機ブレーキBを解放し、発電機目標回転速度NG* に0〔rpm〕をセットした後、発電機回転速度制御処理手段は図21の発電機回転速度制御処理を行う。続いて、前記駆動モータ制御装置49は、ステップS25〜S27において行われたように、駆動軸トルクTR/OUTを推定し、駆動モータ目標トルクTM* を決定し、駆動モータ制御処理を行う。なお、前記エンジントルク相当分は、エンジントルクTEに対する発電機トルクTGのトルク比を学習することによって推定又は算出される。
【0164】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS24−1 エンジントルク相当分を発電機目標トルクTG* にセットする。
ステップS24−2 発電機トルク制御処理を行う。
ステップS24−3 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS24−4 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS24−5 駆動モータ制御処理を行う。
ステップS24−6 所定時間が経過したかどうかを判断する。所定時間が経過した場合はステップS24−7に進み、経過していない場合はステップS24−2に戻る。
ステップS24−7 発電機ブレーキBを解放する。
ステップS24−8 発電機目標回転速度NG* に0〔rpm〕をセットする。
ステップS24−9 発電機回転速度制御処理を行う。
ステップS24−10 駆動軸トルクTR/OUTを推定する。
ステップS24−11 駆動モータ目標トルクTM* を決定する。
ステップS24−12 駆動モータ制御処理を行い、リターンする。
【0165】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0166】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、電動車両駆動制御装置においては、電動機械と、車速を検出する車速検出部と、前記車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出部と、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて前記電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う演算処理手段とを有する。
そして、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定される。
【0167】
この場合、ヒステリシスが設定された演算用車速が算出され、エンジン負荷が検出され、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて電動機械を駆動するために、車両要求トルクが算出され、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクが算出されて演算処理が行われるので、車速が微小変動を繰り返しても、電動車両の挙動に対して電動機械を駆動するための目標値が敏感にならない。その結果、電動機械に振動が発生するのを防止することができ、運転者に不快感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における電動車両駆動制御装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両の概念図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるプラネタリギヤユニットの動作説明図である。
【図4】本発明の実施の形態における通常走行時の車速線図である。
【図5】本発明の実施の形態における通常走行時のトルク線図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の概念図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第1のメインフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第2のメインフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態におけるハイブリッド型車両駆動制御装置の動作を示す第3のメインフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における第1の車両要求トルクマップを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における第2の車両要求トルクマップを示す図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるエンジン目標運転状態マップを示す図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるエンジン駆動領域マップを示す図である。
【図14】車両要求トルクの特性を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における演算用車速算出処理のサブルーチンを示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における車速を演算用車速に変換する方法を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態における急加速制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図18】本発明の実施の形態における駆動モータ制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態における発電機トルク制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図20】本発明の実施の形態におけるエンジン始動制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図21】本発明の実施の形態における発電機回転速度制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図22】本発明の実施の形態におけるエンジン停止制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図23】本発明の実施の形態における発電機ブレーキ係合制御処理のサブルーチンを示す図である。
【図24】本発明の実施の形態における発電機ブレーキ解放制御処理のサブルーチンを示す図である。
【符号の説明】
11 エンジン
13 プラネタリギヤユニット
16 発電機
25 駆動モータ
37 駆動輪
39 駆動モータロータ位置センサ
51 車両制御装置
55 アクセルスイッチ
91 演算用車速算出処理手段
92 演算処理手段
CR キャリア
R リングギヤ
S サンギヤ

Claims (10)

  1. 電動機械と、車速を検出する車速検出部と、前記車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出部と、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて前記電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う演算処理手段とを有するとともに、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定されることを特徴とする電動車両駆動制御装置。
  2. 前記減速用変換線の演算用車速は、前記増速用変換線の演算用車速より高く設定される請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  3. 前記増速用変換線は、車速と演算用車速とが等しくされる直線で表される請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  4. 前記減速用変換線は、所定の車速より低い領域において、車速が零のときに、演算用車速が零になるように収束させられる請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  5. 前記演算用車速算出処理手段は、エンジン負荷を一定にしたときの所定の領域において演算用車速を算出する請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  6. 前記電動機械はエンジンと機械的に連結される請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  7. エンジンと機械的に連結された第1の電動機械と、駆動輪と機械的に連結された第2の電動機械とを有するとともに、前記演算処理手段は、演算結果に基づいて前記第2の電動機械を駆動する請求項1に記載の電動車両駆動制御装置。
  8. 少なくとも第1〜第3の歯車要素を備え、第1の歯車要素が前記第1の電動機械と、第2の歯車要素が前記第2の電動機械と、第3の歯車要素が前記エンジンと連結されるプラネタリギヤユニットを有する請求項7に記載の電動車両駆動制御装置。
  9. 車速検出部によって車速を検出し、該車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出し、エンジン負荷を検出し、前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行うとともに、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定されることを特徴とする電動車両駆動制御方法。
  10. コンピュータを、車速検出部によって検出された車速に基づいて、ヒステリシスが設定された演算用車速を算出する演算用車速算出処理手段、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出部、並びに前記演算用車速及びエンジン負荷に基づいて電動機械を駆動するために、車両要求トルクを算出し、該車両要求トルクに基づいて駆動モータ目標トルクを算出して演算処理を行う演算処理手段として機能させるとともに、前記ヒステリシスは、車速が高くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する増速用変換線と、車速が低くなる際に使用され、検出された車速の変化に対応して変化する減速用変換線との間に設定されることを特徴とする電動車両駆動制御方法のプログラム。
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