JP3988028B2 - エンジンのｅｇｒ装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンのＥＧＲ装置に係り、詳しくはＥＧＲガス中に含有されるＳＯＦ分によるデポジットの堆積を防止可能なＥＧＲ装置に関するものである。
【０００２】
【関連する背景技術】
エンジンからの排ガスの一部を吸気系に還流して燃焼温度を低下させ、これによりＮＯx（窒素酸化物）の排出量を低減するＥＧＲ装置が広く実施されている。周知のように排ガス中には未燃燃料やオイル等を主成分とするＳＯＦ分が含有され、ＥＧＲガスと共に吸気系に還流されたＳＯＦ分はデポジットを堆積させる要因となることから、例えば特開２０００−３５６１３４号公報に記載のＥＧＲ装置のように、エキゾーストマニホールド直下に設置された近接触媒の下流側にＥＧＲガス導入口を接続して、ＳＯＦ分を除去した後の排ガスを還流させている。
【０００３】
一方、コスト面やエンジンの出力面等から近接触媒を省略した車両もあり、このような車両のＥＧＲ装置では、例えば特開２０００−２４９００３号公報に記載のように、床下触媒の下流側からＥＧＲガスを還流させている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、床下触媒はエンジンからかなり離間しているため、必然的にＥＧＲ管路を大幅に延長化する必要が生じる上に、エンジンのロールや振動のＥＧＲ管路への影響を避けるために、ＥＧＲ管路上にベローズや球面継手等の自在継手を設ける必要が生じ、結果として製造コストを高騰させてしまうという問題がある。
【０００５】
本発明の目的は、排気系での触媒の設置状態に関わらず、ＳＯＦ分の除去後のＥＧＲガスを還流して、吸気系へのデポジットの堆積を防止することができるエンジンのＥＧＲ装置を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項１の発明は、一端がエキゾーストマニホールドに接続されてＥＧＲガス導入口をなし、他端がエンジン側取付フランジに接続されて、下流側ＥＧＲ通路へのＥＧＲガス導出口をなすＥＧＲ管路と、ＥＧＲ管路に設けられてＥＧＲガスの浄化を行う触媒とを備えたエンジンのＥＧＲ装置であって、ＥＧＲガス導入口はエキゾーストマニホールドの集合部分に接続され、触媒はエキゾーストマニホールドに対し支持部材を介して軸方向への相対移動を許容された状態で支持されエキゾーストマニホールドに隣接して配置され、触媒の両端に対するＥＧＲ管路のうちのＥＧＲガス導出口側のＥＧＲ管路には可動部材として蛇腹状のベローズが介装されているものである。
【０００７】
従って、エンジンからの排ガスがエキゾーストマニホールド及び排気通路を経て外部に排出される一方、排ガスの一部は、エキゾーストマニホールドからＥＧＲ管路、触媒、下流側ＥＧＲ通路を経てエンジンの吸気系に還流されて、ＮＯx排出量の低減が図られる。一方、排ガスは触媒を通過する際に浄化されてＳＯＦ分を除去され、これにより吸気系を構成する各部材へのデポジットの堆積が防止される。
【０００８】
そして、このようにエキゾーストマニホールドに設けたＥＧＲ専用の触媒によりＥＧＲガス中のＳＯＦ分の除去が行われるため、エンジンから離間した床下触媒の下流側からＥＧＲガスを還流させる必要がなくなり、そのための長いＥＧＲ管路を必要とせずに、製造コストが低減可能となる。
【０００９】
又、触媒を流通するＥＧＲガス量は全体の排ガス流量に比して格段に少ないため、触媒自体を小型化できる上に、ＥＧＲガスは全体の排ガスに比べると比較的温度が低く、触媒に高い耐熱性が要求されないため、安価な触媒種を利用でき、結果として安価な触媒で十分な作用が得られる。
又、ＥＧＲガス導入口がエキゾーストマニホールドの集合部分に接続されることにより、触媒はエキゾーストマニホールドの集合部分近傍、つまり、従来は利用されなかったデッドスペースに配設されるため、触媒の付加による周辺機器への影響がない。
更に、エキゾーストマニホールドが熱膨張しても、支持部材により触媒の軸方向への移動が許容されるとともに、ベローズの軸方向の伸縮により熱膨張が吸収されるため、このときの応力による触媒の破損が未然に防止される。
請求項２の発明は、請求項１において、エンジン側取付フランジが、エキゾーストマニホールドのエンジン側取付フランジと一体化されたものである。従って、エキゾーストマニホールドを含めたこれらの部材を、エンジン組立工程の段階でエンジンに設置でき、その組付け作業を合理化可能となる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を４気筒ガソリンエンジン用のＥＧＲ装置に具体化した一実施形態を説明する。
図１は本実施形態のエンジンのＥＧＲ装置を示す正面図、図２は同じくＥＧＲ装置を示す斜視図であり、図中の１はエンジンのシリンダヘッドである。シリンダヘッド１の排気側面にはエキゾーストマニホールド（以下、エキマニと略す）２のエンジン側取付フランジ２ａがボルト３により固定され、エンジン側取付フランジ２ａには各気筒毎に排気パイプ２ｃの上端が溶接固定されている。各排気パイプ２ｃは２気筒ずつ集合されて、その下端が排気側連結フランジ２ｂに溶接固定され、図示はしないが、この排気側連結フランジ２ｂは排気管を介して床下触媒及び消音器に接続されている。尚、本実施形態では、エキマニ２直下に設置される近接触媒は備えられていない。
【００１４】
上記１本の排気パイプ２ｃの中程には支持部材としての環状ブラケット４がボルト５で固定され、この環状ブラケット４内には筒状をなす触媒６が保持されている。この触媒６には排ガス全体を浄化する作用は要求されず、後述のように未燃燃料やオイル等を主成分とするＳＯＦ分のボンドを切り離す作用のみが要求される。よって、担持する触媒種としては、一般的な酸化触媒に利用されるＰt（プラチナ），Ｐd（パラジウム），Ｒh（ロジウム）等に限らず、より酸化作用が低い触媒種、例えばＨＣトラップや選択還元型ＮＯx触媒に利用されるゼオライトが担持されていてもよい。
【００１５】
上記触媒６の下部からは下側ＥＧＲ管路７ａが下方に延設され、下側ＥＧＲ管路７ａの下端８ａは、上記排気パイプ２ｃの一方の集合部分に溶接固定され、この接続箇所がＥＧＲガス導入口１０ａを構成している。同様に、触媒６の上部からは上側ＥＧＲ管路７ｂが上方に延設され、上側ＥＧＲ管路７ｂの上端８ｂは、上記エンジン側取付フランジ２ａの一側に溶接固定され、この接続箇所がＥＧＲガス導出口１０ｂを構成している。
【００１６】
ここで、上側ＥＧＲ管路７ｂには、金属パイプを蛇腹状に加工した可動部材としてのベローズ９ｂが取り付けられ、且つ上記環状ブラケット４の内径は触媒６の外径より若干大きく設定されているため、エキゾーストマニホールド２の熱膨張によらず、触媒６を保持することができる。
又、下側ＥＧＲ管路７ａの全長は可能な限り短く設定されており、その結果、図１から明らかなように触媒６はエキマニ２の集合部分近傍、つまり、従来は利用されなかったデッドスペースに配設されると共に、ＥＧＲガス導入口１０ａに近接することで、排気直後の温度の高いＥＧＲガスが内部に導入されることになる。
【００１７】
一方、図２に破線で示すように、シリンダヘッド１の排気側面には、上記エンジン側取付フランジ２ａと対応するように下流側ＥＧＲ通路１１の一端が開口し、この下流側ＥＧＲ通路１１の他端はシリンダヘッド１を貫通して吸気側面に開口し、図示はしないが、ＥＧＲバルブを介してエンジンの吸気通路に接続されている。
【００１８】
以上のように構成されたＥＧＲ装置では、エンジンの運転に伴う排ガスがエキマニ２から排気管の床下触媒及び消音器を経て外部に排出される一方、排ガスの一部は、エキマニ２の集合部分から下側ＥＧＲ管路７ａ、触媒６、上側ＥＧＲ管路７ｂ、下流側ＥＧＲ通路１１、ＥＧＲバルブを経て吸気通路側に還流され、このときの還流量がＥＧＲバルブの開度に応じて調整されて、エンジンからのＮＯx排出量の低減が図られる。
【００１９】
上記触媒６を通過する際の排ガスは、触媒種の作用により含有するＳＯＦ分を除去されて吸気通路に還流され、これにより吸気系を構成する各部材、例えばスロットルバルブや吸気バルブ等へのデポジットの堆積が防止される。上記のようにＥＧＲガス導入口１０ａに近接配置された触媒６は、高温のＥＧＲガスにより速やかに昇温されるため、冷態始動時等にも迅速にＳＯＦ分の除去を開始できる。
【００２０】
そして、このようにエキマニ２にＥＧＲ専用の触媒６を備えているため、本来の排ガス浄化用触媒の設置状態に何ら影響されることなく、ＥＧＲガス中のＳＯＦ分を除去できる。具体的には、本実施形態のように近接触媒を備えない場合であっても、エンジンから離間した床下触媒の下流側からＥＧＲガスを還流させる必要がないことから、そのための長いＥＧＲ管路を必要とせずに、製造コストを低減することができる。
【００２１】
又、触媒６を流通するＥＧＲガス量は全体の排ガス量に比して格段に少ないため、触媒６自体を小型化できる上に、ＥＧＲが実施されるのは主に低中負荷域で、触媒６内を流通するＥＧＲガスはそれほど高温に達しないことから、触媒６は熱劣化に対して比較的余裕を有する。よって、触媒６を安価に製造でき、触媒６の付加による製造コストへの影響は軽微であり、全体としては十分にコスト低減を達成できる。又、上記のように触媒６がデッドスペースに配設されるため、触媒６の付加による周辺機器への影響も少なく、エンジンルーム内のスペース効率を低下させずに実施することができる。
【００２２】
加えて、上記のようにエキマニ２に対して触媒６及び上下のＥＧＲ管路７ａ，７ｂが一体化されているため、エキマニ２を含めたこれらの部材を、エンジン組立工程の段階でエンジンに設置可能となる。つまり、従来技術として説明した特開２０００−２４９００３号公報に記載のように、床下触媒とエンジンとをＥＧＲ管路で接続する場合には、エンジン組立工程の段階ではＥＧＲ管路を設置できず、組立完了したエンジンを車体に搭載する段階で始めてＥＧＲ管路の設置が可能となり、組付け作業が煩雑化してしまう。よって、本実施形態のＥＧＲ装置によれば、組付け作業を合理化できるという利点も得られる。
【００２３】
一方、周知のようにエキマニ２の排気パイプ２ｃは、エンジン運転の度に排気熱で膨張するため、ＥＧＲ管路７ａ，７ｂの上下端８ａ，８ｂ間の距離が変動したり、上下端８ａ，８ｂが円周方向（捻れ方向）に角度変化したりするが、ベローズ９ｂが上記熱膨張を吸収し、且つ、触媒６に対して環状ブラケット４が軸方向に移動することで上記熱膨張の影響を受けることなく支持できるため、このときの応力による触媒６の破損を未然に防止でき、ひいては耐久性を向上させることができる。
【００２４】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、４気筒ガソリンエンジン用のＥＧＲ装置に具体化したが、エンジンの形式はこれに限らず、エンジンの気筒数を変更したり、ディーゼルエンジン用のＥＧＲ装置に具体化したりしてもよい。又、近接触媒の有無も限定されることはなく、近接触媒を備えたエンジンに適用してもよく、この場合でも、上記組付け作業の合理化等の利点を得ることができる。
【００２５】
又、上記実施形態では、ＥＧＲ管路７ｂのエンジン側取付フランジを、エキゾーストマニホールド２のエンジン側取付フランジ２ａと一体型としたが、ＥＧＲ管路７ｂのための専用のエンジン側取付フランジ別体で設けてもよい。更に、ＥＧＲ管路７ｂは、シリンダヘッド１内の下流側ＥＧＲ通路１１に接続されるものに限らず、シリンダヘッド１外に設けたＥＧＲ通路に接続されていてもよい。
【００２６】
更に、上記実施形態では、触媒６の外径に対して環状ブラケット４の内径を大きくすることで、触媒６の軸方向への移動を許容したが、その構造は限定されるものではなく、例えば環状ブラケット４は触媒６を移動不能に保持する一方、固定用のボルト５を中心として環状ブラケット４を揺動させることで、触媒６の軸方向の移動を許容してもよいし、或いは、環状ブラケット４自体の撓みによって触媒６の移動を許容してもよい。
【００２７】
【発明の効果】
以上説明したように請求項１の発明のエンジンのＥＧＲ装置によれば、排気系での触媒の設置状態に関わらず、ＥＧＲ管路を延長することなく、ＳＯＦ分の除去後のＥＧＲガスを還流でき、その結果、製造コストを低減した上で、吸気系へのデポジットの堆積を防止することができる。
更に、触媒をデッドスペースに配設し、エンジンルーム内のスペース効率を低下させずに実施することができるとともに、エキゾーストマニホールドの熱膨張に起因する触媒の破損を防止して、その耐久性を向上させることができる。
【００２８】
請求項２の発明のエンジンのＥＧＲ装置によれば、請求項１の発明に加えて、車体への組付け作業を合理化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施形態のエンジンのＥＧＲ装置を示す正面図である。
【図２】同じくＥＧＲ装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
２ エキゾーストマニホールド
４ 環状ブラケット（支持部材）
６ 触媒
７ａ 下側ＥＧＲ管路
７ｂ 上側ＥＧＲ管路
９ｂ ベローズ（可動部材）
１０ａ ＥＧＲガス導入口
１０ｂ ＥＧＲガス導出口
１１ 下流側ＥＧＲ通路

Claims (2)

1. 一端がエキゾーストマニホールドに接続されてＥＧＲガス導入口をなし、他端がエンジン側取付フランジに接続されて、下流側ＥＧＲ通路へのＥＧＲガス導出口をなすＥＧＲ管路と、
   上記ＥＧＲ管路に設けられて上記ＥＧＲガスの浄化を行う触媒と、を備え、
   上記ＥＧＲガス導入口は、上記エキゾーストマニホールドの集合部分に接続され、
   上記触媒は、上記エキゾーストマニホールドに対し、支持部材を介して軸方向への相対移動を許容された状態で支持され、上記エキゾーストマニホールドに隣接して配置され、
   上記触媒の両端に対するＥＧＲ管路のうちのＥＧＲガス導出口側のＥＧＲ管路には可動部材として蛇腹状のベローズが介装されている
   ことを特徴とするエンジンのＥＧＲ装置。
2. 上記エンジン側取付フランジを、上記エキゾーストマニホールドのエンジン側取付フランジと一体化したことを特徴とする請求項１に記載のエンジンのＥＧＲ装置。

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