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JP3971564B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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JP3971564B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素ガスを燃料として発電する燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在開発中の主要な燃料電池は、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)、直接メタノール改質型(DMFC)があり、水素ガスを燃料として発電するものは、リン酸型、固体高分子型、直接メタノール改質型である。この中で実用装置として販売されている燃料電池はリン酸型燃料電池が中心であり、また、最近自動車用、携帯用燃料電池として開発が積極的に進められているのは固体高分子型燃料電池である。この2種類の燃料電池は共に、水素ガスを燃料として発電するものである。
【0003】
水素ガスを燃料とする燃料電池の発電の仕組みを図7を用いて説明する。水素ガスが、水素極(アノード側)78bにおいて、触媒の反応により水素イオンと電子に分かれ、水素イオンが電解質78c中を通過し、酸素極(カソード側)78aで酸素と外部の迂回路を通ってきた電子と結合して水となる。このとき外部の迂回路を通ってきた電子の流れが電流となり、発電するものである。
【0004】
燃料となる水素は水素を多く含む物質、例えばアンモニアや化石燃料(天然ガス、石油蒸留物、液体プロパン、石炭ガスなど)、エタノール、メタノール、バイオマスなどから製造することができるが、これらの炭化水素物質(原燃料)を燃料電池78の前段に付けた改質器75により改質し、水素を含む改質ガス59を得て、これを燃料とする内部改質型燃料電池システムが提案、実用化されている。
【0005】
内部改質型燃料電池の仕組みを、メタノール改質型固体高分子燃料電池を例にとって説明する。
【0006】
まず原燃料となるメタノールと改質反応に必要な水を100〜200℃の温度で気化器74で気化させ、改質器75に送られる。
【0007】
改質器75ではCu−Zn系の触媒を用いて、約200〜300℃において式(1)に示すような反応を経て水素が製造される。
[水蒸気改質] CH3OH+H2O → CO2+3H2 ・・・式(1)
また、始動時に水素製造速度を早めるために、大気を送り込み、メタノールと大気を400〜600℃において式(2)に示す反応により水素を製造する方法もある。この場合は、Cu系の触媒や白金系の触媒が使用されている。ただしこの場合、反応式から明らかなように、式(1)の水蒸気改質と比較して水素濃度が減少する問題もある。
[部分酸化改質] CH3OH+1/2O2+N2 → CO2+2H2+2N2・・・式(2)
また、この両者を複合させた併用改質もある。この場合は、改質温度が200〜600℃であり、Cu系や白金系の触媒、またCuと白金を混合した触媒などが用いら、式(3)に示す反応式で水素が製造される。
Figure 0003971564
始動性の面では、式(2)の部分酸化改質が望ましいが、水素濃度が低くエネルギー収支も悪いため、水素濃度が高く、エネルギー収支が理論上プラスになる式(1)の水蒸気改質が定常状態では望ましいが、始動性を考慮して式(3)の併用改質が利用されることが多い。
【0008】
改質器75には多めに水蒸気を送り込み、一酸化炭素を二酸化炭素に変換する式(4)のシフト反応(4)も同時に行われる。
[シフト反応] CO+H2O → CO2+H2 ・・・式(4)
このようにして得られた改質ガス59は、水蒸気改質、併用改質の場合、触媒によって異なるが水素(H2)約50%、水蒸気(H2O)約25%、一酸化炭素(CO)数%以下、残部二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)または未反応物となる。
【0009】
次に、改質ガス59は、一酸化炭素選択酸化器77に導入される。一酸化炭素選択酸化器77では、少量の大気を導入することにより、H2リッチな改質ガス中に含まれる微量の一酸化炭素を水素の酸化反応より優先的に二酸化炭素に酸化させる触媒(例えばRu系触媒)を充填させて、一酸化炭素を除去させる。一酸化炭素は、燃料電池78の電解質膜の白金触媒の微粒子に吸着してしまい、水素分子が白金触媒の微粒子に近づくのを物理的に阻害して、水素極78bの性能を著しく低下させる(CO被毒)ため上記工程で一酸化炭素を除去する。最近では、Pt−Ru系合金を中心とする水素極78b側の触媒の改良により一酸化炭素濃度を数十ppmまで低下させることにより性能低下が少なくなったものの、装置の大きさの問題を含め、一酸化炭素選択酸化器77の改良は依然大きな問題である。
【0010】
このようにして得られた、燃料ガス64は燃料電池78に送られる。このとき、燃料電池78の燃料ガスが不足しないよう20〜30%程度過剰に燃料電池78に送られる。燃料電池78では、前述したように、燃料ガス64中の水素が触媒の反応により水素イオンと電子に分かれ、水素イオン(プロトン:H+)が電解質中を通過し、酸素極78aで酸素と外部の迂回路を通ってきた電子と結合して水となる。このとき外部の迂回路を通ってきた電子の流れが電流となり発電する。
【0011】
電解質膜が固体高分子の場合、非常に重要な項目として、電解質の十分な導電性を確保するために、膜中に保水することが不可欠である。水素イオンは膜中でも水和しており、電気浸透により水素極78bから酸素極78aにH2O/2H+=2〜4の水を持ち去る。それゆえ、特に水素極78b側の電極、電解質が乾燥しやすいので、水分含有量を管理する必要がある。水分管理は、加湿器75による強制加湿による方法と、原燃料と共に送られる水を多めに供給することで賄う方法とがある。
【0012】
また、過剰に送られた燃料ガスは、未利用のままオフガス65として排出され、燃料の有効利用のため、再度改質器75の供給口に接続され、再利用される。また、オフガス65の一部は燃焼器79の燃焼ガスとして利用される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、固体高分子型燃料電池においては、
一酸化炭素の被毒対策のために改質ガス中の一酸化炭素を除去すること、
燃料電池セルにおける電解質に水分を供給すること、
改質型燃料電池では水素濃度が低いためできるだけ高濃度にすること、
以上が重要な課題である。
【0014】
そこで、特開平7−57758号公報には、改質ガスの一酸化炭素成分の除去と、水素濃度の向上を目的として、パラジウムを含有する合金からなる水素分離膜から構成される水素精製器が提案されている。この場合、水素分離膜を透過した改質ガスは1000ppmの一酸化炭素を含んだ99.5%以上の水素ガスであり、水素濃度は高純度化されているものの、原理的に水素のみが透過するため水蒸気も同時に除去することとなる。このため、電解質の水分供給は加湿器による外部からの強制加湿に依存することとなり、水素供給量の変動に対応した加湿器の制御が必要となるという問題があった。
【0015】
さらには、パラジウム合金からなる水素分離膜を透過しなかった排ガス成分(水蒸気、一酸化炭素、未反応の炭化水素、分離膜を透過しなかった水素)は改質器などの加熱炉(燃焼器)の燃料として再利用するが、排ガス成分中に多量の水蒸気を含んでいるために、一旦水分分離器にて水蒸気を凝縮して分離する必要が生じるという問題があった。
【0016】
同様に、特開平11−71101号公報、特開平8−338260号公報、特開平7−320763号公報等にも同じくパラジウム合金からなる水素分離膜を用いた水素の精製手段が提案されているが、いずれも水蒸気を同時に透過させるものではなかった。
【0017】
以上のように、(1)改質ガスから水素を高濃度化し燃料電池の発電効率を向上させ、(2)一酸化炭素成分を同時に低減し、かつ(3)水蒸気を透過して水分供給を容易にする手段はなかった。
そこで、本発明は、発電効率に優れた燃料電池システムを提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池システムは、固体高分子型またはリン酸型の燃料電池と、該燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を有する燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給手段は、原燃料の改質反応に必要な水を気化するための気化室と、原燃料を改質するための改質器と、該改質器で改質された改質ガスを精製して混合ガスを作製するためのガス精製装置と、該ガス精製装置で精製された混合ガスから一酸化炭素を除去して燃料ガスを作製するための一酸化炭素選択酸化器とをこの順で具備し、
前記ガス精製装置は、平均細孔径が0.5nm以下のSiとZrとを含有する非晶質酸化物質から構成される無機材質の分離膜を備えるとともに、前記改質器にて改質された改質ガスを、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素濃度1000ppm以下の混合ガスに精製することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1〜3は本発明のガス精製装置の一例を示す略図である。
【0025】
水素と水蒸気と一酸化炭素を含有する改質ガス9が導入口1から導入され、筒状の支持体6中を通過する。その際支持体6上に成膜された中間層12と分離膜13を改質ガス9中の酸素と水蒸気が優先的に通過し、、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上であり、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素濃度1000ppm以下の混合ガス(透過ガス10)となって、透過ガス排出口2より排出される。大流量の改質ガスが導入され、水素と水蒸気の回収率を向上させる場合は、このガス精製装置を多数個配列させ分離膜13の膜面積を大きくすると良い。
【0026】
ガス精製装置の構成を、詳細に説明する。
【0027】
支持体6は気孔率が20〜40体積%、平均気孔径が0.1〜1μmの多孔質アルミナなどの無機多孔質体より構成される。支持体6の表面には平均細孔径が1〜100nm、膜厚が約0.1〜5μmのγ−アルミナなどのアルミニウム酸化物からなる中間層12が存在する。さらに中間層12の上にはSi−Zr−O成分の非晶質酸化物からなり、膜厚が1μm以下の分離膜13が存在する。
【0028】
以上のような構成を成す支持体6は、例えば、外径が3mm、内径が2mm、長さが300mmのチューブ形状であり、約300本が保持板7と硼珪酸ガラスで固定、封止してある。支持体6はお互いに0.5mmの隙間を有して配する。保持板7は気孔率5体積%以下のアルミナ焼結体からなる。
【0029】
支持体6と保持板7は、耐熱性Oリング8を介して、ステンレス製のハウジング4に挿入され、ガス精製装置を成す。
【0030】
このとき、水素と水蒸気が分離膜13を多量透過するように圧力弁5を絞ることによって、支持体6内の圧力と透過側の圧力に差圧を設けることができ、水素と水蒸気の透過効率が向上する。未透過ガス排出口3からは水素と水蒸気濃度が低くなった排ガス(未透過ガス11)が排出される。
【0031】
以上のようにして作製されたガス精製装置は、耐熱性が350℃以上の無機材質の分離膜13から構成されており、仮に長時間燃料電池システム中で使用しても十分な耐熱性を有し、水素、水蒸気ガスが一酸化炭素ガスの透過速度より優先的に透過するので改質ガス9中の水素、水蒸気を高濃度化させたガスを製造することができる。
【0032】
本発明のガス精製装置は、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上であり、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素が1000ppm以下であることが重要である。この理由を説明する。
【0033】
水素は、H+および電子(電流)となるための燃料に相当し、また水蒸気は電解質の導電性を確保するために不可欠な成分であるため、水素と水蒸気の合計の濃度が90体積%未満になると、不要ガスが増加して、水素極28bの導電性電解質膜との接触頻度が低下し、発電効率が低下する。
【0034】
また、燃料電池は発電源として使用されるために、出力の急激な変動は避けられないが、水蒸気濃度と水素濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3未満であれば、導電性を確保するための水分を加湿器に依存することとなり、供給水素の急激な変動に伴う加湿器の急激な変動を余儀なくされ、加湿器の制御が困難となるが、体積比率が0.3以上であれば、供給水素の急激な変動が生じても加湿器は不足分の水分を補充するだけで良く、加湿器にかかる負担が軽減でき、かつ小型化が可能となる。水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が6を越えると、燃料である水素が不足し、発電効率が低下する。
【0035】
一酸化炭素は1000ppm以下であることが重要である。一酸化炭素は燃料電池触媒の被毒ガスであり、一酸化炭素選択酸化器で100ppm以下に低減させる必要があるが、100ppm以下とするためには一酸化炭素選択酸化器が大型化する。1000ppm以下であれば装置の小型化が可能となる。
【0036】
以上のような理由により、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上であり、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素が1000ppm以下であれば、装置の小型化およびエネルギー効率の向上に寄与することが可能となるのである。
【0037】
次に、無機材質の分離膜13が、平均細孔径0.5nm以下のSiとZrを含有する非晶質酸化物層から構成されることが重要である。
【0038】
分離膜13内の構造においては、Si−Oで表されるシロキサン結合間にZrが介在するためにシロキサン結合の安定性を高めることができ、高温下および水分の存在下においても結合状態が変化することなく、耐熱性を高めることができ、その結果、Si−Zr−O成分の無機材質は耐熱性が350℃以上であり、改質ガスの温度150℃以上に対しても十分な耐熱性を要することができる。さらには、改質ガスが150℃以上であるため、導入ガス(改質ガス9)分子のもつブラウン運動も活発となり、水素と水蒸気の透過量も大きくなり、すなわち耐熱性を有する無機材質であるために改質ガスの温度エネルギーを有効に利用することが可能となる。前記SiとZrとの原子比(Zr/Si)は0.01〜1、特に0.1〜0.5の範囲内からなることが耐熱性、耐水性の点で望ましい。
【0039】
本発明の分離膜の製造方法は、例えばシリコンのアルコキシドとジルコニウムのアルコキシドをアルコール溶媒中で混合して複合アルコキシドを調整する工程と、該複合アルコキシドを加水分解して前駆体ゾルを作製する工程と、該前駆体ゾルを多孔質支持体の少なくとも一方の表面に塗布して乾燥した後、350〜700℃の温度で焼成する工程とを具備することにより製造される。さらに前記シリコンのアルコキシドがテトラアルコキシシランと有機官能基を有するトリアルコキシシランの混合物であり、前記シリコンのアルコキシド全量中における前記トリアルコキシシランの含有量が10〜50モル%であることが望ましい。
【0040】
上記の製造方法によれば、前記シリコンのアルコキシドとして前記テトラアルコキシシランと前記有機官能基を有するトリアルコキシシランとからなることにより前記トリアルコキシシランの有機官能基がゾル形成時に立体的な障害となる、すなわち加水分解によるシロキサン結合形成時に該有機官能基の周囲を取り囲むように環状のシロキサン結合が形成される。このために、ゾル中に前記有機官能基によって所望の大きさを有するシロキサン結合の環状体、すなわち細孔骨格を形成できる。
【0041】
また、これを所定の温度で熱処理する事により、前記有機官能基が分解、除去され、細孔が形成されるが、熱処理後にも膜中に前記有機官能基が残存することによりシロキサン結合の過度の成長を阻害することができることから、ガス分子オーダーの細孔径を有する微細な細孔を残存させることができる。したがって、細孔径の制御は、前記有機官能基の種類、添加量、熱処理温度によって制御することが可能となる。
【0042】
このようにして生じた細孔径のサイズによって分子サイズの異なるガスが分離されることとなる。平均細孔径が0.5nmである場合を考えると、分離膜13には0.5nmをピークとした細孔径分布が生じているが、分子径の大きなガスは細孔を通過する確率が減少するため、平均細孔径が0.5nmを越えると、分子径の大きな一酸化炭素の透過量も大幅に増加し、水素、水蒸気との選択性が低下する。すなわち、水素と水蒸気は分子径が0.25〜0.30nmであり、一酸化炭素は分子径が0.37nmであるため、平均細孔径が0.5nm以下であれば分子径の小さな水素、水蒸気が分子径の大きな一酸化炭素より透過しやすくなり、水素と水蒸気濃度が向上したガスが得られることになる。平均細孔径が0.5nmを越えると、全てのガスの透過量は向上するが、ガスの篩い分けが不十分となり、一酸化炭素濃度が1000ppm以上となって、燃料電池の触媒が被毒する。さらには、平均細孔径が0.4nm以下、さらに望ましくは平均細孔径が0.3nm以下であれば一酸化炭素濃度が100ppm以下とすることができる。
【0043】
この分離膜13の平均細孔径の測定については、細孔が非常に小さいため一般的な細孔径の測定方法は適用できない。そこで、本発明者等は、例えばHe、H2O、H2、CO2、O2、CO、N2、CF4、SF6等、分子径の異なるガスの透過率を測定することにより、平均細孔径を推定する手法を用いている。
【0044】
これらの分離膜13は無機材質の多孔質支持体6上に成膜される。無機材質の支持体6は、例えば多孔質アルミナの支持体などが良い。支持体6は、ガスの透過に対する抵抗が小さい方が良いので、気孔率が容積比で20%以上、望ましくは30%以上必要である。機械的特性を向上させるには気孔率を40%以下にした方がよい。また、平均気孔径は、無機膜を均一に塗布してピンホールの発生を抑えるために、1μm以下、さらには0.5μm以下であることが望ましい。1μm以下の平均気孔径にするためにはセラミックの平均粒子径を1μm以下、さらには0.5μm以下にすることが望ましい。また、圧力損失を小さくするために平均細孔径を0.1μm以上、さらには0.5μm以上が望ましい。分離膜13のピンホールの発生を抑えるために、セラミック多孔質体体と無機膜の間に平均細孔径が1〜100nm、膜厚0.1〜5μmの中間層12を設けても良い。
【0045】
以上のようなセラミック多孔質体からなる支持体11を、チューブ状、ハニカム状、モノリス状、板状に成形したものを1個または複数個束ねたり重ねたりすることで表面積を向上させることができる。
【0046】
チューブ状のもので有れば、外径0.5mm以上、内径は(内径)/(外径)が0.9以下のものが作製できるが、表面積を向上させるためには外径3mm以下、(内径)/(外径)が0.5以上のものを複数本束ねることが望ましい。この場合、チューブ間の隙間は出来るだけ狭い方が装置容積当たりの表面積が向上するので望ましく、例えば、2mm以下、さらには0.5mm以下、さらには0.1mm以下であることが望ましい。次に束ねられたチューブ状のセラミック多孔質体は保持板に挿入され保持されるとともに、導入ガスと、透過ガスと未透過ガスが混合しないように封止される。保持板は、チューブとの熱膨張差が小さくなるような材質であることが望ましい。
【0047】
また、導入ガスと透過ガスと未透過ガスが混合しないようにするために保持板は緻密な方が良いが、多孔質体であっても表面をガラスで被覆するなどして導入ガスと透過ガスが混合しないようにすればよい。
【0048】
また、保持板7と支持体の隙間は、ガラスペーストを塗布した後、ガラスの軟化温度以上で焼成されて封止される。
封止するための材質は、保持板7と支持体との熱膨張差が小さいガラスなどが望ましいが、目的を達成するので有れば、耐熱樹脂、金属封止材等であっても構わない。
【0049】
ハニカム状、モノリス状の場合は、通口内を流れるガス中から透過したガスが気孔内を通じて側面に排出される。また、幾つかの貫通口の一端を目封じして、透過ガスを回収しても良い。これらのものを複数個束ねる場合は、チューブ状と同様に、透過ガスと混合ガスと未透過ガスが混合しないように封止することが重要である。
【0050】
支持体の形状は、上記のようなチューブ状、ハニカム状、モノリス状に限定されるものではなく、平板状、波板状のものを貫通口を有するように複数個積層して透過ガスを回収するなどでも構わない。
【0051】
以上のようにして作製されたガス精製装置は、耐熱性が350℃以上の無機材質の分離膜13から構成されており、仮に150℃のメタノール改質ガスや350℃のガソリン改質ガス中に長時間曝されても十分な耐熱性を有しており、水素ガス、水蒸気が一酸化炭素ガスより優先的に透過するため水素、水蒸気の濃度を高めることができる。
【0052】
次に、ガス精製装置を水素極側に接続した燃料電池について説明する。
【0053】
図4は固体高分子型燃料電池28に本発明のガス精製装置26を組み込んだときのシステム図である。固体高分子型燃料電池28はプロトン導電性を有する高分子膜28cの両側を酸素極28aと水素極28bで挟む一般的な構造である。
【0054】
メタノールがブロワー21により気化器24に送り込まれて気化された後、改質器25にて水素、水蒸気、一酸化炭素、窒素、二酸化炭素の改質ガス9となる。改質ガスは、ガス精製装置26において、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上であり、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素濃度1000ppm以下、の混合ガスに精製された後、一酸化炭素選択酸化器27において一酸化炭素を100ppm以下の最終燃料ガス14となり、固体高分子型燃料電池28の水素極28bに導かれる。水素極28bでは水素がプロトンと電子に分離し、小型加湿器30によって加湿されたプロトン導電性の高分子膜28c中をプロトンが移動し、酸素極28aにおいてブロワー23によって送り込まれた圧縮空気16中の酸素と電気化学的に反応して水が生成する。この様な反応が連続的に生じ、電子が連続的に流れることによって発電する。
【0055】
最終燃料ガス14中には水蒸気が含まれており、供給水素の急激な変動が生じても加湿器30は不足分の水分を補充するだけで良く、加湿器30にかかる負担が軽減できるため小型化が可能となり、燃料電池システム自体の小型化とエネルギー効率の向上に寄与する。
【0056】
水素極28bのオフガス15は発電に利用されなかった水素ガスを含んでいるため、再度燃料として利用するために改質器25等に戻し、またオフガス15の一部は水分除去器31で水分を除去した後、燃焼器29の燃料ガスとして利用される。燃焼器29は、気化器24、改質器25、一酸化炭素選択酸化器27の加熱用熱源であり、場合によってはガス精製装置26を加熱しても良い。また、ガス精製装置26の未透過ガス11中にも未回収の水素を含んでいるため、燃焼器29用の燃料ガスとして利用される。この場合、水分除去が必要な場合は小型水分除去器33で水分除去しても良いが、ガス精製装置26を利用しないシステムと比較して、水分除去器は非常に小型で十分である。以上のように、水素の有効利用を行い、燃費の向上を図っている。
【0057】
酸素極28aのオフガス17は水分除去器32で水分を除去された後、系外に排出される。水分除去器31、32、33で除去された水分はメタノールの改質反応に利用されたり、燃料電池の高分子膜の加湿に用いられる。
【0058】
以上メタノール改質を例に取り説明したが、メタノールに限られる物ではなく、ガソリンなどの化石燃料(天然ガス、液体プロパン、石炭ガス、石油蒸留物)、エタノール、バイオマスなど改質する事により水素を発生する場合には、本システムは非常に有効となる。また、固体高分子型燃料電池システムに限られるものではなく、水素を燃料とするリン酸型燃料電池でも良い。
【0059】
また、酸素極28aでは空気中の酸素を利用するが、空気から酸素富化空気を生成する酸素富化装置、酸素分離膜等を本システムと同時に用いれば、起電力の向上が可能となり、さらなる燃料電池の発電効果が向上する。
【0060】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0061】
実施例 1
図7に示したシステムにおいて、ガス精製装置26を組み込まない従来の燃料電池システムと、図4に示す本発明の燃料電池システムにおいて、表1に示す種々の平均細孔径の分離膜を有するガス精製装置26を組み込んだときの燃料電池特性を比較した。固体高分子型燃料電池は、扁平型10セルスタックとし、圧力200KPa、セル温度80℃のときの電流−電圧特性を図5に示した。また、ガス精製装置より排出される透過ガス10はガスクロマトグラフィーにより水素、水蒸気、一酸化炭素濃度を測定して、表1に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0003971564
【0063】
表1から判るように、本発明のガス精製装置26を組み込まない比較例1および平均細孔径が0.5nmを越える分離膜13を有するガス精製装置を組み込んだ比較例2は、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%未満であり、かつ一酸化炭素濃度が1000ppmを越えるため、セル電圧が大幅に低下している。これに対し、平均細孔径が0.5nm以下の分離膜を有するガス精製装置を組み込んだ実施例3〜5はセル電圧が高いことから、本発明のガス精製装置が燃料電池の発電効率の向上に寄与することがわかる。
【0064】
実施例 2
図4のシステムにおいて、ブロワー22によって気化器24に送り込む水蒸気量を変化させ、平均細孔径0.4nmの分離膜を有するガス精製装置26より排出される透過ガス10の水蒸気濃度/水素濃度を表2のように変化させ、このときの電流−電圧特性を測定した。固体高分子型燃料電池は扁平型10セルスタックとし、圧力200KPa、セル温度80℃のときの電流−電圧特性を図6に示した。また、ガス精製装置より排出される透過ガス10はガスクロマトグラフィーにより水素、水蒸気、一酸化炭素濃度を測定して、表2に示した。
【0065】
【表2】
Figure 0003971564
【0066】
表2から判るように、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3未満の比較例6は水蒸気量が少なく、水和して移動するプロトン量が不足するためセル電圧が低下した。また、水蒸気濃度/水素濃度が6を越える比較例11は水素成分が少ないため、高いセル電圧が得られなかった。水蒸気濃度/水素濃度が0.3〜6である実施例7〜10は高いセル電圧が得られたことから、本発明の水蒸気濃度/水素濃度の範囲内であれば、燃料電池の発電効率の向上に寄与することが分かる。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素濃度が1000ppm以下の混合ガスを作製し、固体高分子型またはリン酸型の燃料電池に前記燃料ガスを供給することができ、燃料電池システム全体の発電効率の向上と小型化が可能となり、定置式発電源、または自動車用の動力源として使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス精製装置の概略図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図2のB部の拡大図である。
【図4】本発明のガス精製装置を組み込んだ固体高分子型燃料電池システムの構成図である。
【図5】本発明の燃料電池のセル電圧−電流密度特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の燃料電池のセル電圧−電流密度特性の一例を示す図である。
【図7】従来の固体高分子型燃料電池システムの構成図である。
【符号の説明】
1;導入口 2;透過ガス排出口 3;未透過ガス排出口
4;ハウジング 5;圧力弁 6;支持体 7;保持板
8;Oリング 9;改質ガス 10;透過ガス 11;未透過ガス
12;中間層 13;分離膜 14;最終燃料ガス
15;水素極オフガス 16;圧縮空気 17;酸素極オフガス
21、22、23;ブロワー 24;気化器 25;改質器
26;ガス精製装置 27;一酸化炭素選択酸化器 28;燃料電池
28a;酸素極 28b;水素極 29;燃焼器 30;小型加湿器
31、32、34;水分除去器 33;小型水分除去器

Claims (1)

  1. 固体高分子型またはリン酸型の燃料電池と、該燃料電池に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を有する燃料電池システムであって、
    前記燃料ガス供給手段は、原燃料の改質反応に必要な水を気化するための気化室と、原燃料を改質するための改質器と、該改質器で改質された改質ガスを精製して混合ガスを作製するためのガス精製装置と、該ガス精製装置で精製された混合ガスから一酸化炭素を除去して燃料ガスを作製するための一酸化炭素選択酸化器とをこの順で具備し、
    前記ガス精製装置は、平均細孔径が0.5nm以下のSiとZrとを含有する非晶質酸化物質から構成される無機材質の分離膜を備えるとともに、前記改質器にて改質された改質ガスを、水素濃度と水蒸気濃度の合計が90体積%以上、水素濃度と水蒸気濃度の体積比率(水蒸気濃度/水素濃度)が0.3〜6、かつ一酸化炭素濃度1000ppm以下の混合ガスに精製することを特徴とする燃料電池システム。
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