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JP3966805B2 - 空燃比検出装置 - Google Patents

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JP3966805B2 JP2002333901A JP2002333901A JP3966805B2 JP 3966805 B2 JP3966805 B2 JP 3966805B2 JP 2002333901 A JP2002333901 A JP 2002333901A JP 2002333901 A JP2002333901 A JP 2002333901A JP 3966805 B2 JP3966805 B2 JP 3966805B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用エンジン等の空燃比(燃料と吸入空気との混合比)を検出するのに好適に用いられる空燃比検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用エンジン等では、例えば排気管の途中に空燃比センサ(酸素センサを含む)を設け、この空燃比センサを用いて排気ガス中に含まれる酸素濃度等を検出する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭61−100651号公報
【0004】
この種の従来技術による空燃比センサは、例えば細長いプレート状に形成されたヒータ部と、該ヒータ部に対して積層化するように形成され該ヒータ部からの熱によって活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層の表面側に設けられた複数の電極と、これらの電極を固体電解質層と共に外側から覆うガス拡散層等とにより構成されている。
【0005】
ここで、空燃比センサは、外部から電圧を印加したときに前記電極間に拡散限界電流としてのポンプ電流が流れ、このポンプ電流を計測することによりエンジンの空燃比を検出する。
【0006】
そして、エンジンの制御装置は、空燃比センサから出力される空燃比信号により、燃料と空気との混合比である空燃比A/Fを、例えば理論空燃比(A/F=14.7)またはリーン空燃比(A/F≧15)等に近付けるように燃料噴射量をフィードバック制御し、これによって、エンジンの燃焼効率や燃料消費量(燃費)等を向上させるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による空燃比センサは、固体電解質層の表面側に設けた複数の電極を、多孔質材料からなるガス拡散層で覆っているに過ぎないので、排気ガス等の被測定ガスがガス拡散層を通って電極に達するまでの経路が多方向に存在している。
【0008】
このため、排気ガスがガス拡散層を通って電極に達するときのガス拡散抵抗にバラツキが発生し易くなり、ポンプ電流(拡散限界電流)の特性が不安定となって、空燃比の検出精度が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、外部の被測定ガスがガス拡散層を通って電極に達するまでのガス拡散距離をほぼ一定にし、拡散限界電流の特性を安定させると共に、空燃比の検出精度を向上できるようにした空燃比検出装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による空燃比検出装置は、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部に設けられ、被測定ガスが内部を拡散するガス拡散層と、該ガス拡散層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層と前記ガス拡散層との間に設けられ、前記ガス拡散層を通じて被測定ガスが導かれる第1の電極と、該第1の電極との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、外部から電圧を印加したときにポンプ電流が該第1の電極との間に流れる第2の電極と、該第2の電極から離間して前記固体電解質層の外側面に設けられ、前記被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が前記第1の電極との間に発生する第3の電極と、前記固体電解質層の外側面に設けられ、該第3の電極、固体電解質層、第2の電極および前記ガス拡散層を外側から覆うことにより前記被測定ガスが内部に侵入するのを抑える緻密層と、該緻密層に予め決められた開口幅をもって設けられ、前記被測定ガスが開口幅の範囲内で前記ガス拡散層と第2の電極とに向けて侵入するのを許す開口部とを備え、前記ガス拡散層を通じて第1の電極に導かれる被測定ガスの空燃比を前記第1の電極と第2の電極との間に流れる前記ポンプ電流により検出する構成している。
【0011】
このように構成することにより、緻密層に設けた開口部は、外部からの被測定ガスがガス拡散層と第2の電極とに向けて侵入する経路を開口幅の範囲内に制限でき、被測定ガスがガス拡散層を通って第1の電極に達する経路をほぼ一方向の経路とすることができる。
【0012】
このため、被測定ガスがガス拡散層を通って第1の電極に達するまでのガス拡散距離をほぼ一定に保つことができ、第1,第2の電極間を流れるポンプ電流の拡散限界値にバラツキが生じて、拡散限界電流が不安定になるのを防ぐことができる。これにより、ポンプ電流である拡散限界電流のフラット性を向上させ、ヒステリシスの発生を抑えることができると共に、空燃比検出信号としての特性を安定させ、空燃比の検出精度を高めることができる。
【0013】
また、請求項2の発明によると、開口部は、緻密層の端部をコ字形状に切欠くことにより凹形状に形成され、ガス拡散層を固体電解質層および第2の電極と共に部分的に露出させる構成としている。
【0014】
これにより、空燃比検出装置全体を略円形のロッド形状に形成した場合には、例えば緻密層の外径寸法Dに対し、(2/3〜1)×Dなる開口幅をもった凹形状の開口部を緻密層に形成でき、外部の被測定ガスがガス拡散層内に侵入する経路を、開口幅の範囲内でほぼ一方向(例えば、空燃比検出装置の軸方向)に制限できると共に、被測定ガスがガス拡散層を通って第1の電極に達するときのガス拡散抵抗にバラツキが発生するのを良好に抑えることができる。
【0015】
さらに、請求項3の発明によると、第1,第2,第3の電極は、ヒータ部の長さ方向に延びるリード線部をそれぞれ有し、これらの各リード線部のうち前記第1の電極のリード線部と前記第3の電極のリード線部との間には、被測定ガスの侵入を抑える他の緻密層を設ける構成としている。
【0016】
これにより、第3の電極のリード線部を第1の電極のリード線部から隔離して被測定ガスとの接触をより確実に防止でき、第3の電極における酸素分圧を基準となる酸素分圧としてほぼ一定に保つことができる。この結果、安定したセンサ出力を得ることができ、外部から印加する電圧をより低い電圧まで下げてエネルギ効率を向上することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による空燃比検出装置を、自動車用エンジンの排気管側に取付けられる広域空燃比センサに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0018】
ここで、図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は空燃比センサのケーシングで、該ケーシング1は、軸方向一側(先端側)外周に取付部としてのおねじ部2Aが形成された段付筒状のホルダ2と、該ホルダ2の軸方向他側(基端側)に一体的に固着された有底筒状のキャップ3と、該キャップ3内に同軸に配設され、後述のシールキャップ10とホルダ2との間に位置決めされたガイド筒4とにより構成されている。
【0019】
また、ケーシング1の構成部品であるホルダ2、キャップ3およびガイド筒4は、例えばステンレス鋼等の金属材料を用いて形成されている。そして、ケーシング1は、後述の空燃比検出素子21を自動車用エンジンの排気管(図示せず)内に突出状態で取付けるために、ホルダ2のおねじ部2Aが排気管に螺着されるものである。
【0020】
5はケーシング1のホルダ2内に金属製のシールリング6を介して配設された絶縁支持体を示し、該絶縁支持体5は、例えば酸化アルミニウム(Al23 )等のセラミックス材料により筒状に形成され、その内周側には空燃比検出素子21が固定されている。そして、絶縁支持体5は、ケーシング1内に空燃比検出素子21を位置決めすると共に、空燃比検出素子21を電気的および熱的に絶縁状態で保持するものである。
【0021】
7,8はケーシング1のガイド筒4内に配設された絶縁筒体を示し、該絶縁筒体7,8は、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)等のセラミックス材料により筒状に形成され、後述の各コンタクトプレート13,14等をケーシング1に対して絶縁状態に保持するものである。
【0022】
9はケーシング1内に位置して絶縁支持体5と絶縁筒体7との間に配設された弾性部材としてのスプリングで、該スプリング9は、絶縁支持体5をホルダ2側に向けて常時付勢し、ケーシング1に外部から作用する振動や衝撃等が空燃比検出素子21に直接伝わるのを防止するものである。
【0023】
10はキャップ3の基端側を閉塞したシールキャップを示し、該シールキャップ10は、耐熱性を有する樹脂材料等によって段付き筒状に形成され、ケーシング1内に絶縁筒体7,8等をスプリング9を介して位置決めしている。
【0024】
また、シールキャップ10には、検出用のリード線11,11,…と、ヒータ用のリード線12,12(一方のみ図示)とが挿通されている。そして、これらの各リード線11,12は、絶縁筒体8内でそれぞれ検出用のコンタクトプレート13,13,…と、ヒータ用のコンタクトプレート14,14とにそれぞれ個別に接続されている。
【0025】
15はケーシング1のホルダ2に設けられたプロテクタで、該プロテクタ15は、例えば耐熱性の高い金属板等を用いて有蓋筒状に形成されている。そして、プロテクタ15は、後述する空燃比検出素子21の先端部分を外側から覆うように基端側がホルダ2に取付けられ、先端(蓋部)側がホルダ2から軸方向に突出して設けられている。
【0026】
また、プロテクタ15の筒部側には、被測定ガスとなる排気ガスの流通を許す複数の窓部15A,15A,…が形成されている。そして、これらの窓部15Aは、排気管内を流れる排気ガスを空燃比検出素子21の先端側周囲に導くものである。
【0027】
次に、21は空燃比検出装置としての空燃比検出素子で、該空燃比検出素子21は、ケーシング1のホルダ2内に絶縁支持体5を介して取付けられ、先端側がホルダ2から軸方向に突出している。そして、空燃比検出素子21は、図2ないし図7に示す如く後述のヒータ部22、ガス拡散層26、固体電解質層27、緻密層32および保護層34等によって構成されている。
【0028】
22は細長いロッド状に形成された心棒部となるヒータ部で、該ヒータ部22は図2ないし図4に示す如く、例えばアルミナ等のセラミックス材料により小径の中実ロッド状に形成されたヒータコア23と、ヒータパターン24および絶縁性のヒータ被覆層25とから構成されている。
【0029】
ここで、ヒータパターン24は、例えばアルミナを混合した白金等の発熱性導体材料からなり、ヒータコア23の外周面に曲面印刷等の手段を用いて形成されている。また、ヒータパターン24は、ヒータコア23の先端側から基端側に向けて延びる一対のリード部24A(図2中に1個のみ図示)を有し、これらのリード部24Aは、ヒータコア23の基端側で図1に示すようにヒータ用の各コンタクトプレート14に接続される。
【0030】
そして、ヒータパターン24は、外部のヒータ電源(図示せず)からヒータ用の各リード線12、各コンタクトプレート14および各リード部24Aを介して給電されることにより、例えば約650〜800℃程度の温度にヒータ部22を発熱させるものである。
【0031】
また、ヒータ部22のヒータ被覆層25は、ヒータパターン24をリード部24Aと一緒に径方向外側から保護するために、例えばアルミナ等のセラミックス材料を曲面印刷等の手段でヒータコア23の外周側に厚膜印刷することにより形成されている。また、ヒータ被覆層25の外周側には、後述のガス拡散層26等が曲面印刷等の手段を用いて積層化するように形成されている。
【0032】
26はヒータ部22のヒータ被覆層25の外周側に設けられた多孔質構造のガス拡散層で、該ガス拡散層26は、例えばアルミナの粉体(所定重量%のジルコニアの粉体を混合してもよい)からなるペースト状物を、曲面印刷等の手段を用いて図4ないし図7に示すようにヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0033】
そして、ガス拡散層26は、連続気泡からなる空孔を有して多孔質構造に形成され、空燃比検出素子21の周囲を流れる排気ガスの一部を、図5中に示す矢示A方向(軸方向)から後述のガス導入窓33を介してガス拡散層26の内部に拡散させつつ、この排気ガスを後述の内側電極28に向けて透過させる機能を有している。
【0034】
27はヒータ被覆層25の外周側に曲面印刷等の手段を用いて設けられた酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層27は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなるペースト状物を調整した後、このペースト状物を図4ないし図7に示す如くガス拡散層26の外側からヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0035】
そして、固体電解質層27は、後述の電極28,29間、電極28,31間でそれぞれ酸素イオン等を輸送する機能を有するものである。また、固体電解質層27は、後述の緻密層32とほぼ同様に緻密な構造を有し、排気ガス等が内部に透過、侵入することはないものである。
【0036】
なお、固体電解質層27は、図4に示すようにヒータ被覆層25の外周側でガス拡散層26の上側に積層化するように形成され、その周方向長さは固体電解質層27の方がガス拡散層26よりも小さい寸法となっている。このため、ガス拡散層26は、固体電解質層27によって外側から完全に覆われることはなく、ガス拡散層26の周方向両側は、図4に示す如く固体電解質層27からヒータ被覆層25の周方向にはみ出している。
【0037】
28,29はガス拡散層26と固体電解質層27との間に位置して固体電解質層27の内周側に設けられた第1の電極としての内側電極で、該内側電極28,29は、白金等の導電性材料からなり、図4ないし図7に示すように固体電解質層27を曲面印刷する前に、ガス拡散層26の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成されるものである。
【0038】
そして、これらの内側電極28,29は、図5ないし図7に示すようにガス拡散層26の軸方向で互いに離間して配置され、径方向では後述の電極30,31と固体電解質層27を挟んで対向している。しかし、これらの内側電極28,29は、リード線(図示せず)等を介して互いに接続され、図7に示す後述の仮想グランド35と同電位におかれるものである。
【0039】
また、これらの内側電極28,29は、例えば内側電極29側にリード線部としてのリード部29A(図2中に図示)を有し、このリード部29Aはヒータ部22の基端側に向けヒータ被覆層25の軸方向に伸長している。そして、固体電解質層27は、このリード部29Aを除いて内側電極28,29を外側から完全に包込むようにヒータ被覆層25の外周面に曲面印刷されるものである。
【0040】
30はヒータ部22の先端側寄りに位置して固体電解質層27の外周面に設けられた第2の電極としての外側測定電極で、該外側測定電極30は、図4ないし図7に示す如く内側電極28との間で固体電解質層27を挟むことにより、内側電極28と外側測定電極30は、所謂ポンピング電極を構成するものである。
【0041】
そして、外側測定電極30は、後述する基準電極31のリード部31Aと同様にリード線部となるリード部(図示せず)を有し、このリード部は、基準電極31のリード部31Aからヒータ被覆層25の周方向に離間した状態で、ヒータ被覆層25の外周に沿って基端側へと軸方向に延びて形成されるものである。
【0042】
31は外側測定電極30からヒータ部22の軸方向に離間して固体電解質層27の外周面に設けられた第3の電極としての基準電極で、該基準電極31は、図5ないし図7に示す如く内側電極29との間で固体電解質層27を挟むように配置され、後述の如く排気ガス中の酸素濃度に対応した起電力が内側電極29との間に発生するものである。
【0043】
そして、これらの外側測定電極30、基準電極31は、内側電極28,29と同様の導電性材料からなり、この導電性ペーストを固体電解質層27の外周面にそれぞれ曲面印刷することによって形成される。また、基準電極31は、ヒータ部22の基端側に向けて伸長するリード線部としてのリード部31A(図2中に図示)を有している。
【0044】
また、内側電極28,29のリード部29A、外側測定電極30のリード部および基準電極31のリード部31Aは、図1に示す空燃比検出素子21の基端側でそれぞれのコンタクトプレート13およびリード線11に接続され、図7に例示するような電気回路を構成するものである。
【0045】
32はガス拡散層26、固体電解質層27および電極30,31等を外側から覆うように設けられた緻密層で、この緻密層32は、例えばアルミナの粉体に酸化珪素(Si O)の粉体を添加してペースト状物を調整し、このペースト状物をガス拡散層26、固体電解質層27等の外側からヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより形成され、図7に示す如くヒータ被覆層25の先端側から基端側に向けて延びている。
【0046】
そして、緻密層32は、前記ペースト状物となる粉体の平均粒径が小さく(例えば、0.3〜0.5μm程度)に形成されることにより、ガス拡散層26等に比較して緻密な構造をなし、これにより排気ガスが内部に侵入するのを遮断して抑える機能を有している。このため、基準電極31は、リード部31Aを除いて固体電解質層27と緻密層32によって完全に周囲が取囲まれ、外部の排気ガスから隔離した状態に保たれるものである。
【0047】
また、ガス拡散層26および外側測定電極30についても、後述のガス導入窓33の位置を除いて図2、図3に示す如く緻密層32で覆われるため、この緻密層32で覆われた部分では、排気ガスの侵入、接触が遮断される。これにより、ガス拡散層26に対する排気ガスの侵入経路は、図5に示す矢示A方向(ヒータ部22、ガス拡散層26等の長さ方向)に制限されるものである。
【0048】
33は緻密層32に設けられた開口部としてのガス導入窓で、該ガス導入窓33は、図2ないし図5に示す如くヒータ部22の先端側寄りに位置する緻密層32の端部を、コ字形状に切欠くことにより凹形状の開口として形成され、その開口幅Wは、例えば緻密層32の外径寸法Dに対し、下記の数1式による関係に設定されるものである。
【0049】
【数1】
W=(2/3〜1)×D
【0050】
そして、ガス導入窓33は、図4に示す如く開口角θをもって形成され、開口幅Wと開口角θとの関係は、緻密層32の外径寸法Dに対して下記の数2式で表されるものである。例えば、緻密層32の外径寸法Dが3mmの場合、ガス導入窓33の開口幅Wは、例えば2.0〜3.0mm、好ましくは2.5〜2.8mm程度の大きさに形成される。
【0051】
【数2】
W=(θ/360)×D×π
【0052】
また、ガス導入窓33は、空燃比検出素子21の長さ方向(軸方向)で図2、図3に示す如く外側測定電極30の位置まで延び、該外側測定電極30をガス拡散層26および固体電解質層27と共に緻密層32から部分的に露出させるものである。そして、ガス導入窓33は、外部の排気ガスが開口幅Wの範囲内でガス拡散層26、外側測定電極30に侵入、接触するのを許すものである。
【0053】
この場合、ガス拡散層26の外周側は、緻密層32とほぼ同様に緻密な構造を有した固体電解質層27により径方向外側から覆われており、外部の排気ガスが固体電解質層27を透過してガス拡散層26に達することはない。
【0054】
このため、ガス拡散層26は、長さ方向の一側となる先端側のみがガス導入窓33の位置で排気ガスと接触可能となる。そして、ガス導入窓33は、外部の排気ガスをガス拡散層26内に向けて長さ方向(図5中の矢示A方向)に導入し、これ以外の方向から排気ガスがガス拡散層26内に侵入するのを制限するものである。
【0055】
34はガス導入窓33と共に緻密層32を外側から覆う保護層で、該保護層34は、例えばアルミナ等の多孔質材料を用いて形成され、これらの粉体からなるペースト状物を図2、図3中に仮想線で示すように曲面印刷することにより構成されるものである。
【0056】
この場合、図2、図3中ではガス導入窓33を明示するために、保護層34を仮想線で示したが、実際には図4ないし図7中に実線で示すように、保護層34は設けられるものである。そして、保護層34は、ガス拡散層26よりも空孔率が高く、目の粗い多孔質構造をなすように形成される。
【0057】
そして、保護層34は、ガス導入窓33を介して外部に露出されるガス拡散層26、固体電解質層27および外側測定電極30等を外側から覆い、これらを外部のダスト等から保護する機能を有している。また、保護層34の周囲を流れる排気ガス(被測定ガス)の一部は、空孔率の高い保護層34を透過し、ガス導入窓33の位置からガス拡散層26、外側測定電極30等に向けて侵入するものである。
【0058】
35は図7に示す如く内側電極28,29に接続された仮想グランドで、該仮想グランド35は、例えば1.5V(ボルト)程度の基準電位におかれるものである。
【0059】
36は直流電圧を印加する電圧印加手段としての直流電源で、該直流電源36は、図7に示す如く調整抵抗R0 を介して基準電極31に接続されている。そして、直流電源36は、例えば2〜3V程度の予め決められた直流電圧V0 (疑似参照極用のポンピング電圧V0 )を、調整抵抗R0 を介して基準電極31に印加するものである。
【0060】
37は排気ガス中の酸素濃度に対応した信号を出力する出力端子で、該出力端子37は、後述の数3式による出力電圧Vs を酸素濃度の検出信号として、図8に示す特性線の如く出力するものである。
【0061】
【数3】
Vs =E+(Ri ×I0 )
【0062】
この場合、空燃比検出素子21の固体電解質層27は内部抵抗をRi を有し、固体電解質層27を挟んだ内側電極29と基準電極31との間には、排気ガス中の酸素濃度に対応した起電力Eが発生する。そして、これらの電極31,29間に直流電源36から流込み電流としてのポンピング電流I0 が供給されるときには、出力端子37から酸素濃度の検出信号が出力電圧Vs として出力されるものである。
【0063】
38は比較用電圧VR を設定する比較電源部で、該比較電源部38は、理論空燃比(A/F=14.7、またはλ=1)に相当する比較用電圧VR を後述の差動増幅器39に出力するものである。
【0064】
39は図7に示す検出端子40,41間で空燃比信号を出力させるための差動増幅器で、該差動増幅器39は、非反転入力端子が比較用電圧VR の比較電源部38に接続され、反転入力端子が出力電圧Vs の出力端子37(空燃比検出素子21の基準電極31)側に接続されている。
【0065】
また、差動増幅器39の出力端子は、外側測定電極30に検出抵抗Rp を介して接続され、この検出抵抗Rp の両端に接続された検出端子40,41間には、空燃比信号としてのポンプ電流(拡散限界電流)を検出するための検出器(図示せず)等が設けられるものである。
【0066】
そして、差動増幅器39は、理論空燃比相当の比較用電圧VR と出力電圧Vs とを比較し、その比較結果に応じた信号をポンプ電圧Vp として検出端子40,41側に出力し、このときに内側電極28と外側測定電極30との間を空燃比信号となるポンプ電流Ip が流れる。そして、ポンプ電圧Vp とポンプ電流Ip との関係は、例えば図9中に実線で示す特性線42のように表されるものである。
【0067】
本実施の形態による空燃比センサは上述の如き構成を有するもので、次に、その検出動作について説明する。
【0068】
まず、当該空燃比センサのケーシング1は、ホルダ2のおねじ部2Aを介して車両の排気管等に螺着され、空燃比検出素子21の先端側を排気管内へと突出させた状態で固定される。
【0069】
そして、エンジンの作動により排気管内を流れる排気ガスが空燃比検出素子21の周囲にプロテクタ15を介して導入されると、この排気ガスの一部が保護層34および緻密層32のガス導入窓33を介して外側測定電極30の表面に達すると共に、ガス拡散層26を通じて内側電極28,29の表面にも導かれる。
【0070】
また、この状態でヒータ電源(図示せず)からヒータパターン24に給電を行い、ヒータ部22によって空燃比検出素子21全体を加熱すると、固体電解質層27が活性化される。そして、固体電解質層27を挟んで対向する内側電極29と基準電極31との間には、直流電源36から電圧が印加され、内側電極28と外側測定電極30との間には、差動増幅器39を介して電圧が印加される。
【0071】
これにより、内側電極29、基準電極31間と、内側電極28、外側測定電極30間とには、後述の化1から化6の反応式により、排気ガス中の酸素濃度、可燃性ガス成分濃度に基づいた出力電圧Vs ,ポンプ電圧Vp がそれぞれの空燃比λに対応して発生し、このときのポンプ電流Ip (拡散限界電流)が検出端子40,41間の検出信号として出力されるものである。
【0072】
即ち、エンジンの空燃比が理論空燃比よりも大きくなるリーン空燃比のときには、エンジンの燃焼室内で希薄混合気が形成され、この希薄混合気により空燃比検出素子21(例えば、保護層34)の周囲を流れる排気ガス中に酸素が燃焼されることなく残っている。そして、この排気ガス中の酸素は、図5中の矢示A方向でガス拡散層26を通じて内側電極28,29へと供給される。
【0073】
このため、内側電極29と基準電極31との間では、直流電源36からの電圧印加により、例えば内側電極29において下記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中に残留した酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0074】
【化1】
2 +4e → 2O2-
但し、O2 :酸素分子
e :電子
2-:酸素イオン
【0075】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して内側電極29から基準電極31に向けて輸送される。このため、基準電極31においては、下記の化2による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときに酸素イオンが酸素と電子とに分解される。
【0076】
【化2】
2O2- → O2 +4e
【0077】
これにより、基準電極31内には、例えば電極内の空孔(図示せず)等に酸素が吸入され、基準電極31内には相対的に高い酸素分圧が生じる。しかし、リーン空燃比の状態では、ガス拡散層26を通じて内側電極29に酸素が供給され続けるので、内側電極29も高い酸素分圧状態におかれ、電極29,31間の酸素分圧差は小さい状態となる。
【0078】
このため、両者の酸素分圧差等に基づいて固体電解質層27に発生する前記数3式の起電力Eは小さく抑えられ、基準電極31の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、図8に示す特性線の如く排気ガス中の酸素濃度に対応して理論空燃比状態(λ=1)よりも低い電圧値をとることになる。
【0079】
一方、エンジンの空燃比が理論空燃比よりも小さくなるリッチ空燃比のときには、燃焼室内での過濃混合気により空燃比検出素子21の保護層34等の周囲を流れる排気ガス中に酸素は残らず、例えば一酸化炭素(CO)、水素(H2 )等の可燃性ガス成分が燃焼されることなく残っている。
【0080】
これにより、ガス拡散層26を通じて内側電極28,29に供給される排気ガス中には、酸素が存在しない状態となり、例えば内側電極29の酸素分圧は急激に下がる。しかし、この状態でも基準電極31側には、前記空孔内に酸素が溜め込まれているので、電極29,31間の酸素分圧差は大きくなる。
【0081】
この結果、両者の酸素分圧差等に基づいて固体電解質層27に発生する前記数3式の起電力Eは大きく増加し、基準電極31の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、排気ガス中の酸素濃度に対応して理論空燃比状態(λ=1)よりも高い電圧値をとることになる。
【0082】
かくして、出力端子37からの出力電圧Vs は、図8に示す特性線のように排気ガス中の酸素濃度に対応して大きく変化し、この出力電圧Vs に従って空燃比がリッチ状態であるか、リーン状態であるかを判別することができる。
【0083】
また、この場合の基準電極31は、図7に示す如く直流電源36に接続され、内側電極29から基準電極31に固体電解質層27を介して酸素イオンを輸送させるための直流電圧V0 (疑似参照極用のポンピング電圧V0 )が印加されている。
【0084】
そして、基準電極31は、固体電解質層27と緻密層32によって完全に周囲が取囲まれ、外部の排気ガスから隔離した状態に保たれるので、基準電極31の酸素分圧を空燃比変化に影響されることなく、高い酸素分圧状態に安定して保持することができ、基準電極31を擬似的に基準酸素濃度の電極(参照電極)として機能させることができる。
【0085】
これにより、出力端子37からの出力電圧Vs (基準電極31の電圧)を、図8に示す特性線のように、空燃比がリッチであるか、リーンであるかに従ってオン、オフ的に切換わる安定した出力特性とすることができ、排気ガス中の酸素濃度を高精度に検出することができる。
【0086】
また、基準電極31の電圧(出力端子37の出力電圧Vs )は、図7に示す如く差動増幅器39に出力され、理論空燃比相当の比較用電圧VR と比較される。そして、空燃比がリッチ状態のときには出力電圧Vs が高い電圧値となり、理論空燃比相当の比較用電圧VR よりも高い電圧になる。
【0087】
このため、差動増幅器39の出力端子からは、リッチ空燃比のときに内側電極28,29側の仮想グランド35(例えば,1.5V)よりも低い電圧値(例えば、1.0V)のポンプ電圧Vp が出力される。
【0088】
一方、空燃比がリーン状態のときには出力電圧Vs が、理論空燃比相当の比較用電圧VR よりも低い電圧になるため、差動増幅器39の出力端子からは、内側電極28,29側の仮想グランド35(例えば,1.5V)よりも高い電圧値(例えば、2.0V)のポンプ電圧Vp が出力される。
【0089】
このように、差動増幅器39からは、空燃比がリッチであるか、リーンであるかによって、電圧値が大きく増,減するポンプ電圧Vp を出力でき、このポンプ電圧Vp は、内側電極28,29側の仮想グランド35に対して低い電圧と高い電圧値とに切換わる特性となる。
【0090】
この結果、例えば内側電極28と外側測定電極30との間を固体電解質層27を介して流れるポンプ電流Ip の方向を、リッチ空燃比かリーン空燃比かによって切換えることができ、このときのポンプ電流Ip を空燃比信号として図7中の検出端子40,41等から取出すことができる。
【0091】
そして、リッチ空燃比の状態では、外側測定電極30が内側電極28よりも低い電位となるため、カソード側の外側測定電極30において下記の化3による電気化学的な接触分解反応が行われ、例えば排気ガス中に残留した二酸化炭素に電子が付与されて酸素イオンと一酸化炭素が発生する。
【0092】
【化3】
CO2 +2e → O2- +CO
但し、CO2 :二酸化炭素分子
e :電子
2-:酸素イオン
CO:一酸化炭素分子
【0093】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介してカソード側の外側測定電極30からアノード側の内側電極28に向け輸送される。また、アノード側の内側電極28においては、下記の化4による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層26を透過して内側電極28に導かれる排気ガス中の一酸化炭素(CO)が、このときの酸素イオンと結合して二酸化炭素と電子とに分解される。
【0094】
【化4】
CO+O2- → CO2 +2e
【0095】
なお、排気ガス中の可燃性ガス成分が水素(H2 )の場合には、カソード側となる外側測定電極30において、下記の化5による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中に残留した水分子に電子が付与されて酸素イオンと水素が発生する。
【0096】
【化5】
2 O+e → O2- +H2
但し、H2 O:水分子
e :電子
2-:酸素イオン
2 :水素分子
【0097】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介してカソード側の外側測定電極30からアノード側の内側電極28に向け輸送される。また、アノード側の内側電極28においては、下記の化6による電気化学的な接触分解反応が行われ、排気ガス中の水素(H2 )がこのときの酸素イオンと結合して水分子と電子とに分解されるものである。
【0098】
【化6】
2 +O2- → H2 O+2e
【0099】
このように、カソード側の外側測定電極30からアノード側の内側電極28に向けて酸素イオンを輸送することにより、リッチ空燃比の状態では内側電極28,29と基準電極31との間の酸素分圧差を縮小させるように、換言すれば、基準電極31の電圧(出力電圧Vs )によるリッチ・リーン判定が、リッチからリーンに反転するように制御される。
【0100】
一方、リーン空燃比の状態では、外側測定電極30が内側電極28よりも高い電位となるため、カソード側となる内側電極28において、上記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層26を透過して内側電極28に導かれる排気ガス中の酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0101】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層27中の酸素欠陥を介して内側電極28から外側測定電極30に向けて輸送される。このため、外側測定電極30においては、上記の化2による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときに酸素イオンが酸素と電子とに分解される。
【0102】
このようにリーン空燃比のときには、カソード側の内側電極28からアノード側の外側測定電極30に向けて酸素イオンを輸送することにより、内側電極28,29と基準電極31との間の酸素分圧差を増大させるように、換言すれば、基準電極31の電圧(出力電圧Vs )によるリッチ・リーン判定が、リーンからリッチに反転するように制御される。
【0103】
この結果、内側電極28と基準電極31との間を流れる拡散限界電流としてのポンプ電流Ip は、空燃比がリッチかリーンかによって流れ方向が切換わり、理論空燃比を基準としてリニアに変化するようになる。そして、このポンプ電流Ip を、図7中に示す検出抵抗Rp を挟んだ検出端子40,41間の電圧として検出し、これを空燃比の検出信号として取出すことができる。
【0104】
ところで、排気ガスの侵入を抑える緻密層32により基準電極31を覆い、外側測定電極30、ガス拡散層26等を緻密層32からほぼ全周にわたって露出させる構成とした場合には、排気ガスがガス拡散層26を通って内側電極28,29に達するまでの経路が多方向にわたって存在することにある。
【0105】
これにより、排気ガスがガス拡散層26を通って内側電極28,29に達するときのガス拡散抵抗にバラツキが発生し易くなる。そして、ポンプ電流Ip (拡散限界電流)の特性が、図9中に一点鎖線で示す特性線43のようにフラットな特性とはならず、またヒステリシス等をもって安定した特性を得ることが難しくなり、空燃比の検出精度が低下してしまう可能性がある。
【0106】
そこで、本実施の形態では、ガス拡散層26、外側測定電極30および基準電極31を外側から覆うように固体電解質層27の外周側に設けた緻密層32に、予め決められた開口幅Wをもったガス導入窓33を設け、該ガス導入窓33により外部の排気ガスが開口幅Wの範囲内でガス拡散層26と外側測定電極30とに向けて侵入するのを許す構成としている。
【0107】
そして、ガス導入窓33は、緻密層32の一側端部をコ字形状に切欠くことにより凹形状をなして形成し、ガス拡散層26の一側端部を、図2、図3に示す如く固体電解質層27および外側測定電極30と共に部分的に露出させる構成としている。
【0108】
これにより、全体が略円形のロッド形状をなす空燃比検出素子21において、例えば緻密層32の外径寸法Dに対し、(2/3〜1)×Dなる開口幅Wをもった凹形状のガス導入窓33を緻密層32に形成でき、外部の排気ガスがガス拡散層26内に侵入する経路を、開口幅Wの範囲内でほぼ一方向(例えば、図5中に示す矢示A方向)に制限することができる。
【0109】
このため、排気ガスが図5中の矢示A方向でガス拡散層26を通って内側電極28,29に達するまでのガス拡散距離をほぼ一定に保つことが可能となり、このときのガス拡散抵抗にバラツキが発生するのを良好に抑えることができる。
【0110】
これにより、内側電極28と外側測定電極30との間を流れるポンプ電流Ip の拡散限界値にバラツキが生じて、ポンプ電流Ip が図9中に一点鎖線で示す特性線43の如く不安定になるのを防ぐことができる。そして、実線で示す本来の特性線42のように、ポンプ電流Ip の拡散限界電流値にフラット性を与えることができ、ヒステリシスの発生を抑えることができる。
【0111】
従って、本実施の形態によれば、外部の排気ガスがガス拡散層26を通って内側電極28,29に達するまでのガス拡散距離をほぼ一定にして、拡散限界電流であるポンプ電流Ip の特性を安定させることができ、空燃比の検出精度を確実に向上することができる。
【0112】
また、本実施の形態にあっては、小径の中空ロッド状をなすヒータコア23の外周面にヒータパターン24を形成し、該ヒータパターン24を外側から覆うように前記ヒータコア23の外周側に絶縁性のヒータ被覆層25を設けることによってヒータ部22を細長いロッド状に形成する構成としている。
【0113】
そして、このようなヒータ部22の外周側には、ガス拡散層26、固体電解質層27、内側電極28,29、外側測定電極30、基準電極31、緻密層32および保護層34等を曲面印刷等の手段を用いて形成する構成としている。
【0114】
このため、全体が円形のロッド状をなす空燃比検出素子21を製造することができ、プレート型の空燃比検出素子に比較して環状の電極28,29,30,31に十分な電極面積を確保でき、内部抵抗を低減できると共に、空燃比検出素子21の外径寸法、容積等を確実に小さくすることができる。
【0115】
また、外側にエッジ部が形成されるプレート型の素子に比較して、空燃比検出素子21の外形状をエッジ部がない、円形のロッド状に成形することができるので、空燃比検出素子21の熱応力等を低減することが可能となり、例えば固体電解質層27に割れ等が発生するのを抑えることができる。
【0116】
そして、空燃比検出素子21の製造時には、ヒータコア23の外周側に順次ヒータパターン24、ヒータ被覆層25、ガス拡散層26、内側電極28,29、固体電解質層27、外側測定電極30、基準電極31、緻密層32および保護層34を順次曲面印刷することにより形成でき、製造時の作業性を大幅に向上することができる。
【0117】
また、ヒータ部22の外周側をガス拡散層26、固体電解質層27および緻密層32等で覆うことにより、ヒータ部22が直接外気と接触するのを抑えて外気温による影響を低減することができ、ヒータ部22の伝熱面積を大きくして該ヒータ部22からの熱を固体電解質層27等に効率的に伝えることができる。
【0118】
これにより、ヒータ部22の昇温時間を確実に短くすることができ、固体電解質層27の活性時間を短くできると共に、エンジンの始動時でも排気ガス中の酸素濃度等を早期に検出して、燃料噴射量のフィードバック制御を即座に行うことが可能になる。また、当該空燃比センサの取付自由度を大きくすることができ、ヒータ部22の消費電力も低減できる。
【0119】
一方、空燃比検出素子21の内部に基準となる大気室等を特別に形成して大気を導入する必要がないので、当該空燃比検出素子21の構造を簡略化することができ、製造時の作業性を向上することができる。
【0120】
また、内側電極28,29と外側測定電極30,基準電極31との間で固体電解質層27を挟むことにより、一層の固体電解質層27を用いるだけで所謂ポンプセル,ネルンストセル等を構成できるので、空燃比検出素子21全体の外径寸法を小さくすることが可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0121】
次に、図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0122】
しかし、本実施の形態の特徴は、内側電極29のリード線部であるリード部29Aと、基準電極31のリード線部であるリード部31Aとの間に、被測定ガスの侵入を抑える後述の緻密層52を設ける構成としている。
【0123】
図中、51は本実施の形態で採用した空燃比検出装置としての空燃比検出素子で、該空燃比検出素子51は、第1の実施の形態で述べた空燃比検出素子21とほぼ同様に構成され、ヒータ部22、ガス拡散層26、固体電解質層27、内側電極28,29、外側測定電極30、基準電極31、緻密層32、ガス導入窓33および保護層34等を有している。
【0124】
しかし、この場合の空燃比検出素子51は、内側電極29のリード部29Aと基準電極31のリード部31Aとの間に後述の緻密層52を設けている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
【0125】
52は本実施の形態で採用した他の緻密層で、該緻密層52は、第1の実施の形態で述べた緻密層32とほぼ同様の材料を用いて形成され、外部の排気ガスが内部に侵入するのを防ぐものである。
【0126】
しかし、この緻密層52は、ガス拡散層26の外周側に固体電解質層27を曲面印刷した後に、その上から外側測定電極30、基準電極31を曲面印刷する前の段階で、例えばヒータ被覆層25の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成される。そして、緻密層52は、内側電極29のリード部29Aをヒータ被覆層25との間でほぼ全長にわたって覆うものである。
【0127】
そして、固体電解質層27の外周側には、緻密層52の印刷後に外側測定電極30、基準電極31が曲面印刷され、これらのリード部31A等は、緻密層52に沿って空燃比検出素子51の軸方向に延びるように印刷により形成される。また、これらの上から緻密層32が第1の実施の形態で述べた如く形成される。
【0128】
これによって、外側測定電極30のリード部(図示せず)と基準電極31のリード部31Aとは、緻密層52,32間に挟まれた状態となり、外部の排気ガスまたはガス拡散層26を透過した排気ガスが、基準電極31のリード部31Aに接触するのを緻密層32,52により遮断するものである。
【0129】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に本実施の形態では、内側電極29のリード部29Aと基準電極31のリード部31Aとの間に緻密層52を追加して設ける構成としている。
【0130】
これにより、基準電極31のリード部31Aを内側電極28,29のリード部29Aから隔離して排気ガスとの接触をより確実に防止でき、例えば基準電極31内に溜め込んだ酸素が、ガス拡散層26側に向けて漏れるのを抑え、酸素の漏洩量を確実に低減することができる。
【0131】
この結果、基準電極31における酸素分圧を基準となる酸素分圧としてほぼ一定に保つことができ、安定したセンサ出力を得ることができる。そして、外部から印加する直流電源38の電圧V0 を、より低い電圧まで下げることが可能となり、エネルギ効率を向上することができる。
【0132】
なお、前記各実施の形態では、第1の電極となる内側電極28,29を、ガス拡散層26の軸方向で互いに離間させて形成するものとして述べた。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば内側電極28,29を一体に連結して軸方向に長く延びる環状の単一電極として形成してもよい。
【0133】
また、内側電極28,29のうち、例えば内側電極29を廃止し、内側電極28のみで第1の電極を構成してもよく、この場合には、内側電極28を仮想グランド35に接続する構成とすればよい。そして、このように構成した場合でも、前述した各実施の形態の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができるものである。
【0134】
次に、上記各実施の形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0135】
細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部の外周側に設けられ、被測定ガスが内部を拡散するガス拡散層と、該ガス拡散層の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層の内周側に設けられ、前記ガス拡散層と固体電解質層との間に挟まれた第1の電極と、前記固体電解質層の外周側に設けられ、電圧を印加したときのポンプ電流が該第1の電極との間に流れる第2の電極と、該第2の電極から離間して前記固体電解質層の外周側に設けられ、前記被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が前記第1の電極との間に発生する第3の電極と、前記固体電解質層の外周側に設けられ、該第3の電極を前記固体電解質層、第2の電極および前記ガス拡散層を外側から覆うことにより前記被測定ガスの侵入を抑える緻密層と、該緻密層に予め決められた開口幅をもって設けられ、前記被測定ガスが開口幅の範囲内で前記ガス拡散層および第2の電極に向けて侵入するのを許す開口部とにより構成してなる空燃比検出装置。
【0136】
このように構成することにより、細長いロッド形状をなすヒータ部の外周側に曲面印刷等の手段を用いてガス拡散層、第1の電極、固体電解質層、第2,第3の電極および緻密層等を順次積層するように形成でき、空燃比検出装置全体を円形のロッド状をなす構造とすることができる。これによって、取付時の方向や被測ガスの流れ方向等に影響されることなく、被測ガス中の酸素濃度等を安定した精度で検出することができる。
【0137】
また、第1の電極と第2,第3の電極とは固体電解質層を径方向で挟むように配置でき、それぞれの電極面積を大きくできると共に、電極間距離を小さくして電気抵抗を低減することができる。また、空燃比検出素子の内部に基準となる大気を導入する必要がないので、空燃比検出装置の構造を簡略化でき、製造時の作業性を向上することができる。さらに、ヒータ部を心棒部をとし、その外周側にはガス拡散層、固体電解質層、第1,第2,第3の電極および緻密層等を形成することにより、ヒータ部を小径に形成した場合でも固体電解質層に対するヒータ部の伝熱面積を大きくすることができ、該ヒータ部からの熱を固体電解質層等に効率的に伝熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による空燃比検出素子が設けられた空燃比センサを示す縦断面図である。
【図2】図1中の空燃比検出素子を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2に示す空燃比検出素子の平面図である。
【図4】図3中の矢示IV−IV方向からみた空燃比検出素子の横断面図である。
【図5】図4中の矢示V−Vからみた空燃比検出素子の縦断面図である。
【図6】図4中の矢示VI−VI方向からみた空燃比検出素子の縦断面図である。
【図7】空燃比検出素子を直流電源および検出端子等と共に示す回路構成図である。
【図8】空燃比検出素子による出力電圧と空燃比との関係を示す特性線図である。
【図9】空燃比検出用のポンプ電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図10】第2の実施の形態による空燃比検出素子を直流電源および検出端子等と共に示す回路構成図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
11,12 リード線
13,14 コンタクトプレート
21,51 空燃比検出素子(空燃比検出装置)
22 ヒータ部
23 ヒータコア
24 ヒータパターン
24A,29A,31A リード部(リード線部)
25 ヒータ被覆層
27 固体電解質層
28,29 内側電極(第1の電極)
30 外側測定電極(第2の電極)
31 基準電極(第3の電極)
32 緻密層
33 ガス導入窓(開口部)
34 保護層
35 仮想グランド
36 直流電源
37 出力端子
40,41 空燃比の検出端子
52 緻密層

Claims (3)

  1. 外部からの通電によって発熱するヒータ部と、
    該ヒータ部に設けられ、被測定ガスが内部を拡散するガス拡散層と、
    該ガス拡散層の外側に位置して前記ヒータ部に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、
    該固体電解質層と前記ガス拡散層との間に設けられ、前記ガス拡散層を通じて被測定ガスが導かれる第1の電極と、
    該第1の電極との間で前記固体電解質層を挟むように該固体電解質層の外側面に設けられ、外部から電圧を印加したときにポンプ電流が該第1の電極との間に流れる第2の電極と、
    該第2の電極から離間して前記固体電解質層の外側面に設けられ、前記被測定ガス中の酸素濃度に対応した起電力が前記第1の電極との間に発生する第3の電極と、
    前記固体電解質層の外側面に設けられ、該第3の電極、固体電解質層、第2の電極および前記ガス拡散層を外側から覆うことにより前記被測定ガスが内部に侵入するのを抑える緻密層と、
    該緻密層に予め決められた開口幅をもって設けられ、前記被測定ガスが開口幅の範囲内で前記ガス拡散層と第2の電極とに向けて侵入するのを許す開口部とを備え、
    前記ガス拡散層を通じて第1の電極に導かれる被測定ガスの空燃比を前記第1の電極と第2の電極との間に流れる前記ポンプ電流により検出する構成してなる空燃比検出装置。
  2. 前記開口部は、前記緻密層の端部をコ字形状に切欠くことにより凹形状に形成され、前記ガス拡散層を前記固体電解質層および第2の電極と共に部分的に露出させる構成としてなる請求項1に記載の空燃比検出装置。
  3. 前記第1,第2,第3の電極は、前記ヒータ部の長さ方向に延びるリード線部をそれぞれ有し、これらの各リード線部のうち前記第1の電極のリード線部と前記第3の電極のリード線部との間には、前記被測定ガスの侵入を抑える他の緻密層を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の空燃比検出装置。
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