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JP3965833B2 - 多孔性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

多孔性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池用セパレーター、精密濾過膜などの分離膜等として有用な多孔性フィルムに関する。更に詳しくは、良好な有機溶媒の透過特性を有し、かつ、面強度も強い多孔性フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多孔性フィルムは、各種用途に広く使用され、かかる多孔性フィルムの製造方法について種々提案がなされている。例えば、ポリオレフィン及び可塑剤を含有する樹脂組成物から、一旦、フィルムを溶融押出成形で製造し、延伸後、フィルムに含まれる可塑剤を有機溶媒で抽出除去する方法(特公平6−21177号公報)、樹脂組成物よりフィルムを成形し、可塑剤を抽出する前後に延伸を行う方法(特開平6−240036号公報、特開平11−60789号)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような製造方法の改良により、多孔性フィルムにおける透気性、透液性、機械的強度などの諸物性が向上したが、同時に性能要求も高度化してきているため、なおも十分とは言えない。特に、非水電解液電池用セパレーターの用途においては、近年、電池の高性能化及び生産効率の向上を目的として、電解液の浸透性の向上した多孔性フィルムの要求が高まっている。
そこで、本発明は、優れた有機溶媒の透過特性を有し、かつ、面強度とのバランスがとれた、特に電池用セパレーターに好適な多孔性フィルムを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、多孔性フィルムを製造する際の可塑剤除去の前後で延伸条件を特定することにより、有機溶媒の浸透性と面強度のバランスがとれた新規な物性を有する多孔性フィルムが得られることが判明し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、粘度平均分子量30万以上のポリオレフィン樹脂からなり、
(a)厚さが5〜100μm、
(b)プロピレンカーボネート透過時間が厚さ25μm換算で7秒以下、
(c)ピン刺し強度が400gf/25μm以上
であることを特徴とする多孔性フィルム及びその製造方法に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を更に詳細に説明する。本発明の多孔性フィルムは、その厚さ、プロピレンカーボネート透過時間及びピン刺し強度により特定される。本発明の多孔性フィルムの厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。5μmより小さければ、例えば、電池用セパレーターとして用いた場合に正極と負極を隔離し、短絡を防ぐのが困難となるなどの問題となる。また、100μmより大きければ、電池用セパレーターとして用いた場合に正電池内部でのフィルムの体積占有率が高くなりすぎ、単位体積当たりのエネルギー密度が小さくなるので好ましくないなどの問題となる。
【0006】
また、本発明の多孔性フィルムのプロピレンカーボネート透過時間(PC透過時間)が25μm換算で7秒以下、好ましくは5〜1秒である。かかるPC透過時間は後述の実施例で記載した条件下で測定されるが、該数値が小さいほど有機溶媒の浸透性が高いことを示す。更に、本発明の多孔性フィルムのピン刺し強度は400gf/25μm以上、好ましくは500gf/25μm以上である。かかる範囲のピン刺し強度を有し、同時に前記のPC透過時間の範囲にある点が本発明の多孔性フィルムの大きな特徴である。
【0007】
本発明の多孔性フィルムのその他の物性はその範囲を特に制限するものではないが、空孔率は通常0.30〜0.95、好ましくは0.45〜0.80であり、ピーク孔径は通常0.01〜0.5μmである。また、透気度は通常10〜1000秒/100cc、好ましくは30〜500秒/100ccである。更に、引張強度は通常400kg/cm2以上、好ましくは500kg/cm2以上である。
【0008】
以上の本発明の多孔性フィルムを得るためには、粘度平均分子量30万以上のポリオレフィンと可塑剤からなる樹脂組成物をフィルム状に押出成形、延伸し、次いで可塑剤を除去し、再度延伸する方法であって、全延伸倍率の積Tが20以上、かつ、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rが1〜12とする方法を採用することが望ましい。
【0009】
原料ポリオレフィンとしては、粘度平均分子量が30万以上、好ましくは50万〜250万のポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン樹脂が用いることが好ましい。分子量30万未満では強度が必要な用途の場合、十分な強度を得ることが困難である。なお、かかる粘度平均分子量はASTM D4020に準拠して測定される。ポリオレフィン樹脂は単独種類でもよいが、ポリオレフィン樹脂同志のブレンド後の分子量が上記の範囲に調整したものであってもよい。なお、必要に応じて、分子量1000〜5000程度の低分子量のポリエチレンワックス等をポリエチレンに対して最大50重量%まで添加してもよい。
【0010】
一方、可塑剤としては、上記ポリオレフィンとの相溶性を考慮し、しかも該ポリオレフィンの融点より低い融点及び該ポリオレフィンの溶融温度より高い沸点を有し、かつ、ポリオレフィン不溶性の有機溶媒に可溶な物質が好適に用いられる。押出成形時の原料ハンドリングの簡便性を考慮すると、可塑剤としては常温固体のものが、好適に用いられる。例えば、ステアリルアルコール、セリルアルコールなどの高級脂肪族アルコール、n−デカン、n−ドデカンなどのn−アルカン類、パラフィンワックス、流動パラフィン、灯油などが挙げられる。ポリオレフィンと可塑剤との使用割合は、目的とする成形体の多孔構造の違いにもによるが、通常、ポリオレフィンが5〜60重量%で可塑剤が95〜40重量%であり、好ましくはポリオレフィンが10〜50重量%で可塑剤が90〜50重量%の範囲から選ばれる。また、酸化防止剤などの安定剤を最大5重量%程度までの範囲まで添加してもよい。
【0011】
このような原料組成物は、通常、公知の一軸又は二軸の押出機で均一に混練して溶融押出成形する。押出機としては、押出量、押出安定性、混練強度の点から二軸の押出機が好適に使用される。押出成形は、通常140〜300℃の温度で実施され、Tダイ、インフレーション成形等の公知の方法で、通常10μm〜1mmの厚さの原反フィルムを成形する。
【0012】
次に、得られた原反フィルムを一軸又は二軸延伸する。この延伸に際してはロール延伸機、テンター等の公知の任意の延伸装置を用いることができる。一軸延伸に関しては縦延伸、横延伸のいずれを選択することもできる。また、二軸延伸に関しては逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれも可能である。特に好ましい方法としては、例えば、二軸延伸で面積延伸倍率を3〜30倍とし、且つ、延伸温度をポリオレフィン樹脂の結晶分散温度〜融点+10℃の範囲とすると、後工程の可塑剤除去により生成する孔の均一性が高くなりやすいので望ましい。
【0013】
なお、可塑剤除去前後の延伸に際して、フィルムを2枚以上を重ねて行う方法も可能である。具体的には2〜4枚程度が好ましく、これ以上フィルムを重ねるとフィルムのハンドリングが煩雑になるのであまり好ましくない。複数のフィルムを重ね合わせることによって、従来は機械的な制約によって十分な延伸を行うことができなかったのをかない回避することができる。また、可塑剤抽出の際にフィルムに重ねた場合は可塑剤除去が効率に実施することができる。
次に、延伸されたフィルムは、冷却後、可塑剤を除去して多孔化する。可塑剤の除去方法としては、例えば、フィルム中の可塑剤をイソプロパノール、エタノール、ヘキサンなどの有機溶媒で溶解し、溶媒置換により抽出除去する、所謂、公知の有機溶媒抽出法が挙げられる。
【0014】
上記のようにして可塑剤を除去し多孔化したフィルムに対し、再度一軸又は二軸延伸を行う。これにより、熱寸法安定性を付与される他、孔径や空孔率を大きくい範囲に調整することが可能であることで、浸液性をより高めることができる。延伸の方法としては、前述の、縦方向、横方向の積極的な延伸はもちろん、流れ方向、幅方向を拘束しフィルムの加熱収縮を阻害することで延伸効果を付与する、いわゆる消極的延伸も用いることもできる。最終的な多孔性フィルムの物性を損なわないため及びフィルムのハンドリング性を保つためには、該延伸温度が、好ましくは、ポリオレフィン樹脂の融点−10℃以上で融点以下で、且つ、好ましい面積倍率が通常1.5〜10倍とするのが適当である。該延伸の面積倍率が10倍を超えると、所望の浸透性が得られない場合がある。
【0015】
本発明の多孔性フィルムは以上のような工程により製造されるが、更に、可塑剤除去前後の延伸条件の相互関係を特定すること、具体的には、可塑剤除去前後の延伸を全て含んだ全延伸倍率の積Tと、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rを特定範囲とすることが重要である。
上記の全延伸倍率の積Tは以下の式で表される。
【0016】
【数1】
T=(λPMD×λPTD)×(λAMD×λATD)
上記式におけるλPMD、λPTD、λAMD及びλATDは以下を表す。
λPMD:可塑剤除去前の縦方向の延伸倍率
λPTD:可塑剤除去前の横方向の延伸倍率
λAMD:可塑剤除去後の縦方向の延伸倍率
λATD:可塑剤除去後の横方向の延伸倍率
この全延伸倍率Tは通常20以上、好ましくは30〜200である。20未満では十分な機械的強度を得られにくく、また、上限に関しては特に制限はないが、フィルムの物性面よりも機械的制約が大きくなる。
【0017】
また、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rは以下の式で表される。
【数2】
R=(λPMD×λPTD)/(λAMD×λATD)
上記式におけるλPMD、λPTD、λAMD及びλATDは以下を表す。
λPMD:可塑剤除去前の縦方向の延伸倍率
λPTD:可塑剤除去前の横方向の延伸倍率
λAMD:可塑剤除去後の縦方向の延伸倍率
λATD:可塑剤除去後の横方向の延伸倍率
【0018】
この面積延伸倍率比Rは通常1〜12、好ましくは2〜12である。面積延伸倍率比Rが12を越えると、フィルムの膜厚精度が低下するので、工業的な生産を考えるとあまり好ましくない。
以上の本発明の多孔性フィルムを電池用セパレーターとして使用する場合は、公知のセパレーターと同様に使用することができる。例えば、リチウム二次電池では、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性電解液、リチウム化合物からなる正極、及び、金属カルコゲン化合物、金属酸化物、共役系高分子化合物等の負極と本発明のセパレーターを組み合わせることで構成される。
【0019】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定をされるものではない。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
【0020】
1)粘度平均分子量はASTM D4020に準拠。
2)厚さは、テクロック社製膜厚計にて測定(単位はμm)
3)プロピレンカーボネート透過時間(PC透過時間)は以下の方法で測定した。ガラス板に載せたフィルムに高さ20mmから約0.5mlプロピレンカーボネートを滴下する。滴下したプロピレンカーボネートはフィルム上で最初ドーム状に存在する。フィルムの反対側のガラス面からこのプロピレンカーボネート形を見ると円形状である。その円形の部分全体にプロピレンカーボネートが浸透するまでの時間を測定し、これをプロピレンカーボネート浸透時間θとし、5回測定をした平均値を採用した。25μm換算は,PC透過時間を膜厚(単位μm)で割り、25をかけることによって算出した。
4)ピン刺し強度は農林規格1019号に準拠(gf/25μm)。25μm換算は、ピン刺し強度を膜厚(単位μm)で割り,25をかけることによって算出した。
5)空孔率は重量法により測定した(単位は%)
6)透気度は、JIS P8117に準拠(単位は秒/100CC)。
【0021】
実施例1
粘度平均分子量100万のポリエチレン16重量部、粘度平均分子量50万のポリエチエレン8重量部、およびパラフィンワックス(平均分子量389)76重量部の混合物を、40mmφ二軸押出機を用い押出温度170℃、押出量13kg/hで押出し、インフレーション法で原反フィルムを成形した。
原反フィルムを横方向に110℃で4.5倍に延伸した。該フィルムを60℃のイソプロピルアルコールに浸漬させパラフィンワックスを抽出除去した。その後、得られたフィルムを2枚重ね、縦方向に90℃で2.2倍、横方向に129℃で2.1倍に延伸した。このようにして最終的に得られた多孔性フィルムの物性を表−1に示す。
【0022】
実施例2
実施例1と同様の方法で原反フィルムを成形した。原反フィルムを縦方向に40℃で2.7倍、横方向に110℃で8.0倍に二軸延伸した。該フィルムを60℃のイソプロピルアルコールに浸漬させパラフィンワックスを抽出除去した。その後、得られたフィルムを2枚重ね、縦方向に115℃で1.8倍延伸した。このようにして最終的に得られた多孔性フィルムの物性を表−1に示す。
【0024】
比較例1
実施例1と同様の方法で原反フィルムを成形した。原反フィルムを60℃のイソプロピルアルコール中に浸漬して、パラフィンワックスを抽出除去した。得られたフィルムをロール延伸機を用い、90℃の温度で2.3倍に、また、テンターにて127℃の温度で5.4倍に延伸した。このようにして最終的に得られた多孔性フィルムの物性を表−1に示す。
【0025】
比較例2
実施例1と同様の方法で原反フィルムを成形した。原反フィルムを縦方向に0℃で2.7倍、横方向に110℃で8.0倍に二軸延伸した。得られたフィムを60℃のイソプロピルアルコールに浸漬させパラフィンワックスを抽出除した。その後、フィルムを2枚重ね、縦方向に115℃で1.0倍で熱固定し。このようにして最終的に得られた多孔性フィルムの物性を表−1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003965833
【0027】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の多孔性フィルムは優れた有機溶媒の浸透性を有し、且つ、機械的強度も優れているので、、電池用セパレーター、精密濾過膜、電解コンデンサー隔膜、各種フィルター等の各種用途に応用可能である。

Claims (4)

  1. 粘度平均分子量30万以上のポリオレフィン樹脂からなり、
    (a)厚さが5〜100μm、
    (b)プロピレンカーボネート透過時間が厚さ25μm換算で7秒以下、
    (c)ピン刺し強度が400gf/25μm以上
    であることを特徴とする多孔性フィルム。
  2. 粘度平均分子量30万以上のポリオレフィンと可塑剤からなる樹脂組成物をフィルム状に押出成形、延伸し、次いで可塑剤を除去し、再度延伸する方法であって、可塑剤除去前後の縦横方向の全延伸倍率の積Tが20以上、かつ、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rが1〜12であることを特徴とする請求項1の多孔性フィルムの製造方法。
  3. 粘度平均分子量30万以上のポリオレフィンと可塑剤からなる樹脂組成物を押出成形してなるフィルムを2枚以上重ねて延伸し、次いで可塑剤を除去し、再度延伸する方法であって、フィルム一枚当たりで、可塑剤除去前後の縦横方向の全延伸倍率の積Tが20以上、かつ、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rが1〜12であることを特徴とする請求項1の多孔性フィルムの製造方法。
  4. 粘度平均分子量30万以上のポリオレフィンと可塑剤からなる樹脂組成物を押出成形して延伸し、次いで可塑剤を除去してなるフィルムを2枚以上重ねて再度延伸する方法であって、フィルム一枚当たりで、可塑剤除去前後の縦横方向の全延伸倍率の積Tが20以上、かつ、可塑剤除去後の面積延伸倍率に対する可塑剤除去前の面積延伸倍率の比Rが1〜12であることを特徴とする請求項1の多孔性フィルムの製造方法。
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