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JP3948795B2 - 放射線感光材料及びそれを用いたパターン形成方法 - Google Patents

放射線感光材料及びそれを用いたパターン形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学増幅型の放射線感光材料(レジスト)及びその放射線感光材料を用いたパターン形成方法に関する。更に詳しくは、極性基含有脂環式官能基、及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有する樹脂及び放射線照射により酸を発生する物質からなる放射線感光材料及びその放射線感光材料を用いたレーザー光によるパターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路は集積化が進んで、LSIやVLSIが実用化されており、これと共に、集積回路のパターンの最小線幅はサブミクロン領域に及び、更に微細化する傾向にある。
集積回路を作成するには、絶縁材料上の半導体薄膜(以下、被処理基板という)に微細なパターンを形成する必要があり、このためには、リソグラフィ(写真食刻)技術の使用が必須である。
リソグラフィ技術では、被処理基板の半導体薄膜表面をレジストで被覆し、レジスト層に所定の原パターンを通過した光を照射(選択露光)した後に現像して、残存レジスト層とレジスト層が溶解して露出した半導体薄膜部分が生じ、残存レジスト層をマスキング層として半導体薄膜をプラズマによりドライエッチングした上で、残存レジスト層を除去することにより、所望のパターンを形成した半導体薄膜を得ることができる。
リソグラフィ技術に使用する露光光源として、当初は紫外線が使用されていたが、パターンの微細化に伴い、波長の短い遠紫外線や、電子線、X線などが光源として使用されるようになってきた。現在では、特に遠紫外線を発生するエキシマレーザ(波長248nmのKrFレーザ、波長193nmのArFレーザ)又はYAGレーザと波長変換結晶等(波長248nm、193nm、157nm)を用いたリソグラフィ技術に対応して、高解像性、高感度、優れた耐ドライエッチング性を有するレジスト材料が要求されている。
なお、本発明で放射線感光材料という場合の放射線とは、半導体回路加工用の上記紫外線、遠紫外線、電子線、X線、特に遠紫外領域レーザ光を言う。
【0003】
従来のレジストは、フェノール樹脂又はノボラック樹脂をベースとするものが数多く開発されてきたが、これらの材料は、芳香族環を含んでおり、耐ドライエッチング性は優れているものの、KrFレーザの波長に対して透明性が低い。特にArFレーザの波長に対しては、全く不透明である。このため、微細化に対応できるパターン精度を得ることができなかった。
他方、エキシマレーザに対して透明なレジストとして、メタクリル酸t-ブチル重合体が提案されている。しかしながら、このレジストは耐ドライエッチング性に欠ける。そのため、特開平4−39665号に、芳香族環並の耐ドライエッチング性を有し、かつKrFレーザ及びArFレーザの波長に対して透明性をもつものとして、脂環族を用いた化学増幅型レジストに関する報告がある。
なお、化学増幅型レジストとは、露光によりレジスト材料中で酸の発生する反応が生じ、露光後ベークして、上記酸を触媒にしてレジスト材料中でパターン形成のための反応(硬化又は分解)が多数回生じることにより、露光部の現像液に対する溶解性を変えたレジストである。
本発明では、露光により酸触媒が発生し、レジスト材料を構成する樹脂中の官能基が酸触媒によりアルカリ可溶基に分解することにより、アルカリ液を使用する現像処理により樹脂が溶解する。この結果、露光後ベークして、現像により溶解した部分は半導体薄膜層が露出し、非露光部で溶解しなかった部分はレジスト層が残存してレジストパターンが形成される。これをプラズマ処理によりドライエッチングした後、残存するレジスト層を除去して、所定のパターンを有する半導体回路が得られる。
【0004】
脂環族を用いた化学増幅型レジストにおいて、脂環族としては、ノルボルネン、パーヒドロアントラセン、シクロヘキサン、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、アダマンタン等が使用されており、脂環共重合体が開示されている。
しかしながら、上記の脂環共重合体を用いた化学増幅型レジストにおいては、耐ドライエッチング性を付与する脂環族が、その組成比を増すにつれて、重合体の疎水性が高まると共に、剛直性も増していく。このため、フェノール樹脂又はノボラック樹脂をべースにしたレジスト並のドライエッチング耐性が得られる組成比では脂環族の組成比が大きくなりすぎて、例えば、脂環族を有する単位構造が50mol%以上になると、高い疎水性に加え、硬くなりすぎるために、露光により発生したプロトン酸触媒の拡散力が妨げられ、化学増幅率が低下し、レジスト材料であるポリマー中のカルボン酸の生成量が減少し、現像液であるアルカリ水溶液に対する溶解性が低下する。
また、これらのレジストは脂環族の導入により、密着性に乏しく、レジスト膜が硬くなるため、レジスト膜にかかる歪みが大きくなって、剥がれ易くなる。このため、安定性したレジストパターン特性を得ることができないという問題があった。
【0005】
また、化学増幅型レジストに特有な問題として、露光から露光後べーク(PEB)までの間に、露光によって発生した酸触媒が、大気中の汚染物質(アミン成分等)により、中和、失活するため、所望のパターンが形成できないという現象が生じる。その改善方法としては、レジスト層上に、保護膜を塗布するパターン形成方法が有効であることが知られている。
この方法は、従来のレジストの大部分を占める、フェノールをべースポリマーとするレジストに対しては、非常に効果的であった。しかし、非フエノール系で極性の低いポリマー、特に脂環族を含む疎水性のポリマをべースとするレジストに保護膜を適用する場合、保護膜とレジストの両者の極性が類似しているため、保護膜の塗布溶媒として、従来使用されてきた芳香族炭化水素系の溶媒を用いると、レジスト膜そのものが溶解してしまい、保護膜の塗布が困難であるといった問題があった。このため、汚染物質の影響を受けて、パターンが解像できなかったり、所望のパターンサイズから大きくはずれるといった問題があった。
【0006】
特開平7−234511号に上記問題点を解決すべく、エキシマレーザを露光源とするリソグラフィにおいて使用する、優れた透明性及びエッチング耐性のみならず、高感度で、密着性に優れた放射線感光材料に関する報告がある。
しかしながら、十分な耐ドライエッチング性を付与すると現像性が劣ると言った欠点があると同時に、密着性は未だ十分とは言えない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の他の目的は、レジストパターン形成用放射線、特に遠紫外レーザー光に対して透明性を有し、現像性に優れ、ドライエッチング耐性を有し、且つ密着性に優れた、高感度で微細加工が可能な放射線感光材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、優れた透明性及びエッチング耐性のみならず、高感度な放射線感光材料で、密着性を向上させる事を目的として、鋭意研究を重ねた結果、例えば置換基数が1以上のヒドロキシアダマンチル基を導入する事により、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明の第1は、アダマンタン骨格の橋頭位に1又は3つのヒドロキシル基及びアダマンタン骨格の橋頭位に1つの(メタ)アクリロイルオキシ基が結合したヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレートと、酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマーとを重合して得られる樹脂(A)、及び放射線照射により酸を発生する物質(B)からなる放射線感光材料を提供する。
本発明の第2は、樹脂(A)がアクリル樹脂であることを特徴とする本発明の第1に記載の放射線感光材料を提供する。
本発明の第3は、酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基が、下記式(1)又は(2)であることを特徴とする本発明の第1に記載の放射線感光材料を提供する。
【0010】
【化2】
Figure 0003948795
【0011】
本発明の第は、本発明の第1、2または3に記載の放射線感光材料を半導体薄膜上に塗布し、遠紫外線により選択露光し、ベークし、現像し、放射線感光材料をアルカリ溶液により除去することによるパターンの形成方法を提供する。
本発明の第は、現像を有機アルカリ水溶液とイソプロピルアルコールの混合液により行うことを特徴とする本発明の第に記載のパターン形成方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の放射線感光材料は、アダマンタン骨格の橋頭位に1又は3つのヒドロキシル基及びアダマンタン骨格の橋頭位に1つの(メタ)アクリロイルオキシ基が結合したヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレートと、酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマーとを重合して得られる樹脂(A)、及び放射線照射により酸を発生する物質(B)を必須成分とする。
【0013】
初めに、上記樹脂(A)について説明する。
樹脂(A)は、アダマンタン骨格の橋頭位に1又は3つのヒドロキシル基及びアダマンタン骨格の橋頭位に1つの(メタ)アクリロイルオキシ基が結合したヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート(C)及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマー(D)を共重合して得られる。
【0015】
酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマー(D)としては、不飽和結合を有するモノマーであって酸基を有し、酸基に式(1)又は式(2)の基が結合したモノマーである。酸基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルフォン酸基等が挙げられる。
具体的には、以下の官能基を有するアクリル酸類又はスチレン類が挙げられる。
アクリル酸類としてはアクリル酸、メタアクリル酸、エチルのようなアルキル置換アクリル酸等が挙げられる。スチレン類としてはパラヒドロキシスチレン、パラカルボキシスチレン等が挙げられる。官能基はカルボキシル基又はフェノール基(パラヒドロキシスチレンの場合)に結合する。
フェノール基の場合には置換基と炭酸エステル結合したものが好ましい。
上記において、酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基としては、t-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、α,α-ジメチルベンジル基、3-オキソシクロヘキシル基等であり、プロトン酸により解離するものであれば何でも使用できる。
【0016】
樹脂(A)としては、上記モノマー(C)及びモノマー(D)の中でも、(メタ)アクリル酸をベースにしたアクリル共重合体が、遠紫外線(エキシマ光)に吸収を持たない点及び合成の簡便さからも有効である。
【0017】
更に、上記モノマー(C)及びモノマー(D)には、反応性不飽和結合を有するモノマー、その他(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの付加物、変性不飽和モノカルボン酸なども併用する事ができる。
上記の反応性不飽和結合を有するモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、上記変性不飽和モノカルボン酸としては、不飽和基とカルボキシル基を有し、不飽和基とカルボン酸の間に鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸なら特に制限はなく、例えば末端水酸基を酸無水物により酸変性された、ラクトン変性等エステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸などのカルボキシル基含有モノマー;更に必要に応じてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなどラジカル重合性不飽和基含有モノマーが挙げられる。
【0018】
上記モノマー(C)、モノマー(D)及び反応性不飽和結合を有するモノマー、その他(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの付加物、変性不飽和モノカルボン酸などは、重合触媒の存在下に溶媒中で加熱重合される。
モノマー(D)/モノマー(C)のモル比は0.3〜100である。
重合触媒としてはパーオキサイド系あるいはジアゾニウム系のラジカル開始剤、又は2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシ(TEMPO)と過酸化ベンゾイル等の分子量分布を制御できるラジカル開始剤等が使用される。
分子量分布を更に制御するためには、アルキルリチウム等を用いたアニオン重合、チーグラー・ナッタ触媒又は希土類金属触媒系を用いたアニオン重合等によっても重合することができる。
反応温度としては、反応系によっても異なるが−78〜200℃である。
得られた樹脂(A)は必要により再沈殿等により精製される。
【0019】
次に、放射線照射により酸を発生する物質(B)について説明する。
放射線照射により酸を発生する物質、すなわち酸発生剤としては、下記に挙げる式(3)で示されるオキサゾール誘導体、式(4)で示されるs-トリアジン誘導体、式(5)で示されるで示されるヨードニウム塩、式(6)で示されるスルホニウム塩、式(7)で示されるジスルホン誘導体、式(8)で示されるイミドスルホネート誘導体、又は式(9)で示されるジアゾニウム塩を使用する事が可能である。ただし、これらに限定されるものではない。
【0020】
【化3】
Figure 0003948795
【0021】
【化4】
Figure 0003948795
【0022】
【化5】
Figure 0003948795
【0023】
【化6】
Figure 0003948795
【0024】
【化7】
Figure 0003948795
【0025】
【化8】
Figure 0003948795
【0026】
【化9】
Figure 0003948795
【0027】
次に、上記の樹脂(A)及び酸発生物質(B)を用いた放射線感光材料(レジスト)の製造、得られたレジストを用いて、被処理基板上へのレジスト層の形成、露光、現像、ドライエッチング及びレジスト除去を行う工程について説明する。
【0028】
樹脂(A)及び酸発生物質(B)を用いた放射線感光材料(レジスト)の製造は、樹脂(A)100重量部に対して酸発生物質(B)0.01〜30重量部を混合し、混合物100重量部に対して溶媒を50〜10000重量部添加して攪拌し、均一なレジスト溶液を製造する。樹脂(A)、酸発生物質(B)、溶媒の添加順序は適宜選択することができる。
上記溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ミネラルスピリッツ等の炭化水素;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が使用される。上記溶媒は適宜組み合わせて使用することができる。
【0029】
被処理基板上へのレジスト層の形成は、被処理基板を回転させながら、上記で得たレジスト溶液を半導体薄膜上へ供給し、スピン・コーティング法により所定の厚さに塗布して行われる。レジスト層の厚さは0.1〜10μmである。
レジストが塗布された基板(以下レジスト基板という)は、必要によりプリベークされて、エキシマレーザー等により選択露光される。露光によりレジスト層内の酸発生物質(B)から酸が発生する。
レーザーの出力は0.01〜100W程度、好ましくは1〜10Wのものが使用できる。
露光後のレジスト基板は、必要により、50〜200℃、0〜60分間ポストベークを行って、発生した酸を触媒として、樹脂(A)中の酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基からアルカリ可溶基を生じる反応を多数回引き起こし、レジスト層をアルカリ可溶性にする。
ポストベーク後のレジスト基板は、アルカリ溶液により現像を行うことにより、微細パターンを安定して形成することができる。
【0030】
更に、より安定したパターニング特性を得るには、現像液を改善することも必要である。化学増幅レジストには、環境中のアミン等の汚染により、プロトン酸が表層部で失活し、現像液に対して樹脂(A)が難溶化するという特有の問題がある。このため、表層部と内部との溶解度差を生じ、安定したパターンができない大きな要因になっている。
特に炭化水素であるアダマンチル基やt-ブチル基等の疎水性の強い基は、現像液への溶解を阻害する効果があり、表面不溶化への影響が大きい事が知られている。この為、アダマンチル基等に極性基を導入した本発明では、上記点を大幅に改善されるが、更に優れたパターニング特性を得る為には現像液を改善することも必要である。
従って、現像液に有機アルカリ水溶液とイソプロピルアルコール又は前記エーテル系溶媒、特にエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒の混合液を用いることにより、溶解性が著しく増大し、表層部と内部との溶解度差が小さくなるため、安定したパタ−ニングが可能となる。なお、添加するアルコールとしては、イソプロピルアルコールが最も効果があり、メタノールやエタノールでは、クラックを生じ、剥がれが目立った。また、この混合現像液を用いることにより、感度は1桁以上上昇し、現像時にかかる歪みも小さくなった。
また、この現像液が、イソプロピルアルコール又は上記エーテル系溶媒を5〜95vol%含むことが望ましい。5vol%未満では、感度が向上せず、95vol%を越えると、クラックやひび割れを生じ易い。
【0031】
また、脂環族を含むアクリル酸エステル構造もしくはメタクリル酸エステル構造を有する材料と、エステル部に極性の高いユニットを含むアクリル酸エステル構造もしくはエステル部に極性の高いユニットを含むメタクリル酸エステル構造を有する材料とからなる重合体では、べースポリマーの極性が高くなるので、脂環族による非常に強い疎水性を和らげることができる。
その結果、炭化水素系の保護膜との間に極性の差が生じるので、レジスト膜を溶解させることなく、保護膜を塗布することができる。従って、これにより所望のサイズのパターンを形成することができる。
べースポリマーの極性を高くするために、樹脂(A)に導入する極性の高い構造としては、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、カルボン酸、酸無水化合物、又はこれらの構造の一部の原子が硫黄、窒素、若しくはハロゲンで置換された構造等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。極性構造を有する材料を導入する割合は、少なくとも1〜50mol%程度必要であり、好ましくは20mol%以上必要である。
なお、脂環族としては、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン骨格をもつ構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、べースポリマーの極性を高くするために、無水イタコン酸を含むレジストでは、無水イタコン酸の強い極性のため、疎水性の強い炭化水素基を含むにも係わらず、保護膜として従来不可能であった炭化水素系ポリマーをレジスト上に塗布することが可能である。こうした保護膜をレジスト上に形成することにより、化学増幅型レジスト特有の問題である、PED(Post Exposure Delay)を防止することが可能となる。
【0033】
また、保護膜の塗布溶媒としては、分子量の大きな炭化水素系の溶媒を用いることで、より確実に保護膜を塗布することが可能となった。塗布溶媒としては、沸点が100℃以上のものか好ましい。あまり沸点の低いものでは、保護膜をSiウェーハ上に均一に塗布することが困難である。
このため、塗布溶媒としては、具体的には、リモネン、1,5-シクロオクタジエン、1-デセン、t-ブチルシクロヘキサン、p-シメン、ドデシルべンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、レジスト基板上に保護膜を形成するための炭化水素ポリマーとしては、ポリオレフィン類、ポリジエン類等が挙げられるが、露光波長に対して透明で、前述の塗布溶媒に溶けるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0035】
現像後のレジスト基板は、ドライエッチングされる。
ドライエッチングの方法は、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、イオンミリング等が挙げられる。
【0036】
ドライエッチング後のレジスト基板は、溶剤により残存レジスト層及び保護層の除去が行われる。
残存レジスト層及び保護層の除去方法には、種々の湿式方式及び乾式方式がある。乾式方式としては酸素プラズマエッチング等が挙げられる。湿式方式としては、フェノールとハロゲン系溶剤を主成分とする有機溶液系、硫酸/過酸化水素、フッ酸、塩酸/過酸化水素等の無機系溶液を使用する方法が挙げられる。
【0037】
このようにしてパターンが形成された半導体は、例えば、容量数M〜数Gビットのメモリ用に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、得られた樹脂(A)のモノマー(C)とモノマー(D)の組成比はモル比である。
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、トルエンを0.25リットル導入し、100℃に昇温後、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート222gとt−ブチルメタクリレート142gと2,2′−アゾビス(2-メチルブチルニトリル)(日本ヒドラジン工業社製ABN−E)30.3gとトルエン120gを、共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、メタノールで沈殿精製を行った。その結果、下記式(10)の構造の樹脂を得る事ができた。
【0039】
【化10】
Figure 0003948795
【0040】
3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートの組成比50:50、重量平均分子量5,400、分子量分散度1.9の共重合体が得られた。合成したポリマーに、下記式(11)の構造の酸発生剤トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモンを15wt%添加して、シクロヘキサノン溶液とした。
【0041】
【化11】
Figure 0003948795
【0042】
この溶液をスピンコート法により、ハードベークしたノボラック樹脂で被覆されたSiウェーハ上に、0.7μm膜厚に塗布し、ホットプレート上で60℃、100秒間プリベークを行った。こうして得られたウェーハ上のレジスト膜を、KrFエキシマステッパで、照射量100mJ/cm2で露光した後、温度100℃、60秒間PEBを行った。
続いてアルカリ水溶液であるNMD-3(東京応化社製)を用いて60秒間現像し、純水で30秒間リンスした。
この結果、0.50μm幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示す半導体が得られた。
【0043】
実施例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、トルエンを0.25リットル導入し、100℃に昇温後、3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート254gとt−ブチルメタクリレート142gと2,2′−アゾビス(2-メチルブチルニトリル)(日本ヒドラジン工業社製ABN−E)30.3gとトルエン120gを共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、メタノールで沈殿精製を行った。その結果、下記式(12)の構造の樹脂を得る事ができた。
【0044】
【化12】
Figure 0003948795
【0045】
3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレートとt−ブチルメタクリレートの組成比50:50、重量平均分子量5,200、分子量分散度1.9の共重合体が得られた。合成したポリマーに、前記トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモンを15wt%添加して、シクロヘキサノン溶液とした。この溶液をスピンコート法によりハードベークした、ノボラック樹脂で被覆されたSiウェーハ上に、0.7μm膜厚に塗布し、ホットプレート上で60℃、100秒間プリベークを行った。こうして得られたウェーハ上のレジスト膜を、KrFエキシマステッパで、照射量100mJ/cm2で露光した後、温度100℃、60秒間PEBを行った。続いてアルカリ水溶液であるNMD−3(東京応化社製)を用いて60秒間現像し、純水で30秒間リンスした。
この結果、0.52μm幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示す半導体が得られた。
【0046】
実施例3
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、トルエンを0.25リットル導入し、100℃に昇温後、3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート316gとt−ブチルメタクリレート116.4gと2,2′−アゾビス(2-メチルブチルニトリル)(日本ヒドラジン工業社製ABN−E)30.3gとトルエン120gを共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、メタノールで沈殿精製を行った。その結果、下記式(13)の構造の樹脂を得る事ができた。
【0047】
【化13】
Figure 0003948795
【0048】
3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートとt−ブチルメタクリレートの組成比59:41、重量平均分子量5,500、分子量分散度1.9の共重合体が得られた。
合成したポリマーに、前記酸発生剤トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモンを15wt%添加してシクロヘキサノン溶液とした。
この溶液をスピンコート法によりハードベークした、ノボラック樹脂で被覆されたSiウェーハ上に、0.7μm膜厚に塗布し、ホットプレート上で60℃、100秒間プリベークを行った。こうして得られたウェーハ上のレジスト膜を、KrFエキシマステッパで、照射量100mJ/cm2で露光した後、温度100℃、60秒間PEBを行った。続いてアルカリ水溶液であるNMD−3(東京応化社製)を用いて60秒間現像し、純水で30秒間リンスした。
この結果、0.55μm幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示す半導体が得られた。
【0049】
実施例4
現像液を、上記実施例3のNMD-30に代えて、NMD-30とイソプロピルアルコールを1:1(重量比、以下同様)の混合系にすると、0.45μm幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示す半導体が得られた。
【0050】
実施例5
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、トルエンを0.25リットル導入し、100℃に昇温後、3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート214.4gとフマル酸ジt−ブチル273.6gと2,2′−アゾビス(2-メチルブチルニトリル)(日本ヒドラジン工業社製ABN−E)30.3gとトルエン120gを、共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、メタノールで沈殿精製を行った。その結果、下記式(14)の構造の樹脂を得る事ができた。
【0051】
【化14】
Figure 0003948795
【0052】
3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートとフマル酸ジt−ブチルの組成比40:60、重量平均分子量8,500、分子量分散度2.3の共重合体が得られた。
合成したポリマーに、前記酸発生剤トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモンを15wt%添加してシクロヘキサノン溶液とした。
この溶液をスピンコート法により、ハードベークしたノボラック樹脂で被覆された、Siウェーハ上に、0.7μm膜厚に塗布し、ホットプレート上で60℃、100秒間プリベークを行った。
こうして得られたウェーハ上のレジスト膜を、KrFエキシマステッパで、照射量100mJ/cm2で露光した後、温度100℃、60秒間PEBを行った。続いてアルカリ水溶液であるNMD−3(東京応化社製)を用いて60秒間現像し、純水で30秒間リンスした。
この結果、0.60μm幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示す半導体が得られた。
【0053】
比較例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、トルエンを0.25リットル導入し、100℃に昇温後、1−アダマンチルメタクリレート260gとt−ブチルメタクリレート116.4gと2,2′−アゾビス(2-メチルブチルニトリル)(日本ヒドラジン工業社製ABN−E)30.3gとトルエン120gを、共に3時間かけて滴下した。滴下後4時間熟成した後、メタノールで沈殿精製を行った。その結果、下記式(15)の構造の樹脂を得る事ができた。
【0054】
【化15】
Figure 0003948795
【0055】
1−アダマンチルメタクリレートとt−ブチルメタクリレートの組成比59:41、重量平均分子量5,500、分子量分散度1.9の共重合体が得られた。
合成したポリマーに、前記酸発生剤トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモンを15wt%添加してシクロヘキサノン溶液とした。
この溶液をスピンコート法によりハードベークしたノボラック樹脂で被覆された、Siウェーハ上に、0.7μm膜厚に塗布し、ホットプレート上で60℃、100秒間プリベークを行った。こうして得られたウェーハ上のレジスト膜を、KrFエキシマステッパで、照射量100mJ/cm2で露光した後、温度100℃、60秒間PEBを行った。続いてアルカリ水溶液であるNMD−3(東京応化社製)を用いて60秒間現像したが、現像が進まず全くパターンを得ることができなかった。
【0056】
比較例2
現像液を上記実施例3のNMD-30に代えて、NMD-30とイソプロピルアルコールを1:1の混合系にすると、照射量100mJ/cm2により、0.50μ幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示したが、再現性がなかった。
【0057】
実施例6
実施例3の感光材料を用いて、シリコンウエーハ上に塗布し、ホットプレート上で温度60℃、20分ベークを行い、厚さ0.6μmのレジスト膜を形成した。
実施例3と同様にして露光、PEB、現像を行い、0.55μ幅のL&S(ライン&スペース)パターンを示を示す半導体が得られた。
【0058】
比較例3
比較例1の感光材料を用いて、シリコンウエーハ上に塗布し、ホットプレート上で温度60℃、20分ベークを行たが、均一な膜厚のレジスト膜を形成する事ができなかった。焼成だけの処理では、シリコンウェハ上に水酸基が残るので、密着性の悪いレジストでははじきや塗布むらが生じる。
シリコンウェハ上に残る水酸を基HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行う事により、所定の膜厚のレジスト膜を形成する事ができた。
このように、密着性の悪い樹脂では後処理が必要になる。
【0059】
以上から、極性基を含有したアダマンチル基を導入する事により、アダマンチル含有ユニットを増やし、耐ドライエッチング性を向上させた系においても、密着性が飛躍的に改善され、安定したパターニング特性を得る事ができた。
【0060】
【発明の効果】
本発明によって、優れた透明性及びエッチング耐性のみならず、高感度で、且つ優れた密着性を有する安定したパターニング特性を得る事ができたので、半導体を超微細加工することができるようになった。

Claims (5)

  1. アダマンタン骨格の橋頭位に1又は3つのヒドロキシル基及びアダマンタン骨格の橋頭位に1つの(メタ)アクリロイルオキシ基が結合したヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレートと、酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマーとを重合して得られる樹脂(A)、及び放射線照射により酸を発生する物質(B)からなる放射線感光材料。
  2. 樹脂(A)がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の放射線感光材料。
  3. 酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基が、下記式(1)又は(2)であることを特徴とする請求項1に記載の放射線感光材料。
    Figure 0003948795
  4. 請求項1、2または3に記載の放射線感光材料を半導体薄膜上に塗布し、遠紫外線により選択露光し、ベークし、現像し、放射線感光材料をアルカリ溶液により除去することによるパターンの形成方法。
  5. 現像を有機アルカリ水溶液とイソプロピルアルコールの混合液により行うことを特徴とする請求項4記載のパターン形成方法。
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