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JP3948081B2 - 火花点火式内燃機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車用ガソリンエンジンのような4サイクル型の火花点火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
2サイクル型の火花点火式内燃機関の分野では、部分負荷時における燃焼不安定を解消するとともに、HC(炭化水素)排出量の低減を図るために、燃焼室内における自己着火燃焼を積極的に利用した技術が提案されている。例えば、1994年7月1日発行のHONDA R&D Technical Reviewには、低負荷時に排気通路の一部を遮断することによって、シリンダ内の残留ガス濃度を高めて、圧縮行程開始時のシリンダ内圧を高め、自己着火の燃焼時期を制御する例が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、4サイクル型の火花点火式内燃機関において、上述したような自己着火燃焼を積極的に利用した従来例はない。仮に4サイクル型の火花点火式内燃機関で、上記2サイクル型の場合と同様、部分負荷時に排気通路の一部を閉じたとしても、排気行程では排気通路から強制的に排気が行われるため、燃焼室内に十分な量の排気を残留しておくことはできない。このため、その後の圧縮行程初期において筒内温度圧力を十分に高めることができず、良好な自己着火燃焼を実現することはできない。
【0004】
この発明は、4サイクル型の火花点火式内燃機関で、自己着火燃焼を積極的に利用し、かつ、この自己着火燃焼と均質燃焼とを効果的に両立させることを目的としている。
【0005】
そこで、請求項1の発明は、シリンダの燃焼室に、この燃焼室に開口する吸気通路との間を開閉する吸気弁と、同じく燃焼室に開口する排気通路との間を開閉する排気弁とが設けられるとともに、シリンダ略中央に火花点火プラグを有する4サイクル型の火花点火式内燃機関において、上記排気弁を1つのシリンダに対して2つ以上設け、一方の第1排気弁が排気行程で開く一方、他方の第2排気弁が排気行程及び吸気行程の両方で開くように設定し、かつ、第1排気弁に対応する第1排気通路と第2排気弁に対応する第2排気通路とを互いに独立して設けるとともに、少なくとも全負荷時には、上記第2排気通路を閉じることにより火花点火プラグの火花点火による燃焼が行われ、少なくとも部分負荷時には、第2排気通路を開くことにより、吸気通路から燃焼室へ導入される混合気と第2排気通路から燃焼室へ導入される残留排気との界面において、圧縮行程で残留排気から混合気への自己着火燃焼が行われるように、第2排気通路を開閉する開閉手段を設けたことを特徴としている。
【0006】
上記開閉手段は、例えば請求項2の発明のように、部分負荷時に開かれ、全負荷時に閉じられる制御弁である。
【0007】
例えば部分負荷時には、開閉手段により第2排気通路を開状態にする。この場合、吸気行程の燃焼室には、吸気通路から新気(混合気)が導入されるとともに、第2排気弁により開かれた第2排気通路から排気が適宜に導入される。従って、燃焼室が圧縮された際に、排気側から混合気側への自己着火が行われ、自己着火燃焼が実現される。
【0008】
ここで燃焼室は、好ましくは請求項3の発明のように、吸気通路が開口する側と排気通路が開口する側とが略対称形に形成された、いわゆるクロスフロー形式とする。この場合、吸気行程の際に、吸気通路から導入される混合気と排気通路から導入される排気とが燃焼室内で適宜に成層化され、混合気と排気との界面において、更に良好に自己着火が行われる。
【0009】
一方、全負荷時のように均質燃焼を行う際には、開閉手段により第2排気通路を閉状態にすればよい。この場合、全行程を通じて第2排気通路が遮断されるから、上述したように吸気行程で第2排気通路から燃焼室へ残留排気が導入されることはなく、十分に良好な出力を確保できる。
【0010】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、自己着火燃焼を積極的に利用することにより、部分負荷時等に安定した燃焼を得ることができる。また、全負荷時等には第2排気通路を閉作動することで、出力性能の低下を抑制できる。つまり、部分負荷時等の自己着火燃焼と全負荷時等の均質燃焼とを非常に高いレベルで両立できる。
【0011】
さらに、部分負荷時にスロットル弁を利用しなくても新気の量を抑制できることから、ポンピングロスの低減が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を火花点火式内燃機関である4サイクル型の自動車用ガソリンエンジンに適用した実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1〜3に示すように、シリンダブロック10には、複数のシリンダ12が直列に配置されており、その上面を覆うように、シリンダヘッド14が固定されている。シリンダ12内には、ピストン16が摺動可能に嵌合しているとともに、シリンダヘッド14の下面とピストン16上面との間に、いわゆるペントルーフ型の燃焼室18が形成されている。燃焼室18の一方の傾斜面18aには第1吸気通路20及び第2吸気通路22が開口しており、他方の傾斜面18bに第1排気通路24及び第2排気通路26が開口している。
【0014】
また、燃焼室18には、第1,第2吸気通路20,22との間をそれぞれ開閉する第1吸気弁28及び第2吸気弁30と、第1,第2排気通路24,26との間をそれぞれ開閉する第1排気弁32及び第2排気弁34が設けられ、これら吸気弁28,30及び排気弁32,34によって囲まれたシリンダ12の略中心位置に、点火プラグ36が配置されている。吸気通路20,22は、上流側で互いに合流しており、その合流部38に、電磁式の燃料噴射弁40が設けられている。
【0015】
第1,第2排気通路24,26は、それぞれシリンダヘッド14内部に穿設された一対の排気ポートからシリンダヘッド14に取り付けられる第1排気管42及び第2排気管44の内部にわたって互いに独立して延びている。そして、第2排気管44の途中には、第2排気通路26を開閉するバタフライバルブ型の制御弁46が介装されている。この制御弁46は、シャフト48を介して図示せぬ駆動機構によって機関運転条件に応じて開閉制御される。
【0016】
図4は、吸気弁28,30及び排気弁32,34のバルブリフト特性を示している。これらの吸気弁28,30及び排気弁32,34は、それぞれ機関のクランクシャフトと同期して回転するカムのプロフィールに応じて開閉作動する。
【0017】
各吸気弁28,30及び排気弁32,34の開閉動作を図1,2を参照して説明すると、図4(イ)に示す第1排気弁32は、排気行程(a)で開作動し、その他の吸気行程(b),圧縮行程(c)及び膨張行程(d)では閉状態に制御されている。
【0018】
一方、図4(ロ)に示す第2排気弁34は、排気行程(a)及び吸気行程(b)の両方で開作動し、圧縮行程(c)及び膨張行程(d)では閉状態に制御される。つまり第2排気弁34は、通常の第1排気弁32とともに排気行程(a)で開作動するとともに、吸気弁28,30とともに吸気行程(b)で開作動し、排気行程(a)から吸気行程(b)に跨って開状態に保持されることとなる。
【0019】
また、吸気弁28,30は、図4(ハ)に示すように、吸気行程(b)で開作動し、その他の排気行程(a),圧縮行程(c)及び膨張行程(d)では閉状態に制御される。
【0020】
つまり、吸気行程(b)では、両吸気弁28,30と第2排気弁34とが同期して開作動する。
【0021】
例えば部分負荷時には、図1に示すように、制御弁46は開状態に制御され、自己着火燃焼が行われる。
【0022】
詳述すると、排気行程(a)では、両方の排気通路24,26が開作動し、ピストン16の上昇に伴って燃焼室18内の残留ガスが両排気通路24,26を通って排出される。
【0023】
続く吸気行程(b)では、上述したように吸気弁28,30及び第2排気弁34が共に開作動する。従って燃焼室18には、ピストン16の下降に伴って新気(混合気)Pが吸気通路20,22側から導入されると同時に、第2排気通路26内に残留する排気Qが導入される。ここで、燃焼室18は、いわゆるクロスフロー形式となっており、吸気通路20,22が開口する側と排気通路24,26が開口する側とが略対称形に形成され、かつ、ピストン16の上面が略平面に形成されているため、吸気通路20,22から導入される混合気Pがそのまま吸気通路側に残留し、第2排気通路26から導入される排気Qがそのまま排気通路側に残留する。従って、燃焼室18内は、混合気Pと排気Qとが成層化した状態となる。なお、この吸気行程(b)では、第1排気弁32(図3)は閉状態となっており、第1排気通路24内に残留する排気が燃焼室18へ逆流することはない。
【0024】
続く圧縮行程(c)では、燃焼室18内の混合気Pと排気Qとが成層化した状態で圧縮される。このため、燃焼室18内に残留する排気Qの温度が、断熱圧縮の作用によって混合気Pの発火温度を越えるまで上昇し、混合気Pと残留排気Qとの界面において、残留排気Qから混合気Pへの自己着火が行われる。そして膨張行程(d)では、爆発圧力によりピストン16が下死点側へ押し下げられて、再び排気行程(a)へと戻り、上述した動作が繰り返される。
【0025】
一方、機関の全負荷時には、図2に示すように、制御弁46は全閉状態に制御され、シリンダ12内に均質な混合気Pを形成して点火する均質燃焼が行われる。詳述すると、排気行程(a)では第1排気通路24(図3)を通って燃焼室18内の排気ガスが排出され、吸気行程(b)では両吸気弁28,30が共に開状態となり、両吸気通路20,22から混合気Pが燃焼室18内に導入される。このとき、制御弁46が閉状態となっているから、第2排気通路26側から排気が導入されることはない。続く圧縮行程(c)で圧縮された混合気Pは点火プラグ36で着火され、膨張行程(d)では爆発圧力によりピストン16が押し下げられる。
【0026】
以上のように、本実施例に係る4ストローク型の火花点火式エンジンでは、部分負荷時における吸気行程(b)の際に、第2排気通路26に残留する排気Qが燃焼室18へ導入されるため、燃焼室18内で排気Q側から混合気Pへの自己着火が可能となり、良好な自己着火燃焼が実現される。この結果、従来のように吸気通路の途中に設けられたスロットル弁によって、部分負荷時に吸入される新気の量を制限する必要がないため、吸入負圧に起因するポンピングロスの低減が可能となる。
【0027】
また、全負荷時等においては、制御弁46を閉じて第2排気通路26を遮断することにより、上述したように吸気行程(b)で排気Qが第2排気通路26から燃焼室18へ導入されることはなく、十分に良好な出力を得ることができる。
【0028】
つまり本実施例では、部分負荷時における自己着火燃焼と全負荷時における均質燃焼とを高度に両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内燃機関の部分負荷時における各サイクルの状態を示す断面対応図。
【図2】図1の内燃機関の全負荷時における各サイクルの状態を示す断面対応図。
【図3】図1の内燃機関を下側から見た平面対応図。
【図4】図1の内燃機関の吸気弁及び排気弁のバルブリフト特性を示す特性図。
【符号の説明】
12…シリンダ
18…燃焼室
20,22…吸気通路
24…第1排気通路
26…第2排気通路
28,30…吸気弁
32…第1排気弁
34…第2排気弁
36…点火プラグ
46…制御弁(開閉手段)

Claims (3)

  1. シリンダの燃焼室に、この燃焼室に開口する吸気通路との間を開閉する吸気弁と、同じく燃焼室に開口する排気通路との間を開閉する排気弁とが設けられるとともに、シリンダ略中央に火花点火プラグを有する4サイクル型の火花点火式内燃機関において、
    上記排気弁を1つのシリンダに対して2つ以上設け、一方の第1排気弁が排気行程で開く一方、他方の第2排気弁が排気行程及び吸気行程の両方で開くように設定し、
    かつ、第1排気弁に対応する第1排気通路と第2排気弁に対応する第2排気通路とを互いに独立して設けるとともに、
    少なくとも全負荷時には、上記第2排気通路を閉じることにより火花点火プラグの火花点火による燃焼が行われ、少なくとも部分負荷時には、第2排気通路を開くことにより、吸気通路から燃焼室へ導入される混合気と第2排気通路から燃焼室へ導入される残留排気との界面において、圧縮行程で残留排気から混合気への自己着火燃焼が行われるように、第2排気通路を開閉する開閉手段を設けたことを特徴とする火花点火式内燃機関。
  2. 上記開閉手段は、部分負荷時に開かれ、全負荷時に閉じられる制御弁であることを特徴とする請求項1に記載の火花点火式内燃機関。
  3. 上記燃焼室は、上記吸気通路が開口する側と排気通路が開口する側とが略対称形に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の火花点火式内燃機関。
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