JP3940500B2 - 強化光ファイバコードおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバの保護を強化した新規な構造の単心強化光ファイバコードをテープ状又はバンドル状に形成する強化光ファイバコードおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
熱硬化性樹脂等の架橋性樹脂をマトリックスとした繊維強化光ファイバコードにおいて、例えば、複数本の単心光ファイバコードを使用してテープ状光ファイバコードとする場合、複数本の前記単心コードを平行に配列し、その外周に透明な紫外線硬化性樹脂で一括被覆した後、紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させる方法を用いていた。
【0003】
ところがこの場合、ハンドリング等によりテープ状光ファイバコードが、単心コードに分岐しないように、紫外線硬化性樹脂の被覆厚みを十分に取る必要があり、結果的に図3に示すようにテープ状光ファイバコードの肉厚が厚くなるという問題があった。
【0004】
また、単心光ファイバコードを、図5に示すようにバンドル状に集合して固める場合、紫外線が内部まで届かないという問題があり、これには熱硬化性樹脂等を使用して対応するとしても、十分な細密充填ができず、結果的に細径化できないという問題があった。
なお、これらの架橋性樹脂は、比較的高価であるため、テープ状もしくはバンドル状光ファイバコードとするのに経済的でないという問題点もあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、光ファイバ素線の外周に縦添された補強繊維と、前記補強繊維を結着する熱可塑性樹脂マトリックスとからなる強化被覆層を備えたテープ状またはバンドル状強化光ファイバコードにおいて、前記強化被覆層で前記光ファイバ素線の外周を被覆した単心強化光ファイバコードを、複数本一列状または複数本束状に配置し、隣接する前記強化被覆層同士の界面を前記熱可塑性樹脂の融着により一体化した強化光ファイバコードであって、前記補強繊維は、複合繊維の高融点成分であって、前記熱可塑性樹脂マトリックスが前記複合繊維の低融点成分となるようにした。
この構成とすることによって、各単心強化光ファイバの熱可塑性樹脂マトリックスの表面同士が熱融着することによって、テープ状に集合された強化光ファイバとなるので、従来の如く別のバインダを介在させたり、全体を被覆したものと比較して極めて、コンパクトな断面形状のものが得られ、かつ、接着剤や被覆樹脂も不要なので、低コストになる。
また、本発明では、サイドバイサイド型、鞘芯型、複数分割型等の複合繊維の高融点成分を補強繊維とし、低融点成分を溶融してマトリックスとしているので、単心の強化被覆層において補強繊維は均等配置され、方向性が少なく、これを複数本テープ状又はバンドル状に束ねても当然に均一な保護強化層を有する信頼性の高い強化光ファイバコードを提供できる。
また、本発明は、光ファイバ素線の外周に縦添された補強繊維と、前記補強繊維を結着する熱可塑性樹脂マトリックスとからなる強化被覆層を備え、前記補強繊維は、複合繊維の高融点成分であり、前記熱可塑性樹脂マトリックスが前記複合繊維の低融点成分であって、前記光ファイバ素線の外周に前記複合繊維を縦添えした後に、前記低融点成分を溶融して前記強化被覆層で前記補強繊維を結着させた単心強化光ファイバコードを形成する工程と、この工程の後に、前記単心強化光ファイバコードを所定内径の成形ノズルに複数本導いて、前記低融点成分の融点以上、前記高融点成分の融点以下の温度でテープ状又はバンドル状に賦形する。
このような構成とすることによって、単心強化光ファイバの強化被覆層が熱変形しつつ、単心強化光ファイバの表面同士が融着するので、接着剤等を介在させる必要がなく、接着剤の塗布装置や硬化装置等を要せず、簡潔にテープ状又はバンドル状の強化光ファイバコードを製造できる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。本発明において使用される単心強化光ファイバコードは、光ファイバ素線の外周を被覆する強化被覆層を抗張力性を有する補強繊維と、補強繊維の間隙に存在して、これらを結着する熱可塑性樹脂マトリックスとで構成する。
この場合、マトリックスと補強繊維とは、相互に相溶性を有するもの、もしくは、有しないもののいずれであってもよい。
【0007】
強化被覆層における、補強繊維の分散をより均一にするためには、光ファイバ素線の外周に縦添えした状態で溶融されてマトリックスとなる低融点成分と、補強繊維となる高融点成分とを一体化した複合繊維が好ましい。
【0008】
複合繊維としては、サイドバイサイド型、鞘芯型、分割型等であって良いが、芯部の繊維を補強繊維としてより均一な分散状態に配置できる点から、鞘部と芯部とからなる鞘芯型複合繊維が好ましい。
この場合、鞘部の融点は、芯部の融点より20℃以上低いものが望ましい。
【0009】
本発明のテープ状又はバンドル状強化光ファイバコードの製造方法では、単心強化光ファイバコードを複数本挿通賦形するための型は、テープ又はバンドルの外形寸法に応じた内壁を有し、熱可塑性樹脂マトリックスを溶融成形するための加熱制御手段を有している。
【0010】
単心強化光ファイバコードは、成形ノズルに挿通する前に予熱を施すと成形ノズルの長さは短く出来、溶融賦形加工の引取り抵抗を低減できる。
以下、本発明について好適な実施例により説明する。なお、本願発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0011】
実施例
実施例1.
Φ125μmの石英系光ファイバの外周にUV樹脂被覆を施した外径Φ0.18mmのUV樹脂被覆光ファイバ素線1をボビンクリールから供給し、その外周に鞘部が融点125℃のポリエチレン(PE)、芯部が融点250℃、ヤング率1200kg/cm2のポリエステル(PET)であって、鞘部と芯部の断面積比が30/70の鞘芯複合繊維60デニールのもの4本を、案内板を介して光ファイバ素線1の外周に縦添えし、鞘部のみ溶融する温度である200℃に調温設定された、内径0.27mmの金属製成形ノズルに通し、30m/minで連続的に引取り、PET繊維を補強繊維2aとし、PEをマトリックス2bとする外径0.25mmの繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)被覆の単心強化光ファイバコード4を得た(図1参照)。
【0012】
図1に示した単心強化光ファイバコード4は、中心に配置された光ファイバ素線1と、その外周に被覆形成された強化被覆層2とを備えている。強化被覆層2は、補強繊維2aと、マトリックス2bとを有している。補強繊維2aは、光ファイバ素線1の外周に沿って縦添されている。
【0013】
得られた単心強化光ファイバコード4は、0.65%伸度時の強力が0.5kg,FRTP部の引張弾性率が850kg/mm2、最小曲げ直径3mm、光伝送性能が0.35dB/kmと光コードに適した性能を有したものである。
【0014】
この単心強化光ファイバコード4を160℃に予備加熱しつつ、4本平行かつ一列状に配置し、200℃に温度調整された高さ0.24mm、幅0.96mmの長方形の孔断面形状で長さ5mmの金属製成形ノズルに30m/minの速度で挿通して、図2に示す略長方形断面を有し、0.24mm×0.96mmの薄肉テープ状強化光ファイバコード5を得た。
【0015】
図2に示したテープ状強化光ファイバコード5は、強化被覆層2で光ファイバ素線1の外周を被覆した単心強化光ファイバコード4を4本一列状に配置し、隣接する強化被覆層2同士の界面を熱可塑性樹脂の融着により一体化させた構造になっている。
このテープ状強化光ファイバコード5は、65%伸度時の応力が2kgで実用上十分な物性を備えていた。得られたテープ状強化光ファイバコード5の性能を表1にまとめて示す。
【0016】
比較例1
Φ0.18mmのUV被覆光ファイバ素線1に、ヤング率が1200kg/mm2の45デニールのPET繊維を4本縦添えし、これに硬化性触媒を含むビニルエステル樹脂を含浸して、内径0.25mmのノズルで絞り成形した後、10m/minの速度で引取ながら、これを溶融押出機のクロスヘッドに導き、ふっ化エチレンプロピレン(FEP)樹脂を環状に押出して外径0.4mmに被覆し、直ちに被覆層を冷却した後、140℃の蒸気加熱槽中で内部のビニルエステル樹脂を硬化させて、FEP被覆を剥離し、外径0.25mmの単心FRP被覆光ファイバコード6を得た。
【0017】
この単心FRP被覆光ファイバコード6を4本平行に配列し、その外周を透明な紫外線硬化性樹脂7で一括被覆して、図3に示すテープ状FRP被覆光ファイバコード8を得た。
【0018】
得られたコード8は、ハンドリング等によりテープ状光ファイバコード8が単心コードに分岐しないように、紫外線硬化性樹脂7の被覆厚みを考慮したので、0.32mm×1.1mmと実施例1のものより、大なる寸法のものとなった。
【0019】
得られたテープ状強化光ファイバコード8の性能を表1に示す。 なお、用いたビニルエステル樹脂、紫外線硬化性樹脂は比較的高価であるため、テープ状もしくはバンドル状光ファイバコードとするのに経済的でないという問題点もあった。
【0020】
実施例2
実施例1と同じ外径0.25mmの単心強化光ファイバコード4を、160℃に予備加熱しつつ略六角形状に7本配置し、200℃に温度設定された、内径0.72mmの金属製成形ノズルに30m/minの速度で挿通することで、図4に示す略円形断面を有するバンドル状強化光ファイバコード10を得た。
【0021】
図4に示した強化光ファイバコード10は、第1実施例と同様に、光ファイバ素線1の外周に縦添された補強繊維2aと、補強繊維2aを結着する熱可塑性樹脂マトリックス2bとからなる強化被覆層2を備えている。
【0022】
また、この強化光ファイバコード10は、強化被覆層2で光ファイバ素線1の外周を被覆した単心強化光ファイバコード4を複数本束状に配置し、隣接する強化被覆層2同士の界面を熱可塑性樹脂マトリックス2bの融着により一体化させている。
このバンドル状強化光ファイバコード10は、65%伸度時の応力が3.5kgで実用上十分な物性を備えていた。
得られたコードの性能を表1に示す。
【0023】
比較例2
比較例1と同じ外径0.25mmの単心FRP被覆光ファイバコード6を略六角形状に7本配置し、その外周に透明な紫外線硬化性樹脂7を一括被覆して、図
【0024】
5に示すバンドル状FRP被覆光ファイバコード11を得た。
得られたコード11は、ハンドリング等によりバンドル状光ファイバコードが単心コードに分岐しないように、紫外線硬化性樹脂の被覆厚みを考慮したので、最外径が0.8mmの六角断面形状となり、実施例2の外寸0.72mmのものよりは大なる寸法となった。
得られた光ファイバコードの性能を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
以上、実施例で詳細に説明したように、本発明にかかるテープ状又はバンドル状強化光ファイバコードは、極めて小寸法に形成されているので、省スペース化が図られ、また比較的高価な架橋性樹脂、紫外線硬化性樹脂を使用しないのでコストの低減を図ることができる実用性の高いものである。
本発明の製造方法では、単心のFRTP強化光ファイバコードを複数本、所定形状の成形ノズルに挿通し、単心強化光ファイバコード同士を熱融着するので、接着剤や、硬化性樹脂等を使用せず、簡素な工程でテープ状又はバンドル状の強化光ファイバコードを得ることができる。
また、従来のFRP被覆タイプに比べて柔軟性を有しており、かつ製造速度も上げることができ、結果として経済的にも優れたものを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する単心強化光ファイバコードの一例を示す断面説明図である。
【図2】本発明の実施例1のテープ状強化光ファイバコードの断面説明図である。
【図3】比較例1のテープ状FRP強化光ファイバコードの断面説明図である。
【図4】本発明の実施例2のバンドル状強化光ファイバコードの断面説明図である。
【図5】比較例2のバンドル状FRP強化光ファイバコードの断面説明図である。
【符号の簡単な説明】
1 光ファイバ素線
2 強化被覆層
2a 補強繊維
2b 熱可塑性樹脂マトリックス
4 単心強化光ファイバコード
5 テープ状強化光ファイバコード
10 バンドル状強化光ファイバコード
Claims (2)
- 光ファイバ素線の外周に縦添された補強繊維と、前記補強繊維を結着する熱可塑性樹脂マトリックスとからなる強化被覆層を備えたテープ状またはバンドル状強化光ファイバコードにおいて、
前記強化被覆層で前記光ファイバ素線の外周を被覆した単心強化光ファイバコードを、複数本一列状または複数本束状に配置し、隣接する前記強化被覆層同士の界面を前記熱可塑性樹脂の融着により一体化した強化光ファイバコードであって、
前記補強繊維は、複合繊維の高融点成分であって、前記熱可塑性樹脂マトリックスが前記複合繊維の低融点成分であることを特徴とする強化光ファイバコード。 - 光ファイバ素線の外周に縦添された補強繊維と、前記補強繊維を結着する熱可塑性樹脂マトリックスとからなる強化被覆層を備え、
前記補強繊維は、複合繊維の高融点成分であり、前記熱可塑性樹脂マトリックスが前記複合繊維の低融点成分であって、
前記光ファイバ素線の外周に前記複合繊維を縦添えした後に、前記低融点成分を溶融して前記強化被覆層で前記補強繊維を結着させた単心強化光ファイバコードを形成する工程と、
この工程の後に、前記単心強化光ファイバコードを所定内径の成形ノズルに複数本導いて、前記低融点成分の融点以上、前記高融点成分の融点以下の温度でテープ状又はバンドル状に賦形することを特徴とする強化光ファイバコードの製造方法。
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