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JP3838833B2 - Al−Bi系焼結軸受合金およびその製造方法 - Google Patents

Al−Bi系焼結軸受合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来のAl−Pb系合金、Al−Sn系合金等の軸受合金に替わる耐摩耗性の優れたAl−Bi系焼結軸受合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、最も多く使用されている軸受合金には、オーバーレイメッキを施した銅−鉛合金軸受(ケルメット合金:Cu−Pb−Ni−Sn合金系、Cu−Pb−Ag−Sn合金系、Pb:23〜42wt%)がある。
【0003】
オーバーレイメッキ軸受は、製造の工程が増えることからコストが割高になるという難点がある。また、中荷重用によく用いられるオーバーレイメッキ無しの銅−鉛合金軸受は、近年の排ガス規制やオイル交換期間の長期化により腐食の発生が問題になっている。
【0004】
そこで、近年、耐腐食性、耐荷重性、なじみ性に優れたAl系軸受合金の開発が重要な課題としてクローズアップされ、これまで米国を中心にいくつかのAl系軸受合金が開発されている。開発された、Al系軸受合金としては、米国のGeneral Motors社が開発したGM metal(溶製材)およびDiaclevite社のGould Metal(粉末圧延材)などのAl−Pb系合金やAlcoa社が開発したAl−Sn系合金(溶製材)が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
Al−Pb系合金の製造の際に問題となる点は、AlとPbの比重差が大きいために地上(重力環境下)における製造では十分なPb含有量が得られず(12重量%が限界)、また、Al−Sn系合金においては、Snは軸に対する表面性能が劣っているために、過剰摩耗を引き起こすなど、いずれの合金についても、十分な軸受性能を付与させることができなかった。
【0006】
最近、本発明者は、無重力環境下でなくても比重差が大きな金属同士を容易に混合できる製造方法を開発するとともに、優れた軸受特性を有するAl−Pb系軸受合金(SUT metalAおよびSUT metalB) の開発に成功した(特公昭62−6625号公報、特公昭62−29497号公報、特公平3−46536号公報、特開平7−300644号公報)。しかし、環境問題の観点から、Pbの2000年以降の使用が制限されており、バッテリーの使用目的以外はPbの使用を皆無にすることが目標となっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような状況にあって、本発明者は、従来のAl−Pb合金やAl−Sn合金に替わる新しい軸受合金の開発を試み、種々の軸受性能に優れるAl系軸受合金とその製造法を検討した結果、Pbを使用しないで、従来のAl系軸受合金のみならず、鉛青銅系合金(LBC4)よりもはるかに優れたAl−Bi系の新しい焼結軸受合金の開発に成功した。
【0008】
すなわち、本発明は、ビスマスが〜50容積%であり、残部の91〜50容積%がAl97重量%、Mg3重量%の組成からなることを特徴とするAl−Bi系焼結軸受合金である。本発明のAl−Bi系焼結軸受合金は、この組成範囲内で、ビスマスが約40容積%の場合に最も小さい比摩耗量を示す。
【0009】
また、本発明は、上記合金組成に加えて銅および黒鉛を加えて、さらに比摩耗量を少なくした焼結合金、すなわち、ビスマスが〜50容積%であり、銅および黒鉛の合計量が15容積%以下であり、残部の91超〜35容積%がAl97重量%、Mg3重量%の組成からなる合金であることを特徴とするAl−Bi系焼結軸受合金である。また、本発明は、Mg Bi またはBiMgの化合物が生成していることを特徴とする上記のAl−Bi系焼結軸受合金である。
【0010】
さらに、本発明は、上記の各合金組成となるように原料粉末を所定の割合で混合し、圧粉成形し、常圧不活性雰囲気中で520℃〜640℃で焼結することを特徴とするAl−Bi系焼結軸受合金の製造方法である。上記の焼結合金において、銅および黒鉛を含有させるには、銅メッキした黒鉛粉を原料として使用することが好ましい。
【0011】
Al−Bi系焼結合金、Al−Sn系焼結合金、Al−In系焼結合金は、軟質金属基がAl中に細かく均一に分散し、軸受合金として理想的な組織を得ることができる。AlにBi、Sn、およびInを添加するとなじみ性が現れ、比摩耗量が小さくなる。これにより、これらの金属成分は摩耗を抑える効果があることが分かった。特に、Biを添加した焼結合金は耐摩耗性が大きく向上した。また、原料粉に銅メッキした黒鉛粉末(以下「鍍銅黒鉛粉」という)を混合する方法等により焼結合金中に銅および黒鉛を15容積%以下含有させるとさらに耐摩耗性が向上する。銅および黒鉛の含有量が増加するにつれ曲げ強度は低下するので銅および黒鉛の上限は15容積%程度が好ましい。
【0012】
Al−Bi系焼結合金、Al−Sn系焼結合金およびAl−In系焼結合金は、実用合金であるGM metal(Al−8wt%Pb)およびGould metal(Al−8.5wt%Pb−4.0wt%Si−1.5wt%Sn−1.0wt%Cu)よりも耐摩耗性に優れていた。特に、Al−Bi系焼結合金は、鉛青銅4種(LBC4)やAl−Pb合金(SUT metalA:Al−44.8wt%Pb−1.3wt%Mg)よりも比摩耗量が小さかった。Alに対する軟質金属の最適添加量は、Biが40容積%、Snが12容積%、Inが18容積%であった。また、鍍銅黒鉛粉を添加したAl−Bi系焼結合金は、Al−Pbに鍍銅黒鉛粉を添加した焼結合金(SUT metalB:Al−43.3%Pb−1.2%Mg−6.5%Cu−6.5%Gr)と同等な比摩耗量が得られた。これらの結果からAl−Bi系焼結合金は、Al−Pb系焼結合金に匹敵する性能を有すると言える。
【0013】
本発明の焼結合金において、Biは従来の合金のPb、Sn、Inに替わる毒性の少ない軟質金属成分であり、Pb、Sn、Inを用いた軸受合金よりも小さな比摩耗量が得られることが分かった。軸受合金の金属組織と耐摩耗性には密接な関係があり、軟質金属が細かく網目状に分布している材料は、なじみ性がよく、比摩耗量も小さい。Mgは、BiとMg3 Bi2 またはBiMgの化合物を生成し、これは 焼結性の改善および強度を向上させる作用をするので上記所定の量含有することが望ましい。
【0014】
本発明の焼結軸受合金を製造するための原料のAl粉、Mg粉、Bi粉、鍍銅黒鉛粉の粒度は100〜1500meshのものを用い、好ましくは、平均粒径がAl粉は7.3μm以下、Mg粉は75μm以下、Biは75μm以下、鍍銅黒鉛粉は149μm以下を用いる。なお、鍍銅黒鉛粉の代わりに銅粉、黒鉛粉を用いることもできる。
【0015】
これらの原料粉を焼結体の組成が本発明の各合金の組成範囲内になるように所定の混合比に調合後、乾式混合を約30分行う。次いで、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛等を用いて、混合粉を金型に充填し10〜400MPaで約60分かけて成形して圧粉成形体を作製する。次いで、この圧粉成形体を速度約15℃/分で昇温し、Ar雰囲気中等の常圧不活性雰囲気中で520℃〜640℃で焼結する。軟質金属を細かく網目状に均一に分散させるためのより好適な焼結温度は580〜600℃である。
【0016】
図1は、ビスマスの含有量を3〜50容積%の範囲とし、残部の97〜50容積%をAl97重量%、Mg3重量%の組成としたAl−Bi系焼結軸受合金のBi含有量と(mm3 /Nmm)の関係を、焼結温度を580℃、600℃、620℃、640℃とした場合について示すグラフである。摩耗試験は、大越式迅速摩耗試験機を用い、相手材SUJ2( 高炭素クロム軸受鋼材)、最終荷重20.6N、すべり速度3.55m/s、摩耗距離66.6m〜600m、空気中、無潤滑の条件で行った。図2は、Al−40容積%Bi合金およびAl−40容積%Bi−15容積%(Cu−黒鉛)合金の摩擦距離と比摩耗量の関係を示すグラフである。Al−40容積%Bi−15容積%(Cu−黒鉛)合金は、Al−40容積%Bi合金より小さな比摩擦量を示し、特に摩擦距離200〜600mで比摩擦量は著しく小さくなる。図3は 、580℃(a)および640℃(b)でそれぞれ焼結したAl−40容積%Bi合金の組織を示す光学顕微鏡写真である。図4は 、Al−40容積%Bi−15容積%(Cu−黒鉛)合金の組織を示す光学顕微鏡写真である。
【0017】
本発明のAl−Bi−Mg系焼結軸受合金のBi含有量は、3〜50容積%(10.2〜78.7重量%)、比摩耗量の観点からするとより好ましくは9〜50容積%、さらにより好ましくは30〜50容積%の範囲である。30〜50容積%では、従来の代表的な鉛青銅系軸受合金であるULBC4の比摩耗量4×10-8mm3 /Nmmと同等かそれより小さい比摩耗量を示し、特に、Bi含有量が40容積%程度で最も小さい比摩耗量を示す。また40容積%を超えてBi含有量を増加すると比摩耗量は次第に大きくなるのでBiの含有量の上限は50容積%程度が好ましい。Bi含有量が9容積%未満〜3%では比摩耗量は大きくなるが、それでも従来のAl−Sn系合金、Al−In系合金と比較して同等の比摩耗量を示し、硬度が大きいので軸受合金としての十分な特性を有している。
【0018】
なお、比較のためにAl−Sn系焼結軸受合金、Al−In系焼結軸受合金を同様に製造したものについて、Sn含有量と比摩耗量(mm3 /Nmm)の関係を図5に示す。また、In含有量と比摩耗量(mm3 /Nmm)の関係を図6に示す。焼結温度は580℃である。
【0019】
Al−Sn系焼結合金では、最も優れた組成はSn含有量12容積%程度であるが、この場合の比摩耗量は4.5×10-8mm3 /Nmm程度であり、また、Al−In系焼結合金では、最も優れた組成はIn含有量18容積%程度であるが、この場合の比摩耗量は6.2×10-8mm3 /Nmm程度であり、本発明のAl−Bi系焼結軸受合金より劣る。
【0020】
また、表1に本発明のAl−Bi系焼結軸受合金とAl−Sn系焼結軸受合金、Al−In系焼結軸受合金の機械的性質および相対密度を示す。ビスマスの含有量を9〜30容積%の範囲とし、残部の容積%をAl91重量%、Mg3重量%の組成とした本発明のAl−Bi系焼結軸受合金は、Al−Sn系焼結合金と同等以上の曲げ強度を有することが分かる。
【0021】
【表1】
Figure 0003838833
【0022】
【実施例】
実施例1
(Al−3重量%Mg)−Bi40容積%の組成(Al−71重量%Bi−0.9重量%Mg)となるように原料粉を所定の混合比に調合後、乾式混合を行った。次いで、これらの混合粉を200MPaで成形した後、常圧Ar雰囲気中において温度620℃で焼結した。
【0023】
図7に、得られた焼結体のX線回折パターンを示す。また、図8の(a)に、摩耗表面から検出したFeKα1X線強度を示す。図9に、得られた焼結体の比摩耗量について従来公知の軸受け合金と比較して示す。
【0024】
図7に示すように、本発明のAl−Bi系焼結合金ではBiがAl中に細かく均一に分散していることが分かる。また、BiMg化合物が形成されていることも分かる。図9から、Al−Bi系焼結合金、Al−Si系焼結合金およびAl−In系焼結合金は、実用合金であるGM metalおよびGould metalよりも耐摩耗性に優れていることが分かるが、特に、本発明のAl−Bi系焼結合金は、鉛青銅4種(LBC4)やAl−Pb合金(SUT METALA)と比べて比摩耗量が小さいことが分かる。
【0025】
実施例2
焼結合金中のBiの含有量が9容積%となるように原料粉末を調合した以外は、実施例1と同一の条件で焼結した。図7に、得られた焼結体のX線回折パターンを示す。BiがAl中に細かく均一に分散し、Biの含有量が9容積%の焼結体にはBi3 Mg2が生成するが、40容積%の焼結体にはBi Mgが生成していることが分かる。また、表1に示されるようにBiが9容積%の場合、曲げ強度が209.1MPaと非常に大きな値を示す。
【0026】
実施例3
焼結合金中のBiの含有量が21容積%となるように原料粉末を調合した以外は、実施例1と同一の条件で圧粉成形体を製作し、580℃および640℃で焼結した。図10の(a)、(b)に、得られた焼結体の光学顕微鏡組織写真を示す。写真の黒い部分がBiであり、BiがAl中に細かく均一に分散し、焼結温度が低いほど軟質金属であるBiがAl中に細かく網目状に均一に分散していることが分かる。
【0027】
実施例4
銅および黒鉛の合計の容積%が15%となり、ビスマスが40容積%であり、残部の45容積%がAl97重量%、Mg3重量%の合金組成(Al−69.3重量%Bi−0.6重量%Mg−4.8重量%Cu−4.8重量%黒鉛)となるように原料粉を所定の混合比に調合後、実施例1と同一の条件で焼結した。
【0028】
図8の(a)、(b)に、摩耗表面から検出したX線強度FeKα1を示す。図9に、従来公知の軸受合金と比較した比摩耗量を示す。図8の(a)、(b)を対比してみれば、鍍銅黒鉛粉を混合した焼結合金は相手攻撃性が小さくなることが分かる。図9から、本発明のAl−Bi−Mg−Cu−黒鉛系焼結合金は、Al−Pb系焼結合金に黒鉛粉を添加した合金(SUT METALB)と同等な比摩耗量となることが分かる。
【0029】
比較例1
組成がAl−27.2重量%Sn−1.7重量%Mgとなるように原料粉末を調製した以外は、実施例1と同一の条件でAl−Sn焼結合金を製作した。比摩耗量は図9に示すように、4.5×10-8mm3 /Nmmであった。
【0030】
比較例2
組成がAl−32.7重量%In−2.0重量%Mgとなるように原料粉末を調製した以外は、実施例1と同一の条件でAl−In焼結合金を製作した。比摩耗量は図9に示すように6.3×10-8mm3 /Nmmであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明のAl−Bi系焼結軸受合金は、Al−Pb系焼結合金に匹敵する性能が得られるので、環境問題の観点から問題となっているPbを使用しない新しい焼結軸受合金として産業界のニーズに応え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のAl−Bi系焼結軸受合金のBiの含有量と比摩耗量の関係を焼結温度ごとに示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のAl−Bi系焼結軸受合金の摩擦距離と比摩耗量の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のAl−Bi系焼結軸受合金の光学顕微鏡組織を示す図面代用写真である。
【図4】図4は、本発明のAl−Bi−(Cu−Gr)系焼結軸受合金の光学顕微鏡組織を示す図面代用写真である。
【図5】図5は、従来公知のAl−Sn焼結軸受合金のSnの含有量と比摩耗量の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、従来公知のAl−In焼結軸受合金のInの含有量と比摩耗量の関係を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1および実施例2で得られた焼結合金のX線回折パターン図である。
【図8】図8は、実施例1および実施例4の摩耗表面から検出したFeKα1X線強度を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明のAl−Bi系焼結軸受合金と従来公知の軸受合金との比摩耗量を比較して示すグラフである。
【図10】図10は、実施例3のAl−Bi系焼結軸受合金の光学顕微鏡組織を示す図面代用写真である。

Claims (4)

  1. ビスマスが9〜50容積%であり、残部の91〜50容積%がAl97重量%、Mg3重量%の組成からなることを特徴とするAl−Bi系焼結軸受合金。
  2. ビスマスが9〜50容積%であり、銅および黒鉛の合計量が15容積%以下であり、残部の91超〜35容積%がAl97重量%、Mg3重量%の組成からなることを特徴とするAl−Bi系焼結軸受合金。
  3. MgBiまたはBiMgの化合物が生成していることを特徴とする請求項または記載のAl−Bi系焼結軸受合金。
  4. 請求項1乃至記載の合金組成となるように原料粉末を所定の割合で混合し、圧粉成形し、常圧不活性雰囲気中で520℃〜640℃で焼結することを特徴とする請求項1乃至記載のAl−Bi系焼結軸受合金の製造方法。
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