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JP3827910B2 - パターン形成体 - Google Patents

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JP3827910B2
JP3827910B2 JP2000084714A JP2000084714A JP3827910B2 JP 3827910 B2 JP3827910 B2 JP 3827910B2 JP 2000084714 A JP2000084714 A JP 2000084714A JP 2000084714 A JP2000084714 A JP 2000084714A JP 3827910 B2 JP3827910 B2 JP 3827910B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーフィルタやマイクロレンズ等の各種の用途に使用可能なパターン形成体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基材上に図案、画像、文字、回路等の各種パターンを形成したパターン形成体としては、各種のものが製造されており、特に近年の傾向として、部品の小型化、高性能化に伴い、このようなパターン形成体に対して高精細なパターンの形成が要求されている。
【0003】
このような、高精細なパターン形成体としては、本発明者等による光触媒を利用したパターン形成体およびその製造方法が提案されている(特開平11−344804号公報)。これによれば、パターン露光により濡れ性の異なるパターンが形成されたパターン形成体を得ることが可能であるため、容易にかつ精度良くパターン形成体を得ることができる。このような濡れ性の異なるパターンを有するパターン形成体の濡れ性の差を利用して種々の機能性素子を製造することができるので、カラーフィルタやマイクロレンズ等の機能性素子を効率よくかつ高品質で得ることができるという効果を奏するものである。
【0004】
しかしながら、上述したパターン形成体は、エネルギーの照射によりエネルギーが照射された部分の濡れ性を光触媒の作用を利用することにより変化させて、濡れ性の異なるパターンを形成するものであるので、濡れ性の差を生じさせるのに所定の時間がかかる。この時間を短縮することができれば、さらなる効率化を図ることが可能である。
【0005】
また、精度の良い機能性素子を得るためには、パターン形成体上に大きな濡れ性の差を形成することが好ましいのであるが、効率上許される所定の時間内にこのような大きな濡れ性の差を形成するためには、パターン形成体表面における露光による臨界表面張力の変化の速度を向上させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エネルギーの照射による濡れ性の異なる部位からなるパターンを効率よく形成したパターン形成体を提供することを主目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1において、基板と、この基板上に設けられ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であり、かつ少なくとも光触媒、エネルギー照射された際の上記液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素、およびバインダを含有する光触媒含有層とを有し、上記光触媒含有層表面に濡れ性の異なる部位からなるパターンを有しているパターン形成体であって、上記光触媒含有層が、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むことを特徴とするパターン形成体を提供する。
【0008】
このように、請求項1に記載された発明においては、濡れ性が変化する層である光触媒含有層に、液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素を含有するものであるので、エネルギー照射した場合の光触媒含有層上での濡れ性の変化速度が速いことから、所定の濡れ性の差を有するパターンを形成する場合は、短時間の照射で形成することができ、パターン形成体の製造効率が向上し、コスト的に有利なパターン形成体を提供することができる。また、効率的に許容される範囲の照射時間で、濡れ性の差がより大きい濡れ性の異なるパターンを形成することができることから、このパターン形成体上に機能性部を付着させて得られる機能性素子を高精度に製造することができるという効果を奏するものである。
【0009】
さらに本発明においては、上記光触媒含有層が、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むものであってもよい。本発明においては、光触媒の作用による光触媒含有層の濡れ性の変化が、バインダーの材質に起因するものであってもよいが、このように光触媒の作用により分解される分解物質を光触媒含有層に含有させることによりその表面の濡れ性を変化させるようにしてもよい。
【0010】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、上記バインダが、YnSiX(4-n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル
基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるポリシロキサンであることが好ましい。
【0011】
また、上記請求項1または請求項2に記載されたパターン形成体においては、請求項3に記載するように、上記光触媒含有層は、エネルギーが照射されていない部分における表面張力40mN/mの液体との接触角を、エネルギーが照射された部分における表面張力40mN/mの液体との接触角より1度以上大きい接触角とする光触媒含有層であることが好ましい。光触媒含有層上にエネルギーが照射されることにより、表面張力40mN/mの液体との接触角が1度以上異なるように濡れ性が変化したパターンであれば、この濡れ性の異なるパターンに沿って機能性部を形成することが可能であるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発明においては、請求項4に記載するように、上記第2の成分としての金属元素が、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であることが好ましく、特に請求項5に記載するように、上記第2の成分としての金属元素が、Fe(鉄)であることが特に好ましい。
【0021】
また、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体においては、請求項6に記載されるように、上記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、および酸化鉄(Fe23)から選択される1種または2種以上の物質であることが好ましく、中でも請求項7に記載するように、上記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることが特に好ましい。これは、二酸化チタンのバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易だからである。
【0022】
上記請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項8に記載されるように、上記光触媒含有層中の、上記光触媒に対する第2の成分としての金属元素のモル比が、光触媒を1とした場合、0.00001〜0.5の範囲内であることが好ましい。上記範囲内より少ない場合は、濡れ性の変化速度、もしくは分解除去層の分解除去速度を向上させる効果が顕著に現れないため好ましくなく、上記範囲より多く加えても、上記濡れ性の変化速度もしくは分解除去層の分解除去速度の向上効果にあまり影響がなく、逆に添加する層に対して、例えば濡れ性の変化等の悪影響を与える恐れがあるため好ましくない。
【0023】
本発明は、さらに請求項9に記載するように、請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体上の濡れ性の異なるパターンに対応した部位上に機能性部が配置されたことを特徴とする機能性素子を提供し、特に請求項10に記載するように、請求項9記載の機能性素子の機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタである場合、また、請求項11に記載するように、請求項9記載の機能性素子の機能性部が、レンズであることを特徴とするマイクロレンズである場合が好ましい利用態様であるとすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のパターン形成体について詳しく説明する。本発明のパターン形成体は、光触媒含有層上に濡れ性の異なるパターンが形成されたパターン形成体(第1実施態様)、光触媒含有層上に濡れ性可変層が形成され、この濡れ性可変層上に濡れ性の異なるパターンが形成されたパターン形成体(第2実施態様)、および光触媒含有層上に分解除去層が形成され、この分解除去層が部分的に除去されてパターンが形成されるパターン形成体(第3実施態様)の3つの実施態様がある。以下、それぞれの実施態様に分けて説明する。
【0025】
A.第1実施態様
本発明のパターン形成体の第1実施態様は、基板と、この基板上に設けられ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であり、かつ少なくとも光触媒、エネルギー照射された際の上記液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素、およびバインダを含有する光触媒含有層とを有し、上記光触媒含有層表面に濡れ性の異なる部位からなるパターンを有していることを特徴とするものである。
【0026】
本実施態様においては、光触媒含有層にエネルギーが照射された場合に、光触媒含有層上の液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素を有していることから、光触媒含有層上の濡れ性の変化速度を大幅に向上させることができる。これは以下に示すような二つの利点を有する。
【0027】
まず、パターン形成体の濡れ性の異なるパターンに沿って機能性部を形成して機能性素子を形成する場合、この濡れ性の異なるパターンには、その機能性部の材料等に応じた濡れ性の差が必要とされる。そして、この濡れ性の差の形成は、エネルギーの照射により行われるものである。このように、所定の濡れ性の差を形成するためには、単に光触媒含有層上にエネルギーをパターン照射すればよいことから、本来このようなパターン形成体は効率的に製造されるものである。
【0028】
しかしながら、光触媒含有層を構成する材料や照射するエネルギーの種類によっては、比較的長時間エネルギーを照射する必要が生じる可能性があり、また効率上許容される範囲でのエネルギー照射時間であっても、このエネルギーの照射時間を短縮することができればさらに効率的となる。
【0029】
本実施態様は、上述したように、第2の成分としての金属元素を光触媒含有層中に有していることから、多少感度の悪い光触媒含有層やエネルギーであっても、短時間のエネルギー照射で所定の濡れ性の差を形成することが可能であり、また感度的に問題の無い材料で形成された光触媒含有層やエネルギーである場合は、さらに効率的にパターン形成体を製造することができるという利点を有するものである。
【0030】
また、第2の利点としては、パターン形成体の濡れ性の差を利用して高精細な機能性素子を形成する場合や機能性部を形成するための塗工液の粘度が高い場合等においては、上記パターンにおける濡れ性の差を大きくしなければならない場合がある。このような場合は、エネルギーが照射されていない部分における光触媒含有層の臨界表面張力が低い材料が用いられ、これにエネルギーを照射して臨界表面張力を大幅に引き上げ、結果として濡れ性の差を大きく取る必要が生じる。しかしながら、このような場合はエネルギーの照射時間が長くなったり、照射するエネルギーの種類が限定される等の問題が生じる可能性がある。
【0031】
本実施態様においては、第2の成分としての金属元素を光触媒含有層中に有していることから、濡れ性の差を大きく取る必要がある場合でも、効率上問題とならない程度の比較的短いエネルギー照射時間でよく、また照射するエネルギーが限定されないといった利点を有する。
【0032】
以下、このような本実施態様のパターン形成体の各構成について詳しく説明する。
【0033】
1.光触媒含有層
本実施態様における光触媒含有層は、基板上に設けられ、エネルギー照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層である。このように、露光(本発明においては、光が照射されたことのみならず、エネルギーが照射されたことをも意味するものとする。)により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層を設けることにより、エネルギーのパターン照射等を行うことにより容易に濡れ性を変化させ、液体との接触角の小さい親液性領域とすることができ、例えば塗工液を塗布して機能性部とする部分のみ容易に親液性領域とすることが可能となる。したがって、効率的に濡れ性の異なるパターン形成体が製造でき、コスト的に有利となる。なお、この場合のエネルギーとしては、通常紫外光を含む光が用いられる。
【0034】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、各種機能性部形成用塗工液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域領域であり、各種機能性部形成用塗工液等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0035】
本実施態様における光触媒含有層は、露光されていない部分における表面張力40mN/mの液体との接触角を、露光された部分における表面張力40mN/mの液体との接触角より1度以上大きい接触角とすることが可能な層であることが好ましい。
【0036】
具体的には、露光していない部分においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10度以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10度以上であることが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、各種機能性部形成用塗工液等が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0037】
また、上記光触媒含有層は、露光すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9度未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10度以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10度以下となるような層であることが好ましい。露光した部分の液体との接触角が高いと、この部分での各種機能性部形成用塗工液等の広がりが劣る可能性があり、精度良く機能性部を形成することができない可能性があるからである。
【0038】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0039】
本実施態様における光触媒含有層は、少なくとも光触媒、エネルギー照射された際の上記液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素、およびバインダとから構成されている。このような層とすることにより、エネルギーをパターン照射することによって光触媒の作用で光触媒含有層上の臨界表面張力を高くすることが可能となり、液体との接触角が異なるパターンを形成することができる。
【0040】
このような光触媒含有層における、後述するような酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。
【0041】
本実施態様における光触媒含有層では、光触媒により、バインダの一部である有機基や、後述する分解物質の酸化、分解等の作用を用いて、露光部の濡れ性を変化させて親液性とし、非露光部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、各種機能性部形成用塗工液等との受容性(親液性)および反撥性(撥液性)を高めることによって、品質の良好でかつコスト的にも有利なパターン形成体を得ることができる。
【0042】
以下、このような光触媒含有層の主成分である、光触媒、第2の成分としての金属元素、およびバインダについて説明する。
【0043】
(光触媒)
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、および酸化鉄(Fe23)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
本発明においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0045】
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0046】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の撥液性が低下し、また露光部の親液性の発現が不十分となるため好ましくない。
【0047】
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。
【0048】
(第2の成分としての金属元素)
本実施態様の特徴である第2の成分としての金属元素とは、上記光触媒として投入された金属元素とは異なる金属元素であることを意味するものであり、かつ光触媒の光触媒含有層上の濡れ性を変化させる速度を向上させる機能を有する金属元素を示すものである。
【0049】
本実施態様に用いられる金属元素の種類としては、特に限定されるものでなく、上述したように光触媒の光触媒含有層上の濡れ性を変化させる速度を向上させる機能を有するものであればよい。具体的には、元素周期表の8族を中心として、5A族、6A族、7A族、1B族、2B族、3B族に含まれる金属を挙げることができ、具体的には、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であることが好ましく、特にFe(鉄)であることが好ましい。
【0050】
このような金属元素の光触媒含有層中での状態は、金属微粒子等の金属として存在していても、また金属塩化物、金属酸化物等の金属化合物として存在していても、さらには金属イオンとして存在していてもよく、光触媒の作用による光触媒含有層上の濡れ性を変化させる速度を向上させる機能を有する状態であれば特に限定されるものではない。
【0051】
本実施態様においては、上記光触媒に対する第2の成分としての金属元素のモル比は、光触媒を1とした場合、0.00001〜0.5の範囲内、特に0.0001〜0.01の範囲内であることが好ましい。
【0052】
(バインダ)
本実施態様においては、光触媒含有層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う場合(第1の形態)と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させることにより変化させる場合(第2の形態)と、これらを組み合わせることにより行う場合(第3の形態)の三つ形態に分けることができる。上記第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、上記第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0053】
以下、まず第2の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダについて説明し、次に第1の形態および第3の形態に用いられるバインダ、すなわち光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を有するバインダについて説明する。
【0054】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有さないもしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0055】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤として後述するエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層中に含有させることが必須となる。
【0056】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0057】
上記の(1)の場合、一般式:
nSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0058】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;
トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
【0059】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0060】
CF3(CF23CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF29CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF24CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF26CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF28CH2CH2Si(OCH33
CF3(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF23(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF25(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF27(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF23CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF25CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF27CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF29CH2CH2SiCH3(OCH32
(CF32CF(CF24CH2CH2SiCH3(OCH32
(CF32CF(CF26CH2CH2Si CH3(OCH32
(CF32CF(CF28CH2CH2Si CH3(OCH32
CF3(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF23(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF25(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF27(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF23CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF25CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF27CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF29CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF27SO2N(C25)C24CH2Si(OCH33
【0061】
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層の非露光部の撥液性が大きく向上し、各種機能性部形成用塗工液の付着を妨げる機能を発現する。
【0062】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0063】
【化1】
Figure 0003827910
【0064】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0065】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0066】
(分解物質)
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0067】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0068】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0069】
(フッ素の含有)
また、本実施態様においては、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。
【0070】
このような特徴を有するパターン形成体においては、エネルギーをパターン照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0071】
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、濡れ性の差によるパターンの形成が容易に可能となり、利用価値の高いパターン形成体とすることができる。また、本発明においては、光触媒含有層に第2の成分としての金属元素を含有し、光触媒の作用による光触媒含有層表面の濡れ性の変化の速度を速めたところに特徴を有するものである。したがって、フッ素を比較的多く含むことにより、臨界表面張力が小さくなった場合でも、比較的短い時間の露光により、臨界表面張力を大きくすること、すなわち露光領域に必要とされる濡れ性を得ることが可能となり、製造効率上問題とならない。よって、本実施態様においてフッ素の添加は、効率上の問題無しにパターン精度を高めることができるという面で特に有効であるといえる。
【0072】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0073】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に機能性部を形成することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に機能性部を形成することが可能となり、精度良く機能性素子を得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0074】
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0075】
また、本実施態様においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
【0076】
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるパターン形成体の精度を向上させることができるからである。
【0077】
さらに、このようなパターン形成体においては、エネルギーをパターン照射して形成される親インク領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0078】
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、機能性部を形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、機能性部を精度良く形成することが可能となり、利用価値の高いパターン形成体を得ることができる。
【0079】
本実施態様において、このようなフッ素を光触媒含有層中に含有させる方法としては、高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法、比較的弱い結合エネルギーで結合されたフッ素化合物を光触媒含有層に混入させる方法等を挙げることができる。このような方法でフッ素を導入することにより、エネルギーが照射された場合に、まず結合エネルギーが比較的小さいフッ素結合部位が分解され、これによりフッ素を光触媒含有層中から除去することができるからである。
【0080】
上記第1の方法、すなわち、高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法としては、上記オルガノポリシロキサンにフルオロアルキル基を置換基として導入する方法等を挙げることができる。
【0081】
例えば、オルガノポリシロキサンを得る方法として、上記バインダの説明中(1)として記載したように、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサンを得ることができる。ここで、この方法においては、上述したように上記一般式:
nSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上を、加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この一般式において、置換基Yとしてフルオロアルキル基を有する珪素化合物を用いて合成することにより、フルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。このようなフルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、エネルギーが照射された際、光触媒含有層中の光触媒の作用により、フルオロアルキル基の炭素結合の部分が分解されることから、光触媒含有層表面にエネルギーを照射した部分のフッ素含有量を低減させることができる。
【0082】
この際用いられるフルオロアルキル基を有する珪素化合物としては、フルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、このフルオロアルキル基の炭素数が4から30、好ましくは6から20、特に好ましくは6から16である珪素化合物が好適に用いられる。このような珪素化合物の具体例は上述した通りであるが、中でも炭素数が6から8であるフルオロアルキル基を有する上記珪素化合物、すなわちフルオロアルキルシランが好ましい。
【0083】
本発明においては、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を上述したフルオロアルキル基を有さない珪素化合物と混合して用い、これらの共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよいし、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を1種または2種以上用い、これらの加水分解縮合物、共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよい。
【0084】
このようにして得られるフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンにおいては、このオルガノポリシロキサンを構成する珪素化合物の内、上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物が0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上含まれていることが好ましい。
【0085】
フルオロアルキル基がこの程度含まれることにより、光触媒含有層上の撥液性を高くすることができ、エネルギーを照射して親液性領域とした部分との濡れ性の差異を大きくすることができるからである。
【0086】
また、上記バインダの説明中(2)に示す方法では、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この場合も同様に、上述した一般式中のR1,R2のいずれかもしくは両方をフルオロアルキル基等のフッ素を含有する置換基とすることにより、光触媒含有層中にフッ素を含ませることが可能であり、またエネルギーが照射された場合に、シロキサン結合より結合エネルギーの小さいフルオロアルキル基の部分が分解されるため、エネルギー照射により光触媒含有層表面におけるフッ素の含有量を低下させることができる。
【0087】
一方、後者の例、すなわち、バインダの結合エネルギーより弱いエネルギーで結合したフッ素化合物を導入させる方法としては、例えば、低分子量のフッ素化合物を上記分解物質として導入させる方法があり、例えばフッ素系の界面活性剤を混入する方法等を挙げることができる。また、高分子量のフッ素化合物を導入させる方法としては、バインダ樹脂との相溶性の高いフッ素樹脂を混合する等の方法を挙げることができる。
【0088】
(光触媒含有層の製造方法)
上記光触媒含有層は、光触媒、第2の成分としての金属元素、およびバインダを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して光触媒含有層形成用塗工液を調製し、この塗工液を後述する基板上に塗布することにより光触媒含有層を形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0089】
上記、光触媒含有層形成用塗工液中の光触媒の含有量は、固形分の5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、金属元素の添加量は、金属元素のモル比が、上記光触媒を1とした場合、0.00001〜0.5の範囲内、特に0.0001〜0.01の範囲内であることが好ましい。
【0090】
上記第2の成分としての金属元素の添加は、例えば金属化合物として添加されても、また金属微粉末として添加されてもよく、最終的に光触媒含有層上の濡れ性の変化速度を向上させることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的に用いることができるものとしては、例えば塩化金(III)酸四水和物、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化ニッケル(II)、塩化白金酸(IV)六水和物、塩化ロジウム(III)、塩化ルテニウム(III)水和物、塩化銀(I)、塩化亜鉛、塩化コバルト(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅一水和物、乳酸銀等を溶解した溶液として用いる場合、上述した金属、すなわちバナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)等の微粉末を液体中に均一に分散させた分散液として用いる場合、およびこれらを混合して用いる場合等を挙げることができる。
【0091】
このようにして得られた光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0092】
2.基材
本実施態様のパターン形成体においては、強度との関係や最終的な機能性素子との関係から、基材上に上述した光触媒含有層が形成される。このような基材としては、得られるパターン形成体もしくはパターン形成体により形成された機能性素子の用途に応じて、ガラス、アルミニウム、およびその合金等の金属、プラスチック、織物、不織布等を挙げることができる。
【0093】
3.濡れ性の異なる部位からなるパターン
本実施態様のパターン形成体は、濡れ性の差で形成されたパターンを光触媒含有層上に有するものであり、これは上記光触媒含有層上にエネルギーがパターン照射されて形成されるものである。
【0094】
ここで濡れ性の差で形成されたパターンにおいては、露光されていない部分における表面張力40mN/mの液体との接触角が、露光された部分における表面張力40mN/mの液体との接触角より1度以上大きい接触角となっているパターンであることが好ましい。
【0095】
具体的には、パターンにおいて露光していない領域は、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10度以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10度以上であることが好ましい。これは、パターンにおいて露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、各種機能性部形成用塗工液等が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0096】
また、パターンにおいて露光した部分の領域は、表面張力40mN/mの液体との接触角が9度未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10度以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10度以下となるような層であることが好ましい。露光した部分の液体との接触角が高いと、この部分での各種機能性部形成用塗工液等の広がりが劣る可能性があり、精度良く機能性部を形成することができない可能性があるからである。
【0097】
以下、用いられるエネルギーとパターン照射の方法について説明する。
【0098】
(エネルギー)
上記パターン形成体を形成するためにエネルギーのパターン照射が行われるが、ここで用いられるエネルギーとしては、光触媒含有層に用いられている光触媒を励起することができるエネルギーであれば特に限定されるものではない。例えば、パターン照射の項で詳述するように光と熱エネルギーの組合せ等であってもよいが、通常光が好適に用いられる。
【0099】
本実施態様において用いられる光触媒は、そのバンドギャップによって触媒反応を生じさせる光の波長が異なる。例えば、硫化カドニウムであれば496nm、また酸化鉄であれば539nmの可視光であり、二酸化チタンであれば388nmの紫外光である。したがって、光であれば可視光であれ紫外光であれ本実施態様で用いることができる。しかしながら、上述したようにバンドギャップエネルギーが高いため光触媒として有効であり、かつ化学的にも安定で毒性もなく、入手も容易といった理由から光触媒としては二酸化チタンが好適に用いられる関係上、この二酸化チタンの触媒反応を生じさせる紫外光を含む光であることが好ましい。
【0100】
このような紫外光を含む光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を挙げることができる。この露光に用いる光の波長は400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から設定することができ、また、露光に際しての光の照射量は、露光された部位が光触媒の作用により親液性を発現するのに必要な照射量とすることができる。
【0101】
(パターン照射)
本実施態様においては、このようなエネルギーをパターン状に照射する必要がある。パターン状に照射する方法としては、特に限定されるものではないが、通常フォトマスクを用いる方法により行われる。
【0102】
このフォトマスクを用いる方法以外の方法としては、レーザ等を用いてエネルギーを描画照射するような方法でエネルギーのパターン照射を行っても良い。具体的には、エキシマ、YAG等のレーザーを用いてパターン状に描画照射する方法を挙げることができる。しかしながら、このような方法は、装置が高価、取り扱いが困難、さらには連続出力ができない等の問題を有する場合がある。
【0103】
したがって、本実施態様においては、光触媒含有層に対し、光触媒反応開始エネルギーを加え、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより親液性領域のパターンを形成するようにしてもよい。このようなエネルギーの照射方法を用いてパターンを形成することにより、パターン形成に際して、赤外線レーザ等の比較的安価で取り扱いが容易である反応速度増加エネルギーを用いることができ、これにより上述したような問題が生じないからである。
【0104】
このようなエネルギーを加えることにより濡れ性の変化した親液性領域のパターンが形成できるのは、以下の理由による。すなわち、まずパターンを形成する領域に対して光触媒反応開始エネルギーを加えることにより、光触媒含有層に対する光触媒の触媒反応を開始させる。そして、この光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域内に、反応速度増加エネルギーを加える。このように反応速度増加エネルギーを加えることにより、既に光触媒反応開始エネルギーが加えられ、光触媒の触媒作用により反応が開始されている光触媒含有層内の反応が、急激に促進される。そして所定の時間、反応速度増加エネルギーを加えることにより、特性変化層内の特性の変化を所望の範囲まで変化させ、反応速度増加エネルギーが加えられたパターンを濡れ性の変化した親液性領域のパターンとすることができるのである。
【0105】
a.光触媒反応開始エネルギーについて
このエネルギー照射方法に用いられる光触媒反応開始エネルギーとは、光触媒が光触媒含有層中の化合物に対して、その特性を変化させるための触媒反応を開始させるエネルギーをいう。
【0106】
ここで加える光触媒反応開始エネルギーの量は、光触媒含有層中の濡れ性の変化を急激に生じない程度の量である。加えられる光触媒反応開始エネルギーの量が少ない場合は、反応速度増加エネルギーを加えてパターンを形成する際の感度が低下するため好ましくなく、またこの量が多すぎると、光触媒反応開始エネルギーを加えた光触媒含有層の特性の変化の度合いが大きくなりすぎて、反応速度増加エネルギーを加えた領域との差異が不明確となってしまうため好ましくない。この加えるエネルギーの量に関しては、予めエネルギーを加える量と光触媒含有層中の濡れ性の変化量とを予備実験等を行うことにより決定される。
【0107】
この方法における光触媒反応開始エネルギーとしては、光触媒反応を開始させることができるエネルギーであれば特に限定されるものではないが、中でも光であることが好ましい。この光については、上記エネルギーの項で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本実施態様においては、この光触媒反応開始エネルギーが加えられる範囲は、光触媒含有層の一部分であってもよく、例えばこの光触媒反応開始エネルギーをパターン状に加え、さらに後述する反応速度増加エネルギーもパターン状に加えることにより、濡れ性が変化した親液性領域のパターンを形成することも可能であるが、工程の簡略化、単純化等の理由から、この光触媒反応開始エネルギーをパターンを形成する領域全面にわたって加えることが好ましく、このように全面にわたって光触媒反応開始エネルギーが加えられた領域に反応速度増加エネルギーをパターン状に加えることにより、光触媒含有層上に親液性領域のパターンを形成するようにすることが好ましい。
【0109】
b.反応速度増加エネルギーについて
次に、この方法に用いられる反応速度増加エネルギーについて説明する。この方法に用いられる反応速度増加エネルギーとは、上記光触媒反応開始エネルギーによって開始された光触媒含有層の濡れ性を変化させる反応の反応速度を増加させるためのエネルギーをいう。本実施態様においては、このような作用を有するエネルギーであればいかなるエネルギーであっても用いることができるが、中でも熱エネルギーを用いることが好ましい。
【0110】
このような熱エネルギーをパターン状に光触媒含有層に加える方法としては、光触媒含有層上に熱によるパターンが形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、赤外線レーザによる方法や感熱ヘッドによる方法等を挙げることができる。このような赤外線レーザとしては、例えば指向性が強く、照射距離が長いという利点を有する赤外線YAGレーザ(1064nm)や、比較的安価であるという利点を有するダイオードレーザ(LED;830nm、1064nm、1100nm)等の他、半導体レーザ、He−Neレーザ、炭酸ガスレーザ等を挙げることができる。
【0111】
この方法においては、上述した光触媒反応開始エネルギーを加えることにより、光触媒を活性化させて光触媒含有層内の触媒反応による濡れ性の変化を開始させ、この濡れ性の変化が生じた部分に反応速度増加エネルギーを加えてその部分の触媒反応を促進させることにより、反応速度増加エネルギーが加えられた領域と、加えられなかった領域との反応速度の差により、親液性領域のパターンを形成することができる。
【0112】
B.第2実施態様
次に、本発明のパターン形成体の第2実施態様について説明する。第2実施態様のパターン形成体は、基板と、この基板上に設けられた光触媒含有層と、この光触媒含有層上に設けられ、エネルギーが照射された際に光触媒含有層の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性可変層と有し、上記光触媒含有層が少なくとも光触媒、およびエネルギーが照射された際の上記濡れ性可変層の液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素を有し、さらに上記濡れ性可変層表面に濡れ性の異なる部位からなるパターンを有していることを特徴とするものである。
【0113】
このように、本発明においては、上記光触媒含有層に、濡れ性可変層における液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素を含有するものであるので、エネルギー照射した場合の濡れ性可変層における濡れ性の変化速度を向上させることができる。したがって、上記第1の実施態様と同様の利点を有する。また、濡れ性可変層上に機能性部が形成されることから、機能性部と光触媒含有層とが直接接触することがない。よって、光触媒含有層中の光触媒の作用により機能性部が劣化する等の可能性がなく、不具合の生じる可能性の少ない機能性素子を得ることができる。
【0114】
以下、このような本実施態様のパターン形成体の各構成について詳しく説明する。
【0115】
1.光触媒含有層
本実施態様における光触媒含有層は、少なくとも光触媒と、エネルギーが照射された際の上記濡れ性可変層の液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素とを含有するものであり、バインダの有無を問わない点で上記第1実施態様における光触媒含有層と異なるものである。
【0116】
本実施態様において、光触媒含有層がバインダを有する場合は、上記第1実施態様で説明した光触媒含有層と同様であり、第2の成分としての金属元素の含有方法等に関しても同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、第2実施態様においては、光触媒含有層上の濡れ性は特に変化する必要がないことから、バインダ自体に光触媒が作用することによる濡れ性の変化が生じない場合であっても、第1実施態様のように分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がない。
【0117】
一方、バインダを有さない場合としては、例えば酸化チタンの場合は、透明基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。上記第2の成分としての金属元素は、無定形チタニアの形成時に添加される。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。
【0118】
上記光触媒および第2の成分としての金属元素については、その種類および添加量等に関して、上記第1の実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、バインダを有する場合の光触媒含有層の製造方法は、上述した第1実施態様と同様であるので、これについての説明も省略する。
【0119】
2.濡れ性可変層
本実施態様においては、上記光触媒含有層上に濡れ性可変層が形成される。この濡れ性可変層は、光触媒含有層の作用により濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、上記第1実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成することが好ましい。なお、このように上記第1実施態様の光触媒含有層中のバインダと同様の材料で形成した場合の濡れ性可変層の材料および形成方法に関しては、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0120】
本実施態様において、この濡れ性可変層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0121】
本発明において上述した成分の濡れ性可変層を用いることにより、隣接する光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、露光部分の濡れ性を変化させて親液性とし、非露光部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、各種機能性部形成用塗工剤等との受容性(親液性)および反撥性(撥液性)を高めることによって、利用価値の高いパターン形成体とすることができる。
【0122】
本実施態様における濡れ性可変層は、露光されていない部分における表面張力40mN/mの液体との接触角を、露光された部分における表面張力40mN/mの液体との接触角より1度以上大きい接触角とすることが可能な層であることが好ましい。このように、少なくとも接触角の差が1度以上あれば、各種機能性部形成用塗工液を親液性領域に沿って塗布することが容易となるからである。
【0123】
具体的には、露光していない部分においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10度以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10度以上であることが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、各種機能性部形成用塗工液等が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0124】
また、上記濡れ性可変層は、露光すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が9度未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10度以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10度以下となるような層であることが好ましい。露光した部分の液体との接触角が高いと、この部分での各種機能性部形成用塗工液等の広がりが劣る可能性があり、精度良く機能性部を形成することができない可能性があるからである。
【0125】
なお、この濡れ性可変層には、上記第1実施態様における光触媒含有層の説明中「フッ素の含有」の項で記載したものと同様にして同様のフッ素を含有させることができる。
【0126】
3.基材および濡れ性の異なる部位からなるパターン
本実施態様の基材に関しては、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、濡れ性の異なる部位からなるパターンについては、パターンが形成されるのが第1実施態様では光触媒含有層上であるのに対し、本実施態様では濡れ性可変層上である点を除き、第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0127】
C.第3実施態様
最後に、本発明のパターン形成体の第3実施態様について説明する。第3実施態様のパターン形成体は、基板と、この基板上に設けられた光触媒含有層と、この光触媒含有層上に設けられ、エネルギーが照射された際に光触媒含有層の作用により分解除去される分解除去層を有し、上記光触媒含有層が少なくとも光触媒、およびエネルギー照射された際の上記分解除去層の分解除去速度を向上させる第2の成分としての金属元素を有し、さらに上記分解除去層が光触媒含有層上にパターン状に形成されていることを特徴とする。
【0128】
このように、光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去され得る分解除去層を光触媒含有層上に有することにより、露光された部分は光触媒の作用により分解され除去される。したがって、露光された部分は光触媒含有層が表面に残存することになり、露光されていない部分は分解除去層が表面に露出することになる。よって、例えば分解除去層を撥液性の材料で形成し、光触媒含有層を親液性の材料で形成し、エネルギーをパターン照射して光触媒を作用させることによりその部分の分解除去層が除去され、これにより濡れ性の異なるパターンを光触媒含有層上に形成することができる。
【0129】
そして、この場合本実施態様においては、上記光触媒含有層に、分解除去層の分解除去速度を向上させる第2の成分としての金属元素を含有するものである。したがって、エネルギー照射した場合の分解除去層の分解除去速度を向上させることができる。よって、短時間のエネルギー照射により、分解除去層が除去されたパターンを形成することが可能であり、パターン形成体の製造効率が向上し、コスト的に有利なパターン形成体を提供することができる。
【0130】
本実施態様においては、上記説明で例示したように、分解除去層が撥液性であり光触媒含有層が親液性である場合が好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、光触媒含有層が撥液性であり、分解除去層が親液性であってもよい。この場合は、撥液性となる部分を露光して、分解除去層を分解除去し、光触媒含有層を露出させる。これにより、露光した部分は撥液性となり、露光しなかった部分は分解除去層が残存して親液性となる。
【0131】
ここで、分解除去層と露出した光触媒含有層との表面張力40mN/mの液体に対する接触角の差異であるが、少なくとも1度以上異なることが好ましく、特に10度以上異なることが好ましい。この液体との接触角の差異が小さい場合は、この液体との接触角の差異を利用して行う機能性部の形成が困難となるためである。
【0132】
1.光触媒含有層
本実施態様における光触媒含有層は、上記第2実施態様と同様であるのでここでの説明は省略する。ただし、分解除去層が除去されて露出した表面が分解除去層の濡れ性とは異なる濡れ性を有する必要がある。この場合、上述したように、光触媒含有層が親液性を有することが好ましく、特に表面張力40mN/mの液体に対する接触角が19度未満であることが好ましく、さらに好ましくは10度以下であることである。
【0133】
本実施態様において露光された部分は、光触媒の作用により分解除去される。したがって、露光された部分は光触媒含有層が表面に露出することになる。この部分は親液性が要求される部分であることから、光触媒含有層上の表面張力40mN/mの液体に対する接触角が上記範囲を超える場合は、この部分での各種機能性部形成用塗工液等の広がりが劣る可能性があり、得られる機能性素子の品質上問題となる場合があるからである。
【0134】
なお、上記光触媒含有層が露光により液体との接触角が低下し、上記範囲内となるものであってもよい。これは、分解除去層が光を透過する場合は、分解除去層を露光するに際して分解除去層を透過して光触媒含有層も露光されるからである。
【0135】
2.分解除去層
本実施態様における分解除去層は、上記光触媒含有層上に形成されたものである。この分解除去層は、露光された際に光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去されるものであれば特に限定されるものではないが、表面張力40mN/mの液体に対する接触角が20度以上、特に好ましくは30度以上のものであることが好ましい。
【0136】
これは、本実施態様において露光されない部分は分解除去層が残存することになる。ここで、露光されない部分は、上述したように撥液性を示す方が好ましい部分である。よって、分解除去層上の表面張力40mN/mの液体に対する接触角が上記範囲より小さい場合は、撥液性が十分でなく、各種機能性部形成用塗工液等が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0137】
また、露光後残存する分解除去層は露光された部分、すなわち親液性領域の間に残存する。このような場合には、この分解除去層は親液性領域を区切る撥液性の凸部として用いることが可能となり、各種機能性部形成用塗工液を塗布する際に精度よく塗布することができる。
【0138】
このような分解除去層に用いられる材料としては、上述した分解除去層の特性、すなわち露光により隣接する光触媒含有層中の光触媒の作用により分解除去される材料で、かつ好ましくは表面張力40mN/mの液体に対する接触角が上述した範囲となる材料である。
【0139】
このような材料としては、例えば炭化水素系、フッ素系またはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができる。このようなものとして具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、もしくはパーフルオロアルキルアミンオキシド等を挙げることができる。
【0140】
このような材料は、炭化水素系の非イオン系界面活性剤であれば、NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ(商品名、日本サーファクタント工業社製)、フッ素系あるいはシリコン系の非イオン系界面活性剤であれば、ZONYL FSN、FSO(商品名、デュポン社製)、サーフロンS−141、145(商品名、旭硝子社製)、メガファックF−141、144(商品名、大日本インキ社製)、フタージェント F200、F251(商品名、ネオス社製)、ユニダインDS−401、402(商品名、ダイキン工業社製)、フロラードFC−170、176(商品名、スリーエム社製)として入手することができる。
【0141】
この分解除去層の材料としては他にもカチオン系、アニオン系、両性界面活性剤を用いることが可能であり、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等を挙げることができる。
【0142】
さらに、分解除去層の材料としては、界面活性剤以外にも種々ポリマーもしくはオリゴマーを用いることができる。このようなポリマーもしくはオリゴマーとしては、例えばポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等を挙げることができる。本発明においては、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の水との接触角の高い撥液性のポリマーを用いることが好ましい。
【0143】
このような分解除去層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を光触媒含有層上に塗布することにより形成することができる。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。
【0144】
本実施態様において、この分解除去層の厚みは光触媒による分解速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0145】
3.基材および分解除去層のパターン
基材に関しては、上記第1実施態様と同様であるので、ここでの説明は省略する。また分解除去層のパターンの形成に際して照射するエネルギーおよびエネルギーのパターン照射方法に関しては、上述した第1の実施態様と同様であるのでここでの説明は省略する。ただし、表面の濡れ性の変化に関しては、本実施態様は上述したように分解除去層の除去による濡れ性の差によるパターンの形成でありることから、上記第1の実施態様とは異なり、上記本実施態様における説明のようにして形成され、具体的な濡れ性の差は、上記分解除去層上の濡れ性と光触媒含有層上の濡れ性の差により形成される。
【0146】
D.機能性素子
上述したような3つの態様のパターン形成体上のパターンに対応した部位上に機能性部を配置することにより種々の機能性素子を得ることができる。
【0147】
ここで機能性とは、光学的(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、電気・電子的(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、化学的(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的(耐摩耗性等)、熱的(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体機能的(生体適合性、抗血栓性等)な各種の機能を意味するものである。
【0148】
このような機能性部のパターン形成体のパターンに対応した部位へ機能性部の配置は、濡れ性が変化したパターンが形成されていることから、機能性部形成用塗工液をパターン形成体上に塗布することにより、濡れ性の良好な親液性領域のみ機能性部形成用組塗工液が付着することになり、容易にパターン形成体のパターンに対応した部位に機能性部を配置することができる。この場合には、パターン形成体の未露光部は、臨界表面張力が50mN/m以下、好ましくは30mN/m以下であることが望ましい。
【0149】
本発明に用いられる機能性部形成用塗工液としては、上述したように機能性素子の機能、機能性素子の形成方法等によって大きく異なるものであるが、例えば、紫外線硬化型モノマー等に代表される溶剤で希釈されていない組成物や、溶剤で希釈した液体状の組成物等を用いることができる。また、機能性部形成用塗工液としては粘度が低いほど短時間にパターンが形成できることから特に好ましい。ただし、溶剤で希釈した液体状組成物の場合には、パターン形成時に溶剤の揮発による粘度の上昇、表面張力の変化が起こるため、溶剤が低揮発性であることが望ましい。
【0150】
本発明に用いられる機能性部形成用塗工液としては、パターン形成体に付着等させて配置されることにより機能性部となるものであってもよく、またパターン形成体上に配置された後、薬剤により処理され、もしくは紫外線、熱等により処理された後に機能性部となるものであってもよい。この場合、機能性部形成用塗工液の結着剤として、紫外線、熱、電子線等で効果する成分を含有している場合には、硬化処理を行うことにより素早く機能性部が形成できることから好ましい。
【0151】
このような機能性素子の形成方法を具体的に説明すると、機能性部形成用塗工液は、ディップコート、ロールコート、ブレードコート、スピンコート等の塗布手段、インクジェット等を含むノズル吐出手段等の手段を用いてパターン形成体上に形成された親液性領域のパターン上に機能性部を形成する。
【0152】
このようにして得られる機能性素子として具体的には、カラーフィルタ、マイクロレンズ等を挙げることができる。
【0153】
上記カラーフィルタは、液晶表示装置等に用いられるものであり、赤、緑、青等の複数の画素部がガラス基板等上に高精細なパターンで形成されたものである。本発明のパターン形成体をこのカラーフィルタの製造に用いることにより、低コストで高精細なカラーフィルタとすることができる。すなわち、濡れ性が変化したパターン上の親液性領域に、例えばインクジェット装置等によりインク(機能性部形成用塗工液)を付着・硬化させることにより、容易に画素部(機能性部)を形成することができ、これにより少ない工程数で高精細なカラーフィルタを得ることができる。
【0154】
また、機能性素子がマイクロレンズである場合は、濡れ性が変化したパターンの親液性上にレンズ形成用組成物(機能性部形成用塗工液)を滴下すると、このレンズ形成用組成物は親液性領域のみに広がり、さらに滴下することにより液滴の接触角を大きくすることができる。このレンズ形成用組成物を硬化させることにより種々の形状あるいは焦点距離のものを得ることが可能となり、高精細なマイクロレンズを得ることができる。
【0155】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0156】
【実施例】
(実施例1)
イソプロピルアルコール3g、フルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ社製、商品名:MF-160E、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-Nエチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液)0.001g、酸化チタンゾル(石原産業社製、商品名:STK-01)を2g、塩化第二鉄0.001gを混合し100℃で20分間攪拌した。なお、この場合の酸化チタンを1とした場合の鉄としてのモル比は約0.005となる。
【0157】
この溶液を厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、20分間、150℃で加熱後、厚さ0.15μmの光触媒含有層を形成した。
【0158】
この光触媒含有層の40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、70度であった。
【0159】
この光触媒含有層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角が0度になるまでに30秒間要した。
【0160】
(比較例1)
上記実施例1の塩化第二鉄を加えずに同様に光触媒含有層を作製した。この光触媒含有層の40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、70度であった。
【0161】
この光触媒含有層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、40mN/mの濡れ指数標準液が0度になるまでに120秒間要した。
【0162】
(実施例2)
イソプロピルアルコール3g、酸化チタンゾル(石原産業社製、商品名:STK-01)を2g、塩化第二鉄0.001gを混合し100℃で20分間攪拌した。なお、この場合の酸化チタンを1とした場合の鉄としてのモル比は約0.005となる。
【0163】
この溶液を厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、20分間、150℃で加熱後、厚さ0.15μmの光触媒含有層を得た。
【0164】
次に、フルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ社製、商品名:MF-160E、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-Nエチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液)0.001g、シリカゾルであるグラスカHPC7002(商品名、日本合成ゴム社製)0.6g、アルキルアルコキシシランであるHPC402H(商品名、日本合成ゴム社製)0.2gを混合し100℃で20分間攪拌した。この溶液を前記光触媒含有層上に同様にコートし20分間、150℃で加熱後、厚さ0.05μmの濡れ性変化層を得た。
【0165】
この濡れ性変化層の40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、65度であった。
【0166】
この濡れ性変化層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角が0度になるまでに60秒間要した。
【0167】
(比較例2)
実施例2の塩化第二鉄を加えずに同様に光触媒含有層を作製した。次いで実施例2同様に濡れ性変化層を形成した。40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、65度であった。
【0168】
この濡れ性変化層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角が0度になるまでに180秒間要した。
【0169】
(実施例3)
イソプロピルアルコール3g、酸化チタンゾル(石原産業社製、商品名:STK-01)を2g、塩化第二鉄0.001gを混合し100℃で20分間攪拌した。なお、この場合の酸化チタンを1とした場合の鉄としてのモル比は約0.005となる。
【0170】
この溶液を厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板上にスピンコーティング法によりコートし、20分間150℃で加熱後、厚さ0.15μmの光触媒含有層を得た。
【0171】
次にデュポン社製ZONYLFSN100のIPA10%溶液を調整し前記光触媒含有層上にスピンコーティング法によりコートし、20分間150℃で加熱後、厚さ0.1μmの分解除去層を形成した。
【0172】
この分解除去層の40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、55度であった。
【0173】
この分解除去層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、分解除去層が分解除去され、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角が0度である光触媒含有層が表れるまでに40秒間要した。
【0174】
(比較例3)
実施例3の塩化第二鉄を加えずに同様に光触媒含有膜を作製した。次いで実施例3同様に分解除去層を形成した。40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学製CA-Z型)により測定した結果、55度であった。
【0175】
この分解除去層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、分解除去層が分解除去され、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角が0度である光触媒含有層が表れるまでに165秒要した。
【0176】
【発明の効果】
本発明は、光触媒含有層に液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素を含有するものであるので、エネルギー照射した場合の光触媒含有層等の濡れ性の変化する層上での濡れ性の変化速度が速いことから、所定の濡れ性の差を有するパターンを形成する場合は、短時間の照射で形成することができ、パターン形成体の製造効率が向上し、コスト的に有利なパターン形成体を提供することができる。また、効率的に許容される範囲の照射時間で、濡れ性の差がより大きい濡れ性の異なるパターンを形成することができることから、このパターン形成体上に機能性部を付着させて得られる機能性素子を高精度に製造することができるという効果を奏するものである。

Claims (11)

  1. 基板と、この基板上に設けられ、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であり、かつ少なくとも光触媒、エネルギー照射された際の前記液体との接触角の低下速度を向上させる第2の成分としての金属元素、およびバインダを含有する光触媒含有層とを有し、前記光触媒含有層表面に濡れ性の異なる部位からなるパターンを有しているパターン形成体であって、
    前記光触媒含有層が、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むことを特徴とするパターン形成体。
  2. 前記バインダが、YnSiX(4-n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成体。
  3. 前記光触媒含有層は、エネルギーが照射されていない部分における表面張力40mN/mの液体との接触角を、エネルギーが照射された部分における表面張力40mN/mの液体との接触角より1度以上大きい接触角とする光触媒含有層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン形成体。
  4. 前記第2の成分としての金属元素が、バナジウム(V)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、および金(Au)からなる群から選択される少なくとも一種の金属元素であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
  5. 前記第2の成分としての金属元素が、Fe(鉄)であることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成体。
  6. 前記光触媒が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、および酸化鉄(Fe23)から選択される1種または2種以上の物質であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
  7. 前記光触媒が酸化チタン(TiO2)であることを特徴とする請求項8記載のパターン形成体。
  8. 前記光触媒含有層中の、前記光触媒に対する第2の成分としての金属元素のモル比が、光触媒を1とした場合、0.00001〜0.5の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体上の濡れ性の異なるパターンに対応した部位上に機能性部が配置されたことを特徴とする機能性素子。
  10. 請求項9記載の機能性素子の機能性部が、画素部であることを特徴とするカラーフィルタ。
  11. 請求項9記載の機能性素子の機能性部が、レンズであることを特徴とするマイクロレンズ。
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