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JP3817698B2 - 高炉水砕スラグの固結防止剤 - Google Patents

高炉水砕スラグの固結防止剤 Download PDF

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Description

本発明は、高炉水砕スラグの固結防止剤に関するものである。
高炉水砕スラグは、製銑工程において副産する高炉スラグに加圧水を噴射して急冷、粒状化し、更に場合によっては再粉砕して粒度を調整したものであり、近年、天然砂の代替として、土木工事用材料やコンクリート用細骨材として利用されている。
かかる高炉水砕スラグは、出荷待ち又は使用待ちのため、屋外に長期間貯蔵されるのが一般的であるが、そのまま貯蔵したのでは、固結してしまい天然砂代替品としての用途に供することができなくなる。かかるスラグの固結は、スラグ中に固溶されていたCaO、Al、MgOなどが溶出し、pHが上昇することで、スラグのSiOやAlの鎖状結合が切断され、カルシウムシリケート水和物(C−S−Hゲル)及びカルシウムアルミネート水和物(C−A−Hゲル)を生成して硬化することによるものである。
従来、このような高炉水砕スラグの貯蔵中における固結を防止するため、種々の固結防止剤が提案されている。
例えば、下記特許文献1には、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸塩又は脂肪族オキシカルボン酸塩アルキレンオキサイド付加物を重要成分とするものが開示されており、また、下記特許文献2には、脂肪族オキシカルボン酸及び/又はその塩のアルキレンオキサイド付加物を含有してなるものが開示されている。また、下記特許文献3には、糖類やその還元誘導体である糖アルコールを主成分として含有するものが開示され、また下記特許文献4には、ソルビトールを主成分とするものが開示されている。更に、下記特許文献5には、水溶性のモノエチレン性不飽和単量体(例えば、アクリル酸ナトリウム)を必須構成成分となる重合体または共重合体を含有する高炉水砕スラグ製造用の薬剤が開示されており、該薬剤の使用により貯蔵時における固結防止効果が発揮されることが記載されている。また、下記特許文献6には、アクリル酸系重合体からなる固結防止剤が開示されている。
特開昭54−130496号公報 特開2001−58855号公報 特開昭58−104050号公報 特開昭59−116156号公報 特開昭54−96493号公報 特開2003−160364号公報
上記従来の固結防止剤では、ある程度の固結防止効果は得られるものの十分であるとは言えず、特に長期保存における固結防止効果という点では満足の行くものではなかった。
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、長期間にわたって優れた固結防止効果を発揮することができる高炉水砕スラグの固結防止剤を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、高炉水砕スラグの固結防止剤としてカルボキシル基含有ポリマーとソルビトールとを併用することが有効であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、カルボキシル基含有ポリマーとソルビトールを含有してなる高炉水砕スラグの固結防止剤を提供するものである。ここで、前記カルボキシル基含有ポリマーの配合量をA、ソルビトールの配合量をBとして、A/B=5/95〜95/5の質量比で配合される。
前記カルボキシル基含有ポリマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合体であって、その質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましい
本発明によれば、長期間にわたって優れた固結防止効果が得られ、そのため、天然砂代替として供する高炉水砕スラグを長期間安心して保存することができるようになり、また、薬剤使用量や使用回数の減少を図ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の固結防止剤に用いられる上記カルボキシル基含有ポリマーとは、カルボキシル基を持つモノマー(単量体)単位を有する重合体であって、カルボキシル基は酸の状態でも塩の状態でもよい。
具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メタコン酸などの重合体を挙げることができ、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸の各単独重合体(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸及びこれらの塩)、及び、これらのモノマーを適宜に組み合わせてなる共重合体が挙げられる。また、これらのポリマーを2種以上併用することもできる。カルボキシル基が塩状態である場合の塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
該カルボキシル基含有ポリマーの質量平均分子量は、1,000〜500,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜60,000である。質量平均分子量が1,000未満であると、固結防止効果の持続性に劣り(長期的な効果が劣る)、また、500,000を越えると、液状での供給が不可能となり、別途溶解槽が必要になるなどコストアップにつながり現実的でない。
なお、上記特許文献1には、尿素の固結防止剤であるポリアクリル酸ソーダが水砕スラグの固結防止剤としては効果がないと記載されているが(公報2頁左上欄及び3頁の比較例1)、本発明では、後記の実施例に示されるように、ソルビトールと併用することにより、水砕スラグに対して優れた固結防止効果を見い出したものである。
本発明の固結防止剤において上記カルボキシル基含有ポリマーとともに用いられるソルビトールは炭素数6の糖アルコールである。
本発明の固結防止剤において、上記のカルボキシル基含有ポリマーとソルビトールとの配合比は、カルボキシル基含有ポリマーの配合量をA、ソルビトールの配合量をBとして、質量比で、A/B=5/95〜95/5であることが好ましい。カルボキシル基含有ポリマーの配合比が上記範囲よりも少ないと、特に初期の固結防止効果が劣り、逆にカルボキシル基含有ポリマーの配合比が上記範囲よりも多いと、長期的な効果の持続性が弱くなる。
本発明の固結防止剤は、一般的には、上記成分を水に溶かして水溶液の形態に調製される。該水溶液の濃度は特に限定されないが、通常は固形分濃度で10〜60質量%に調製される。そして、使用に際しては、この水溶液を更に適当に希釈して高炉水砕スラグに付与することが好ましい。なお、本固結防止剤には、上記各成分の他、防腐剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で配合することもできる。
本発明の固結防止剤を用いて高炉水砕スラグに処理する方法については特に限定されない。例えば、固結防止剤の水溶液を高炉水砕スラグにスプレーする方法、固結防止剤の水溶液を高炉水砕スラグとともに練り混ぜる方法、固結防止剤の水溶液に高炉水砕スラグを浸漬する方法などが挙げられる。
本発明の固結防止剤は、また、高炉水砕スラグを製造する際の破砕時に用いる加圧水に添加して固結防止効果を発揮させることもできる。すなわち、高炉水砕スラグは、溶融スラグを加圧水で一次破砕して撹拌槽又はピットの水槽中に落とし、このときに二次破砕と冷却凝固を行わせて水砕化することで製造されている。このときの加圧水は普通循環して使用されているが、この循環水に本発明の固結防止剤を添加してスラグに固結防止剤を付与し、これにより、その後の貯蔵時におけるスラグの固結を防止するようにしてもよい。
固結防止剤の高炉水砕スラグに対する使用量としては、高炉水砕スラグの乾燥質量に対して、固形分で0.001〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。このような使用量とすることにより、長期間にわたり安定した固結防止効果を発揮させることができるとともに、処理した高炉水砕スラグをコンクリート用骨材として使用した場合に、得られるコンクリート硬化体の強度に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
本発明によれば、上記カルボキシル基含有ポリマーとソルビトールとを併用することにより、高炉水砕スラグに対して長期間にわたって優れた固結防止効果を発揮することができるが、その理由は、スラグから溶出するCaOやMgOなどに作用し、不溶性の塩とすることで、スラグのpHが上昇するのを抑制することができ、その結果、スラグの硬化速度を鈍化させることができるためであると考えられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
下記表1に示す組成に従って実施例及び比較例の各固結防止剤の水溶液(固形分濃度=20質量%)を調製した。ここで、実施例1〜9は上記カルボキシル基含有ポリマーとソルビトールとを併用した例であり、比較例1は固結防止剤未使用の例、比較例2はグルコン酸ナトリウムの単独使用の例、比較例3はソルビトールの単独使用の例、比較例4は上記カルボキシル基含有ポリマー単独使用の例である。
表1中のポリマー1〜6およびソルビトールは以下の通りである。
ポリマー1:質量平均分子量5,000のポリアクリル酸Na(日本触媒社製「アクアリックDL365」)
ポリマー2:質量平均分子量10,000のポリアクリル酸Na(第一工業製薬社製「シャロールAN103P」)
ポリマー3:質量平均分子量5,000のアクリル酸とマレイン酸の共重合体Na塩(日本触媒社製「アクアリックTL−37」)
ポリマー4:質量平均分子量60,000のアクリル酸とマレイン酸の共重合体Na塩(日本触媒社製「アクアリックTL−300」)
ソルビトール:東和化成工業社製「ソルビットL−70」。
ポリマー5:質量平均分子量2,000のポリアクリル酸Na(東亞合成社製「アロンA200U」)
ポリマー6:質量平均分子量500,000のポリアクリル酸Na(第一工業製薬社製「シャロールAN304P」)
含水率5質量%、比表面積0.040m/kgに調整した高炉水砕スラグ(粗粒率=2.59)を混合釜に投入し、固結防止剤の添加率が乾燥スラグ質量に対して0.02質量%になるように、各固結防止剤の水溶液を噴霧しながら、ハンドシャベルで撹拌した後、モルタルミキサーで低速5分間混合した。なお、スラグの粗粒率は、JIS A1102「骨材のふるい分け試験方法」に準拠して、粗粒率=(各ふるいにとどまる試料の質量百分率の和)/100により算出した。
処理したスラグ100gを、80mL容のアルミニウム製の袋に入れ、密封して60℃で保存した。保存開始から5日後、10日後、20日後、30日後の各試料について、カンタクロム社製「AUTOSORBシリーズ1」を用いて比表面積を測定した。結果を表1に示す。なお、スラグは、その硬化が進むにつれて、スラグ表面からカルシウムシリケートまたはアルミニウムシリケートなどの結晶が成長していき、これによりスラグの比表面積が増大するので、比表面積の上昇が小さいほど固結防止効果に優れることを意味する。
Figure 0003817698
表1に示すように、カルボキシル基含有ポリマーとソルビトールとを併用した実施例1〜9では、比較例の固結防止剤に比べて、長期保存後におけるスラグ比表面積の上昇を抑えることができ、そのため、長期保存における固結防止効果に優れていた。

Claims (2)

  1. カルボキシル基含有ポリマーとソルビトールを含有してなり、前記カルボキシル基含有ポリマーの配合量をA、ソルビトールの配合量をBとして、A/B=5/95〜95/5の質量比で配合された高炉水砕スラグの固結防止剤。
  2. 前記カルボキシル基含有ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーの重合体であって、その質量平均分子量が1,000〜500,000であることを特徴とする請求項1記載の高炉水砕スラグの固結防止剤。
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