JP3815519B2 - インテークエアダクト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの構成体の一部であるエンジン室内に外気を取り込むインテークエアダクトに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開昭58−219019号公報にみられるように、軽量化の要請等により樹脂で形成されたインテークエアダクトが提案され、使用されている。樹脂製のインテークエアダクトは軽量であり、かつ金属製のものに比べ断熱性が高く、高温となるエンジン室からの熱を遮断し、冷涼な外気を導入するのに優れている。
【0003】
しかし、従来の樹脂製インテークエアダクトに対してもより一層の断熱性、遮音性、吸音性が要求されている。また、樹脂部品のリサイクルも社会的な要請となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より一層の高断熱性及び遮音性に優れたインテークエアダクトさらにはこれら特性に加えリサイクル性に優れたインテークエアダクトを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者はより優れた断熱性、遮音性を満足するために発泡層を持つ樹脂製インテークエアダクトに思い至った。そして樹脂成形体中に発泡層を存在させるため空圧成形の採用を思いつくに至った。また樹脂成形体を表側層、該発泡層、裏側層からなる3層積層構造とし、溶着面となる裏側層を表層側よりも低い低剛性樹脂を用いることにより優れた耐熱性及び溶着性を得るに至った。さらにリサイクル性を考慮し、オレフィン系樹脂で成形することに思い至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明のインテークエアダクトは、筒状体を複数に分割した形状の一組の被接合体を溶接して一体化したインテークエアダクトであって、該一組の被接合体は、合成樹脂シート基材を空圧成形することにより成形されており、該合成樹脂シート基材は、オレフィン系樹脂を主成分とする高剛性である表側層と、オレフィン系樹脂を主成分とする発泡体で構成されている発泡中間層と、オレフィン系樹脂を主成分とする該表側層よりも低い剛性である裏側層と、から構成されており、接合される周縁部はフランジ状となり、互いに対向する一組の該フランジ状周縁部の前記裏側層で溶着して一体化されたものであることを特徴とする。
【0006】
本発明のインテークエアダクトは、発泡層を備えているため断熱性及び吸音性が高い。また、表側層あるいは裏側層となる基材層は中実層であるため遮音性を備える。そしてこのインテークエアダクトは空圧成形で成形したものであるため発泡層に大きな押圧力が作用せず、発泡層が維持されて成形できる。また、裏側層には表側層より低い剛性のオレフィン系樹脂を用いることにより、耐熱性及び溶着性が向上する。
本発明のインテークエアダクトを発泡層を含めオレフィン系樹脂で成形することにより容易にリサイクルが可能となる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のインテークエアダクトは筒状体を複数に分割した形状の一組の被接合体を溶接して一体化したインテークエアダクトである。このインテークエアダクトとしてはエンジンの吸気系に外気を取り入れるエアフクリーナ用のダクト、車室内に外気を取り入れるダクト等、従来の外気を取り入れるダクトとして使用できる。
【0008】
このインテークエアダクトは発泡層を有する合成樹脂シート基材を空圧成形により成形した一組の被接合体からなる。この一組の被接合体は目的とするダクトを複数に分割した形状のものである。圧空成形とは、真空成形とか空圧成形として知られている成形方法で、加熱されて軟化した樹脂シート基材の両側に作用する空気圧の差、すなわち、空圧により型面に樹脂シート基材を押しつけ、あるいは減圧により型面に基材を引きつけることにより型面に沿った形状に成形する方法である。
【0009】
本発明のインテークエアダクトはオレフィン系樹脂で形成するのが好ましい。オレフィン系樹脂は、結晶性で剛性及び耐熱性の高いポリプロピレン樹脂、結晶性の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エラストマーとして知られているエチレンープロピレン樹脂、これら結晶性オレフィンと各種ゴムとの混合物であるTPO(サーモプラスチックオレフィン)等が知られ、高い剛性を持つものから低い剛性を持つものまで任意に選択できる。
【0010】
オレフィン系樹脂は容易にオレフィン系樹脂同士でブレンド可能で、所定の特性を付与するために広い範囲でブレンドされている。このためオレフィン系樹脂で作られたインテークエアダクトを構成する中実層及び発泡層にそれぞれ異なったオレフィン系樹脂を用い、リサイクル時に2者が混合されても、オレフィン系樹脂として利用できる。このためリサイクルが極めて容易である。
【0011】
なお、本発明のインテークエアダクトは、表側層及び裏側層を中実層とし中間に発泡層を持つ3層積層構造を持つ成形体とするのが好ましい。この3層積層構造の成形体は中間に発泡層を持つ3層積層構造のシート基材を圧空成形することにより得られる。
インテークエアダクトはその表側層を凹型面に押圧あるいは裏側層を凸型面に押圧して型成形される。表側層の表面にしぼ加工等の装飾を施すことも型面に装飾を形成することにより可能となる。この表側層を形成する樹脂としてはその表側層に必要な特性を持つ樹脂を選択する必用がある。剛性とか硬さを必用とする場合にはポリプロピレンあるいはポリプロピレンを多量に含む樹脂を選択するのが好ましい。
【0012】
中間層を構成する発泡層は架橋したオレフィン樹脂発泡体としている。架橋により耐熱性が向上し、空圧成形性が向上する。裏側層を形成する樹脂もその期待される特性により選択される。例えば、裏側面が溶着される場合には溶着性の優れたエラストマーを含む、表側層の樹脂に対してより低い剛性を持つオレフィン樹脂とするのが好ましい。インテークエアダクトが軽量でしかも高い曲げ剛性を求められる場合には、表側層及び裏側層の少なくとも一方、好ましくは両層を比較的薄いものとするのが好ましい。具体的には成形体の状態で表側層及び裏側層は0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0013】
自動車のエンジンルーム内で使用されるインテークエアダクトは、剛性及び耐熱性の高いポリプロピレンを表側層の樹脂に使用するのが好ましい。エアダクト等をその軸線に沿って二分した形状の一組の被接合成形体とし、各接合体の裏側面で溶着して一体化するには裏側層を形成する樹脂として溶着の容易な低剛性のオレフィン樹脂を用いる。具体的には、表側層を形成する樹脂は引張弾性率が1,000〜3,000MPaであり、裏側層を形成する樹脂は引張強度が3〜20MPaとするのが好ましい。表側層が1,000MPa以下では製品の剛性が不足するようになり、3,000MPa以上では真空成形に賦形性が悪く加工性に劣る。また、裏側層の強度が3MPa以下では真空成形の延伸時に破断しやすく、20MPa以上では賦形性が悪く加工性に劣る。
【0014】
また、一組の被接合成形体を溶着させるため、溶着部分はフランジ状とし、この部分を接合部分とするのが好ましい。一組の接合成形体に被固定部が必用なときには、その被固定部を溶着部分に設けるようにするのが好ましい。溶着部分は一対の被接合成形体の各成形体が積層して接合されているため、厚さも2倍となりその部分の強度もそれだけ高く、被固定部に作用する大きな力に耐えることが可能となる。
【0015】
【作用】
本発明のインテークエアダクトは、発泡層を持つ積層構造を持つ。発泡層が優れた断熱性をもたらす。また、発泡層は吸音特性に優れ、表側層、裏側層等の中実層が遮音性を担保する。このため本発明のインテークエアダクトは断熱性、防音特性に優れている。また、表側層よりも低い低剛性樹脂製の裏側層を用いることで、接合面における溶着性が向上する。このインテークエアダクトをオレフィン系樹脂で作ることによりリサイクル性に優れたものとなる。
【0016】
さらに、中間層として発泡層を持つためより一層軽量となる。
【0017】
【実施例】
本発明のインテークエアダクトの平面図を図1に、側面図を図2に、図1のA−A線で切断した断面拡大図を図3に示す。
このインテークエアダクトは図3の断面図から明らかなように、3層積層樹脂シート基材を用いて真空成形で成形したものである。この3層積層シート基材は表側層101と発泡層102及び裏側層103とからなる。表側層101は厚さ1.0mmのポリプロピレン樹脂(以下、PPと称する、引張弾性率:1760MPa)で構成され、発泡層102は厚3.0mmのPPを主成分とした樹脂(見かけ比重0.066、引張強度1.4MPa、発泡倍率15倍)で構成され、裏側層103は厚さ0.35mmのゴム変成PP(引張強度0.8MPa、硬さ:JIS A硬度86(JIS K6301の70〜95の範囲にある))で構成されている。なお、発泡層102として用いた発泡樹脂は架橋した架橋発泡樹脂である。
【0018】
この3層積層樹脂は、あらかじめ所定厚さにスライスもしくはTダイにて形成した発泡層102の上面及び下面にカレンダー成形した溶融状態の表側層101および裏側層103を重ね合わせて一体的に接合して製造した。
次にこの3層積層樹脂シート基材の両面より熱板ヒータまたは加熱炉でその表面温度が150〜180℃になるまで加熱し、通常の真空成形で成形型面に真空圧で引き付け、その状態で冷却硬化して成形した。その後周縁部分をトリミングして所定形状の被接合体とした。
【0019】
本実施例ではインテークエアダクトの軸線に沿って二分した第1被接合体2と第2被接合体3との2種類の被接合体を作った。第1被接合体2及び第2被接合体はいずれもそれらの側部周縁部分がフランジ状に突出した溶着部分21、31を持つ。これらの溶着部分21、31はそれぞれ対向して当接するようになっている。
【0020】
この溶着部分21、31の一部がさらに外側に突出した幅広のフランジ状とされた部分に被固定部22、32が形成され、それらの中央部に固定用の貫通孔23、33が形成されている。これらの被固定部22、32もそれぞれ対向して当接するように形成されている。
次にこれら第1被接合体2及び第2被接合体3をそれぞれ180〜200℃に加熱された熱板状に置き、溶着部分21、31のそれぞれの当接面を熱板に30秒間押し付けて、加熱した。そして直ちに溶着部分21、31どうしを当接し、2.0kg/cm2の加圧力で20秒間押し付けて両者を融着させ、その状態で冷却固化して溶着を完了した。なお、被固定部22、32溶着部分21、31と同様に溶着して一体化した。これにより本実施例のインテークエアダクトを製作した。
【0021】
次にこのインテークエアダクトの遮音性及び吸音性を調べた。このインテークエアダクトは金属板で作られたものより吸音性に優れ遮音性に欠けるものであった。また、本実施例のインテークエアダクトは射出成形で作られた一層構造のポリプロピレン製のものより吸音性で優れ、ポリプロピレン発泡シート基材を真空成形したものより遮音性で優れていた。
【0022】
さらに本実施例のインテークエアダクトを110℃、3時間の加熱室に入れ、その形状保持性を調べた。本実施例のインテークエアダクトはこの加熱試験に耐え変形等の問題は発生しなかった。さらに室温でこのインテークエアダクトを開口部より引張速度100mm/minで第1被接合体2と第2被接合体3とを引き離す引き裂き試験を行った。これによりこのインテークエアダクトは発泡層の部分で破断したが溶着部分21、31での剥離は生ぜず、溶着が確実になされていることが明らかになった。
【0023】
なお、参考までに本実施例で使用したのと同じ3層積層樹脂シート基材を用い、裏側層103を型面に押し付ける方法で実施例と同じインテークエアダクトを製作した。これにより表側層が曲げ弾性率の低い樹脂で形成され、溶着される裏側層に曲げ弾性率が高い樹脂となるインテークエアダクトを得た。この比較例のインテークエアダクトは前記した引き裂き試験で溶着部分の剥離が生じ、溶着に問題があるのがわかった。
【0024】
さらに本実施例の表側層を構成する高い曲げ弾性率を持つ樹脂で、表側層及び裏側層をともに形成した3層積層樹脂シート基材を作り、このシート基材を用いて本実施例と同様にしてインテークエアダクトを製作した。このインテークエアダクトは引き裂き試験で溶着部分の剥離が生じ溶着に問題があった。さらに本実施例の裏側層を構成する低い曲げ弾性率を持つ樹脂で表側層及び裏側層をともに形成した3層積層樹脂シート基材を作り、このシート基材を用いて本実施例と同様にしてインテークエアダクトを製作した。このインテークエアダクトは110℃、3時間の加熱に耐えることができず変形した。
【0025】
これらの比較例より表側層に曲げ弾性率の高いオレフィン樹脂を用い、裏側層に曲げ弾性率の低いオレフィン樹脂を用いることにより、耐熱性が高区かつ溶着性の優れたインテークエアダクトが得られることが明らかとなった。
【0026】
【発明の効果】
本発明の空圧成形されたインテークエアダクトは中間に発泡層を持つため断熱性および吸音性に優れかつ表側層及び裏側層の中実層のために遮音性にも優れている。しかも積層された3層がいずれもオレフィン系樹脂で構成されているため、一体として溶融することにより成形用樹脂として再使用でき、リサイクル性に優れている。また、表側層に曲げ弾性率の高い樹脂、裏側層に曲げ弾性率の低い樹脂を用いることにより、優れた耐熱性と優れた溶着性を持つインテークエアダクトとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のインテークエアダクトの平面図である。
【図2】本発明の実施例のインテークエアダクトの側面図である。
【図3】図1のA−A線で切断した断面拡大図である。
【符号の説明】
2…第1被接合体 3…第2被接合体 21、31…溶着部分
22、32…被固定部 23、33…貫通孔 101…表側層
102…発泡層 103…裏側層
Claims (4)
- 筒状体を複数に分割した形状の一組の被接合体を溶接して一体化したインテークエアダクトであって、該一組の被接合体は合成樹脂シート基材を空圧成形することにより成形されており、
該合成樹脂シート基材はオレフィン系樹脂を主成分とする高剛性樹脂製の表側層とオレフィン系樹脂を主成分とする発泡体で構成されている発泡中間層とオレフィン系樹脂を主成分とする該表側層よりも低い低剛性樹脂製の裏側層とから構成されており、
前記被接合体の接合される周縁部はフランジ状となり、互いに対向する一組の該フランジ状周縁部の前記裏側層で溶着して一体化されたものであることを特徴とするインテークエアダクト。 - 前記発泡体は架橋された架橋発泡体である請求項1記載のインテークエアダクト。
- 前記表側層を形成する樹脂は引張弾性率が1,000〜3,000MPaであり前記裏側層を形成する樹脂は引張強度が3〜20MPaである請求項1記載のインテークエアダクト。
- 互いに対向して接合された前記周縁部の一部に互いに対向して接合された一組のフランジ状被固定部をもつ請求項1記載のインテークエアダクト。
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