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JP3805155B2 - 記録装置 - Google Patents

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JP3805155B2
JP3805155B2 JP35393099A JP35393099A JP3805155B2 JP 3805155 B2 JP3805155 B2 JP 3805155B2 JP 35393099 A JP35393099 A JP 35393099A JP 35393099 A JP35393099 A JP 35393099A JP 3805155 B2 JP3805155 B2 JP 3805155B2
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  • Devices For Conveying Motion By Means Of Endless Flexible Members (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリッジに搭載された記録手段により被記録材に記録していく記録装置に関し、詳しくは、駆動プーリとアイドラプーリとの間に張り渡された歯付ベルトに取り付けられたキャリッジに記録手段を搭載し、前記駆動プーリを駆動して前記キャリッジによる走査を行なうことで被記録材に記録していく記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(記録情報)に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材(記録媒体)に画像(文字や記号等を含む)を記録していくように構成されている。前記記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることができる。
【0003】
被記録材の搬送方向(紙送り方向、副走査方向)と交叉する方向に主走査しながら記録するシリアルタイプの記録装置においては、被記録材に沿って移動するキャリッジ上に搭載した記録手段(記録ヘッド)によって画像を形成(記録)し、1行分の画像形成を終了した後に所定量の紙送り(副走査としてのピッチ搬送)を行い、その後に再び停止した被記録材に対して次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。一方、被記録材(記録用紙等)の搬送方向の副走査のみで記録するラインタイプの記録装置においては、被記録材を所定の記録位置にセットし、一括して1行分の記録を行った後、所定量の紙送り(ピッチ送り)を行い、さらに次の行の記録を一括して行うという動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。
【0004】
そのうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段(記録ヘッド)から被記録材へインクを吐出して記録を行うものであり、記録ヘッドのコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を形成するのが容易であるなどの利点を有している。
【0005】
インクジェット記録ヘッドの吐出口からインクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子としては、ピエゾ素子等の電気機械変換体を用いるもの、レーザー等の電磁波を照射して発熱させ、この発熱作用によってインク滴を吐出させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換体によって液体を加熱するものなどがある。その中でも、熱エネルギーを利用してインクを滴として吐出するインクジェット式の記録ヘッドは、吐出口を高密度に配列することができるため高解像度の記録をすることが可能である。特に、その中でも、電気熱変換体をエネルギー発生素子として用いる記録ヘッドは、小型化が容易であり、かつ最近の半導体分野における技術の進歩と信頼性の向上性が著しいIC技術やマイクロ加工技術の長所を十分に活用でき、高密度実装化が容易で製造コストも安価なことから、有利である。
【0006】
また、被記録材の材質に対する要求も様々なものがあり、近年では、これらの要求に対する開発が進み、通常の被記録材である紙(薄紙や加工紙を含む)や樹脂薄板(OHP等)などの他に、布、皮革、不織布、さらには金属等を被記録材として用いる記録装置も使用されるようになっている。
【0007】
上記シリアル型記録装置は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを被記録材上に走査させ、この走査にタイミングを合わせて記録ヘッドを駆動することにより記録を行うものである。このシリアル型記録装置で高精細な出力画像を得るには、キャリッジの走査と記録ヘッドの駆動タイミングとを精度良く合わせる必要があるため、キャリッジはなるべく安定した速度で走査させることが求められる。そこで、キャリッジ走査の制御信号に合わせて記録ヘッドの駆動を制御するだけでなく、走査中のキャリッジの位置を検出するエンコーダ等の検出手段を設け、該エンコーダの検出タイミングに合わせて記録ヘッドの駆動を制御する方法も用いられているが、このような記録装置ではコストが増大し装置サイズも大型化しがちである。
【0008】
また、駆動源である駆動モータからキャリッジへの走査駆動力伝達手段としては、リードスクリュー方式や歯付タイミングベルト方式などが知られている。最近では、コストや組立容易性及び精度などの点で優れている歯付タイミングベルト(歯付ベルト)が主流となっている。この歯付(タイミング)ベルトは、駆動モータにより駆動される駆動プーリと相対向して配置されるアイドラプーリとの間に所定の張力を持って張り渡され、駆動プーリに刻まれた歯と該歯付ベルトに設けられた歯とが噛み合うことで駆動力を伝達する。記録ヘッドを搭載したキャリッジは、前記歯付ベルトに連結されており、駆動モータの回転に伴って両プーリ間を往復運動する。
【0009】
前記キャリッジには、記録ヘッドの他に、画像形成に必要なインク貯留手段、記録ヘッドへのインク供給手段及び記録ヘッド駆動信号伝達手段などが設けられることがある。また、このキャリッジは、歯付ベルトと略平行に設けられたガイド軸やガイドレールなどにより案内支持されており、記録ヘッド重量などの負荷を受けた状態でこれらの案内支持手段との間で摺動しながら走査する。そのため、前記歯付ベルトには一定の駆動伝達力が要求される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の歯付ベルトにおいては、所定の駆動伝達力を確保するために、該歯付ベルトの歯をある程度大きくするとともに歯丈を高くする方法が採られている。しかし、このように歯丈の高い歯付ベルトでは、ベルトの歯が駆動プーリの歯に噛み込む際に歯付ベルトに振動が生じ、キャリッジの走査速度が不安定になる要因となる。そのため、特に高精細の記録を行う記録装置では、エンコーダなどのキャリッジ位置検出手段が必要になってしまい、装置の小型・軽量化、低価格化の妨げとなっている。
【0011】
一方、キャリッジの走査速度を安定させるために歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルトによって駆動を伝達する場合には、歯付ベルトの歯が駆動プーリから浮き上がり、該駆動プーリが空回りするというジャンピング現象が発生しやすくなる。このジャンピング現象を防止するためには、歯付ベルトの張力を高くしたり、駆動プーリの径を大きくすることが有効である。しかし、ベルト張力を高くすると、駆動負荷が増大するため、大容量の駆動モータを搭載する必要が生じ、コストの上昇や装置サイズの増大を招くことになる。また、駆動プーリ径を大きくする方法でも、同様に装置サイズの大型化を招くことになる。さらに、ベルトの張力が高いほど駆動プーリとベルトの噛み合い時の振動がより顕著となるため、歯丈を低くすることによる振動低減の効果も相殺されてしまう。
【0012】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構成で、キャリッジへの駆動伝達手段としてに歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルトを用いる場合でも、歯付ベルトのジャンピング現象を防止することができ、そのため、大容量の駆動モータを必要とせず、かつエンコーダ等のキャリッジ位置検出手段を必要とせずに安定したキャリッジ走査を実現して高精細な記録を行なうことができ、もって、装置の小型軽量化及びコストダウンを図ることができる記録装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)は、上記目的を達成するため、駆動プーリとアイドラプーリとの間に張り渡された歯付ベルトと、前記歯付ベルトの上側の走行部分に取り付けられ、記録ヘッドを搭載して往復移動するためのキャリッジと、前記歯付ベルトの前記駆動プーリからのジャンピングを防止するジャンピング防止部材と、を備える記録装置であって、前記ジャンピング防止部材は、前記駆動プーリの上側で前記歯付ベルトの背面から所定の間隔をおくとともに、前記歯付ベルトの直進部分の延長線の方向に対して傾きをもって配されるジャンピング防止面を有し、該ジャンピング防止面の延長方向よりも前記駆動プーリに近く、かつ前記駆動プーリの中心よりも下側の位置を中心に回動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
【作用】
以上の構成によれば、歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルトによって駆動を伝達する際に駆動プーリの回転に伴って歯付ベルトの背面が該駆動プーリから浮き上がろうとしても、該歯付ベルトの背面の動きがジャンピング防止部材によって規制されるため、前記歯付ベルトの浮き上がりが阻止されることで駆動プーリの空回りも阻止され、歯付ベルトのジャンピング現象が防止される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明を適用した記録装置の一実施例を示す模式的斜視図である。図1において、記録手段(記録ヘッド)1を搭載したキャリッジ2はガイドシャフト3とガイドレール4とによって案内支持されており、また、このキャリッジ2は駆動プーリ6とアイドラプーリ7との間に張り渡された歯付ベルト5に連結されている。そこで、駆動モータ8で前記駆動プーリ6を回転駆動することにより、前記キャリッジ2は前記歯付ベルト5を介して主走査方向に往復駆動される。また、前記キャリッジ2の主走査方向の動き(記録ヘッド1の移動)に連動して記録ヘッド1を記録情報に基づいて駆動することにより、記録用紙等の被記録材(不図示)に対する記録を行なうことができる。
【0018】
前記記録ヘッド(記録手段)1は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録するインクジェット式の記録ヘッドである。また、この記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。さらに、前記記録ヘッド1は、前記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって圧力変化を生じさせ、この圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させることにより記録を行なうものである。前記電気熱変換体は、各吐出口のそれぞれに対応して配設されており、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出するものである。
【0019】
図2は記録手段(記録ヘッド)1のインク吐出部(一つの吐出口列)の構造を模式的に示す部分斜視図である。図2において、記録用紙等の被記録材と所定の隙間(例えば、約0.3〜2.0ミリ程度)をおいて対面する吐出口81には、所定のピッチで複数の吐出口82が形成され、共通液室83と各吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)85が配設されている。記録ヘッド1は、前記吐出口82が主走査方向(キャリッジ2に搭載される本実施例では該キャリッジ2の移動方向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で装着されている。こうして、画像信号(記録信号)又は吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体85を駆動(パルス電圧を印加)して、液路84内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口82からインク滴を吐出させる記録ヘッド1が構成されている。
【0020】
図3は駆動プーリとアイドラプーリとの間に張り渡された歯付ベルトから成る伝動機構を示す側面図であり、図3の(a)は従来の記録装置における伝動機構を示し、図3の(b)は本発明を適用した記録装置の一実施例(図1の記録装置)における伝動機構を示すものである。図3において、従来例(a)では駆動プーリ6の半周(半円周)で歯付ベルト5の歯が5山噛み合っているのに対し、本発明を適用した一実施例(b)では、本実施例では駆動プーリ6の半周(半円周)で歯付ベルト5の歯が10山噛み合っている。
【0021】
つまり、本発明の一実施例(b)における歯付ベルト5の歯ピッチは、従来例(a)の歯付ベルト5の歯ピッチの約半分であり、これに伴って、歯付ベルト5の歯底から歯先までの高さ(歯付ベルト5の歯先から駆動プーリ6の歯先までの距離)も、本発明を適用した実施例(b)のものは従来例(a)の約60%程度まで低くなっている。図3の(b)の本発明を適用した実施例は、図3の(a)の従来例とは、上記のように歯付ベルト5及び駆動プーリ6の歯ピッチの点で相違しており、その他の面では実質上同じ構成をしている。
【0022】
図3において、アイドラプーリ7は不図示のシャーシに対してテンションばね9を介して懸架されている。つまり、前記アイドラプーリ7をテンションばね9の弾性力で図示右向きに付勢することにより、前記歯付ベルト5に張力が付与されている。この種のアイドラプーリを保持する他の構成例としては、予めアイドラプーリを引張ることにより歯付ベルトに張力を付与した状態で、該アイドラプーリをシャーシに対して位置決め固定することにより歯付ベルトの張力を維持するようにした構成のものがあるが、そのような構成のものでは、温度や湿度が変化して歯付ベルトが伸縮した場合に該歯付ベルトの張力が大きく変動してしまうことから、該歯付ベルトの張力を予め高い値に設定しておく必要があり、そのため、キャリッジの駆動に要する電力が増大することになる。
【0023】
図3において、本発明を適用した実施例では、キャリッジ2は図示のように歯付ベルト5の上側の走行部分に取り付けられている。従って、駆動プーリ6が図示の反時計回りに駆動されると、キャリッジ2は歯付ベルト5によって直接的に引っ張られるようにして該駆動プーリ6に向かって接近する方向に移動する。一方、駆動プーリ6が時計回りに回転するときは、キャリッジ2はアイドラプーリ7を迂回した歯付ベルト5によって引っ張られるようにして該アイドラプーリ7に向かって接近する方向に移動する。
【0024】
しかしながら、前述のようにアイドラプーリ7はテンションばね9を介して懸架されているため、駆動プーリ6が時計回りに回転するときには、回転開始直後では、キャリッジ2はガイドシャフト3やガイドレール4との間に働く摺動負荷により瞬間的に停止したままの状態になり、その間にアイドラプーリ7が駆動プーリ6側へ引っ張られて若干移動する。この間、駆動プーリ6は回転し続けるため、アイドラプーリ7と駆動プーリ6との間隔が減少したことにより余った歯付ベルト5が駆動プーリ6の上側へ繰り出され、駆動プーリ6の上側と停止しているキャリッジ2との間で歯付ベルト5に撓みが生じる。
【0025】
その場合、歯付ベルト5は、均一にある程度の剛性を有しているため、駆動プーリ6とキャリッジ2との間で部分的に湾曲するのではなく、駆動プーリ6の上側で歯付ベルト5が該駆動プーリ6から浮き上がるような挙動を示す。このとき、駆動プーリ6はさらに回転を続けているため、歯付ベルト5に対して駆動プーリ6が空回りしようとする。図3の(a)に示す従来例のように歯付ベルト5の歯先から駆動プーリ6の歯先までの高さが十分にある場合には、歯付ベルト5が若干浮き上がっても駆動プーリ6の歯先から外れることはなく、駆動プーリ6の空回りは発生しない。しかしながら、図3の(b)に示す本発明を適用した実施例のように歯丈の低い歯付ベルト5を用いる場合には、後述するような歯付ベルト5のジャンピングを防止するためのジャンピング防止部材10(図4、図5)を設けるなどの対策を何ら講じないと、駆動プーリ6が空回りする可能性が高くなる。
【0026】
図4は本発明を適用した記録装置の一実施例における歯付ベルト5のジャンピングを防止するためのジャンピング防止部材10の構成例を示す部分側面図である。図4において、ジャンピング防止部材10はそのジャンピング防止面21が歯付ベルト5の背面から所定の間隔bをおいて配置されるように配設されている。図3の(b)のような配置構成では、歯付ベルト5の浮き上がりは、前述したように、駆動プーリ6が時計回りに回転してキャリッジ2を駆動プーリ6から離れる方向に移動させようとする際に該キャリッジ2が取り付けられている上側部分で発生するため、本発明に係る前記ジャンピング防止部材(ジャンピング防止板)10は駆動プーリ6の上側に配設される。
【0027】
図5は歯付ベルト5がジャンピング防止部材10(ジャンピング防止面21)に当接している状態を示す部分側面図であり、図5の(a)はジャンピング防止部材10をその防止面21が歯付ベルト5の直進走行部分と略平行に配設する参考例を示し、図5の(b)は歯付ベルト5が駆動プーリ6から離れる位置よりも図示左側で該歯付ベルトの背面と最も接近するようにジャンピング防止部材10を配設する場合を示す。この図5の(b)は本発明の好適な実施例を示すものである。
【0028】
図5において、ジャンピング防止部材10を図5の(a)に示すように通常に張り渡された歯付ベルト5と略平行に取り付けると、歯付ベルト5はジャンピング防止部材10との当接位置で大きく浮き上がるため、歯付ベルト5の背面とジャンピング防止部材10(ジャンピング防止面21)との間で摩擦負荷が発生し、歯付ベルト5の移動(走行)に対する抵抗が大きくなる。そして、歯付ベルト5は、ジャンピング防止部材10よりも図示左側の位置で駆動プーリ6から比較的大きく浮き上がる傾向が生じ、歯付ベルト5の歯先が駆動プーリ6の歯先から外れて該駆動プーリが空回りする現象が発生しやすくなる。
【0029】
これに対し、図5の(b)に示すように、ジャンピング防止部材10を歯付ベルト5が駆動プーリ6から離れる位置よりも図示左側の位置で歯付ベルト5の背面に最も接近するように配設すると、歯付ベルト5は該ジャンピング防止部材との当接位置でそれほど大きく浮き上がっていないため、歯付ベルト5の背面とジャンピング防止部材10との間の摩擦負荷はさほど大きくならず、従って歯付ベルト5の移動(走行)に対する抵抗はさほど大きくはない。
【0030】
また、図4及び図5に示すように駆動プーリ6の近傍で歯付ベルト5の背面と対向する位置に該歯付ベルトのジャンピングを防止するためのジャンピング防止部材10を配設すると、記録装置の稼働中、歯付ベルト5がジャンピング防止部材10(その防止面21)に対し繰り返し当接するため、この歯付ベルト5には繰り返しダメージが与えられる。この繰り返しダメージによる歯付ベルト5の磨耗や切れなどを防止するためには、前記ジャンピング防止部材10は、図4に示すように、歯付ベルト5の直進部分の直進方向延長線に対し角度θをなすとともに歯付ベルト5との当接位置(最接近位置)で駆動プーリ6の接線方向に延びる面を有し、駆動プーリ6から浮き上がった歯付ベルト5の背面が広い面積でジャンピング防止部材10と当接するように配設されている。
【0031】
また、ジャンピング防止部材10は、上記のような傾きを持ったジャンピング防止面21を有することにより、駆動プーリ6から繰り出される歯付ベルト5の進行方向を安定させる案内板としての機能を果たすことができる。図4に示すようなジャンピング防止部材10を具備する本実施例に係る記録装置においては、前記ジャンピング防止部材10のジャンピング防止面21の方向と歯付ベルト5の直進部分の延長線の方向との間の角度θは、約10度〜約30度の範囲に選定される。この角度θは、キャリッジ2の走査速度や重量及び摺動負荷にもよるが、通常では約20度のときに最も高いジャンピング防止効果を発揮することができる。
【0032】
図4において、前記ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bは歯付ベルト5の歯丈hよりも小さくする必要があるが、実際には、この間隔bを歯丈hよりも若干小さくする程度では、十分なジャンピング防止効果が得られない場合がある。これは、歯付ベルト5の撓みが弦振動としてキャリッジ2側から駆動プーリ6側へと伝播するため、歯付ベルト5の歯の位相によっては、該歯付ベルト5の浮き上がりがジャンピング防止部材10との隙間をすり抜けて移動し、該ジャンピング防止部材10よりも図示左側の部分で駆動プーリ6の空回りが発生することがあるためである。本実施例に係る記録装置においては、このジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bは、該歯付ベルト5の歯丈hの10%〜90%の範囲に選定されている。
【0033】
また、前記駆動プーリ6の回転方向とは関係なく、駆動プーリ6の回転中では、歯付ベルト5は駆動プーリ6の停止時よりもわずかに浮き上がっている。その浮き上がり量はジャンピング発生時の浮き上がり量に比べればわずかであるが、ジャンピング防止部材10を歯付ベルト5の背面のごく近くに配設してしまうと、ジャンピング発生のおそれがないときでも歯付ベルト5が常にジャンピング防止部材10と摺動することとなる。そのため、ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bが小さ過ぎる場合には、歯付ベルト5の磨耗を招くばかりでなく、駆動プーリ6の回転負荷が増大したり、キャリッジ2の走査速度が不安定になったりするおそれがある。
【0034】
従って、ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bは、通常回転時のわずかな浮き上がりでは歯付ベルト5がジャンピング防止部材10に当接しないように、常に若干の隙間を確保できるような値に選定することが望ましい。本実施例に係る記録装置においては、上記間隔bは歯付ベルト5の歯丈hの約10%以上(ただし、約90%以下)に選定される。以上説明したように、確実な歯付ベルト5のジャンピング防止効果を実現するためには、ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bを前述のような所定範囲内に選定する必要がある。本実施例に係る記録装置においては、歯付ベルト5の歯丈hが低いことから、前記間隔bの許容範囲は0.3mm以下と非常に小さい値になっている。
【0035】
また、前記歯付ベルト5においては、その製法により、駆動プーリ6に巻き架けたときの背面の高さにばらつきが生じることは避けられない。その場合、歯付ベルト5の成形後にその背面を研磨するなどして前記ばらつきを抑えることは可能である。しかし、その他の部品のばらつきなども加算されることから、ジャンピング防止部材10は、歯付ベルト5との距離を調整しながら位置決めして取り付けるように構成することが望ましい。
【0036】
そこで、図4を参照して、ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔bの調整機構(調整方法)の実施例について説明する。図4において、ジャンピング防止部材10の配置に関しては、歯付ベルト5の背面との間隔bのみならず、歯付ベルト5の直線走行部分に対する角度θも重要であることは前述した通りである。よって、上記間隔bの調整においては、前記角度θがなるべく変動しないようにする必要がある。また、図4の構成においては、ジャンピング防止部材10は、歯付ベルト5との当接により駆動プーリ6から離れる方向の力を繰り返し受けることになる。この力によってジャンピング防止部材10が移動して上記間隔bが広がってしまうと、ジャンピング防止効果は低減してしまう。そのため、ジャンピング防止部材10は確実に固定する必要がある。
【0037】
図4において、ジャンピング防止部材10は、ボス嵌合によって、点Pを中心に回動可能に取り付けられている。この点Pは、ジャンピング防止部材10のジャンピング防止面21の延長方向よりも駆動プーリ6に近く、かつ駆動プーリ6の中心よりも下側の位置に配置されている。そのため、この点Pを中心としてジャンピング防止板10を回動させて上記間隔bを調整しても、上記角度θはほとんど変動しない。
【0038】
また、前記ジャンピング防止部材10には上記間隔bを調整するための長孔22が形成されており、該長孔22に挿通されたねじ11によって不図示のシャーシに位置決め固定されている。この固定ねじ11はジャンピング防止部材10と歯付ベルト5との当接位置(最接近位置)の近傍に設けられているため、歯付ベルト5からの当接力によりジャンピング防止部材10が移動することはない。なお、通常では、駆動プーリ6は駆動モータ8(図1)の出力軸に固定されていることが多いため、ジャンピング防止部材10の固定位置は駆動モータ8の近傍になる可能性が高い。そこで、駆動モータ8の発熱等によってもジャンピング防止部材10(ジャンピング防止面21)の位置ズレが生じないように、該ジャンピング防止部材10は熱による変形の少ない材質で形成することが望ましい。
【0039】
図6は図4中の線6−6に沿って歯付ベルト5、駆動プーリ6及びジャンピング防止部材10の位置関係を示す部分断面図であり、図6の(a)は参考例を示し、図6の(b)は本発明の実施例に係る構成例を示す。図6の(a)及び(b)において、駆動プーリ6の歯付ベルト5の幅方向両側には、該歯付ベルト5の幅方向のずれを規制するためのフランジ23、24が設けられている。少なくとも一方のフランジ23が図6の(a)に示すように駆動プーリ6に懸架された歯付ベルト5の背面高さよりも高い場合には、ジャンピング防止部材10はフランジ23との干渉を避けるために該フランジ23を覆う位置まで配設することはできない。つまり、ジャンピング防止部材10は、歯付ベルト5の背面を幅方向全域に亘って覆うことができない。
【0040】
そのため、図6の(a)の参考例では、駆動モータ8及び駆動プーリ6が停止している状態で、落下などの瞬間的な衝撃が加わり、キャリッジ2に走査方向に移動しようとする力がかかった場合に、歯付ベルト5が弛むと、該歯付ベルト5が駆動プーリ6から外れるおそれがある。つまり、図6の(a)の構成では、ジャンピング防止部材10が歯付ベルト5の幅方向の途中までしか覆っていないため、該ジャンピング防止部材10と駆動プーリのフランジ23との間に広い隙間が生じ、歯付ベルト5が図示二点鎖線のように該隙間を斜め方向にすり抜けて駆動プーリ6から外れてしまうおそれがある。
【0041】
これに対し、本発明の実施例に係る図6の(b)の構成においては、駆動プーリ6の歯付ベルト5の幅方向両側のフランジ23、24の外径を駆動プーリ6に懸架された歯付ベルト5の背面高さよりも低い外径とし、ジャンピング防止部材10を両側のフランジ23、24にさしかかるまで延在させるとともに、ジャンピング防止面21を歯付ベルト5の背面に接近させるように配置したので、前記ジャンピング防止部材10と駆動プーリ6の両側のフランジ23、24との間の隙間を十分に狭くすることができ、例えば、落下などの瞬間的な衝撃が加わってキャリッジ2に走査方向に移動しようとする力がかかるような場合でも、歯付ベルト5の駆動プーリから外れを確実に防止することができる。
【0042】
なお、以上説明した本発明の実施例においては、ジャンピング防止部材10の当接部(防止部)の形状は、キャリッジ2やガイドシャフト3との干渉を避けるために平板状としたが、スペース等の関係で配設可能であれば、平板状の構造に代えて、回動可能なコロ状にすることもできる。回動可能なコロ状のジャンピング防止部材を用いることにより、歯付ベルト5の背面との間隔bをさらに小さく設定しても、歯付ベルト5との摺動摩擦の負荷増大を防止することができ、さらに確実なジャンピング防止効果を実現することができる。
【0043】
以上説明した実施例によれば、駆動プーリ6とアイドラプーリ7との間に張り渡された歯付ベルト5と、歯付ベルトの上側の走行部分に取り付けられ、記録ヘッド1を搭載して往復移動するためのキャリッジ2と、歯付ベルトの駆動プーリからのジャンピングを防止するジャンピング防止部材10と、を備える記録装置であって、ジャンピング防止部材は、駆動プーリの上側で歯付ベルトの背面から所定の間隔をおくとともに、歯付ベルトの直進部分の延長線の方向に対して傾きをもって配されるジャンピング防止面21を有し、ジャンピング防止面の延長方向よりも駆動プーリに近く、かつ駆動プーリの中心よりも下側の位置Pを中心に回動可能に取り付けられている構成としたので、キャリッジ2への駆動伝達手段としてに歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルト5を用いる場合でも、駆動プーリ6の回転に伴って駆動プーリから浮き上がろうとする歯付ベルトの背面がジャンピング防止部材10によって規制されるため、駆動プーリ6の空回りを防止するとともに歯付ベルト5のジャンピング現象を防止することができる。
【0044】
従って、前述の実施例によれば、簡単な構成で、キャリッジ2への駆動伝達手段としてに歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルト5を用いる場合でも、歯付ベルト5のジャンピング現象を防止することができ、そのため、大容量の駆動モータを必要とせず、かつエンコーダ等のキャリッジ位置検出手段を必要とせずに安定したキャリッジ走査を実現して高精細な記録を行なうことができ、もって、装置の小型軽量化及びコストダウンを図ることができる記録装置が提供される。
【0045】
さら前述の実施例では、アイドラプーリ7を付勢することにより歯付ベルト5に張力を付与するテンションばね9を有する構成とし、また、ジャンピング防止部材10と歯付ベルト5の背面との間隔は歯付ベルトの歯丈の10%〜90%の範囲である構成とし、さらに、駆動プーリ6は歯付ベルト5の幅方向両側にフランジ23、24を有し、フランジ23、24の外径は駆動プーリ6に懸架された歯付ベルト5の背面高さよりも低く、ジャンピング防止部材10は駆動プーリの両側のフランジ23、24の少なくとも一部を含む範囲にわたって歯付ベルト5に接近する面21を有する構成としたので、一層効率よく上記効果を達成できる記録装置が提供される。
【0048】
なお、以上の実施例では、記録手段(記録ヘッド)がインクジェット記録ヘッドである記録装置の場合を例示したが、本発明は、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等、他の記録方式を用いる記録装置においても同様に実施することができ、同様の効果を達成できるものである。また、本発明は、1個の記録手段を用いる記録装置に限られるものではなく、異なる色で記録する複数の記録ヘッドを用いるカラー記録装置、あるいは同一色彩で異なる濃度で記録する複数の記録ヘッドを用いる階調記録装置、さらには、これらを組み合わせた方式の記録装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
【0049】
さらに、本発明は、インクジェット記録装置の場合、記録ヘッドとインクタンクを一体化した交換可能なインクカートリッジを用いる構成、インクカートリッジとキャリッジを一体化する構成、記録手段記録ヘッドとインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、記録ヘッドとインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。また、本発明は、インクジェット記録装置が、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いる記録手段を使用するものである場合にも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式の記録手段を使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明によれば、簡単な構成で、キャリッジへの駆動伝達手段として歯ピッチが細かく歯丈の低い歯付ベルトを用いる場合でも、歯付ベルトのジャンピング現象を防止することができ、そのため、大容量の駆動モータを必要とせず、かつエンコーダ等のキャリッジ位置検出手段を必要とせずに安定したキャリッジ走査を実現して高精細な記録を行なうことができ、もって、装置の小型軽量化及びコストダウンを図ることができる記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した記録装置の一実施例を示す模式的斜視図である。
【図2】図1中の記録手段のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】駆動プーリとアイドラプーリとの間に張り渡された歯付ベルトから成る伝動機構を従来例(a)と実施例(b)とを対比して示す側面図である。
【図4】本発明を適用した記録装置の一実施例におけるジャンピング防止部材を示す部分側面図である。
【図5】図5は平行配置されたジャンピング防止部材(a)及び傾斜配置されたジャンピング防止部材(b)に歯付ベルトが当接している状態を示す部分側面図である。
【図6】図4中の線6−6に沿って参考例(a)及び本発明の実施例(b)の特徴的な構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 記録手段(記録ヘッド)
2 キャリッジ
3 ガイドシャフト
4 ガイドレール
5 歯付ベルト
6 駆動プーリ
7 アイドラプーリ
8 駆動モータ
9 テンションばね
10 ジャンピング防止部材
11 固定ねじ
21 ジャンピング防止面
22 長孔
23 フランジ
24 フランジ

Claims (5)

  1. 駆動プーリとアイドラプーリとの間に張り渡された歯付ベルトと、前記歯付ベルトの上側の走行部分に取り付けられ、記録ヘッドを搭載して往復移動するためのキャリッジと、前記歯付ベルトの前記駆動プーリからのジャンピングを防止するジャンピング防止部材と、を備える記録装置であって、
    前記ジャンピング防止部材は、前記駆動プーリの上側で前記歯付ベルトの背面から所定の間隔をおくとともに、前記歯付ベルトの直進部分の延長線の方向に対して傾きをもって配されるジャンピング防止面を有し、該ジャンピング防止面の延長方向よりも前記駆動プーリに近く、かつ前記駆動プーリの中心よりも下側の位置を中心に回動可能に取り付けられていることを特徴とする記録装置。
  2. 前記アイドラプーリを付勢することにより前記歯付ベルトに張力を付与するテンションばねを有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記ジャンピング防止部材と前記歯付ベルトの背面との間隔は該歯付ベルトの歯丈の10%〜90%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
  4. 前記駆動プーリは前記歯付ベルトの幅方向両側にフランジを有し、該フランジの外径は前記駆動プーリに懸架された歯付ベルトの背面高さよりも低く、前記ジャンピング防止部材は前記駆動プーリの両側のフランジの少なくとも一部を含む範囲にわたって前記歯付ベルトに接近する面を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の記録装置。
  5. 前記記録ヘッドは、吐出口からインクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の記録装置。
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