JP3801567B2 - 立位での装着が容易な幼児用おむつ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、寝位及び立位での装着性に優れ、しかも吸収性能及び漏れ防止性能に優れた、展開型の使い捨ておむつに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、使い捨ておむつとして、ファスニングテープを有する展開型の使い捨ておむつと、予めパンツ型に形成されたパンツ型の使い捨ておむつが知られており、展開型の使い捨ておむつは、新生児から使用できることや、製造コストが安いこと等から、最も一般的に用いられている。
【0003】
しかし、従来の展開型使い捨ておむつは、静かに仰向けに寝ている状態(以下、寝位ともいう)の被装着者(赤ちゃん等)に対しては容易に装着できるが、活動が活発になった幼児期の頃は、おむつ交換をするために寝位で静止していることは少なく、また、寝位になることさえ嫌がる場合も多く、そのような場合に寝位で装着するのは非常に大変である。特に寝位での装着を嫌がったりする場合、例えば、はいはいをして逃げ回ったりする場合には、その装着が容易ではない。そのような子供に対しては四つんばいや立っている状態(以下、立位ともいう)で装着を試みることになるが、従来のおむつでは、この場合も装着は容易ではない。
【0004】
その一つの要因としては、寝位での装着の場合では、おむつは被装着者の背中と床(若しくは寝具)などの間に挟まれ、被装着者の荷重により装着位置から移動しにくい状態となっているのに対し、立位での装着の場合では、おむつはどこにも固定されていないために、装着者自身がおむつを装着位置から動かないように保持しながら、装着を行わなければならないことが挙げられる。
【0005】
別の要因としては、従来のおむつは、おむつ股下部の幅が比較的広めに設計されていることが挙げられる。即ち、寝位装着では、両脚を左右に大きく開いた状態で装着できるので、おむつ股下部の幅が広くても装着性にさほど影響しないが、立位装着では、両脚を左右に大きく開かせることができないため、おむつ股下部の幅が広いと、ただちに装着性の悪化につながってしまう。そのため、おむつ股下部の幅を狭くして立位装着性を向上させることも考えられるが、おむつ本来の吸収性能や漏れ防止性能を悪化させることなく、股下部の幅を狭くすることは困難である。
【0006】
特に、おむつ長手方向の両側に、一対の立体ギャザー及び一対のレッグギャザーが形成されている展開型の使い捨ておむつにおいては、おむつ股下部の幅を狭くするべく、立体ギャザー同士間の間隔を狭めた場合には必要な吸収性能が得られず、立体ギャザー間の幅を維持したまま股間幅を狭くすると立体ギャザーとレッグギャザーとの間のポケットがなくなるので、立体ギャザーを越えた排泄物が漏れ出し易くなる。
要するに、吸収性能及び漏れ防止性能に優れ、しかも立位での装着性が充分に優れた展開型の使い捨ておむつは未だ提供されていない。
【0007】
このような状況で、親はパンツ型のおむつを使用することを検討しはじめるが、つかまり立ちが始まったばかりのような乳幼児では立った状態で脚を上げることが難しいので、結局パンツ型おむつを使うことを挫折してしまう。
【0008】
従って、本発明の目的は、寝位及び立位での装着性に優れ、しかも吸収性能及び漏れ防止性能に優れた、展開型の使い捨ておむつを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を備えたおむつにおいて、立つこと又ははいはいができる幼児用のおむつであり、長手方向の一方の部位の両側縁部に一対のファスニングテープが設けられており、長手方向の両側に、一対の立体ギャザー及び一対のレッグギャザーが、各々弾性部材を配設することによって形成されており、おむつの股下部の最小幅値が100〜240mmであり、前記股下部の最小幅部分において、一対の前記立体ギャザーの固定端同士間の距離W1と、一対の前記レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材同士間の距離W2との比(W1/W2)が0.67〜0.81であり、且つ、各立体ギャザーの前記固定端から前記各レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材までの距離W3が、該各立体ギャザーの高さW4よりも短く、前記立体ギャザーは100%以上の伸張率で配されており、該立体ギャザーをおむつ非固定状態で伸張させたとき、おむつ配設状態における伸長率(%)から30%減じた伸長率として定義される実効伸張率における引張荷重が20〜120gfであり、伸長率が20%から前記実効伸長率までの間の引張荷重増加率が1.0(gf/%)以下である、立位での装着が容易な幼児用おむつを提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、その好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の一実施形態としての使い捨ておむつ1は、図1及び図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及び両シート間に介在された液保持性の吸収体4を備えている。使い捨ておむつ1は、幼児用の展開型の使い捨ておむつであり、長手方向の中央部に股下部Aを有しており、長手方向における該股下部Aの前後に、両側縁部に一対のファスニングテープ5が設けられた第1部(長手方向の一方の部位)B及び外表面にファスニングテープ5を止着するランディングゾーン51が設けられた第2部Cを有している。股下部Aは、着用時に着用者(被装着者)の股下部(股間部)に配される。
【0011】
本実施形態の使い捨ておむつ1は、股下部Aの両側縁が円弧状に形成されており、全体として、長手方向中央部が括れた砂時計状の形状を有している。
表面シート2は、吸収体4よりも外形寸法の大きい略矩形状の平面視形状を有しており、裏面シート3の幅方向中央部に配されている。裏面シート3は、おむつの外形形状に一致する砂時計状の外形を有している。
表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4の両側縁41,41及び両端縁42a,42bから外方に延出しており、それらの延出部において互いに接合されている。裏面シート3の長手方向の両側部は、表面シート2の両側縁から幅方向外方に延出している。
【0012】
本使い捨ておむつ1における長手方向の両側には、一対の立体ギャザー6,6及び一対のレッグギャザー7,7が、各々弾性部材を配設することによって形成されている。
より詳細には、一対の立体ギャザー6は、それぞれ、弾性部材61を有する立体ギャザー形成用のシート材62を、表面シート2の両側縁の外方から内方に亘るように配設して形成されている。各シート材62は、吸収体4の側縁41と後述するレッグ部弾性部材71との間において、ヒートシール、接着剤等の公知の接合手段により、おむつ長手方向に亘って直線状に表面シート2上に固定されており、その直線状の固定部により立体ギャザー6の固定端64が形成されている。各シート材62は、前記固定端64よりも幅方向外方に位置する部分が表面シート2又は裏面シート3上に固定されており、また、おむつの長手方向両端部近傍における該固定端64よりもおむつ幅方向中央側に位置する部分が表面シート2上に固定されている。各立体ギャザー6に配設された弾性部材61は、それぞれ糸状の形態を有し、各立体ギャザー6の自由端63と略平行に複数本配されている。
【0013】
一対のレッグギャザー7は、おむつ幅方向における、立体ギャザー6,6の固定端64の位置よりも更に外側に、複数本のレッグ部弾性部材71,71を、略直線状に配設して形成されている。
前記弾性部材61及び前記レッグ部弾性部材71は、何れも使い捨ておむつ1の長手方向に沿って配設されており、また、第1部Bと第2部Cとの間に亘って配設されている
【0014】
尚、第1部B及び第2部Cのウエスト部Dには、ウエスト部弾性部材81が配設されてウエスト伸縮部8が形成されており、また、第1部Bの胴回り部Eの両側部には、それぞれ複数本の胴回り部弾性部材91が配設されて一対のサイド伸縮部9,9が形成されている。第1部Bの胴回り部Eは、図1に示すように、使い捨ておむつ1を、その各部の弾性部材を伸張させて平面状に拡げた状態(緊張状態)とし、第1部B側を上側、第2部C側を下側と考えた場合に、ウエスト部弾性部材81が配された部位よりも下方に位置し且つ股下部(着用時に着用者の股下に配される部分で、左右両側縁が脚廻りに沿わせるように凹状に形成されている部分)Aより上方に位置する部分である。
【0015】
本使い捨ておむつ1は、股下部Aの最小幅値が100〜240mmである。当該幅範囲外であると、立位時に子供の脚をわずかに開けた状態で無理なく股下部におむつを挿入することが困難又は、股下部からの尿漏れを起こし易くなる。股下部の最小幅値は100〜230mm、特に100〜210mm、とりわけ120〜200mmであることが、立位時の装着性がよりよくなるので好ましい。
【0016】
本使い捨ておむつ1は、股下部Aの最小幅部分において、一対の前記立体ギャザーの固定端同士間の距離W1(図2参照)と、一対の前記レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材同士間の距離W2(図2参照)との比(W1/W2)が0.67〜0.81であり、好ましくは0.70〜0.78である。
前記比(W1/W2)が0.67未満であると、股下部の股間幅の最小値を本発明の範囲とした場合には立体ギャザー間の空間が小さくなり必要な吸収性能が得られず、前記比(W1/W2)が0.81超であると、立体ギャザーとレッグギャザーとの間のポケットがなくなるので立体ギャザーを越えた排泄物が漏れ出し易くなる。
【0017】
本使い捨ておむつ1においては、おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って、前記比(W1/W2)が0.67〜0.81の範囲内であることが好ましく、特に、前記比(W1/W2)が、股下部の最小幅部分からおむつ長手方向の第1部B側方向及び第2部C側方向にそれぞれ25mm以上の長さに亘って、上記の範囲内であることが好ましい。
本実施形態の使い捨ておむつにおいては、おむつを長手方向に2等分(全長を2等分)するおむつの中央線CL(図1参照)上において股下部の幅が最も狭くなっている。このように、股下部の最小幅部分は、おむつ長手方向の略中央部に存することが、立って、又ははいはいで逃げようとする子供の背側でファスニングテープを装着する際の装着性と装着後のずれ落ち防止の点で好ましい。
【0018】
本使い捨ておむつ1は、少なくとも股下部Aの最小幅部分において、各立体ギャザー6の固定端64から各レッグギャザー7の最外側に位置する弾性部材71までの距離W3(図2参照)が、該各立体ギャザー6の高さW4(図2参照)よりも短い。
前記距離W3が前記高さW4よりも短くないと、立位装着容易性と吸収性能を同時に満たすことができない。その観点から、前記距離W3と前記高さW4の比(W3/W4)は0.45〜0.83が好ましい。
尚、立体ギャザー6の高さW4は、固定端64から自由端63までの長さを、シート材62の面に沿って測定する。
【0019】
本使い捨ておむつ1においては、おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って、前記距離W3が前記高さW4よりも短いことが好ましく、特に股下部の最小幅部分からおむつ長手方向の第1部B側方向及び第2部C側方向にそれぞれ25mm以上の長さに亘って、W3<W4の関係が成立することが好ましい。
【0020】
本使い捨ておむつ1における立体ギャザー6は、低モジュラスのものを高伸張率で配してある。
立体ギャザー6は、使い捨ておむつ1に100%以上の伸張率、好ましくは100〜300%の伸張率、特に好ましくは130〜200%の伸張率で配設されている。
おむつ配設状態(おむつに配設されている状態)の立体ギャザー6の伸張率が100%未満であると、装着時に立体ギャザーの先端部の起立性が損なわれ、立位での装着時などで、立体ギャザーの先端部を股間部に誘導する際に、立体ギャザーが倒れてしまったり、被装着者の肌にあたり、折れ曲がったりし、正しく装着することが難しくなる。また、被装着者の姿勢が変化した場、立体ギャザーの先端部が被装着者の肌との間に隙間が生じ排泄物が漏れる可能性が大きくなる。前記伸張率が300%超であると、場合によっては、おむつが丸まってしまい、装着が困難になる。特に立位での装着ではおむつが股間部に挿入されたときに、テープ部を止着するまでもなくおむつがズレ落ちてしまい、装着が非常に難しい。また、装着できたとしても、既にズレ落ちた状態に装着されてしまい、装着が非常に難しい。また、装着できたとしても、既にズレ落ちた状態に装着され、フィット性や漏れ性能の低下にもつながる。
【0021】
おむつ配設状態における立体ギャザー6の伸張率は以下のようにして測定される。
〔おむつ配設状態の伸長率〕
おむつ長手方向の中央部に位置する部分が含まれるようにおむつから立体ギャザーを切り出し、最大に伸張させた時点(図1に示すおむつ配設状態における長さまで伸張させた時点)での、離間した2地点間の区間Hの長さをH、その後伸張を開放し、自然状態、即ち、切り出したギャザーが自然に縮んだ状態において測定した前記区間Hの長さhとしたとき、下記式(1)で表される。
伸張率(%)=(H―h)/h ×100 (1)
自然状態での長さhは、平らな面を持つ板などの上で負荷をできるだけかけずにギャザーによる凹凸を最小限にして測定する。区間の前記長さHとしては200mm程度設けることが好ましい。
【0022】
また、立体ギャザー6は、おむつ非固定状態(おむつに固定されていない状態、即ちおむつから立体ギャザーを切り出した状態をいう)で伸張させたとき、おむつ配設状態における伸張率(%)から30%減じた伸張率(おむつ配設状態伸長率−30%)で定義される実効伸長率における引張荷重が20〜120gf、好ましくは50gf〜100gfであり、伸張率が20%から前記実効伸張率までの間の引張り荷重増加率が1.0(gf/%)以下、好ましくは0.7(gf/%)以下である。
実効伸張率、即ちおむつ配設状態の伸張率(%)から30%減じた地点で評価する意味は、伸張率(%)に対する立体ギャザーの荷重曲線、すなわち伸張応力を測定する際、それ以上の伸張率では構成部材の伸張荷重が含まれることが多く、ギャザーとしての物性値以上の荷重曲線となりやすく、正味のギャザーの物性ではないためである。
また、おむつ装着時におむつはU字形状に湾曲し、その中に配された立体ギャザーはおむつのU字形状の外周より小さいU字状の軌線となるため、おむつ配設状態の伸張率まで伸張することはほとんどないために、おむつ配設状態の伸張率から減じた地点で評価することは実質的な装着状態での立体ギャザーの挙動を表すには妥当な地点であるといえる。
【0023】
〔おむつ非固定状態の伸張特性〕
実効伸長率における引張荷重、及び引張荷重増加率は、以下のようにして求められる。
おむつ1から、立体ギャザー(固定端と自由端との間の帯状部分)6を切り出して試験片とし、該試験片を、テンシロン引っ張り試験機〔(株)オリエンテック社製、RTC−1150A〕のチャック間に固定して長手方向に、速度300mm/min、ロードセル5kgの条件で伸張させ、その伸張過程における伸張率及び対応する引張荷重をプロットして、伸張率及び引張荷重の関係曲線〔横軸;伸長率(%),縦軸;引張荷重(gf),図5参照〕を得る。
【0024】
得られた関係曲線から、伸張率が20%のときと実効伸張率のときの各々の引張荷重の値を読み取る。また、伸張率が20%から実効伸張率までの関係曲線の勾配、即ち〔引張荷重(実効伸張率時)−引張荷重(20%時)〕/〔実効伸張率(%)−20%〕を算出し、その値を、伸張率が20%から実効伸張率までの間の引張荷重増加率(gf/%)とする。
尚、試験片は、おむつ長手方向の中央部に位置する部分が含まれるように切り出し、また、自然状態、即ち切り出したギャザーが自然に縮んだ状態で、平らな面を持つ板などの上で、負荷をできるだけかけずにギャザーを平らにした場合の長さが少なくとも70mm以上となるように切り出す。好ましくは、おむつ配設状態の伸張率を測定した後のものを使用する。伸張開始時の試験片の初期長(自然状態における長さ,伸張率0%)は50mmとし、該試験片をおむつに配設された状態における伸張率となるまで伸張させる。
【0025】
実効伸張率における引張荷重が20gf未満であると、装着時に立体ギャザーの先端部の起立性が損なわれ、立位での装着時などで立体ギャザーの先端部を股間部に誘導する際に立体ギャザーが倒れてしまったり、被装着者の肌にあたり折れ曲がってしまったりし、正しく装着することが難しくなる。また、被装着者の姿勢が変化した場合立体ギャザーの先端部が被装着者の肌との間に隙間が生じ排泄物がモレる可能性が大きくなる。たとえ、立体ギャザーの先端部が被装着者の肌に隙間なく接している場合でも、立体ギャザーとしての締め付け力が弱いために、排泄物を立体ギャザー間内に閉じ込めようとする隠蔽力が弱く、ギャザー先端部を押しのけて排泄物が外側に移動する可能性も大きくなり、漏れ防止効果として有効であるとはいえない。
実効伸張率における引張荷重が120gf超であると、おむつを展開する時の力が大きく展開しにくいおむつとなり、寝かせてあお向けで装着する場合などでは装着性が悪くなる。また、装着後のおむつの処理についてもおむつが丸まろうとする力が強いため操作性が悪くなる。
【0026】
また、立位での装着では、おむつが股間部に挿入されたときに、テープ部を止着するまでもなくおむつが丸まったり、ズレ落ちてしまったりして装着が難しい。
これらは本発明のようにおむつ配設時の伸張率が大きくなると生じる課題であり、展開時に伸張された立体ギャザーが伸張を開放するように縮もうとして生じ、結果的におむつを丸めてしまう現象である。したがって、本発明では伸張応力をある程度小さくすることで、縮もうとする挙動に対する力を小さくし、縮もうとする現象を遅延させたり、縮んだものを展開するときに必要な力を小さくすることで、装着者の装着性を悪化させないことを達成した。特におむつ配設時の伸張率が同じ条件では伸張応力が支配因子であり、伸張応力が小さいほど伸びやすく、扱いやすいおむつとなる。120gfを超えない程度であれば装着者はおむつを展開するときに容易に展開でき、操作性も損なわないといえる。
【0027】
引張荷重増加率は小さいほうが好ましく、装着されたおむつの立体ギャザーが肌へ密着し、漏れを防止しようとする力が装着者の姿勢の変化や様々な装着方法により大きく変わらない。また、装着時においてもおむつを展開するときに急激な力の変化がなく、展開時に装着者が感じるギャザーの重量感(いわゆる重たさ)がなく、扱いやすいため、寝位・立位ともに装着性が向上できる。
したがって、引張荷重増加率を、伸長率の単位増加量当たりの引張荷重の増加量として計算した場合、引張荷重増加率は、伸長率が0%超から実効伸張率までの総ての地点で1.0(gf/%)以下であることが好ましい。しかしながら、一部の区間では1.0(gf/%)超になる場合がある。そのような区間が伸張率0〜20%程度の部分である場合に、実質的に上述の効果を有するものは本発明の主旨から逸脱するものではない。とはいえこの区間においての引張荷重増加率としての上限は2.0(gf/%)までであることが好ましい。
このような観点から、本発明では、伸張率が20%から実効伸張率の間の引張荷重増加率を規定している。
【0028】
本発明の立体ギャザーは、そこに配する弾性部材が全体で、少なくとも伸長率20%から実効伸長率までの引張荷重増加率が1.0(gf/%)以下で、実効伸長率での引張荷重が20〜120gfとなるものを、不織布製シートに接着固定する方法等によって得ることができる。ここで「全体で」とは、立体ギャザーに複数本弾性部材を配する場合には、「複数本の合計として」という意味である。立体ギャザー用弾性部材としては、糸状のもの(糸ゴム等、好ましくは太さ450dtex以下)、所定幅の帯状のもの(平ゴム等、好ましくは太さと厚みの比が0.1〜1のもの)、薄膜状のもの等を挙げることができ、弾性部材の形成素材としては、天然ゴムの他、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ウレタン等を挙げることができる。また、弾性部材を複数本立体ギャザーに配する場合には、各弾性部材における少なくとも伸長率20%から実効伸長率までの引張荷重増加率が0.5(gf/%)以下で、実効伸長率での引張り荷重が5〜50gfのものを使用することが好ましい。
【0029】
本発明の使い捨ておむつ1によれば、おむつ股下部の実質的な幅を比較的狭くでき、しかもレッグギャザー最外間のキョリも狭くなっているのでおむつを立位で装着する場合に、おむつ股下部の着用者の狭い股間部(両脚間の空間)におむつがスムーズに入り、レッグギャザーも股間に沿い易いので立位での装着性に極めて優れている。しかも、高伸張率で配された低モジュラスの立体ギャザーによって、ギャザーの起立性に優れているため立体ギャザー間の空間が維持されるため、立体ギャザー同士間に、排泄物が充分に保持されると共に、排泄物が立体ギャザーを越えにくくなるので、優れた吸収性能及び漏れ防止性能が得られる。
【0030】
本発明のおむつは従来のおむつよりも股下部の幅を狭くしても股間部からの漏れが生じない点に大きな特徴を有している。そもそも、当業者は最も排尿部に近い股下部を狭くしようとは考えないし、その必要性も従来の寝位で装着するおむつにおいては着用中の装着感を高める範囲でのみ若干くびらせていわゆる砂時計状にする程度しかなかった。これに対して本発明者らは、寝返りをうてるようになった状態から自ら立って歩けるようになるまでのちょうど中間の成長状態の子供に対して、子供と親いずれもがストレスを感じずに利用できるおむつとして、立位で装着できるテープ止めおむつという全く新しい発想を想起した。これに基づき、立位装着が容易でかつ高い漏れ防止性能が両立すべく検討した結果、当業者の常識とは全く逆に敢えて股下部の幅を狭くし、立体ギャザーとレッグギャザーの配置幅、高さ、そして特定の立体ギャザーを配することにより本発明をするに至ったのである。
【0031】
更に、本発明における好ましい実施形態について説明する。
本実施形態の使い捨ておむつ1は、おむつを長手方向に2等分する中央線CL(図1参照)の両側の飽和吸収容量、即ち中央線CLの両側に位置する両部分F,Gの飽和吸収容量の比(部分F/部分G)が45/55〜55/45であり、そのため、第1部Bを着用者の腹側に位置させ、ファスニングテープ5,5を着用者の背側にてランディングゾーン51に止着する装着方法(以下、背側装着ともいう)で装着した場合においても尿漏れが生じない。
即ち、本実施形態の使い捨ておむつ1は、第1部Bを着用者の背側に位置させ、ファスニングテープ5,5を着用者の腹側にてランディングゾーン51に止着する装着方法(以下、腹側装着ともいう)で装着できるのみならず、前記背側装着でも容易に装着することができ、何れの場合において漏れが生じない。装着の向きを問わずに尿漏れが生じないようにする観点から、前記飽和吸収容量の比(部分F/部分G)は48/52〜52/48であることが好ましく、両部分の飽和吸収容量は、両者の差が小さい程好ましい。
【0032】
ここで、おむつの中央線CLの両側の飽和吸収容量は、以下のようにして測定される。
〔飽和吸収容量の測定方法〕
先ず、おむつ1をその長手方向を2等分する中央線CLで、幅方向に切断する。そして、立体ギャザー及びレッグギャザーを切断して除去する。更に、胴回り部に配された伸縮部を切断する。但し、吸収層の構造が破壊又は切断されることがないように留意する。容器から水平に取り出せるように加工した金網に、切断したおむつを載せ、金網ごと重量を測定する。予め側面下部に溶液を排出する開口部を設けた容器内に金網ごとおむつを入れ、排泄開口部を閉じ、0.9重量%の生理食塩水を吸収体が完全に浸漬するように注入する。このときに、おむつの切断端部からポリマー等が脱落しないように注入速度を調節する。完全浸漬後30分放置する。その後、排出開口部を下側にして容器ごと10度傾け、排出開口部を開き、容器内の溶液を排出する。排出が完全に終了するまで30分放置し、その後、容器から金網ごとおむつを取り出し、金網ごと重量を測定する。「試験終了後の重量」−「試験開始前の重量」からおむつの吸収量を算出し、この値を飽和吸収量(g)とする。
【0033】
本実施形態の使い捨ておむつ1における各部の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、吸収体4、及び立体ギャザー形成用のシート材62、ランディングゾーン51形成用のランディングテープ等の形成材料としては、従来、使い捨ておむつに用いられている各種公知の材料を特に制限なく用いることができる。
【0034】
ファスニングテープ5は、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部を有するものでも、粘着剤を塗布して形成した粘着部を有するものでも良い。また、裏面シート3の外表面側を係合性に富む素材により形成し、それをランディングゾーン51として利用することもできる。
【0035】
立体ギャザー形成用の弾性部材61、レッグ部弾性部材71、ウエスト部弾性部材81及び胴回り部弾性部材91としては、それぞれ各種公知の弾性部材を用いることができ、例えば、各弾性部材の形態としては、糸状のもの(糸ゴム等)、所定幅の帯状のもの(平ゴム等)、薄膜状のもの等を挙げることができ、弾性部材の形成素材としては、天然ゴムの他、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ウレタン等を挙げることができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、上記実施形態におけるウエスト部Dには、帯状のウエスト部弾性部材81が配設されてウエスト伸縮部8が形成されているが、これに代えて、図4(a)に示すように、複数本の糸状の弾性部材81を両サイドに亘るように配設することによって、ウエスト伸縮部8を形成することもできる。この場合、複数本の弾性部材は、柔軟なシート材等に固定し、複合伸縮部材として配設することもできる。また、上記実施形態におけるウエスト部弾性部材81及び複数本の胴回り部弾性部材91に代えて、図4(b)に示すように、幅20〜50mmの幅広の帯状弾性部材92を、ウエスト縁部から一対のファスニングテープ同士間の領域に亘るように配設することもできる。
本発明の使い捨ておむつは、幼児(ベビー)用の使い捨ておむつ、特におむつ換えを嫌がる幼児に適している。
【0037】
【実施例】
<実施例1,2、比較例1,2>
図1及び図2に示す形態の使い捨ておむつを製造した。
製造した使い捨ておむつの股下部の最小幅部分における、一対の前記立体ギャザーの固定端同士間の距離W1と一対の前記レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材同士間の距離W2との比(W1/W2)、各立体ギャザーの固定端から前記各レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材までの距離W3、各立体ギャザーの高さW4、及び該最小幅、並びに各立体ギャザーについての、おむつ配設状態における伸張率、おむつ非固定状態での伸張特性を表1に示した。
実施例1,2については、前記比(W1/W2)が、おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って0.67〜0.81であり、また、おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って前記距離W3<前記高さW4であった。
図5は、おむつ非固定状態における立体ギャザーの伸張率と引張荷重(引張力)との関係を示すグラフであり、曲線▲1▼は実施例1,2及び比較例2、曲線▲2▼は比較例1に用いた立体ギャザーの伸縮特性を示す曲線である。
【0038】
【表1】
【0039】
<性能評価>
実施例及び比較例の使い捨ておむつについて、立位装着の容易性、尿漏れ防止性能、軟便空間保持性をそれぞれ下記評価方法及び評価基準で評価した。結果を表2に示した。
1)立位装着の容易性(装着のし易さの評価)
装着方法は、幼児モデルを立たせておいて、紙おむつのファスニングテープを着用者の腹側においてランディングゾーンに止着する方法(腹側装着)とし、立位での装着のし易さを評価した。
(評価基準)
立位での装着においてずれることなくきちんとおへそ位置に装着できた場合を○とし、装着途中ずれておへそ下で止着せざるをえなくなった場合を×とした。
【0040】
2)尿漏れ防止性能(動的股モレ評価法)
腹側装着により幼児腰部モデル(立位で両脚を前後させる歩行運動及び股間部からの人工尿の注入が可能であり、形態的に幼児の腰部を模してあるモデル)に使い捨ておむつを装着し、下記方法で動的股モレ値を測定した。
股モレ値測定においては、先ず使い捨ておむつを上記の幼児モデルに装着し(腹側先端オヘソ位置)、150歩/分の歩行速度で5分間歩行運動させた。その後、歩行運動を停止し、チューブを介しておむつ5g/秒の速度で80gの人工尿を注入し、さらに5分間歩行運動を行なわせた。その後、モデルを横寝にし、5g/秒の速度で40gの人工尿を注入し、40gの注入が終了した時点で漏れていないかを目視にてチェックした。漏れが生じていないものについては、更に40gの人工尿の注入を行ない、この様な操作を漏れるまで繰り返した。そして尿の漏れが観察された時点における人工尿の合計注入量を動的股モレ値とした。
【0041】
3)軟便空間保持性(軟便移動性の評価)
腹側装着により幼児姿勢可変モデル(立位での歩行・座位での脚の開閉・立→座位の姿勢変化運動及び股間部からの人工尿・人工便の注入が可能であり、形態的に幼児の腰部を模してあるモデル)におむつを装着し、下記方法で軟便移動性能評価を行った。
測定方法は、先ず使い捨ておむつを上記の幼児モデルに装着し(おむつの腹側先端をオヘソの位置に合わせた)、150歩/分の歩行速度で5分間歩行運動させた(立位)。その後、歩行運動を停止し、チューブを介しておむつ5g/秒の速度で80gの人工尿を注入し、さらに5分間歩行運動を行なわせた。その後、モデルを座らせ脚を開いた状態で160gの人工便を10g/秒の速度で注入し、歩行・立位→座位の姿勢変化・座位での脚の開閉の活動を5分間繰り返し行なった。紙おむつを開閉し便の移動状態を観察した。
(評価基準)
人工B便が立体ギャザーを越えていた場合は×、越えていなかった場合は○とした。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、立位での装着性に優れ、しかも吸収性能及び漏れ防止性能に優れた、展開型の使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態としての使い捨ておむつを、各部の弾性部材を伸張させ平面状に拡げた状態(緊張状態)を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の使い捨ておむつの股下部の最小幅部分における断面(手方向中央線CLに沿う断面)を示す模式断面図である。
【図3】図3は、図1の使い捨ておむつを、立ち上がった状態の幼児に立位装着する様子を示す図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、本発明の他の実施形態の使い捨ておむつの要部を示す平面図である。
【図5】図5は、おむつ非固定状態における立体ギャザーの伸張率と引張荷重(引張力)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 ファスニングテープ
6 立体ギャザー
61 立体ギャザー弾性部材
7 レッグギャザー
71 レッグ部弾性部材
Claims (3)
- 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在された液保持性の吸収体を備えたおむつにおいて、
立つこと又ははいはいができる幼児用のおむつであり、
長手方向の一方の部位の両側縁部に一対のファスニングテープが設けられており、
長手方向の両側に、一対の立体ギャザー及び一対のレッグギャザーが、各々弾性部材を配設することによって形成されており、
おむつの股下部の最小幅値が100〜240mmであり、
前記股下部の最小幅部分において、一対の前記立体ギャザーの固定端同士間の距離W1と、一対の前記レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材同士間の距離W2との比(W1/W2)が0.67〜0.81であり、且つ、各立体ギャザーの前記固定端から前記各レッグギャザーの最外側に位置する弾性部材までの距離W3が、該各立体ギャザーの高さW4よりも短く、
前記立体ギャザーは100%以上の伸張率で配されており、該立体ギャザーをおむつ非固定状態で伸張させたとき、おむつ配設状態における伸長率(%)から30%減じた伸長率として定義される実効伸張率における引張荷重が20〜120gfであり、伸長率が20%から前記実効伸長率までの間の引張荷重増加率が1.0(gf/%)以下である、立位での装着が容易な幼児用おむつ。 - おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って前記比(W1/W2)が0.67〜0.81の範囲内である請求項1記載の、立位での装着が容易な幼児用おむつ。
- おむつ長手方向の50mm以上の長さに亘って、前記距離W3が前記高さW4よりも短い請求項1又は2記載の、立位での装着が容易な幼児用おむつ。
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