JP3879196B2 - ポリアリーレンスルフィドの精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドの精製方法に関するものである。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、反応終了後のスラリーを特定量より少ない水分量の状態で、特定温度で固液分離し、更に得られた固型分を特定温度に加温した特定量より少ない含水量の有機溶媒で洗浄し、該固型分より母液を特定量以上除去した後、水洗、乾燥等の処理を行って精製することにより、重合の際に副生する低分子量不純物の残存量を従来になく低減でき、優れた力学物性を有するポリアリーレンスルフィドを製造するための精製方法を提供するものである。
【0003】
【従来の技術】
ポリフェニルスルフィドに代表される、ポリアリーレンスルフィドは耐熱性、成形加工性等に優れる性質の活用でその成形物は、近年、電子電子部品、自動車部品等に幅広く利用されている。
【0004】
ポリアリーレンスルフィドは、通常、N−メチルピロリドン等の有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物と硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物とを反応させることによって製造されている。
【0005】
この様なポリアリーレンスルフィドは、通常、生成樹脂中に低分子量のポリアリーレンスルフィドが混入し、成型品強度等の力学的物性を落とす原因となっていた。
【0006】
この様な低分子量体を除去するための精製方法としては、例えば、特公平5−34373号公報には、重合スラリーを50℃から使用する溶媒の沸点までの範囲で濾過し、更にその得られた固型分を50℃以上沸点以下の範囲で洗浄する方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特公平5−34373号公報記載の精製方法では、確かに環状低分子量重合体等の不純物を低減化することはできるものの、重合終了時点において反応スラリー中、有機極性溶媒に対して少なくとも4.5重量%以上の水分を含有するため、不純物の除去が十分なものでなかった。また、水分が存在するため残存スルフィド化合物による精製中のポリマーの劣化という課題もあった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、低分子量不純物を従来になく低減されると共に、精製中のポリマー劣化を防止し、優れた成型品強度等の力学物性を有するポリアリーレンスルフィドを製造するための精製方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、反応終了後のスラリーにおける有機溶媒中の水分含量を2重量%より少ない状態で、かつ、特定温度で固液分離し、更に得られた固型分を特定温度に加温した水分含量2重量%以下の有機溶媒で洗浄し、該固型分より母液を特定量以上除去した後、水洗、乾燥の処理を行って精製することにより、重合の際に副生する低分子量不純物を効果的に除去でき、優れた力学物性を有するポリアリーレンスルフィドを製造できることを見い出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
即ち、本発明は、有機溶媒中で、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて得られる、有機溶媒とポリアリーレンスルフィドを含むスラリーを、
第1工程:スラリー中に含まれる有機溶媒中の水分含有率が2重量%以下の条件下、120℃以上で、かつ、ポリアリーレンスルフィドが溶解する温度以下の温度で固液分離して固型分を得、次いで、
第2工程:得られた固型分を、水分含有率が2重量%以下の有機溶媒で洗浄する、
以上の2工程の精製を行い、次いで水洗、乾燥することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの精製方法に関する。
【0011】
従来の水分量をコントロールしない、即ち水含有率が高い状態で熱時固液分離あるいは有機溶媒による洗浄を行うと、低分子量不純物の除去が効果的には行えず、そのため十分な力学的物性のポリマーが得られない、あるいは溶融した際にガスが発生する等の問題がったが、本発明の方法では、低分子量不純物が効果的に除去でき、優れた力学物性のポリマーを得ることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる有機溶媒とポリアリーレンスルフィドとを含有するスラリーとは、有機極性溶媒中でジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を反応させることにより得られるものであり、種々の公知の方法により得られる。
【0013】
このスラリーの製造において用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、あるいはこれらの混合物等がある。
前記アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記アルカリ金属硫化物は無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよいが、水和物は反応前に脱水工程が必要であるため、この工程の煩雑さがない点から無水物が好ましく、また、工業的に入手が容易な点から水和物が好ましい。
【0014】
上記アルカリ金属硫化物の中では硫化ナトリウムと硫化カリウムが好ましく、特に硫化ナトリウムが反応性に優れる為、好ましい。
【0015】
これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基、或は、硫化水素とアルカリ金属塩基とを反応させることによっても得られる為、これらの反応を行い、引き続き、同一反応系内でジハロゲン化芳香族化合物との反応に供してもよい。勿論、予め反応系外で調製されたものを用いてもかまわない。
【0016】
次に、アルカリ金属水硫化物としては、例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム等が挙げられるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記アルカリ金属水流化物は無水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよいが、水和物及び水溶液は脱水工程が必要となることから、無水物が好ましく、また、入手の容易さの点から無水物が好ましい。
【0017】
上記アルカリ金属水硫化物の中では水硫化ナトリウムと水硫化カリウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが反応性に優れる為、好ましい。
【0018】
これらアルカリ金属水流化物は、硫化水素とアルカリ金属塩基とを反応させることによって得られる為、この反応を行い、引き続き、同一反応系内でジハロゲン化芳香族化合物との反応に供してもよい。また、アルカリ金属硫化物の場合と同様に、予め反応系外で調製されたものを用いてもかまわない。
【0019】
このアルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水流化物の原料として用いられるアルカリ金属塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
上記水酸化アルカリ金属化合物の中では水酸化リチウムと水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。
【0021】
なお、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水流化物中に微量存在する不純物を除去するために上記したアルカリ金属塩基を少量過剰に加えてもさしつかえない。
【0022】
上記スルフィド化剤は無水物でもかまわないが、無水物を使用する場合には、後述するように、通常、少量の水を加えて用いられる。
【0023】
次に、スラリーの製造で用いられるジハロゲン化芳香族化合物としては、ポリアリーレンスルフィドの骨格を形成すべき単量体に相当するものであり、芳香族核と該核上の2つのハロゲン原子置換基とを有するものであって、かつ、アルカリ金属硫化物等のスルフィド化剤による脱ハロゲン化/硫化反応を介して重合体化し得るものである。
【0024】
具体的には、本発明において使用されるジハロゲン化芳香族化合物の例には下式(A)〜(D)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
(式(A)中、Xは、塩素原子、臭素原子、沃素原子またはフッ素原子を、Yは、−OH、−COOH、−R、−OR、−COOR、−COONa、−CN及び−NO2をそれぞれ表わす。尚、ここでRは、炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nは1〜4の整数を表わす。)
【0027】
【化2】
【0028】
(式(B)中、Xは、塩素原子、臭素原子、沃素原子またはフッ素原子を、Yは、−OH、−COOH、−R、−OR、−COOR、−COONa、−CN及び−NO2をそれぞれ表わす。尚、ここでRは、炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、aは0〜6の整数であり、また、Xの置換位置は同一芳香核上であっても、それぞれ異なる芳香核上であってもよい。)
【0029】
【化3】
【0030】
(式(C)中、Xは、塩素原子、臭素原子、沃素原子またはフッ素原子を、Yは、−OH、−COOH、−R、−OR、−COOR、−COONa、−CN及び−NO2をそれぞれ表わす。尚、ここでRは、炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、b及びcは、それぞれ独立的に0〜2の整数、但しb+c=2であり、d及びeはそれぞれ独立的に0〜2の整数である。)
【0031】
【化4】
【0032】
(式(D)中、Xは、塩素原子、臭素原子、沃素原子またはフッ素原子を、Yは、−OH、−COOH、−R、−OR、−COOR、−COONa、−CN
及び−NO2をそれぞれ表わし、Vは、−O−、
【0033】
【化5】
【0034】
−S−、−SO−、−SO2−、−C−及び−Si−をそれぞれ表わす。尚、ここでRは、炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、 R’及びR”は、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、f及びgは、それぞれ独立的に0〜2の整数、但しf+g=2であり、h及びiはそれぞれ独立的に0〜2の整数である。)
【0035】
上記一般式のジハロゲン化芳香族化合物は、特にハロゲン原子として塩素原子、臭素原子が好ましく、これらの具体例としては、例えば、式(A)に属するものとして、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、3,5−ジクロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロニトロベンゼン、2,4−ジクロロニトロベンゼン、2,4−ジクロロアニソール、p−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼン、2,5−ジブロモトルエン、1−メトキシ−2,5−ジブロモベンゼン、4,4’−ジブロモビフェニル、3,5−ジブロモ安息香酸、2,4−ジブロモ安息香酸、2,5−ジブロモニトロベンゼン、2,4−ジブロモニトロベンゼン、2,4−ジブロモアニソール等が挙げられる。
【0036】
また、式(B)に属するものとしては、1,4−ジクロロナフタレン、1,6−ジクロロナフタレン、2,7−ジクロロナフタレン、1,4−ジブロモナフタレン、1,6−ジブロモナフタレン、2,7−ジブロモナフタレン、2,4−ジクロロ−1−ナフトール、1,6−ジブロモ−2−ナフトール、1,4−ジクロロ−5−ナフタレンカルボン酸、2,4−ジクロロ−1−ナフタレンカルボン酸、2,4−ジクロロ−1−メトキシナフタレン、1,6−ジブロモ−2−メトキシナフタレン等があげられ、
【0037】
式(C)に属するものとしては、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジブロモビフェニル、3,5−ジクロロビフェニル、3,5−ジブロモベンゼン等が挙げられ、
【0038】
式(D)に属するものとしては、p,p’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロジフェニルスルフィド、p,p’−ジブロモジフェニルエーテル、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジブロモジフェニルスルホン、4,4’−ジブロモジフェニルスルホキシド、4,4’−ジブロモジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0039】
上記した式(A)〜式(D)で表されるジハロゲン化芳香族化合物のなかでも特に、得られるポリアリーレンスルフィドの強度や耐熱性に優れる点から、式(A)及び式(D)で表されるもの、なかでもp−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼン、4,4’−ジクロルベンゾフェノンおよび4,4’−ジクロルジフェニルスルホン、 p−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、4,4’−ジブロモベンゾフェノンおよび4,4’−ジブロモジフェニルスルホン等が好ましく、とりわけ、p−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼン、4,4’−ジクロルベンゾフェノンおよび4,4’−ジクロルジフェニルスルホンは特に好適に使用される。また、ハロゲン原子の置換位置としてP−位であるものは、とりわけ強度や耐熱性に優れる。また、該化合物はアルキル基がない方が、耐熱性が向上する一方、アルキル基を含む場合は接着性能が良好となる。
【0040】
上記したジハロゲン化芳香族化合物は、任意に組み合わせて使用することにより、2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得ることができる。例えば、p−ジクロルベンゼンと4,4’−ジクロルベンゾフェノンもしくは4,4’−ジクロルフェニルスルホンとを組み合わせて使用すれば、
【0041】
【化6】
【0042】
単位と
【0043】
【化7】
【0044】
単位もしくは
【0045】
【化8】
【0046】
単位とを含んだ共重合物を得ることができる。
【0047】
この様な2種以上のジハロゲン化芳香族化合物を使用した共重合体においては、p−ジハロゲン化ベンゼンをジハロゲン化芳香族化合物中70モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上用いて重合すると種々の物性に優れたポリフェニレンスルフィドが得られる為好ましい。
【0048】
本発明で使用するジハロゲン化芳香族化合物の使用量は使用するスルフィド化剤中の硫黄原子1モル当たり0.8〜1.3モルの範囲が望ましく、特に0.9〜1.10モルの範囲が物性の優れたポリマーを得るのに好ましい。
【0049】
なお、本発明においては、上記したジハロゲン化芳香族化合物の他に、生成重合体の末端を形成させるため、あるいは重合反応ないし分子量を調節するためにモノハロゲン化有機化合物を併用することも、分岐または架橋重合体を形成させるためにトリハロ以上のポリハロゲン化有機化合物を併用してもよい。
【0050】
ここで使用し得る、モノハロゲン化有機化合物としては、例えば、モノクロロベンゼン等が挙げられる。一方、ポリハロゲン化有機化合物としては、トリクロルベンゼン等が挙げられる。
【0051】
また、モノハロゲン化有機化合物またはポリハロゲン化有機化合物の使用量は目的あるいは反応条件によっても異なる為、特に制限されないが、ジハロゲン化芳香族化合物1モルに対して好ましくは0.1モル以下、更に好ましくは0.05モル以下の範囲が挙げられる。
【0052】
上記したジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させる際に用いられる有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、重合反応を不当に阻害しない点から、活性水素を有しない有機溶媒、すなわちアプロチック系有機溶媒であることが好ましい。
【0053】
また、ここで使用し得る有機溶媒は、原料であるジハロゲン化芳香族化合物及びS2-を与えるスルフィド化剤を反応に必要な濃度に容易に溶解することができる溶解能を有することが好ましく、また、この溶媒は原料ジハロゲン化芳香族化合物と同様な脱ハロゲン化/硫化反応に関与しうるものでないことが望ましい。これらの要求特性の点から、具体的には、窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を有する、所謂ヘテロ原子含有極性溶媒であることが好ましい。
【0054】
また、反応系内の水分量の調節が容易である点から、使用する溶媒の沸点は水の沸点より高いことが好ましい。
【0055】
このようなアプロチック系有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、
(1)アミド系溶媒:ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−シクロヘキシルピロリドン(NCP)、N−メチルカプロラクタム(NMC)、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等、
(2)エーテル化ポリエチレングリコール、たとえばポリエチレングリコールジアルキルエーテル(重合度は2000程度まで、アルキル基はC1〜C20程度)等、
(3)スルホキシド系溶媒、たとえばテトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)等、
が挙げられる。
【0056】
前記各種の溶媒の中でも、N−メチルカプロラクタムおよびNMPは、化学的安定性が高く、特に好ましい。
【0057】
上記した有機溶媒の使用量は、使用する溶媒の種類によっても異なるが均一な重合反応が可能な反応系の粘度を保持すること、また、釜収率を高めて生産性を良好に維持するためには、重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄原子1モル当り1.0〜6モルとなる範囲が好ましい。
【0058】
また、上記の生産性を更に考慮すると、重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄原子1モル当り1.2〜5.0モルの範囲が好ましく、また、更に好ましい使用溶媒量は重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄源1モル当り1.5〜4モルとなる範囲が挙げられる。
【0059】
また、当該重合反応においては、系内の水分量は、加水分解反応などの併発を回避させるために、なるべく少ない方がよい。しかしながら、使用するスルフィド化剤が水和物等である場合には、スルフィド化剤を有機極性溶媒中で加熱脱水してもスルフィド化剤1モルに対して1モル以上は系内に残存してしまい、系内の水分を減らすことは困難である。その為、スルフィド化剤が水和物である場合、系内の水分量はスルフィド化剤1モル当たり1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルであることが好ましい。
【0060】
一方、スルフィド化剤として無水のアルカリ金属硫化物を用いる場合は、系内の水分量を任意にコントロールできるが、全く水分がない場合は、スルフィド化剤の溶解性に劣り、重合が安定化しないため、系内水分量は、スルフィド化剤1モル当たり0.05〜2.0モル、好ましくは0.07〜1.5モル、更に好ましくは0.1〜1.0モルの範囲が挙げられる。
【0061】
この無水のアルカリ金属硫化物を用いる場合の、水分量の調整に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水等の反応を阻害するアニオンやカチオン等を除いた水が好ましい。
【0062】
本発明による重合は、有機溶媒中で、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて、有機溶媒とポリアリーレンスルフィドを含むスラリーを得る方法としては、特に限定されないが、具体的には、
▲1▼有機極性溶媒及びスルフィド化剤とを混合し、必要に応じて水を仕込むか若しくは脱水操作を行った後、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機溶媒を加え重合する方法、
▲2▼全原料を仕込、必要に応じて脱水操作を行った後、重合する方法、
▲3▼有機溶媒とジハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、スルフィド化剤を加えながら重合する方法、あるいは、
▲4▼有機溶媒を仕込んだ後、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を加えながら重合する方法等が挙げられる。
【0063】
上記▲1▼〜▲4▼のいずれの場合も200〜300℃、好ましくは210〜280℃の温度に加熱して連続的あるいは、断続的に脱水操作を必要に応じて行いながら0.1〜40時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1〜10時間加熱して行うことが、反応の進行が容易であり好ましい。すなわち、この反応温度が200℃以上においては、反応速度が速くなり、また反応の均一性が著しく良好になる。一方、反応温度を極端に高めると生成ポリマーあるいは溶媒の分解等の副反応が起こりやすくなるが、300℃以下においては、この様な副反応を良好に抑制できる。また、210〜280℃の温度範囲においては、これらの性能バランスが良好なものとなる。
【0064】
また、反応時間は使用した原料の種類や量、あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、0.1時間以上において、十分な高分子量化が可能となる他、未反応成分の量を低減できる。また40時間以下にすることにより生産性を向上させることができる。
【0065】
なお、連続的あるいは断続的に脱水操作を行う場合には、系外に水とともに有機極性溶媒及びジハロゲン化芳香族化合物が留出する可能性があり得る。もちろんそのまま留出させてもかまわないが、精留塔等を用いて有機極性溶媒の系外への留出を抑制し、また、留出したジハロゲン化芳香族化合物を系内に戻して重合することが好ましい。
【0066】
本発明の重合反応においては、接液部がチタンあるいはクロムあるいはジルコニウム等でできた重合缶を用い、通常、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、特に、経済性及び取扱いの容易さの面から窒素が好ましい。
【0067】
反応圧力については、使用した原料及び溶媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存するので一概に規定できないので、特に制限はない。
【0068】
また、反応液の調整及び共重合体の生成反応は一定温度で行なう1段反応でもよいし、段階的に温度を上げていく多段階反応でもよいし、あるいは連続的に温度を変化させていく形式の反応でもかまはない。
【0069】
この様にして得られる、有機溶媒とポリアリーレンスルフィドを含むスラリーは、次いで、第1工程として、スラリー中に含まれる有機溶媒中の水分含有率が2重量%以下の条件下、120℃以上で、かつ、ポリアリーレンスルフィドが溶解する温度以下の温度で固液分離して固型分を得、次いで、第2工程として、得られた固型分を、水分含有率が2重量%以下の有機溶媒で洗浄される。
【0070】
第1工程においては、先ず、スラリー中に含まれる有機極性溶媒中の水分含有率は2重量%以下である。該水分含有率を2重量%以下にする方法としては、
A法.反応時において、無水物であるスルフィド化剤と水分含有率2重量%以下の有機溶媒を使用する方法、
B法.反応時に連続的あるいは断続的に水分を除去し、反応終了時、必要に応じ脱水処理して、スラリー中に含まれる有機極性溶媒中の水分含有率が2重量%以下となる様に調整する方法、
C法.反応時に水分除去を行わずに反応し、反応終了後に水を除去する方法等が挙げられる。
【0071】
尚、上記A法及びB法において、反応直後の状態でスラリー中に含まれる有機極性溶媒中の水分含有率が2重量%以下である場合であっても、もちろん反応終了後に水をさらに除去してもかまわない。
【0072】
上記A法〜C法のなかでも、特に、作業性が良好である点からB法およびC法が好ましく、更には、工業的入手の容易性あるいは反応の制御の容易性の点から、B法として、含水物であるスルフィド化剤を用い、反応時に連続的あるいは断続的に水を除去しながら反応し、反応終了後更に水分除去を行う方法、C法として、含水物であるスルフィド化剤を用い、反応時に水分除去を行わずに反応し、反応終了後に水を除去する方法が好ましい。
【0073】
第1工程における有機溶媒中の水分含有率は2重量%以下であるが、当該水分含有率はできるだけ少ない方が好ましく、なかでも1.5重量%以下、更に1重量%以下であることが、本発明の目的である低分子量不純物の除去が効果的に行われる点から好ましい。
【0074】
また、反応終了後に系内から水を除去する温度は、特に制限されないが、反応終了温度より低く、固液分離する温度以上が好ましい。反応終了温度以下にすることにより、重合反応あるいは分解等の副反応を良好に抑制できる。一方、固液分離する温度以上にすることにより、固液分離する際に、再度スラリーを加温する必要がなくエネルギー的に有利である。特に、当該温度範囲のなかでも、特に、反応終了温度より低く、かつポリマーが析出しない温度条件で行うことが特に好ましい。即ち、ポリマーが析出しない温度で水を除去するとポリマーを析出した際にポリマーの微粒子を低減でき、熱時固液分離の際の作業性が向上する。
【0075】
この水を除去する際、水と共に未反応のジハロゲン化芳香族化合物及び有機溶媒を除去してもかまわない。但し、この際、有機極性溶媒を除去し過ぎると不純物が溶解し難くなったり、あるいは系の粘度が高くなって操作性が悪くなる。従って、水と共に有機極性溶媒を除去する量は、反応に使用した溶媒の種類あるいは量によって異なるので一概に規定できないが、除去する量は反応時の有機溶媒量に対して70重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0076】
尚、ポリマーが析出しない温度で水を除去した場合には、水を除去した後、該混合物をポリマーが析出する温度以下まで冷却する。冷却は段階的に温度を下げていく多段冷却でも良いし、あるいは連続的に温度を下げていく形式の冷却でも良い。冷却開始からポリマー析出終了までに要する時間は、冷却開始温度あるいは該混合物中の各化合物の量によっても異なるので一概に規定できないが、0.01〜20hrの範囲が挙げられる。0.01hr以上では温度制御等が容易となり、一方、20hr以下においては、生産性が良好となる。これらの効果のバランスが良好な点から、なかでも0.05〜10hr、更に0.1〜5hrの範囲が好ましい。
【0077】
この様にしてスラリー中に含まれる有機極性溶媒中の水分含有率を2重量%以下調整した後、該スラリーを固液分離する。
【0078】
この固液分離する温度は120℃以上でポリマーが実質的に溶解する温度以下であればよいが、好ましくは120℃以上190℃以下、更に好ましくは140℃以上180℃以下である。120℃以上においては、本発明の目的である低分子量不純物の除去効果が良好となる。一方、ポリマーが実質的に溶解する温度以上では、固液分離することが不可能である。なお、ここで、このポリマーが実質的に溶解する温度とは、スラリー中に含まれるポリマーの内80%以上が溶解する温度である。
【0079】
固液分離する方法は特に制限されないが、濾過機、遠心分離機等を用いて固液分離する方法が挙げられる。
【0080】
次に、第2工程として、第1工程で得られた固型分を、水分含有率が2重量%以下の有機溶媒で洗浄する。それによって、該固型分に付着した母液を良好に除去することができる。この母液の除去効果に優れる点から、第2工程で使用する有機溶媒は、反応時に使用した有機極性溶媒と同一の溶媒であることが好ましい。
【0081】
この洗浄に用いる溶媒は、加熱して用いることが好ましく、加熱する温度は、120℃以上でポリマーが実質的に溶解する温度以下、好ましくは120℃以上190℃以下、更に好ましくは140℃以上180℃以下の範囲が挙げられる。120℃以上において本発明の目的である低分子量不純物の除去効果が著しく良好になる。その一方、またポリマーが実質的に溶解する温度以下にすることにより、洗浄の際の目的物の損失を防止でき、収量が向上する。
【0082】
また、上記の通り、この第2工程の洗浄の際に用いる有機極性溶媒は反応時に使用した溶媒と同一種類の溶媒が好ましい。同一の溶媒を用いることにより、溶媒回収等の工程が単純化できる。また、使用する有機溶媒中の含水率は、有機極性溶媒中の含水率として2重量%以下である。なかでも、低分子量不純物の低減効果が著しく良好となる点から、なかでも1重量%以下、特に0.5重量%以下であることが好ましい。
【0083】
また、母液付着分を除去する量は、洗浄する前に付着していた母液に対して50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であることが好ましい。この除去量が多いほど、低分子量体含量が少なくなり、力学物性等が優れたものとなる。
【0084】
以上の第2工程を経て得られた固型分は、そのまま水洗してももちろん良いが、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄した後水洗しても良い。
【0085】
固型分を水洗は、第2工程を経て得られた固型分を、必要に応じて溶媒で線状した後、1回または2回以上水で洗浄すればよい。この水洗工程の温度に特に制限はないが、少なくとも1回以上高温で水洗すると優れた機械的物性を発現できるのでより好ましい。この高温で水洗する温度は80℃以上、好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このように高温で水洗を行うと、金属イオン含有量の低減化等が効果的に行える。
【0086】
また、この水洗で使用できる水は、金属イオン含有量が5ppm以下の水が好ましく、そのため蒸留水、イオン交換水等が好ましい。
【0087】
水洗後、乾燥して目的とするポリアリーレンスルフィドを得る。乾燥は、単離したポリアリーレンスルフィドを実質的に水等の溶媒が蒸発する温度に加熱して行う。乾燥は真空下で行なっても良いし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。
【0088】
得られた重合体はそのまま各種成形材料等に利用できるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧化で熱処理することにより増粘することが可能であり、必要に応じてこのような増粘操作を行なった後、各種成形材料等に利用してもよい。この熱処理温度は、処理時間や処理する雰囲気によって異なるので一概に規定できないが、180℃以上の範囲がより増粘速度を高められ、生産性が向上するため好ましい。また、当該熱処理は、押出機等を用いて重合体の融点以上で溶融状態で行っても良い。但し、この場合、重合体の劣化の可能性あるいは作業性等から、融点プラス100℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。
【0089】
本発明により得られた重合体は、従来のポリアリーレンスルフィド同様そのまま射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができる。また、強度、耐熱性、寸法安定性等の性能をさらに改善するために、各種充填材と組み合わせて使用してもよい。
【0090】
充填材としては、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用できる。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用できる。
【0091】
また、成形加工の際に添加剤として本発明の目的を逸脱しない範囲で少量の、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができる。更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラストマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0092】
本発明で得られるポリアリーレンスルフィド及びその組成物は、寸法安定性等が優れるので、例えば、コネクタ、プリント基板、封止成形品などの電気、電子部品、ランプリフレクター、各種電装品部品などの自動車部品、各種建築物や航空機、自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品、カメラ部品、時計部品などの精密部品等の射出成形、圧縮成形、あるいはコンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形などの各種成形加工分野において耐熱性や成形加工性、寸法安定性等の優れた成形材料あるいは繊維、フィルムとして用いられる。
【0093】
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0094】
【実施例】
使用原料
1.スルフィド化剤(アルカリ金属硫化物)
結晶硫化ナトリウム(5水塩)(以下、Na2S・5H2Oと略称する)を使用。
【0095】
2.溶媒
N−メチルピロリドン(以下、NMPと略称する)を使用。
3.ジハロ芳香族化合物
p−ジクロルベンゼン(以下、p−DCBと略称する)を使用。
【0096】
4.水
水道水を蒸留した後イオン交換を施したものを使用。
5.標準物質
母液除去率測定用のN−メチルカプロラクタム(以下、NMCと略称する)を使用。
【0097】
6.オリゴマー含有率測定用溶媒
オリゴマー含有率測定用のテトラヒドロフラン(以下、THFと略称する)を使用。
【0098】
〈物性評価〉
得られた重合体の溶融粘度(η)は、高化式フローテスターを用いて測定した(316℃、剪断速度100/秒、ノズル孔径0.5mm、長さ1.0mm)。オリゴマー含有率の測定はTHF抽出率を測定することにより行った。THF抽出率は、ポリマーを20倍量(重量比)のTHFに分散させ、還流状態で5時間保持し、抽出された液を濃縮乾固し、その量を測定することにより得た。
【0099】
また、重合体の靭性は曲げ試験により評価した。以下に曲げ試験の方法を詳細に記述すると、得られる重合体を小型の押出機を用いて300℃で溶融混練後ペレット状にした後、小型の射出成形機を用いて、金型温度150℃で厚さ2.0mm、幅10.0mm、長さ60.0mmのサンプル片を作成し、このサンプル片を用いて、曲げ試験を行った。曲げ試験は、スパン長30.0mm、試験速度1.5mm/minの測定条件で行った。
【0100】
参考例1
温度センサー、精留塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物受け槽を連結した撹拌翼付ステンレス製(チタンライニング)4リットルオートクレーブにNa2S・5H2O 840.6g(5.0モル)、NMP 1388g(14.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、205℃まで昇温することにより水−NMP混合物を留去した。留出液中の組成はNMP125g、水349g、イオン性硫黄44mmolであった。系を閉じ、ついでこの系を220℃まで昇温しp−DCB 735.0g(5.0モル)をNMP500gに溶かした溶液を2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、220℃で3時間保持した。この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。
【0101】
反応終了後、10分かけて230℃まで冷却し、その温度を保持したまま、30分かけて水−NMP混合物を留去した。留出液中の組成はNMP115g、水89g、DCB18gであった。留去終了後、1℃/分の速度で150℃まで冷却し、その後は放冷した。得られたスラリーを少量サンプリングし、固液分離した後液中の水分を測定すると0.7%であった。
【0102】
また、得られたスラリー400gを4リットルの水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。この固型分を再び4リットルの湯(80℃)で1時間撹拌、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返した。但し、3回目の水洗は160℃で行った。濾過後、熱風乾燥器中(120℃)で8hr乾燥して白色の粉末状のポリマーを71g得た。得られたポリマーの溶融粘度は340ポイズであった。
【0103】
実施例1
[第1工程]
参考例1で得られたスラリー400gにNMP100g(水分含有率0.03重量%)及びNMC100mgを加え(このスラリー中の有機溶媒中の水分含量は表−1に示した)、窒素雰囲気下、撹拌しながら150℃まで加温し、10分間その温度で保持した後、その温度で特製の保温可能な吸引濾過装置で濾過を行った。濾材には330メッシュのステンレス(SUS304)製の金網(直径125mm)を使用した。
【0104】
[第2工程]
濾過して得られた固型分を、予め150℃に加温したNMP200g(水分含有率0.03重量%)で2回洗浄した。固型分を1gサンプリングし、ガスクロマトグラフィーを用いて固型分中のNMC量を定量する事により母液除去率を算出したところ92重量%であった。
【0105】
この様にして得られた固型分を4Lの水に加え50℃1時間撹拌、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返した。但し、3回目の水洗は160℃で行った。濾過後、熱風乾燥器中(120℃)で8hr乾燥して白色の粉末状のポリマーを63g得た。得られたポリマーの溶融粘度は440ポイズであった。
【0106】
得られたポリマー40gをステンレス製のシャーレに入れ、250℃の熱風乾燥機中で時々撹拌しながら熱処理を行った。7hr後、2100ポイズになったところで処理を終わり、熱風乾燥機中よりポリマーを取り出した。このサンプルのTHF抽出率は0.4重量%であった。
【0107】
比較例1
参考例1と同一の装置及び同一の条件で反応を行った。
反応終了後、系を密閉したまま、1℃/分の速度で150℃まで冷却し、その後は放冷した。得られたスラリーを少量サンプリングし、固液分離した後、液中の水分を測定すると5.4重量%であった。この得られた重合スラリー400gにNMP100g(水分含有率0.03重量%)、NMC100mgを加え、実施例1と同様に加温、濾過処理を行った。但し、固型分を洗浄するNMPとしては、水分含有率5重量%以下のNMPを用い、使用量は実施例1に合わせた。母液除去率は91%であった。実施例1と同様に水洗、乾燥を行い白色粉末状のポリマーを64g得た。なお、得られたポリマーの溶融粘度は420ポイズであった。
【0108】
このポリマーを実施例1と同様に熱処理を行い、8hr後、2200ポイズのポリマーを得た。このサンプルのTHF抽出率は0.7重量%であった。
【0109】
比較例2
第1工程及び第2工程において濾過及びNMP洗浄を行う温度を80℃にする以外は実施例1と同様に濾過、洗浄、乾燥を行った。得られたポリマーの溶融粘度は410ポイズであった。
【0110】
このポリマーを実施例1と同様に熱処理を行い、10hr後、2000ポイズのポリマーを得た。このサンプルのTHF抽出率は0.8重量%であった。
【0111】
実施例2及び3
表−2に示す条件で実施例1と同様の方法で、ポリマーを製造し評価した。結果を表−2に示す。
【0112】
実施例4
オートクレーブにNa2S・5H2O 840.6g(5.0モル)、NMP 1388g(14.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、205℃まで昇温することにより水−NMP混合物を留去した。更に、加圧下で脱水操作を継続しながら内温220℃まで昇温し、更にその温度で、脱水操作を継続しながらp−DCB735.0g(5.0モル)をNMP500gに溶かした溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、220℃で脱水しながら4時間保持した。脱水操作中に水と共沸的に留出されるp−DCBは連続的にオートクレーブに返した。反応系を閉じ脱水操作を終了し、この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。留出液の分析をしたところ、NMP187g、水440g、イオン性硫黄57mmolであった。
【0113】
得られた重合スラリーを用いて実施例1の第1工程並びに第2工程と同様に処理したところ、表−2に示したような結果になった。
【0114】
実施例5
4リットルオートクレーブにp−DCB 735.0g(5.0モル)、NMP 1883g(19.0モル)、水 27.0g(1.5モル)を室温で仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで30分かけて昇温し系を閉じ、更に220℃まで1時間かけて昇温し、その温度で内圧を2.2kg/cm2にコントロールしてNa2S・5H2O 840.6g(5.0モル)を4時間かけて滴下及び脱水を行った。滴下及び脱水中に水と共沸的に留出されるp−DCBは連続的にオートクレーブに返した。この後、内圧を2.2kg/cm2に保持したまま250℃まで1時間かけて昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了した。また、この際にも水と共沸的に留出されるp−DCBは連続的にオートクレーブに返した。留出液の分析をしたところ、水が449g、NMP113g、イオン性硫黄68mmolであった。
【0115】
得られた重合スラリーを用いて実施例1と同様に処理したところ、表−2に示したような結果になった。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリアリーレンスルフィドの精製において、低分子量不純物を従来になく低減できる為、成形品強度等の力学物性に極めて優れたポリアリーレンスルフィドを提供できる。
Claims (8)
- 有機溶媒中で、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて得られる、有機溶媒とポリアリーレンスルフィドを含むスラリーを、
第1工程:スラリー中に含まれる有機溶媒中の水分含有率が2重量%以下の条件下、120℃以上で、かつ、ポリアリーレンスルフィドが溶解する温度以下の温度で固液分離して固型分を得、次いで、
第2工程:得られた固型分を、水分含有率が2重量%以下の有機溶媒で洗浄する、
以上の2工程の精製を行い、次いで水洗、乾燥することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの精製方法。 - 第2工程で用いられる有機溶媒が、第1工程で使用したものと同一のものである請求項1記載の精製方法。
- 第2工程において、固型分に付着した母液の70重量%以上を洗浄除去する請求項1又は2のいずれか1つに記載の精製方法。
- 有機溶媒中で、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて得られるスラリーが、該スラリーに含まれる有機極性溶媒中の水分含有率が2重量%以下となる条件で反応させたものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の精製方法。
- 有機溶媒中で、ジハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させて、有機溶媒中の水分含有率が2重量%以上であるスラリーを得、次いで、該水分含有率が2重量%以下となるまで水分を除去した後、第1工程の精製を行う請求項4記載の精製方法。
- スラリー中のポリアリーレンスルフィドが、ポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の精製方法。
- 第1工程及び第2工程で使用される有機溶媒が、アプロチック系有機溶媒である請求項1又は2記載の精製方法。
- 該有機極性溶媒がN−メチル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項7記載の精製方法。
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