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JP3875900B2 - 建設機械の動力装置 - Google Patents

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JP3875900B2
JP3875900B2 JP2002043869A JP2002043869A JP3875900B2 JP 3875900 B2 JP3875900 B2 JP 3875900B2 JP 2002043869 A JP2002043869 A JP 2002043869A JP 2002043869 A JP2002043869 A JP 2002043869A JP 3875900 B2 JP3875900 B2 JP 3875900B2
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守彦 松原
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源としてエンジンとモータとを併用したハイブリッドタイプの油圧ショベル等に用いて好適の、建設機械の動力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、油圧ショベル等の建設機械では動力源として内燃機関(エンジン)が用いられており、法面仕上げ,ハンマー作業等の軽負荷作業や、掘削,吊り上げ作業等の中負荷作業、或いは、重掘削,ダンプ積み込み作業等の重負荷作業が行なわれている。
【0003】
通常、油圧ショベルは中負荷作業を中心に運用され、重負荷作業を行なうのは稼動時間の一部であり、更に、エンジンの最大出力が要求されるのはこの重負荷作業の内でもごく一部でしかない。
しかし、油圧ショベルには、軽負荷から重負荷までの種々の作業に対応できるように、最大負荷の作業を見込んだ大出力容量のエンジンが搭載されており、軽負荷や使用率の大半を占める中負荷の作業を行なう際に燃費の悪化や騒音の発生等の課題があった。
【0004】
また、大出力容量のエンジンを搭載することにより生産コストがかかるという課題もある。
さらに、このような大出力容量のエンジンを用いて法面仕上げ等の軽負荷作業を行なう場合、出力を十分に絞ってエンジン回転数を低くする必要があるが、エンジンの特性上、エンジン回転数が低いほどトルクが小さく不安定でエンストし易い上に回転ムラがある等、操作性の上で好ましくない。そのため、低速トルクを大きくするために行程容積(排気量)を高めたり、回転ムラを小さくするために多気筒化したりする等の改善策が考えられるが、コスト,燃費等の観点から実用的でない。
【0005】
このため、近年、動力源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッドタイプの建設機械の動力装置が開発されている。
このようなハイブリッドタイプの動力装置は、図5に示すように、主な構成として、エンジン1,モータ・ジェネレータ2及びクラッチ31を有するパワーユニット30と、このパワーユニット30によって駆動され作動油を圧送する油圧ポンプpと、圧油の流量,圧力,方向を制御し油圧アクチュエータ20に供給するための制御弁40と、上述のエンジン1,モータ・ジェネレータ2,クラッチ31及び制御弁40等の作動を制御するための制御装置10とをそなえている。
【0006】
なお、油圧アクチュエータ20としては、油圧ショベルの走行用モータ、上部旋回体を旋回させるための旋回モータ、上部旋回体の前面に揺動可能に取付けられた作業装置(ブーム,アーム,バケット)を揺動させるための各種シリンダ(ブームシリンダ,アームシリンダ,バケットシリンダ)等(いずれも図示略)があり、制御弁40を介して圧油が配分されることで所定の動作が行なわれるようになっている。以下では、これらのモータ及び各種シリンダを総称して油圧アクチュエータ20として表記する。
【0007】
ここで、パワーユニット30はハイブリッドタイプの動力発生源であり、電動機機能及び発電機機能を有するモータ・ジェネレータ(M/G)2が、エンジン1の回転出力を断接するクラッチ31を介してエンジン1と直列に接続されている。そして、制御装置10によってクラッチ31の断接が制御されることで、エンジン1及びモータ・ジェネレータ2の出力が各々単独或いは出力加算されて出力され、油圧ポンプpを駆動するようになっている。
【0008】
また、一般にモータ・ジェネレータ2はエンジン1に比べて回転数の変動やムラが少なく、低速ほど高いトルクを出力する(即ち、低速トルクが大きい)特性を有しているため、クラッチ31のON/OFFを制御してエンジン1及びモータ・ジェネレータ2の出力を各々単独或いは出力加算することで、燃費を悪化させることなく、負荷状態に応じて最適な動力を供給することができる。
【0009】
つまり、重負荷時には、エンジン1を作動させるとともにモータ・ジェネレータ2を電動機として機能させ、クラッチ31をON(接続状態)とする。これにより、エンジン1及びモータ・ジェネレータ2の出力が加算され、この加算された大出力によって油圧ポンプpを駆動することで、大動力が必要とされる重負荷作業をスムーズに行なうことができる。
【0010】
また、中負荷時には、エンジン1を最良動作点において作動させるとともにモータ・ジェネレータ2を発電機として機能させ、クラッチ31をONとする。これにより、エンジン動力のみにより油圧アクチュエータ20が駆動される。また、余分な動力はモータ・ジェネレータ2による回生発電用に用いられてインバータ5を介してバッテリ6の充電が行なわれため、燃費を向上させながら騒音や振動の発生を抑えた運転が行なわれる。
【0011】
さらに、軽負荷作業時には、エンジン1の作動を停止してモータ・ジェネレータ2を電動機として機能させ、クラッチ31をOFF(切断状態)とすることで、油圧ポンプpは低速トルクが大きく回転ムラの少ないモータ・ジェネレータ2のみによって円滑に駆動される。これにより、法面仕上げ作業等、一定の動力を確保しながら低速且つ正確な動作が要求されることの多い軽負荷の作業において操作性を向上させることができ、燃費の悪化や騒音の発生も抑制できるのである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のハイブリッドタイプの動力装置では、エンジン1とモータ・ジェネレータ2とがクラッチ31を介して機械的に直列に接続されているため、一般にパワーユニット30は大型化し、設置のために機体にまとまった大きなスペースを確保する必要がある。
【0013】
しかしながら、油圧ショベルの機体には、油圧ポンプpや作動油を貯蔵するためのタンク(図示略)が設置される他、燃料タンク,運転室,制御機器,旋回用アクチュエータ類(いずれも図示略)が所狭しと配置されている。そのため、パワーユニット30のために大きなスペースを割かれる結果、他の機器類のレイアウトが大きく制限されたり、機体の大型化を招いたりする等の課題がある。
【0014】
また、機体を大型化して設置スペースを確保する場合、機体の大きさとその作動能力との関係から、機体の外形寸法には限界がある。
さらに、この種の機械の高度化は日進月歩であり、その作動能力を拡張するために新たに追加された自動制御機器や関連機器を機体に配置する結果、パワーユニット30を設置するためのまとまった大きなスペースを確保することは更に困難となる。
【0015】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、ハイブリッド構造を有しながら機体にコンパクトに設置できるようにした、建設機械の動力装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の建設機械の動力装置は、内燃機関と、モータと、内燃機関の出力軸に一体に接続され、この内燃機関によって駆動されて作動油を油圧アクチュエータに圧送する第1油圧ポンプと、モータの出力軸に一体に接続され、このモータによって駆動されて作動油を油圧アクチュエータに圧送する第2油圧ポンプと、内燃機関又はモータの作動を制御する作動制御手段と、上記第1油圧ポンプから圧送された作動油の流路を変更して上記第2油圧ポンプ側へ供給するための第1供給手段とをそなえ、上記第1油圧ポンプと上記第2油圧ポンプとが上記油圧アクチュエータに対して並列に接続されるとともに、上記モータが、上記第1供給手段により上記第1油圧ポンプから上記第2油圧ポンプ側に供給された作動油によって駆動されて回生発電することを特徴としている。
【0017】
したがって、建設機械の駆動系は、内燃機関及び第1油圧ポンプから構成される小ユニットと、モータ及び第2油圧ポンプから構成される小ユニットとによって構成され、油圧アクチュエータはこれらの小ユニットから圧送された作動油によって駆動される。そして、第1油圧ポンプ又は第2油圧ポンプのいずれか一方が駆動された場合には、油圧アクチュエータは内燃機関又はモータのいずれか一方の動力によって駆動される。また、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプが共に駆動された場合には、油圧アクチュエータは油路を介して出力加算された内燃機関及びモータの動力によって駆動される。
【0018】
このとき、第1油圧ポンプから圧送された作動油が第1供給手段によって第2油圧ポンプ側へ供給されるようにし、この第2油圧ポンプ側へ供給された作動油によって上記モータが回生発電する(請求項)。
この場合、重負荷時には、作動制御手段は内燃機関とモータとを共に作動させ、中負荷時には、作動制御手段が内燃機関のみ作動させるとともに、第1供給手段が第1油圧ポンプから圧送された作動油の一部を第2油圧ポンプ側へ供給し、軽負荷時には、作動制御手段はモータのみ作動させるようにすることが好ましい。
【0019】
これにより、重負荷時には、油圧アクチュエータは、油路を介して出力加算された内燃機関及びモータの動力によって駆動される。また、中負荷時には、油圧アクチュエータは第1油圧ポンプから圧送された作動油によって駆動されるとともに、油圧アクチュエータの駆動に用いられずに余った圧油の動力はモータの回生駆動に利用される。さらに、軽負荷時には、油圧アクチュエータは、低速トルクが大きく回転ムラの少ないモータの動力によって駆動される(請求項)。
【0020】
また、第2供給手段によって第2油圧ポンプから圧送された作動油を第1油圧ポンプの吸引口に供給しうるように構成し、内燃機関を始動させる際に、作動制御手段によってモータを作動させるとともに、第2供給手段によって第2油圧ポンプにより供給された作動油を第1油圧ポンプの吸引口に供給するようにしてもよい。これにより、内燃機関の始動時には、第2油圧ポンプから圧送された作動油が第1油圧ポンプの吸引口に流入して第1油圧ポンプを正転させ、内燃機関が始動する(請求項)。
【0021】
このとき、第2油圧ポンプから圧送される作動油の油圧が所定圧力よりも小さい場合には、禁止手段を用いて、第2供給手段による第1油圧ポンプの吸引口への作動油の供給を禁止することが望ましい(請求項)。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の一実施形態としての建設機械の動力装置について説明すると、図1はその全体構成を示す模式的図、図2はその制御方法を示す図、図3,図4はその作用を説明するためのフローチャートである。なお、図5を用いて説明した従来の技術と同様の部位については同じ符号を付し、その説明を一部省略する。また、図1中、太矢印(白抜き矢印)は油路内の作動油の流れを示し、細矢印は制御信号の流れを示している。
【0023】
本実施形態に係る動力装置は、油圧ショベルに適用され、その動力源としてエンジン1とモータ・ジェネレータ2とを併用するハイブリッド構造を有しており、図1に示すように、主な構成として、エンジン1と、このエンジン1によって駆動されて作動油を圧送する油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)p1と、モータ・ジェネレータ2と、このモータ・ジェネレータ2によって駆動されて作動油を圧送する油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)p2と、油圧ポンプp1,p2から圧送された作動油の流路を切り替えるための制御弁(第1供給手段)3と、油圧ポンプp1への作動油の供給源を切り替えるための切替弁(第2供給手段)4と、エンジン1,モータ・ジェネレータ2の作動を制御するとともに制御弁3,切替弁4の開閉を制御する制御装置10とをそなえている。
【0024】
ここで、エンジン1としては、比較的安価に購入でき油圧ショベルの最大出力よりも小さい中規模容量のエンジンが用いられており、稼動頻度の高い中負荷の作業において最良動作点で運転される。
油圧ポンプp1はエンジン1の出力軸1aに一体に接続され、エンジン動力のみによって駆動されるようになっており、その出力口から油路51を介して制御弁3側へ作動油を圧送するようになっている。また、詳しくは後述するが、エンジン1の始動時には、所定圧力まで加圧された作動油が油圧ポンプp1の吸引口から供給されることにより、エンジン1を正転させるようになっている。
【0025】
モータ・ジェネレータ(M/G)2は電動機機能及び発電機機能を有し、エンジン1とは機械的に分離されて配置されている。そして、インバータ5を介してバッテリ6から供給される電力によって油圧ポンプp2を駆動する電動機として機能する。
油圧ポンプp2はモータ・ジェネレータ2の出力軸2aに一体に接続され、モータ動力のみによって駆動されるようになっており、その出力口には油路52が接続されている。そして、油圧ポンプp1の吐出側油路51と油圧ポンプp2の吐出側油路52とが制御弁3で合流しており、この制御弁3よりも下流に油圧アクチュエータ20が設けられている。また、油圧ポンプp1から圧送された作動油は制御弁3を介して油圧ポンプp2の出力口に流入しうるようになっており、油圧ポンプp2の出力口から流入した圧油によって油圧ポンプp2が逆転し、モータ・ジェネレータ2が回生駆動されるようになっている。
【0026】
制御弁3は油圧ポンプp1及び油圧ポンプp2から吐出される作動油の流路を変更するためのものであり、油路51と油路52との合流部に設けられ、弁31及び弁32から構成されている。そして、エンジン1を作動させるとともにモータ・ジェネレータ2をモータ(電動機)として作動させた状態で弁31,32を共に開弁させることで、油圧ポンプp1,p2から圧送された作動油が合流し、出力加算された圧油が油路53を介して油圧アクチュエータ20へ供給されるようになっている。
【0027】
また、モータ・ジェネレータ2の作動が禁止されエンジン1のみを作動させた状態で弁31,32を共に開弁させることで、油圧ポンプp1から圧送される圧油の全部又は一部が油圧ポンプp2へ分岐し、油圧アクチュエータ20を駆動しながら余分な動力が一部回生発電用に利用されるようになっている。このとき、弁32を閉弁することで、油圧ポンプp1から圧送された圧油の動力を全て油圧アクチュエータ20の駆動に用いることもできる。
【0028】
さらに、モータ・ジェネレータ2のみをモータとして作動させた状態で弁31を閉弁し弁32を開弁することで、油圧ポンプp2から圧送された作動油のみによって油圧アクチュエータ20を駆動できるようになっている。
切替弁4は油路55を介して油圧ポンプp1の吸引口へ供給される作動油の供給源を切り替えるためのものであり、弁41及び弁42から構成されている。すなわち、図1に示すように、油圧ポンプp1の上流側には作動油タンク7が設けられており、上記切替弁4は油圧ポンプp1と作動油タンク7との間に介装されている。また、この切替弁4には、油圧ポンプp2の吐出側油路52から分岐した油路54が接続されており、弁41及び弁42の開閉状態を切り替えることにより、油圧ポンプp1への作動油供給源が切り替えられるようになっている。
【0029】
具体的には、弁41を開弁し弁42を閉弁することで、作動油タンク7に貯蔵されている作動油が油路55を介して油圧ポンプp1の吸引口へ供給される。また、モータ・ジェネレータ2が駆動された状態で弁41を閉弁し弁42を開弁することで、油圧ポンプp2から圧送された作動油が油路54,55を介して油圧ポンプp1の吸引口に流入するようになっている。
【0030】
なお、エンジン1の始動時以外は弁41が開弁され弁42が閉弁された状態になっており、作動油の供給源として作動油タンク7が選択されるようになっている。
また、弁42の下流側(油圧ポンプp2側)の油路内には図示しない圧力センサが設けられており、油圧ポンプp2から供給される作動油の圧力を検出し、制御装置10へ圧力信号を出力するようになっている。
【0031】
制御装置10は、エンジン1及びモータ・ジェネレータ2の作動を制御するとともに、制御弁3及び切替弁4の開閉を制御するためのものであり、本発明における作動制御手段及び禁止手段として機能している。そして、エンジン1及びモータ・ジェネレータ2の作動・停止やその作動時期、或いは、弁31,32及び弁41,42の開弁時期や開閉の組み合わせを制御することで、油圧回路(油路)内を流れる作動油の流量,圧力,方向等を制御し、重負荷,中負荷,軽負荷の各負荷状態に応じて最適な動力を発揮できるようになっている。
【0032】
なお、本動力装置には、負荷状態に応じてこのような組み合わせ操作を、マニュアルによることなく簡単に行なうために、モード選択スイッチ11がそなえられており、オペレータが負荷状態に応じて作業モードを選択できるようになっている。そして、このモード選択スイッチ11で重負荷モード(H),中負荷モード(M),軽負荷モード(L)のいずれかの作業モードを選択することで、それぞれ重負荷作業,中負荷作業,軽負荷作業に最適な制御が行なわれるようになっている。
【0033】
つまり、図2に示すように、重負荷モードが選択された場合には、エンジン1を作動させるとともにモータ・ジェネレータ2をモータとして作動させ、且つ、弁31,32を共に開弁させることにより、油圧ポンプp1,p2から圧送された作動油を合流させ、油路53を介して油圧アクチュエータ20に供給する。これにより、エンジン1及びモータ・ジェネレータ2の動力が油路内で合成され、出力加算された圧油の動力によって油圧アクチュエータ20が駆動されるようになっている。
【0034】
また、中負荷モードが選択された場合には、エンジン1のみが作動し、最良動作点付近で運転が行なわれるようになっている。また、弁31,32が共に開弁され、油圧ポンプp1から圧送された作動油が油路51,53を介して油圧アクチュエータ20に供給される一方、この圧油の一部が油路52を介して油圧ポンプp2の出力口へ分岐され、余分な動力がモータ・ジェネレータ2の回生駆動用に利用されるようになっている。
【0035】
なお、バッテリ6には比重センサ,電圧センサ,電流センサ等(いずれも図示略)の各種センサが取り付けられており、これらのセンサ信号が制御装置10に入力されるようになっている。そして、制御装置10ではこれらのセンサ信号に基づいてバッテリ充電状態を検知し、バッテリ6がフル充電状態になった場合には、弁32を閉弁して油路52への分岐を禁止するようになっている。
【0036】
さらに、軽負荷モードが選択された場合には、低速トルクが大きく回転ムラの少ないモータ・ジェネレータ2のみモータとして作動させる。そして、弁31が閉弁され弁32が開弁され、油圧ポンプp2から圧送された作動油が油路52,53を介して全て油圧アクチュエータ20に供給されるようになっている。
また、エンジン1を始動させる場合には、モータ・ジェネレータ2をモータとして作動させるとともに弁32が閉弁され、油圧ポンプp2から圧送された作動油が油路54を介して全て切替弁4側へ流入するようになっている。この際、弁42は下流側の油路54内の作動油が所定圧力以上となるまで閉弁状態とされ、油圧が所定圧力以上となったことが検知されると開弁するように制御されるようになっている。これにより、高圧の作動油を油路54,55を介して油圧ポンプp1の吸引口へ流入させることができ、圧油動力を無駄なく利用でき、又、エンジン1をスムーズに始動させることができるのである。
【0037】
本発明の一実施形態としての建設機械の動力装置は、上述のように構成されているので、制御装置10によって例えば図3,図4に示すフローチャートに沿って制御が行なわれる。
まず、ステップS1でモード選択スイッチ11による作業モードの選択が行なわれ、オペレータによって重負荷モード(H)が選択された場合、ステップS2,S3でエンジン1を作動させるとともにモータ・ジェネレータ2をモータとして作動させる。
【0038】
ここで、ステップS2におけるエンジン1の作動は図4に示されるようなエンジン作動ルーチンに従って行なわれ、ステップS20でエンジン1の作動状態が判定される。このとき、エンジン1が既に作動中であれば作動が継続され、エンジン1が未始動状態であれば、ステップS21でモータ・ジェネレータ2がモータとして作動するとともに、ステップS22で弁32が閉弁され、油圧ポンプp2から圧送された作動油を油路54を介して全て切替弁4側へ供給される。
【0039】
そして、ステップS23で圧力センサによって検知された弁42の下流側(油圧ポンプp2側)の油圧が所定圧力以上になったか否かが判定され、この油圧が所定圧力よりも小さい場合には、ステップS24で弁42を閉弁させ、油圧ポンプp2から油圧ポンプp1への圧油の供給が禁止される。一方、この油圧が所定圧力以上の場合には、ステップS25で弁42が開弁されるとともに弁41が閉弁され、高圧状態の作動油が油路55を介して油圧ポンプp1の吸引口へ圧送される。これにより、油圧ポンプp1が正転し、エンジン1が始動する。
【0040】
このようにエンジン1が作動された後、ステップS3でモータ・ジェネレータ2をモータとして作動させ、ステップS4で弁31,32が共に開弁される。これにより、油圧ポンプp1,p2から圧送された圧油が合流し、出力加算された圧油が油路53を介して油圧アクチュエータ20へ供給される。
また、ステップS1で中負荷モード(M)が選択された場合、ステップS5で、図4に示されるようなエンジン作動ルーチンに従ってエンジン1が作動され、エンジン1の最良動作点において運転が行なわれる。そして、ステップS6で弁31,32が共に開弁され、油圧ポンプp1から圧送された作動油が油路51,53を介して単独で油圧アクチュエータ20へ供給される。
【0041】
このとき、負荷が所定値を下回った場合には油圧ポンプp1から圧送された圧油が油路52を介して一部油圧ポンプp2の出力口へ分岐し、分岐した圧油の動力によって油圧ポンプp2が駆動され、モータ・ジェネレータ2によって回生発電が行なわれる。そして、バッテリ6がフル充電状態となったことが検知されると弁32が閉弁され、圧油は全て油圧アクチュエータ20へ供給される。
【0042】
さらに、ステップS1で軽負荷モード(L)が選択された場合、ステップS7でエンジン1の作動が停止され、ステップS8でモータ・ジェネレータ2を作動する。そして、ステップS9で弁31が閉弁されるとともに弁32が開弁され、油圧ポンプp2から圧送された作動油が油路52,53を介して全て油圧アクチュエータ20へ供給される。
【0043】
したがって、本実施形態の建設機械の動力装置によれば、油圧アクチュエータ20の駆動系(図5に示す従来技術におけるパワーユニット30に相当する)が、油路51〜55を介して接続された二つの小ユニット(即ち、エンジン1及び油圧ポンプp1によって構成される小ユニットと、モータ・ジェネレータ2及び油圧ポンプp2によって構成される小ユニット)に分割され、それぞれ独立に設置することができるため、まとまった大きな設置スペースを確保する必要がない。
【0044】
つまり、エンジン1とモータ・ジェネレータ2とが機械的に分離され、油路53内で各動力が合成されるようになっているため、機体上に配置される他の機器類と同様に、各小ユニットに対してそれぞれ小さな設置スペースが確保されればよく、レイアウトの自由度を上げることができ、機体上のスペースを無駄なく利用することができるのである。
【0045】
また、中負荷作業時に、エンジン1の最良動作点付近で油圧ポンプp1を駆動し油圧アクチュエータ20に圧油を供給するとともに、この圧油の一部を油路52を介して油圧ポンプp2側へ流入するようにしているため、中負荷作業で用いられなかった余分な動力がモータ・ジェネレータ2での回生発電用に利用され、燃費を更に向上させることができる。
【0046】
さらに、切替弁4を設けて油圧ポンプp2から圧送された作動油を油路54,55を介して油圧ポンプp1の吸引口に流入しうるようにしているため、エンジン1の始動時に所定圧力以上に加圧された高圧の作動油で油圧ポンプp1を正転させることで、エンジン1を始動させることができる。このため、モータ・ジェネレータ2をエンジン1のスタータとして流用でき、別途スタータ・モータを設ける必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0047】
この他、本動力装置はエンジン1とモータ・ジェネレータ2とを併用するハイブリッド構造を有するため、このようなハイブリッド構造の動力装置に見られる一般的な利点を有することはいうまでもない。
例えば、最大負荷の作業を見込んだ大出力容量のエンジンを搭載する必要がなく、エンジン1として安価に購入でき使用率の大半を占める中負荷の作業の際に最良動作点で動作しうる中規模容量のものを用いることができる。これにより、燃費を向上させ騒音の発生を防止するとともに製造コストを低減できる。
【0048】
また、ダンプ待ち時等の作業待機時でもモータ・ジェネレータ2の動力或いはバッテリ6によりエアコン等の電気機器を使用することが可能である。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、エンジン1と同軸上に、モータ・ジェネレータ2とは別に、電動機機能及び発電機機能を有するモータMを設けてもよい。そして、このモータMの作動と上記実施形態におけるエンジン1,モータ・ジェネレータ2の作動とを組み合わせることで、負荷状態に応じて更に最適な動力源を構成することができる。例えば、最大負荷の作業を行なう場合には、エンジン1,モータ・ジェネレータ2,モータMを作動させることで、稼動頻度の少ない最大負荷作業において燃費の悪化を招くことなく作業性を向上させることができるのである。
【0049】
また、エンジン動力によりモータMを回生駆動してバッテリ充電を行なうことで、軽負荷作業時等、モータ・ジェネレータ2を作動させた状態でもバッテリ充電を行なうことができ、バッテリ残量の急激な低下を防ぐことができる。なお、このモータMをエンジン1始動用のスタータ・モータとして機能させることも勿論可能である。
【0050】
さらに、オペレータが負荷状態に応じて作業モードを選択する代わりに、制御装置10が、図示しない各種センサから入力される運転情報,モニタリング装置から入力されるモニタリング信号,故障診断装置から入力される故障情報等に基づいて作業モードを自動的に選択するようにしてもよい。つまり、制御装置10は、エンジン回転数やポンプ吐出圧等の運転情報から負荷状態を判断し、故障情報等を考慮して自動的に作業モードを選択する。これにより、オペレータの監視負担を減らし、判断ミスや操作ミスにより運転が中断する事態を回避することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明によれば、内燃機関及び第1油圧ポンプにより構成される小ユニットと、モータ及び第2油圧ポンプにより構成される小ユニットとからなる二つの小ユニットが油路を介して油圧アクチュエータに対して並列に接続され、内燃機関及びモータの各動力は油圧回路上で合成されるようになっているため、建設機械の機体上に設置する場合、各小ユニット毎にそれぞれ独立に配置することができる。このため、設置の際に各小ユニット毎にそれぞれ小さなスペースが確保されればよく、レイアウトの自由度を向上させることができ、機体上のスペースを無駄なく利用することができる。
【0052】
また、第1供給手段によって第1油圧ポンプから圧送された作動油の一部を第2油圧ポンプ側へ供給しモータを回生駆動しうるようにすることで、油圧アクチュエータを駆動する際に余った圧油の動力を無駄なく活用することができ、燃費を向上させることができる(請求項)。
この場合、大動力の必要とされる重負荷の作業において内燃機関とモータとを共に作動させることで、油路を介して出力加算された内燃機関及びモータの動力によって油圧アクチュエータをスムーズに駆動させることができる。また、中負荷の作業において、油圧アクチュエータを内燃機関の動力のみにより駆動するとともに、余った圧油の動力によってモータを回生駆動することで、動力を無駄なく活用することができ、燃費を向上させることができる。さらに、比較的大きな低速トルクを必要とし、且つ、円滑な操作が必要とされる軽負荷の作業において、油圧アクチュエータをモータ動力のみによって駆動することで、作業性を向上させることができる(請求項)。
【0053】
また、内燃機関を始動させる際に、モータ動力によって第2油圧ポンプを作動させ、この第2油圧ポンプから圧送された作動油を第2供給手段によって第1油圧ポンプの吸引口に供給することで、モータを内燃機関のスタータとして流用することができる。そのため、別途スタータ・モータ等を設ける必要がなく、製造コストを低減することができる(請求項)。
【0054】
このとき、油圧が所定圧力以上になるまで第1油圧ポンプへの作動油の供給を禁止することで、圧油の動力を効率的に利用することができ、又、内燃機関のスムーズな始動が可能となる(請求項)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の動力装置の全体構成を示す模式図であり、図7に対応する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る建設機械の動力装置の制御方法を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る建設機械の動力装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る建設機械の動力装置の作用を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来の建設機械の動力装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 モータ・ジェネレータ(モータ)
3 制御弁(第1供給手段)
4 切替弁(第2供給手段)
10 制御装置(作動制御手段及び禁止手段)
20 油圧アクチュエータ
p1 油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)
p2 油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)

Claims (4)

  1. 内燃機関と、
    モータと、
    上記内燃機関の出力軸に一体に接続され、上記内燃機関によって駆動されて作動油を油圧アクチュエータに圧送する第1油圧ポンプと、
    上記モータの出力軸に一体に接続され、上記モータによって駆動されて作動油を上記油圧アクチュエータに圧送する第2油圧ポンプと、
    上記内燃機関又は上記モータの作動を制御する作動制御手段と
    上記第1油圧ポンプから圧送された作動油の流路を変更して上記第2油圧ポンプ側へ供給するための第1供給手段とをそなえ、
    上記第1油圧ポンプと上記第2油圧ポンプとが上記油圧アクチュエータに対して並列に接続されるとともに、
    上記モータが、上記第1供給手段により上記第1油圧ポンプから上記第2油圧ポンプ側に供給された作動油によって駆動されて回生発電する
    ことを特徴とする、建設機械の動力装置。
  2. 重負荷時には、上記作動制御手段は上記内燃機関と上記モータとを共に作動させ、
    中負荷時には、上記作動制御手段は上記内燃機関のみ作動させるとともに、上記第1供給手段は上記第1油圧ポンプから圧送された作動油の一部を上記第2油圧ポンプ側へ供給し、
    軽負荷時には、上記作動制御手段は上記モータのみ作動させる
    ことを特徴とする、請求項記載の建設機械の動力装置。
  3. 上記第2油圧ポンプから圧送された作動油を上記第1油圧ポンプの吸引口に供給しうる第2供給手段を更にそなえ、
    上記内燃機関を始動させる際に、上記作動制御手段は上記モータを作動させるとともに、上記第2供給手段は上記第2油圧ポンプにより供給された作動油を上記第1油圧ポンプの吸引口に供給することを特徴とする、請求項1又は2記載の建設機械の動力装置。
  4. 上記第2油圧ポンプから圧送された作動油が所定圧力よりも小さい場合に、上記第2供給手段による上記第1油圧ポンプの吸引口への作動油の供給を禁止する禁止手段をそなえたことを特徴とする、請求項記載の建設機械の動力装置。
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