JP3861486B2 - ハイブリッド車の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数の動力源および変速機を備えているハイブリッド車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両の動力源として一般に使用されている内燃機関(エンジン)に加えて、第2の動力源として電動機を搭載した車両が開発されている。この種の車両では、電動機の出力する動力が、車両の走行のためには必ずしも充分ではないが、電動機の出力の制御性がよいこと、電動機を発電機として機能させればエネルギの回生をおこなうことできること、電動機は排ガスを生じないことなどの利点を生かして電動機を使用するように構成している。
【0003】
このように、エンジンおよび電動機を動力源とするハイブリッド車の一例が特開平6−54409号公報に記載されている。この公報に記載されたハイブリッド車においては、車両が電動機の駆動により走行している場合も、エンジンオイルおよび冷却水の少なくとも一方が加熱されて暖められているので、電動機の駆動モードからエンジンの駆動モードに切り換えられたときに、エンジンの温度が既に高くなっており、エンジンの始動性が向上するものとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に記載されているようなハイブリッド車において、車両の状態に応じてエンジン駆動モードと電動機駆動モードとが相互に切り換えられた場合は、ドライブトレーンにおいてトルク変動が生じ、このトルク変動が車輪に伝達されてショックを招く可能性がある。しかしながら、上記公報に記載されたハイブリッド車においては、エンジンの始動性についての考慮はなされているものの、モードの切り換えにともなうトルク変動については考慮がなされておらず、結果的に上記のような問題点を改善するには至らなかった。
【0005】
この発明は上記課題を解決するためのもので、エンジンおよび電動機を有するハイブリッド車において、変速機が駆動ポジションにある状態でエンジンを始動する場合のショックを抑制することの可能なハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、車輪に対してトルクを伝達することの可能なエンジンおよび電動機と、このエンジンおよび電動機と前記車輪との間に配置され、前記トルクを前記車輪に伝達する駆動ポジションを選択可能な変速機とを有し、前記駆動ポジションが選択されている場合に、前記エンジンを停止状態から運転状態に変更することの可能なハイブリッド車の制御装置において、前記駆動ポジションが選択されかつ車両が停止しているとともに運転者が車両を発進させる意図がない状態で前記エンジンが始動指令に基づいて始動される場合は、前記変速機の変速比を最大変速比よりも小さく設定し、前記駆動ポジションが選択されかつ車両が停止しているとともに運転者により発進操作が行われていることによって運転者が車両を発進させることを意図している状態で前記エンジンが始動指令に基づいて始動される場合は、前記変速機の変速比として最大変速比を設定する変速比制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1の発明によれば、駆動ポジションが選択され、かつ、車両が停止している状態で始動指令に基づいてエンジンが始動される場合は、運転者に車両を発進させる意図がないのであれば、変速機の変速比が最大変速比よりも小さく制御されるため、エンジンの始動にともなって変速機から出力されるトルクの変動が抑制される。これに対して、運転者により発進操作がおこなわれていることによって運転者が車両を発進させることを意図している場合は、変速機の変速比が最大変速比に制御される。したがって、運転者の発進意図に適合したトルクが発生する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記運転者が車両を発進させる意図および発進操作の有無の判断は、アクセル操作に基づいて行われるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の作用に加えて、アクセル操作の有無に基づいて運転者の発進意図および発進操作の有無を判断することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車の基本的な構成を示している。ここに示す例は、エンジン1の出力側にモータ・ジェネレータ(MG)2が配置され、モータ・ジェネレータ2の出力側にトルクコンバータ(T/C)5を介して自動変速機6が配置されている。エンジン1は、燃料の燃焼によって動力を出力する形式の装置であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのほかに、液化石油ガスや天然ガスなどのガス燃料を燃焼させるエンジンなどがその例である。
【0011】
図3は、エンジン1からトルクコンバータ5に至るパワートレーンの構成を示すブロック図であり、図4はエンジン1から自動変速機6に至るパワートレーンのスケルトン図である。エンジン1のクランクシャフト13にフライホイール3が連結されているとともに、このフライホイール3に制振機構(ダンパ)4が連結されている。また、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との間には、係合・解放可能なクラッチ100が設けられている。
【0012】
モータ・ジェネレータ2は、エンジン1とは異なる種類の動力源であり、電気的エネルギを回転運動などの運動エネルギに変換して出力することのできる電動機としての機能と、運動エネルギを電気的エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを有する。前記モータ・ジェネレータ2として、例えば永久磁石型同期モータが使用され、その出力側部材であるロータの回転角度を検出するためのレゾルバ7がモータ・ジェネレータ2と並列に配列されている。そして、レゾルバ7のロータもモータ・ジェネレータ2のロータと同様に、ダンパ4とトルクコンバータ5とを連結している部材もしくはトルクコンバータ5の入力側の部材に連結されている。
【0013】
さらに、モータ・ジェネレータ2にはインバータ101を介してバッテリ102が接続され、モータ・ジェネレータ2およびインバータ101ならびにバッテリ102を制御するコントローラ103が設けられている。前記インバータ101は、バッテリ102の直流電流を3相交流電流に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する一方、モータ・ジェネレータ2で発電された3相交流電流を直流電流に変換してバッテリ102に供給する3相ブリッジ回路を備えている。この3相ブリッジ回路は、例えば6個のパワートランジスタを電気的に接続して構成され、これらのパワートランジスタのオン・オフを切り換えることにより、モータ・ジェネレータ2とバッテリ102との間の電流の向きを切り換える。このようにして、3相交流電流と直流電流との相互の変換と、モータ・ジェネレータ2に印加される3相交流電流の周波数の調整と、モータ・ジェネレータ2に印加される3相交流電流の大きさの調整と、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクの大きさの調整とがおこなわれる。
【0014】
そして、モータ・ジェネレータ2を電動機として機能させる場合は、バッテリ102からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する。また、モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合は、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ101により直流電圧に変換してバッテリ102に充電する。さらに、コントローラ103は、バッテリ102からモータ・ジェネレータ2に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ2により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ103は、モータ・ジェネレータ2の回転数を制御する機能と、バッテリ102の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0015】
上記のモータ・ジェネレータ2は、エンジン1を始動させる機能と、車輪104に伝達する動力を出力する機能と、車輪104から入力される運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有する。このモータ・ジェネレータ2によりエンジン1を始動させる場合はクラッチ100が係合される。さらに、エンジン1を始動させるためのスタータモータ1Cが別途設けられている。
【0016】
一方、前記トルクコンバータ5は、フロントカバー33、ポンプインペラ35、タービンランナ48、ステータ35A、一方向クラッチ43、ロックアップクラッチ49などを有する公知の構造のものである。また、前記自動変速機6は変速機入力軸44を有し、その先端部にハブ46が取り付けられている。そして、このハブ46に対して、タービンランナ48とロックアップクラッチ49とが連結されている。また、自動変速機6は、後述する歯車変速機構55と油圧制御装置39とを備えており、歯車変速機構55から後方側に延びた出力軸32を介して車輪32Aにトルクを出力するようになっている。
【0017】
さらに、油圧制御装置39は、前記ロックアップクラッチ49の係合・解放の制御および変速制御ならびに摩擦係合装置の係合圧の制御をおこなうためのものであって、複数の電磁バルブや切り換えバルブならびに調圧バルブを備え、電磁バルブを電気的に制御することにより、上記の各制御を実行するように構成されている。なお、この油圧制御装置39としては、従来知られている自動変速機用の油圧制御装置を採用することができる。油圧制御装置39に供給される油圧は、エンジン1の動力により駆動される機械式オイルポンプ1Gにより発生することが可能である。
【0018】
また、この実施形態においては、モータ・ジェネレータ2の他にモータ・ジェネレータ1Fが設けられており、このモータ・ジェネレータ1Fにより駆動される電動オイルポンプ1Dが設けられている。さらに、電動オイルポンプ1Dおよび機械式オイルポンプ1Gと、油圧制御装置39との油圧回路を選択的に切り換える切換弁(図示せず)が設けられている。そして、エンジン1が停止して機械式オイルポンプ1Gが停止した場合は、電動オイルポンプ1Dにより発生した油圧を、油圧制御装置39の油圧回路に供給することにより、自動変速機6の変速比の制御もしくはロックアップクラッチ49の係合・解放制御をおこなうことが可能なように構成されている。
【0019】
図4に示す自動変速機6は、後進段を含む複数の変速段、具体的には前進5段・後進1段の変速段を設定することが可能である。すなわち、自動変速機6は、トルクコンバータ5に続けて副変速部61と、主変速部62とを備えている。その副変速部61は、いわゆるオーバードライブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構63によって構成され、キャリヤ64が前記変速機入力軸44に連結され、またこのキャリヤ64とサンギヤ65との間に一方向クラッチF0 と一体化クラッチC0 とが並列に配置されている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ65がキャリヤ64に対して相対的に正回転(変速機入力軸44の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ65の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部61の出力要素であるリングギヤ66が、主変速部62の入力要素である中間軸67に接続されている。
【0020】
したがって副変速部61は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構63の全体が一体となって回転するため、中間軸67が変速機入力軸44と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ65の回転を止めた状態では、リングギヤ66が変速機入力軸44に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0021】
他方、主変速部62は三組の遊星歯車機構70,80,90を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構70のサンギヤ71と第2遊星歯車機構80のサンギヤ81とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構70のリングギヤ73と第2遊星歯車機構80のキャリヤ82と第3遊星歯車機構90のキャリヤ92との三者が連結され、かつそのキャリヤ92に出力軸57が連結されている。さらに第2遊星歯車機構80のリングギヤ83が第3遊星歯車機構90のサンギヤ91に連結されている。
【0022】
この主変速部62の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構80のリングギヤ83および第3遊星歯車機構90のサンギヤ91と中間軸67との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構70のサンギヤ71および第2遊星歯車機構80のサンギヤ81と中間軸67との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0023】
つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構70および第2遊星歯車機構80のサンギヤ71,81の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ71,81(すなわち共通サンギヤ軸)とトランスミッションハウジング10との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ71,81が逆回転(変速機入力軸44の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。
【0024】
多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構70のキャリヤ72とトランスミッションハウジング10との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構90のリングギヤ93の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがトランスミッションハウジング10との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ93が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0025】
上述した各変速部61,62の回転部材のうち副変速部61のクラッチC0 の回転数を検出するタービン回転数センサ68と、自動変速機6の出力軸32の回転数を検出する出力軸回転数(車速)センサ69とが設けられている。そして、出力軸32にはプロペラシャフト(図示せず)などの動力伝達装置が接続され、この動力伝達装置を介して動力が車輪32Aに伝達されるように構成されている。
【0026】
上記の自動変速機6では、各クラッチやブレーキを図5の作動図表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図5において○印は係合状態、空欄は解放状態、◎印はエンジンブレーキ時の係合状態、△印は係合するものの動力伝達に関係しないことをそれぞれ示す。
【0027】
また自動変速機6は、シフトレバー4Cをマニュアル操作することにより、例えばP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションを選択することが可能である。
【0028】
ここで、Dポジションは車速やアクセル開度などの車両の走行状態に基づいて前進第1速ないし第5速を設定するためのポジションであり、また4ポジションは、第1速ないし第4速、3ポジションは第1速ないし第3速、2ポジションは第1速および第2速、Lポジションは第1速をそれぞれ設定するためのポジションである。そして、摩擦係合装置の係合・解放状態の制御により、エンジン1またはモータ・ジェネレータ2のトルクの少なくとも一方を出力軸32に伝達することの不可能な非駆動ポジションには、Pポジション、Nポジションが含まれる。これに対して入力トルクを出力軸32に伝達することの可能な駆動ポジションには、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが含まれる。
【0029】
なお、3ポジションないしLポジションは、エンジンブレーキレンジを設定するポジションであり、それぞれのポジションで設定可能な変速段のうち最も高速側の変速段でエンジンブレーキを効かせるように構成されている。そして、自動変速機6は、前進段の第1速で最大変速比が設定され、以下、第2速から第5速へと変速段を高速段側に変更することにともなって、変速比が段階的に小さくなる、いわゆる有段式の自動変速機である。
【0030】
上記のエンジン1、モータ・ジェネレータ2、自動変速機6、クラッチ100などの各装置は、車両の状態を示す各種の検出信号や、予め設定されているデータならびに制御パターンに基づいて制御される。例えば図6に示すように、マイクロコンピュータを主体とする総合制御装置(ECU)60に各種の信号を入力し、その入力された信号に基づく演算結果を制御信号として出力するようになっている。
【0031】
この入力信号の例を挙げれば、ABS(アンチロックブレーキシステム)コンピュータからの信号、車両安定化制御(VSC:商標)コンピュータからの信号、エンジン回転数NE の信号、エンジン水温の信号、イグニッションスイッチからの信号、バッテリ102のSOC(State of Charge:充電状態)信号、アクセルペダル1Aの操作量を示すアクセル開度の信号、エンジン1の吸気管に配置されている電子スロットルバルブ1Bの開度を示すスロットル開度信号、デフォッガのオン・オフ信号、エアコンのオン・オフ信号、車速信号、自動変速機6の作動油温の信号、シフトレバー4Cの操作を示すシフトポジション信号、サイドブレーキのオン・オフ信号、フットブレーキペダル1Eのオン・オフ信号、触媒(排気浄化触媒)温度信号、カム角センサからの信号、スポーツシフト信号、車両加速度センサからの信号、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクを調整するための動力源ブレーキ力スイッチからの信号、タービン回転数NT センサ68からの信号、レゾルバ7の信号などである。
【0032】
また、出力信号の例を挙げると、クラッチ100への制御信号、点火装置への制御信号、燃料噴射装置への制御信号、コントローラ103への信号、スタータモータ1Cへの信号、油圧制御装置39の自動変速機(AT)ソレノイドへの信号、油圧制御装置39のATライン圧コントロールソレノイドへの信号、ABSアクチュエータへの信号、モータ・ジェネレータ1Fを制御する信号、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止をそれぞれ別個に表示する動力源インジケータへの信号、スポートモードインジケータへの信号、VSCアクチュエータへの信号、油圧制御装置39のATロックアップコントロールバルブへの信号などである。
【0033】
そして、アクセル開度、シフトポジション、車速、フットブレーキペダルのオン・オフなどの信号が総合制御装置60に入力されると、これらの信号に対応するエンジン出力、モータ・ジェネレータ2の出力が演算され、総合制御装置60から制御信号が出力されて車両の駆動力が制御される。例えば、アクセル開度および車速をパラメータとするマップに基づいて、駆動力要求を演算するとともに、この駆動力要求の全部をエンジン1で発生させる駆動モードと、加速時などのように、駆動力要求の一部をエンジン1で発生させ、その不足分をモータ・ジェネレータ2の動力により補う駆動モードと、発進時などのように、エンジン効率の低い状態において、駆動力要求の全部をモータ・ジェネレータ2により発生させる駆動モードとを選択することが可能である。なお、これらの駆動モードの変更にともなうエンジン1またはモータ・ジェネレータ2の駆動・停止は、イグニッションスイッチの信号以外の条件に基づいておこなうことが可能である。
【0034】
また、総合制御装置60においては、フットブレーキペダル1Eの信号、車速などに基づいて車両に対する減速要求が演算され、その減速要求に対応して油圧ブレーキ装置(図示せず)により負担するべき制動力と、モータ・ジェネレータ2により負担するべき制動力(回生制動トルク)とが演算される。上記のように各駆動モードのいずれかを選択する場合、もしくはモータ・ジェネレータ2による回生制動をおこなう場合は、クラッチ100が例えば次のように制御される。まず少なくともエンジン1の動力を車輪32Aに伝達する場合は、クラッチ100が係合される。モータ・ジェネレータ2の動力のみを車輪32Aに伝達する場合は、クラッチ100の係合・解放を任意に選択できる。また、減速時に車輪32Aの運動エネルギをモータ・ジェネレータ2に伝達して回生制動をおこなう場合は、クラッチ100の係合・解放を任意に選択できる。
【0035】
さらに、総合制御装置60には、自動変速機6の変速段を制御するための変速線図(マップ)が記憶されている。この変速線図は、車速およびスロットル開度をパラメータとして設定されている。また、総合制御装置60にはロックアップクラッチ49の係合・解放を制御するためのロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。このロックアップクラッチ制御マップは、車速およびスロットル開度をパラメータとして設定されている。ここで、実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、モータ・ジェネレータ2がこの発明の電動機に相当し、自動変速機6がこの発明の変速機に相当する。
【0036】
図1は、上記ハード構成を有するハイブリッド車の制御例を説明するためのフローチャートである。先ず、データの読み込みなどの入力信号の処理(ステップ201)をおこない、ついで、停止中のエンジン1を運転状態に切り換えるための条件が成立しているか否かが判断される(ステップ202)。ステップ202の条件は、車速およびアクセル開度をパラメータとするマップに基づいて判断され、例えば、モータ・ジェネレータ2が駆動され、かつ、エンジンが停止している状態から、モータ・ジェネレータ2を停止してエンジン1を単独で始動する場合と、モータ・ジェネレータ2およびエンジン1が停止している状態から、エンジン1を単独で始動する場合とが挙げられる。
【0037】
ステップ202で否定判断された場合はリターンされ、ステップ202で肯定判断された場合は、シフトレバー4Cにより非駆動ポジション、つまり、NポジションまたはPポジションが選択されているか否かが判断される(ステップ203)。例えばDポジションが選択されていてステップ203で否定判断された場合は、車速≒零、つまり、車両停止中であるか否かが判断される(ステップ204)。ステップ204で肯定判断された場合はアクセルオフか否かが判断される(ステップ205)。
【0038】
ステップ205で肯定判断された場合は、運転者が車両を発進させる意図がないため、大きな駆動力が必要とされない。そこで、自動変速機6の変速段として、最大変速比を達成する第1速以外の変速段、例えば第3速または第4速または第5速を所定時間設定するように、油圧制御装置39に対して信号を出力する(ステップ206)。ここで、所定時間は1秒程度であり、エンジン回転数が零の状態から、エンジン1が始動して所定回転数に到達するまでの時間に相当する。なお、この実施形態においては、電動オイルポンプ1Dが設けられているため、エンジン1の始動前に、自動変速機6の摩擦係合装置を係合させ、上記変速段を設定することが可能である。その後、エンジン1をモータ・ジェネレータ2またはスタータモータ1Cの動力により始動させる指令を出力し(ステップ207)、リターンされる。
【0039】
また、ステップ205で否定判断された場合は、運転者が車両を発進させることを意図していることになる。そこで、車両の発進性能を優先し、自動変速機6の変速段を第1速に設定するように、油圧制御装置39に対して信号を出力する(ステップ208)。ついで、モータ・ジェネレータ2またはスタータモータ1Cによりエンジン1を始動させる指令を出力し(ステップ209)、リターンされる。
【0040】
一方、ステップ204で否定判断された場合は、前述した変速線図に基づいて自動変速機6の変速段を制御し(ステップ210)、ステップ209に進む。前記ステップ203で肯定判断された場合は、前記変速線図に基づいて自動変速機6の変速段を制御する信号を出力する(ステップ211)。ついで、モータ・ジェネレータ2またはスタータモータ1Cによりエンジン1を始動させる指令を出力し(ステップ212)、リターンされる。ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップ202,〜209がこの発明の変速比制御手段に相当する。
【0041】
図7は、図1のフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。まず、エンジン1の始動指令がオフされてエンジン回転数が零に制御され、かつ、モータ・ジェネレータ2から正のトルクが出力されている状態においては、変速線図に基づいて自動変速機6の変速段が第1速に設定され、ロックアップクラッチ制御マップに基づいてロックアップクラッチ49がオン(係合)されている。
【0042】
ついで、時刻t1においてモータ・ジェネレータ2を停止してエンジン1を始動させる条件が成立すると、自動変速機6の変速段が第1速から第4速に強制的に変更されている。その後、時刻t2においてエンジン1の始動指令がオンされてエンジン回転数が徐々に上昇している。これと同時に、モータ・ジェネレータ2のトルクが徐々に低下するとともに、ロックアップクラッチ49の係合圧が徐々に低下している。
【0043】
そして、時刻t3においてロックアップクラッチ49がオフ(完全解放)されるとともに、時刻t4においてエンジン回転数が所定値に到達し、かつ、モータ・ジェネレータ2のトルクが零に制御されている。時刻t4以降はエンジン回転数がほぼ一定に制御されている。また、時刻t1から所定時間TPR4が経過した時点、すなわち、時刻t5において、自動変速機6が第4速から、変速線図に基づいて第1速に変更されている。
【0044】
以上のように、図1および図7の制御例によれば、シフトレバー4Cの操作により、自動変速機6の駆動ポジションが選択され、かつ、車両が停止し、さらにアクセルオフの状態でエンジン1を始動する場合は、自動変速機6の変速段が、最大変速比である第1速よりも小さい変速比の変速段、例えば第4速に制御される。したがって、エンジン1の始動にともなって自動変速機6から出力されるトルクの変動が車輪32Aに伝達された場合に、トルクの増幅が抑制されてショックを回避することができる。なお、この発明は、公知の無段変速機(CVT)が搭載されたハイブリッド車にも適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明によれば、変速機の駆動ポジションが選択され、かつ、車両が停止している状態で始動指令に基づいてエンジンが始動される場合は、運転者に車両を発進させる意図がないのであれば、変速機の変速比が、最大変速比よりも小さい変速比に設定される。したがって、エンジンの始動にともなって変速機から出力されるトルクの変動が車輪に伝達された場合に、トルクの増幅が抑制されてショックを回避することができる。これに対して運転者により発進操作がおこなわれていることによって運転者が車両を発進させることを意図している場合は、変速機の変速比が最大変速比に制御される。したがって、運転者の意図に適合したトルクが発生し、ドライバビリティが向上する。
【0046】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られる他、アクセル操作の有無に基づいて運転者の発進意図および発進操作の有無を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明を適用したハイブリッド車の構成を原理的に示すブロック図である。
【図3】 図2に示すエンジンからトルクコンバータに至るパワートレーンの構成を示すブロック図である。
【図4】 この発明の一例における自動変速機のギヤトレーンを示すスケルトン図である。
【図5】 図4の自動変速機の各変速段を設定するためのクラッチおよびブレーキの係合・解放を示す図表である。
【図6】 この発明の一例における総合制御装置における入出力信号を示す図である。
【図7】 図1のフローチャートに対応するタイムチャートの一例である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…モータ・ジェネレータ、 4C…シフトレバー、 6…自動変速機、 60…総合制御装置。
Claims (2)
- 車輪に対してトルクを伝達することの可能なエンジンおよび電動機と、このエンジンおよび電動機と前記車輪との間に配置され、前記トルクを前記車輪に伝達する駆動ポジションを選択可能な変速機とを有し、前記駆動ポジションが選択されている場合に、前記エンジンを停止状態から運転状態に変更することの可能なハイブリッド車の制御装置において、
前記駆動ポジションが選択されかつ車両が停止しているとともに運転者が車両を発進させる意図がない状態で前記エンジンが始動指令に基づいて始動される場合は、前記変速機の変速比を最大変速比よりも小さく設定し、前記駆動ポジションが選択されかつ車両が停止しているとともに運転者により発進操作が行われていることによって運転者が車両を発進させることを意図している状態で前記エンジンが始動指令に基づいて始動される場合は、前記変速機の変速比として最大変速比を設定する変速比制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 前記運転者が車両を発進させる意図および発進操作の有無の判断は、アクセル操作に基づいて行われるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置。
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