JP3859845B2 - 熱交換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路内に配置され、前記排気の熱を吸収して受熱管の中を流れる被加熱流体を加熱する熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタン、プロパン、ブタンなどの燃料を燃焼させた際に生じる熱を吸収して、給水等を加熱する熱交換器では、排気の潜熱を吸収する際に生じる凝縮水が熱交換器の表面に付着することがある。この凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸との溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0003】
このような酸性の凝縮水によって熱交換器の受熱管やフィンが腐食されると、内部の流体が漏れ出たり、錆によってフィンとフィンの間が詰まって熱交換効率が低下するので、従来の熱交換器では、受熱管や熱交換用のフィンの表面を耐酸性の塗料などの被膜で被覆する等の対策が施されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熱交換器のうち200℃以上等の高温の排気が当たる箇所では、受熱管やフィンの表面温度が被膜の耐熱温度を越えてしまい、当該箇所の被膜が熱で分解して破損し、凝縮水によって腐食されてしまうという問題があった。特に、熱交換器のうち排気の潜熱を主として回収する部分では、多量の凝縮水が発生するので、被膜が破損すると短期間のうちにフィンが腐食されて熱交換効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、凝縮水の付着する箇所に施した防腐用の被膜が高温の排気によって分解し破損することのない熱交換器を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路(15)内に配置され、受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記熱交換器の表面のうち前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水の付着する部分を当該凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)で覆い、
表面温度が前記被膜(53)の耐熱温度以下に収まるように前記被膜(53)で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所(54)を前記被膜(53)で覆った部分のうちの少なくとも前記排気経路(15)の上流側に設けたことを特徴とする熱交換器。
【0007】
[2]燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路(15)内に配置され、受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記熱交換器の表面のうち前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水の付着する部分を当該凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)で覆い、
表面温度が前記被膜(53)の耐熱温度以下に収まるように前記被膜(53)で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所(54)を前記被膜(53)で覆った部分のうちの前記排気経路(15)の上流側に設け、
表面温度が前記被膜(53)の耐熱温度以下に収まる範囲内で前記排気からの伝熱量が前記伝熱量制限箇所(54)より大きい箇所を当該伝熱量制限箇所(54)よりも下流側に設けたことを特徴とする熱交換器。
【0008】
[3]前記排気経路(15)の下流側ほど前記伝熱量が大きくなるようにしたことを特徴とする[1]または[2]記載の熱交換器。
【0009】
[4]燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路(15)内に配置され、受熱管(51)の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用熱交換部(40)とこれよりも前記排気経路(15)の下流側に配置され前記排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用熱交換部(50)とを有し、
前記潜熱回収用熱交換部(50)の表面を前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)で覆い、
表面温度が前記被膜(53)の耐熱温度以下に収まるように前記被膜(53)で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所(54)を前記潜熱回収用熱交換部(50)のうちの前記顕熱用熱交換部(40)に近い前記排気経路(15)の上流側に設けたことを特徴とする熱交換器。
【0010】
[5]前記受熱管(51)の外周面に立設された熱交換用のフィン(52)の高さを前記被膜(53)で覆った部分のうち他の部分よりも前記伝熱量制限箇所(54)で低くすることにより、前記排気からの伝熱量を小さくしたことを特徴とする[1]、[2]、[3]または[4]記載の熱交換器。
【0011】
[6]前記伝熱量制限箇所(54)の受熱管(51)をその外周面に熱交換用のフィン(52)の立設されない裸管にすることで当該箇所における伝熱量を小さくしたことを特徴とする[1]、[2]、[3]または[4]記載の熱交換器。
【0012】
[7]結露した凝縮水の蒸発によって前記表面温度が前記被膜(53)の耐熱温度以下に抑制されない部分を前記伝熱量制限箇所(54)に設定したことを特徴とする[1]、[2]、[3]、[4]、[5]または[6]記載の熱交換器。
【0013】
前記本発明は次のように作用する。
熱交換器の表面のうち、排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水の付着する部分を当該凝縮水による腐食から保護するための被膜(53)で覆っているので、被膜(53)が熱で分解等して破損しない限り、凝縮水による熱交換器の腐食が防止される。また、表面温度が被膜(53)の耐熱温度以下に収まるように排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所(54)を、被膜(53)で覆った部分のうちの少なくとも排気経路(15)の上流側に設けることで、高温の排気にさらされる当該上流側の箇所における被膜(53)の破損が防止される。
【0014】
すなわち、受熱管(51)の中を低温の被加熱流体が流れているので、当該被加熱流体に近い部分の温度はあまり上昇せず、被加熱流体から遠ざかるに従って排気の温度に近づいて高温になる。したがって、受熱管(51)の周囲に立設した熱交換用のフィン(52)の高さを、高温の排気にさらされる上流側の箇所において低くしたり、あるいは当該上流側の箇所の受熱管(51)をフィン(52)の立設されない裸管にして排気からの伝熱量を小さくすることで、高さの低いローフィン(52a)や裸管の表面温度がそれらを被覆する被膜(53)の耐熱温度以下に抑えられる。これにより、高温の排気にさらされる上流側の箇所においても被膜(53)が熱で分解して破損することがなく、凝縮水による腐食を防止することができる。
【0015】
なお、ローフィン(52a)や裸管にすることによって伝熱量を小さく抑えた上流側の伝熱量制限箇所(54)において、ある程度の熱量が吸収されるので、当該箇所よりも下流側では排気の温度が低下している。このため、伝熱量制限箇所(54)よりも下流側では、ローフィン(52)や裸管にして伝熱量を小さく制限する必要はない。そこで、表面温度が被膜(53)の耐熱温度以下に収まる範囲内で、排気からの伝熱量が伝熱量制限箇所(54)における伝熱量よりも大きい箇所を当該伝熱量制限箇所(54)の下流側に設けることで、排気の熱を効率良く回収することができる。
【0016】
また、伝熱量制限箇所(54)の伝熱量を、当該箇所の表面温度が被膜(53)の耐熱温度以下に収まるように小さくするとともに、排気経路(15)の下流側に進むにしたがって排気からの伝熱量を大きくすることで、被膜(53)の分解を防止しつつ、排気の熱をより一層効率良く回収することができる。たとえば、伝熱量制限箇所(54)のフィン(52)の高さを低くし、下流側ほどフィン(52)の高さを高くすれば、下流側に進むにしたがって伝熱量を次第に大きくすることができる。
【0017】
排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用熱交換部(40)とこれよりも排気経路(15)の下流側に配置され排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用熱交換部(50)とを有するものにおいては、潜熱回収用熱交換部(50)の表面を被膜(53)で覆う。そして当該潜熱回収用熱交換部(50)の上流側の箇所における伝熱量を、当該箇所のフィンをローフィン(52)にしたり、受熱管を裸管にすることで小さくする。
【0018】
顕熱回収用熱交換部(40)では主として排気の顕熱を回収するので、ほとんど凝縮水が生成しない。したがって、潜熱を主として回収することで、凝縮水が多量に生成される潜熱回収用熱交換部(50)を被膜(53)で被覆すれば、凝縮水による腐食から熱交換器を保護することができる。また、潜熱回収用熱交換部(50)に到達した排気の温度は、エポキシ系の塗料等から成る被膜(53)の耐熱温度よりもまだ高いので、顕熱回収用熱交換部(40)を経由した後の排気と最初に触れる、潜熱回収用熱交換部(50)の上流側の箇所の伝熱量を小さくして伝熱量制限箇所(54)とすることで、当該箇所の被膜(53)が熱で分解して破損せず、凝縮水による腐食を防止することができる。なお、伝熱量制限箇所(54)よりも下流側の部分において潜熱回収用熱交換部(50)の伝熱量を、伝熱量制限箇所(54)のそれよりも大きくすることで、排気の熱を効率的に回収することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態は、本発明にかかる熱交換器を給湯器10に適用したものである。図2に示すように、給湯器10は、燃焼室11を備えており、当該燃焼室11の下部には、バーナー12が配置されている。バーナー12の上方には、主として排気の顕熱を回収する顕熱回収用熱交換器40が、さらにその上方には主として排気の潜熱を回収する潜熱回収用熱交換器50が配置されている。
【0020】
顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の間には、潜熱回収用熱交換器50で生成した凝縮水を受け止め、当該凝縮水が顕熱回収用熱交換器40の上に落下することを防止するための受け皿13が取り付けられている。受け皿13は、燃焼室11を右端の一部を除いて上下に仕切るものであり、顕熱回収用熱交換器40を経由した後の排気は、受け皿13の無い燃焼室11右端の開口部14を通じて潜熱回収用熱交換器50の配置されている排気通路部15に流れ込むようになっている。
【0021】
受け皿13は、開口部14側から燃焼室11の左端側に向けて下り傾斜しており、傾斜の下端部分には、受け皿13によって回収された凝縮水を一時的に溜めるドレン受け16が設けられている。ドレン受け16の底部には、凝縮水の排出通路17が接続され、当該排出通路17の途中には、酸性の凝縮水を中和するための中和処理器18が取り付けられている。
【0022】
潜熱回収用熱交換器50の入側には給水の流入する給水水管21が接続され、潜熱回収用熱交換器50の出側は、連結水管22によって顕熱回収用熱交換器40の入側と接続されている。顕熱回収用熱交換器40の出側には、加熱後の給水の流れ出る給湯水管23が接続されている。
【0023】
給水水管21の入口部近傍には、供給される給水の温度を検知するための入水サーミスタ24が、またその下流側には、通水の有無や通水量を検知するための水量センサー25が取り付けられている。給湯水管23には、その出口部近傍に、出湯される湯の温度を検知するための出湯サーミスタ26が、またその下流側には、出湯される湯の流量を制限するための水量制御弁27が設けられている。
【0024】
燃焼室11の左下方には、給気をバーナー12に向けて送り込むための燃焼ファン28が配置されている。またバーナー12に燃焼ガスを送り込むガス供給管31の途中には、燃焼ガスの供給をオンオフ制御するガス電磁弁32、元ガス電磁弁33と、バーナー12へ供給する燃焼ガスの供給量を調整するガス比例弁34が取り付けられている。
【0025】
給湯器10は、その動作を統括制御する回路部品を収めた電装基板35を有し、当該電装基板35には、たとえば、台所等に配置され、湯温の設定操作等の受け付けや、各種の状態表示を行うリモコン36が接続されている。
【0026】
図1は、顕熱回収用熱交換器40および潜熱回収用熱交換器50をより詳細に示したものである。顕熱回収用熱交換器40は、加熱すべき給水の通る顕熱受熱管41と、排気の熱の回収効率を高めるためのフィン42とを備えている。顕熱回収用熱交換器40の顕熱受熱管41およびフィン42はともに熱伝導率の良好な銅で形成されている。
【0027】
潜熱回収用熱交換器50は、加熱すべき給水の通る潜熱受熱管51と、フィン52とから構成されている。潜熱受熱管51の周囲に立設されたフィン52は、排気通路部15の上流側に配置されている潜熱受熱管51a、51bの周囲部分において、他の部分よりもその高さの低いローフィン52aになっている。ここでは、上下2段にそれぞれ5本ずつ配置された潜熱受熱管51のうち上段の上流側にある2本の潜熱受熱管51a、51bの周囲のフィンを潜熱受熱管51の外周面からの高さが約2ミリのローフィン52aにすることで、伝熱量の小さい伝熱量制限箇所54を潜熱回収用熱交換器の上流側上段に形成している。
【0028】
潜熱受熱管51およびフィン52はともに銅で形成されているとともに、排気と触れるそれらの表面は、耐酸性の被膜53でコーティングされている。当該被膜53としては、エポキシ、テフロン、ポリサルファイド、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。ここでは、エポキシ系の有機塗料によって被膜53を形成している。
【0029】
なお、顕熱回収用熱交換器40は、排気の顕熱を主として回収し、凝縮水がほとんど発生しないので、その表面をエポキシ系の有機塗料等からなる被膜で覆うことは行っていない。また、顕熱回収用熱交換器40および潜熱回収用熱交換器50の母材として、銅のほか、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはこれらの合金を用いてもよい。
【0030】
次に作用を説明する。
給湯器10は、顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50の双方によって熱交換し、これらを合わせた熱交換効率が90パーセント以上になるようになっている。顕熱回収用熱交換器40側での効率は、75パーセント程度に抑えられ、潜熱回収用熱交換器50側で残る15パーセント程度の効率を得るようにフィン42、52の枚数や大きさ等が設定されている。
【0031】
顕熱回収用熱交換器40側で、85パーセント程度の熱交換効率を得るようにすると、潜熱の回収が進んで凝縮水が発生する。ここでは、顕熱回収用熱交換器40側の効率を75パーセント程度に抑え、排気の顕熱を主として回収するようにしているので、顕熱回収用熱交換器40側で凝縮水はほとんど発生しない。
【0032】
一方、潜熱回収用熱交換器50に到達した排気の温度は、200℃〜280℃程度に下がっているので、潜熱回収用熱交換器50は、排気の潜熱を主として回収することになる。このため、潜熱回収用熱交換器50側では、たとえば、毎分50mlから70ml程度の多量の凝縮水が生成する。生成した凝縮水は、燃焼空気が高温で酸化して生成された窒素酸化物(NOx)やガス漏れ検知のために燃焼ガスに添加された付臭剤が酸化することで生成された硫黄酸化物(SOx)等が溶解し、硝酸と硫酸の溶融したpH2〜3の酸性の水滴になっている。
【0033】
潜熱回収用熱交換器50は、このような酸性の凝縮水による腐食から保護するために被膜53で被覆されているが、顕熱回収用熱交換器40側から開口部14を通過して到来する排気の温度は、先にも述べたように200℃〜280℃程度あり、被膜53の耐熱温度(たとえば、エポキシ系の場合、約200℃)よりも高い。そこで、潜熱回収用熱交換器50のうち、このような高温の排気にさらされる部分のフィン52を背の低いローフィン52aにして排気からの伝熱量を小さくし、その表面温度が被膜53の耐熱温度を越えないようにしている。
【0034】
図3は、潜熱受熱管51の外周面からの距離と各距離におけるフィン等の表面温度との関係を示している。フィン52は排気に触れることで加熱されるが、潜熱受熱管51の中を低温の給水が流れているので、図3に示すように、潜熱受熱管51に近いほどフィン52の温度61やその雰囲気温度63は上昇せず、潜熱受熱管51から遠くなるに従ってそれらは高温になっている。
【0035】
すなわち、フィン52の温度61は、潜熱受熱管51の近傍部分では、ほぼ潜熱受熱管51内を流れる水温に近い状態にあり、潜熱受熱管51から遠ざかるに従って、次第に上昇し、潜熱受熱管51からの鉛直距離がr1の位置で、被膜53の耐熱温度62に達している。このように、潜熱受熱管51から離れるにつれて、フィン52の表面温度が上昇するので、フィン52の高さを低くすれば、それだけ、フィン52の表面温度を低く抑えることができる。
【0036】
図1に示した潜熱回収用熱交換器50では、開口部14を通じて到来する高温の排気にさらされる上流寄りの伝熱量制限箇所54におけるフィンの高さを、r1よりも低い約2ミリにして、排気からの伝熱量を小さくしているので、伝熱量制限箇所54におけるフィン52aの表面温度は、被膜53の耐熱温度以下に抑えられている。このため、潜熱回収用熱交換器50のうち高温の排気にさらされる上流側の伝熱量制限箇所54においても、その表面を覆う被膜53が熱で分解して破損するようなことがなく、凝縮水による腐食から保護される。
【0037】
開口部14から到来した排気は、伝熱量制限箇所等の上流側の部分で、ある程度吸熱されるので、伝熱量制限箇所54よりも下流側では、排気の温度は、被膜53の耐熱温度以下に低下している。したがって、伝熱量制限箇所54よりも下流側では、フィン52の高さを低くして、表面温度の上昇を制限する必要はない。そこで、図1に示した潜熱回収用熱交換器50では、伝熱量制限箇所54よりも下流側におけるフィンの高さを高くして、熱交換効率を高めている。
【0038】
図4は、潜熱回収用熱交換器50の上流部分のフィンをローフィンにしない場合に、被膜が熱で破損して腐食する部分を表している。このように、潜熱回収用熱交換器50の上流側であっても腐食の生じる部分71は、上段の潜熱受熱管51の近傍のみであり、下段の潜熱受熱管51では腐食は見られない。これは、上段の潜熱受熱管51で生成した凝縮水が、下段の潜熱受熱管51にたれ落ちて下段の潜熱受熱管51で蒸発し、熱を奪うので、下段側では表面温度が被膜53の耐熱温度以上に上昇しないことによる。すなわち、上流部下段の潜熱受熱管51の存する箇所は、最も上流側ではあるが、付着した凝縮水により排気が直接フィンにあたらず、排気の熱がフィンの温度に直接用いられず、大きな温度上昇がない。
【0039】
一方、上段側では、その上方から凝縮水が落下して蒸発するようなことが無いので、上段側のフィン52aの温度は、排気の熱によって直接フィンが加熱され、被膜53が熱で分解して破損が生じる。
【0040】
そこで、図1に示した潜熱回収用熱交換器50では、上段の上流側にある2本の潜熱受熱管51a、51bの周囲部分、すなわち、排気の熱によって直接フィンの加熱される部分だけをローフィン52aにし、結露した凝縮水の蒸発によって温度上昇が小さく抑えられる下段の潜熱受熱管51cの周囲部分については、最も上流側に位置しているが、下流側と同様に通常の大きさのフィン52bを設けてある。これにより、下段側での熱交換効率が低くならず、効率良く熱の回収を行うことができる。
【0041】
なお、エポキシ系の被膜53の場合には、伝熱量制限箇所54のフィン52aの高さを2ミリ程度まで低くしなければ、その表面温度を被膜53の耐熱温度以下に抑えることができなかったが、テフロンで被膜を形成した場合には、フィン52aの高さを5ミリにしても、異常がなかった。したがって、テフロンで被膜53を形成すれば、それだけ熱の回収効率を高くすることができる。
【0042】
また、潜熱回収用熱交換器50の下方に受け皿13を配置しているので、潜熱回収用熱交換器50から顕熱回収用熱交換器40の上に凝縮水が落下することが防止され、顕熱回収用熱交換器40が潜熱回収用熱交換器50で生成した凝縮水によって腐食されることがない。
【0043】
以上説明した実施の形態では、伝熱量制限箇所54のフィンをローフィン52aにすることで当該箇所の伝熱量を小さくしたが、図5に示すように伝熱量制限箇所54の潜熱受熱管51をフィンを備えていない裸管にすることで、当該箇所の伝熱量を小さくし、その表面温度を低く抑えるようにしてもよい。
【0044】
また潜熱回収用熱交換器50の上流側の部分だけを、ローフィンや裸管にして伝熱量を小さくしたが、上流側の部分の伝熱量さえ小さく抑えられていれば良いので、上流側から下流側まで潜熱回収用熱交換器50の全ての部分における伝熱量を小さくしても良く、また図6に示すように中間部分のみフィン81の高さを高くして、当該部分の伝熱量を大きくしても差し支えない。ただし、下流側は、フィンの高さを高くしてその伝熱量を大きくしても、被膜が熱によって分解され破損することが無いので、下流側の伝熱量を大きくすれば、熱の回収効率をそれだけ高めることができる。
【0045】
さらに、図7に示すように、上流側のフィン82の高さを低くし、下流側ほどフィンの高さが高くなるようにしてもよい。排気の温度は、下流側ほど低下するので、下流に行くほど、表面温度が被膜の耐熱温度以下に収まるフィンの高さが高くなる。そこで、上流部のフィンの高さを低くするとともに、下流側に行くほどフィンの背を高くすることで、熱による被膜の破損を防止しつつ、熱の回収を効率良く行うことができる。
【0046】
なお、実施の形態では、顕熱回収用熱交換器40と潜熱回収用熱交換器50とを個別に設けたものを示したが、連続する1つの熱交換器であってもよい。すなわち、1つの熱交換器のうち、排気の潜熱が主として回収されて凝縮水の付着する下流側の部分を被膜で被覆し、被覆した部分の中で上流側の箇所の伝熱量を小さくしたようなものであってもよい。
【0047】
たとえば、バーナーを燃焼室の上部に配置し、その下方に上述のような熱交換器を被覆した方が下方になるようにして配置し、燃焼ファンによって排気を燃焼室の上部側から下方に向けて強制的に送るようにする。これにより、被覆した部分で生じた凝縮水が、上方に位置する被覆されていない部分にかかることがないので、被膜が熱で破損しないようさえすれば、一体型の熱交換器であっても、凝縮水により腐食されることを適切に防止することができる。
【0048】
また本実施の形態では、燃料として燃焼ガスを用いたガス給湯器を例に説明したが、燃料は、石油や灯油などでも良く、また器具は、風呂の湯沸かしや暖房等を行うものであってもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明にかかる熱交換器によれば、熱交換器の表面のうち排気の潜熱を吸収して生じる凝縮水の付着する部分を、当該凝縮水による腐食から保護するための被膜で被覆するとともに、被覆した部分のうち排気経路の上流側に当たる箇所の伝熱量をフィンの高さを低くする等によって小さくしたので、比較的高温の排気にさらされる当該上流側の箇所においてもフィン等の表面温度が被膜の耐熱温度以下に抑えられ、被膜が熱で分解して破損するようなことがなく、凝縮水による腐食から熱交換器を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る熱交換器を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る熱交換器を適用した給湯器を示す説明図である。
【図3】受熱管からの距離と表面温度との関係を示す説明図である。
【図4】上流側の伝熱量を小さくしない場合に、凝縮水によって腐食される箇所を示した説明図である。
【図5】伝熱量制限箇所の受熱管を裸管にした熱交換器を示す説明図である。
【図6】下流側に上流側よりも伝熱量の大きい箇所を設けた熱交換器の一例を示す説明図である。
【図7】下流側ほど伝熱量の大きくなる熱交換器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
10…給湯器
11…燃焼室
12…バーナー
13…受け皿
14…開口部
15…排気通路部
16…ドレン受け
28…燃焼ファン
40…顕熱回収用熱交換器
41…顕熱受熱管
42、52…フィン
50…潜熱回収用熱交換器
51…潜熱受熱管
52a…ローフィン
53…被膜
54…伝熱量制限箇所
Claims (7)
- 燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路内に配置され、受熱管の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記熱交換器の表面のうち前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水の付着する部分を当該凝縮水による腐食から保護するための被膜で覆い、
表面温度が前記被膜の耐熱温度以下に収まるように前記被膜で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所を前記被膜で覆った部分のうちの少なくとも前記排気経路の上流側に設けたことを特徴とする熱交換器。 - 燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路内に配置され、受熱管の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記熱交換器の表面のうち前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水の付着する部分を当該凝縮水による腐食から保護するための被膜で覆い、
表面温度が前記被膜の耐熱温度以下に収まるように前記被膜で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所を前記被膜で覆った部分のうちの前記排気経路の上流側に設け、
表面温度が前記被膜の耐熱温度以下に収まる範囲内で前記排気からの伝熱量が前記伝熱量制限箇所より大きい箇所を当該伝熱量制限箇所よりも下流側に設けたことを特徴とする熱交換器。 - 前記排気経路の下流側ほど前記伝熱量が大きくなるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。
- 燃料を燃焼させた際に生じる排気の流れる排気経路内に配置され、受熱管の中を流れる被加熱流体を前記排気の熱を吸収して加熱する熱交換器において、
前記排気の顕熱を主として吸収する顕熱回収用熱交換部とこれよりも前記排気経路の下流側に配置され前記排気の潜熱を主として吸収する潜熱回収用熱交換部とを有し、
前記潜熱回収用熱交換部の表面を前記排気の潜熱を吸収することによって生成する凝縮水による腐食から保護するための被膜で覆い、
表面温度が前記被膜の耐熱温度以下に収まるように前記被膜で覆った部分のうち他の部分よりも前記排気からの伝熱量を小さくした伝熱量制限箇所を前記潜熱回収用熱交換部のうちの前記顕熱用熱交換部に近い前記排気経路の上流側に設けたことを特徴とする熱交換器。 - 前記受熱管の外周面に立設された熱交換用のフィンの高さを前記被膜で覆った部分のうち他の部分よりも前記伝熱量制限箇所で低くすることにより、前記排気からの伝熱量を小さくしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の熱交換器。
- 前記伝熱量制限箇所の受熱管をその外周面に熱交換用のフィンの立設されない裸管にすることで当該箇所における伝熱量を小さくしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の熱交換器。
- 結露した凝縮水の蒸発によって前記表面温度が前記被膜の耐熱温度以下に抑制されない部分を前記伝熱量制限箇所に設定したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の熱交換器。
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